JP4102056B2 - ハニカム押出成形用口金及びこれを用いて作製されたハニカム構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハニカム押出成形用口金及びハニカム構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車排気ガス浄化用触媒は、セラミック製のハニカム担体(ハニカム構造体)の各セル表面に触媒成分が担持されていわゆるハニカム触媒を形成するが、その軸方向強度が断面(径)方向のそれよりも高いことから、ハニカム担体の軸方向で把持する構造が採用されていた。この場合、その軸方向に把持する際に外周部付近で破損することを防ぐため、外周部のセル隔壁(リブ)を内部よりも厚くして、ハニカム担体の軸方向の耐圧強度を高めていた。
【0003】
しかしながら、最近、エンジンの高出力化指向に伴うハニカム触媒での圧力損失の低減要求や、排ガス規制強化に伴う触媒担体全体の有効利用の要請により、ハニカム触媒担体を軸方向把持するのではなく、ハニカム触媒担体の外周面で主に把持する構造が採用され始めた。これは、排ガス規制強化により触媒容積が増加して触媒質量が増加するため、エンジン振動に対して軸方向把持では把持面積が少なくて十分に把持できなくなったことも一因であった。
【0004】
また、一方では触媒の浄化性能を向上させるために、ハニカム担体のセル隔壁厚さを薄くしてハニカム担体を軽量化することにより、触媒の熱容量を低減して浄化性能の暖機特性を向上させる動きが始まっている。
【0005】
このため、セル隔壁の薄壁化でハニカム担体の外周面からの外圧による破壊強度は一層低下する傾向となっている。
さらに、最近の排ガス規制の更なる強化のため、エンジン燃焼条件の改善、触媒浄化性能の向上を狙いとして、排気ガス温度が年々上昇してきており、ハニカム担体に要求される耐熱衝撃性も厳しくなってきている。
このように、セル隔壁の薄壁化、ハニカム担体の外周面把持採用、及び排ガス温度の上昇等により、セル隔壁やハニカム外壁の厚さの設定及びハニカム構造体のアイソスタティック強度向上並びに外形形状及び隔壁形状の高精度化が大きな課題となってきている。
【0006】
以上の点を鑑み、特願2000−236122においては、図6〜7に示すセラミック製ハニカム構造体が提案されている。
上記セラミック製ハニカム構造体は、図6に示すように、複数のそれぞれ隣接したセルの複合体を形成するセル隔壁(リブ)2と、このセル複合体の最外周に位置する最外周セルを囲繞して保持する外壁4とから構成されており、セル隔壁2により仕切られた複数の貫通孔(セル)3の複合体からなっている。
また、上記セラミック製ハニカム構造体は、図7に示すように、境界線33を境にして、隔壁の厚さは2a>2bとなっている。
【0007】
これにより、上記セラミック製ハニカム構造体は、従来のものと比較して、圧力損失の増大及び耐熱衝撃性の低下によるマイナス面とアイソスタティック強度の向上並びに隔壁形状及びハニカム構造体形状の高精度化によるプラス面との調和をバランスよく実現することができるため、自動車排気ガス浄化触媒用担体等として期待されている。
【0008】
ここで、上記ハニカム構造体を押出成形する時に用いる口金は、例えば、図3に示すようなものであり、通常、口金加工は、内側スリット部の寸法で、口金全体(22、24、26)のスリットを加工した後、外周スリット部24のX軸、Y軸を加工するため、Y軸方向に図3(a)に示すような砥石の軌跡40が残る。
【0009】
上記口金を用いて、ハニカム構造体の押出成形をした場合、特に、セルブロック▲1▼と▲2▼、▲2▼と▲3▼の間のX軸方向の押出速度と比較して、ブロック▲2▼のY軸方向の押出速度が遅くなることにより、セル欠損(図4のC部)が生じ易かった。
【0010】
このため、上記口金で押出成形されたセラミック製ハニカム構造体は、図5に示すように、外周部6と内側部7との境界部32に、セル欠損欠陥30が発生してしまうという問題点があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セル抜け不良等のセル形成不良を防止することにより、より高い寸法精度と強度をハニカム構造体に付与することができるハニカム押出成形用口金と、これを用いて作製されたセルを形成する隔壁が薄壁であるハニカム構造体を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金であって、内側スリット部、外周スリット部及び最外周スリット部とからなり、該外周スリット部に配設されたスリット幅が、該内側スリット部に配設されたスリット幅よりも大きく、且つ該外周スリット部と該内側スリット部との境界部において、該境界部から該内側スリット部にかけて、口金の中心方向における該内側スリット部のスリット幅を、該外周スリット部のスリット幅と同じにした延長スリットを複数設けてなることを特徴とするハニカム押出成形用口金が提供される。
【0013】
このとき、本発明では、成形原料の押出方向に垂直な断面形状が、円形であることが好ましい。
また、外周スリット部と内側スリット部との境界線から、口金の中心方向に対して内側スリット部に延長された延長スリットを形成するセルブロック数は、1〜3であり、且つ口金の円周方向に対して内側スリット部に延長された延長スリットを形成するセルブロック数は、10〜20であることが好ましい。
【0014】
また、本発明では、境界部のセルブロックのスリット加工深さが、通常のスリット深さの2/3以上であることが好ましい。
【0015】
更に、本発明では、内側スリット部のスリット幅が、75μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、複数のセル通路を有するハニカム構造体であって、内側部、外周部及び外壁とからなり、該外周部に配設されたリブ厚が、該内側部に配設されたリブ厚よりも大きく、且つ該外周部と該内側部との境界部において、該境界部から該内側部にかけて、ハニカム構造体の中心方向における該内側部のリブ厚を、該外周部のリブ厚と同じである延長リブ部を複数設けてなることを特徴とするハニカム構造体が提供される。
【0017】
このとき、本発明では、複数のセル通路に垂直方向の断面形状が、円形であることが好ましい。
また、外周部と内側部との境界線から、ハニカム構造体の中心方向に対して内側部に延長された延長リブ部が形成するセル数は、1〜3であり、且つハニカム構造体の円周方向に対して内側部に延長された延長リブ部が形成するセル数は、10〜20であることが好ましい。
【0018】
また、本発明では、内側部のリブ厚が、70μm以下であることが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のハニカム押出成形用口金は、成形原料を導入する裏孔と、成形原料を押し出すスリットとを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金であって、内側スリット部、外周スリット部及び最外周スリット部とからなり、外周スリット部に配設されたスリット幅が、内側スリット部に配設されたスリット幅よりも大きく、且つ外周スリット部と内側スリット部との境界部において、境界部から内側スリット部にかけて、口金の中心方向における内側スリット部のスリット幅を、外周スリット部のスリット幅と同じにした延長スリットを複数設けてなるものである。
【0020】
これにより、本発明のハニカム押出成形用口金は、セル抜け不良を防止することができるため、押出成形されたハニカム構造体に、より高い寸法精度と強度を付与することができる。
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の口金の一例を示すものであり、(a)は要部斜視図、(b)は要部正面図、(c)は延長スリット部の配置状態を示す模式図である。
本発明の口金は、例えば、図1(a)に示すように、成形原料の押出方向に垂直な断面形状が円形であり、成形原料を導入する裏孔16と、成形原料を押し出すスリット12,14とを備え、且つ内側スリット部22、外周スリット部24及び最外周スリット部26とからなる口金20である。
【0022】
ここで、本発明の口金の主な特徴は、図1(b)に示すように、境界線25から内側スリット部22にかけて、口金の中心方向における内側スリット部22のスリット12の幅aを、外周スリット部24のスリット14の幅bと同じにした延長スリット15からなる延長スリット部28(図1(c)参照)を設けることにある。
【0023】
また、本発明の口金の主な特徴は、図1(a)に示すように、境界部25を形成するセルブロック▲2▼のY軸面のスリット深さtaが、少なくとも通常のスリット深さtの2/3以上研削加工されていることにある。
【0024】
以上のことから、本発明の口金は、ハニカム構造体の押出成形をする場合、セルブロック▲2▼におけるX軸方向とY軸方向との押出速度差を緩和することができるため、セルブロック▲2▼のY軸方向から押し出されるリブの欠損を抑制できる。
これにより、本発明の口金は、例えば、図5に示すようなセル欠損欠陥30等のセル形成不良を抑制することができるため、押出成形されたハニカム構造体に高い寸法精度と強度を付与することができる。
【0025】
また、本発明の口金は、外周スリット部24の範囲が、最外周部26から口金中心部に数セルの範囲が好ましく、寸法精度と強度を満足するように適宜選べば良い。通常3〜10セルである。
【0026】
更に、本発明の口金におけるスリット境界部25の位置は、例えばハニカム構造体の外形形状が円形の場合、図1(c)に示すように、内側スリット部22に外接する正方形50の各辺に相当する。
【0027】
このとき、外周スリット部24と内側スリット部22との境界線25から、口金20のY軸(中心)方向に対して、内側スリット部22に延長された延長スリット15を形成するセルブロック数cは、1〜3であり、且つ口金20のX軸(円周)方向に対して、内側スリット部22に延長された延長スリット15を形成するセルブロック数dは、10〜20であることが好ましい。
【0028】
尚、本発明の口金は、外周スリット部の形状が、押出成形されるハニカム構造体の外形形状(例えば、円形、楕円形、正方形等の四角形、三角形等)に対し相似形が好ましく、外形形状によって、適宜選択することができる。
【0029】
次に、本発明の口金から得られたハニカム構造体は、図2(a)(b)に示すように、複数のセル通路3a,3bを有するハニカム構造体であって、内側部7、外周部6及び外壁4とからなり、外周部6に配設されたリブ厚gが、内側部7に配設されたリブ厚eよりも大きく、且つ外周部6と内側部7との境界線33において、ハニカム構造体のX軸(中心)方向に対する内側部7のリブ厚fが、外周部7のリブ厚gと同じである延長リブ部5を複数設けてなるものである。
【0030】
尚、図2(a)に示すように、外周部6と内側部7との境界線33から、ハニカム構造体1のY軸方向(中心)方向に対して、内側部7に延長された延長リブ部5が形成するセル数lは、1〜3であり、且つハニカム構造体1のX軸方向(円周)方向に対して、内側部7に延長された延長リブ部5が形成するセル数mは、10〜20であることが好ましい。
【0031】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
尚、押出成形用の成形原料は、以下のように作製した。
コージェライト組成粉末(タルク、カオリン、アルミナ等をそれぞれ用いて調製したもの)100質量%に、バインダー(ワックス:60質量%、EVA:35質量%、オレイン酸:5質量%)を28.5部添加した後、加圧ニーダーで、100℃×2hr、105Pa(1kg/cm2)の運転条件で混練した。
混練後、押出ホケ温度が65℃になるように、各部の温度を設定した後、φ100土練機で、φ115×200Lの成形原料Aを作製した。
尚、成形原料Aは、真空パックした後、ウォーターバスで60℃の温度で予備加熱した後、押出成形工程が行われる。
【0032】
また、本実施例で使用した口金は、以下に示す通りである。
(口金1:図3参照)
[外観形状]
直径φ104mm、厚さ20mmの円形形状。
[スリット形状]
同心円になるように、内側スリット部22、外周スリット部24、最外周スリット部26が形成されている。
▲1▼内側スリット部22:直径φ80mmの範囲、スリット幅55μm、スリット深さ3mm。
▲2▼外周スリット部24:幅10mmの範囲であって、内側スリット部22の範囲を除いた範囲、スリット幅80μm、スリット深さ3mm。
▲3▼最外周スリット部26:幅2mmの範囲であって、内側スリット部22と外周スリット部24の範囲を除いた範囲、スリット幅80μm、スリット深さ3mm。
▲4▼セル密度:600個/インチ2
【0033】
(口金2:図1参照)
口金2は、口金1の内側スリット部22に外接する正方形の各辺の内側スリット部22側に、外周スリット部24のスリット幅と同じである延長スリット部28を配設したものである。
このとき、外周スリット部24と内側スリット部22との境界線25から、口金20の中心方向に対して、内側スリット部22に延長された延長スリット15を形成するセルブロック数cは、1であり、且つ延長スリット部28の口金20の円周方向に対して、内側スリット部22に延長された延長スリット15を形成するセルブロック数dは、15であった。
【0034】
(実施例、比較例)
成形原料Aを、口金1(比較例1)又は口金2(実施例1)に示す口金をそれぞれ用い、横型30tonプランジャーで、6.0×105Pa(60kgf/cm2)の押出圧力で押出成形し、自然放置(冷却)後、所望温度で焼成することにより、外周セル隔壁2aの厚さ:64μm、内周セル隔壁2bの厚さ:50μm、外壁4の厚さ:0.2mm(図7参照)であるコージェライト質ハニカム構造体φ94mm×180mmLをそれぞれ作製した。
【0035】
(考察)
実施例は、本発明の口金(図1)でハニカム構造体の押出成形をすることにより、図2に示すような健全なコージェライト質ハニカム構造体を得ることができた。
一方、比較例は、従来の口金(図3)でハニカム構造体の押出成形をすると、図5に示すように、外周部6と内側部7との境界部32に、セル欠損欠陥30が発生していた。
【0036】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、セル抜け不良等のセル形成不良を防止することにより、より高い寸法精度と強度をハニカム構造体に付与することができるハニカム押出成形用口金と、これを用いて作製されたセルを形成する隔壁が薄壁であるハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の口金の一例を示すものであり、(a)は要部斜視図、(b)は要部正面図、(c)は延長スリット部の配置状態を示す模式図である。
【図2】 本発明の口金を用いて作製されたハニカム構造体の一例を示すものであり、(a)はハニカム構造体の部分拡大図であり、(b)は(a)のB部の拡大図である。
【図3】 従来の口金の一例を示すものであり、(a)は要部斜視図、(b)は要部正面図である。
【図4】 従来の口金を用いて作製されたハニカム構造体の一例を示す部分拡大図である。
【図5】 ハニカム構造体のセル欠損発生状況を示す模式図である。
【図6】 セラミック製ハニカム構造体の一例を模式的に示す説明図で、(a)は斜視図、(b)は平面図をそれぞれ示す。
【図7】 図6(b)のA部の部分拡大図である。
【符号の説明】
1…セラミック製ハニカム構造体、2…セル隔壁、2a…外周セル隔壁、2b…基本セル隔壁、3a,3b…セル(セル通路)、4…外壁、5…延長リブ部、6…外周部、7…内側部、8…最外周セル、9…最外周から2番目のセル、12…スリット(内側スリット部)、14…スリット(外周スリット部)、15…延長スリット(延長スリット部)、16…裏孔、20…口金、22…内側スリット部、24…外周スリット部、25…境界線、26…最外周スリット部、28…延長スリット部、30…セル欠損欠陥、32…境界部、33…境界線、40…砥石の軌跡、50…正方形。
Claims (11)
- 成形原料を導入する裏孔と、該成形原料を押し出すスリットとを備えてなり、ハニカム構造体を押出成形する口金であって、
内側スリット部、外周スリット部及び最外周スリット部とからなり、
該外周スリット部に配設されたスリット幅が、該内側スリット部に配設されたスリット幅よりも大きく、
且つ該外周スリット部と該内側スリット部との境界部において、
該境界部から該内側スリット部にかけて、口金の中心方向における該内側スリット部のスリット幅を、該外周スリット部のスリット幅と同じにした延長スリットを複数設けてなることを特徴とするハニカム押出成形用口金。 - 成形原料の押出方向に垂直な断面形状が、円形である請求項1に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該外周スリット部と該内側スリット部との境界線から、口金の中心方向に対して該内側スリット部に延長された延長スリットを形成するセルブロック数が、1〜3である請求項2に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該外周スリット部と該内側スリット部との境界線から、口金の円周方向に対して該内側スリット部に延長された延長スリットを形成するセルブロック数が、10〜20である請求項2又は3に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該境界部のセルブロックのスリット加工深さが、通常のスリット深さの2/3以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のハニカム押出成形用口金。
- 該内側スリット部のスリット幅が、75μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載のハニカム押出成形用口金。
- 複数のセル通路を有するハニカム構造体であって、
内側部、外周部及び外壁とからなり、該外周部に配設されたリブ厚が、該内側部に配設されたリブ厚よりも大きく、
且つ該外周部と該内側部との境界部において、
該境界部から該内側部にかけて、ハニカム構造体の中心方向における該内側部のリブ厚を、該外周部のリブ厚と同じである延長リブ部を複数設けてなることを特徴とするハニカム構造体。 - 複数のセル通路に垂直方向の断面形状が、円形である請求項7に記載のハニカム構造体。
- 該外周部と該内側部との境界線から、ハニカム構造体の中心方向に対して該内側部に延長された延長リブ部が形成するセル数が、1〜3である請求項8に記載のハニカム構造体。
- 該外周部と該内側部との境界線から、ハニカム構造体の円周方向に対して該内側部に延長された延長リブ部が形成するセル数が、10〜20である請求項8又は9に記載のハニカム構造体。
- 該内側部のリブ厚が、70μm以下である請求項7〜10のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
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