JP4103949B2 - ゴム複合体の設計方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤ等のゴム複合体の設計方法に関し、さらに詳しくは、特に有限要素法を用いて耐久性に優れたゴム複合体を設計する場合、その形状とゴム材料物性及び補強材物性を効率よく選定し、設計で予測した通りの耐久性が得られるようにするゴム複合体の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りタイヤ等の設計方法において、有限要素法( Finite Element Method ; 以下、単にFEMと略称する)を用いて耐久性のシミュレーションを行うことはよく知られている。特に、バス,トラック用の重荷重用空気入りタイヤや軽トラック用の空気入りタイヤの設計において、タイヤの耐久性を評価する手法として確立されつつある。
【0003】
しかし、従来のFEMを用いた空気入りタイヤの設計方法では、単に空気入りタイヤに空気圧とリムを設定して所望の縦荷重を加え、各要素に発生する歪、応力又は歪エネルギーなどの大小を比較検討するだけであった。そのためタイヤの形状や各パーツの形状の仮選定及びゴム材料物性の仮選定をし、その仮選定に基づいてFEMの計算をトライ・アンド・エラーを繰り返すことにより、歪、応力、歪エネルギーなどが比較的小さくなる形状やゴム材料物性を選定するというものであった。
【0004】
しかしながら、上記設計方法によると、計算上から歪、応力又は歪エネルギーが最も大きくなった箇所に故障が起こると予測したにもかかわらず、実際の走行試験をしてみると、歪、応力又は歪エネルギーが低いと計算された箇所に故障が発生するようなことがあり、必ずしもシミュレーションした結果と一致しないということがあった。
【0005】
例えば、FEMによる計算結果として、ベルト部のベルトエッジクッションの主歪が30%で、ビード廻り部のカーカスターンアップの主歪が20%という結果が得られたならば、従来の考え方では、単に主歪が大きいベルト部のベルトエッジクッションの方が、ビード廻り部のカーカスターンアップよりも耐久性が劣るという結果にしていた。しかしながら、実際のタイヤの耐久性は、このような結果にならない場合が多々あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、FEMによる耐久性のシミュレーション結果と現物の使用試験から得られる耐久性の結果とが良く一致するようにしたゴム複合体の設計方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれ下記(1),(2),(3)の設計方法からなることを特徴とし、これら設計方法のうちの一つ或いは二以上を組合せることにより上記目的を達成できるようにするものである。
【0008】
(1)ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の歪を計算して各パーツ(i)における要素中の最大主歪 (εi ) max を求め、前記ゴム材料の破断歪 (εi ) b の前記最大主歪 (εi ) max に対する比として計算される余裕率Siaが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
【0009】
(2)ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の応力を計算して各パーツ(i)における要素中の最大主応力 (σi ) max を求め、前記ゴム材料の破断応力 (σi ) b の前記最大主応力 (σi ) max に対する比として計算される余裕率Sibが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
【0010】
(3)ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の歪エネルギーを計算して各パーツにおける要素中の最大歪エネルギー密度 (Πi ) max を求め、前記ゴム材料の破断歪エネルギー密度 (Πi ) b の前記最大歪エネルギー密度 (Πi ) max に対する比の平方根として計算される余裕率Sicが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
【0011】
本発明は、単に最大主歪、最大主応力或いは最大歪エネルギー密度などの大小を比較するだけで、ゴム複合体の形状、各パーツの形状、ゴム材料物性などを決定するのではなく、余裕率の概念を導入して設計するようにしたことに特徴がある。すなわち、ゴム複合体の形状、各パーツの形状、ゴム材料物性を決定する際に、それぞれゴム材料の破断歪 (εi ) b の最大主歪 (εi ) max に対する比として計算される余裕率Sia、又は破断応力 (σi ) b の最大主応力 (σi ) max に対する比として計算される余裕率Sib 又は破断歪エネルギー密度 (Πi ) b の最大歪エネルギー密度 (Πi ) max に対する比の平方根として計算される余裕率Sicが、それぞれ所定の基準余裕率S0 と同等以上になるように決定するようにしたのである。このように余裕率の概念を導入して決定するようにしたことにより、FEMによる耐久性のシミュレーションの結果と現物の使用試験による耐久性の結果とをより良く一致させ、FEMによるシミュレーションの精度を一層向上するのである。
【0012】
すなわち、単にFEM解析の結果のみでなく、そこに使われている材料のポテンシャル(この場合は破断歪)を考慮して、その比をとることにより、余裕率という概念を導入した。この余裕率の概念の導入により、単なるFEM解析の結果のみでなく、材料のポテンシャルをも考慮して評価することにより、より精度の高い評価方法になる。
【0013】
FEMによる計算結果として、ベルト部のベルトエッジクッションの主歪が30%で、ビード廻り部のカーカスターンアップの主歪が20%という結果の例では、ビード廻り部のカーカスターンアップの材料の破断歪が200%で、ベルト部のベルトエッジクッションの材料の破断歪が450%ならば、それぞれの余裕率はビード廻り部のカーカスターンアップでは10に対して、ベルト部のベルトエッジクッションでは15となる。この場合には、FEM解析結果では小さい主歪であったビード廻り部のカーカスターンアップの方が耐久性に劣るということになる。事実、そのような事例があった。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において「ゴム複合体」とは、有機繊維コード、スチールコードなどの補強材で強化されたゴム成形品をいう。このゴム複合体の代表例として、例えば空気入りタイヤ、ゴムホース、コンベヤベルトなどを例示することができる。
【0015】
有限要素法(FEM)は、前述したように空気入りタイヤの設計において、耐久性のシミュレーションによく用いられている手法である。すなわち、設計の対象となるゴム複合体を有限要素と呼ばれる多数の有限個の要素に分割し、これら各要素毎に特性を与えた系全体をコンピュータを使用して数値解析する手法である。なお、タイヤ等の構造解析に有限要素法を用いた文献としては、例えば「有限要素解析」〔日本ゴム協会誌、第62巻、第4号、P204(1989)〕等がある。また、特開平11−153520号公報にもタイヤ性能を予測する上でのFEMによる解析システムが示されている。
【0016】
本発明において、主歪とは、上記有限個の各要素に生じた垂直歪みεと剪断歪みγとを、三次元座標x,y,zでそれぞれ6個の歪み成分εx , εy , εz ,γxy,γyz,γxzで表したとき、これら6成分を合成したときの歪のことをいう。また、最大主歪とは、各パーツに含まれる複数の有限要素にそれぞれ生ずる主歪のうち、最大値を示す主歪のことをいう。
【0017】
また、主応力とは、同じく各有限要素に生じた垂直応力σと剪断応力τとを、三次元座標x,y,zでそれぞれ6個の応力成分σx , σy , σz ,τxy,τyz,τxzで表したとき、これら6成分を合成したときの応力のことをいう。また、最大主応力とは、各パーツに含まれる複数の有限要素にそれぞれ生ずる主応力のうち、最大値を示す主応力のことをいう。
【0018】
歪エネルギー密度とは、応力σを縦軸、歪みεを横軸にとって応力−歪み曲線(S−S曲線)を描いたとき、そのS−S曲線と横軸とに囲まれた面積で表された量をいう。破断歪エネルギー密度は、破断点(εb )までのS−S曲線に囲まれた面積の量をいう。また、最大歪エネルギー密度とは、シミュレーション上の結果よりタイヤ1回転中に各要素に生ずる最大の歪エネルギー密度をいう。
【0019】
以下、本発明に基づく空気入りラジアルタイヤの設計を、コンピュータを使用して歪に関してシミュレーションする場合につき、図1のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
プログラムをスタートして、まずステップ10で、目的とするタイヤ形状及びそのタイヤを構成する各パーツの形状を仮選定する。次いで、ステップ11で、各パーツに使用するゴム材料物性を仮選定する。タイヤ形状の主要な骨格部分は、タイヤが重荷重用であるか、乗用車用であるかなどの用途に応じて略経験的に決まっているので、それらを参考に仮選定する。各パーツの形状は、耐久性の観点からトレッド部のベルトエッジにおける形状や、カーカスターンアップにおける形状を重点に仮選定する。同じく、耐久性の観点から各パーツのゴム材料物性を仮選定する。
【0021】
それぞれタイヤの形状の仮選定、各パーツの形状の仮選定、ゴム材料物性の仮選定が済むと、次のステップ12で、FEMによる計算を実施する。FEM計算は、ステップ10,11で仮選定した形状と材料物性を、各パーツ毎に与えて行う。すなわち、図2のように各パーツを多数の有限個の要素ei に分割し、それぞれ3次元座標x−y−zを用いて相互の位置関係が逐一特定できるようにして、それぞれの要素に形状データ、材料データ、境界データ、荷重データの各条件を与えて主歪みを計算する。
【0022】
FEM計算は、タイヤの事例では内圧及び垂直荷重を作用させた時の計算が基本である。しかし、よりタイヤの走行に近い状況を再現するには、制動時、さらに遠心力、コーナリング時の解析をしてもよい。ただし、これらの計算には多大な計算時間がかかるので、一般的には内圧及び垂直荷重を作用させた時の計算が中心となる。
【0023】
図2は、所定荷重下に転動するタイヤを、接地時の負荷を受けた状態を実線のタイヤTで、また接地から180度回転して接地負荷が解除された状態を破線のタイヤT’で示す。FEM計算は、このように形態が変形するタイヤの各パーツ(i)において、複数に分割された各要素ei 毎に、それぞれ形状データ、材料データ、境界データ、荷重データを入力して主歪を計算するのである。
【0024】
ゴム材料物性は、例えば図3のような応力−歪曲線を有している。すなわち、ゴム材料が新品時の特性は曲線Aのようであるが、一定期間使用して劣化すると曲線A’のように変化する。本発明のゴム複合体の設計においては、基本的には新品時の特性(曲線A)を採用する。ただし、後述するように劣化時の曲線A’を利用することも可能である。
【0025】
カーカス層、ベルト層等の補強部材については、一般的に複合材料理論で評価すればよい。詳細については、例えば「最近のFRRの力学とその応用」〔日本ゴム協会誌、第61 巻、第3号、P.187(1988) 〕を参照することができる。
【0026】
複数の有限要素eiの主歪の計算が終了すると、次にステップ13により、各パーツ(i)における要素中の最大主歪(εimax 求め、さらに次のステップ14により、各最大主歪(εimaxの余裕率Sia 計算する。余裕率Siaは、ステップ11で各パーツ(i)に仮選定されたゴム材料の破断歪(εibとの比として、下記の(1)式から計算される。
【0027】
ia= (εi ) b / (εi ) max ・・・・ ▲1▼
次いで、ステップ15で、上記ステップ14で計算された余裕率Siaを、予め設定しておいた基準余裕率S0 と比較する。この比較で、▲1▼式で計算された余裕率Siaが、基準余裕率S0 よりも小さいとき(Sia<S0 )は、再びステップ10に戻り、SiaとS0 の関係を逆転できそうなタイヤ形状、各パーツの形状を仮選定し、ステップ11で各パーツ(i)のゴム材料物性を再度仮選定する。これら再度仮選定したデータを基に、ステップ12のFEM計算を再び行い、ステップ13で、上記FEM計算で求めた各パーツの要素中から最大主歪 (εi ) max を求め、ステップ14で余裕率Siaを再び求める。そして、その余裕率Siaをステップ15で再び基準余裕率S0 と比較する。
【0028】
上記ステップ10,11,12,13,14,15の操作を、余裕率Siaの計算結果が Sia≧S0 の関係を満足するようになるまで繰り返すものとし、その操作は Sia≧S0 を満足した時点で終結する。その終結時におけるタイヤ形状、各パーツ形状、ゴム材料物性を、目的のタイヤ形状、各パーツ形状およびゴム材料物性として決定する。これらの操作は市販のコンピュータソフトを使用して容易に実施することができる。
【0029】
上述した余裕率Siaの計算は、タイヤを構成する全パーツについて実施するが、空気入りラジアルタイヤにおいては、特にベルトエッジ部のゴム材料及びカーカス折返し端部付近のゴム材料が故障しやすいことが経験的にわかっている。したがって、これらベルトエッジ部やカーカス折返し部の箇所を重点的に 余裕率Siaの計算を行うことが好ましい。
【0030】
また、タイヤの或る特定のパーツで余裕率が十分大きい場合には、この部分の余裕率を下げるようにし、その回りのパーツの余裕率を高くするように調整するとよい。このような調整を行うことにより、タイヤ全体として余裕率が一様になるようにすれば、効率的な設計が可能になる。
【0031】
本発明において、基準余裕率Soの大きさは特に限定されるものではないが、好ましくは9〜30の範囲で設定するとよい。基準余裕率Soが9よりも低いと耐久性に不安がある。しかし、基準余裕率Soを30を超えるほどに大きくしても、トレッドの摩耗限界からタイヤ寿命に達するので意味がない。ゴム複合体が空気入りタイヤである場合の基準余裕率Soは、乗用車用空気入りタイヤの場合9〜30の範囲に、また重荷重用空気入りタイヤの場合は12〜30の範囲に設定するとよい。
【0032】
従来、剛性構造体等の設計においては、本発明で採用した余裕率に近似する概念として安全率がある。しかし、安全率は、材料力学上で歪−応力曲線(S−S曲線)がリニア(直線的)に変化する鋼材等の剛性構造体に採用されていたものであり、ゴム材料のようにS−S曲線が図3のようにリニアでない材料には一般的に適用されていなかったのである。そこで本発明者らは、種々検討を行った結果、以下のような考えに基づいて、ゴム材料に余裕率の概念を採り入れるに至ったのである。
【0033】
すなわち、空気入りタイヤ等のゴム複合体において、外力を支える強度メンバーは、主としてS−S曲線がリニアなスチールコードや有機繊維コードなどの補強材であり、S−S曲線が非リニアで剛性の低いゴム材料は強度メンバーとしては安定した機能を発揮せず、専ら空気を保持するためにコード等の補強材の間に介在し補強材を補完している。しかし、本発明者らは、前述したようにFEM計算によるタイヤ耐久性のシミュレーション結果と実際のタイヤ走行試験による耐久性の結果とが往々にして一致しないことに着目し、ゴム材料に余裕率の概念を導入することで、FEMのシミュレーション結果と実走による結果との一致を図り、精度の高いFEMによるゴム製品の設計を可能にしたのである。
【0034】
図1の実施形態では、ゴム材料の歪を基にしてタイヤ耐久性のシミュレーションをする場合について説明したが、本発明は歪に替えて、タイヤ内に発生する応力や歪エネルギー密度に基づいても、歪みの場合と同様に耐久性のシミュレーションを行うことができる。
【0035】
すなわち、図1において、ステップ13で求める最大主歪に代えて、最大主応力 (σi ) max 及び/又は最大歪エネルギー密度 (Πi ) max を求め、この最大主応力 (σi ) max とゴム材料自身の破断応力 (σi ) b から、 及び/又は 最大歪エネルギー密度 (Πi ) max と ゴム材料自身の破断歪エネルギー密度 (Πi ) b から、ステップ14で計算する余裕率Sib、Sicを、それぞれ次の▲2▼式及び/又は▲3▼式から求めるのである。
【0036】
ib= (σi ) b / (σi ) max ・・・・ ▲2▼
ic=√〔 (Πi ) b / (Πi ) max 〕 ・・・ ▲3▼
なお、ここで歪エネルギー密度Πについては、歪εとの間に
Π=(1/2)E・ε2 ・・・・ ▲4▼
の関係があるので、歪エネルギー密度の余裕率Sicとしては、最大歪エネルギー密度 (Πi ) max に対する破断歪エネルギー密度 (Πi ) b の比の平方根を使用するものとする。
【0037】
次いで、上記のように計算された余裕率SibやSicが、基準余裕率S0 に対して、Sib≧S0 及びSic≧S0 の関係を満足するまで、ステップ10,11,12,13,14,15の操作を繰り返し、上記関係を満足したときのタイヤ形状、各パーツ形状およびゴム材料物性を最終の設計値に決定するのである。
【0038】
本発明において、応力に基づく余裕率Sibや歪エネルギー密度に基づく余裕率Sicの評価は、それぞれ単独で解析してタイヤ形状、各パーツ形状およびゴム材料物性を決定してもよいが、前述した歪に基づく余裕率Siaと組み合わせて決定するようにしてもよい。
【0039】
また、ゴム材料は、鋼材等とは異なり、図3に示すように、使用により経時的に劣化し、S−S曲線が新品時の曲線Aから曲線A’に変化することにより、破断歪εb はεb ’と小さくなり、また破断歪エネルギー密度もΠb からΠb ’に減少する特性がある。応力σの場合も同様であって、新品時の破断応力σb は σb ’と小さくなる。このようなゴムの特性を踏まえ、前述した本発明の歪、応力及び/又は歪エネルギーに基づく余裕率の評価を、一定期間後の経時劣化したS−S曲線A' に基づいて行うようにしてもよい。
【0040】
このように新品時のゴム特性に加えて、経時劣化した曲線A' に基づく余裕率の評価を加えることにより、より精度の高いFEMによるタイヤ設計を可能にすることができる。
【0041】
以上は、ゴム複合体が空気入りタイヤである場合の設計法について説明したが、本発明はゴムホース、コンベヤベルトなど、他のゴム複合体の設計にも適用することができる。
【0042】
【実施例】
下記仕様の重荷重用空気入りラジアルタイヤを、下記の2通りの手順により歪に関する余裕率Siaを計算して設計を行った。
【0043】
仕様:
タイヤサイズ; 1000R20 16PR
リム: 7.50V X20
空気圧: 725Kpa
荷重: 2000Kg
手順:
タイヤの形状と該タイヤを構成する各パーツ(i)の形状の仮選定と、各パーツ(i)に使用するゴム材料物性の仮選定とを行った後、前記タイヤを多数の有限要素に分割し、有限要素法により各要素中のゴム材料の歪を計算し、各パーツ(i)における要素の中の最大主歪 (εi ) max を求め、上記で選定したゴム材料の破断歪 (εi ) b の最大主歪 (εi ) max に対する比である余裕率Siaを計算した。その結果、ベルトエッジ部分の余裕率Siaは10であり、カーカスターンナップ部分の余裕率Siaは15であった(比較例)。
【0044】
これに対して、基準余裕率S0 を12に設定し、上記操作によるベルトエッジ部分の余裕率Siaが、基準余裕率S0 の12を超えるようになるまで引き続き繰り返してタイヤを設計した(実施例)。
【0045】
実車試験及び結果:
上記設計の比較例タイヤと実施例タイヤとをそれぞれ5本ずつ製作し、それぞれ最大積載荷重10トンの平ボデー車両に80%積載質量で高速道路走行20%を含む一般舗装路を走行させ、更正を2回行なうまで走行させた。
【0046】
比較例タイヤと実施例タイヤのベルトエッジ部分とカーカスターンナップ部分を剥離評価したところ、比較例タイヤについては、ベルトエッジ部分に5本全てのタイヤに剥離故障を発見した。しかし、実施例タイヤでは、5本とも剥離故障が発見されなかった。
【0047】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、余裕率の概念を導入することにより、ゴム材料の破断歪 (εi ) b の最大主歪 (εi ) max に対する比として計算される余裕率Sia、又は破断応力 (σi ) b の前記最大主応力 (σi ) max に対する比として計算される余裕率Sib、又は破断歪エネルギー密度 (Πi ) b の前記最大歪エネルギー密度 (Πi ) max に対する比の平方根として計算される余裕率Sicが、いずれも所定の基準余裕率S0 と同等以上になるようにゴム複合体の形状、各パーツの形状、ゴム材料物性などを決定するので、FEMによる耐久性シミュレーションの結果と現実の試験による耐久性の結果とを一致させることができ、FEMによるシミュレーションの精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴム複合体の設計方法の一例を示すフローチャートである。
【図2】多数の有限要素に分割した空気入りタイヤが接地した状態と、非接地状態とを合わせて図示した有限要素のモデル図である。
【図3】ゴム材料の応力−歪曲線の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
T 接地時の空気入りタイヤ
T’ 接地から180度回転した位置での空気入りタイヤ
i 有限要素

Claims (5)

  1. ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の歪を計算して各パーツ(i)における要素中の最大主歪 (εi ) max を求め、前記ゴム材料の破断歪 (εi ) b の前記最大主歪 (εi ) max に対する比として計算される余裕率Siaが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
  2. ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の応力を計算して各パーツ(i)における要素中の最大主応力 (σi ) max を求め、前記ゴム材料の破断応力 (σi ) b の前記最大主応力 (σi ) max に対する比として計算される余裕率Sibが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
  3. ゴム複合体の形状と該ゴム複合体を構成する各パーツ(i)の形状及び各パーツ(i)に使用するゴム材料物性をそれぞれ仮選定した後、前記ゴム複合体を多数の有限な要素に分割すると共に、有限要素法により各要素中の歪エネルギーを計算して各パーツ(i)における要素中の最大歪エネルギー密度 (Πi ) max を求め、前記ゴム材料の破断歪エネルギー密度 (Πi ) b の前記最大歪エネルギー密度 (Πi ) max に対する比の平方根として計算される余裕率Sicが、全てのパーツ(i)について所定の基準余裕率S0 と同等以上になるまで、前記ゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性の仮選定と有限要素法の計算とを繰り返すことにより、これらゴム複合体と各パーツ(i)の形状及びゴム材料物性を決定するゴム複合体の設計方法。
  4. 前記基準余裕率S0 を9〜30の範囲から設定する請求項1、2又は3に記載のゴム複合体の設計方法。
  5. 前記ゴム複合体が空気入りタイヤである請求項1、2、3又は4に記載のゴム複合体の設計方法。
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