JP4109137B2 - エレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、エレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くのエレクトレットコンデンサマイクロホンは、振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタとを備えた構成となっている。
【0003】
そして、このエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造工程においては、所要の感度特性を有する製品が得られるようにするため、その背面電極板としてチャージ電圧が一定範囲内のものを選別したり、あるいは特許文献1に記載されているように、背面電極板に対して電離放射線を照射することによりチャージ電圧の低減調整を行うといった工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−32596号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エレクトレットコンデンサマイクロホンにおける感度特性のバラツキの要因は、背面電極板のチャージ電圧の要因だけではないので、上記従来の製造方法では、感度特性のバラツキを十分に小さく抑えることは困難である。
【0005】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、感度特性のバラツキを十分に小さく抑えることができるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、感度特性のバラツキに対する寄与率が高い、背面電極板のチャージ電圧以外の要因について、その特性を吟味し、これを加味したチャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0007】
すなわち、本願第1の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0008】
また、本願第2の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記振動膜の最低共振周波数を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本願第3の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「所定の目標感度」の具体的な値は、特に限定されるものではなく、エレクトレットコンデンサマイクロホンのサイズや用途等に応じて、適宜設定することが可能である。
【0011】
【発明の作用効果】
本願発明者らが、エレクトレットコンデンサマイクロホンにおける感度特性のバラツキの要因について分析したところ、背面電極板のチャージ電圧以外に、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数が、感度特性のバラツキに対する寄与率が高いことが判明した。
【0012】
そこで、本願第1の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流に応じて予め設定しておき、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0013】
また、本願第2の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、振動膜の最低共振周波数を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0014】
さらに、本願第3の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数のうちの一方のみに応じて分極処理を行うようにした場合に比して、感度特性のバラツキを一層小さく抑えることができる。
【0015】
本願第1または第3の発明において、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を複数のランクにランク分けして、これら各ランク毎に目標チャージ電圧を設定しておくとともに、電界効果トランジスタをそのドレイン飽和電流の実測値に応じて上記複数のランクにランク分けしておき、これら各ランク毎に目標チャージ電圧を決定するようにすれば、感度特性の調整を効率的に行うことができる。
【0016】
この場合において、各ランクの幅を、エレクトレットコンデンサマイクロホンの感度特性への影響度が略一定になるように設定すれば、感度特性の調整精度をより一層高めることができる。
【0017】
また、本願第2または第3の発明において、振動膜に対してヒートエージング処理を施した後に、該振動膜の最低共振周波数の実測を行うようにすれば、振動膜の最低共振周波数の実測値のバラツキを小さく抑えることができるので、目標チャージ電圧の変動幅を小さく抑えることができる。この場合において、ヒートエージング処理の温度および時間について、その具体的な値は特に限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本願発明の一実施形態に係る製造方法の適用対象となるエレクトレットコンデンサマイクロホンを上向きに配置した状態で示す側断面図である。
【0020】
図示のように、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10は、外径が3mm程度、高さが1.2〜1.5mm程度の超小型マイクロホンであって、円筒状のケース12内に、振動膜サブアッセンブリ14、スペーサ16、背面電極板18、コイルスプリング20、絶縁性ブッシュ22およびJFETボード24が収容されてなっている。
【0021】
ケース12は、金属製(例えばアルミニウム製)であって、その上端壁には放音孔12aが形成されており、また、その下端部12bにおいてJFETボード24にカシメ固定されている。
【0022】
振動膜サブアッセンブリ14は、図2(b)に単品でも示すように、円形の振動膜26が支持リング28に張設固定されてなっている。振動膜26は、厚みが1.5μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上面にニッケル合金等の金属蒸着膜が形成されてなり、その外径はケース12の内径と略同一の値に設定されている。一方、支持リング28は、金属製のプレス加工品であって振動膜26と略同じ外径を有している。
【0023】
そして、この振動膜26の支持リング28への張設固定は、図2(a)に示すように、下面に金属蒸着膜が形成されたPETフィルム2を、図示しない治具の重量により所定のテンションで張った状態で、上面に接着剤30が塗布された支持リング28に押し当てて接着するとともに、PETフィルム2の不要部分を除去することにより行われるようになっている。
【0024】
このときPETフィルム2に作用するテンションの大きさによって、振動膜26の最低共振周波数F0にバラツキが生じることとなる。すなわち、PETフィルム2に作用するテンションが小さいと、振動膜26の最低共振周波数F0が低くなり、感度が高くなる。ただし、あまりテンションが小さくなると、振動膜26にシワが発生してしまい、音響特性が不安定になる。一方、PETフィルム2に対するテンションが大きいと、振動膜26の最低共振周波数F0が高くなり、感度が低下してしまう。
【0025】
スペーサ16は、ケース12の内径と略同じ外径を有するステンレス鋼製の薄板リングで構成されている。
【0026】
背面電極板18は、電極板本体18Aと、この電極板本体18Aの上面に熱融着されたエレクトレット18Bとからなり、該背面電極板18には複数の貫通孔18aが形成されている。
【0027】
電極板本体18Aは、板厚が0.15mm程度のステンレス鋼板からなり、エレクトレット18Bは、厚みが25μm程度のFEP(フッ化エチレンプロピレン)フィルムからなっている。そして、この背面電極板18においては、そのエレクトレット18Bに所定の表面電位が付与されるよう、所定のチャージ電圧で分極処理が施されている。
【0028】
ケース12内においては、エレクトレット18Bと振動膜26とがスペーサ16を介して所定の微小間隔をおいて対向配置されており、これによりコンデンサ部を構成するようになっている。
【0029】
絶縁性ブッシュ22は、ケース12の内径と略同じ外径を有する円筒状部材であって、その内周側に背面電極板18およびコイルスプリング20が配置されるようになっている。その際、背面電極板18は、コイルスプリング20によりスペーサ16へ向けて弾性的に押圧されるようになっている。
【0030】
JFETボード24は、ケース12の内径と略同じ外径を有するボード本体32と、このボード本体32の上面に実装されたチップ状の接合型電界効果トランジスタ(JFET)34およびコンデンサ36とからなっている。ボード本体32の上面には、導電パターン32aが形成されており、また、ボード本体32の下面には、その中心部にプラス端子となる導電パターン32bが形成されるとともに、その外周縁部にアース端子となる導電パターン32cが形成されている。
【0031】
接合型電界効果トランジスタ34は、そのゲート電極が導電パターン32aおよびコイルスプリング20を介して背極板18に電気的に接続されており、そのドレイン電極が導電パターン32aを介して導電パターン32bに電気的に接続されており、そのソース電極が導電パターン32a、32c、ケース12および支持リング28を介して振動膜16の金属蒸着膜に電気的に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10の製造工程について説明する。
【0033】
このエレクトレットコンデンサマイクロホン10は、カシメ固定が行われる前の状態のケース12(図1において2点鎖線で示す形状のケース)を上下逆さに配置した状態で、該ケース12内に、振動膜サブアッセンブリ14、スペーサ16、絶縁性ブッシュ22、背面電極板18、コイルスプリング20およびJFETボード24をこの順序で組み込んだ後、ケース12の開放下端部12bをJFETボード24にカシメ固定することにより、その組付けが行われるようになっている。
【0034】
本実施形態においては、このようにしてケース12内に各部品を組み込む前の段階で、次のような感度特性の調整を行うようになっている。
【0035】
すなわち、まず、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0に応じて予め設定しておく。そして、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行う。
【0036】
その際、振動膜26の最低共振周波数F0の実測は、振動膜サブアッセンブリ14に対して、その振動膜26を構成するPETの二次転移点(69℃)を超える所定温度(例えば105℃)で8時間以上(例えば24時間)ヒートエージング処理を施した後に行うようにし、これにより振動膜26の最低共振周波数F0のバラツキを予め小さく抑えておく。
【0037】
図3は、目標感度を−42dBとしたときの背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを示すグラフであって、複数のサンプルについて実験したデータを基に作成されたものである。
【0038】
同図に示すように、目標チャージ電圧Vcは、振動膜26の最低共振周波数F0に対して、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSをパラメータとして得られるようになっている。その際、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSについては、130μAから40μA毎に6つのランク(1)〜(6)にランク分けされている。
【0039】
このグラフから明らかなように、最低共振周波数F0の値が大きくなるほど目標チャージ電圧Vcの値は小さくなり、また、ドレイン飽和電流IDSSの値が大きくなるほど(すなわちランク(1)からランク(6)に近づくほど)目標チャージ電圧Vcの値は大きくなる。
【0040】
個々の振動膜26および接合型電界効果トランジスタ34について、その最低共振周波数F0およびドレイン飽和電流IDSSを実測すれば、これら2つの実測値から、図3のグラフに基づいて分極処理の際の目標チャージ電圧Vcを決定することができる。その際、接合型電界効果トランジスタ34に関しては、そのドレイン飽和電流IDSSの実測値に応じてこれを上記6つのランク(1)〜(6)にランク分けしておけば、これら各ランク毎に目標チャージ電圧Vcを容易に決定することができる。
【0041】
また、このグラフを基にして、表1に示すような目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルを作成しておけば、マップ検索によって目標チャージ電圧Vcを容易に決定することができる。
【0042】
なお、この設定値テーブルにおいては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSについては、上記6つのランク(1)〜(6)がそのまま用いられており、振動膜26の最低共振周波数F0については、0.5kHz毎に領域分けがなされている。
【0043】
【表1】
【0044】
以上詳述したように、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10の製造方法においては、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0に応じて予め設定しておき、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行うようになっているので、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0045】
特に本実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSを複数のランク(1)〜(6)にランク分けして、これら各ランク(1)〜(6)毎に目標チャージ電圧Vcを設定しておくとともに、個々の接合型電界効果トランジスタ34をそのドレイン飽和電流IDSSの実測値に応じて上記複数のランク(1)〜(6)にランク分けしておき、これら各ランク(1)〜(6)毎に目標チャージ電圧Vcを決定するようになっているので、感度特性の調整を効率的に行うことができる。
【0046】
しかも本実施形態においては、表1に示すような目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルを作成して、マップ検索によって目標チャージ電圧Vcを決定するようになっているので、目標チャージ電圧Vcの決定を容易に行うことができる。
【0047】
このようにして決定した目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行い、この背面電極板18を組み込むようにすれば、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度特性のバラツキを、従来の−42dB±3dBから−42dB±1.5dBに収めることが可能となる。
【0048】
なお、従来の製造方法において、このような狭い範囲に感度特性のバラツキを収めようとした場合には、振動膜26や接合型電界効果トランジスタ34の大半を不良品として判定せざるを得なくなるが、本実施形態においては、これら不良品判定の対象となるべき部品を有効に利用することができる。
【0049】
また本実施形態においては、振動膜26に対してヒートエージング処理を施した後に、該振動膜26の最低共振周波数F0の実測を行うようになっているので、振動膜26の最低共振周波数F0の実測値のバラツキを小さく抑えることができ、これにより目標チャージ電圧Vcの変動幅を小さく抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態の製造方法において、振動膜サブアッセンブリ14を製造する際、接着剤30を、支持リング28の裏面(すなわちプレス成形の際に生じるダレ面とは反対側の面)に塗布して、PETフィルム2の接着を行うようにすれば、振動膜26の有効面積を均一化することができるので、その最低共振周波数F0の実測値のバラツキをより小さく抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の製造方法において、背面電極板18に対して分極処理を施す前に、洗浄あるいは除電機により除電処理を施しておくようにすれば、そのエレクトレット18Bにおける蓄電分布を均一化させることができる。なお、本実施形態においては、エレクトレット18Bを構成するFEPフィルムの厚みが25μm程度であるものとして説明したが、これを半分の12.5μm程度にすれば、蓄電分布をより均一化させることができる。
【0052】
ところで本実施形態においては、目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルにおける接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSが40μA毎にランク分けされており、振動膜26の最低共振周波数F0が0.5kHz毎に領域分けされているものとして説明したが、ランク分けおよび領域分けの際の具体的な範囲が適宜変更可能であることはもちろんである。
【0053】
本実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSの各ランク(1)〜(6)が等間隔でランク分けされているが、このようにする代わりに、図4に示すようなランク分けを行うことも可能である。
【0054】
同図は、特定のチャージ電圧および特定の最低共振周波数F0の際に、ドレイン飽和電流IDSSが感度に及ぼす影響を示した図である。
【0055】
すなわち、同図に示すように、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度は、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSに対して対数曲線的な特性を有しているので、各ランク(1)〜(6)の幅を、同図に示すように、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度特性への影響度が略一定になるように設定すれば、感度特性の調整精度をより一層高めることができる。
【0056】
なお上記実施形態においては、目標感度を−42dBとした場合の目標チャージ電圧Vcの値について説明したが、目標感度をこれ以外の値に設定してもよいことはもちろんであり、この場合には、当然ながら目標チャージ電圧Vcの値も上記実施形態の値とは異なったものとなる。
【0057】
また上記実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行う場合について説明したが、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0のうちの一方のみを実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板18に対する分極処理を行うようにすることも可能である。
【0058】
このようにした場合には、上記実施形態の場合よりも感度特性のバラツキが多少大きくなるが、簡易な方法により、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0059】
また上記実施形態においては、電界効果トランジスタとして接合型電界効果トランジスタ34を例示したが、これに限定されるものではなく、MOS型電界効果トランジスタについても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態に係る製造方法の適用対象となるエレクトレットコンデンサマイクロホンを上向きに配置した状態で示す側断面図
【図2】上記製造方法における振動膜の支持リングへの張設固定の様子を示す斜視図(a)および該張設固定により製造された振動膜サブアッセンブリを単品で示す斜視図(b)
【図3】目標感度を−42dBとしたときの背面電極板の目標チャージ電圧を示すグラフ
【図4】上記実施形態において、接合型電界効果トランジスタのドレイン飽和電流をランク分けする際の変形例を示すグラフ
【符号の説明】
2 PETフィルム
10 エレクトレットコンデンサマイクロホン
12 ケース
12a 音孔
12b 開放下端部
14 振動膜サブアッセンブリ
16 スペーサ
18 背面電極板
18A 電極板本体
18B エレクトレット
18a 貫通孔
20 コイルスプリング
22 絶縁性ブッシュ
24 JFETボード
26 振動膜
28 支持リング
30 接着剤
32 ボード本体
32a、32b、32c 導電パターン
34 接合型電界効果トランジスタ(JFET)
36 コンデンサ
【発明の属する技術分野】
本願発明は、エレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くのエレクトレットコンデンサマイクロホンは、振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタとを備えた構成となっている。
【0003】
そして、このエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造工程においては、所要の感度特性を有する製品が得られるようにするため、その背面電極板としてチャージ電圧が一定範囲内のものを選別したり、あるいは特許文献1に記載されているように、背面電極板に対して電離放射線を照射することによりチャージ電圧の低減調整を行うといった工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−32596号公報
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、エレクトレットコンデンサマイクロホンにおける感度特性のバラツキの要因は、背面電極板のチャージ電圧の要因だけではないので、上記従来の製造方法では、感度特性のバラツキを十分に小さく抑えることは困難である。
【0005】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、感度特性のバラツキを十分に小さく抑えることができるエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、感度特性のバラツキに対する寄与率が高い、背面電極板のチャージ電圧以外の要因について、その特性を吟味し、これを加味したチャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0007】
すなわち、本願第1の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0008】
また、本願第2の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記振動膜の最低共振周波数を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本願第3の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法は、
振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るために必要な上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「所定の目標感度」の具体的な値は、特に限定されるものではなく、エレクトレットコンデンサマイクロホンのサイズや用途等に応じて、適宜設定することが可能である。
【0011】
【発明の作用効果】
本願発明者らが、エレクトレットコンデンサマイクロホンにおける感度特性のバラツキの要因について分析したところ、背面電極板のチャージ電圧以外に、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数が、感度特性のバラツキに対する寄与率が高いことが判明した。
【0012】
そこで、本願第1の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流に応じて予め設定しておき、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0013】
また、本願第2の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、振動膜の最低共振周波数を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0014】
さらに、本願第3の発明に係るエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法のように、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板の目標チャージ電圧を、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板に対する分極処理を行うようにすることにより、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および振動膜の最低共振周波数のうちの一方のみに応じて分極処理を行うようにした場合に比して、感度特性のバラツキを一層小さく抑えることができる。
【0015】
本願第1または第3の発明において、電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を複数のランクにランク分けして、これら各ランク毎に目標チャージ電圧を設定しておくとともに、電界効果トランジスタをそのドレイン飽和電流の実測値に応じて上記複数のランクにランク分けしておき、これら各ランク毎に目標チャージ電圧を決定するようにすれば、感度特性の調整を効率的に行うことができる。
【0016】
この場合において、各ランクの幅を、エレクトレットコンデンサマイクロホンの感度特性への影響度が略一定になるように設定すれば、感度特性の調整精度をより一層高めることができる。
【0017】
また、本願第2または第3の発明において、振動膜に対してヒートエージング処理を施した後に、該振動膜の最低共振周波数の実測を行うようにすれば、振動膜の最低共振周波数の実測値のバラツキを小さく抑えることができるので、目標チャージ電圧の変動幅を小さく抑えることができる。この場合において、ヒートエージング処理の温度および時間について、その具体的な値は特に限定されるものではない。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本願発明の一実施形態に係る製造方法の適用対象となるエレクトレットコンデンサマイクロホンを上向きに配置した状態で示す側断面図である。
【0020】
図示のように、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10は、外径が3mm程度、高さが1.2〜1.5mm程度の超小型マイクロホンであって、円筒状のケース12内に、振動膜サブアッセンブリ14、スペーサ16、背面電極板18、コイルスプリング20、絶縁性ブッシュ22およびJFETボード24が収容されてなっている。
【0021】
ケース12は、金属製(例えばアルミニウム製)であって、その上端壁には放音孔12aが形成されており、また、その下端部12bにおいてJFETボード24にカシメ固定されている。
【0022】
振動膜サブアッセンブリ14は、図2(b)に単品でも示すように、円形の振動膜26が支持リング28に張設固定されてなっている。振動膜26は、厚みが1.5μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上面にニッケル合金等の金属蒸着膜が形成されてなり、その外径はケース12の内径と略同一の値に設定されている。一方、支持リング28は、金属製のプレス加工品であって振動膜26と略同じ外径を有している。
【0023】
そして、この振動膜26の支持リング28への張設固定は、図2(a)に示すように、下面に金属蒸着膜が形成されたPETフィルム2を、図示しない治具の重量により所定のテンションで張った状態で、上面に接着剤30が塗布された支持リング28に押し当てて接着するとともに、PETフィルム2の不要部分を除去することにより行われるようになっている。
【0024】
このときPETフィルム2に作用するテンションの大きさによって、振動膜26の最低共振周波数F0にバラツキが生じることとなる。すなわち、PETフィルム2に作用するテンションが小さいと、振動膜26の最低共振周波数F0が低くなり、感度が高くなる。ただし、あまりテンションが小さくなると、振動膜26にシワが発生してしまい、音響特性が不安定になる。一方、PETフィルム2に対するテンションが大きいと、振動膜26の最低共振周波数F0が高くなり、感度が低下してしまう。
【0025】
スペーサ16は、ケース12の内径と略同じ外径を有するステンレス鋼製の薄板リングで構成されている。
【0026】
背面電極板18は、電極板本体18Aと、この電極板本体18Aの上面に熱融着されたエレクトレット18Bとからなり、該背面電極板18には複数の貫通孔18aが形成されている。
【0027】
電極板本体18Aは、板厚が0.15mm程度のステンレス鋼板からなり、エレクトレット18Bは、厚みが25μm程度のFEP(フッ化エチレンプロピレン)フィルムからなっている。そして、この背面電極板18においては、そのエレクトレット18Bに所定の表面電位が付与されるよう、所定のチャージ電圧で分極処理が施されている。
【0028】
ケース12内においては、エレクトレット18Bと振動膜26とがスペーサ16を介して所定の微小間隔をおいて対向配置されており、これによりコンデンサ部を構成するようになっている。
【0029】
絶縁性ブッシュ22は、ケース12の内径と略同じ外径を有する円筒状部材であって、その内周側に背面電極板18およびコイルスプリング20が配置されるようになっている。その際、背面電極板18は、コイルスプリング20によりスペーサ16へ向けて弾性的に押圧されるようになっている。
【0030】
JFETボード24は、ケース12の内径と略同じ外径を有するボード本体32と、このボード本体32の上面に実装されたチップ状の接合型電界効果トランジスタ(JFET)34およびコンデンサ36とからなっている。ボード本体32の上面には、導電パターン32aが形成されており、また、ボード本体32の下面には、その中心部にプラス端子となる導電パターン32bが形成されるとともに、その外周縁部にアース端子となる導電パターン32cが形成されている。
【0031】
接合型電界効果トランジスタ34は、そのゲート電極が導電パターン32aおよびコイルスプリング20を介して背極板18に電気的に接続されており、そのドレイン電極が導電パターン32aを介して導電パターン32bに電気的に接続されており、そのソース電極が導電パターン32a、32c、ケース12および支持リング28を介して振動膜16の金属蒸着膜に電気的に接続されている。
【0032】
次に、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10の製造工程について説明する。
【0033】
このエレクトレットコンデンサマイクロホン10は、カシメ固定が行われる前の状態のケース12(図1において2点鎖線で示す形状のケース)を上下逆さに配置した状態で、該ケース12内に、振動膜サブアッセンブリ14、スペーサ16、絶縁性ブッシュ22、背面電極板18、コイルスプリング20およびJFETボード24をこの順序で組み込んだ後、ケース12の開放下端部12bをJFETボード24にカシメ固定することにより、その組付けが行われるようになっている。
【0034】
本実施形態においては、このようにしてケース12内に各部品を組み込む前の段階で、次のような感度特性の調整を行うようになっている。
【0035】
すなわち、まず、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0に応じて予め設定しておく。そして、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行う。
【0036】
その際、振動膜26の最低共振周波数F0の実測は、振動膜サブアッセンブリ14に対して、その振動膜26を構成するPETの二次転移点(69℃)を超える所定温度(例えば105℃)で8時間以上(例えば24時間)ヒートエージング処理を施した後に行うようにし、これにより振動膜26の最低共振周波数F0のバラツキを予め小さく抑えておく。
【0037】
図3は、目標感度を−42dBとしたときの背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを示すグラフであって、複数のサンプルについて実験したデータを基に作成されたものである。
【0038】
同図に示すように、目標チャージ電圧Vcは、振動膜26の最低共振周波数F0に対して、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSをパラメータとして得られるようになっている。その際、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSについては、130μAから40μA毎に6つのランク(1)〜(6)にランク分けされている。
【0039】
このグラフから明らかなように、最低共振周波数F0の値が大きくなるほど目標チャージ電圧Vcの値は小さくなり、また、ドレイン飽和電流IDSSの値が大きくなるほど(すなわちランク(1)からランク(6)に近づくほど)目標チャージ電圧Vcの値は大きくなる。
【0040】
個々の振動膜26および接合型電界効果トランジスタ34について、その最低共振周波数F0およびドレイン飽和電流IDSSを実測すれば、これら2つの実測値から、図3のグラフに基づいて分極処理の際の目標チャージ電圧Vcを決定することができる。その際、接合型電界効果トランジスタ34に関しては、そのドレイン飽和電流IDSSの実測値に応じてこれを上記6つのランク(1)〜(6)にランク分けしておけば、これら各ランク毎に目標チャージ電圧Vcを容易に決定することができる。
【0041】
また、このグラフを基にして、表1に示すような目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルを作成しておけば、マップ検索によって目標チャージ電圧Vcを容易に決定することができる。
【0042】
なお、この設定値テーブルにおいては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSについては、上記6つのランク(1)〜(6)がそのまま用いられており、振動膜26の最低共振周波数F0については、0.5kHz毎に領域分けがなされている。
【0043】
【表1】
【0044】
以上詳述したように、本実施形態に係るエレクトレットコンデンサマイクロホン10の製造方法においては、所定の目標感度を得るのに適した背面電極板18の目標チャージ電圧Vcを、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0に応じて予め設定しておき、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行うようになっているので、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0045】
特に本実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSを複数のランク(1)〜(6)にランク分けして、これら各ランク(1)〜(6)毎に目標チャージ電圧Vcを設定しておくとともに、個々の接合型電界効果トランジスタ34をそのドレイン飽和電流IDSSの実測値に応じて上記複数のランク(1)〜(6)にランク分けしておき、これら各ランク(1)〜(6)毎に目標チャージ電圧Vcを決定するようになっているので、感度特性の調整を効率的に行うことができる。
【0046】
しかも本実施形態においては、表1に示すような目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルを作成して、マップ検索によって目標チャージ電圧Vcを決定するようになっているので、目標チャージ電圧Vcの決定を容易に行うことができる。
【0047】
このようにして決定した目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行い、この背面電極板18を組み込むようにすれば、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度特性のバラツキを、従来の−42dB±3dBから−42dB±1.5dBに収めることが可能となる。
【0048】
なお、従来の製造方法において、このような狭い範囲に感度特性のバラツキを収めようとした場合には、振動膜26や接合型電界効果トランジスタ34の大半を不良品として判定せざるを得なくなるが、本実施形態においては、これら不良品判定の対象となるべき部品を有効に利用することができる。
【0049】
また本実施形態においては、振動膜26に対してヒートエージング処理を施した後に、該振動膜26の最低共振周波数F0の実測を行うようになっているので、振動膜26の最低共振周波数F0の実測値のバラツキを小さく抑えることができ、これにより目標チャージ電圧Vcの変動幅を小さく抑えることができる。
【0050】
なお、本実施形態の製造方法において、振動膜サブアッセンブリ14を製造する際、接着剤30を、支持リング28の裏面(すなわちプレス成形の際に生じるダレ面とは反対側の面)に塗布して、PETフィルム2の接着を行うようにすれば、振動膜26の有効面積を均一化することができるので、その最低共振周波数F0の実測値のバラツキをより小さく抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態の製造方法において、背面電極板18に対して分極処理を施す前に、洗浄あるいは除電機により除電処理を施しておくようにすれば、そのエレクトレット18Bにおける蓄電分布を均一化させることができる。なお、本実施形態においては、エレクトレット18Bを構成するFEPフィルムの厚みが25μm程度であるものとして説明したが、これを半分の12.5μm程度にすれば、蓄電分布をより均一化させることができる。
【0052】
ところで本実施形態においては、目標チャージ電圧Vcの設定値テーブルにおける接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSが40μA毎にランク分けされており、振動膜26の最低共振周波数F0が0.5kHz毎に領域分けされているものとして説明したが、ランク分けおよび領域分けの際の具体的な範囲が適宜変更可能であることはもちろんである。
【0053】
本実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSの各ランク(1)〜(6)が等間隔でランク分けされているが、このようにする代わりに、図4に示すようなランク分けを行うことも可能である。
【0054】
同図は、特定のチャージ電圧および特定の最低共振周波数F0の際に、ドレイン飽和電流IDSSが感度に及ぼす影響を示した図である。
【0055】
すなわち、同図に示すように、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度は、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSに対して対数曲線的な特性を有しているので、各ランク(1)〜(6)の幅を、同図に示すように、エレクトレットコンデンサマイクロホン10の感度特性への影響度が略一定になるように設定すれば、感度特性の調整精度をより一層高めることができる。
【0056】
なお上記実施形態においては、目標感度を−42dBとした場合の目標チャージ電圧Vcの値について説明したが、目標感度をこれ以外の値に設定してもよいことはもちろんであり、この場合には、当然ながら目標チャージ電圧Vcの値も上記実施形態の値とは異なったものとなる。
【0057】
また上記実施形態においては、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧Vcで背面電極板18に対する分極処理を行う場合について説明したが、接合型電界効果トランジスタ34のドレイン飽和電流IDSSおよび振動膜26の最低共振周波数F0のうちの一方のみを実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で背面電極板18に対する分極処理を行うようにすることも可能である。
【0058】
このようにした場合には、上記実施形態の場合よりも感度特性のバラツキが多少大きくなるが、簡易な方法により、従来のような背面電極板のチャージ電圧のみに着目した選別方法や調整方法を採用した場合に比して、感度特性のバラツキを大幅に小さく抑えることができる。
【0059】
また上記実施形態においては、電界効果トランジスタとして接合型電界効果トランジスタ34を例示したが、これに限定されるものではなく、MOS型電界効果トランジスタについても同様に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態に係る製造方法の適用対象となるエレクトレットコンデンサマイクロホンを上向きに配置した状態で示す側断面図
【図2】上記製造方法における振動膜の支持リングへの張設固定の様子を示す斜視図(a)および該張設固定により製造された振動膜サブアッセンブリを単品で示す斜視図(b)
【図3】目標感度を−42dBとしたときの背面電極板の目標チャージ電圧を示すグラフ
【図4】上記実施形態において、接合型電界効果トランジスタのドレイン飽和電流をランク分けする際の変形例を示すグラフ
【符号の説明】
2 PETフィルム
10 エレクトレットコンデンサマイクロホン
12 ケース
12a 音孔
12b 開放下端部
14 振動膜サブアッセンブリ
16 スペーサ
18 背面電極板
18A 電極板本体
18B エレクトレット
18a 貫通孔
20 コイルスプリング
22 絶縁性ブッシュ
24 JFETボード
26 振動膜
28 支持リング
30 接着剤
32 ボード本体
32a、32b、32c 導電パターン
34 接合型電界効果トランジスタ(JFET)
36 コンデンサ
Claims (6)
- 振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るのに適した上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。 - 振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るのに適した上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記振動膜の最低共振周波数を実測して、この実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。 - 振動膜と、この振動膜と所定間隔をおいて配置された背面電極板と、これら振動膜および背面電極板に電気的に接続された電界効果トランジスタと、を備えてなるエレクトレットコンデンサマイクロホンを製造する方法において、
所定の目標感度を得るのに適した上記背面電極板の目標チャージ電圧を、上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数に応じて予め設定しておき、
上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流および上記振動膜の最低共振周波数を実測して、これら2つの実測値に対応する目標チャージ電圧で上記背面電極板に対する分極処理を行う、ことを特徴とするエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。 - 上記電界効果トランジスタのドレイン飽和電流を複数のランクにランク分けして、これら各ランク毎に上記目標チャージ電圧を設定しておくとともに、
上記電界効果トランジスタを上記ドレイン飽和電流の実測値に応じて上記複数のランクにランク分けしておき、これら各ランク毎に上記目標チャージ電圧を決定する、ことを特徴とする請求項1または3記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。 - 上記各ランクの幅を、上記エレクトレットコンデンサマイクロホンの感度特性への影響度が略一定になるように設定する、ことを特徴とする請求項4記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
- 上記振動膜に対してヒートエージング処理を施した後に、該振動膜の最低共振周波数の実測を行う、ことを特徴とする請求項2〜5いずれか記載のエレクトレットコンデンサマイクロホンの製造方法。
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