JP4095671B2 - 石油及びガスの輸送方法 - Google Patents

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Description

本発明は、請求項1の記載事項による、ガスと石油、又はガスとコンデンセートの輸送及び貯蔵方法に関する。
背景
ガスの輸送用パイプラインがない場合、ガスの効率的な採掘を行なうのは難しい。ガスを連続的に燃焼させることはできず、ガスを現場で、例えば洋上プラットフォームで利用することはできず、ガスをパイプラインを通して消費者まで運ぶこともできない。
このような場合にできることの1つは、貴重なガスを貯留層(reservoir)へ再注入して戻すことである。単一の孤立したガス田、例えば海洋ガス田の採掘は、現場でガスを利用せず、あるいはこれをパイプラインを通して送らないならば経済的である。同様に、現場でガスを処理して、液化天然ガス、例えばメタノール及びアンモニアなどの生産を行なうことも提案されている。しかしながらこの後者の3つの選択肢の場合、ガス及び/又は他のガス製品の包括的処理が必要であり、複合装置を必要とする。この装置の規模は、洋上で作業するには不適当なものである。
この種の問題を解決するために、ガス水和物を生産することが提案されている。ガス水和物は、極度な構造系をなし、ここではすべての水が、水素結合を通して開放結晶構造(「空の水和物」)として結合している。ここにおいて、水和物の密度は氷より低い。結晶構造の開放性とは、ガス分子が固定化し、水素結合を破壊せずに格子の空洞内に捕らえられるようになることを意味する。すべての水素原子(いくらかの表面原子以外)は、水素結合に関係しており、ガス分子はファン・デル・ワールス力(非極性)によって水分子と共同作用を行なう。このように、水和物は、水の分子間の極性結合及び異分子間の非極性相互作用を可能にする相である。例えば、1立方メートルの水から形成された水和物は、約150〜170m3のメタンと結合することができる。この事実から、水和物形成ガスの輸送及び貯蔵に関する新たな可能性が生まれた。
この技術分野における特許文献からの先行技術の一般的な例として、米国特許第3,888,434号、及びノルウエー特許第149976号が引用される。しかしながらどちらの概念でも、水和物からのガスと水の解離を防ぐために、長距離輸送を行なうには高圧を用いる必要がある。
ノルウエー特許第172808号は、水和物形成ガスの輸送及び貯蔵を容易にするための、気相反応器におけるガス水和物の生産方法について記載している。ノルウエー特許出願第944974号(本出願の出願日以降に発行されたもの)は、ガス水和物のもう1つの輸送方法について記載している。水和物形成ガス及び水は、加圧液相反応器に供給されて、ガス水和物を形成する。発熱性水和物形成反応から発生した熱を吸収するために、反応器には、組合わされた冷却・反応体媒質が供給される。この媒質は、例えば水又は軽質炭化水素フラクションのコンデンセートのような液体キャリア中の氷結晶スラリーを含んでいる。この反応器では、氷結晶は少なくとも一部融解し、ガスと水との間の発熱性水和物形成反応から、反応熱を吸収する。この場合水とキャリア液体は、次の分離工程において水和物から分離される。これら2つの後者の特許公告に従って生産されたガス水和物によって、大気圧又はその付近で、実質的に断熱条件で、0℃未満の温度で、ガスの分離輸送が可能になる。この種の輸送は、例えば先行技術に見られる水和物プロセスを用いた長距離LNG輸送と比較して、明白な利点がある。
例えば北海のような小さい油田は、生産率も低く、寿命も短いが、このような油田では、どんな採掘の実施も経済的には不可能である。その理由は、すべての石油の採掘において、天然ガスを取扱う必要があるからである。先行技術を用いた場合、石油とガスの輸送は別々に行なわなければならない。この場合、ガスは処理されて、LNGとして、又は液体製品、例えばメタノール又はその他の化学製品として、あるいはガス水和物として輸送される。この輸送には、別々の貯蔵装置と輸送装置が必要であり、前記のように、採掘を経済的に魅力のないものにしている。一方で、ガスを燃やすか、あるいは貯留層に再注入して戻してもよいが、その場合天然ガスの経済的可能性は失われることになる。
さらには、ターミナルから遠く離れた位置にある油田もあり、これらはタンカーによる長距離輸送が必要である。単独で、又は二相流のガスと組合わせて、石油の長距離パイプライン輸送を利用しなければならない場合もあり、ガスを貯留層に再注入して戻す場合も多い。このような場合、ガス水和物を生産するためにガス処理を行なうことは、通常は経済的に魅力がない。その理由は、ガス水和物には実際の輸送の可能性がないからである。他方、ガスと石油の二相輸送には高圧が必要であり、従って費用が増すが、一方で、ガスを貯留層に再注入して戻すのは、貴重な資源を失うことになる。
目的
本発明の目的は、石油/コンデンセート及びガスの新規輸送方法又は貯蔵方法を提供することである。
特に本発明の目的は、石油及びガスの長距離輸送、特にパイプライン輸送、及び現在は採掘不可能と考えられている小さい油田の採掘を可能にする方法を提供することである。
本発明
前記目的は、請求項1の特徴的部分に従う方法によって達成される。そのほかの有利な特徴は、各々の従属請求項から明らかになる。
1つの側面として、本発明は、ガス及び石油、例えば天然ガス及び原油の生産現場から遠隔ターミナルまでの輸送及び貯蔵方法、又は例えばガス水和物が固体相として輸送されたターミナルにおける、タンカーからのガス水和物の荷降ろし方法に関する。「コンデンセート」という用語は、例えばガス田からの軽質炭化水素フラクション、一般に1分子あたり炭素原子を4個又はそれ以上有するもの、より特定すれば1分子あたり炭素原子を4〜10個有する炭化水素を意味する。
本発明の1つの実施態様において、ガスは、気相又は液相型の加圧反応器において、水和物形成ガスと水とを組合わせ、ついで水和物を水から分離し、水和物を乾燥し、好ましくは−10℃の温度まで冷却することによって、それ自体知られた方法で、ガス水和物に転換される。例えば用いられる方法は、各々、ノルウエー特許第172080号及びノルウエー特許出願第944974号に記載されている。後続の混合工程を容易にするため、水和物は、好ましくは例えば粉砕によって細かく砕かれる。
本発明によれば、油相は一般に冷却され、ガス水和物と混合されて、油中水和物の実質的に均一なスラリーが生じる。この時、生じたスラリーは、大気圧に近い圧力で、0℃未満の温度、好ましくは−15℃未満で、あるいはスラリーが長距離にわたってポンプで送られることになっている場合には、より高い圧力及び温度で、同じ装置で輸送又は貯蔵することができる。
このようにして石油及びガスの輸送及び貯蔵は、実質的に大気圧で、固体/液体組成物の形態で、同じ輸送装置を用いて行なわれてもよく、あるいは液体/固体組成物の形態で、中程度の圧力及び温度条件で、石油及びガスのパイプライン輸送を用いて実施されてもよい。従って、本発明は、例えば小さいかあるいは遠い生産田からガス及び石油を採掘することを、技術的にも経済的にも可能にするものである。このような生産田は、さもなければ採掘不可能であったものである。本発明は、浮上式(floating)生産装置からの、シャトルタンカーによるスラリー形態での石油及びガスの輸送に特に適している。しかしながらパイプライン輸送も同様に可能である。
本発明の方法によれば、混合は、好ましくはガス水和物が安定である温度及び圧力で実施される。このようにして、水和物の分解及び生じた組成物への水の遊離を防ぐことができる。このようなことは、輸送が、水の氷点未満の温度で行なわれる場合、水相の凍結によって、後で被膜形成及び/又はポンプとパイプの目詰まりのような問題を生じることがあるからである。大気圧において、油相及びガス水和物の両方を、混合前は−10℃未満の温度に保つのが好ましい。しかしながら0℃までの温度を用いてもよい。水和物の油相中への混合は、あらゆる適切な方法で実施することができる。例えば水和物をパイプラインの石油の連続流中に供給する方法、あるいは容器(container)において攪拌器で混合する方法である。
水和物と石油との質量比は臨界的なものではないが、スラリーのポンパビリティに関して、スラリー中の水和物部分の実際的な上限は、50容量%であると言うことができる。その理由は、スラリー中の水和物部分を増加させると粘度が増すからである。スラリー中の水和物部分は、実際には生成物流中のガス/石油比によって決定される。
さらには前記のように、水の氷点未満の温度でのスラリーの輸送又は貯蔵中に氷が形成する可能性があることから考えて、石油と水和物との混合の前に、油相中に存在するあらゆる水を油相から分離するのが有利である。水/油エマルジョン及びこのエマルジョンの凝固を防ぐために、生じた組成物に脱乳化剤(de−emulgators)を添加してもよい。
一般に石油、コンデンセート、及び水和物は同じ熱容量を有するが、油相とコンデンセート相の熱伝導率は、水和物の場合よりも低く、水和物の熱伝導率の30%にすぎない。輸送又は貯蔵中の水和物からの熱損失のみを評価すると、石油又はコンデンセートとの混合物中の水和物を貯蔵/輸送することは、熱力学的観点からさらに有利であろう。
しかしながら静止(すなわち流れない)スラリーの貯蔵又は輸送中、水和物はタンカーの底部に沈殿することもある。これは一般に水和物粒子は、油相よりも密度が高いからである。このような場合、ターミナルにおいてポンプ輸送及び分離を容易にするために、スラリーの再混合を実施する必要があろう。水和物の油相中でのこのような沈降又は沈殿は、小さい粒子サイズの水和物を用いることによって減少させることができる。これは、粒子の沈降速度は、粒子サイズが小さくなると低下するからである。もう1つの方法は、さらに粘性にするために、油相の温度を低下させることである。この時、水和物粒子の沈降速度はさらに低下する。水和物粒子に密着させるため、及びこれらの粒子をスラリー中に浮遊させ続けるために、油相中の分散ガス、すなわちガスの品質の観点から好ましくは天然ガスと組合わせて、発泡剤を用いることもできる。
貯蔵及び輸送は、断熱条件付近で、好ましくは大気圧付近で行なわれ、温度は0℃又はそれ以下でなければならない。例えばシャトルタンカーでの輸送の場合、タンカーは、積み荷への熱伝達を減らすために、適切に断熱されたコンテナを備えている方がよい。
ターミナルでは、スラリーは、分離後の天然ガスの圧縮を防ぐため、ポンプ又は同様な手段によって、加圧されるのが好ましい。ついでスラリーは、水和物を融解するため、及びガスを生産するために加熱される。ガスが回収され、特別な需要については取扱い/処理が行なわれる。一方、液相は油相と水相に分離される。生じた水相は、好ましくは再びガス水和物の生産に用いられ、洋上生産現場からの船上輸送に用いられる。タンクには水が詰められ、もう一度スラリーを積むために生産現場へ戻される。ここで水は荷降ろしされ、再び水和物生産に用いられる。
本発明はまた、固体ガス水和物を積んだタンカーの荷降ろしにも利用できる。この場合、船上の水和物タンクには、石油又はコンデンセートが充填されている。これらは温度が0℃未満であり、タンク中で液体石油又はコンデンセート中の水和物スラリーを形成する。船上タンクからターミナルまで、連続液相の水和物の荷降ろしは、スラリーのポンピングに通常用いられているポンプで実施してもよい。スラリーの連続相は、水和物が安定ではあるが流れ、かつポンパビリティがあるような温度に保たれているからである。本発明のもう1つの利点は、スラリー及び含まれているガスは、圧力を増加して圧縮することができ、この際、中程度のエネルギーしか必要でなく、その後に石油/コンデンセートを分離する分離工程、及びガス水和物の水とガスへの分解を実施することができることである。ガスはこのようにして、例えば低い操業費用で、例えば20バールまで予備圧縮することができる。計算によれば、スラリーによる荷降ろし及び分離に関連した操業費用は、固体ガス水和物の荷降ろし及び分離に関連した費用の1/3に減少させることができる。
図1は、浮上式生産装置におけるスラリーの生産に関する、大幅に簡略化されたプロセスのフローシートである。
図2は、陸上ターミナルにおけるスラリーの分離に関する、大幅に簡略化されたプロセスのフローシートである。
実施例1
この実施例は、図1及び2を参照して、ターミナルにおける分離を含む、浮上式洋上生産装置において生産される石油及びガス水和物を含むスラリーの調製方法を示すために記載されている。
図1によれば、新鮮な水、すなわち好ましくは陸上ターミナルからの、分離された水の形態の戻りの積荷が、氷スラリーの生産のための生産工程に供給される。同時に、油井からの生成物流が、気相と油相とに分離される。
圧力約25バールの気相が冷却され、約55バールまで圧縮され、ついで、生産された氷スラリーと共に液相型の水和物反応器に供給され、圧力約50バール、温度約+10℃でガス水和物が生産される。ついで生じた水和物は、分離装置に送られて水が除去され、冷却装置に送られて水和物が好ましくは−10℃まで冷却され、ついで約1バールまで圧力放出される。
油相は、分離装置へ運ばれて、水が除去され、ついで、例えば海水によって冷却された第一熱交換器を有する少なくとも1つの冷却装置へ送られ、ついでプロパン装置に送られ、油相は−10℃又はそれ以下の温度まで下げられる。しかしながら油相の温度は、その結果生じる粘度が高くなるようなレベルまで低下させない方がよい。このようなことから、難しい取扱い特性が生じるからである。
えられた油相及び冷却された水和物は、大気圧付近において、混合装置、例えばほぼ大気圧で操作される攪拌器を備えた容器へ送られ、油中天然ガス水和物のスラリーが形成される。
えられた油中水和物のスラリーは、輸送船へポンプで汲み上げられるか、あるいは生産現場において大気圧付近で、約0℃又はそれ以下の温度で、好ましくは−10℃で、実質的に断熱条件で貯蔵される。
ターミナルにおいて(図2)、水和物スラリーは貯蔵タンクに運ばれ、ついで融解装置に送られる。この装置において、水和物は、その後の分離工程から再循環された加熱水と混合して融解される。ついでえられたガスフラクションは、必要であれば圧縮され、水の除去装置へ送られ、ついでその他のプロセス又は貯蔵装置へ送られる。前記のように、圧縮機による分離されたガス相の圧縮を減少させるか、又はなくすために、ポンプによってより高い圧力までスラリーを圧縮するのが好ましい。ついで液体フラクションは、もう1つの分離装置に送られる。ここでフラクションは、水相と油相とに分離される。水相は分けられてリサイクル流になる。この流は加熱され、融解装置に戻される。廃水流は貯蔵タンクに送られ、輸送船に戻され、再び浮上式生産装置における水和物生産に用いられる。
実施例2
生産井からのガスフラクションを取扱うための、次の3つの方法の大雑把な経済的評価を実施した:1)その場でガスを燃やす;2)過剰ガスを貯留層へ再注入して戻す;及び3)本発明による石油/水和物スラリーの生産。これらの選択肢はすべて、石油フラクションの採掘及び回収に基づいている。
生産井は、5〜10メガトン、寿命3〜5年、貯留層圧力約250バールの採掘可能な埋蔵量を示していると仮定する。さらに生産率は、石油5100トン/日及びガス756トン/日として見積った。前記選択肢3)、すなわち本発明による選択肢に関しては、ターミナル終点での輸送及び取扱いに関連した投資費用も含まれている。
Figure 0004095671
前記選択肢2と3の投資費用間の差は、2億7千200万(ノルウエークローネ)に上ると見積られる。0.50〜0.70ノルウエークローネ/Sm3の市場価値を考慮すると、追加の投資費用は、各々1.9〜1.3年以内に回収(pay)できる。
従って本発明は、パイプライン設備をまったく用いることなく、技術的及び経済的に、遠隔の小さい油田の採掘でさえも実施することを可能にするような、ガス及び石油の貯蔵及び輸送方法について記載する。

Claims (5)

  1. 石油とガス水和物、又はコンデンセートとガス水和物の輸送及び貯蔵方法において、石油又はコンデンセートおよび水和物を、石油又はコンデンセートおよび水和物が0℃未満となる温度に冷却し、石油又はコンデンセートと、ガス水和物とを混合して、石油又はコンデンセート中の水和物のスラリーを形成することを特徴とする方法。
  2. 前記混合が、石油又はコンデンセートおよび水和物が−10℃未満となる温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の石油とガス水和物、又はコンデンセートとガス水和物の輸送及び貯蔵方法。
  3. 前記混合が、1気圧で実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の石油とガス水和物、又はコンデンセートとガス水和物の輸送及び貯蔵方法。
  4. 前記混合の前、又は混合中に、水和物を細かく砕くことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の石油とガス水和物、又はコンデンセートとガス水和物の輸送及び貯蔵方法。
  5. 生産現場から遠隔ターミナルまでのガスの輸送、又はターミナルにおけるコンテナからの固体水和物の荷降ろしに用いられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の石油とガス水和物、又はコンデンセートとガス水和物の輸送及び貯蔵方法。
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