JP4104825B2 - ランフラットタイヤ用のトレッドおよびサイドウォール構造 - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、空気入りラジアルプライ・ランフラット・パッセンジャー・タイヤ、およびランフラット動作中のトレッドリフトおよび車両操作性の制御に関する。
【0002】
(発明の背景)
膨張していないタイヤのさらなる損傷を最小に抑え、同時に、タイヤが圧力を失った場所からタイヤを交換できるガソリンスタンドなど運転者の所望の場所までの行程を、車両の操作性を悪くすることなく、車両の、非加圧状態または加圧不足状態のタイヤを安全に連続的に動作させることを可能にする、様々な方法が考案されている。タイヤ圧の喪失は、車両に取り付けられた空気入りタイヤに突き刺さる釘やその他の鋭利な物体などの異物によるパンクを含む、様々な原因で起こる。
【0003】
非加圧状態または加圧不足状態で動作を持続できるように設計された空気入りタイヤは、非膨張状態、すなわち一般に“フラット”と呼ばれる状態で運転できるので、ランフラットタイヤとも呼ばれる。従来の空気入りタイヤは、非膨張状態になると、つぶれて車両の重量を支持する。タイヤのサイドウォールは、トレッドが地面に接触する、タイヤの周方向部分で外側に座屈し、タイヤを“フラット”にする。
【0004】
“ランフラット”という用語は、一般に、タイヤが非膨張状態で動作させられるときに車両荷重を支持するのに十分な剛性および強度をタイヤ構造が単独で有するように設計されたタイヤを記述するために使用される。タイヤのサイドウォールおよび内面は、つぶれることも、また座屈することもなく、タイヤが、その他に、タイヤがつぶれるのを防止する他の支持構造または他の装置を含んだり、あるいは使用することはない。
【0005】
ランフラットタイヤ構造の例は、トレッドと概ね同じ幅を有するフープすなわち環状バンドがトレッドの下に周方向に配置されている“バンデッド・タイヤ(Banded Tire)”という名称の米国特許第4111249号に記載されている。フープをタイヤ構造の残りの部分と組み合わせることにより、非膨張状態で車両の重量を支持することができる。
【0006】
有効なランフラットタイヤ構造を実現するために、多数の方法が用いられている。一般に、このようなタイヤは、より厚い、および/またはより剛性の高いサイドウォール構造を組み込んでおり、したがって、タイヤを修理または交換できる適当なときまで、タイヤ自体および車両の操作性に対する悪影響を最小に抑えながら、膨張していないタイヤによってタイヤの荷重を支持することができる。サイドウォールの剛性を高めるために用いられる方法には、通常、タイヤの、車両荷重を受けたときに変形に対する抵抗が最も低い領域である、カーカスのサイドウォール部分の内周面に、周方向に配設されたインサートを組み込むことが含まれる。このようなランフラットタイヤ構造では、各サイドウォールが、ビードとトレッドショルダとの間のサイドウォール領域の厚さが概ね一様になるように、厚くされる。
【0007】
このようなタイヤの補強されたサイドウォールは、非膨張状態で動作させられると、正味圧縮荷重を受ける。しかし、補強されたサイドウォールの外側部分は、サイドウォールの、トレッドの地面接触部分に隣接する領域において、サイドウォールを外側に、すなわち互いに離れる方向に反らせる、曲げ力のために張力がかかっている。このような補強されたサイドウォールの内側部分は、トレッドが地面に接触する部分の近傍の領域において、ランフラット動作中に圧縮される傾向がある。
【0008】
グッドイヤー(Goodyear)社の米国特許第5368082号(’082)は、剛性を高めるために特殊なサイドウォールインサートを使用する低アスペクト比ランフラット空気入りラジアルプライタイヤを開示している。この非膨張タイヤでは、800ポンド(約362.9kg)の荷重を支持するのに、タイヤ1つあたり概ね6ポンド(約2.7kg)の追加重量が必要であった。この初期の発明は、ランフラットタイヤ構造に関する従来の試みよりも優れているが、スペアタイヤおよびタイヤジャッキをなくすことによって相殺することのできる重量面の欠点を依然として負っていた。しかし、この重量面の欠点は、タイヤ設計者が大型で豪華なツーリングセダン用の高アスペクト比タイヤを作製することを試みるときに、より一層大きな問題となる。このような、より高いサイドウォールを持つタイヤは、55%〜65%の範囲以上のアスペクト比を有しており、それに対応して、米国特許第5368082号に開示された初期の低アスペクト比ランフラットタイヤに生じたのよりも大きなサイドウォール曲げ応力が発生した。したがって、高プロファイルタイヤのサイドウォールは、乗り心地が損なわれる程度まで補強される必要があった。豪華な車両の所有者は、一般に、ランフラット機能のために乗り心地を犠牲にすることを望んでいない。ランフラットタイヤ設計の設計要件では、乗り心地や操作性能を失わないようにする必要がある。スポーツカーや様々なスポーツ/ユーティリティ車両など、超高剛性サスペンション性能を持つタイプの車両において、このようなランフラットタイヤを備えるようにすることは、より柔らかい乗り心地を必要とする豪華なセダンに同様なランフラットタイヤを備えるのに比べて、比較的普通のことである。軽トラックおよびスポーツユーティリティ車両に関してはそれほど乗車性能は気にされないけれども、ランフラットタイヤ市場は、より堅い乗り心地を受け入れる市場からより柔らかく心地よい乗り心地を要求する市場までの範囲に設けられている。
【0009】
一般に、ランフラットタイヤ構造は、各サイドウォールのたわみ領域の内部に1つまたは2つ以上のインサートを取り付けることを基本としている。各サイドウォール内のインサートは、プライと共に、ランフラット動作中に空気圧が低下するか、あるいはなくなったときのサイドウォールの剛性を高める。圧縮による反りに対するインサートの抵抗が高いので、膨張しておらず荷重を受けているタイヤがつぶれることに対する必要な抵抗がもたらされるが、この方法は、上述した、タイヤ重量の増大と、特に高速ランフラット動作中に車両操作に悪影響を与える、ランフラット動作中のトレッドと道路との接触の変化とを含む、いくつかの欠点を有する。
【0010】
ランフラット動作中のトレッドと道路との接触の変化は、厚い補強サイドウォールが、トレッドの、地面と接触する部分に曲げ力を伝達する傾向があるために生じる。この結果、トレッドの中心部が地面から上向きに座屈しやすい。上向きの座屈によって、トレッドの中央領域での地面との接触が低下し、したがって、車両の操作性が悪くなると共に、周期的な過度のたわみのためにランフラットトレッドタイヤの寿命が短くなり、それに対応して、特に高速動作が持続されているときに、トレッドの中心部に熱が蓄積される。
【0011】
ランフラットタイヤ設計の目標が、良好なランフラット車両操作性と、ランフラット動作中のタイヤの良好な有効寿命とをもたらすタイヤを提供することにあることは明らかである。ランフラット動作に関連する操作上の欠点は、タイヤトレッドの中心部の少なくとも部分的な上向きの座屈によるものなので、“トレッドリフト”と呼ばれることがあるこのような座屈を最小に抑えるために、様々な方法が導入されている。このような方法には、圧縮応力支持ブレーカ補強構造、引張応力支持プライ補強構造、ブレーカとプライとの間に位置するくさびインサート(このくさびインサートは、それぞれの張力支持構造および圧縮支持構造に機械的な利点を与える)などの追加の構造を用いることによって、トレッドの横方向剛性を高める手段が含まれる。このようなトレッド補強のための追加の構造の主要な利点は、補強サイドウォールの重量が重くなるだけでなく、タイヤ重量がより重くなることである。
【0012】
タイヤ設計において、ランフラット動作に影響を与える他の点は、トレッドの輪郭に関する。特に乗用車向けに設計されたトレッドは、従来、互いに隣接する円曲線が接線方向で互いに接するように、すなわち、トレッドの横方向寸法を横切ってトレッドの曲率が不連続になることがないように連結された複数の曲率半径に従って、トレッドの断面の輪郭すなわち横断方向の輪郭が形成されるように設計されている。さらに、トレッドの中心部の断面の輪郭を形成する曲率半径は、ショルダ領域におけるトレッドの断面の輪郭を形成する曲率半径よりもずっと長くなる傾向がある。
【0013】
代替トレッドの輪郭は、横断方向の輪郭が、接線方向で連結しない円曲線によって形成されている、すなわち、トレッドの輪郭が、非接線方向で交差する互いに隣接する円曲線によって形成されている輪郭である。このようなトレッド構造の例は、本発明と共通の譲受人を有し、参照することによりここに全内容を組み入れる、「PASSENGER TIRE WITH IMPROVED TREAD CONTOUR WITH DECOUPLING GROOVES」という名称のPCT特許出願第US98/00717号に教示されている。PCT特許出願第US98/00717号に記載されたトレッドの輪郭は、トレッドショルダの最も側方の部分が“落ち”、すなわち、半径方向内側に湾曲し、それによって、トレッドの中心部が、標準膨張圧動作中にもランフラット動作中にもトレッドのショルダ部より大きな荷重を受けるように、非接線方向の円曲線、すなわち不連続な円曲線がトレッドの横断方向の輪郭を形成する、トレッドの輪郭である。したがって、PCT特許出願第US98/00717号に記載されたトレッドの輪郭の1つの目的は、補強コードが高引張応力材料である少なくとも1つのカーカスプライを組み込んだタイヤにおいて、トレッドフットプリントの改善を実現することであった。高引張応力カーカスプライは、特に、現行のランフラットタイヤ構造の特徴であるインサート補強式サイドウォール構造と組み合わされて、ランフラット動作中に曲げ力またはトルクをサイドウォールからトレッドへより容易に伝達することができる。このように伝達された曲げ力の結果として、上述のように、トレッドの中心部が上向きに座屈し、すなわち、ランフラット車両操作性を悪くする種類の“トレッドリフト”を、ランフラット動作中に受ける傾向がある。
【0014】
より具体的には、厚いサイドウォールを有するランフラット型タイヤの特定の場合において、トレッドショルダの輪郭が、トレッドショルダの領域においてより小さな曲率半径を有する、接線方向で連結する互いに隣接する曲線によって表される場合、タイヤの空気圧が0に至るほど低い状態のときに、曲げ力がサイドウォールからトレッドにより容易に伝達される傾向がある。ランフラット状態でのトレッドのこの上向き座屈の結果の1つとして、直線走行動作および特にコーナリング時に、車両操作性が低下する可能性がある。膨張していないランフラットタイヤが後部車軸に位置しているときには、オーバステアリングが特に問題になる。
【0015】
互いに接線方向の円曲線によって形成されるトレッド断面の輪郭を有するランフラットタイヤ構造に関連する他の難点は、トレッド中心部で上向きの過度の曲げ力が周期的に生じるために、ランフラット状態でのトレッドの動作寿命がより短いことである。ランフラット動作に関連するその他の結果としては、タイヤのショルダが道路に接触し、直線動作時および特にコーナリング時の操作がさらに困難になる傾向がある。
【0016】
前段落に記載された、接線方向で交差する互いに隣接する円曲線によって形成されるトレッドの輪郭の、ランフラットタイヤに関する欠点は、一般に、接線方向で隣接する円曲線によって形成されたトレッド断面の輪郭を有するすべてのタイヤに当てはまる。
【0017】
しかし、高引張応力カーカスプライ、特に非伸縮性の金属製コードで補強されたプライを有するタイヤの開発により、荷重を地面に最適に分散させるように、平坦にならない傾向のあるトレッドが得られる。より具体的には、ショルダ領域において低曲率半径のトレッドの輪郭を有する高引張応力カーカスは、トレッドのショルダおよび側面によってタイヤの荷重を不均等に支持させる傾向があり、そのため、トレッドの中心部はランフラット状態の下でほとんどあるいはまったく荷重を受けない。このため、直線走行時にフットプリント圧力分散が不十分になり、コーナリング時にフットプリント接触面が小さくなる。
【0018】
(発明の目的)
本発明の目的は、添付の請求項のうちの1つまたは2つ以上に定義されており、したがって、以下の副次的な目的のうちの1つまたは2つ以上を満たすように構成され得るランフラット・ラジアルタイヤを提供することにある。
【0019】
本発明の目的は、ランフラット動作中にトレッドの中心部を地面から持ち上げる傾向のあるサイドウォール曲げ力から、トレッドが隔離されるランフラット・ラジアルタイヤを提供することである。
【0020】
本発明の他の目的は、ランフラット動作中に道路に接触するリブを含む、半径方向で最も外側のサイドウォールを有しており、それによってトレッドの有効幅を大きくし、かつランフラットモードで良好な高速車両操作性を維持する、ランフラット・ラジアルタイヤを提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、ランフラット動作中に道路上でトレッド幅全体を一様に平坦にするのを容易にするトレッド断面の輪郭を有する、ランフラット・ラジアルタイヤを提供することである。
【0022】
本発明のさらに他の目的は、ランフラット動作中にサイドウォール内で生じ、トレッドの中心部を持ち上げて道路との接触を妨げる傾向のある、曲げ力の伝達を最小に抑えるように、最も側方の各トレッドリブの軸方向内側および各クラウンショルダ内に分離溝を組み込んだ、ランフラット・ラジアルタイヤを提供することである。
【0023】
本発明のさらに他の目的は、様々な代替カーカス構造に本発明の概念を適用することである。
【0024】
(発明の概要)
本発明は、トレッドと、少なくとも1つのラジアルプライを持つラジアルプライ構造を有するカーカスと、トレッドとラジアルプライ構造との間に位置するベルト構造と、1つまたは2つ以上のインサートによって補強された2つのサイドウォールと、横方向に配設されたトレッドリブが大きな曲率半径を有する円曲線によって形成されたトレッドの輪郭とを有する、空気入りラジアルプライ・ランフラットタイヤに関する。最も外側のプライ、すなわち単一のプライは、非伸長性の金属製コードで補強されている。サイドウォールはそれぞれ、半径方向に最も外側の領域の近傍にリブを有している。トレッドの中央部および横方向に配置されたトレッドリブの断面の輪郭を形成する複数の円曲線は、非接線方向で交差する。トレッドの断面の輪郭を形成する円曲線の非接線方向の交差点のそれぞれの非接線方向軌跡の下に、周方向に配置された分離溝が位置している。半径方向に最も外側の各サイドウォールリブの輪郭を形成する円曲線は、横方向に配設された各トレッドリブの輪郭を形成する円曲線と、非接線方向で交差している。半径方向に配置された各サイドウォールリブと、隣接する横方向に配置されたトレッドリブとの間で、輪郭を形成する曲線が非接線方向で交差する、各ショルダ領域において、1つの溝が周方向に位置するように、第2の分離溝の組が配置されている。横方向に配置されたトレッドリブとサイドウォールリブとの間の、最も側方の分離溝は、周方向に存在し連続的であるか、あるいは周方向に存在し非連続的である。横方向に配置されたトレッドリブとトレッドの中心部との間の分離溝は、周方向に存在し一直線の構造であるか、あるいはジグザグパターンを有している。
【0025】
本発明の好ましい実施態様は、低アスペクト比(約30%〜約60%の範囲)構造を有する、空気入りランフラット・ラジアルタイヤである。この実施態様は、高性能スポーツタイプ車両または軽トラックにおいて、ランフラット状態で使用することができる。本発明のこの低アスペクト比ラジアルプライ・ランフラット空気入りタイヤの特徴によって、ランフラット・トレッドリフトが最小に抑えられ、ランフラット動作中にトレッドフットプリントが広げられる、ランフラット動作が可能になる。
【0026】
本発明の構造、動作、および利点は、以下の説明を添付の図面と共に検討したときに、より明らかになる。
【0027】
(定義)
“エイペックス”は、ビードコアの半径方向上方であって、プライとターンアッププライとの間に位置する弾性フィラーを意味する。
【0028】
“アスペクト比”は、タイヤの断面幅に対する断面高さの比を意味し、また、タイヤの断面プロファイルを指し、たとえば、低プロファイルタイヤは低アスペクト比を有する。
【0029】
“軸方向”および“軸方向に”は、タイヤの回転軸に平行な線または方向を意味する。
【0030】
“ビード”または“ビードコア”は、タイヤを保持した状態でリムと結合された半径方向内側のビードの、環状の引張部材を有する、タイヤの部分を一般的に意味し、ビードは、プライコードに被覆されて形作られて、フリッパ、エイペックスまたはフィラー、トウガードおよびチェーファーのような他の補強部材を有することもあれば、有しないこともある。
【0031】
“ベルト構造”または“補強ベルト”または“ベルトパッケージ”は、トレッドの下に存在し、ビードに固定されておらず、タイヤの赤道面に対して約18°から約30°の範囲の左および右のコード角を有する、織物または不織布の平行なコードの少なくとも2つの環状の層すなわちプライを意味する。
【0032】
“ブレーカ”または“タイヤブレーカ”は、ベルトまたはベルト構造または補強ベルトと同じ意味を有する。
【0033】
“カーカス”は、プライの上の、ベルト構造、トレッド、アンダートレッドとは離れているが、ビードを含むタイヤ構造を意味する
“ケーシング”は、トレッドおよびアンダートレッドを除く、タイヤのカーカス、ベルト構造、ビード、サイドウォール、およびその他のすべての要素を意味する。
【0034】
“周方向”は、軸方向に垂直な環状トレッドの表面の周囲に沿って延びる円をなす線または方向を意味することが最も多い。これは、断面を見たときに、半径がトレッドの軸方向曲率を定義する、互いに隣接する円曲線の組の方向を指すこともある。
【0035】
“コード”は、プライおよびベルトを補強する、繊維を含む補強ストランドの1つを意味する。
【0036】
“クラウン”または“タイヤクラウン”は、トレッドと、トレッドショルダと、サイドウォールのすぐ隣の部分とを意味する。
【0037】
“分離溝”は、トレッドの横方向領域またはショルダ領域の、周方向に配置された溝を意味し、このような溝は、ランフラット動作中にサイドウォールからトレッドへの曲げ力の伝達を最小に抑えるように働く。
【0038】
“赤道面”は、タイヤの回転軸に垂直で、そのトレッドの中心を通る平面、またはトレッドの周方向中心線を含む平面を意味する。
【0039】
“フットプリント”は、タイヤトレッドが平坦な表面と接触する接触部分すなわち領域を意味する。
【0040】
“インナーライナ”は、チューブレスタイヤの内面を形成し、膨張するガスまたは流体をタイヤ内に封じ込める、エラストマまたは他の材料の、単一または複数の層を意味する。
【0041】
“インサート”は、通常はランフラット型タイヤのサイドウォールを補強するために用いられる、三日月型またはくさび型の補強材を意味し、トレッドの下に存在する非三日月型の弾性インサートも指す。
【0042】
“横方向”は、軸方向に平行な方向を意味する。
【0043】
“標準膨張圧”は、タイヤの使用条件についての然るべき標準化機構によって決められた、指定された荷重での特定の設計膨張圧を意味する。
【0044】
“標準荷重”は、タイヤの使用条件についての然るべき標準化機構によって決められた特定の設計膨張圧および荷重を意味する。
【0045】
“プライ”は、ゴムで被覆され半径方向に設置されるか、さもなければ平行なコードの、コード補強層を意味する。
【0046】
“ラジアル(半径方向の)”および“半径方向に”は、タイヤの回転軸に対し半径方向に向かうか、タイヤの回転軸から半径方向に離れる方向を意味する。
【0047】
“ラジアルプライ構造”は、1つまたは2つ以上のカーカスプライ、すなわち、少なくとも1つのプライが、タイヤの赤道面に対して約65°から90°の間の角度に向けられた補強コードを有するものを意味する。
【0048】
“ラジアルプライタイヤ”は、少なくとも1つのプライが、ビードからビードへ延び、タイヤの赤道面に対して約65°から90°の間のコード角度で配置されたコードを有する、ベルトが巻かれ、または周方向に制限された空気入りタイヤを意味する。
【0049】
“断面高さ”は、赤道面における公称リム直径からタイヤの外径までの半径方向の距離を意味する。
【0050】
“断面幅”は、無荷重で標準圧で24時間膨張させられた時、およびその後の、サイドウォールの、ラベル、装飾、または保護バンドによる高さを除いた、タイヤの軸に平行な、サイドウォールの外側間の最大直線距離を意味する。
【0051】
“ショルダ”は、トレッド縁部のすぐ下のサイドウォールの上部を意味する。
【0052】
“サイドウォール”は、タイヤの、トレッドとビードとの間の部分を意味する。
【0053】
“サイドウォール・オーバ・トレッド”すなわちSOTは、タイヤの各サイドウォールの、半径方向で最も外側の部分が、トレッドの最も側方の部分の上に存在する、タイヤ構造および製造方法を指す。
【0054】
“SOT”は、“サイドウォール・オーバ・トレッド”参照のこと。
【0055】
“接線方向”および“接線方向で”は、ある点で交差する円曲線の弧であり、この点を通って両円弧に共通に接する単一の線を描くことのできるような、円曲線の弧を指す。
【0056】
“トレッドの輪郭”は、軸方向の断面を見たときのタイヤトレッドの形状を意味する。
【0057】
“トレッド・オーバ・サイドウォール”すなわちTOSは、トレッドの最も側方の部分が、タイヤの各サイドウォールの、半径方向で最も外側の部分の上に存在する、タイヤ構造および製造方法を指す。
【0058】
“トレッド幅”は、タイヤの回転軸を含む平面内の、トレッド面の弧の長さを意味する。
【0059】
“TOS”は“トレッド・オーバ・サイドウォール”参照のこと。
【0060】
“くさびインサート”は“インサート”と同じ意味を有する。
【0061】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
従来例
図1を参照すると、一般的な従来技術の空気入りラジアルランフラットタイヤ10の断面が示されている。タイヤ10は、トレッド12、ベルト構造14、一対のサイドウォール部16、18、一対のビード領域20a、20b、およびカーカス構造22を有している。ベルト構造14は、2本のベルト24、26を有している。カーカス22は、第1のプライ30および第2のプライ32、不通気性インナーライナ34、一対のビード36a、36b、一対のビードフィルタエイペックス38a、38b、第1のサイドウォールくさびインサート対40a、40b、および第2のサイドウォールくさびインサート対42a、42bを有している。第1の、すなわち最も内側のくさびインサート40a、40bはインナーライナ34と第1のプライ30との間に位置し、第2のくさびインサート42a、42bは第1のプライ30と第2のプライ32との間に位置している。繊維オーバレイ28は、トレッド12の下すなわち半径方向内側で、ベルト構造14の上すなわち半径方向外側に配設されている。カーカス構造22の補強サイドウォール部16、18は、限られたランフラット機能をタイヤ10に与える。
【0062】
図1を見るとわかるように、タイヤ1のサイドウォール領域内の構造補強物は、サイドウォール部16、18の全体的な厚さを実質的に厚くしている。従来技術のこの汎用ランフラットタイヤ構造は、ランフラットタイヤ構造を特徴づける、多少とも一様な厚さのサイドウォールを示している。くさびインサート補強式サイドウォールが、タイヤ10が膨張していない状態のときにサイドウォールの反りを最小限に抑えながらタイヤの荷重を支持するために必要である。このようなランフラットタイヤ構造は、完全膨張状態で、良好な車両操作性および性能をもたらし、タイヤが膨張していないときに、許容し得るランフラット車両操作性およびランフラット運転寿命をもたらす。ランフラットタイヤは一般に、サイドウォールの補強材料の追加の重量のために、同等なランフラット不能タイヤよりも重量が重い。この追加の重量は、低プロファイル・ランフラットタイヤよりも高プロファイル・ランフラットタイヤの方が大きい。
【0063】
図2Aは、トレッド12がその全幅を横切って地面13と完全に接触している、標準膨張状態での、従来技術のタイヤ10の部分概略図である。トレッド12が地面13と接触する領域で平坦になることによって、トレッドと、その下にある、ベルト構造14、繊維オーバレイ28、ベルト24、26、ラジアルプライ30、32、およびインナーライナ34を含む構成要素とに、曲げ応力が生じている。より具体的には、曲げ応力は、トレッドおよびその下にある構造が、成形時および/または膨張時に横方向に曲がることにより、トレッド12が平坦になることによって生じる。この曲げ応力は、インナーライナ34やラジアルプライ30、32など、トレッド12の下の半径方向内側の構造に引張応力を生じさせる。これに対応する圧縮応力が、トレッド12の弾性材料と、繊維オーバレイ28やベルト構造14の一部などトレッドの下にある構造とに生じる。
【0064】
図2Bは、従来技術のランフラットタイヤ10が非膨張状態で動作させられるときの、このランフラットタイヤ10のトレッド12の中心部の上向きの座屈を示している。上向きの座屈、すなわちトレッドリフトは、荷重を支持するトレッドが、座屈が生じていない場合には平坦な路面13に接触する中央領域で、最大になる。トレッドの中央領域の上向きの座屈は、補強され厚くなったサイドウォール16、18(図1)がランフラット動作時に車両の荷重を受けて変形したときに、サイドウォール16、18に生じるトルク力によって起こる。図2Bに示されているランフラット動作中にトレッド12が受けるそれぞれの引張応力および圧縮応力は、図2Aに示されている標準膨張動作中にトレッドが単に平坦になることに関連する応力を大幅に上回る。
【0065】
図1に示されている従来技術のタイヤ10に関して注目すべき点は、このタイヤがトレッド・オーバ・サイドウォール(TOS)構成に従って作製されていることである。しかし、本発明の説明のために図1に示されている従来技術のランフラットタイヤを、サイドウォール・オーバ・トレッド(SOT)構成、またはたとえば、本発明と共通の譲受人を有する「IMPROVED TIRE TREAD AND SIDEWALL CONSTRUCTION」という名称の米国特許出願第09/048409号で教示されたような、ある種の中間的な形式の構造にすることもできる。
【0066】
本発明の概念およびその動作の概要
図3は、本発明によるランフラットタイヤ50を示している、タイヤ50は、図1に示された従来技術のランフラットタイヤ10と同じ、一般的なサイドウォールの特徴を有している。図3および本明細書の他の部分において、ダッシュ(’)付きの数字および二重ダッシュ(”)付きの数字は、他の部分で参照される、ダッシュなしの同じ番号で表わされた構造要素と実質的に同じ構造要素を表わす。
【0067】
図3で、タイヤ50は、トレッド52、ベルト構造56、一対のサイドウォール部77、78、一対のビード領域20a’、20b’、およびカーカス構造61を有している。ベルト構造56は2本のベルト67、68を有している。カーカス61は、第1のプライ70および第2のプライ72、不通気性インナーライナ74、一対のビード36a’、36b’、一対のビードフィルタエイペックス38a’、38b’、第1のサイドウォールくさびインサート対59a、59b、および第2のサイドウォールくさびインサート対60a、60bを有している。第1の、すなわち最も内側のくさびインサート59a、59bはインナーライナ74と第1のプライ70との間に位置し、第2のくさびインサート60a、60bは第1のプライ70と第2のプライ72との間に位置している。繊維オーバレイ53は、トレッド52の下すなわち半径方向内側で、ベルト構造56の上すなわち半径方向外側に配設されている。図3のタイヤ50内に示されている補強サイドウォール部77、78は、チェーファー62a、62bと、成形された弾性サイドウォール構造79、80とを備えている。
【0068】
本発明の構成要素には、(サイドウォールリブ63a、63bおよびリムフランジプロテクタ69a、69bを含む)サイドウォール構造79、80、分離溝65a、65b、ならびにトレッド52の中心部54および横方向に配設されたトレッドリブ64a、64bの断面の輪郭が含まれる。分離溝66a、66bも本発明の一部である。
【0069】
以下に、タイヤ50のサイドウォール構造とその他の構造との動作上の関係について、標準膨張ランフラット動作と非膨張ランフラット動作の両方を、動力学的な論点で説明する。本発明の新規な特徴は、本発明の構成要素を、独立して論じ、それから互いの動作の関係に関して論じる以下の説明で明白になろう。次に、本発明の概念に基づく動作を、従来技術に関連して説明する。
【0070】
簡単に言えば、図3に示されているタイヤ50の、発明性のある特徴の動作は、ランフラット動作中に、トレッド52の中心部が、(後述の円曲線によって形成される)トレッドの断面の輪郭と、分離溝65a、65bおよび66a、66bと、サイドウォールリブ63a、63bおよび横方向に配設されたトレッドリブ64a、64bとを組合せた効果によって、タイヤの中心部の上向きの座屈に抵抗するような動作である。ランフラット動作中には、分離溝65a、65bがそれぞれ、荷重を支持するサイドウォール部77、78からトレッド52へのトルク力の伝達を妨げ、それによってトレッドの中心部54が持ち上がるのを抑制する。また、(以下に詳しく説明するように)トレッド52の輪郭は、ランフラット動作中に、最も外側のトレッドリブ64a、64bが、標準膨張動作中よりも大きなタイヤの荷重を受けるような輪郭であり、分離溝66a、66bは、持上げ力が縦方向にトレッドの中心に向けて伝達されるのも妨ぐ。さらに、サイドウォールリブ63a、63bは、ランフラット動作中に道路に接触するようになり、それによって、トレッドの有効動作幅が標準膨張動作の有効動作幅よりも大きくなり、したがって、車両のランフラット操作性が改善する。したがって、タイヤ50のクラウン領域内に構造補強物を追加することによらず、かつタイヤのクラウン領域内にこのような構造補強物を有することに関連する重量面の欠点なしに、改善されたランフラット操作性が実現される。
【0071】
トレッドの輪郭
図1の従来技術のタイヤ10のトレッド12の断面の輪郭は、すなわち、成形キャビティの、タイヤが成形され加硫される部分である、互いに隣接し接線方向で交差する数組の円曲線によって形成される。従来技術のトレッドの互いに隣接する輪郭形成曲線が接するということは、互いに隣接する2本の円曲線が異なる曲率半径によって形成される場合であっても、互いに隣接する2本の円曲線の各組が、互いに隣接する円曲線の両方に接する単一の線を描くことができる点で交差するということである。より具体的には、図1に示されている従来技術のタイヤ10は、半径R1、R2、およびR3を有する3本の円曲線によって輪郭が形成されるクラウン領域およびトレッド12と共に示されており、トレッドの最も平坦で最も中心寄りの部分を形成する半径R1は、トレッドの中心とショルダとの間の中間領域の輪郭を形成する半径R2よりも大きく、半径R2は、サイドウォール部16、17に隣接するトレッドの最も側方の部分、すなわちショルダ部を形成する半径R3よりも大きい。(従来技術の各タイヤ10がその中心線CLを中心にして対称形であると仮定すると、それに対応して、トレッドの輪郭を形成する円曲線の半径および中心は、中心線CLに関して対称形である。)図1に示されている、輪郭を形成する半径は、互いに隣接する複数の円曲線がトレッドの輪郭を形成するために用いられることと、互いに隣接する円曲線が接線方向に交差することのみを示すものであり、図1に示されている、輪郭を形成する円曲線の数は、トレッドの輪郭を形成する円曲線を特定の数だけ用いることを意味するものではない。
【0072】
図3を参照すると、トレッド52の断面の輪郭は、従来技術のタイヤとは異なり、非接線方向で交差する円曲線によって形成されている。すなわち、トレッド52の中心部54は、大きい半径R1’を有する円曲線によって形成され、それに対して、トレッドのサイドリブ64a、64bの輪郭は、長さが半径R1’と同等な半径R2’によって形成されている。サイドウォールの半径方向で最も外側の領域に位置しているショルダリブ63a、63bは、本質的に標準膨張動作中にはトレッド52の一部ではなく、ランフラット動作中には路面に接触しない。さらに、ショルダリブ63a、63bの輪郭は、半径R2’によって形成される隣接する円曲線と非接線方向で交差する半径R3’を有する円曲線によって形成されている。
【0073】
図4Aおよび図4Bは、半径R1’、R2’、およびR3’を有する、輪郭を形成する互いに隣接する円曲線の幾何学的な関係の細部を示す概略図である。図4Bは、それぞれ半径R1’およびR2’によって形成された2本の円曲線が非接線方向で自然に交差することを示す、より詳細な拡大図である。円曲線同士が非接線方向で接する点82は、トレッド溝66bの半径方向外側に位置している。互いに隣接する2本の円曲線が非接線方向で交差することは、点82が、各円曲線の両方に同時に接する(紙面内で配向された)直線を含み得ないことで明白である。これは、図1に示されている従来技術のタイヤでは、トレッドの輪郭を形成する互いに隣接する円曲線が接線方向で交差するのと対照的である。同様に、図4Bで、ショルダリブ63B(および不図示の63a)の輪郭は、分離溝65bの半径方向外側に位置する点83で、半径R2’によって形成される円曲線と交差する、半径R3’の円曲線によって形成されている。図4Bで、トレッド溝66bが存在しない場合、トレッド64bの、点82の右側の部分の輪郭は、トレッド52の最も中央寄りの部分54の輪郭を形成する(半径R1’を有する)隣接する円曲線と滑らかに、あるいは連続的に連結することはない。
【0074】
大きな曲率半径を有する非接線方向の円曲線によって形成されるトレッドの輪郭の利点の1つは、トレッドリブ64a、64b(図3参照)が、従来技術のタイヤの対応する部分よりも平坦である(すなわち、曲がりが小さい)ことである。より平坦なリブ64a、64bを有することの利点は、図1に示されているR3と同等な半径(不図示)を有する単一の円曲線によって形成された従来技術のタイヤのショルダリンク96の“ローリング”効果を、ヒンジおよびリンク装置によって示す図4Cおよび図4Dを検討したときに、より明らかになろう。より具体的には、図4Cおよび4Dは、サイドウォールリンク92、トレッドリンク94、ショルダリンク96、サイドウォールショルダ間ヒンジ97、およびトレッドショルダ間ヒンジ98を有する“タイヤ”90のショルダ領域を示している。図4Cおよび図4Dのヒンジ97、98は、従来技術のタイヤに見られる種類の分離溝に対応する。
【0075】
本発明の動力学的動作
図4Cは、ショルダの輪郭が、図1の半径R3と同等な曲率半径を有する円曲線に従って決定される、従来技術の膨張したタイヤ90の“サイドウォール”92、“トレッド”94、および“ショルダ”96の空間関係を示している。図4Dは、タイヤ90が膨張していないときの空間関係の変化を示している。図4Dの例において、サイドウォール92は、下向きに降下しており、反時計回りに揺動するショルダリンク96にかかるタイヤの荷重の多くを支持するようにし、トレッド94を地面から持ち上げる。
【0076】
対照的に、本発明の動作が、図4Cおよび図4Dと同様な概略的なリンクシステムを示す図5A、5B、および図5Cに示されている。図5Aは、路面99と接触する完全に膨張した“タイヤ”100を示している。図5A、図5B、および図5Cの“ヒンジ”および“リンク装置”は、図3の断面図の右側に示されている、本発明の以下の構成要素に対応する。すなわち、リンク102はサイドウォール80に対応し、ヒンジ110は、サイドウォール80に連結するリブ63bの、半径方向で最も内側の縁部に対応し(これは、比較的高剛性のヒンジ点であり、タイヤが収縮するときに最後にたわむものである)、湾曲リンク112はリブ63bに対応し、ヒンジ114は分離溝65bに対応し、リンク106は最も側方のトレッドリブ64bに対応し、ヒンジ108は分離溝66bに対応し、リンク104はトレッド52の最も中央寄りの部分54(すなわち、トレッドの、分離溝66aと分離溝66bとの間に位置する部分)に対応する。
【0077】
図5A、図5B、および図5Cを順次参照すると、タイヤ100が収縮すると、まず“ヒンジ”108が屈し、それによってリンク106が道路99上に接し(図5B、中間膨張)、タイヤがさらに収縮すると、“ヒンジ”114が屈し(図5C、零膨張)、それによって湾曲リンク112の広い部分が道路上に接する。図5Aから図5Cまでの一連の進行で、“サイドウォール”102が横方向外側に移動すること、104で示されているトレッドの中心部が地面から持ち上がらないこと、トレッドの有効フットプリントの幅が実際に大きくなり、ランフラット動作中の道路との接触の改善が実現することに留意されたい。あるいは、別の観点から考えると、比較的平坦なトレッドリブ64a、64b(図3および図4A、および図5Aのリンク108)は、従来技術の図1および概略的な図4Cおよび図4Dに示されており、前記した、対応する従来技術のショルダリブよりも容易に、地面と完全に接触することができる。言い換えると、ランフラット動作中には、本発明の、最も側方のリブ64a、64bは、わずかに反るだけで道路と完全に接触し、このような小さく尖った反りにより、曲げ力および持上げ力の、トレッド52の最も中央寄りの部分55への伝達が最小になり、したがって、ランフラット動作中にトレッドが持ち上がる可能性が最小になる。さらに、ランフラット動作中に、トレッドリブ64a、64bの道路との完全な接触を導く、小さく尖った反りに関連する、最小のトレッド持上げ力は、(図4で従来技術のタイヤ90について示された、曲率半径の小さい“ショルダ要素”96の場合には、対応する利益をもたらさない)横方向のトレッド溝66a、66bのねじれ分離効果によってさらに低減される。
【0078】
サイドウォールリブ
図3を参照すると、サイドウォール領域77、78は、サイドウォールリブ63a、63bおよびリムフランジプロテクタ69a、69bを有する、成形された各サイドウォール79、80を備えている。リムフランジプロテクタ69a、69bは、ランフラット動作中にタイヤをホイールリム上に保持するように動作し、それに対してチェーファー62a、62bは、下にあるプライ構造がホイールリムと接触して磨耗しないように保護する。
【0079】
サイドウォールリブ63a、63bの輪郭は、半径R3’を有する円曲線によって形成されている(リブ63aについては示されていない)。直線的な道路上での標準膨張動作の下では、サイドウォールリブ63a、63bは路面とほとんどあるいはまったく接触しない。しかし、ランフラット動作の下では、タイヤ50の、トレッド52が道路と接触する部分で、サイドウォール領域77、78が軸方向外側に座屈するとき、サイドウォールが変形することによって、リブ63a、63bが回転し、道路と密に接触する。この接触は、図5Cに概略的に、そして図6に図解式に、示されている。
【0080】
図6は、膨張圧0の条件の下で路面85に接触するタイヤ50のトレッドの部分を示している。このような条件の下では、サイドウォールリブ63a、63bが道路と接触し、それにより、タイヤが標準膨張の下で動作させられるときよりも広いトレッドフットプリントが形成される。このような広いフットプリントによって、トレッド52と路面85との間の、膨張0のとき、すなわちランフラット時の接触が改善され、それによって、本発明のタイヤを備える車両のランフラット操作性が改善される。
【0081】
分離溝
図3を参照すると、サイドウォール領域77、78は、最も側方にある分離溝65a、65bおよび分離溝66a、66bによって、ねじり力のトレッド52への伝達に関して分離している。タイヤ50が収縮すると、分離溝66a、66bによってトレッドリブ64a、64bが完全に接触し、同時にわずかに回転する。収縮が継続するにつれて、図6に示されかつ図5Cに概略的に示されているように、リブ63a、63bが徐々に道路に接触していくように、分離溝65a、65bが曲がっていく。したがって、2組の分離溝66a、66bおよび65a、65bは、タイヤが非膨張すなわちランフラットモードのときに、外側に座屈したサイドウォール77、78からのねじり力の伝達を妨げる。なお、2組の分離溝66a、66bおよび65a、65bは、それぞれショルダおよびトレッド上で周方向に向けられており、連続していても、していなくてもよく、タイヤ上の周方向位置に一様な直線状に整列していても、していなくてもよい。すなわち、これらの溝は不連続であってもよく、および/または一様なジグザグ状であってもよい。さらに、カーカス構造61を含み、場合によってはベルト構造56および繊維オーバレイ53の縁部も含む、タイヤ構造の、溝65a、65bの下に存在する部分の厚さは、タイヤ50のトレッド52、繊維オーバレイ、ベルト構造、およびカーカス構造のショルダ領域の総組合せ厚さの約20%から約60%の範囲内である。タイヤ構造の、溝65a、65bの下にある部分の厚さは、トレッドおよびその下に存在する構造の前述のショルダ部の約30%から約50%の範囲内であることが好ましい。
【0082】
従来技術に対する本発明の概念の動作
本発明の概念は、ランフラットモードで動作させられるときのランフラットタイヤに関連するトレッドの座屈、すなわちトレッドリフトを解決しようとするものである。本発明は、トレッドおよびその下に存在する構造の横方向の剛性を補強するために使用されている従来技術の様々な方法を使用することなしに、トレッド持上げ力および曲げ力の伝達を抑制する。本発明は、ショルダ領域内の分離溝65a,65bと、トレッドリブ64a、64bとトレッド52の最も中央寄りの部分54との間に位置する分離溝66a、66bとを含むことによって、トレッドの中心部に非接線方向で連結するリブ64a、64bの輪郭を形成する大きな曲率半径と相俟って、本発明のタイヤのトレッドが、ランフラット動作中にトレッドの道路との接触量を実際に増大させることを可能にする。より具体的には、大きな曲率半径を有し非接線方向にトレッドの輪郭を形成する円曲線を用いることによって、トレッド52の最も側方のリブ64a、64bが、顕著な曲げ応力を、トレッドの中心部54に向かって軸方向内側に伝達することなしに、ランフラット荷重のうちのより多くの部分を受けることができる。したがって、本発明の概念は、トレッドを横切る構造補強物に関する重量面の欠点を生じさせずに、良好なトレッド−道路間フットプリントを維持できるランフラットタイヤ、ランフラット動作中の有効作動幅および面積を増大させるものでさえあるランフラットタイヤを提供する。この最終的な結果として、特に、熱の蓄積が最小に抑えられるように、上向きの座屈と、それに対応する循環的なたわみが最小に抑えられるトレッド52の中心の中央領域54において、優れたランフラット操作特性と、改善されたランフラット動作寿命とを有するランフラットタイヤが得られる。
【0083】
低アスペクト比構造
図3を参照すると、低アスペクト比構造のランフラット・ラジアルプライタイヤにおける、本発明の実施形態が示されている。このような実施形態は、高性能スポーツタイプ車両または軽トラックにおけるランフラット動作に使用することができる。この低アスペクト比ランフラット・ラジアルプライ・ランフラット空気入りタイヤ50は、2本のベルト67、68と、2つのプライ70、72とを含んでいる。外側のプライ72は、タイヤ50のショルダに剛性を付与する非伸長性の金属製コードで補強されている。トレッドリフトおよびその結果として生じる車両操作上の欠点を抑制するために、本発明のこの特徴を採用しない場合、ランフラット動作中にトレッドリフトが生じる傾向がある。
【0084】
本発明をその実施形態と組み合わせて説明したが、上記の教示を考慮すれば、多数の代替例、修正例、および変形例が当業者にとって明らかであることは明白である。したがって、本発明は、添付の請求の範囲の趣旨および範囲内の、すべてのこのような代替例、修正例、および変形例を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 インサート補強式サイドウォールを組み込んでおり、トレッド・オーバ・サイドウォール(TOS)構成方法に従って作製された、従来技術のランフラットタイヤ構造の断面図である。
【図2】 図2Aは、標準膨張状態の、図1の従来技術のランフラットタイヤの地面接触部分の部分断面概略図、図2Bは、非膨張状態の、図1の従来技術のランフラットタイヤの地面接触部分の部分断面概略図である。
【図3】 本発明の特徴の一構成を示す図である。
【図4】 図4Aは、互いに隣接する円曲線によって形成されたトレッドの輪郭の断面概略図、図4Bは、図4Aの断面概略図の拡大部分、図4Cは、完全に膨張した状態の、従来技術のタイヤのショルダ領域の簡略化された機構概略図、図4Dは、非膨張状態の、図4Cの従来技術のタイヤのショルダ領域の簡略化された機構概略図である。
【図5】 図5Aは、完全に膨張した状態の、本発明によるタイヤのショルダ領域の簡略化された機構概略図、図5Bは、部分的に膨張した状態の、本発明によるタイヤのショルダ領域の簡略化された機構概略図、図5Cは、収縮した状態の、本発明によるタイヤのショルダ領域の簡略化された機構概略図である。
【図6】 タイヤが膨張していないときの、本発明によるタイヤの地面接触部分の概略図である。
Claims (3)
- トレッド(52)と、非伸長性の2つの環状ビード(36a'、36b')と、少なくとも1つのラジアルプライ(70または72)を持つラジアルプライ構造(58)を有するカーカス(61)と、前記トレッドと前記ラジアルプライ構造との間に位置するベルト構造(56)と、1つまたは2つ以上のインサート(59a、59bまたは60a、60b)によって補強された2つのサイドウォール(79、80)とを有する、空気入りラジアルプライ・ランフラットタイヤ(50)において、
横方向に配置されたトレッドリブ(64a、64b)を有するトレッドと、
ランフラット動作中には駆動面と接触し、標準膨張圧での動作中には前記駆動面と接触しないようになっている、前記各サイドウォール(79、80)の半径方向に最も外側の領域の近傍に配置されたサイドウォールリブ(63a、63b)と、
前記サイドウォールリブ(63a、63b)と、隣接する前記トレッドリブ(64a、64b)との間に、周方向に配置された第1の分離溝(65a、65b)と、
前記トレッドリブ(64a、64b)と、隣接する前記トレッド(52)の中央領域(54)との間に、周方向に配置された第2の分離溝(66a、66b)と
を有することを特徴とする空気入りラジアルプライ・ランフラットタイヤ。 - 横方向に配置された前記トレッドリブ(64a、64b)の輪郭と、前記トレッド(52)の前記中央領域(54)の輪郭とを形成する、それぞれの円曲線が、非接線方向で交差している、請求項1に記載のタイヤ(50)。
- 前記トレッド(52)の前記中央領域(54)から前記トレッドリブ(64a、64b)を分離している、周方向に配置された前記第2の分離溝(66a、66b)が、周方向に連続している、請求項1に記載のタイヤ(50)。
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