JP4097031B2 - アンカー引張材およびアースアンカーの構造 - Google Patents
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Description
この種の衝撃吸収柵aの用途に供されるアンカーbは、大きな落石エネルギーに対抗するため、大きなアンカー耐力が要求され、一般にはアースアンカーが用いられる。
<1>作業環境が整った平地では特別問題とならないが、衝撃吸収柵の設置現場は急峻な地域が大半であり、施工機材や資材の搬入が困難で、しかも作業環境も悪い。
このような作業環境下でアンカー工を行うのは、工費および工期両面において負担が大きい。
<2>アンカー耐力を向上させるには、アンカー孔の削孔径を大きくしたり、削孔長を深くしたりする方法が知られている。
この従来方法を採用した場合には、ボーリングマシンが大型化し、斜面上への搬入および斜面上での運搬が困難であったり、斜面に大型の作業足場を構築する必要があり、また,アンカー引張材(アンカーテンドン)の全長が長くなるため、アンカー工の施工コストが高くつく。
<3>高アンカー耐力を得る他の手段として、複数箇所にアンカーを設け、これらの複数のアンカーから反力を得る方法も知られている。
しかしながら、この方法は引張力の作用方向によって、各アンカーに作用する引張力に差が生じる。そのため、一部のアンカーに引張力が集中すると一部のアンカーが破壊し、以降は連鎖的に他のアンカーが破壊するため、一瞬にして全アンカーの破壊につながるという致命的な問題がある。
<1>両端部に定着長部を形成したアンカー引張材を使用することで、高いアンカー耐力を確保することができる。
<2>アンカー引張材は両端部に形成した定着長部をそれぞれ各アンカー孔へ挿入して定着するので、従来のアースアンカーと比べてアンカー孔の孔径を小径化でき、しかも従来のアースアンカーと比べてアンカー引張材の挿入長が短くて済む。
そのため、作業環境が厳しい急斜面においても小型で簡易な穿孔機で以って、アンカー耐力の高いアンカーを構築することができる。
<3>定着長部と定着長部が連続性を有しているため、引張力を各定着長部に均等に分散させて支持できる。
<4>アンカー引張材の係留部に作用する引張力の作用方向が異なっても、引張力を均等に分散できると共に、安定したアンカー耐力を維持することができる。
図1にアースアンカー10を地盤に構築した断面図を示す。
本発明に係るアースアンカー10は、地表の一箇所から地盤内に向けて放射状(逆V字形)に削孔した二つのアンカー孔20、20と、自由長部32の両端に拡径可能な定着長部31、31を設けたアンカー引張材30と、アンカー孔20とアンカー引張材30とを固結して一体化する固結材40とより構成している。
アンカー引張材30は、自由長部32を中央で折り曲げて、両端の定着長部31、31をそれぞれ別のアンカー孔20、20に挿入、定着して、地表に露出する自由長部32部分を係留部33として用いる。
また、この係留部33の内側には、アンカー引張材30の断面形状および曲がり具合に沿って形成した形状の保護鋼板50を配置しても良い。
以下、各部詳細について説明する。
アンカー孔20は、アンカー引張材30を挿入、配置する掘削孔であり、地表の一箇所から地盤内に向けて放射状に削孔している(図1)。
各アンカー孔20は地表面に形成する開口部22の間に、一定の間隔を保持して削孔するのが好ましい。
アンカー孔20は、必要に応じてアンカー引張材30の定着長部31の配置する箇所を拡幅して形成することもできる。
拡幅掘削の方法としては、破砕剤から発生する水蒸気の圧力によって拡幅する方法、火薬などを所定の場所で爆発または膨張させることによって拡幅する方法、所定の場所で横方向にウォータージェットを噴射して拡幅する方法、公知の拡幅翼を有する掘削機を使用して所定の箇所を拡幅する方法などがある。
アンカー引張材30は、公知の各種構造のアンカーが適用可能である。
アンカー引張材30は、地盤や構造物に定着するための定着長部31と、引張力を各定着長部31、31に伝達する連続した形態の自由長部32とからなり、自由長部32の中央部を折り曲げ、この折り曲げ箇所を所望の荷重を作用させる係留部33として用いる。
定着長部31、31と自由長部32は、連続したPC鋼撚り線などで一体に形成する。
図1に示したアンカー引張材30は、複数の素線301を縒って形成した一本のPC鋼撚り線からなるが、この他にもアンカー孔20の穿孔方向に沿って挿入可能なものであれば、特に制約を受けない。
なお、図1ではアンカー引張材30の自由長部32の範囲を露出状態で示すが、実際にはシースやテープ等で被覆してアンボンド構造を呈している。また、保護鋼板50を配置する箇所、若しくは全長に亘って露出状態として、ボンド構造として用いても良い。
所要の穿孔機材を用いて、斜面に所定の深さのアンカー孔20を削孔する。
アンカー孔20は、斜面の上方若しくは下方の何れかから見て、地表より地盤内に向けて斜め方向に削孔する。
削孔後、今度は先の地表面の開口部22から所定の間隔をおいた地点より、もう一本のアンカー孔20を削孔する。このアンカー孔20は、斜面の勾配方向を中心として先に削孔したアンカー孔20に対し、反対方向に拡がるように斜めに削孔して、二本のアンカー孔20、20で地中内にハの字を形成する。各アンカー孔20は、地表面との間に形成する角度が等しくなるように削孔するのが好ましい。
各アンカー孔20、20の奥底に、破砕剤を装填する(図示せず)。破砕剤の上方には砂等の詰め物を充填し、破砕剤の破壊力が逃げないようにすると共に孔壁の崩壊を保護する。
破砕剤には、予めリード線を繋いでおき、遠隔操作によって破砕剤の反応を介しできるようにしておく。
破砕剤によって拡幅部21、21を形成した後、圧搾空気の吹き込みや掘削するなどにより詰め物を撤去する。
次に、各アンカー孔20、20に定着長部31、31をそれぞれ配置して拡幅させる。
各定着長部31、31は、地表からの挿入長さが等しくなるようにそれぞれアンカー孔20、20に挿入する。
各定着長部31、31を所要の方法によって拡幅させた後、アンカー引張材30の定着長部31が配置されたアンカー孔20の拡幅部21に、セメントミルク又はモルタルなどの固結材40を注入する。固結剤40の注入は、注入パイプなどを使用して行う。
なお、本発明のようにアンカー孔20の孔径が小さくて良く、アンカー引張材30の他に注入パイプを挿入できない場合は、アンカー引張材30を挿入する前に注入を行っても良い。
各孔20、20の固結剤40が硬化すると、アンカー引張材30の定着長部31は固結材40を介してアンカー孔20の孔壁に固着する。
定着長部31、31は、係留部33を通じて自由長部32によって連続して繋がれているため、係留部33を中心としてどの方向から係留する場合でも、恰も係留部33に滑車を取り付けて係留したような張力分散作用を示すことができる。
しかし、本発明においてはアンカー引張材30の両端に定着長部31、31を形成し、自由長部32を通じて連続性を保持するため、各定着長部31、31にかかる負荷は均等となり、アンカー耐力は安定する。このため、同一のアンカー耐力を得るにも、アンカー孔20およびアンカー引張材30の径、長さは小さくて良く、この結果削孔機材は小型化し、穿孔作業をはじめ、搬入、運搬性の面においても扱いが容易となるから、施工コストを削減することができる。
さらに、係留部33に作用する引張力が複数であってこれらの作用方向が図3の矢印のように異なる場合や、また係留部33に係留させた掛止点が移動して変動した場合でも、二箇所の定着長部31,31に均等に力を分散できると共に、安定した高いアンカー耐力を示すことができる。
以上は一本のアンカー引張材30の両端に定着長部31,31を形成し、各定着部31、31をそれぞれのアンカー孔20、20に定着させる形態について説明したが、この定着長部31の員数は二箇所に限らず、複数とすることもできる。
かかる形態では、定着長部31を二箇所に設ける場合と比べて、一つの定着長部31にかかる負担は小さくなるため、アンカー孔20およびアンカー引張材30をそれぞれ小さくすることができ、そしてさらに高いアンカー耐力を示すことができる。
なお、この定着長部の員数は上記の員数に限定されるものではなく、このほかPC鋼撚り線を三椏に形成して交点から等距離の位置にそれぞれ定着長部31、31、31を配置する形態とできることは勿論である。
20・・アンカー孔
21・・拡幅部
30・・アンカー引張材
31・・定着長部
32・・自由長部
33・・係留部
40・・固結材
Claims (5)
- アンカー孔内に充填した固結材に引張材の端部を定着すると共に、引張材の一部に係留部を形成したアンカー引張材であって、
引張材の両端部に、複数のアンカー孔に夫々挿入して定着するアンカー孔と同数の定着長部を形成し、
両端部各々に定着長部を有する引張材の中央部に係留部を形成し、
前記係留部を介して引張材の両端部の定着長部に連続性を持たせたことを特徴とする、
アンカー引張材。
- 前記引張材が一本の引張材で構成することを特徴とする、請求項1に記載のアンカー引張材。
- 前記引張材の定着長部を拡径可能に構成したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のアンカー引張材。
- アンカー孔内に充填した固結材にアンカー引張材の端部を定着すると共に、アンカー引張材の一部に係留部を形成したアースアンカーの構造であって、
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のアンカー引張材を使用し、
地表から複数のアンカー孔を削孔し、
前記アンカー引張材の両端部に形成した各定着長部を各アンカー孔に挿入して定着し、
アンカー引張材の係留部を被反力源と接続可能なように地表に露出させ、
前記係留部に作用する力を、該係留部を通じてアンカー引張材の両端部の定着長部と定着長部に均等に分散可能に構成したことを特徴とする、
アースアンカーの構造。 - 請求項3に記載のアンカー引張材を使用すると共に、前記アンカー孔がアンカー孔より大径の拡幅部を形成していて、前記アンカー孔の拡幅部内にてアンカー引張材の定着長部を拡径させて定着したことを特徴とする、アースアンカーの構造。
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