JP4106767B2 - スパークプラグ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花放電を用いて燃料混合気に着火する内燃機関用のスパークプラグに関し、特に着火性の向上に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の内燃機関用のスパークプラグは、中心電極、接地電極、及びこれら両電極以外の中間電極を有し、これら各電極間に形成された1つもしくは複数の放電ギャップに高電位差を与えることで、その全数もしくは一部数の放電ギャップにて放電火花を生成させ、該放電ギャップに存在する混合気に着火する。このような複数の放電ギャップを有するスパークプラグの例として、特開平9−213449号公報、特開昭59−173986号公報等がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、筒内直噴式火花点火エンジンや希薄混合気燃焼式エンジン(リーンバーンエンジン)などが、排ガス浄化、燃費向上などを目的に開発されているが、これらのエンジンにおける混合気は、均一濃度で気化された着火しやすい混合気ではなく、局部的に濃度ムラがあり、かつ、燃料粒が混在する混合気であることが多い。
【0004】
そして、前述の燃焼、排気改善要求はさらに厳しくなる傾向であり、それに応じて、混合気もさらに薄く(燃料量が少なく)なる方向に改良が進められていくことが予測されている。
しかし、筒内直噴式火花放電エンジンなど成層燃焼を行うエンジンであっても、着火可能な混合気が放電ギャップに存在しない確率が増し、従来のプラグの如く、燃焼室内に位置するプラグの着火部のうち一ヶ所、もしくは、数カ所の放電ギャップ部のみで、放電火花を形成していると、混合気形成のばらつきの影響を回避できず、安定した着火が困難になる。
【0005】
また、プラグの着火部の部分に混合気を形成していても、1ヵ所もしくは数ヶ所設置された放電ギャップ部分に可燃の混合気が存在しなければ、着火できず、良好な燃焼は実現できない。しかし、実際のエンジンでは、混合気濃度の筒内濃度分布や燃料粒の状態などのばらつきは解消できない。
そこで、本発明では上記問題点に鑑みて、火花放電を用いて燃料混合気に着火する内燃機関用のスパークプラグにおいて、一回の放電動作で燃料混合気への着火チャンスを大幅に増加させ、着火性を向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一回の放電動作で放電火花をプラグ先端の広範囲に移動させることに着目し、ある一つの放電ギャップにて生成した放電火花を、プラグ先端に多数設置された中間電極に順次移動させる電極形状とすればよいのではないかとの考えに基づいてなされたものである。
【0007】
また、一般に、中心電極と接地電極との間に中間電極を有するプラグにおいては、容量放電及びその後の誘導放電が、上記中間電極を経て行なわれる。ここで、中間電極の配置等によっては、誘導放電時に形成される火炎核が中間電極と接触して、放電火花のエネルギーが中間電極に吸収されやすい。従って、着火性が悪くなるといった問題が生じる。
【0008】
請求項1〜請求項10記載の発明は、このような中間電極による放電火花のエネルギー吸収の問題も考慮しつつ、中心電極(30)の周囲に第1の放電ギャップ(G1)を介して環状に接地電極(11)を配設し、中心電極(30)と接地電極(11)との間で第1の放電ギャップ(G1)を迂回する経路に半導体材料からなる複数本の中間電極(50)を配設した構成を有するスパークプラグに関してなされたものである。
【0009】
この構成によれば、少なくとも1本の中間電極(50)を経て容量放電が行なわれるため、放電電圧を下げることができ、さらに、第1の放電ギャップ(G1)を経て誘導放電が行なわれる。そして、第1の放電ギャップ(G1)を迂回する経路に中間電極(30)を配設しているので、誘導放電時に形成される放電火花と中間電極(50)との接触が抑制され、放電火花のエネルギーが中間電極(50)に吸収されることを抑制でき、着火性を向上できる。
【0010】
そして、請求項1記載の発明では、まず、各々の中間電極(50)は、一端部(51)が中心電極(30)と第2の放電ギャップ(G1)を介して対向配置され、他端部(52)が接地電極(11)に電気的に接続され、且つ、他端部(52)側の部位が中心電極(30)の中心と一端部(51)とを結ぶ基線(K1)よりもずれるように、中心電極(30)回りに渦巻く渦巻き形状を構成していることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明では、各々の前記中間電極(50)において、対応する第2の放電ギャップ(G2)にて容量放電が行なわれたとき、その中間電極(50)の回りの空気がイオン化されるので、中心電極(30)との間に形成される放電火花が一端部(51)から他端部(52)に移動する。
ここで、各中間電極(50a)において、他端部(52)側の部位が中心電極(30)の中心と一端部(51)とを結ぶ基線(K1)よりもずれているため、他端部(52a)が基線(K1)よりもずれている側に隣接する中間電極(50)の第2の放電ギャップ(G2)に、一端部(51)から他端部(52)にかけて段々近づくような配置となっている。
【0012】
そのため、容量放電の行われた中間電極(50)において一端部(51)から他端部(52)に移動する放電火花は、該他端部(52)が基線(K1)よりもずれている側に隣接する中間電極(50)の第2の放電ギャップ(G2)をもイオン化させ、そこで容量放電を行なわせることができるのである。
このように本発明では、中心電極(30)の回りに渦巻き状に配設された複数本の中間電極(50)のうち、いずれか1つにおいて容量放電を行なわせることにより、隣接する他の中間電極(50)が順次容量放電を行なうため、プラグの着火部の広範囲に渡って放電火花が広がる。そして、容量放電による放電火花が広がる途中または広がった後に第1の放電ギャップ(G1)にて誘導放電が行なわれる。
【0013】
従って、本発明によれば、一回の放電動作で燃料混合気への着火チャンスを大幅に増加させ、着火性を向上させることができる。
ここで、請求項1記載の発明の作用効果を奏するためには、中間電極(50)は3本〜10本設けられていること(請求項2の発明)が好ましい。
また、各々の中間電極(50)の一端部(51)と他端部(52)のずれは、中間電極(50)の数をn本としたとき、各々の中間電極(50)における中心電極(30)の中心と一端部(51)とを結ぶ基線(K1)と中心電極(30)の中心と他端部(52)とを結ぶ基線(K2)とのずれ角度θ(°)が、θ≦20+(360/n)の範囲にあること(請求項3の発明)が好ましい。
【0014】
また、請求項4記載の発明では、各々の中間電極(50)の第2の放電ギャップ(G2)のギャップ幅は、1つの第2の放電ギャップ(G2a)のギャップ幅を最小として、順次、隣接する第2の放電ギャップ(G2b〜G2e)に行くに連れて大きくなっていることを特徴としている。
容量放電の起こりやすさは、第2の放電ギャップ(G2)の抵抗値即ちギャップ幅に依存する。そのため、本発明では、最小のギャップ幅を有する第2の放電ギャップ(G2a)から容量放電が行なわれ、順次、隣接する第2の放電ギャップ(G2b〜G2e)にて容量放電が行なわれるというように、放電火花が広がる経路を特定でき、放電火花を確実に広げることができる。
【0015】
また、請求項5記載の発明では、各々の中間電極(50)を、一端部(51)と他端部(52)との間の部位が第1の放電ギャップ(G1)とは離れる方向に凹んだ形状を有するものとしたことを特徴としており、中間電極(50)を第1の放電ギャップ(G1)から確実に迂回させることができる。
また、請求項6記載の発明は、中間電極(50)の具体的な配置手段を提供するものである。即ち、中心電極(30)の周囲を絶縁体(20)で被覆し、この絶縁体(20)の端面(22)から中心電極(30)の先端部(31)が突出させ、接地電極(11)を絶縁体(20)の周囲に配設して中心電極(30)の先端部(31)との間で第1の放電ギャップ(G1)を構成するようにし、更に中間電極(50)を絶縁体(20)の端面(22)に配設している。
【0016】
また、請求項7記載の発明では、請求項6記載の絶縁体(20)の端面(22)のうち中間電極(50)の配設されている部位を、周囲よりも隆起した隆起部(24)としているから、中間電極(50)の周囲に、放電火花が飛ぶ空間を広く確保することができる。
また、請求項8記載の発明では、請求項6及び請求項7記載の絶縁体(20)の端面(22)のうち第2の放電ギャップ(G2)に対応する部位に、中心電極(30)の突出方向とは反対方向に窪んだ窪み部(26)を形成したことを特徴としている。
【0017】
それによって、窪み部(26)における絶縁体(20)の端面(22)と第2の放電ギャップ(G2)とを大きく離すことができ、第2の放電ギャップ(G2)で発生する放電火花によって絶縁体(20)の端面(22)がくすぶるのを抑制できる。
また、請求項9記載の発明では、請求項1記載の中間電極(50)の渦巻き形状とは異なるが同様の作用効果を奏する中間電極(60)の配置及び形状を提供するものである。
【0018】
即ち、本発明においては、各々の中間電極(60)は、一端部(61)よりも他端部(62)側の部位が、中心電極(30)の中心と一端部(61)とを結ぶ基線(K1)よりも、全ての中間電極(60)において同一側にずれるように、同一方向に曲がった曲がり形状を有したものとなっていることを特徴としている。
【0019】
なお、上記した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。
(第1実施形態)
本実施形態に係るスパークプラグ100の全体構成を図1の半断面図に示す。本実施形態は、筒内直噴式火花点火エンジンや希薄混合気燃焼式エンジンに適用されるものとして説明する。スパークプラグ100は、その一端部101側(着火部)が燃焼室(図示せず)に挿入されるようにして、前記燃焼室を構成するエンジンンブロック(図示せず)に装着される。
【0021】
スパークプラグ100は、例えばステンレス等の導電性材料からなる筒状の取付金具(本体金具)10を備えており、この取付金具10の外周部には、ネジ山10aが形成されている。このネジ山10aと、上記エンジンブロックに形成されたネジ孔(図示せず)とをネジ結合することにより、上記エンジンブロックにスパークプラグ100が脱着可能に装着される。
【0022】
取付金具10の内部には、例えば絶縁碍子等からなる筒状の絶縁体20を収容保持しており、絶縁体20の内部には、例えば白金合金等からなる中心電極30およびステンレス等からなるステム部(軸部)40を収容保持している。また、取付金具10の一端部11は接地電極として構成されており、以下、取付金具10の一端部11を接地電極11ということとする。
【0023】
また、絶縁体20の一端部21の端面22から、中心電極30の一端部(先端部)31が燃焼室側(図1の上方)突出しており、取付金具10の他端部12から突出する絶縁体20の他端部23から、ステム部40の一端部41が突出している。また、中心電極30の他端部32とステム部40の他端部42とは電気的に接続されている。
【0024】
次に、本発明の要部であるスパークプラグの一端部101即ち着火部101について図2〜図5も参照して述べる。図2は着火部101の外観図、図3は図2のA矢視図、図4は着火部101の概略断面図、図5は図3のB−B断面図である。なお、図4は後述の隆起部24に沿った断面図である。
図3に示す様に、接地電極11は、中心電極30の周囲を被覆する絶縁体20の周囲に環状に配置されており、絶縁体20の端面22より突出する中心電極30の先端部31と接地電極11との間には、第1の放電ギャップG1(図4参照)が形成される。
【0025】
また、図2〜図4に示す様に、上記燃焼室に面した絶縁体20の端面22において、燃焼室方向(図2の矢印A方向)からみて、プラグ100の中心軸に設置された中心電極30を回転の中心軸として、渦巻き状に周囲(谷部25)よりも隆起した上記隆起部24が等角度間隔で数本(図では5本)形成されている。そして、各隆起部24の頂部には、酸化銅(CuO)等の半導体材料からなる中間電極50が配設されている。なお、隆起部24の渦巻き形状は、後に詳述する中間電極50の渦巻き形状に対応したものである。
【0026】
ここで、隆起部24は、図5に示す様に、その直交する断面において、曲面状に隆起した形状(図5(a))でも、平面状に隆起した形状(図5(b))でも、また、これら形状を組み合わせたものでもよい。
また、図4に示す様に、絶縁体20の端面22は、上記隆起部24も含めて、中心電極30側と接地電極11側との間の部位が燃焼室方向とは反対側に凹んだ形状をなしている。従って、各々の中間電極50は、一端部51と他端部52との間の部位が第1の放電ギャップG1とは離れる方向に凹んだ形状をなし、第1の放電ギャップG1を迂回する経路に配置されている。
【0027】
また、図4に示す様に、絶縁体20の端面22のうち中心電極30の周囲には、環状の窪み部26が形成されており、窪み部26よりも中心電極30寄りの絶縁体20の部分は、中心電極30を被覆し支持する支持部27として構成されている。この窪み部26は、中心電極30の突出方向とは反対方向に窪んでおり、中心電極30を中心とする周方向に0.5〜1.5mm程度の幅を有する。この窪み部26の幅は第2の放電ギャップG2として構成される。
【0028】
また、絶縁体20の端面22のうち支持部27の部位には、中心電極30の一部としての半導体材料(CuO等)からなる沿面部(沿面電極)33が、中心電極30の先端部31に電気的に接続されつつ、その周囲に環状に配設されている。
そして、各中間電極50は、一端部51が中心電極30の沿面部33と上記第2の放電ギャップG2を介して対向配置され、他端部52が接地電極11に電気的に接続されている。ここで、各中間電極50は、両端部51、52の間で湾曲しており、それによって、一端部51よりも他端部52側の部位が、中心電極30の中心と一端部51とを結ぶ基線K1(図3中、破線にて図示)からずれるように中心電極30回りに渦巻いている。
【0029】
ここで、本実施形態では渦巻き形状と言っていることから、各中間電極50は両端部51、52の間で同一方向に湾曲しており、その湾曲形状によって、一端部51よりも他端部52側の部位が、上記基線K1から同一側にずれていることは明白である。つまり、各中間電極50の中で、湾曲方向が互いに逆なものは除外される。なお、各中間電極50において、上記湾曲やずれ度合は同一でなくともよい。
【0030】
そして、そのずれ度合は、次のようになっている。中心電極30の中心と中間電極50の他端部52とを結ぶ基線(図3中、破線にて図示)をK2とし、中間電極50の数をn本としたとき、各々の中間電極50における基線K1と基線K2とのずれ角度θ(°)は、θ≦20+(360/n)の範囲にあり、この範囲の中でできるだけ大きい方が好ましい。
【0031】
ちなみに、本例(n:5本)では、各中間電極50において、ずれ角度θは90°程度としている。また、本発明者等の検討によれば、ずれ角度θを上記のような範囲とするためには、中間電極50の数は3〜10本程度であることが好ましい。
また、図2では図示しないが、本実施形態においては、各々の中間電極50の第2の放電ギャップG2のギャップ幅は、1つの第2の放電ギャップG2のギャップ幅を最小として、順次、隣接する第2の放電ギャップG2に行くに連れて大きくなっている。その様子を具体的に図6に示す。
【0032】
ギャップ幅が最小である第2の放電ギャップG2aに対応する中間電極50を符号50aで示し、この中間電極50aを起点として時計回りの方向(図6中の矢印Y方向)に配設された中間電極50を、順次、符号50b、50c、50d、50eと表す。そして、各中間電極50b〜50eに対応する第2の放電ギャップG2を、それぞれG2b、G2c、G2d、G2eと表す。
【0033】
本実施形態では、例えば、ギャップG2aが0.5mmであり、ギャップG2eが1.5mmとなるように、窪み部26の幅がギャップG2aから矢印Y方向の連続的に大きくなっている。つまり、図6に基づけば、各ギャップG2a〜G2eの大きさは、G2a<G2b<G2c<G2d<G2eとなっている。なお、必ずしも、最小のギャップG2aが0.5mmでなく、最大のギャップG2eが1.5mmではなくともよい。
【0034】
さらに、本実施形態では、窪み部26の幅の増加に伴って、各中間電極50b〜50eの電気抵抗値が徐々に増加する様に、中間電極の材質および幅を調整している。ここで、各ギャップG2a〜G2eの電気抵抗値を各々、GRa、GRb、GRc、GRd、GReとし、各中間電極50b〜50eの電気抵抗値を各々、TRa、TRb、TRc、TRd、TReとすると、GRa+TRa、GRb+TRb、GRc+TRc、GRd+TRd、GRe+TReの順に電気抵抗値が徐々に大きくなっている。
【0035】
かかる構成を有するスパークプラグ100は、基本的に周知の製法に準じて製造できるが、絶縁体20の端面22の形状は、切削加工や鋳型を用いて形成することができ、中間電極50及び中心電極30の沿面部33は、半導体材料を絶縁体20の端面22の所定部位に焼き付ける等により配設することができる。
次に、本実施形態のスパークプラグ100の作動を、図6の電極構成に基づき、更に、図7及び図8も参照して説明する。なお、図7及び図8では、複数本の中間電極50の各々を区別するために、上記図6と同じく、中間電極50a〜50eとして示し、各々の一端部51及び他端部52も対応して、一端部51a〜51e、他端部52a〜52eということとする。
【0036】
中心電極30と接地電極11との間に高電圧を印加することにより、ギャップ幅が最小である第2の放電ギャップG2aに対応する中間電極50aの一端部51aと中心電極30の沿面部33との間で容量放電(ブレークダウン)が行われる。図7(a)はその様子を示し、符号Fは放電火花を表す。そして、この中間電極50aでは、電流が流れることにより、半導体材料が周囲空気をイオン化する効果が発生し、電極表面周囲の空気を急速にイオン化させ空間の電気抵抗値を減少させる。
【0037】
それにより、中心電極30の沿面部33と中間電極50aの任意の点を結ぶ空間の電気抵抗値が、同区間を結ぶ中間電極50a内の経路の電気抵抗値より小さくなり、放電火花Fは、沿面部33と中間電極50aの間の気中放電に移行する(図7(b))。さらに、放電火花Fは周囲空気をイオン化するので、放電火花Fは徐々に、渦巻き外周の方向即ち他端部52a側に移動する(図7(c))。
【0038】
ここで、中間電極50aをみた場合、他端部52aが基線K1よりもずれている側に隣接する中間電極50bの第2の放電ギャップG2bに、一端部51aから他端部52aにかけて段々近づくような配置となっている。このような隣接する中間電極との配置関係は、他の各中間電極50b〜50eにおいても同様である。
【0039】
そのため、図7(a)から(c)に示す様に、放電火花Fは、他端部52aが基線K1よりもずれている側に隣接する中間電極50bの第2の放電ギャップG2bに段々近づいていく。その後、図7(d)に示す様に、他端部52aと沿面部33の間の気中に放電火花Fが形成された時点で、放電火花Fは、中間電極50bに対応する放電ギャップG2bをもイオン化する。
【0040】
その効果により、他端部52aと沿面部33の間の気中の電気抵抗値に比べ、隣接する中間電極50bの電気抵抗値と中間電極50bに対応する第2の放電ギャップG2bの電気抵抗値との和が小さくなる。そして、隣接する中間電極50bに対応する第2の放電ギャップG2bにて容量放電が行われ、放電火花Fは、隣の中間電極50bと中心電極30の沿面部33の間に形成される様になる(図8(a))。
【0041】
この様なイオン化による放電火花形成位置の移動が連続し、放電火花Fは中間電極50b(図8(a)及び(b))、中間電極50c(図8(c)及び(d))、中間電極50d、中間電極50eと、順々に隣の中間電極に移動していく。これにより、放電火花Fは、放電開始から終了の期間中に、中間電極50a〜50eを基点としてその周囲を移動することができる。
【0042】
なお、本実施形態において、第2の放電ギャップG2は各中間電極50で、同一であってもよい。その場合、いずれか1つの任意の中間電極50から放電が開始し、上記作動と同様に、その任意の中間電極50から、他端部52が基線K1よりもずれている側に隣接する中間電極50に放電火花を順次移動させることができる。
【0043】
このように本実施形態では、中心電極30の回りに渦巻き状に配設された複数本の中間電極50(50a〜50e)のうち、いずれか1つにおいて容量放電を行なわせることにより、隣接する他の中間電極50が順次容量放電を行なうため、プラグの着火部101の広範囲に渡って放電火花が広がる。そして、容量放電による放電火花Fが広がる途中または広がった後に、第1の放電ギャップG1にて誘導放電が行なわれる。
【0044】
従って、本実施形態では、一回の放電動作で燃料混合気への着火チャンスを大幅に増加させ、着火性を向上させることができる。そして、放電火花が可燃混合気に遭遇する機会は、従来のプラグの様に、放電火花の形成位置が固定されたプラグに比べて、大幅に増加させることができる。
また、図6に示す様に、各々の中間電極50(50a〜50e)の第2の放電ギャップG2(G2a〜G2e)のギャップ幅を、1つの第2の放電ギャップG2aのギャップ幅を最小として、順次、隣接する第2の放電ギャップG2b〜G2eに行くに連れて大きくなっている構成とした場合、最小のギャップ幅を有する第2の放電ギャップG2aから容量放電が行なわれ、順次、隣接する第2の放電ギャップG2b〜G2eにて容量放電が行なわれるというように、放電火花が広がる経路を特定でき、放電火花を確実に広げることができる。
【0045】
また、本実施形態では、各々の中間電極50を、一端部51と他端部52との間の部位が第1の放電ギャップG1とは離れる方向に凹んだ形状を有するものとしており、中間電極50を第1の放電ギャップG1から確実に迂回させることができる。
また、本実施形態では、絶縁体20の端面22のうち中間電極50の配設されている部位を、周囲よりも隆起した隆起部24としているから、中間電極50の周囲に、放電火花が飛ぶ空間を広く確保することができる。
【0046】
また、本実施形態では、絶縁体20の端面22のうち第2の放電ギャップG2に対応する部位に、中心電極30の突出方向とは反対方向に窪んだ窪み部26を形成しているため、窪み部26における絶縁体20の端面22と第2の放電ギャップG2とを大きく離すことができ、第2の放電ギャップG2で発生する放電火花によって絶縁体20の端面22がくすぶるのを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態においては、上記図4に示す様に、窪み部26よりも中心電極30寄りの絶縁体20の部分に、中心電極30を支持する支持部27を設け、支持部27における絶縁体20の端面22に中心電極30の沿面部33を設けている。ここで、本実施形態の変形例として、図9に示す様に、支持部27及び沿面部33が無い構成としてもよい。
【0048】
ただし、図4に示す様に、中心電極30の周囲を覆う支持部27を設けることにより、中心電極30のくすぶりを防止できる。それとともに、支持部27を設けることにより、中心電極30と中間電極50の一端部51との間が支持部27の分だけ離れるが、沿面部33を設けて補助的に放電火花を飛ばしやすくしている。
【0049】
(第2実施形態)
本第2実施形態を図10に示す。本実施形態は上記図3に示す電極構成において、中間電極60の形状を変えたものであり、その他の部分は同一であるため上記図3と同一符号を付してある。
複数本の中間電極60は、中心電極30と接地電極11との間における絶縁体20の端面22に、第1の放電ギャップG1を迂回する経路に配設されている。ここで、絶縁体20の端面22の隆起部24は、各中間電極60に対応した形状を有し、この隆起部24上に中間電極60が配設されている。
【0050】
各々の中間電極60は、一端部61が中心電極30と第2の放電ギャップG2を介して対向配置され、他端部62が接地電極11に電気的に接続されている。さらに、各々の中間電極60においては、他端部61側の部位が、中心電極30の中心と一端部61とを結ぶ基線K1よりも、全ての中間電極60において同一側にずれるように、同一方向に曲がった曲がり形状を有している。
【0051】
本実施形態においても、各中間電極60は、基線K1よりもずれている側に隣接する中間電極60の第2の放電ギャップG2に、一端部61から他端部62にかけて段々近づくような配置となっているため、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態では、図4に示す様に、絶縁体20の端面22及び各々の中間電極50は、燃焼室方向(第1の放電ギャップG1)とは反対側に凹んだ形状をなしているが、図11(a)に示す様に、凹ませずに直線形状となっていてもよい。この場合、絶縁体20の端面22における、中心電極30側から接地電極11側にかけての傾斜度合は、中間電極50が第1の放電ギャップG1を迂回するようにすることが必要である。
【0052】
また、絶縁体20の端面22及び各々の中間電極50における凹み形状は、図11(b)に示す様に、接地電極11側が最も燃焼室方向に高くなっている形状であってもよい。
また、図12に示す様に、燃焼室方向(第1の放電ギャップG1)とは反対側に凹んだ形状をなす絶縁体20の端面22において、隆起部24を設けない構成としてもよい。ここで、図12(a)は着火部101の外観図、(b)はプラグ軸方向の断面図である。
【0053】
上記図11及び図12に示す変形例においても、プラグの軸方向の断面でみた場合に、放電火花の形成される高さが異なるが、放電火花が移動する点で、上記第1実施形態と同様の作動が可能であり、従って、同等の効果が獲得できる。
また、中間電極50、60の一端部51、61と中心電極30との間に第2の放電ギャップG2が存在すれば、窪み部26はなくてもよい。
【0054】
また、本発明の要部はプラグの着火部にあるから、他の部分は適宜設計変更してよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るスパークプラグの全体構成を示す半断面図である。
【図2】図1に示すスパークプラグにおける着火部の外観図である。
【図3】図2のA矢視図である。
【図4】上記着火部の概略断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図1に示すスパークプラグにおける第2放電ギャップの詳細構成図である。
【図7】本発明のスパークプラグの作動説明図である。
【図8】図7に続くスパークプラグの作動説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例を示す図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図11】本発明の他の実施形態に係る一例を示す図である。
【図12】本発明の他の実施形態に係る他の例を示す図である。
【符号の説明】
11…接地電極、20…絶縁体、22…絶縁体の端面、24…隆起部、
26…窪み部、30…中心電極、50、60…中間電極、
51、61…中間電極の一端部、52、62…中間電極の他端部、
G1…第1の放電ギャップ、G2、G2a〜G2e…第2の放電ギャップ、
K1、K2…基線。
Claims (9)
- 中心電極(30)と、
前記中心電極(30)の周囲に第1の放電ギャップ(G1)を介して環状に配設された接地電極(11)と、
前記中心電極(30)と前記接地電極(11)との間で前記第1の放電ギャップ(G1)を迂回する経路に配設された半導体材料からなる複数本の中間電極(50)とを備え、
各々の前記中間電極(50)は、一端部(51)が前記中心電極(30)と第2の放電ギャップ(G2)を介して対向配置され、他端部(52)が前記接地電極(11)に電気的に接続され、
且つ、前記他端部(52)側の部位が前記中心電極(30)の中心と前記一端部(51)とを結ぶ基線(K1)からずれるように、前記中心電極(30)回りに渦巻く渦巻き形状を構成しており、
各々の前記中間電極(50)において、対応する前記第2の放電ギャップ(G2)にて容量放電が行なわれたとき、前記中心電極(30)との間に形成される放電火花を前記一端部(51)から前記他端部(52)に移動させることにより、該他端部(52)が前記基線(K1)よりもずれている側に隣接する前記中間電極(50)に対応する前記第2の放電ギャップ(G2)にて容量放電を行なわせるようになっていることを特徴とするスパークプラグ。 - 前記中間電極(50)は3本〜10本設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスパークプラグ。
- 各々の前記中間電極(50)における前記中心電極(30)の中心と前記一端部(51)とを結ぶ基線(K1)と前記中心電極(30)の中心と前記他端部(52)とを結ぶ基線(K2)とのずれ角度をθとし、前記中間電極(50)の数をn本としたとき、
前記ずれ角度θ(°)は、θ≦20+(360/n)の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載のスパークプラグ。 - 各々の前記中間電極(50)の前記第2の放電ギャップ(G2)のギャップ幅は、1つの前記第2の放電ギャップ(G2a)のギャップ幅を最小として、順次、隣接する前記第2の放電ギャップ(G2b〜G2e)に行くに連れて大きくなっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のスパークプラグ。
- 各々の前記中間電極(50)は、前記一端部(51)と前記他端部(52)との間の部位が前記第1の放電ギャップ(G1)とは離れる方向に凹んだ形状を有していることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のスパークプラグ。
- 前記中心電極(30)の周囲は絶縁体(20)で被覆され、この絶縁体(20)の端面(22)から前記中心電極(30)の先端部(31)が突出しており、
前記接地電極(11)は前記絶縁体(20)の周囲に配設されて前記中心電極(30)の先端部(31)との間で、前記第1の放電ギャップ(G1)を構成しており、
前記中間電極(50)は前記絶縁体(20)の端面(22)に配設されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のスパークプラグ。 - 前記絶縁体(20)の端面(22)のうち前記中間電極(50)の配設されている部位は、周囲よりも隆起した隆起部(24)を構成していることを特徴とする請求項6に記載のスパークプラグ。
- 前記絶縁体(20)の端面(22)のうち前記第2の放電ギャップ(G2)に対応する部位には、前記中心電極(30)の突出方向とは反対方向に窪んだ窪み部(26)が形成されていることを特徴とする請求項6または7に記載のスパークプラグ。
- 中心電極(30)と、
前記中心電極(30)の周囲に第1の放電ギャップ(G1)を介して環状に配設された接地電極(11)と、
前記中心電極(30)と前記接地電極(11)との間で前記第1の放電ギャップ(G1)を迂回する経路に配設された半導体材料からなる複数本の中間電極(60)とを備え、
各々の前記中間電極(60)は、一端部(61)が前記中心電極(30)と第2の放電ギャップ(G2)を介して対向配置され、他端部(62)が前記接地電極(11)に電気的に接続され、
且つ、前記他端部(61)側の部位が、前記中心電極(30)の中心と前記一端部(61)とを結ぶ基線(K1)よりも、全ての前記中間電極(60)において同一側にずれるように、同一方向に曲がった曲がり形状を有しており、
各々の前記中間電極(60)において、対応する前記第2の放電ギャップ(G2)にて容量放電が行なわれたとき、前記中心電極(30)との間に形成される放電火花を前記一端部(61)から前記他端部(62)に移動させることにより、該他端部(62)が前記基線(K1)よりもずれている側に隣接する前記中間電極(60)に対応する前記第2の放電ギャップ(G2)にて容量放電を行なわせるようになっていることを特徴とするスパークプラグ。
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