JP4108794B2 - ボルト着脱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボルト着脱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
ボルト着脱装置は、例えば一般の大型圧力容器及び原子力発電用圧力容器等に蓋部材を固定するためのボルト・ナットにおいて、ボルトを把握して容器のねじ穴に螺入及び螺出を行なう装置である。従来のこの種の着脱装置として、特開昭62−102928号公報に記載されるものが知られている。これは、適当な経路でボルトの方向を決める手段と、関節連結により前記手段に連結したサーボ制御式重量補正システムと、逆転可能な可変速ねじ込み装置と、最大ねじ込みトルクに相当する離脱トルクに設定したトルクリミッタと、ボルトをつかみ2方向の駆動トルクと軸線方向力とを前記ボルトに作用させることのできる部材と、装置全体を制御するプログラム可能な自動制御装置とからなることを特徴としている。そして、適当な経路でボルトの方向を決める手段は、直角交差運動をするテーブルからなる。
【0003】
しかしながら、このような従来のボルト着脱装置にあつては、次の技術的課題を有している。
すなわち、直角交差運動をするテーブルをそれぞれ個別の機械的又は油圧部材によつて移動させてボルトの方向を決めることになるため、構造が複雑になるのみならず、テーブルの移動制御を精緻に行なうようにした場合であつても、ボルトの螺入作業中にボルトがねじ穴とこじりを生じ、ボルトの回転に要する駆動力が高まり、しばしばボルトの方向を決め直す必要があり、作業性に劣る。
【0004】
ボルトをボルト着脱装置に最高2°の角自由度を許容して取付けてあるため、ボルトの螺入作業開始時にボルトのねじ山とねじ穴のねじ山との噛み合いが不安定になり、回転力を伝達しながら行なうボルトの螺入作業を円滑に行なうことができない。
【0005】
ボルトを昇降させるジャッキの下端にボルトをつかむ部材を駆動させる可逆可変速ねじ込み装置が設けられているため、可逆可変速ねじ込み装置による回転駆動力の反力がジャッキに作用する。このため、ジャッキに高剛性を与えた場合であつても、ジャッキの耐久性が劣ることになる。また、ジャッキは可逆可変ねじ込み装置の自重も負担しているため、ボルト重量補正システムの性能が低下する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、その構成は、次の通りである。
請求項1の発明は、一端部にねじ部42cを有し、他端側に環状溝42aが形成されたボルト42の他端の被係合部42dと回転不可能に係合する係合部(24a)を有する駆動軸20と、
駆動軸20に備えられ、駆動軸20の係合部(24a)をボルト42に回転不可能に係合させた状態で、ボルト42の環状溝42aを把握・離脱が可能な把握・離脱機構3と、
駆動軸20にユニバーサルジョイント機構21を介して接続され、回転駆動機構23によつて正逆に回転駆動されるスプライン軸22と、
駆動軸20に軸受52,53を介して回転自在に支持させたサポートプレート61と、
スプライン軸22を遊挿させて移動装置によつて支持され、移動装置によつて水平方向及び垂直方向に移動されるケーシング9aと、
環状をなしてスプライン軸22の周囲に配置され、球面からなる滑り面を形成し、ケーシング9aに摺動自在に載置される第1球面ワッシャ94bと、
環状をなしてスプライン軸22の周囲に配置され、第1球面ワッシャ94bの滑り面と摺動自在に球面接触する球面からなる滑り面を形成する第2球面ワッシャ94aと、
第2球面ワッシャ94aに固着されるシリンダ取付プレート91と、
サポートプレート61とシリンダ取付プレート91との間を伸縮させる伸縮駆動装置(92)とを有し、
伸縮駆動装置(92)によつてシリンダ取付プレート91に対してサポートプレート61を上昇移動させることにより、把握・離脱機構3によつて把握されたボルト42の重量を軸受52,53並びに第1球面ワッシャ94b及び第2球面ワッシャ94aを介してケーシング9aに支持可能であると共に、
伸縮駆動装置(92)によつてシリンダ取付プレート91に対してサポートプレート61を下降移動させてシリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aを浮き上がらせることにより、第1球面ワッシャ94bが、ケーシング9a上を摺動し、かつ、第2球面ワッシャ94aに対して摺動し、駆動軸20、把握・離脱機構3、サポートプレート61、伸縮駆動装置(92)、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aが調芯可能であることを特徴とするボルト着脱装置である。
請求項2は、外周面がテーパ部98aを形成する環状のアクチュエータ部材98と、アクチュエータ部材98とケーシング9aとの間に設けられ、アクチュエータ部材98を昇降駆動するアクチュエータ駆動装置(97)とを有し、
アクチュエータ駆動装置(97)によつてアクチュエータ部材98を駆動してシリンダ取付プレート91の開口部91aにテーパ部98aを係合させて、シリンダ取付プレート91及び把握・離脱機構3をボルト着脱装置の中心に矯正調芯可能であることを特徴とする請求項1のボルト着脱装置である。
請求項3は、サポートプレート61とシリンダ取付プレート91との間の距離を測定する測長器93を備えることを特徴とする請求項1又は2のボルト着脱装置である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1〜図8は、本発明に係るボルト着脱装置の1実施の形態を示す。図中において符号1はボルト着脱装置を示し、ボルト着脱装置1は、図8に示すように例えば圧力容器40の上部の蓋部材41を固着するボルト・ナット42,43のボルト42を着脱するために用いられる。このボルト42はスタッドボルトであり、圧力容器40のフランジ部40aに周方向の所定間隔で形成したねじ穴40bに下端部のねじ部42cを螺合させて多数個が植立され、蓋部材41のフランジ部41aに形成した通孔にそれぞれ挿通され、ナット43が螺着される。44は座金である。このボルト42のフランジ部41aから上方に突出する軸部には、下端部にナット43が螺合するねじ部42bが形成され、上端側の小径部に、ねじ溝又は平行をなす環状溝42aが多段に形成され、上端部には円形以外の異形断面を有する被係合部42d(通常は六角部)が形成されている。
【0008】
ボルト着脱装置1は、正面図を示す図1から分かるように回転機構部2、ボルト42の把握・離脱機構3及び回転継手部5を備えると共に、側面図を示す図2から分かるように重量補正シリンダ部6、調芯機構部8及びセンタリング部9を有している。
【0009】
回転機構部2は、図1,図3に示すように下端部にソケット24を固着すると共に、下向きに突出するボルトガイド部20aを有する駆動軸20と、駆動軸20の上端部に接続されるユニバーサルジョイント機構21と、ユニバーサルジョイント機構21の上端部に接続されるスプライン軸22と、スプライン軸22を正逆に回転駆動する回転駆動機構23とを有する。
【0010】
ソケット24は、図3に示すように下端にフランジ部を有し、フランジ部の下面には、ボルト42の被係合部42dに係合する円形以外の異形断面の穴24a(通常は六角形断面穴)が穿たれており、フランジ部の上面には、すべりキー27が適宜の間隔で固着されている。すべりキー27が固着されていない箇所のフランジ部の上面には、スペーサ28を配置し、スペーサ28の上面に押えフランジ29を配置し、これら28,29をボルト100によつてソケット24のフランジ部に固着させてある。
【0011】
回転駆動機構23は、図4に示すように正逆に回転駆動される回転駆動源となるサーボモータ23a、減速機23b、軸継手23c、ピニオン軸23d、ピニオン23e、ギヤー23f及びスプラインナット23gが順次に配置され、サーボモータ23aの回転運動が、減速機23bによつて減速されて軸継手23cに伝わり、ピニオン軸23dを回転駆動するので、ピニオン軸23dに固着したピニオン23eが一体回転する。一方、ピニオン23eに噛合するギヤー23fは、スプラインナット23gに固着されているので、ピニオン23eによつてギヤー23f及びスプラインナット23gが回転駆動される。そして、スプラインナット23gにはスプライン軸22が挿入係合されているので、スプライン軸22が昇降自在な状態で回転駆動される。サーボモータ23aは、回転トルク及び回転速度を任意に設定することができる。
【0012】
なお、ピニオン23e及びギヤー23fは、ギヤーボックス23hにそれぞれ一対の軸受23i,23jによつて回転自在に支持され、ギヤーボックス23hがセンタリング部9の後記するケーシング9aに固着され、ケーシング9aが、図1に示すように取付フレーム7に固着されている。この取付フレーム7及びケーシング9aは、図外の移動装置によつて水平方向及び垂直方向の一体的移動が可能である。また、サーボモータ23a、減速機23b、軸継手23cは、軸継手23cのカバー23kをボルト23mによつてギヤーボックス23hに固着することにより、一体化されている。
【0013】
サーボモータ23aは、その回転方向、回転速度及び回転トルクを図外の制御装置によつて制御することにより、ボルト42の円滑な植え込み(締め付け)及び抜取りを可能とする。また、サーボモータ23aの出力トルクを図外の表示装置に表示してモニターすることにより、異常な回転トルクを検出し、サーボモータ23aを停止させるなどの処置を採ることができるようになつている。
【0014】
ユニバーサルジョイント機構21は、図1に示すように一対のユニバーサルジョイント21a,21bを直列配置して構成される。スプライン軸22の下端にユニバーサルジョイント機構21を介して駆動軸20を連結したことにより、取付フレーム7に取付けられた回転駆動機構23、スプライン軸22等に対するボルト42の偏心や傾きが吸収され、回転駆動機構23の回転駆動力を駆動軸20及びソケット24、ひいてはボルト42に円滑に伝えることができる。ボルト42の被係合部42dにソケット24の穴24aからなる係合部が相対回転不可能に係合することにより、回転力がボルト42に確実に伝達される。駆動軸20の下端の突起20aは、ボルト42の上端面の孔42eと整合することにより、ソケット24とボルト42の噛み合いを補助する。
【0015】
ボルト42の把握・離脱機構3は、円筒部材を周方向に複数個(本例では3個)に分割した形状のスプリットカップリング30を有し、複数個のスプリットカップリング30が周方向に所定間隔で円筒状をなすように配置されている。各スプリットカップリング30の内周面は、中心軸線を上下方向とする円筒面を形成し、図3に示すように上下方向の中間部に係合部30aが形成されている。この各係合部30aは、ボルト42の環状溝42aに適合するねじ溝又は平行をなす環状突起をなし、係合部30aが形成されていない箇所のスプリットカップリング30の内周面は、係合部30aがボルト42の環状溝42aに係合した状態で、ボルト42の環状溝42aを仕切る山の頂部、つまりボルト42の環状溝42aを形成した箇所の外周面に密着するようになつている。
【0016】
しかして、後記する縮径手段15によつてスプリットカップリング30を縮径させて、スプリットカップリング30の係合部30aをボルト42の環状溝42aに係合把握させた状態で、係合部30aが形成されていない箇所のスプリットカップリング30の内周面がボルト42の環状溝42aを形成した箇所の外周面に密着するので、ボルト42の中心軸線が駆動軸20の中心軸線に合致する。但し、複数条の係合部30aのみをボルト42の環状溝42aにそれぞれ係合把握させ、係合部30aが形成されていない箇所のスプリットカップリング30の内周面をボルト42の環状溝42aを形成した箇所の外周面から離反させた状態で、ボルト42の中心軸線を駆動軸20の中心軸線と合致させることも可能である。
【0017】
なお、本例のスプリットカップリング30は、図3の右半部に示すようにその内周面の上端部をソケット24の外周面に密着させることによつても、ボルト42の中心軸線を駆動軸20の中心軸線と合致させるようになつている。また、スプリットカップリング30の内周は、ボルト42の環状溝42aが形成された箇所の中心軸線方向の全長と相対し、係合部30aは、ボルト42の環状溝42aに噛み合う円弧状の山として複数個設けられている。このボルト着脱装置1のスプリットカップリング30は、ボルト42の重量を支えるだけであるため、係合部30aがボルト42の多数の環状溝42aの全てに噛み合う必要はなく、噛み合いは数山あれば十分である。
【0018】
各スプリットカップリング30の上端部には、スライドブロック26が固着され、スライドブロック26が、ソケット24のフランジ部のすべりキー27と押えフランジ29との間の空隙に摺動自在に配置されている。スライドブロック26がスライドするための空間は、ソケット24と押えフランジ29の間のスペーサ28により適正な寸法が確保されている。しかして、円筒状をなすように配置された複数個のスプリットカップリング30の拡径及び縮径動作は、スライドブロック26により案内される。
【0019】
スプリットカップリング30の下端部には、ガイドプレート39が固着され、ガイドプレート39が、スプリットカップリング30にボルト42が挿入される際の案内になると共に、ガイドプレート39の厚さをボルト42の環状溝42aの1ピッチ分よりも厚くすることにより、ボルト42とスプリットカップリング30の嵌め合いが不十分、つまりボルト42頂部上面とソケット24の穴24aの底面に空間がある状態でのボルト42把握が防止されるようになつている。
【0020】
また、周方向に隣接するスプリットカップリング30の間に弾性体であるばね18を圧縮させて介装し、ばね18によつて各スプリットカップリング30を放射方向に移動させて拡径させるように常時付勢している。すなわち、隣接するスプリットカップリング30の対向面には、図6に示すように凹部30dが対向させて形成され、この対をなす凹部30dに、ばね18の両端部が収容されている。19はガイドロッドであり、その一端部が一方の凹部30dの底部に圧入固着され、その他端部が他方の凹部30dに進退自在に挿入されている。ばね18は、ガイドロッド19に外装され、その一端部がガイドロッド19のフランジ部に着座し、その他端部が凹部30dの環状段面に着座し、隣接するスプリットカップリング30を離反させるように機能する。このようなばね18及びガイドロッド19を有する凹部30dは、同一水平面に位置させて、かつ、図3に示すように中心軸線方向の2箇所に配置してある。このばね18が、後記する縮径手段15を解除させた状態で、スプリットカップリング30を拡径させる拡径手段16を構成している。
【0021】
ロッキングリング31は、円筒状をなし、内周面に、環状の凹部31a及び凸部31bが傾斜面31cを介して交互に形成されている。この凹部31a、凸部31b及び傾斜面31cは、スプリットカップリング30の各凹部30f、各凸部30g及び各傾斜面30hとほぼ適合している。ロッキングリング31の上端部は、ロッキングリング昇降装置33に連結されている。
【0022】
ロッキングリング昇降装置33は、ロッキングリング31と回転継手部5との間に装備され、複動式のシリンダ装置によつて構成されている。すなわち、ロッキングリング昇降装置33は、ピストン35a及び筒状部35eを有し、駆動軸20に固着させたピストン部材35と、ピストン部材35のピストン35aの上下両側に配置され、ピストン部材35の筒状部35eを摺動自在な第1,第2シリンダエンド35b,35cと、ピストン部材35のピストン35aに対して摺動自在に配置され、両シリンダエンド35b,35cの外周部を気密に連結する円筒状のシリンダ部材35dとを有し、ピストン35aの上下に第1圧力室35f及び第2圧力室35gを区画している。ピストン部材35が駆動軸20に固着されているので、把握・離脱機構3のロッキングリング昇降装置33は、駆動軸20と共に回転する。なお、後記するスリーブ25及び筒状部35eに形成した中心軸線方向の流路56,57が、第1圧力室35f及び第2圧力室35gに個別に連通している。
【0023】
しかして、第1圧力室35fに圧力空気を供給し、第2圧力室35gをドレインすることにより、図3の左半部に示すように両シリンダエンド35b,35c及びシリンダ部材35dが上昇し、ロッキングリング31が上昇駆動される。これにより、ロッキングリング31の凹部31a、凸部31b及び傾斜面31cが、各スプリットカップリング30の凹部30f、凸部30g及び傾斜面30hと合致するようになつている。そして、ばね18によつて付勢されるスプリットカップリング30が拡径し、各スプリットカップリング30の外周面がロッキングリング31の内周面にほぼ全面で密着する。その際、スプリットカップリング30の係合部30aとボルト42上部の環状溝42aとが係合して得られるボルト42の把握が離脱される。
【0024】
一方、第2圧力室35gに圧力空気を供給し、第1圧力室35fをドレインすることにより、図3の右半部に示すように両シリンダエンド35b,35c及びシリンダ部材35dが下降し、ロッキングリング31が下降駆動される。これにより、ロッキングリング31の傾斜面31cが各スプリットカップリング30の傾斜面30hを押圧しながら移動し、凸部31bがスプリットカップリング30の各凸部30gに合致し、ロッキングリング31の凹部31aがスプリットカップリング30の各凹部30fに合致するので、スプリットカップリング30が縮径する。このスプリットカップリング30の縮径により、スプリットカップリング30の係合部30aとボルト42上部の環状溝42aとが係合して、ボルト42の環状溝42aが把握される。このロッキングリング31の凹部31a、凸部31b及び凹部31aと凸部31bとを接続する傾斜面31c並びに各スプリットカップリング30の凹部30f、凸部30g及び凹部30fと凸部30gとを接続する傾斜面30hが、スプリットカップリング30の縮径手段15を構成している。
【0025】
スプリットカップリング30の係合部30aとボルト42上部の環状溝42aとが係合して、ボルト42の環状溝42aが把握された状態でのボルト42の重量は、スプリットカップリング30からスライドブロック26、すべりキー27、ソケット24、駆動軸20、固定ナット38、スリーブ25、軸受52,53、後記する回転継手ケース5a等を介してサポートプレート61に伝わる。サポートプレート61は、後記するエアシリンダ装置92により支えられる。
【0026】
回転継手部5は、駆動軸20と共に回転するロッキングリング昇降装置33の第1圧力室35f及び第2圧力室35gに圧力エアを供給すると共に、ボルト42の重量を非回転のエアシリンダ装置92に伝える機能を有している。
【0027】
回転継手部5は、図3に示すようにピストン部材35の筒状部35eの上端に接続させて駆動軸20に固着したスリーブ25と、スリーブ25の外周に軸受52,53を介して回転自在に支持させた回転継手ケース5aとを有し、回転継手ケース5aの内周に形成した環状流路54,55が、スリーブ25及び筒状部35eの中心軸線方向の流路56,57に個別に接続している。環状流路54,55は、それぞれエア出入口58,59に連通し、各エア出入口58,59は、図外のエア供給源に切換バルブを介して接続している。上側の軸受52は、内輪がスリーブ25に圧入固着された状態で座金51とスリーブ25の段面との間に挟着され、外輪が回転継手ケース5aに圧入固着されている。軸受53は、内輪がスリーブ25に圧入固着され、外輪が回転継手ケース5aに圧入固着されている。なお、スリーブ25は、図3に示すように駆動軸20に螺合させた固定ナット38を座金51を介して締め付けることにより、ピストン部材35の筒状部35eの上端に圧着されている。
【0028】
重量補正シリンダ部6は、図2に示すように回転継手ケース5aに固着したサポートプレート61と、シリンダ取付プレート91と、両プレート61,91の間を伸縮駆動する伸縮駆動装置である2本の複動式のエアシリンダ装置92とを有する。エアシリンダ装置92は、後記するケーシング9aから突出する箇所のシリンダ取付プレート91に固着したシリンダ92cと、シリンダ92cに摺動自在に嵌合するピストン92eと、サポートプレート61とピストン92eとを連結固着するロッド92dとを有し、シリンダ92cの上端部に第1エア出入口92iが形成され、下端部に第2エア出入口92jが形成されている。92aはロッドカバーであり、ピストン92e及びロッド92dが横荷重に耐えられるようロッドカバー92aを長くし、2個の軸受ブッシュ92g,92hの取付け間隔を大きくしてある。
【0029】
なお、ピストン92eの上下両側に区画される圧力室の圧力を同じに設定した場合、ロッド92dが固着された一側のピストン92eの圧力作用面積が他側のピストン92eの圧力作用面積よりも小さいため、シリンダ92c及びロッドカバー92aに固定されているシリンダ取付プレート91が浮き上がる。
【0030】
このような重量補正シリンダ部6は、ボルト42の植え込み及び抜取りに際してボルト42と圧力容器40のねじ穴40bのねじ山の接触により生じる回転抵抗を低減させると共に、ねじ山の焼付きや損傷を防止する目的で装備される。特に、植え込み開始直前においては先端の1山目の局部のねじ山同士が接触するため、大型で大重量のボルト42ではねじ山の損傷が生じ易い。本ボルト着脱装置1では、2本のエアシリンダ装置92を機械的に同期させて駆動することにより、植え込み及び抜取り運転中のボルト42、ナット43、駆動軸20及び把握・離脱機構3等の重量を補正する。エアシリンダ装置92のストロークは、ボルト42の植え込み長さよりも大きく設定してある。
【0031】
また、サポートプレート61とシリンダ取付プレート91との間には、測長器93(例えばリニアポテンショメータ、ロータリーエンコーダ等)を取付け、エアシリンダ装置92のロッド92dの移動量(ボルト42の上下移動量)を直線的に検出できるようになつている。
【0032】
調芯機構部8は、図2,図5に示すようにユニバーサルジョイント機構21の上下両側間、具体的には、サポートプレート61にエアシリンダ装置92を介して取付けられるシリンダ取付プレート91と、ギヤーボックス23hに固着されるケーシング9aとの間に設けられる。
【0033】
すなわち、ギヤーボックス23hには、ガイドバーブラケット80によつて上面を閉塞させた箱状のケーシング9aが固着されている。ケーシング9aの開口部9a1 の周囲の内底面の滑り面には、第1球面ワッシャ94bが摺動自在に配置されている。第1球面ワッシャ94bは、環状をなし、外周面が上方に向けて次第に縮径する球面からなる滑り面を形成している。一方、シリンダ取付プレート91の中央の開口部91aの周囲下面には、第2球面ワッシャ94aが図外のボルトによつて固着されている。第2球面ワッシャ94aは、環状をなし、内周面が下方に向けて次第に拡径する球面からなる滑り面を形成し、第1球面ワッシャ94bと球面接触するようになつている。下端部にユニバーサルジョイント機構21を備えるスプライン軸22は、ケーシング9aの開口部9a1 、第1球面ワッシャ94b、第2球面ワッシャ94a、シリンダ取付プレート91の開口部91a、後記するアクチュエータ部材98及びガイドバーブラケット80の中央の開口部80aを遊挿させて配置されている。
【0034】
しかして、エアシリンダ装置92が取付けられているシリンダ取付プレート91は、両球面ワッシャ94a,94bを介してケーシング9aに支持され、ケーシング9aは、図1に示すように取付フレーム7にボルト7aで固定されている。ピニオン23e及びギヤー23fを回転自在に支持するギヤーボックス23hは、前述したようにセンタリング部9のケーシング9a、具体的にはガイドバーブラケット80に図4に示すボルト9bによつて固着されている。
【0035】
圧力容器40のねじ穴40bにねじ込まれるボルト42に対して取付フレーム7に固定されたケーシング9a、スプライン軸22等が偏心している場合、第1球面ワッシャ94bがケーシング9aの滑り面上を移動し、偏心を修正する。また、圧力容器40のねじ穴40bにねじ込まれるボルト42に対してケーシング9aに傾きがある場合は、第2球面ワッシャ94aが第1球面ワッシャ94b上を揺動し、傾きを修正する。これにより、圧力容器40のねじ穴40bにねじ込まれるボルト42に対して駆動軸20、把握・離脱機構3、サポートプレート61、伸縮駆動装置であるエアシリンダ装置92、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aが調芯される。かくして、エアシリンダ装置92により、ボルト42の軸芯に対して垂直に力を伝えることができる。
【0036】
このような調芯動作の結果、第2球面ワッシャ94aがボルト着脱装置1の中心から偏心すると共に、シリンダ取付プレート91が傾いた状態になる。従つて、ボルト着脱装置1が次のボルト42に移動するとき、これらを矯正しなければならない。センタリング部9は、その矯正機構である。なお、センタリング部9は、ボルト着脱装置1の取付フレーム7を図外の移動装置によつて搬送する途中の加減速に伴う把握・離脱機構3の振れや位置ずれを防止する機能を併有している。
【0037】
センタリング部9は、図5に示すようにガイドバーブラケット80に固着した複数個のガイドバー装置96と、複数個の複動式のエアシリンダ装置97により垂直方向に往復移動する環状のアクチュエータ部材98とを有する。このエアシリンダ装置97は、アクチュエータ駆動装置を構成している。アクチュエータ部材98は、下部外周面が下方に向けて次第に縮径するテーパ部98aを形成し、テーパ部98aの上端大径部98cの外周面はシリンダ取付プレート91の中心の開口部91aと整合している。エアシリンダ装置97は、ガイドバーブラケット80に固着したシリンダ97aと、アクチュエータ部材98に固着され、シリンダ97aに摺動自在に嵌合するロッド付きのピストン97bとを有する。ガイドバー装置96は、ガイドバーブラケット80に固着した筒状部材と、アクチュエータ部材98に固着され、筒状部材に摺動自在に嵌合する棒状部材とを有する。
【0038】
テーパ部98aの下端小径部はシリンダ取付プレート91の開口部91aに対し、常時ラップして係合が可能であり、シリンダ取付プレート91の異常な移動を制限している。アクチュエータ部材98の上端大径部98cに接続する外向きフランジ部の外周部は、下方に延びる円筒部98bを形成し、エアシリンダ装置97のロッド付きのピストン97bが押し出されたとき、円筒部98bの下面がシリンダ取付プレート91の上面に水平に接触し、シリンダ取付プレート91を下圧できるようになつている。なお、シリンダ取付プレート91は、ケーシング9aの前後壁に形成した開口部9a2 に受け入れて前後に突出しており、ケーシング9aから突出箇所のシリンダ取付プレート91にエアシリンダ装置92及び測長器93が取付けられている。シリンダ取付プレート91のケーシング9aに対する上昇移動可能量は、ケーシング9aの開口部9a2 の上面に螺着したストッパボルト101に当接して規制される。
【0039】
ボルト42の植え込み又は抜取りが完了し、図7に示すようにエアシリンダ装置92のロッド92dが引き上げられるとき、エアシリンダ装置97の上圧力室にエアを供給し、ロッド付きのピストン97bを押し出す。アクチュエータ部材98のテーパ部98aは、下降途中でシリンダ取付プレート91の開口部91aと接触する。テーパ部98aは、楔効果により容易にシリンダ取付プレート91をボルト着脱装置1の中心に移動させることができる。このとき、第1球面ワッシャ94bがケーシング9aの滑り面上を移動する。アクチュエータ部材98のテーパ部98aが更に押し込まれ、図5の右半部に示すようにテーパ部98aの上端大径部98cがシリンダ取付プレート91の開口部91aに整合することにより、シリンダ取付プレート91がボルト着脱装置1の中心まで移動する。これにより、シリンダ取付プレート91がケーシング9a及びスプライン軸22に対して調芯される。
【0040】
最終的には、アクチュエータ部材98の外周部の円筒部98bの下面がシリンダ取付プレート91の上面を押し付けることにより、シリンダ取付プレート91を水平にし、かつ、ケーシング9aに対する把握・離脱機構3及び駆動軸20の傾きが矯正される。このようなセンタリング時は、ボルト42を保持していないため、エアシリンダ装置97に過大な出力を必要としない。
【0041】
次に、作用について説明する。
先ず、ボルト着脱装置1によるボルト42の植え込み作動について説明する。いま、ボルト42は、圧力容器40のねじ穴40b内に螺合することなく載置された状態でセットされているものとする。また、各スプリットカップリング30は、拡径手段16によつて拡径されている。エアシリンダ装置92は、図7に示すように縮小作動されている。
【0042】
取付フレーム7を図外の移動装置によつて移動させ、ボルト着脱装置1をボルト42の真上に搬送すると共に、ソケット24がボルト42の頂部に達する直前までボルト着脱装置1を下降させる。ボルト着脱装置1を下降させたなら、サーボモータ23aを逆回転駆動させ、把握・離脱機構3を極低速でねじ抜き方向(ボルト42を圧力容器40のねじ穴40bから螺出させる方向)に回転させながら、降下させる。把握・離脱機構3の回転動作は、サーボモータ23aの回転運動が、減速機23b、軸継手23c、ピニオン軸23d、ピニオン23e、ギヤー23f、スプラインナット23g、スプライン軸22、ユニバーサルジョイント機構21及び駆動軸20を介して行なわれる。把握・離脱機構3の降下動作は、エアシリンダ装置92の第1エア出入口92iをドレインさせ、第2エア出入口92jの圧力を制御することによつて行なうことができる。その際、スプラインナット23gに対してスプライン軸22がスライドする。
【0043】
これにより、駆動軸20の下端の突起20aがボルト42の上端面の孔42eと整合しながら、ボルト42の被係合部42dにソケット24の穴24aが相対回転不可能に係合する。ボルト42の被係合部42dにソケット24の穴24aが係合した後、サーボモータ23aの回転を停止する。
【0044】
回転継手ケース5aのエア出入口58にエアを供給し、ロッキングリング31を下降させる。これにより、上述したように縮径手段15の機能によつてスプリットカップリング30が縮径してスプリットカップリング30の係合部30aとボルト42上部の環状溝42aとが係合してボルト42が把握される。各スプリットカップリング30は、ボルト42外周の環状溝42aの全体を包み込むように縮径する。これにより、係合部30aが形成されていない箇所のスプリットカップリング30の内周面が、ボルト42の環状溝42aを形成した箇所の外周面に密着し、駆動軸20、サポートプレート61及びエアシリンダ装置92がボルト42の軸線に倣う。
【0045】
このとき、把握・離脱機構3、駆動軸20、回転継手部5及び重量補正シリンダ部6のほとんどの重量はボルト42が支え、第1球面ワッシャ94bには、シリンダ取付プレート91とエアシリンダ装置92の一部の重量しか加わつていない状態となつているため、第1球面ワッシャ94bは容易にケーシング9aの内底面の滑り面上を移動できる。
【0046】
ボルト42を把握した後、エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jからエアを供給し、エアシリンダ装置92を縮小作動させてサポートプレート61、駆動軸20及び把握・離脱機構3を若干上昇させる。第2エア出入口92jから供給するエア圧力は、ボルト42重量とバランスしてボルト42を持ち上げる圧力よりわずかに低い圧力とする。
【0047】
サーボモータ23aを逆駆動し、人力による大型ボルトのねじ込みと同様に一旦ボルト42をねじ抜き方向に一回転程度回し、ボルト42のねじ合わせ、つまり圧力容器40のねじ穴40bにボルト42のねじ部42cを合致させる作業を行なう。このとき、測長器93の原点をゼロに設定することにより、その後のボルト42のねじ込み量が検出可能になる。
【0048】
サーボモータ23aを正駆動し、ボルト42を低トルク、低速回転でねじ込み方向に回転させる。ボルト42を数回転させ、測長器93によつてゼロ点からの進み量を検出することにより、ねじの噛み合い、つまり圧力容器40のねじ穴40bにボルト42のねじ部42cが螺合したことを確認する。更にボルト42を数回転させた後、サーボモータ23aの設定トルクを増し、可能な高速度回転に増速する。
【0049】
ボルト42の植え込み動作の途中、ボルト42に対する把握・離脱機構3、サポートプレート61、エアシリンダ装置92、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aの偏心や傾きが原因でボルト42の回転駆動力が増大し、サーボモータ23aの駆動トルクが規定トルクにまで上昇した場合には、一旦、サーボモータ23aの回転を停止し、エアシリンダ装置92の第1エア出入口92iに第2エア出入口92jと同圧のエア圧力を供給する。エアシリンダ装置92は、それぞれの圧力室を区画するピストン92eの圧力作用面積の差によりシリンダ92c、ロッドカバー92aに固定されているシリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aが浮き上がり、第2球面ワッシャ94aと第1球面ワッシャ94bとが離れる。シリンダ取付プレート91の浮き上がりは、ストッパボルト101に当たつて規制される。
【0050】
これにより、ボルト42重量の支えが一旦解除され、ユニバーサルジョイント機構21の拘束が解除されるので、把握・離脱機構3、サポートプレート61、エアシリンダ装置92、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aがボルト42の中心軸線上に位置が修正調芯される。エアシリンダ装置92の第1エア出入口92iを大気に開放することにより、シリンダ取付プレート91が下降し、第1球面ワッシャ94bが第2球面ワッシャ94aに倣い、ケーシング9aの内底面の滑り面上の位置が矯正される。その後、ボルト42の植え込み運転を続行する。
【0051】
ボルト42の植え込みが進み、ボルト42下端がねじ穴40bの底に突き当たる手前で、サーボモータ23aの回転を低トルク、かつ、低速回転に切り換える。ボルト42下端がねじ穴40bの底に突き当たる手前に達したことは、測長器93で検出することができる。ボルト42下端がねじ穴40bの底に突き当たるまで一旦ねじ込み、ねじ山の拘束を防止するため、サーボモータ23aを逆回転させてボルト42を1/4〜1回転程度ねじ抜き方向に回転させ、ボルト42の植え込み作業を終了する。ボルト42下端がねじ穴40bの底に突き当たつたことは、サーボモータ23aの回転トルクを検出して知ることができる。
【0052】
ボルト42の植え込み作業が終了したなら、ロッキングリング昇降装置33のエア出入口58のエア圧力を大気に開放すると共に、エア出入口59にエア圧力を供給し、図3の左半部に示すようにロッキングリング31を引き上げて縮径手段15を解除させ、拡径手段16によつてスプリットカップリング30を拡径させてボルト42の把握を解放させる。エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jからエア圧力を供給し、図7に示すようにボルト42の把握・離脱機構3を上昇させる。
【0053】
複動式のエアシリンダ装置97を適宜にエア圧力を供給して伸長させ、アクチュエータ部材98によつてシリンダ取付プレート91を水平にし、かつ、ケーシング9aに対する把握・離脱機構3の傾きを矯正させる。これにより、シリンダ取付プレート91、把握・離脱機構3等のセンタリングが行なわれる。
【0054】
図外の移動装置によつて取付フレーム7を上昇させると共に、ボルト着脱装置1を次のボルト42に搬送し、同様の手順にてボルト着脱装置1によるボルト42の植え込み作動を行なわせる。
【0055】
次に、圧力容器40のねじ穴40bに螺着させたボルト42の抜取り動作について説明する。
先ず、ボルト着脱装置1を圧力容器40のねじ穴40bに螺着させたボルト42の真上に図外の移動装置によつて搬送し、複動式のエアシリンダ装置97を適宜にエア圧力を供給して収縮させ、アクチュエータ部材98を上昇させて把握・離脱機構3のセンタリング固定状態を解除する。取付フレーム7を図外の移動装置によつて所定の位置まで下降させる。
【0056】
サーボモータ23aによつて把握・離脱機構3を極低速でねじ抜き方向に回転させながら、エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jのエア圧力を制御し、駆動軸20を降下させる。ボルト42の頂部の被係合部42dとソケット24の穴24aとが噛み合つた後、サーボモータ23aの回転を停止する。
【0057】
回転継手ケース5aのエア出入口58からエアを供給し、ロッキングリング31を下降させる。これにより、図3の右半部に示すように縮径手段15が機能して、スプリットカップリング30が縮径するので、ボルト42外周の環状溝42aの一部にスプリットカップリング30の係合部30aが噛み合い、把握・離脱機構3によつてボルト42が把握される。スプリットカップリング30がボルト42の環状溝42aの全体を包み込むように縮径する。
【0058】
これにより、係合部30aが形成されていない箇所のスプリットカップリング30の内周面が、ボルト42の環状溝42aを形成した箇所の外周面に密着し、駆動軸20、把握・離脱機構3、サポートプレート61及びエアシリンダ装置92がボルト42の軸線に倣う。このとき、把握・離脱機構3及び回転継手部5等のほとんどの重量はボルト42が支え、第1球面ワッシャ94bにはシリンダ取付プレート91とエアシリンダ装置92の一部の重量しか加わつていない。このため、第1球面ワッシャ94bが、ケーシング9a上を容易に摺動し、かつ、第2球面ワッシャ94aに対して摺動する。
【0059】
ボルト42を把握した後、エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jからエアを供給する。供給するエア圧力は、ボルト42の重量とバランスしてボルト42を若干持ち上げる圧力とする。これにより、圧力容器40のねじ穴40bに螺着させたボルト42に若干の引き抜き力が作用する。
【0060】
測長器93の原点をゼロに設定し、サーボモータ23aを逆回転駆動する。ボルト42の長期間の植え込みにより、ボルト42がねじ穴40bに固着していることが考えられるため、サーボモータ23aは、高トルク、極低速回転で起動する。ボルト42が回転を始めた後に、サーボモータ23aの設定トルクを低減させる。更にボルト42が数回転した後、サーボモータ23aの設定トルクを増し、可能な高速度回転に増速する。
【0061】
ボルト42の抜取り作業途中、ボルト42に対するケーシング9a、スプライン軸22等の偏心や傾きが原因でボルト42の回転駆動力が増大し、サーボモータ23aの駆動トルクが規定トルクにまで上昇した場合には、一旦、サーボモータ23aの回転を停止し、エアシリンダ装置92の第1エア出入口92iから第2エア出入口92jと同圧のエア圧力を供給する。エアシリンダ装置92は、それぞれの圧力室を区画するピストン92eの圧力作用面積の差によりシリンダ92c及びロッドカバー92aに固定されているシリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aが浮き上がり、第2球面ワッシャ94aと第1球面ワッシャ94bとが離れる。シリンダ取付プレート91の過大な上昇移動は、シリンダ取付プレート91がストッパボルト101に当たつて規制される。
【0062】
これにより、ボルト42の重量の支え及び拘束が一旦解除され、把握・離脱機構3、サポートプレート61、エアシリンダ装置92、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aが、ボルト42の中心軸線上に位置修正されて調芯される。エアシリンダ装置92の第1エア出入口92iを大気に開放すれば、シリンダ取付プレート91が下降し、第1球面ワッシャ94bは第2球面ワッシャ94aに倣い、ケーシング9aの滑り面上の位置が矯正される。
【0063】
このようにしてボルト42に対する把握・離脱機構3、サポートプレート61、エアシリンダ装置92、シリンダ取付プレート91及び第2球面ワッシャ94aの偏心や傾きが修正されるので、その後、ボルト42の抜取り運転を続行する。ボルト42がねじ穴40bから離脱する直前で、サーボモータ23aを低速回転に切り換える。ボルト42がねじ穴40bから離脱する直前であることは、測長器93で検出することができる。ボルト42がねじ穴40bから完全に離脱した後、サーボモータ23aひいては把握・離脱機構3の回転を停止させる。
【0064】
その後、一旦、エアシリンダ装置92を作動させて、エアシリンダ装置92の上限までボルト42を吊り上げる。
【0065】
エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jのエア圧力をボルト42重量とバランスしてボルト42を持ち上げる圧力よりわずかに低い圧力に切り換えて、ボルト42をねじ穴40b上に緩やかに着地させる。ボルト42をねじ穴40b上に着地させることに代えて、ナット43が螺合したままボルト42を移動させ、ナット43の下面を別途用意された受台に載せてもよい。ボルト42の下降に際しては、エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jのエア圧力を大気に開放する。
【0066】
ロッキングリング昇降装置33のエア出入口58のエア圧力を大気に開放し、エア出入口59からエア圧力を供給し、縮径手段15を解除させると共に拡径手段16を作動させ、把握・離脱機構3によるボルト42の把握を解放させる。
【0067】
エアシリンダ装置92の第2エア出入口92jからエア圧力を供給し、図7に示すように把握・離脱機構3を上昇させる。また、複動式のエアシリンダ装置97を適宜にエア圧力を供給して伸長させ、アクチュエータ部材98によつて把握・離脱機構3のセンタリングを行なう。
【0068】
その後、図外の移動装置によつて取付フレーム7を上昇させると共に、ボルト着脱装置1を次のボルト42に搬送する。同様の手順にてボルト着脱装置1によるボルト42の抜取り作動を行なわせる。
【0069】
ところで、上記1実施の形態に係るボルト着脱装置1にあつては、ナット43を螺着させたままでボルト42を着脱させた。従つて、ボルト着脱装置1にボルト用座金の掴み装置を組み合わせることにより、ボルト42、ナット43及び座金44を同時に着脱することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上の説明によつて理解されるように、本発明に係るボルト着脱装置によれば、下記の効果を奏することができる。
【0072】
請求項1によれば、ボルトに対して駆動軸及びシリンダ取付プレートが偏心している場合、第1球面ワッシャがケーシングの滑り面上を移動し、偏心を修正する。また、ボルトに対してシリンダ取付プレートに傾きがある場合は、第2球面ワッシャが第1球面ワッシャ上を揺動し、傾きを修正する。これにより、伸縮駆動装置は、ボルトの軸芯に対して垂直に力を伝えることができる。また、回転駆動機構によつて正逆に回転駆動されるスプライン軸には、ユニバーサルジョイント機構を介して駆動軸が接続されているので、スプライン軸と駆動軸とが交差した状態で駆動軸によつてボルトを回転させることができる。
【0073】
その結果、簡素な構造のボルト着脱装置によつてボルトの1本毎に把握・離脱機構のセンタリングを正確かつ簡単に行なうことができ、ボルトの植え込み及び抜取り作業を確実に行なうことができると共に、偏心や傾きがボルトに次第に増大されながら蓄積されることを抑制することが簡単にできる。
【0074】
加えて、伸縮駆動装置が駆動軸に回転自在に支持させたサポートプレートに取付けられ、この伸縮駆動装置によつてサポートプレートとシリンダ取付プレートとの間を伸縮させるので、伸縮駆動装置に回転力が作用しない。その結果、伸縮駆動装置の耐久性に優れる。
【0075】
請求項2によれば、アクチュエータ駆動装置によつてアクチュエータ部材を駆動してシリンダ取付プレートの開口部にテーパ部を係合させて、シリンダ取付プレートを調芯可能である。その結果、シリンダ取付プレート、伸縮駆動装置及び把握・離脱機構の矯正調芯を容易に行なうことができる。
【0076】
請求項3によれば、サポートプレートとシリンダ取付プレートとの間の距離を測定する測長器を備えるので、測長器によりボルトのねじ込み量を検出し、この検出値によつて回転駆動機構を制御し、ボルトの回転トルクや回転速度を任意に切り換えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施の形態に係るボルト着脱装置を示す正面図。
【図2】 同じく一部省略した側面を示す断面図。
【図3】 同じく下半部を示す断面図。
【図4】 同じく回転機構部を示す一部断面図。
【図5】 同じく調芯機構部及びセンタリング部を示す断面図。
【図6】 同じく拡径手段を備えるスプリットカップリング及びロッキングリングを示す断面図。
【図7】 同じくボルト着脱装置の作用説明図。
【図8】 圧力容器の上部の蓋部材を固着するボルト・ナットを示す図。
【符号の説明】
1:ボルト着脱装置、2:回転機構部、3:把握・離脱機構、5:回転継手部、6:重量補正シリンダ部、8:調芯機構部、9:センタリング部、9a:ケーシング、15:縮径手段、16:拡径手段、20:駆動軸、21:ユニバーサルジョイント機構、22:スプライン軸、23:回転駆動機構、24:ソケット、24a:穴(係合部)、30:スプリットカップリング、30a:係合部、30f:凹部、30g:凸部、30h:傾斜面、31:ロッキングリング、31a:凹部、31b:凸部、31c:傾斜面、33:ロッキングリング昇降装置、40b:ねじ穴、42:ボルト、42a:環状溝、42b:ねじ部、42c:ねじ部、42d:被係合部、61:サポートプレート、91:シリンダ取付プレート、92:エアシリンダ装置(伸縮駆動装置)、93:測長器、94a:第2球面ワッシャ、94b:第1球面ワッシャ、96:ガイドバー装置、97:エアシリンダ装置(アクチュエータ駆動装置)、98:アクチュエータ部材、98a:テーパ部。
Claims (3)
- 一端部にねじ部(42c)を有し、他端側に環状溝(42a)が形成されたボルト(42)の他端の被係合部(42d)と回転不可能に係合する係合部(24a)を有する駆動軸(20)と、
駆動軸(20)に備えられ、駆動軸(20)の係合部(24a)をボルト(42)に回転不可能に係合させた状態で、ボルト(42)の環状溝(42a)を把握・離脱が可能な把握・離脱機構(3)と、
駆動軸(20)にユニバーサルジョイント機構(21)を介して接続され、回転駆動機構(23)によつて正逆に回転駆動されるスプライン軸(22)と、
駆動軸(20)に軸受(52,53)を介して回転自在に支持させたサポートプレート(61)と、
スプライン軸(22)を遊挿させて移動装置によつて支持され、移動装置によつて水平方向及び垂直方向に移動されるケーシング(9a)と、
環状をなしてスプライン軸(22)の周囲に配置され、球面からなる滑り面を形成し、ケーシング(9a)に摺動自在に載置される第1球面ワッシャ(94b)と、
環状をなしてスプライン軸(22)の周囲に配置され、第1球面ワッシャ(94b)の滑り面と摺動自在に球面接触する球面からなる滑り面を形成する第2球面ワッシャ(94a)と、
第2球面ワッシャ(94a)に固着されるシリンダ取付プレート(91)と、
サポートプレート(61)とシリンダ取付プレート(91)との間を伸縮させる伸縮駆動装置(92)とを有し、
伸縮駆動装置(92)によつてシリンダ取付プレート(91)に対してサポートプレート(61)を上昇移動させることにより、把握・離脱機構(3)によつて把握されたボルト(42)の重量を軸受(52,53)並びに第1球面ワッシャ(94b)及び第2球面ワッシャ(94a)を介してケーシング(9a)に支持可能であると共に、
伸縮駆動装置(92)によつてシリンダ取付プレート(91)に対してサポートプレート(61)を下降移動させてシリンダ取付プレート(91)及び第2球面ワッシャ(94a)を浮き上がらせることにより、第1球面ワッシャ(94b)が、ケーシング(9a)上を摺動し、かつ、第2球面ワッシャ(94a)に対して摺動し、駆動軸(20)、把握・離脱機構(3)、サポートプレート(61)、伸縮駆動装置(92)、シリンダ取付プレート(91)及び第2球面ワッシャ(94a)が調芯可能であることを特徴とするボルト着脱装置。 - 外周面がテーパ部(98a)を形成する環状のアクチュエータ部材(98)と、アクチュエータ部材(98)とケーシング(9a)との間に設けられ、アクチュエータ部材(98)を昇降駆動するアクチュエータ駆動装置(97)とを有し、
アクチュエータ駆動装置(97)によつてアクチュエータ部材(98)を駆動してシリンダ取付プレート(91)の開口部(91a)にテーパ部(98a)を係合させて、シリンダ取付プレート(91)及び把握・離脱機構(3)をボルト着脱装置の中心に矯正調芯可能であることを特徴とする請求項1のボルト着脱装置。 - サポートプレート(61)とシリンダ取付プレート(91)との間の距離を測定する測長器(93)を備えることを特徴とする請求項1又は2のボルト着脱装置。
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