JP4108868B2 - 多気筒内燃機関のシリンダヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多気筒内燃機関のシリンダヘッドに関し、特にその内部に形成されるウォータジャケットを通じた冷却構造の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、多気筒内燃機関のシリンダヘッドの冷却構造としては、ウォータジャケットを気筒列方向に形成し、冷却水を該気筒列方向に流すことで、各気筒を直列的に順次冷却する構造と、例えば、実開平5−19542号公報に記載されているように、ウォータジャケットを気筒列に直交する方向に形成し、冷却水をそれら気筒列に対して直交する方向に流すことで、各気筒を並列的に冷却する構造とが知られている。
【0003】
ところで、内燃機関のシリンダヘッドでは、気筒の直上部にあたる吸気ポートと排気ポートとの間の部分、しかも燃焼室に近いその下層部分は、燃焼室での爆発に伴う衝撃や熱負荷を最も受け易く、熱応力や疲労を低減するために、重点的に冷却を施す必要のある主要冷却部となっている。
【0004】
しかし通常、この吸・排気ポート間の部分は断面積が小さく、流路抵抗が高いため、冷却水の流れが淀みやすくなっている。このため、上記いずれの冷却構造によっても、上記主要冷却部の冷却性を充分に確保することは困難であった。
【0005】
そこで従来は、例えば特開平61−175217号公報に記載のシリンダヘッドのように、シリンダヘッドの気筒列方向に延伸され、各気筒の吸・排気ポート間を順次通過するよう配設された第1ウォータジャケットと、その周囲に配設された第2ウォータジャケットとを有し、第1ウォータジャケットから第2ウォータジャケットへと冷却水を循環させるようにした冷却構造も提案されている。こうした冷却構造を採用することで、吸・排気ポート間の狭い空間に強制的且つ優先的に冷却水を流すことができるようになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、シリンダヘッド内に形成されるウォータジャケットを上記第1及び第2ウォータジャケットに分割することで、その冷却構造としても自由度が高くなり、主要となる冷却部に優先的に冷却水を流すことはできる。
【0007】
しかしながら、同冷却構造では、冷却水の全てが各気筒の吸・排気ポート間の狭い空間を順次流れるため、流路抵抗による冷却水の圧力損失が極めて高く、冷却水の流量が大きく制限されてしまう。このため、上記主要冷却部の冷却性だけは確保できたとしても、シリンダヘッド内の冷却水流量を充分に確保することができないため、シリンダヘッド全体としての冷却性は不足してしまう。
【0008】
一方、冷却水の流量を確保すべく、上記第1ウォータジャケットを拡大した場合には、吸・排気ポート間の下層部分の狭い空間だけに冷却水を送り込むことができなくなるため、主要冷却部である同下層部分だけに重点的な冷却を施すことができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、重点的に冷却する必要のある吸気及び排気ポートの間で燃焼室に近い下層部分を中心としてより効率的な冷却を施すことのできる多気筒内燃機関のシリンダヘッドを提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、上下2層に区画形成されたウォータジャケットを備える多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの下層側のウォータジャケットは、各気筒毎に各別に設けられた冷却水の流入口と、それら冷却水の流入口から各々吸気及び排気ポートの間を通って気筒列に対しほぼ直交する方向に延伸された気筒別の専用流路とを備えてなり、前記各専用流路の途中には、それぞれ前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなることをその要旨とするものである。
【0011】
上記構成によれば、冷却水は、各気筒毎に各別に設けられた流入口から各々吸気及び排気ポートの間の下層部を通るように形成された気筒別の専用流路内を流れるようになる。この専用流路は、気筒列に対してほぼ直交する方向に延伸されているため流路長が短く、しかも各気筒毎にそれぞれ設けられて並列となっているため、冷却水の流れに対する流路抵抗が小さく、圧力損失も小さくなる。このため、充分な流量の冷却水が、吸気及び排気ポートの間の下層部に送り込まれるようになる。こうして送り込まれる充分な流量の冷却水によって、燃焼室の直上部に位置し、爆発に伴う衝撃や熱負荷を最も受け易い吸気及び排気ポート間で燃焼室に近い下層部分が効果的に冷却されるようになる。
【0012】
更に、各気筒に並列に冷却水を流しているため、シリンダヘッド全体としても充分な流量の冷却水を確保することができる。このため、上記各ポート間のみならず、シリンダヘッド全体についても効率的に冷却できるようになる。
【0014】
また上記構成によれば、各専用流路にそれぞれ設けられた連通孔の下流側の冷却水の流れが流路抵抗などによって悪化したときにも、これら連通孔を通じて上層側のウォータジャケットへと流出することで、これら連通孔の上流側の冷却水の流れは維持されるようになる。このため、各専用流路内の冷却水の淀みが解消され、その冷却性が高く保持されるようになる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記各連通孔は、前記各専用流路における前記吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されてなることをその要旨とするものである。
【0016】
上記構成によれば、各連通孔が各専用流路の吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されているため、その下流側で冷却水の流れが悪化した場合にも、吸気及び排気ポート間での冷却水の流れが維持されるようになり、重点的な冷却を施す必要のある各ポートの間の部分の冷却性が高く保持されるようになる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、上下2層に区画形成されたウォータジャケットを備えるとともに、各気筒についての一対の吸気ポートと一対の排気ポートとの間に機関部品を収容する収容孔が設けられる多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットは、気筒列方向に延在して形成されてなり、前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの下層側のウォータジャケットは、各気筒毎に各別に設けられた冷却水の流入口と、それら冷却水の流入口からそれぞれ前記一対の吸気ポートと前記一対の排気ポートとの間を通って気筒列に対しほぼ直交する方向に延伸された気筒別の専用流路とを備えてなり、この気筒別の専用流路は、前記収容孔と前記一対の吸気ポートとの間及び前記収容孔と前記一対の排気ポートとの間のうち、前記収容孔と前記一対の排気ポートとの間のみを通過する態様で形成されてなることをその要旨とするものである。
【0018】
上記構成によれば、冷却水は、各気筒毎に各別に設けられた流入口から各々吸気及び排気ポートの間の下層部を通るように形成された気筒別の専用流路内を流れるようになる。この専用流路は、気筒列に対してほぼ直交する方向に延伸されているため流路長が短く、しかも各気筒毎にそれぞれ設けられて並列となっているため、冷却水の流れに対する流路抵抗が小さく、圧力損失も小さくなる。このため、充分な流量の冷却水が、吸気及び排気ポートの間の下層部に送り込まれるようになる。こうして送り込まれる充分な流量の冷却水によって、燃焼室の直上部に位置し、爆発に伴う衝撃や熱負荷を最も受け易い吸気及び排気ポート間で燃焼室に近い下層部分が効果的に冷却されるようになる。更に、各気筒に並列に冷却水を流しているため、シリンダヘッド全体としても充分な流量の冷却水を確保することができる。このため、上記各ポート間のみならず、シリンダヘッド全体についても効率的に冷却できるようになる。更に下層側のウォータジャケットにおいて各気筒に並列に冷却水を流すようにしたことで大量に確保された冷却水が、上層側のウォータジャケットにおいてその気筒列方向に流されるようになる。下層側のウォータジャケットのように格別に冷却しなければならない部位のない上層側のウォータジャケットでは、このように単に気筒列方向に冷却水を流すだけの簡易な流路構成でも、充分な冷却性が得られるようになる。したがって、上層側のウォータジャケットの流路構成を簡易化できるようになり、その設計等も容易となる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記各専用流路の途中には、それぞれ前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなることをその要旨とする。係る構成によれば、各専用流路にそれぞれ設けられた連通孔の下流側の冷却水の流れが流路抵抗などによって悪化したときにも、これら連通孔を通じて上層側のウォータジャケットへと流出することで、これら連通孔の上流側の冷却水の流れは維持されるようになる。このため、各専用流路内の冷却水の淀みが解消され、その冷却性が高く保持されるようになる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記各連通孔は、前記各専用流路における前記吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されてなることをその要旨とする。係る構成によれば、各連通孔が各専用流路の吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されているため、その下流側で冷却水の流れが悪化した場合にも、吸気及び排気ポート間での冷却水の流れが維持されるようになり、重点的な冷却を施す必要のある各ポートの間の部分の冷却性が高く保持されるようになる。
【0019】
また、請求項7に記載の発明は、請求項3〜6のいずれか1項に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記下層側のウォータジャケットは、前記各専用流路の下流部と連通して気筒列方向に延伸された共通流路を更に備えるものであって、前記上層側のウォータジャケットは、前記共通流路の一端側において同共通流路からの冷却水が流入する連通口と、前記共通流路の他端側において冷却水を排出する排出口とを備えてなることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、各気筒毎に各別に設けられ並列に配設された専用流路を通じて各気筒の吸気及び排気ポート間を通過した冷却水は、これら専用流路の下流部と連通して気筒列方向に延伸された共通流路にてそれぞれ合流し、同共通流路の一端側に形成された連絡口から上層側に形成されたウォータジャケットへと流入するようになる。このため、上層側のウォータジャケットには、下層側のウォータジャケットにおいて各気筒毎に各別に設けられた各専用流路を流れた冷却水が、一括して流入されるようになる。
【0021】
こうして流入した冷却水は、上層側のウォータジャケットの一端側に設けられた連絡口から他端側に設けられた排出口へと、気筒列方向に一貫して流れるようになる。このため、各気筒に対して万遍なく冷却水が流されるようになり、シリンダヘッド全体を偏りなく冷却することができるようになる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、前記共通流路の途中には、前記上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなることをその要旨とするものである。
【0023】
上記構成によれば、共通流路に設けられた連通孔の下流側の冷却水の流れが流路抵抗などによって悪化したときにも、これら連通孔を通じて上層側のウォータジャケットへと流出することで、これら連通孔の上流側の冷却水の流れは維持されるようになる。このため、共通流路内の冷却水の淀みが解消されるようになり、冷却性が高く保持されるようになる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の多気筒内燃機関のシリンダヘッドを具体化した一実施の形態について説明する。本実施の形態のシリンダヘッドは、直列4気筒のディーゼル機関に採用されるもので、アルミニウム合金の鋳造によって形成されている。
【0025】
図1は、本実施の形態のシリンダヘッドの正面断面構造を示している。
同図1に示すように、シリンダヘッド10の内部には、上下2層に区画形成されたウォータジャケット14,15が形成されている。これらの上層側及び下層側ウォータジャケット14,15には、ラジエタ(図示略)で放熱された後、ウォータポンプ(図示略)にて加圧吐出された冷却水が、シリンダブロック内に形成された冷却水通路を通じて供給される。そして冷却水は、これらのウォータジャケット14,15を通過してシリンダヘッド10を冷却した後、再びラジエタへと戻され、循環されている。
【0026】
図2は、図1のII−II線に沿った断面構造、すなわち同シリンダヘッド10の下層側ウォータジャケット15における平面断面構造を示している。
このシリンダヘッド10の下方に設けられたシリンダブロック(図示略)には、同シリンダヘッド10の前面側(同図2に矢印FRONTにて示す側)から順に、第1気筒#1から第4気筒#4までの4つの気筒が直列的に配設されている。そして、シリンダヘッド10には、同図2に示すように、これら各気筒#1〜#4に対応して、それぞれ一対の排気ポート11a,11b及び吸気ポート12a,12bが形成されており、これら各ポート11,12の中央には、インジェクタを収容するための収容孔13が形成されている。
【0027】
このシリンダヘッド10の下層側ウォータジャケット15には、各気筒#1〜#4毎に各別に冷却水を流入するための流入口20が設けられている。そしてこれら流入口20からは、それぞれ対応する気筒#1〜#4の上記各ポート11,12の間やその周囲を通り、気筒列にほぼ直交する方向、すなわちシリンダヘッド10のほぼ横方向に延伸された気筒別の専用流路(横流れ流路)21が各気筒#1〜#4毎にそれぞれ形成されている。
【0028】
また、下層側ウォータジャケット15には、これら横流れ流路21の下流部を連通して気筒列方向、すなわちシリンダヘッド10の縦方向に延伸された共通流路(縦流れ流路)22が形成されている。この縦流れ流路22の一端部には、上層側ウォータジャケット14と連通する連通口25が形成されている。
【0029】
そして、この下層側ウォータジャケット15では、冷却水は各流入口20から流入し、各横流れ流路21を通じて各ポート11,12の間及びその周囲を流過する。これら横流れ流路21を各気筒#1〜#4に並列して流れた冷却水は、縦流れ流路22にて合流される。その後、冷却水は、この縦流れ流路22の第3気筒#3、第4気筒#4付近では、シリンダヘッド10の前方から後方へと縦方向に流れ、同流路22の後端側に形成された連通口25を通じて上層側ウォータジャケット14へと流出する。
【0030】
また、下層側ウォータジャケット15の前方側の端部にも上層ウォータジャケット14と連通する連通口30が形成されている。したがって、縦流れ流路22の第1気筒#1、第2気筒#2付近では冷却水がシリンダヘッド10の後方から前方へと縦方向に流れ、連通口30を通じて上層側ウォータジャケット14へと流出することで、下層側ウォータジャケット15のシリンダヘッド10の前方側に送られた冷却水が淀むことなく流されるようになる。
【0031】
さらに、連通口25と連通口30との開口面積の比率を変更することによって、連通口25を通じて上層側ウォータジャケット14へ流出する冷却水量と、連通口30を通じて上層側ウォータジャケット14へ流出する冷却水量との割合を自在に変更することが可能である。
【0032】
引き続き、この下層側ウォータジャケット15について、図3に基づき更に詳細に説明する。
図3は、下層側ウォータジャケット15の第4気筒#4部分の拡大断面構造を示している。
【0033】
各気筒#1〜#4の横流れ流路21は、シリンダヘッド10の後方側の吸気ポート12aとシリンダヘッド10の側壁とを連結する隔壁29によってそれぞれ区画されいる。また、第4気筒#4にあっては、同図3に示すように、隔壁29aによって横流れ流路21と上記連通口25とが区画されている。これらの隔壁29(29a)によって流入口20から流入した冷却水は、対応する気筒#1〜#4の横流れ流路21に全て送られるようになる。このため、各気筒#1〜#4には、各々独立して並列に冷却水が流されるようになる。なお、これらの隔壁29(29a)によって、シリンダヘッド10の剛性も向上されている。
【0034】
一方、流入口20からシリンダヘッド10のほぼ横方向に延伸された横流れ流路21は、二股に分岐されている。その一方の流路21aは、シリンダヘッド10の後方側の排気ポート11aの周囲を通った後、両排気ポート11a,11bと両吸気ポート12a,12b及び収容孔13との間を通過するよう形成されている。また、もう一方の流路21bは、シリンダヘッド10前方側の排気ポート11bの側方を通過した後、流路21aと合流するよう形成されている。
【0035】
これら分岐した各流路21a、21bのうち、流路21bは流路21aよりも断面積が小さくなるよう形成されている。このため、冷却要求の高い各ポート11,12の間を通過する流路21aには、より多くの冷却水が流されるようになっている。
【0036】
そして横流れ流路21は、各流路21a、21bが合流した後、シリンダヘッド10の前方側の吸気ポート12bの側方を通過し、上記縦流れ流路22に合流するよう形成されている。先述したように、この縦流れ流路22において冷却水は、シリンダヘッド10の前方から後方へと流れ、同縦流れ流路22のシリンダヘッド10の後方側端部に形成された連通口25と通じて上層側ウォータジャケット14へと送られる。
【0037】
このように横流れ流路21は、シリンダヘッド10の横方向に延伸されているため流路長が短く、しかも各気筒#1〜#4毎にそれぞれ設けられて並列となっているため、冷却水の流れに対する流路抵抗が小さく、圧力損失も小さくなる。このため、各気筒#1〜#4の排気ポート11及び吸気ポート12の間に、充分な流量の冷却水を流すことができるようになり、燃焼室の直上部に位置し、爆発に伴う衝撃や熱負荷を最も受け易い各ポート11,12の間の部分を効果的に冷却できるようになる。また、各気筒#1〜#4に並列して冷却水を流しているため、シリンダヘッド10全体としても大量の冷却水を流すことができるようになる。
【0038】
また、このシリンダヘッド10には、その下端から延伸され、下層側ウォータジャケット15内に開口する2つの補助流入口23,24が各気筒#1〜#4毎にそれぞれ設けられている。そしてこれら補助流入口23,24からも、下層側のウォータジャケット15内に冷却水が流入されている。
【0039】
これら補助流入口のうち、補助流入口23は、両排気ポート11a,11bと両吸気ポート12a,12b及び収容孔13との間の部分、すなわち上記流路21aの途中に開口している。一方、補助流入口24は、上記縦流れ流路22内において両吸気ポート12a,12bの間の部分に開口している。このため、冷却要求の高い上記各部分には、これら補助流入口23,24を通じて更に多くの冷却水が送り込まれるようになる。
【0040】
さらに、このシリンダヘッド10では、上記横流れ流路21の途中及び縦流れ流路22の途中に、上層側ウォータジャケット14と連通する連通孔27及び連通孔28がそれぞれ形成されている。これらの連通孔のうち、横流れ流路21の連通孔27は、流路21aと流路21bとの合流部付近に形成されている。一方、縦流れ流路22の連通孔28は、横流れ流路21との合流部付近に形成されている。
【0041】
これら各連通孔27,28の下流側で、流路抵抗などによって冷却水の流れが悪化した場合、同連通孔27,28を通じて上層側ウォータジャケット14へと冷却水が流出するようになる。このため、これらの連通孔27,28の下流側で流れが悪化したとしても、上流側での冷却水の流れは維持され、冷却性が確保されるようになる。特に、横流れ流路21にあっては、連通孔27によって流路21aの冷却水の流れが維持され、冷却要求の高い各ポート11,12間の冷却性が確保される。
【0042】
なお、本実施の形態のシリンダヘッド10において、これら各連通孔27,28は、シリンダヘッド10の鋳造時に同時形成されている。以下、これら各連通孔27,28の加工手順について図4に基づき説明する。
【0043】
図4は、シリンダヘッド10を鋳造するための鋳型の側部断面構造を模式的に示している。
同図4に示すように、鋳型40の内部には、上層側ウォータジャケット14を形成するための中子41と、下層側ウォータジャケット15を形成するための中子42とが配設されている。上層側ウォータジャケット用の中子41は、その前後の端部において、上記連通口25及び連通口30を形成すべく下方に延伸された脚部45,46によって、下層側ウォータジャケット用の中子42の上方に支持されている。
【0044】
しかしながら、単に両端部において上層側ウォータジャケット用の中子42を支持した場合、その中間部分が自重によって下方にたわむように変形するおそれがある。このため、脚部45,46の中間部分にも中子42を支持する脚部を設ける必要がある。
【0045】
本実施の形態のシリンダヘッド10では、上層側ウォータジャケット用の中子41の下面から上記中間部分を支持する支持部43を下方に延伸するよう形成し、下層側ウォータジャケット用の中子42の上面に形成された穴44内に嵌入し、固定するようにしている。そしてこの支持部43によって、鋳造後に上層側ウォータジャケット14と下層側ウォータジャケット15との間に形成される孔を、上記連通孔27,28として流用するようにしている。
【0046】
次に、上層側ウォータジャケット14について、図5に基づき説明する。
図5は、図1のV−V線に沿った断面構造、すなわち上層側ウォータジャケット14の平面断面構造を示している。
【0047】
先述のように、下層側ウォータジャケット14において、横流れ流路21を通じて第3気筒#3、第4気筒#4を並列して流された冷却水は、縦流れ流路22で合流される。そして冷却水は、同縦流れ流路22をシリンダヘッド10の前方から後方へと流れ、同流路22のシリンダヘッド10の後方側の端部に形成された連通口25を通じて上層側ウォータジャケット14へと流出する。
【0048】
一方、上流側ウォータジャケット14は、同図5に示すように、上記冷却水が流入される連通口25からシリンダヘッド10の前方へと、気筒列方向、すなわちシリンダヘッド10の縦方向に延伸されている。また、この上層側ウォータジャケット14のシリンダヘッド10の前方側の端部の側方には、冷却水をシリンダヘッド10の外部へと排出し、上記ラジエタへと送るための排出口26が形成されている。
【0049】
そして上層側ウォータジャケット14において、冷却水は、シリンダヘッド10の後方側の端部に設けられた連通口25から前方側の端部に設けられた排出口26へと一貫して流される。連通口25からは、第3気筒#3、第4気筒#4の横流れ流路21を流過し、縦流れ流路22にて合流された大量の冷却水が一括して流入するため、上層側ウォータジャケット14には大量の冷却水が流されるようになる。さらに、連通口25の開口面積を連通口30の開口面積よりも大きく設定すれば、連通口25から、より大量の冷却水が一括して流入するようになる。このため、上層側ウォータジャケット14では、大量の冷却水が各気筒#1〜#4を万遍なく均等に流過するようになる。
【0050】
なお、このように各気筒#1〜#4に対して均等に大量の冷却水を流すようにしただけでも、下層側ウォータジャケット15の各ポート11,12間のような冷却要求の高い部分のない上層側ウォータジャケット14では、充分な冷却性を確保することができるようになる。
【0051】
また、上層側ウォータジャケット14には、下層側ウォータジャケット15の横流れ流路21及び縦流れ流路22の途中に設けられた連通孔27,28や、シリンダヘッド10の前方側の端部に設けられた連通口30からも冷却水が流入されている。これらの連通孔27,28及び連通口30から流入する冷却水によっても、上層側ウォータジャケット14全体に偏りなく冷却水が送られるようになっている。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態のシリンダヘッドによれば、以下に記載する効果を得ることができるようになる。
(1)気筒#1〜#4毎に流入口20を設け、同流入口20から排気ポート11及び吸気ポート12の間を通過し、シリンダヘッド10の横方向に延伸された横流れ流路21を形成したことで、特に重点的に冷却を施す必要のある上記各ポート11,12の間で燃焼室に近い下層部分に対して、確実且つ効率的に充分な流量の冷却水を流すことができるようになる。
【0053】
(2)また、この横流れ流路21によって各ポート11,12の間に冷却水を供給する構成としたことで、流路長を短縮でき、しかも各気筒#1〜#4に並列して、各々別個に冷却水を流すことができるため、流路抵抗を小さくすることができ、主要冷却部に大量の冷却水を流すことができるようになる。
【0054】
(3)各気筒#1〜#4の横流れ流路21を隔壁29(29a)によって区画したことで、各流入口20から流入する冷却水を全て各ポート11,12間やその周囲を流過させることができ、主要冷却部を更に効率的に冷却することができるようになる。
【0055】
(4)また、隔壁29(29a)によって、シリンダヘッド10の剛性の向上も図られるようにもなる。
(5)横流れ流路21において、流路21bの断面が流路21aの断面に比して狭くなるようにしたことで、流路21aが通る各ポート11,12間により多くの冷却水を流すことができるようになる。
【0056】
(6)横流れ流路21を通じて各気筒#1〜#4に並列して冷却水を流すようにしたことで、シリンダヘッド10全体としても大量の冷却水が流通されるようになる。
【0057】
(7)更に、補助流入口23,24を通じて各ポート11,12間などの重点的に冷却を施す必要のある部分に直接冷却水を供給するようにしたことで、これらの部分を更に効果的に冷却することができるようになる。
【0058】
(8)横流れ流路21及び縦流れ流路22の途中に上層側ウォータジャケット14と連通する連通孔27,28を設けたことで、同連通孔27,28の下流側の冷却水の流れが悪化した場合にも、その上流側の流れは維持できるようになり、冷却性を保持できるようになる。特に、横流れ流路21にあっては、各ポート11,12の間を通る流路21aの下流側にこの連通孔27が設けられているため、冷却要求の高い各ポート11,12間の冷却水の流れを維持し、その冷却性を保持できるようになる。
【0059】
(9)シリンダヘッド10の鋳造時に上層側ウォータジャケット用の中子41の中間部分を支持するための支持部43によって、鋳造後に形成される孔を上記連通孔27,28として流用することで、容易且つ効率的にこれら連通孔27,28を形成することができるようになる。
【0060】
(10)各気筒#1〜#4の横流れ流路21を流過した冷却水を縦流れ流路22にて合流させ、一括して上層側ウォータジャケット14に送るようにしたことで、上層側ウォータジャケット14には、大量の冷却水が万遍なく供給されるようになる。
【0061】
(11)上層側ウォータジャケット14をシリンダヘッド10の縦方向に延在するよう形成し、その一端に設けられた連通口25から流入した冷却水が、他端に設けられた排出口26へと流れるようにしたことで、大量の冷却水が各気筒#1〜#4を万遍なく均等に流過するようにすることができるようになる。
【0062】
(12)大量の冷却水が上層側ウォータジャケット14内を万遍なく流過するようにしたことで、簡易な構成であっても充分な冷却性を確保することができるようになる。
【0063】
なお、以上説明した実施の形態のシリンダヘッドは、以下のように変更することもできる。
・上記実施の形態では、鋳造時に連通孔27,28を同時形成するようにしているが、これら連通孔27,28を機械加工など別の加工方法で形成するようにしてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(8)及び(10)〜(12)に記載した効果を得ることはできる。
【0064】
・各連通孔27,28を設ける位置や数を変更してもよい。こうした場合にも、連通孔を設けた部分の上流側の冷却水の流れを維持し、その冷却性を保持することはできる。
【0065】
・また、連通孔27,28を全く設けない構成としてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(7)及び(10)〜(12)に記載した効果を得ることはできる。
【0066】
・また、補助流入口23,24の一方、若しくはその両方を設けない構成としてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(6)及び(8)〜(12)に記載した効果を得ることはできる。
【0067】
・上記実施の形態では、横流れ流路21が流路21aと流路21bとに途中分岐する構成となっていたが、各気筒毎に形成された流入口からそれぞれ対応する気筒の各ポートの間を通り、シリンダヘッドの横方向に延伸されていれば、横流れ流路の形状や位置、分岐の仕方などを任意に変更してもよい。要は、下層側ウォータジャケットに、気筒毎に形成された流入口から延伸され、吸気及び排気ポートの間を通る流路が、各気筒に並列して形成されてさえいれば、充分な冷却水の流量を確保しながらも、上記各ポートの間を確実且つ効率的に冷却することができるようになる。
【0068】
・また、上記実施の形態では、各横流れ流路21を流過した冷却水は縦流れ流路22にて合流され、その後一括して上層側ウォータジャケット14に送られる構成となっていたが、縦流れ流路22を廃して、各横流れ流路21からそれぞれ別々に上層側ウォータジャケット14へと冷却水を送るようにしてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(6)に記載した効果は得ることができる。
【0069】
・また、上記実施の形態では、上層側ウォータジャケット14において冷却水をシリンダヘッド10の縦方向に流す構成としたが、同上層側ウォータジャケット14において各気筒#1〜#4に並列してシリンダヘッド10の横方向に冷却水を流す構成としてもよい。こうした場合にも、上記(1)〜(6)に記載した効果は得ることができる。
【0070】
・なお、上記実施の形態では、直列4気筒のディーゼル機関に本発明に係るシリンダヘッドを適用した場合について説明したが、本発明のシリンダヘッドの冷却構造は、シリンダヘッド内に上下2層に区画形成されたウォータジャケットを備える多気筒内燃機関であれば、他の気筒配列の内燃機関あるいはガソリン機関などの他の内燃機関についても適用することができる。この場合にも、本実施の形態に準じた効果を得ることはできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシリンダヘッドを具体化した一実施の形態についてその正面断面構造を示す断面図。
【図2】図1のII−II線に沿った断面構造を示す断面図。
【図3】図2の部分拡大図。
【図4】シリンダヘッドの鋳造鋳型の側部断面構造を模式的に示す断面図。
【図5】図1のV−V線に沿った断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
10…シリンダヘッド、11…排気ポート、12…吸気ポート、13…収容孔、14…上層側ウォータジャケット、15…下層側ウォータジャケット、20…流入口、21…横流れ流路、22…縦流れ流路、23,24…補助流入口、25…連通口、26…排出口、27,28…連通孔、29…隔壁、40…鋳型、41,42…中子、43…支持部。
Claims (8)
- 上下2層に区画形成されたウォータジャケットを備える多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの下層側のウォータジャケットは、各気筒毎に各別に設けられた冷却水の流入口と、それら冷却水の流入口から各々吸気及び排気ポートの間を通って気筒列に対しほぼ直交する方向に延伸された気筒別の専用流路とを備えてなり、
前記各専用流路の途中には、それぞれ前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項1に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記各連通孔は、前記各専用流路における前記吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項1又は2に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットは、気筒列方向に延在して形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 上下2層に区画形成されたウォータジャケットを備えるとともに、各気筒についての一対の吸気ポートと一対の排気ポートとの間に機関部品を収容する収容孔が設けられる多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットは、気筒列方向に延在して形成されてなり、
前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの下層側のウォータジャケットは、各気筒毎に各別に設けられた冷却水の流入口と、それら冷却水の流入口からそれぞれ前記一対の吸気ポートと前記一対の排気ポートとの間を通って気筒列に対しほぼ直交する方向に延伸された気筒別の専用流路とを備えてなり、
この気筒別の専用流路は、前記収容孔と前記一対の吸気ポートとの間及び前記収容孔と前記一対の排気ポートとの間のうち、前記収容孔と前記一対の排気ポートとの間のみを通過する態様で形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項4に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記各専用流路の途中には、それぞれ前記上下2層に区画形成されたウォータジャケットのうちの上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項5に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記各連通孔は、前記各専用流路における前記吸気及び排気ポートの間を経た下流側に形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項3〜6に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記下層側のウォータジャケットは、前記各専用流路の下流部と連通して気筒列方向に延伸された共通流路を更に備えるものであって、
前記上層側のウォータジャケットは、前記共通流路の一端側において同共通流路からの冷却水が流入する連通口と、前記共通流路の他端側において冷却水を排出する排出口とを備えてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。 - 請求項7に記載の多気筒内燃機関のシリンダヘッドにおいて、
前記共通流路の途中には、前記上層側のウォータジャケットと連通する連通孔が形成されてなる
ことを特徴とする多気筒内燃機関のシリンダヘッド。
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