JP4097762B2 - 抗血栓性医用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グリコシルエチルメタクリレートをグラフト化してなるポリウレタン、該ポリウレタンの製造方法およびそのポリウレタンの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
近年、生体適合性材料の研究がされているが、血液適合性をほぼ完全に満足する重合体のデザインや設計が重要な課題となっている(Science、第126巻1715−1720、1994年)。これらの研究の究極のゴールは、医用デバイスや生体内に埋め込む材料を使用する際に、各種の材料の表面に血栓を全く生じない材料の開発である。
従来から、各種の材料の中で、セグメント化ポリウレタンが血液に接するデバイスとして優れた機械的強度を有し、かつ相対的に優れた血液適合性を有するために、広く用いられている(Polyurethane in Medicine.Boca Raton、FL;CRC Press、1986年,Blood Compatibility of Polyurethane CritRev Biocompat、第5巻、45−104頁、1989年)。市販されているポリウレタン(例えば、Biomer、Dellethane、Mitrathaneなど)は、人工心臓、補助心臓デバイス、ペースメーカーの絶縁リード線、人工心臓の弁等に使用されている。しかしながら、ポリウレタンの医療用としての応用の成功の陰に隠れて、血栓を誘引する表面の欠陥はそのまま多く残っている。Andersonらによれば、蛋白質の吸着、マクロファージによる生物学的品質の低下、過酸化物の生成により誘引されて、セグメント化ポリウレタンのクラッキングが生じることが報告されている(J.Biomed.Mater Res、第25巻177−183頁、1991年,同雑誌第27巻、379−389頁、1993年)。
主としてポリエーテル鎖によるソフトセグメント化部分はマクロファージにより発生される酸化ラジカルにより品質の低下を生じる。そのため、長期間生体内で使用する場合には、セグメント化ポリウレタンの品質の劣化を抑制する必要がある。
今日では、セグメント化ポリウレタンの生物学的安定性や生体適合性等の改質には多くの方法がなされている。生体中で長期間留置する場合のポリウレタンの生体材料を開発するために、ポリエーテルジオールを用いることなしに、セグメント化ポリウレタンを製造することが望ましい。
Cooperらはポリブタジエン、水素化ポリブタジエンとポリジメチルシロキサンをソフト化セグメントとして含み、ポリエーテルを含まないセグメント化ポリウレタンを合成している(J.Biomed.Mater Res、第25巻、341−356頁、1991年)。
従来、芳香族炭化水素基を含有するジオールをソフトセグメントとして含むポリウレタンは、酸化分解に対して安定であると思われてきた(J.Biomater Appl、第9巻、321−354頁、1995年,同雑誌、第8巻、210−236頁、1995年,同雑誌、第10巻、171−186頁、1995年,同雑誌、第7巻、108−129頁、1992年。)
ポリカーボネートのソフトセグメントはカーボネート結合が、生物学的に加水分解されないことが知られてきた。生体内と試験管内の両方の方法において、ポリカーボネートのソフトセグメントはポリエーテルのソフトセグメントより安定である。
本発明者らは、最近ポリブタジエンジオールのソフトセグメントとホスホリピッド基を有する新規ポリウレタンを合成した。重合体の骨格中に、ホスホリピッド基を有するポリウレタンがポリブタジエンのソフトセグメントによる機械的強度の向上と生体適合性を改善する知見を得た(Biomaterials、第17巻、2179−2189、1996年,Chem.Mater.第8巻、1441−1450頁、1996年,J.Biomater Sci.Plym.Edn.第7巻、893−904頁、1996年,J.Appl.Polym.Sci.第62巻、687−694頁、1996年,Chem.Mater.第9巻、1570−1577頁、1997年)。
【0004】
他方、セグメント化ポリウレタンの生体適合性は各種の方法で行うことができる。例えば、アルキル基の共有結合によるアルブミンの選択的吸着の抑制(Biomaterials、第9巻、36−46頁、1988年)、ポリエチレンオキシド基による蛋白質の吸着抑制(Biomaterials、第11巻、200−205頁、1990年)、ヘパリンによる樹脂表面の血栓活性化の抑制(J.Biomed.Mater Res.第22巻、977−992頁、1988年)、さらにセグメント化ポリウレタンに導入したスルホネート基による血小板の吸着抑制(J.Biomed.Mater Res、第22巻、977−992頁、1988年)や蛋白質の吸着抑制(Biomaterials、第12巻3−12頁、1990年,J.Biomed.Mater Res.第25巻、561−575頁、1991年)等が知られている。
また、2−HEMA−スチレンのブロック共重合体(J.Biomed.Mater Res.第24巻、1151−1171頁、1990年,Artif.Intern.Organns、第35巻、357−361頁、1989年)や、MPC−BMAの共重合体(J.Biomed.Mater Res.第32巻、391−399頁、1996年)のような血液適合性を有する重合体でポリウレタンをコーテイングする方法は効果的な改質方法である。
また他の改質方法としてはポリウレタンを親水性樹脂とブレンドしてセグメント化ポリウレタンを改質する方法が挙げられる。
また、例えば、Andersonらによれば、ポリウレタンに4級アミノ基を有する重合体を混合して導入することによって、蛋白や細胞のセグメント化ポリウレタンに対する吸着を抑制することができたと報告されている(J.Biomed.Mater Res.第27巻、255−267頁、1993年,同雑誌、第27巻、367−377頁、1993年)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記のセグメント化ポリウレタンの研究に基づき、さらに今回ソフトセグメントとしてグルコース基を有する新規ポリウレタンの合成と血液適合性について検討した。従来よりグルコース基は、生体内でグリコリピッド、グリコプロテインとして細胞表面に形成されることが知られている。例えば、成長、吸着、変態、受精、食細胞のエンドトーシスなどの各種の細胞現象にグルコース基が携わっていることが知られている。そこで、ポリウレタンの表面にグルコース基を導入することによって血液適合性が改善される仮説に基づいて、検討した。
これまでグリコシルエチルメタクリレートをグラフト化したポリウレタンは知られていない。
本発明の第1の目的は、上記問題点を解決するため、表面物性を変えることができる比較的高分子量で、かつ強固なフィルムなどの成形体を容易に成形することができる新規かつ有用なグリコシルエチルメタアクリレートをグラフト化してなるポリウレタンを提供することにある。
本発明の第2の目的は、前記のグラフト化ポリウレタンの製造方法を提供することにある。
本発明の第3の目的は、前記のグラフト化ポリウレタンを用いた生体適合用材料としての用途を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果特定の分子中に少なくとも1つ以上の二重結合を有するポリウレタンにグルコシルエチルメタアクリレート単量体をグラフト重合させると生体適合性を有し、医用材料として有用であることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は次の(1)〜(2)である。
(1)A成分として、二重結合を有するポリウレタンに、B成分として、グリコシルエチルメクリレート単量体をグラフト重合してなるグラフト化ポリウレタンを用いてなる抗血栓性医用材料であって、前記A成分の二重結合を有するポリウレタンがa成分のポリブタジエンジオール、水素化ポリブタジエンジオール、ブタンジオールと、b成分のメチレンジフェニルジイソシアナートからなる二重結合を有するポリウレタンであり、グラフト化ポリウレタンのグラフト化率が、ポリウレタンに対して5〜25%であるグラフト化ポリウレタンを用いてなる抗血栓性医用材料。
【0007】
(2)前記のA成分のポリウレタンが下記の一般式[I]
【化11】
[式中、R1は、
【化12】
(ただし、xは0.076、yは0.924のモル分率で、mは18〜30の数である。)基で表されるポリブタジエンジオール(数平均分子量1000〜1650)由来の基であり、R2はメチレンジフェニルジイソシアナート由来のメチレンジフェニル基である。また、R3は、次式[III]
【化13】
(ただし、x'は0.079、y'は0.921のモル分率で、nは30〜45の数である。)基で表される水素化ポリブタジエンジオール(数平均分子量が1710〜2550)由来の基である。また、R4はブタンジオール由来の−(CH2)4−基であり、h、jおよびpはそれぞれ繰り返し数でhは1〜100、jは1〜100、pは1〜100の数である。]で表される二重結合含有ポリウレタンであり、
B成分のグリコシルエチルメタクリレート単量体が下記式[IV]
【化14】
で表される単量体を前記のポリウレタンの二重結合にグラフト化してなる前記のグラフト化ポリウレタンを用いてなる抗血栓性医用材料。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリウレタンは分子中に二重結合を有するもので、下記の一般式[I]
【化21】
で表されるポリウレタンが挙げられる。
ここで式中、R1は
【化22】
で表されるポリブタジエンジオール由来の基である。ポリブタジエンジオールとしては、数平均分子量が1000〜1650である。例えば好ましくは、市販品のものが挙げられる。ここでxは0.076、yは0.924のモル分率であり、数平均分子量1370のものが好ましく挙げられる。
また、R2はメチレンジフェニルジイソシアナート由来の基であり、例えば次式[VIII]
【化23】
で表される。ジイソシアナート由来の基として例えば、4,4’−メチレンジフェニル基が挙げらる。ジイソシアナートとしては、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート(以下MDIと略す。)である。
なおまた、R3は水素化ポリブタジエンジオール由来の基であり、次式[III]
【化24】
で表される。
ここでx'は0.079、y'は0.921のモル分率で、水素化ポリブタジエンジオールとしての数平均分子量としては1710〜2550のものが挙げられる。市販品の数平均分子量2100ものが好ましく挙げられる。
【0011】
また、一般式[I]において、pは1〜100の数を表し、hは1〜100の数、jは1〜100の数を表す。
また、一般式[I]で表されるポリウレタンの重量平均分子量としては、1000〜5000,000が挙げられる。好ましくは、5000〜500,000、より好ましくは、10,000〜100,000が挙げられる。
【0012】
グラフト化に用いるグリコシルエチルメクリレート単量体は一般式[IV]
【化25】
で表される。
【0013】
グリコシルエチルメタクリレート(以下、GEMAと略す。)として、例えば、市販品としては、日本精化株式会社製、商品名 Sucraph GEMA(α−型:β−型=2:1)が挙げられる。
【0014】
一般式[I]で表されるポリウレタンにおけるR1基は、前記の一般式[V]で表される原料のポリブタジエンジオール(以下PBDと略す。)由来の基であり、また一般式[I]で表されるポリウレタンにおけるR3基は、一般式[VI]で表される原料の水素化ポリブタジエンジオール(以下HPBDと略す。)由来の基である。
また、一般式[I]で表されるポリウレタンにおけるR4基は、ブタンジオール(以下BDと略す。)由来の基で、−(CH2)4−基で表される。
【0015】
一般式[I]で表わされるポリウレタンは、従来から知られている方法で容易に製造することができる。一般式[I]で表わされるポリウレタンの合成およびグラフト化の反応の概略を次式の反応式(A)で示す。
【0016】
【化26】
なお、ポリウレタンオリゴマーとしては、次式[IX]で表される。
【化27】
【0017】
更に具体的には、メチレンジフェニルジイソシアネート(以下MDIと略す)と、前述の一般式[IV]で表わされる二重結合を含有するポリブタジエンジオール(PBD)とさらに水素化ポリブタジエンジオール(HPBD)をジメチルアセトアミド(DMAcと略す)/トルエンの混合溶媒やジメチルスルホキシド(DMSOと略す)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などの有機溶媒中60〜150℃の温度で10分〜30時間反応させる。前記の反応に際して、反応液中に例えば、ブタンジオール等のジオール化合物を用いて分子量を大きくすることが好ましい。また反応物は、メタノール、エーテルなどの適当な溶媒中に注ぎ入れ、再沈殿させることによって、精製ポリウレタンを得ることができる。
【0018】
一般式[IV]で表わされる二重結合を含有するPBDのジオールと一般式[V]で表わされるHPBDジオールと一般式[V]で表わされるMDIのジイソシアナートとを反応する際に、(PBD+HPBD)/MDIのモル比は、0.5/1〜1/0.5である。より好ましくは、その比が0.8/1〜1/0.8である。
ついで、生成したウレタンオリゴマーにBDのジオールを反応させて、一般式[I]で表わされる二重結合を含有するポリウレタンを得ることができる。その際の反応温度、および反応時間は、通常のポリウレタンの反応条件でよく、反応温度、60℃〜150℃、反応時間、10分〜30時間が好ましく挙げられる。
【0019】
グラフト化ポリウレタンを得る方法は、前記の方法で得られた、二重結合を分子の主鎖中に有するポリウレタンとGEMAの単量体を適当な溶媒中で、アゾ系または過酸化物系のラジカル重合開始剤を用いてグラフト重合させることによって得ることができる。また反応物は、メタノール、エーテルなどの適当な溶媒中に注ぎ入れ、再沈殿させることによって、精製ポリウレタンを得ることができ、さらに、減圧乾燥などによって粉末状の生成物が得られる。
【0020】
一般式[I]で表わされる二重結合を含有するポリウレタンに一般式[IV]で表わされるGEMAをグラフト化する際に、一般式[I]で表わされる二重結合を含有するポリウレタンと一般式[IV]で表わされるGEMAの反応のモル比は、主鎖に導入した二重結合の含有量と、グラフト化で導入しようとする一般式[IV]で表わされるGEMAに由来する基の含量に依存するので、特に限定されないが、一般式[I]で表わされる二重結合を含有するポリウレタンの二重結合に対して、通常大過剰に用いるのが望ましい。一般式[I]で表わされる二重結合を含有するポリウレタンの二重結合の等量/一般式[IV]で表わされるGEMAのモルの比が1/1000〜1/2である。より好ましくは、その比が1/100〜1/10である。その比が、1/2を超える場合は、二重結合への導入がし難くなり、その比が1/1000未満では、未反応物の含量が多くなり、精製し難くなるので好ましくない。
また、ポリウレタンに二重結合が残存するとポリウレタンの強度や耐久性等が劣るようになるので、できるだけ二重結合に反応させておくことが望ましい。
【0021】
前記ラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤であれば特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過硫酸塩、過硫酸一亜硫酸水素塩などが挙げられる。
その使用量としては、特に限定されないが、通常二重結合量に対して、0.5倍〜1000倍モル等量である
【0022】
また、前記重合条件の反応温度、および反応時間は、通常のラジカル重合の反応条件でよく、反応温度は30℃〜130℃、より好ましくは50℃〜100℃、反応時間は10分〜72時間、より好ましくは30分〜10時間が挙げられる。
この際、重合反応をより円滑に行なうために溶媒を用いてもよい。
該溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムおよびこれらの混合物などを挙げることができる。好ましくは、DMAc−トルエンの混合溶媒が挙げられる。
精製については、特に限定されないが、溶媒による溶解−再沈澱の方法、カラムやアフィニテイーゲル等を用いる吸着方法や分離方法が挙げられる。好ましくは、溶媒による溶解−再沈澱の方法が挙げられる。
【0023】
なお、グラフト化率の測定は元素分析の窒素含量から以下の式(1)に基づいて、算出した。
【数1】
ここで(N%)0および(N%)はそれぞれ原料ポリウレタンおよびグラフト化したポリウレタンの元素分析の窒素含量を表す。
【0024】
以上のようにして得られる本発明のポリウレタンは、従来の天然リン脂質に比較して製膜性に優れており、例えば溶液キャスト法などの極めて簡単な方法により、容易にフィルムを成形することができる。しかも得られたフィルム、繊維などの成型品は天然のリン脂質から成形された成形品に較べはるかに強固なものとなる。また本発明のポリウレタンは、グリコース基を有しているため抗血栓性があり、このため人工臓器などの医用材料、バイオセンサー等のセンサー類など、幅広い分野への利用が可能である。
【0025】
【発明の効果】
本発明のグラフト化ポリウレタンは、側鎖にグルコース基を含有する、生体適合性をもつポリウレタンである。本発明のポリウレタンは、原料の特定のジオール、イソシアナートの種類、組成を用いるので、膜の物性に優れ、強固なフィルムなどの成形体を容易に成形することができ、グラフト化されたグルコース基により効果的に生体適合性を発揮することができる。
本発明の製造方法は、ポリウレタンの分子中の二重結合にラジカル重合開始剤の存在下で単量体を反応させるので容易にグラフト化することができる。
本発明のグラフト化ポリウレタンは、側鎖にグルコース基由来の基を有するので極めて毒性が少なく安全な生体適合用材料として有用である。
【0026】
【実施例】
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
<分子量測定>
各実施例で製造したポリウレタンの重量平均分子量は、DMAcを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法でカラムポリスチレンゲルによって標準ポリスチレンを基に測定した。
【0027】
<グラフト化率の測定方法>
グラフト化率の測定は、前記のように通常の元素分析の方法によって測定した窒素含量から算出した。
【0028】
<ポリマー表面の元素分析>
ポリマーフイルムの表面をESCAで調べた。
機種;Shimadzu ESCA−750、
条件;スペクトロメーターはMg Kα−radiation、Photoelectronの照射角度は60度で、繰り返し数は炭素、酸素は1回、窒素は5回で、0〜1000eVの条件である。
【0029】
<ATR−FTIR分析>
機種;Jasco Micro FT/IR−200、
条件:サンプル測定面積は25μm2 、
【0030】
<製膜性の評価>
製膜性の評価は次の基準で比較した。
なお、表中の記号は次の通りである。
◎:ガラスプレート上できれいな膜となり、充分な強度のフィルムとして得られる。
○:ガラスプレート上できれいな膜となり、フィルムとして得られる。
△:ガラスプレート上でなんとか膜となり、フィルム状のものとして得られる。
【0031】
<機械的強度の測定>
ポリウレタン、GEMAグラフト化ポリウレタンのフイルムについて、機械的強度として動的粘弾性を測定した。
機種;レオバイブロン(Reovibron)DDV−01FP、
条件;窒素雰囲気下、サンプルサイズ;0.5mmの厚さ、幅2mm、長さ30mm、温度は−150まで冷却してから測定(11Hz)。
【0032】
<接触角の測定>
試料のポリウレタン、GEMAグラフト化ポリウレタンのフイルムを用いて、水の接触角を測定した。
機種;接触角測定装置;Kyowa Inter Sciene Co Ltd.Model CA−A、
条件;水滴を接触させて3分後に測定、12回の測定結果の平均値、
試料としては、前記のフィルムの空気面とガラス接触面の両方について測定を行った。
【0033】
<抗血栓性試験方法>
各フイルムの膜上にウサギのPRP(血小板多血漿)を滴下し、37℃で1時間放置後洗浄し、フィルム上に粘着、活性化した血小板数を電子顕微鏡下{JOEL S−2500(日立)}で観察した。
【0034】
比較例1;ポリウレタン(PU−0)の合成
ポリブタジエンジオール(PBD、平均Mw=1370)6.8g(5mmol)、水素化ポリブタジエンジオール(HPBD、平均Mw=2100)10.5g(5mmol)、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート(MDI、分子量250.6)5.1g(20mmol)を、トルエン/ジメチルアセトアミド(4/1、V/V)混合溶媒60mlに溶解させた後、100〜110℃の反応温度で、1時間反応させた。ついで、これにブタンジオール(BD、Mw90)0.9g(10mmol)を加えて、110〜120℃の反応温度で、2時間反応させた。反応液を過剰のメタノールに投入して固形物を17.9g(収率80%)のポリウレタンを得た。(PU−0とする。)
得られたポリウレタンは重量平均分子量71000であり、分散指数(Mw/Mn)は1.9であった。
【0035】
実施例1;[PU−1の合成]
前記の比較例1で得られたポリウレタンPU−0を4g、グリコシルエチルメタクリレート(日本精化(株)社製、商品名GEMA)0.5g、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)30mgを溶媒としてジオキサン30mlとともに重合管中に仕込み、脱気、封管後70℃で1時間反応した。反応溶液をエタノール水の溶媒中に注ぎ再沈してグラフト化ポリウレタンを2.7g得た。乾燥後の収率は60%であった。グラフト化率は5.6%であった。
【0036】
実施例2;[PU−2の合成]
前記の実施例1のGEMA 0.5gの代わりに、1.5gを用いた以外は同様にして反応を行い、グラフト化ポリウレタンを3g得た。乾燥後の収率は55%であった。グラフト化率は16.7%であった。このグラフト化ポリウレタンをPU−2とする。
【0037】
実施例3;[PU−3の合成]
前記実施例1のGEMA 0.5gの代わりに、3.0gを用いた以外は同様にして反応を行い、グラフト化ポリウレタンを3.5g得た。乾燥後の収率は50%であった。グラフト化率は23.4%であった。このグラフト化ポリウレタンをPU−3とする。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例1−2〜3−2;生体適合用性能測定用膜の作成
実施例1〜3で得られたポリウレタンPU−1、PU−2、PU−3および合成1で得られたPU−0(比較例1−2)の各ポリウレタンをジオキサンに溶解し、ガラス容器上にキャストして膜を作成した。
【0040】
【表2】
【0041】
実施例1−3〜3−3、比較例3;ポリウレタン膜の生体適合性性能測定
前記の実施例1−2〜3−2で得られたポリウレタンPU−1(実施例1−2)、PU−2(実施例2−2)、PU−3(実施例3−2)および比較例1で得られたPU−0(比較例1−2)の各ポリウレタンのフイルムを用いて前記の抗血栓性試験に基づいて生体適合性、接触角および機械的強度を調べた。結果を表4、5および図2に示した。
【0042】
参考例1
前記で得られた各フイルムについて表面を前記のESCAの方法で調べた。結果を表3および図4,5および6に示した。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
以上の結果より、本発明のGEMAグラフト化ポリウレタンはフィルム状となり、ある程度の強度を有し、かつ、表面は親水性を示し抗血栓性があることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はポリウレタン(比較例1)およびGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例3)のIRの分析の図である。
【図2】図2はGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例2−3、PU−3)の動的粘弾性を測定した図である。
【図3】図3はATR−FTIRによりGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例1−1〜3、PU−1〜3)の表面の赤外吸収を測定した図である。
【図4】図4はGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例2−3、PU−3)のESCAによる表面元素中の炭素の割合を示す図である。
【図5】図5はGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例2−3、PU−3)のESCAによる表面元素中の酸素の割合を示す図である。
【図6】図6はGEMAグラフト化ポリウレタン(実施例2−3、PU−3)のESCAによる表面元素中の窒素の割合を示す図である。
【図7】図7はポリウレタンフイルムのPRPを用いた抗血栓性試験の電子顕微鏡(SEM)写真(倍率300および2000)である。
a,bは比較例1のPU−0、c,dは実施例のPU−1で、a,cは倍率300で、b,dは倍率2000を示す。
【図8】図8はポリウレタンフイルムのPRPを用いた抗血栓性試験の電子顕微鏡(SEM)写真(倍率300および2000)である。
e,fはPU−2、g,hはPU−3で、e,gは倍率300で、f,hは倍率2000を示す。
Claims (2)
- A成分として、二重結合を有するポリウレタンに、B成分として、グリコシルエチルメタクリレート単量体をグラフト重合してなるグラフト化ポリウレタンを用いてなる抗血栓性医用材料であって、前記A成分の二重結合を有するポリウレタンがa成分のポリブタジエンジオール、水素化ポリブタジエンジオールおよび、ブタンジオールのジオールと、b成分のメチレンジフェニルジイソシアナートとからなる二重結合を有するポリウレタンであり、グラフト化ポリウレタンのグラフト化率が、ポリウレタンに対して5〜25%であるグラフト化ポリウレタンを用いてなる抗血栓性医用材料。
- 前記のA成分のポリウレタンが下記の一般式[I]
B成分のグリコシルエチルメタクリレート単量体が下記式[IV]
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-
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