JP4098176B2 - Cellulose acylate film and its plasticizer - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なセルロースアシレート用可塑剤、及び該可塑剤を含有することを特徴とするセルロースアシレートフイルムとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアシレートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアシレートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイルム、光学補償シートの支持体およびカラーフィルターが代表的である。セルロースアシレートフイルムおよびその製造方法については、従来から多くの改良手段が提案されている。
【0003】
従来、セルロースアシレートを製造する際に使用されるセルロースアシレート溶液の有機溶媒は、メチレンクロライドのような塩素含有炭化水素が使用されている。メチレンクロライド(沸点40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として用いられ、製造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点により好ましく使用されている。
しかし、逆にメチレンクロライドは沸点が低く揮発し易いため、密閉設備でも取り扱い工程で若干漏れ易く回収にも限界があり、完全に大気中への散逸を防ぎきれないという問題がある。そのため環境安全性の点でこの点の改善が望まれている。そこで、この解決のためにメチレンクロライドを用いて、さらに高濃度のセルロースアシレート溶液を作製し溶媒としての使用量を減らすことを検討したが、その流延時の金属支持体から剥離が不十分でありその改良が望まれていた。そこでさらに、メチレンクロライド以外のセルロースアシレートの溶媒の探索がなされて来た。セルロースアシレート特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機溶媒として知られているものにはアセトン(沸点56℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)などがある。しかしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解方法では実用上十分な溶解性は得られていない。
【0004】
この解決として、J.M.G.Cowie等の非特許文献1において、セルローストリアセテート(酢化度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することによって、0.5から5質量%の希薄溶液が得られることを報告している。このような低温でセルロースアシレートを溶解する方法を冷却溶解法という。また、上出健二等は非特許文献2の中で冷却溶解法を用いての紡糸技術について述べている。
【0005】
また、特許文献1〜3では、上記技術を背景に、非塩素系有機溶媒を用いて冷却溶解法によってセルロースアシレートを溶解することが開示されている。その際に用いられる非塩素系有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類あるいはエステルから選ばれる有機溶媒であり、冷却溶解法によりセルロースアシレートを溶解してフイルムを作製している。これらの具体的な有機溶媒としてはアセトン、2−メトキシエチルアセテート、シクロヘキサノン、エチルホルメート、及びメチルアセテートなどが好ましいとしている。
しかし、特許文献4では、上記の方法ではセルローストリアセテートの低重合度部分を前もって取り除かないと調製されたセルローストリアセテート溶液の透明性や安定性の再現性に乏しく、従来から市販されている写真用グレードのセルローストリアセテートをそのまま使用できないという煩雑さを解決するために、フルオロアルコールをセルロースアシレート溶液に添加して改良することが提案されている。しかし、フルオロアルコールを添加することにより、その強撥油撥水性のためにセルロースアシレートの面状が悪いという欠陥を有することが問題として発生することが挙げられる。
【0006】
さらに、前述した非塩素系有機溶剤を用いた冷却溶解法で作製したセルロースアシレートフイルムは、光学異方性(例えば、厚み方向のレターデーション値)が大きくなるとの問題がある。セルロースアシレートフイルムを光学材料に使用する場合、フイルムの光学的異方性を小さくする必要がある。
【0007】
可塑剤は、セルロースアシレートフイルムの重要な(実質的に必須の)添加剤である。セルロースアシレートに使用する可塑剤としては、トリフェニルホスフェート(TPP)のようなリン酸エステル可塑剤およびジメチルフタレート(DMP)のような芳香族カルボン酸エステル可塑剤が代表的である。しかしながら、これらの可塑剤はセルロースアシレートフイルムの光学的異方性を大きくする作用があり、光学的異方性を小さくする作用を有する可塑剤が望まれていた。一方、非特許文献3により、セルロースプラスチックに用いられる様々な可塑剤が開示されている。しかし、リン酸エステルと芳香族カルボン酸エステル以外の可塑剤には、様々な問題があり、実際にはほとんど使用されていない。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−95538号公報
【特許文献2】
特開平9−95544号公報
【特許文献3】
特開平9−95557号公報
【特許文献4】
特開平11−60752号公報
【非特許文献1】
Makromol. Chem. 143巻、105頁、1971年
【非特許文献2】
繊維機械学会誌、34巻、57−61頁、1981年
【非特許文献3】
プラスチック材料講座17「繊維素系樹脂」、121頁、昭和45年
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、セルロースアシレートの光学的異方性を小さくする作用を有するセルロースアシレート用可塑剤を提供することである。また、本発明の目的は、厚み方向のレターデーション値が小さいセルロースアシレートフイルムを提供することであり、さらには、光学的異方性を大きくすることなく、冷却溶解法によりセルロースアシレートフイルムを製造することでもある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)のセルロースアシレート用可塑剤、下記(2)〜(13)のセルロースアシレートフイルムおよび下記(14)〜(22)のセルロースアシレートフイルムの製造方法により達成された。
(1)下記一般式(1)で表される化合物からなるセルロースアシレート用可塑剤。
【0011】
【化2】
【0012】
一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。
【0013】
(2)上記一般式(1)に表される化合物を含有することを特徴とするセルロースアシレートフイルム。
(3)セルロースアシレートと、セルロースアシレートの2乃至25質量%の量の上記一般式(1)に表される少なくとも1種の化合物とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフイルム。
【0014】
(4)セルロースアシレートのアシル置換度が2.60乃至3.00である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(5)セルロースアシレートのアシル置換度が2.80乃至2.95である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(6)セルロースアシレートのアセチル基で置換されている置換度が2.60乃至3.00である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0015】
(7)セルロースアシレートの炭素原子数が3乃至22のアシル基で置換されている置換度が0.00乃至0.80である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(8)セルロースアシレートが、アセチル基と炭素原子数が3乃至22のアシル基とで置換されており、炭素原子数が3乃至22のアシル基の30%以上が6位水酸基の置換基として存在している(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(9)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.80乃至1.00である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0016】
(10)セルロースアシレートの6位のアシル置換度が0.85乃至1.00である(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(11)セルロースアシレートが、250乃至550の粘度平均重合度を有する(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0017】
(12)光学材料の保護層用であって、厚さが10乃至200μmである(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(13)ハロゲン化銀写真感光材料の支持体用であって、厚さが30乃至250μmである(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0018】
(14)セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液を塗布してセルロースアシレートフイルムを製造する方法であって、セルロースアシレート溶液が、5乃至50質量%の量のセルロースアシレートと2乃至25質量%の量の上記一般式(1)に表される化合物を含むことを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0019】
(15)有機溶媒が、実質的に非塩素系の有機溶媒からなる(14)に記載の製造方法。
(16)有機溶媒が、炭素原子数が2乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトンおよび炭素原子数が2乃至12のエステルからなる群より選ばれる(15)に記載の製造方法。
【0020】
(17)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を10乃至40℃で膨潤する工程、そして、膨潤した混合物を0乃至57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアセテート溶液を用いる(14)に記載の製造方法。
(18)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10乃至55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を−100〜−10℃に冷却する工程、そして、冷却した混合物を0〜57℃に加温する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアシレート溶液を用いる(14)に記載の製造方法。
【0021】
(19)セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を−10乃至55℃で膨潤する工程、膨潤した混合物を0.2乃至30MPaで60乃至240℃に加熱する工程、そして、加熱した混合物を0乃至57℃に冷却する工程により、有機溶媒中にセルロースアシレートを溶解したセルロースアシレート溶液を用いる(14)に記載の製造方法。
(20)セルロースアシレートとして、90質量%以上の粒子が0.1乃至5mmの粒径を有するセルロースアシレート粒子を用い、塗布する前にセルロースアシレート溶液を濾過する処理を実施する(14)に記載の製造方法。
【0022】
(21)セルロースアシレート溶液が、可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1乃至20質量%、紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜乃至5質量%、微粒子をセルロースアシレートに対して0.001乃至5質量%あるいはフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001乃至2質量%含有する(14)に記載の製造方法。
(22)流延工程で2種類以上のセルロースアシレート溶液を共流延する(14)に記載の製造方法。
【0023】
【発明の実施の形態】
(セルロースアシレート用可塑剤)
本発明では、下記一般式(1)で表される化合物を、セルロースアシレート用可塑剤として使用する。
【0024】
【化3】
【0025】
上記一般式(1)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数が1乃至5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、イソアミル)であることが好ましく、R1、R2およびR3の少なくとも1つ以上が炭素原子数1乃至3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが特に好ましい。Xは、単結合、−O−、−CO−、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。Yは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチル)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例えば、ベンジル、クレジル、t-ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。−X−Yの組み合わせとしては、−X−Yの総炭素数が0乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましく、1乃至25であることが最も好ましい。これら一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0026】
【化4】
【0027】
【化5】
【0028】
本発明の化合物はいずれも既知の化合物より製造することができる。一般式(1)の化合物は、一般的には下記の方法で合成可能である。すなわち、オキシ塩化リンと対応するトリメチロール誘導体との縮合反応により得られる。
【0029】
<製造例1>
PL−1の合成:メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートを取り付けた500mlの三ツ口フラスコに26.8gのトリメチロールプロパンを量り取り、氷冷下30.7gのオキシ塩化リンを滴下した後、室温に戻し、室温で6時間反応させ、さらに70℃で3時間反応させた。反応混合物を室温に戻した後、100mlの1N水酸化ナトリウム水溶液を加えて、200mlのメチレンクロリドで分液・抽出した。さらに得られた有機層を150mlの1N水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで脱水した後、濃縮して白色固体15gを得た。得られた白色固体を200mlの水から再結晶し、結晶を濾別した後、60℃で終夜乾燥することにより目的の化合物PL−1を8.9g得た(収率25%)。融点140℃。
【0030】
本発明では、一般式(1)で表される化合物と他の可塑剤とを併用することもできる。他の可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)およびトリオクチルフタレート(TOP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)およびクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。一般式(1)で表わされる化合物と他の可塑剤とを併用する場合は、一般式(1)で表わされる化合物を可塑剤の合計量の50質量%以上の割合で使用することが好ましい。一般式(1)で表わされる化合物の割合は、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。一般式(I)で表わされる化合物はセルロースアシレートに対して2〜25質量%添加されることが好ましい。
【0031】
次にセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基の水素原子がアシル基で置換されているセルロース誘導体(セルロースエステル)である。アシル基としては、アセチル基(SA)が一般的であるが、炭素原子数が3以上(好ましくは3乃至22)のアシル基(SB)の場合もある。SA+SBの置換度の総和は、一般に2.60〜3.00であり、SBの置換度は0.00乃至0.80である。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。水酸基のSAとSBの置換度の総和は、2.70〜2.96であることが好ましく、2.80〜2.95であることがさらに好ましい。また、SBの置換度は0.00〜0.80であることが好ましく、0.00乃至0.60であることがさらに好ましい。
【0032】
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が、下記式(I)〜(III)の全てを満足することが特に好ましい。
(I)2.6≦SA+SB≦3.0
(II)2.0≦SA≦3.0
(III)0≦SB≦0.8
[式中、SAおよびSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基であり、SAはアセチル基の置換度、SBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である]。
【0033】
炭素原子数3〜22のアシル基の置換度(SB)は、その28%以上が6位水酸基の置換基であることが好ましく、30%以上が6位水酸基の置換基であることがより好ましく、31%以上が6位水酸基の置換基であることがさらに好ましくがさらに好ましく、32%以上が6位水酸基の置換基であることが最も好ましい。セルロースアシレートの6位のSAとSBとの置換度の総和は、0.80以上であることが好ましく、0.85以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが最も好ましい。
【0034】
炭素原子数が3〜22のアシル基(SB)は、−CO−Rで定義され、Rは、脂肪族基、芳香または複素環基である。Rは、脂肪族基または芳香族基であることが好ましい。脂肪族基は、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基または置換アルキニル基である。芳香族基は、アリール基または置換アリール基である。炭素原子数が3〜22のアシル基の例には、プロピオニル、ブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブチリル、t−ブチリル、シクロヘキサノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが含まれる。プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブチリル、オレオイル、ベンゾイル、ナフトイルおよびシンナモイルが好ましい。
【0035】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田著木材化学(共立出版、1968年)180〜190頁に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。アシル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理によりセルロースアシレートを得る。
【0036】
セルロースアシレートフイルムは、フイルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、ポリマー成分の90質量%以上(好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、最も好ましくは99質量%以上)を意味する。フイルムの製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5乃至5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1乃至4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0037】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で200〜700であることが好ましく、250〜550であることがより好ましく、250〜400であることがさらに好ましく、250〜350であることが最も好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。粘度平均重合度については、特許文献1にも記載されている。粘度平均重合度は、オストワルド粘度計にて測定したセルロースアセテートの固有粘度[η]から、下記の式により求める。
(1) DP=[η]/Km
式中、[η]は、セルロースアセテートの固有粘度であり、Kmは、定数6×10−4である。粘度平均重合度(DP)が290以上である場合、粘度平均重合度と落球式粘度法による濃厚溶液粘度(η)とが下記式(2)の関係を満足することが好ましい。
(2)2.814×ln(DP)−11.753≦ln(η)
≦6.29×ln(DP)−31.469
式中、DPは290以上の粘度平均重合度の値であり、ηは落球式粘度法における標線間の通過時間(秒)である。上記式(2)は、粘度平均重合度と濃厚溶液粘度をプロットし、その結果から算出したものである。
【0038】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。有機溶媒の例としては、ケトン類(例、アセトン)、酢酸エステル類(例、メチルアセテート)およびセロソルブ類(例、メチルセロソルブ)が含まれる。本発明においては、ケトン類、特にアセトンを用いることが好ましい。低分子成分の除去の効率を高めるために、洗浄前にセルロースアシレートの粒子を粉砕あるいは篩にかけることで、粒子サイズを調節することが好ましい。なお、低分子成分の少ないセルロースシレテートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量に対して5乃至25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
【0039】
セルロースアシレートをフイルムの製造に使用する際には、セルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.7質量%以下であることが最も好ましい。一般の(例えば、市販の)セルロースアシレートは、2.5乃至5質量%の含水率を有する。従って、一般的なセルロースアシレートをする場合は、乾燥により含水率を2質量%以下に低下させることが好ましい。乾燥は、様々な公知手段で実施できる。セルロースアシレート溶液中のセルロースアシレート含有量は、5乃至50質量%であり、5乃至40質量%であることが好ましく、7.5乃至30質量%であることがさらに好ましく、10乃至30質量%であることが最も好ましい。
【0040】
本発明のセルロースアシレートフイルムの製造方法について述べると、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解したセルロースアシレート溶液を基板上に塗布するに当り、セルロースアシレート溶液が、5乃至50質量%の量のセルロースアシレートと2乃至25質量%の量の上記一般式(1)に表される化合物を含むようにして行うのが好ましい。
次に本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法、が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0041】
上記一般式(1)で表される化合物は、セルロースアシレート溶液中でセルロースアシレートの質量に対して、2乃至25質量%であることが好ましく、2乃至20質量%であることがさらに好ましく、5乃至18質量%であることが最も好ましい。また、本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤を加えることができるが、これらの添加剤の種類、セルロースアシレートの溶液を作製するに際して用いられる有機溶媒の種類、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製方法、セルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法および作製されたセルロースアシレートの用途については、特開2002−322294号公報の[0077]〜[0142]に詳しく記載されている。
【0042】
流延等により製膜後、加熱、送風、減圧などにより有機溶媒を除去して乾燥してセルロースアシレートフイルムを得る。ここでセルロースアシレートフイルムの好ましい物性に関しては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の6〜7頁に詳細に記載されている。
作製したセルロースエステルフイルムは、光学的等方性を有する(レターデーションが低い)との特徴がある。フイルムの面内レターデーション(Re)は、エリプソメーター(AEP−100、島津製作所(株)製)を用いて測定できる。面内レターデーションは、具体的には、波長632.8nmで測定した面内の縦横の屈折率差にフイルム膜厚を乗じた値として、下記式に従って求めることができる。
Re=(nx−ny)×d
式中、nxは、遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率であり;nyは、遅相軸に直交する方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さ(単位:nm)である。セルロースエステルフイルムの面内レターデーション(Re)は、50nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることがさらに好ましく、20nm以下であることが最も好ましい。
【0043】
フイルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)は、具体的には、波長632.8nmで測定した厚さ方向の複屈折率にフイルム膜厚を乗じた値として、下記式に従って求めることができる。
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式中、nxは、遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率であり;nyは、遅相軸に直交する方向の屈折率であり;nzは、厚さ方向の屈折率であり;そして、dは、フイルムの厚さ(単位:nm)である。セルロースエステルフイルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましく、30nm以下であることが最も好ましい。厚さ方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.0005以下であることが好ましく、0.0002以下であることがさらに好ましく、0.0001以下であることが最も好ましい。
【0044】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(I)セルロースアシレートフイルムの作製および厚さ方向レターデーション(Rth)値の測定
(I−1)セルロースアシレート溶液の作製
攪拌羽根を有する5Lのガラス容器に、下記の溶媒混合溶液によく攪拌・分散しつつ、下記記述のセルローストリアセテート粉体A(フレーク)を徐々に添加し、全体が2kgになるように仕込んだ。なお、溶媒である酢酸メチル、アセトン及びエタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。まず、セルローストリアセテートの粉末は、分散タンクに紛体を投入し窒素ガスを封入して、ディゾルバータイプの偏芯攪拌軸および、中心軸にアンカー翼を有して30分間分散した。分散の開始温度は30℃であった。分散終了後、高速攪拌は停止し、アンカー翼の周速を0.5m/secとしてさらに100分間攪拌し、セルローストリアセテートフレークを膨潤させた。膨潤終了までは窒素ガスでタンク内を0.12MPaになるように加圧した。この際のタンク内の酸素濃度は2vol%未満であり防爆上で問題のない状態を保った。またドープ中の水分量は0.2質量%以下であることを確認した。セルロースアシレート溶液の組成は以下の通りである。
【0045】
セルローストリアセテートA(SA+SBが2.78、SAが2.78、SBが0で、粘度平均重合度303、含水率が1質量%以下のセルロースアシレートフレーク。また、セルロースアシレートの6位の置換度が0.90のものを用いた。)(15質量部)、酢酸メチル(87.0質量部)、アセトン(8.0質量部)、エタノール(5.0質量部)、第1表記載の可塑剤もしくは改質剤(12.0質量部もしくは18.0質量部)を用いた。
【0046】
(I−2)セルローストリアセテートフィルム溶液
得られた不均一なゲル状溶液をスクリューポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液はステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し均一溶液とした後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)でろ過し、さらに絶対濾過精度2.5μmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0047】
(I−3)セルローストリアセテートフィルムの作製
ろ過済みの50℃のセルローストリアセテート溶液を、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の温度は5℃であり、流延スピードは3m/分でその塗布幅は30cmとした。室温で1分放置し、その後に乾燥のために55℃の乾燥風を送風した。5分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取り、しかる後に133℃で27分乾燥して、膜厚80μmもしくは60μmのセルローストリアセテートフイルムを得た。
得られたセルロースアシレートフイルムについて、エリプソメーター(AEP−100、島津製作所(株)製)を用いた測定から、前述した式に従いRth値を算出した。
【0048】
(II)結果
表1より、本発明の可塑剤PL−1、PL−6、PL−7、PL−10、PL−19およびPL−43を用いた場合に得られるセルロースアシレートフイルムはRth値が非常に低く、光学的異方性の小さなセルロースアシレートフイルムが作製できることがわかった。これらの結果より、本発明のセルロースアシレート用可塑剤を含有することが特に好ましいことがわかる。
【0049】
【表1】
【0050】
比較化合物TPPおよびTCPの構造は下記に示す。
【0051】
【化6】
【0052】
[実施例2]
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
表1記載の化合物(可塑剤もしくは改質剤) 12質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 45質量部
染料(住化ファインケム(株)製 360FP) 0.0009質量部
【0053】
別のミキシングタンクに、下記のレターデーション上昇剤16質量部、メチレンクロライド80質量部およびメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液464質量部にレターデーション上昇剤溶液36質量部、およびシリカ微粒子(アイロジル製 R972)1.1質量部を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、5.0質量部であった。また、シリカ微粒子の添加量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.15質量部であった。
【0054】
【化7】
【0055】
得られたセルロースアセテート溶液から実施例1と同様にしてセルロースアセテートフィルムを作成しレターデーション値を測定、比較した。実施例1と同様の結果が得られた。
【0056】
【発明の効果】
上記一般式(1)で表される化合物には、セルロースアシレートの光学的異方性を小さくするという優れた作用効果を奏する。そのため、上記一般式(1)で表される化合物を可塑剤として用いることで、光学的異方性が小さいセルロースアシレートが得ることができ、厚み方向のレターデーション値が小さいセルロースアシレートフイルムを製造することが可能となる。また、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、冷却溶解法のようなフイルムの光学的異方性が高くなりやすい製造方法において、特に有効である。[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a novel plasticizer for cellulose acylate, a cellulose acylate film containing the plasticizer, and a method for producing the same.
[0002]
[Prior art]
Cellulose acylate films are used in various photographic materials and optical materials because of their toughness and flame retardancy. The cellulose acylate film is a support for typical photographic light-sensitive materials. Cellulose acylate films are also used in liquid crystal display devices whose market is expanding in recent years due to their optical isotropy. As specific applications in the liquid crystal display device, a protective film for a polarizing plate, a support for an optical compensation sheet, and a color filter are typical. Many improvements have been proposed for cellulose acylate films and methods for producing the same.
[0003]
Conventionally, chlorine-containing hydrocarbons such as methylene chloride have been used as the organic solvent for the cellulose acylate solution used in producing cellulose acylate. Methylene chloride (boiling point 40 ° C.) has been conventionally used as a good solvent for cellulose acylate, and is preferably used due to the advantage that it is easy to dry because of its low boiling point in the film formation and drying steps of the production process.
However, since methylene chloride has a low boiling point and is likely to volatilize, there is a problem that even in a closed facility, it may be slightly leaked in the handling process, and there is a limit to recovery, and it is not possible to completely prevent dissipation into the atmosphere. Therefore, improvement of this point is desired in terms of environmental safety. In order to solve this problem, we investigated the use of methylene chloride to reduce the amount of solvent used by preparing a higher concentration cellulose acylate solution. However, peeling was insufficient from the metal support during casting. There was a desire for improvement. Accordingly, a search for a solvent for cellulose acylate other than methylene chloride has been made. Cellulose acylates, particularly those known as organic solvents having solubility in cellulose triester, include acetone (boiling point 56 ° C.), methyl acetate (boiling point 56 ° C.), tetrahydrofuran (boiling point 65 ° C.), 1,3-dioxolane ( Boiling point 75 ° C.) and 1,4-dioxane (boiling point 101 ° C.). However, these organic solvents have not obtained practically sufficient solubility by conventional dissolution methods.
[0004]
As a solution to this problem, J.A. M.M. G. In Non-Patent Document 1 such as Cowie et al., Cellulose triacetate (degree of acetylation 60.1% to 61.3%) is cooled to −80 ° C. to −70 ° C. in acetone and then heated to 0.5%. To obtain a 5% by weight dilute solution. Such a method for dissolving cellulose acylate at a low temperature is called a cooling dissolution method. In addition, Kenji Kamide et al. In Non-Patent Document 2 describe a spinning technique using a cooling dissolution method.
[0005]
Patent Documents 1 to 3 disclose that cellulose acylate is dissolved by a cooling dissolution method using a non-chlorine organic solvent against the background of the above technique. The non-chlorine organic solvent used at that time is an organic solvent selected from ethers, ketones or esters, and a cellulose acylate is dissolved by a cooling dissolution method to produce a film. As these specific organic solvents, acetone, 2-methoxyethyl acetate, cyclohexanone, ethyl formate, methyl acetate and the like are preferable.
However, in Patent Document 4, the above-described method is poor in reproducibility of transparency and stability of a cellulose triacetate solution prepared unless the low polymerization degree portion of cellulose triacetate is removed in advance. In order to solve the trouble that cellulose triacetate cannot be used as it is, it has been proposed to improve by adding fluoroalcohol to the cellulose acylate solution. However, it can be mentioned that the addition of fluoroalcohol causes a defect that the surface shape of cellulose acylate is poor due to its strong oil and water repellency.
[0006]
Furthermore, the cellulose acylate film produced by the above-described cooling dissolution method using a non-chlorine organic solvent has a problem that optical anisotropy (for example, a retardation value in the thickness direction) is increased. When a cellulose acylate film is used as an optical material, it is necessary to reduce the optical anisotropy of the film.
[0007]
Plasticizers are important (substantially essential) additives for cellulose acylate films. Typical plasticizers used for cellulose acylate are phosphate ester plasticizers such as triphenyl phosphate (TPP) and aromatic carboxylate ester plasticizers such as dimethyl phthalate (DMP). However, these plasticizers have an action of increasing the optical anisotropy of the cellulose acylate film, and a plasticizer having an action of reducing the optical anisotropy has been desired. On the other hand, Non-Patent Document 3 discloses various plasticizers used for cellulose plastics. However, plasticizers other than phosphate esters and aromatic carboxylic acid esters have various problems and are rarely used in practice.
[0008]
[Patent Document 1]
JP-A-9-95538
[Patent Document 2]
JP-A-9-95544
[Patent Document 3]
JP-A-9-95557
[Patent Document 4]
JP-A-11-60752
[Non-Patent Document 1]
Makromol. Chem. 143, 105, 1971
[Non-Patent Document 2]
Journal of the Textile Machinery Society, 34, 57-61, 1981
[Non-Patent Document 3]
Plastic Material Course 17 “Fibre-Based Resin”, p. 121, 1970
[0009]
[Problems to be solved by the invention]
An object of the present invention is to provide a plasticizer for cellulose acylate having an action of reducing the optical anisotropy of cellulose acylate. Another object of the present invention is to provide a cellulose acylate film having a small retardation value in the thickness direction. Furthermore, the cellulose acylate film can be obtained by a cooling dissolution method without increasing optical anisotropy. It is also manufacturing.
[0010]
[Means for Solving the Problems]
The object of the present invention is achieved by the following cellulose acylate plasticizer (1), the following cellulose acylate films (2) to (13) and the following cellulose acylate film production methods (14) to (22). It was done.
(1) A plasticizer for cellulose acylate comprising a compound represented by the following general formula (1).
[0011]
[Chemical 2]
[0012]
In general formula (1), R 1 , R 2 And R 3 Each independently represents a hydrogen atom or an alkyl group. X represents a divalent linking group formed from one or more groups selected from the following linking group group 1. Y represents a hydrogen atom, an alkyl group, an aryl group or an aralkyl group.
(Linking group 1) Single bond, -O-, -CO-, -NR 4 -Represents an alkylene group or an arylene group. R 4 Represents a hydrogen atom, an alkyl group, an aryl group or an aralkyl group.
[0013]
(2) A cellulose acylate film comprising the compound represented by the general formula (1).
(3) A cellulose acylate film comprising cellulose acylate and at least one compound represented by the general formula (1) in an amount of 2 to 25% by mass of the cellulose acylate.
[0014]
(4) The cellulose acylate film according to (2), wherein the acyl substitution degree of the cellulose acylate is 2.60 to 3.00.
(5) The cellulose acylate film according to (2), wherein the acyl substitution degree of the cellulose acylate is 2.80 to 2.95.
(6) The cellulose acylate film according to (2), wherein the degree of substitution with the acetyl group of cellulose acylate is 2.60 to 3.00.
[0015]
(7) The cellulose acylate film according to (2), wherein the substitution degree of the cellulose acylate substituted with an acyl group having 3 to 22 carbon atoms is 0.00 to 0.80.
(8) Cellulose acylate is substituted with an acetyl group and an acyl group having 3 to 22 carbon atoms, and 30% or more of the acyl group having 3 to 22 carbon atoms is a substituent of the 6-position hydroxyl group The cellulose acylate film as described in (2).
(9) The cellulose acylate film according to (2), wherein the acyl substitution degree at the 6-position of the cellulose acylate is 0.80 to 1.00.
[0016]
(10) The cellulose acylate film according to (2), wherein the acyl substitution degree at the 6-position of the cellulose acylate is 0.85 to 1.00.
(11) The cellulose acylate film according to (2), wherein the cellulose acylate has a viscosity average polymerization degree of 250 to 550.
[0017]
(12) The cellulose acylate film according to (2), which is for a protective layer of an optical material and has a thickness of 10 to 200 μm.
(13) The cellulose acylate film according to (2), which is for a support of a silver halide photographic light-sensitive material and has a thickness of 30 to 250 μm.
[0018]
(14) A method for producing a cellulose acylate film by applying a cellulose acylate solution in which cellulose acylate is dissolved in an organic solvent, wherein the cellulose acylate solution comprises cellulose acylate in an amount of 5 to 50% by mass. A method for producing a cellulose acylate film comprising the compound represented by the general formula (1) in an amount of 2 to 25% by mass.
[0019]
(15) The production method according to (14), wherein the organic solvent is substantially composed of a non-chlorine organic solvent.
(16) The production method according to (15), wherein the organic solvent is selected from the group consisting of an ether having 2 to 12 carbon atoms, a ketone having 3 to 12 carbon atoms, and an ester having 2 to 12 carbon atoms. .
[0020]
(17) Cellulose in which cellulose acylate is dissolved in an organic solvent by a step of swelling a mixture of cellulose acylate and an organic solvent at 10 to 40 ° C. and a step of heating the swollen mixture to 0 to 57 ° C. The production method according to (14), wherein an acetate solution is used.
(18) Swelling the mixture of cellulose acylate and organic solvent at −10 to 55 ° C., cooling the swollen mixture to −100 to −10 ° C., and adding the cooled mixture to 0 to 57 ° C. (14) The manufacturing method according to (14), wherein a cellulose acylate solution in which cellulose acylate is dissolved in an organic solvent is used in the heating step.
[0021]
(19) A step of swelling a mixture of cellulose acylate and an organic solvent at −10 to 55 ° C., a step of heating the swollen mixture to 60 to 240 ° C. at 0.2 to 30 MPa, and a heating mixture of 0 to The production method according to (14), wherein a cellulose acylate solution in which cellulose acylate is dissolved in an organic solvent is used in the step of cooling to 57 ° C.
(20) As the cellulose acylate, cellulose acylate particles having a particle size of 90% by mass or more having a particle diameter of 0.1 to 5 mm are used, and the cellulose acylate solution is filtered before coating (14) The manufacturing method as described in.
[0022]
(21) The cellulose acylate solution has a plasticizer of 0.1 to 20% by mass with respect to cellulose acylate, an ultraviolet absorber with respect to cellulose acylate of 0.001 to 5% by mass, and fine particles of cellulose acylate. The production method according to (14), wherein 0.001 to 5% by mass or 0.001 to 2% by mass of a fluorine-based surfactant is contained with respect to cellulose acylate.
(22) The production method according to (14), wherein two or more cellulose acylate solutions are co-cast in the casting step.
[0023]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
(Plasticizer for cellulose acylate)
In the present invention, a compound represented by the following general formula (1) is used as a plasticizer for cellulose acylate.
[0024]
[Chemical 3]
[0025]
In the general formula (1), R 1 , R 2 And R 3 Are preferably each independently a hydrogen atom or an alkyl group having 1 to 5 carbon atoms (eg, methyl, ethyl, propyl, isopropyl, butyl, amyl, isoamyl), and R 1 , R 2 And R 3 It is particularly preferable that at least one of these is an alkyl group having 1 to 3 carbon atoms (for example, methyl, ethyl, propyl, isopropyl). X is a single bond, —O—, —CO—, an alkylene group (preferably having 1 to 6 carbon atoms, more preferably 1 to 3 carbon atoms such as methylene, ethylene, propylene) or an arylene group (preferably carbon atoms). A number of 6 to 24, more preferably 6 to 12. For example, it is preferably a divalent linking group formed from one or more groups selected from phenylene, biphenylene, naphthylene), -O-, alkylene A divalent linking group formed from one or more groups selected from a group or an arylene group is particularly preferable. Y is a hydrogen atom or an alkyl group (preferably having 2 to 25 carbon atoms, more preferably 2 to 20 carbon atoms. For example, ethyl, isopropyl, t-butyl, hexyl, 2-ethylhexyl, t-octyl, dodecyl, cyclohexyl , Dicyclohexyl, adamantyl), an aryl group (preferably having 6 to 24 carbon atoms, more preferably 6 to 18. For example, phenyl, biphenyl, terphenyl, naphthyl) or an aralkyl group (preferably having 7 to 30 carbon atoms). And more preferably 7 to 20. For example, benzyl, cresyl, t-butylphenyl, diphenylmethyl, triphenylmethyl) is preferable, and an alkyl group, an aryl group, or an aralkyl group is particularly preferable. As the combination of —X—Y, the total carbon number of —X—Y is preferably 0 to 40, more preferably 1 to 30, and most preferably 1 to 25. Although the preferable example of a compound represented by these General formula (1) is shown below, this invention is not limited to these specific examples.
[0026]
[Formula 4]
[0027]
[Chemical formula 5]
[0028]
Any of the compounds of the present invention can be prepared from known compounds. The compound of the general formula (1) can be generally synthesized by the following method. That is, it is obtained by a condensation reaction between phosphorus oxychloride and the corresponding trimethylol derivative.
[0029]
<Production Example 1>
Synthesis of PL-1: After weighing 26.8 g of trimethylolpropane into a 500 ml three-necked flask equipped with a mechanical stirrer, thermometer, condenser, and dropping funnel, 30.7 g of phosphorus oxychloride was added dropwise under ice cooling. The mixture was returned to room temperature, reacted at room temperature for 6 hours, and further reacted at 70 ° C. for 3 hours. After returning the reaction mixture to room temperature, 100 ml of 1N aqueous sodium hydroxide solution was added, followed by separation and extraction with 200 ml of methylene chloride. Further, the obtained organic layer was washed twice with 150 ml of 1N aqueous sodium hydroxide solution and saturated brine, dehydrated with anhydrous magnesium sulfate, and concentrated to obtain 15 g of a white solid. The obtained white solid was recrystallized from 200 ml of water, and the crystals were filtered off and dried at 60 ° C. overnight to obtain 8.9 g of the target compound PL-1 (yield 25%). Melting point 140 ° C.
[0030]
In the present invention, the compound represented by the general formula (1) and another plasticizer can be used in combination. As other plasticizers, phosphate esters or carboxylic acid esters are used. Examples of phosphate esters include triphenyl phosphate (TPP), tricresyl phosphate (TCP) and trioctyl phthalate (TOP). Representative examples of the carboxylic acid ester include phthalic acid esters and citric acid esters. Examples of phthalic acid esters include dimethyl phthalate (DMP), diethyl phthalate (DEP), dibutyl phthalate (DBP), dioctyl phthalate (DOP) and diethyl hexyl phthalate (DEHP). Examples of citrate esters include acetyl triethyl citrate (OACTE) and acetyl tributyl citrate (OACTB). Examples of other carboxylic acid esters include butyl oleate, methylacetyl ricinoleate, dibutyl sebacate, and various trimellitic acid esters. When using together the compound represented by General formula (1) and another plasticizer, it is preferable to use the compound represented by General formula (1) in the ratio of 50 mass% or more of the total amount of a plasticizer. The ratio of the compound represented by the general formula (1) is more preferably 70% by mass or more, and further preferably 80% by mass or more. The compound represented by the general formula (I) is preferably added in an amount of 2 to 25% by mass based on the cellulose acylate.
[0031]
Next, cellulose acylate will be described in detail. Cellulose acylate is a cellulose derivative (cellulose ester) in which a hydrogen atom of a hydroxyl group of cellulose is substituted with an acyl group. The acyl group is generally an acetyl group (SA), but may be an acyl group (SB) having 3 or more (preferably 3 to 22) carbon atoms. The total substitution degree of SA + SB is generally 2.60 to 3.00, and the substitution degree of SB is 0.00 to 0.80. Glucose units having β-1,4 bonds constituting cellulose have free hydroxyl groups at the 2nd, 3rd and 6th positions. Cellulose acylate is a polymer obtained by esterifying some or all of these hydroxyl groups with acyl groups. The degree of acyl substitution means the proportion of cellulose esterified at each of the 2-position, 3-position and 6-position (100% esterification has a substitution degree of 1). The total substitution degree of SA and SB of the hydroxyl group is preferably 2.70 to 2.96, and more preferably 2.80 to 2.95. Further, the degree of substitution of SB is preferably 0.00 to 0.80, and more preferably 0.00 to 0.60.
[0032]
In the cellulose acylate, it is particularly preferable that the substitution degree of cellulose with a hydroxyl group satisfies all of the following formulas (I) to (III).
(I) 2.6 ≦ SA + SB ≦ 3.0
(II) 2.0 ≦ SA ≦ 3.0
(III) 0 ≦ SB ≦ 0.8
[Wherein, SA and SB are substituents of an acyl group substituted with a hydroxyl group of cellulose, SA is a substitution degree of an acetyl group, and SB is a substitution degree of an acyl group having 3 to 22 carbon atoms].
[0033]
The substitution degree (SB) of the acyl group having 3 to 22 carbon atoms is preferably 28% or more of the substituent at the 6-position hydroxyl group, more preferably 30% or more is the substituent at the 6-position hydroxyl group. 31% or more is more preferably a 6-position hydroxyl group substituent, and more preferably 32% or more is a 6-position hydroxyl group substituent. The total substitution degree of SA and SB at the 6-position of cellulose acylate is preferably 0.80 or more, more preferably 0.85 or more, and most preferably 0.90 or more.
[0034]
The acyl group (SB) having 3 to 22 carbon atoms is defined by -CO-R, and R is an aliphatic group, an aromatic group or a heterocyclic group. R is preferably an aliphatic group or an aromatic group. The aliphatic group is an alkyl group, a substituted alkyl group, an alkenyl group, a substituted alkenyl group, an alkynyl group or a substituted alkynyl group. The aromatic group is an aryl group or a substituted aryl group. Examples of acyl groups with 3 to 22 carbon atoms include propionyl, butyryl, valeryl, hexanoyl, heptanoyl, octanoyl, nonanoyl, decanoyl, dodecanoyl, tridecanoyl, tetradecanoyl, hexadecanoyl, octadecanoyl, isobutyryl, t -Butyryl, cyclohexanoyl, oleoyl, benzoyl, naphthoyl and cinnamoyl are included. Propionyl, butyryl, dodecanoyl, octadecanoyl, t-butyryl, oleoyl, benzoyl, naphthoyl and cinnamoyl are preferred.
[0035]
The basic principle of the cellulose acylate synthesis method is described in Wood Chemistry by Kyoda (Kyoritsu Shuppan, 1968) pages 180-190. A typical synthesis method is a liquid phase acetylation method using a carboxylic acid anhydride-acetic acid-sulfuric acid catalyst. Specifically, cellulose raw materials such as cotton linter and wood pulp are pretreated with an appropriate amount of acetic acid, and then put into a pre-cooled carboxylic acid mixture to be esterified to complete cellulose acylate (2nd, 3rd and 6th). The total degree of acyl substitution at the position is approximately 3.00). The carboxylated mixed solution generally contains acetic acid as a solvent, carboxylic anhydride as an esterifying agent, and sulfuric acid as a catalyst. The carboxylic anhydride is usually used in a stoichiometric excess over the sum of the cellulose that reacts with it and the water present in the system. After completion of the acylation reaction, a neutralizing agent (for example, calcium, magnesium, iron, aluminum or zinc) is used for hydrolysis of excess carboxylic anhydride remaining in the system and neutralization of a part of the esterification catalyst. Of carbonate, acetate or oxide). Next, the obtained complete cellulose acylate is saponified and aged by maintaining it at 50 to 90 ° C. in the presence of a small amount of an acetylation reaction catalyst (generally, remaining sulfuric acid) to obtain the desired degree of acyl substitution and polymerization. The cellulose acylate having a degree is changed. When the desired cellulose acylate is obtained, the catalyst remaining in the system is completely neutralized with a neutralizing agent as described above, or in water or dilute sulfuric acid without neutralization. The cellulose acylate solution is added (or water or dilute sulfuric acid is added into the cellulose acylate solution) to separate the cellulose acylate, and the cellulose acylate is obtained by washing and stabilizing treatment.
[0036]
The cellulose acylate film is preferably composed of cellulose acylate in which the polymer component constituting the film substantially has the above definition. “Substantially” means 90% by mass or more (preferably 95% by mass or more, more preferably 98% by mass or more, most preferably 99% by mass or more) of the polymer component. Cellulose acylate particles are preferably used as raw materials for film production. 90% by mass or more of the particles to be used preferably have a particle diameter of 0.5 to 5 mm. Further, it is preferable that 50% by mass or more of the particles to be used have a particle diameter of 1 to 4 mm. The cellulose acylate particles preferably have a shape as close to a sphere as possible.
[0037]
The degree of polymerization of cellulose acylate is preferably 200 to 700 in terms of viscosity average degree of polymerization, more preferably 250 to 550, further preferably 250 to 400, and most preferably 250 to 350. preferable. The average degree of polymerization can be measured by the intrinsic viscosity method of Uda et al. (“Journal of the Fiber Society”, Vol. 18, No. 1, pages 105-120, 1962). The viscosity average degree of polymerization is also described in Patent Document 1. The viscosity average degree of polymerization is determined by the following formula from the intrinsic viscosity [η] of cellulose acetate measured with an Ostwald viscometer.
(1) DP = [η] / Km
In the formula, [η] is the intrinsic viscosity of cellulose acetate, and Km is a constant of 6 × 10 -4 It is. When the viscosity average degree of polymerization (DP) is 290 or more, it is preferable that the viscosity average degree of polymerization and the concentrated solution viscosity (η) by the falling ball viscosity method satisfy the relationship of the following formula (2).
(2) 2.814 × ln (DP) −11.753 ≦ ln (η)
≦ 6.29 × ln (DP) −31.469
In the formula, DP is a value of a viscosity average polymerization degree of 290 or more, and η is a passage time (seconds) between marked lines in the falling ball viscosity method. The above formula (2) is obtained by plotting the viscosity average polymerization degree and the concentrated solution viscosity and calculating from the result.
[0038]
When the low molecular component is removed, the average molecular weight (degree of polymerization) is increased, but the viscosity is lower than that of ordinary cellulose acylate, which is useful. Cellulose acylate having a small amount of low molecular components can be obtained by removing low molecular components from cellulose acylate synthesized by a usual method. The removal of the low molecular component can be carried out by washing the cellulose acylate with an appropriate organic solvent. Examples of the organic solvent include ketones (eg, acetone), acetates (eg, methyl acetate) and cellosolves (eg, methyl cellosolve). In the present invention, it is preferable to use ketones, particularly acetone. In order to increase the efficiency of removing low molecular components, it is preferable to adjust the particle size by pulverizing or sieving the cellulose acylate particles before washing. In addition, when manufacturing the cellulose citrate with few low molecular components, it is preferable to adjust the sulfuric acid catalyst amount in an acetylation reaction to 5 thru | or 25 mass parts with respect to 100 mass of cellulose. When the amount of the sulfuric acid catalyst is within the above range, cellulose acylate that is preferable in terms of molecular weight distribution (uniform molecular weight distribution) can be synthesized.
[0039]
When cellulose acylate is used for film production, the moisture content of cellulose acylate is preferably 2% by mass or less, more preferably 1% by mass or less, and 0.7% by mass or less. Most preferred. General (for example, commercially available) cellulose acylate has a moisture content of 2.5 to 5% by mass. Therefore, when a general cellulose acylate is used, it is preferable to reduce the moisture content to 2% by mass or less by drying. Drying can be carried out by various known means. The cellulose acylate content in the cellulose acylate solution is 5 to 50% by mass, preferably 5 to 40% by mass, more preferably 7.5 to 30% by mass, and 10 to 30% by mass. % Is most preferred.
[0040]
The production method of the cellulose acylate film of the present invention will be described. When a cellulose acylate solution in which cellulose acylate is dissolved in an organic solvent is applied on a substrate, the cellulose acylate solution is contained in an amount of 5 to 50% by mass. It is preferable to carry out the reaction so as to contain cellulose acylate and a compound represented by the above general formula (1) in an amount of 2 to 25% by mass.
Next, with respect to the preparation of the cellulose acylate solution (dope) of the present invention, the dissolution method is not particularly limited, and may be room temperature, further a cooling dissolution method or a high temperature dissolution method, or a combination thereof. Regarding these, for example, JP-A-5-163301, JP-A-61-106628, JP-A-58-127737, JP-A-9-95544, JP-A-10-95854, JP-A-10-45950, JP-A-2000-53784, Kaihei 11-322946, JP-A-11-322947, JP-A-2-276830, JP-A-2000-273239, JP-A-11-71463, JP-A-04-259511, JP-A-2000-273184, JP-A-11-323017, JP-A-11-323017 11-302388 describes a method for preparing a cellulose acylate solution. The above-described method for dissolving cellulose acylate in an organic solvent is applicable to the present invention as long as it is within the scope of the present invention. These details are described in detail on pages 22 to 25 in the Japan Society for Invention and Technology (Publication No. 2001-1745, published on March 15, 2001, Japan Society for Inventions), especially for non-chlorine solvent systems. Be implemented in a way that Further, the cellulose acylate dope solution of the present invention is usually subjected to solution concentration and filtration. Similarly, the dope solution of the invention is published in the technical report of the Invention Association (public technical number 2001-1745, published on March 15, 2001, Invention Association). It is described in detail on the page. In addition, when it melt | dissolves at high temperature, it is the case where it is more than the boiling point of the organic solvent to be used, and in that case, it uses in a pressurized state.
[0041]
The compound represented by the general formula (1) is preferably 2 to 25% by mass, more preferably 2 to 20% by mass with respect to the mass of the cellulose acylate in the cellulose acylate solution. Most preferably, it is 5 to 18% by mass. In addition, various additives depending on the application can be added to the cellulose acylate solution of the present invention in each preparation step. The types of these additives and the organic used in preparing the cellulose acylate solution About the kind of solvent, the preparation method of a cellulose acylate solution (dope), the manufacturing method of the film using a cellulose acylate solution, and the use of the produced cellulose acylate, [0077] to JP-A-2002-322294 [0142].
[0042]
After film formation by casting or the like, the organic solvent is removed by heating, air blowing, reduced pressure or the like and dried to obtain a cellulose acylate film. Here, preferred physical properties of the cellulose acylate film are described in detail on pages 6 to 7 of the Japan Society for Invention and Innovation (public technical number 2001-1745, published on March 15, 2001, Japan Society for Invention).
The produced cellulose ester film is characterized by having optical isotropy (low retardation). The in-plane retardation (Re) of the film can be measured using an ellipsometer (AEP-100, manufactured by Shimadzu Corporation). Specifically, the in-plane retardation can be obtained according to the following formula as a value obtained by multiplying the in-plane longitudinal and lateral refractive index difference measured at a wavelength of 632.8 nm by the film thickness.
Re = (nx−ny) × d
Where nx is the refractive index in the slow axis direction (direction in which the refractive index is maximum); ny is the refractive index in the direction perpendicular to the slow axis; and d is the thickness of the film (Unit: nm). The in-plane retardation (Re) of the cellulose ester film is preferably 50 nm or less, more preferably 40 nm or less, further preferably 30 nm or less, and most preferably 20 nm or less.
[0043]
Specifically, the retardation (Rth) in the thickness direction of the film can be determined according to the following formula as a value obtained by multiplying the birefringence in the thickness direction measured at a wavelength of 632.8 nm by the film thickness.
Rth = {(nx + ny) / 2−nz} × d
In the formula, nx is the refractive index in the slow axis direction (direction in which the refractive index is maximum); ny is the refractive index in the direction orthogonal to the slow axis; nz is the refractive index in the thickness direction. And d is the thickness of the film (unit: nm). The retardation (Rth) in the thickness direction of the cellulose ester film is preferably 100 nm or less, more preferably 50 nm or less, further preferably 40 nm or less, and most preferably 30 nm or less. The birefringence {(nx + ny) / 2−nz} in the thickness direction is preferably 0.0005 or less, more preferably 0.0002 or less, and most preferably 0.0001 or less.
[0044]
【Example】
Next, the present invention will be described in more detail based on examples.
[Example 1]
(I) Preparation of cellulose acylate film and measurement of thickness direction retardation (Rth) value
(I-1) Preparation of cellulose acylate solution
The cellulose triacetate powder A (flakes) described below was gradually added to a 5 L glass container having stirring blades while being well stirred and dispersed in the following solvent mixed solution, and the whole was charged to 2 kg. In addition, all the methyl acetate, acetone, and ethanol which are solvents used the thing whose water content is 0.2 mass% or less. First, the powder of cellulose triacetate was dispersed in a dispersion tank for 30 minutes with nitrogen gas sealed and having a dissolver type eccentric stirring shaft and an anchor blade on the central shaft. The starting temperature of dispersion was 30 ° C. After completion of the dispersion, the high-speed stirring was stopped, and the peripheral speed of the anchor blade was set to 0.5 m / sec and further stirred for 100 minutes to swell cellulose triacetate flakes. Until the end of swelling, the inside of the tank was pressurized to 0.12 MPa with nitrogen gas. At this time, the oxygen concentration in the tank was less than 2 vol%, so that no problem was found in terms of explosion protection. Further, it was confirmed that the water content in the dope was 0.2% by mass or less. The composition of the cellulose acylate solution is as follows.
[0045]
Cellulose triacetate A (cellulose acylate flakes having SA + SB of 2.78, SA of 2.78, SB of 0, viscosity average degree of polymerization of 303, and water content of 1% by mass or less. Also, substitution at the 6-position of cellulose acylate The degree was 0.90.) (15 parts by mass), methyl acetate (87.0 parts by mass), acetone (8.0 parts by mass), ethanol (5.0 parts by mass), listed in Table 1 A plasticizer or modifier (12.0 parts by mass or 18.0 parts by mass) was used.
[0046]
(I-2) Cellulose triacetate film solution
The obtained non-uniform gel solution was fed with a screw pump, and allowed to pass through the cooling part at −70 ° C. for 3 minutes. Cooling was performed using a -80 ° C refrigerant cooled by a refrigerator. The solution obtained by cooling is transferred to a stainless steel container, stirred at 50 ° C. for 2 hours to obtain a uniform solution, and then filtered with a filter paper having absolute filtration accuracy of 0.01 mm (# 63) manufactured by Toyo Filter Paper Co. The solution was filtered, and further filtered through a filter paper having an absolute filtration accuracy of 2.5 μm (manufactured by Pall, FH025).
[0047]
(I-3) Preparation of cellulose triacetate film
The filtered cellulose triacetate solution at 50 ° C. was cast on a mirror surface stainless steel support through a casting Giuser. The temperature of the support was 5 ° C., the casting speed was 3 m / min, and the coating width was 30 cm. The mixture was left at room temperature for 1 minute, and then a drying air of 55 ° C. was blown for drying. After 5 minutes, the film was peeled off from the mirror surface stainless steel support, and then dried at 133 ° C. for 27 minutes to obtain a cellulose triacetate film having a film thickness of 80 μm or 60 μm.
About the obtained cellulose acylate film, Rth value was computed according to the formula mentioned above from the measurement using the ellipsometer (AEP-100, Shimadzu Corporation Corp. make).
[0048]
(II) Results
From Table 1, the cellulose acylate film obtained using the plasticizers PL-1, PL-6, PL-7, PL-10, PL-19 and PL-43 of the present invention has a very low Rth value. It was found that a cellulose acylate film having a small optical anisotropy can be produced. From these results, it can be seen that it is particularly preferable to contain the cellulose acylate plasticizer of the present invention.
[0049]
[Table 1]
[0050]
The structures of comparative compounds TPP and TCP are shown below.
[0051]
[Chemical 6]
[0052]
[Example 2]
The following composition was put into a mixing tank and stirred while heating to dissolve each component to prepare a cellulose acetate solution.
(Cellulose acetate solution composition)
100 parts by mass of cellulose acetate having an acetylation degree of 60.9%
Compound (plasticizer or modifier) listed in Table 1 12 parts by mass
300 parts by mass of methylene chloride (first solvent)
Methanol (second solvent) 45 parts by mass
Dye (manufactured by Sumika Finechem Co., Ltd., 360FP) 0.0009 parts by mass
[0053]
In another mixing tank, 16 parts by mass of the following retardation increasing agent, 80 parts by mass of methylene chloride and 20 parts by mass of methanol were added and stirred while heating to prepare a retardation increasing agent solution.
A dope was prepared by mixing 464 parts by mass of a cellulose acetate solution with 36 parts by mass of a retardation increasing agent solution and 1.1 parts by mass of silica fine particles (R972, manufactured by Irosil). The addition amount of the retardation increasing agent was 5.0 parts by mass with respect to 100 parts by mass of cellulose acetate. Moreover, the addition amount of silica fine particles was 0.15 mass part with respect to 100 mass parts of cellulose acetate.
[0054]
[Chemical 7]
[0055]
A cellulose acetate film was prepared from the obtained cellulose acetate solution in the same manner as in Example 1, and the retardation value was measured and compared. The same result as in Example 1 was obtained.
[0056]
【The invention's effect】
The compound represented by the general formula (1) has an excellent effect of reducing the optical anisotropy of cellulose acylate. Therefore, by using the compound represented by the general formula (1) as a plasticizer, a cellulose acylate having a small optical anisotropy can be obtained, and a cellulose acylate film having a small retardation value in the thickness direction can be obtained. It can be manufactured. In addition, the method for producing a cellulose acylate film of the present invention is particularly effective in a production method in which the optical anisotropy of a film tends to be high, such as a cooling dissolution method.
Claims (3)
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。]A cellulose acylate film comprising a compound represented by the following general formula (1).
(Linking group group 1) A single bond, —O—, —CO—, —NR 4 —, an alkylene group or an arylene group is represented. R 4 represents a hydrogen atom, an alkyl group, an aryl group or an aralkyl group. ]
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