JP4094137B2 - 空気入りラジアルタイヤの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、空気入りラジアルタイヤの製造方法、特に、ビード部耐久性を向上させる上で有利なビード部構造を実現することが可能な空気入りラジアルタイヤの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
重荷重用空気入りラジアルタイヤ、なかでも航空機用ラジアルタイヤは、複輪使用で一方のタイヤがパンクし、他方のタイヤ1本に2本分の荷重を負荷して転動しても、実際上は当該タイヤの最大静止荷重(後述する)の2倍の荷重を負荷し転動しても、バーストなどの致命的故障を生じることなく少なくともともランディング走行を完了させることが可能な耐久性が求められる。さらに言えば航空機用ラジアルタイヤには、ランディング走行完了からターミナルまでのタクシーング又はテイクオフ開始からテイクオフ完了まで、上記の2倍荷重負荷の下で致命的故障が発生しない耐久性が要求される。この耐久性とはビード部耐久性のことである。
【0003】
前記したビード部耐久性向上には、タイヤの荷重負荷時に、リムのフランジからの大きな押圧力が作用するビード部外側ゴムのゲージを適正な範囲内で十分に厚くすることが極めて有効であることを解明した。そこで未加硫タイヤ製造時に、ビード部外側ゴムとなる未加硫ゴム部材、例えばゴムチェーファのゲージを従来より大幅に厚ゲージとし、この厚ゲージの値は製品タイヤとなったとき大幅なビード部耐久性向上を達成し得る望ましいゲージとなるように設定した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが未加硫タイヤのビード部形状はビードコア周囲が丸みを帯び製品タイヤのビード部形状とは著しく異なるため、加硫成型の際に、丸みを帯びた未加硫タイヤビード部分が金型と高圧ガス充てんブラダーとの間で押し潰される結果、図3、4にビード部11の断面図を示すように、ゴムチェーファ14がビードベース先端部から鰭状にはみ出し、いわゆるピンチと呼ばれるはみ出しゴムが形成される。このピンチを図3、4の丸印Y、Zで囲んで示す。図3に示すピンチはタイヤ回転軸方向へはみ出した横ピンチであり、図4に示すピンチはタイヤ半径方向内側へはみ出した縦ピンチである。
【0005】
この種のピンチは、それが著しい場合はリム組み性を損ね、不要な余分ゴムであるから切除するのを常とし、タイヤの仕上げ生産性を阻害し、生産コストを高め、外観を損ね、そして商品性を下げるばかりでなく、特に航空機用タイヤでは、極めて高価な商品であると同時に極めて高い信頼性が要求され、それ故に高度に高い水準で設定されている品質基準を満たさない場合を生み、この場合はタイヤを廃棄せざるを得ない点で問題となる。
【0006】
しかし最も問題となるのは、ピンチがビード部外側ゴム、図3、4で示す例ではゴムチェーファ14のはみ出しゴムであることにあり、このことは元来のタイヤ設計品質として、ビード部11の耐久性向上に対し最適化した筈のビード部11外側ゴムゲージ、例えばゴムチェーファ14とサイドウォールゴム15とを合わせたゲージを狂わせ、期待するビード部11の耐久性向上を達成することを阻害する。
【0007】
従って、この出願の請求項1に記載した発明は、ピンチの発生を阻止して、所望するビード部外側ゴムゲージを安定して確保することができる重荷重用空気入りラジアルタイヤの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に記載した発明は、未加硫タイヤに加硫成型を施して空気入りラジアルタイヤを製造するに当り、
上記加硫成型に用いる金型のうち、製品タイヤの一対のビード部におけるビードベースを形成する外周面と、該ビードベースに曲面を介して連なるビード部外側形状を形成する壁面とを有する一対のブラダーリングのそれぞれが、金型内加硫済みタイヤの断面におけるビードコアの図形重心を通るタイヤ回転軸線と平行な直線上で測るビード部幅Bw に対し、同じ直線上のブラダーリング壁面位置を基準として測ったブラダーリング外周面幅BLw が1.05〜1.15倍の幅をもつものとして、当該一対のブラダーリングを金型本体と共に加硫金型として加硫機に使用し、この加硫金型と、高温・高圧ガスを充てんしたブラダーとの協働の下で未加硫タイヤに加硫成型を施すことを特徴とする空気入りラジアルタイヤの製造方法である。
【0009】
この明細書で最大静止荷重とは、TRA(1998 AIRCRAFT YEAR BOOK,THE TIRE andRIM ASSOCIATION INC.)及びETRTO(The European Tyre and Rim Thecnical Organisation ,AIR CRAFT TYRE AND RIM DATA BOOK 1998 )に記載されているmaximum static loadに従うものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態につき、空気入りラジアルタイヤの製造方法の一例は図1に基づき、その方法により製造した重荷重用空気入りラジアルタイヤの一例は図2に基づき説明する。
図1は、タイヤの加硫金型要部と、その内部に収容した加硫済み重荷重用空気入りラジアルタイヤ要部との断面図であり、
図2は、図1に示す重荷重用空気入りラジアルタイヤとリムとの組立体に微圧を充てんした状態におけるタイヤ要部とリム要部との断面図である。
【0011】
図1において、符号1は未加硫タイヤの加硫成型用金型本体であり、一対のブラダーリング2はそれぞれ、金型本体1に組み込み、金型本体1と共に加硫金型として加硫機に装着する。加硫機の稼働状態の下で、一対のブラダーリング2は、高温・高圧のガス、例えばスチームを内部に充てんしたブラダー3(二点鎖線で示す)との協働でタイヤのビード部11の一部乃至全ての形状を形造る。
【0012】
以下、重荷重用空気入りラジアルタイヤを航空機用タイヤとして説明するものとし、図1、2において、航空機用タイヤ(タイヤと略記する)10は、トレッド部(図示省略)と、トレッド部の両側に連なる一対のサイドウォール部(図示省略)及び一対のビード部11(片側のみ示す)とを有し、ビード部11内に埋設したビードコア12相互間にわたり、トレッド部、一対のサイドウォール部及びビード部11を補強するカーカス13を備え、カーカス13の外周には図示を省略したベルトを有する。
【0013】
カーカス13は、この例ではビードコア12の周りをタイヤ10の内側から外側へ向け折返した折返し部13tを有する4プライのターンアッププライ13uと、ターンアッププライ13uをその折返し部13tを含め外包みし、図示のようにビードベースBb領域まで延びる2プライのダウンプライ13dとを有する。カーカス13のプライ13u、13dは有機繊維コード、例えば6,6ナイロンコードのゴム被覆になる。またタイヤ10はゴムチェーファ14を有し、ゴムチェーファ14は、カーカス13の周りを覆いながら、ビード部11のタイヤ外側からビードベースBbに沿いビード部11内側端部にてタイヤ半径方向外側にビードコア12近傍位置まで延びる。なお符号15はサイドウォールゴムであり、符号16はタイヤ10の半径方向外側に向け先細り状に延びる硬質のスティフナーゴムであり、符号17はインナーライナゴムである。
【0014】
図1において、ブラダーリング2はビード部11のビードベースBbを形成する外周面2aと、ビードベースBbに曲面を介して連なるビード部11の外側形状の一部乃至全てを形成する壁面2bとを有する。ここに、図1に示すタイヤ10の断面にて、ビードコア12の図形重心Cを通るタイヤ回転軸線(図示省略)と平行な直線Lp上にて測ったビード部11の幅Bw (mm)と、直線Lp上のブラダーリング2の壁面2b位置を基準とするブラダーリング2の外周面幅BLw (mm)との間で、1.05≦BLw /Bw ≦1.15の関係を満たす外周面幅BLw (mm)をもつブラダーリング2を対として金型本体1と組み合わせ加硫金型として使用する。
【0015】
この加硫金型を加硫機に装着し、当該加硫金型と、高温・高圧ガスを充てんしたブラダーとの協働により、予めビード部11の幅Bw (mm)を達成し得る未加硫部材を用いて成型した未加硫タイヤに加硫成型を施すものである。この一対のブラダーリング2を加硫金型に用いることにより、加硫後の製品タイヤ10には図3、4に示すピンチの発生は皆無か、ピンチが発生したにしても極僅かで、目標とするチェーファゴム14のゲージを確保することができる。また極僅かなピンチは切除仕上げの必要がない程度である。
【0016】
ここに、ブラダーリング2の外周面幅BLw (mm)が、ビード部11の幅Bw (mm)の1.15倍を超えると図3に示す横ピンチが発生し、ビード部11の幅Bw (mm)の1.05倍未満では縦ピンチが発生し、双方共に目標とするチェーファゴム14のゲージ確保ができず、不可である。チェーファゴム14のゲージ確保は、ダウンプライ13dの最外側プライ中のコード最外側表面までのプライ外側ゴムゲージ確保と共に、以下に述べる重要な意味をもつ。
【0017】
航空機の使途に供するタイヤ10には、その最大静止荷重(TRA.ETRTOの記載に従う)の2倍荷重の負荷の下でビード部11にバーストなどの致命的故障を生じることなく転動することが要求され、この要求を満たすためチェーファゴム14のゲージを所定ゲージに確保することが必要である旨は先に述べたところであり、以下は図2を参照して、ここで言うビード部11の故障のうち最も深刻な故障は、直線Lp乃至その近傍における最外側カーカス13のプライ、この例ではダウンプライ13dの最外側プライのコード最外側表面に沿って生じる狭い領域のセパレーションを核とし、この核からのセパレーション領域の拡大と、それに伴う発熱量の著しい増大に由来するバースト故障とである。
【0018】
そこでこの発明に係る方法に従って製造したタイヤ10は、それを正規のリム20に組み付けたタイヤ10とリム20との組立体の断面にて、直線Lpとビード部11の外輪郭との交点を点Aとし、点Aを通るダウンプライ13dの最外側プライ表面の法線(図2では直線Lpと一致)の延長線と、ダウンプライ13dの最外側プライのコード最外側表面との交点を点Bとして、上記法線上と上記延長線上で点Aと点Bとの間の存在する総ゴムゲージGt(mm)と、カーカス13の各プライのコード1本の直径を全プライで合計したコード径の総和Pg(mm)との間で、1.20≦Gt/Pg≦2.51の関係を満たすものとする。ここで言う全プライは折返し部を除外する。
【0019】
ここで先に述べたブラダーリング2の外周面幅BLw (mm)を、ビード部11の幅Bw (mm)の1.05〜1.15倍の範囲内とすることにより、チェーファゴム14のゲージ確保と共にダウンプライ13dの最外側プライ中のコード最外側表面までのプライ外側ゴムゲージ確保を可能とすることができ、その結果、総ゴムゲージGt(mm)をコード径の総和Pg(mm)の1.20〜2.51倍の範囲内に制御可能となる。
【0020】
総ゴムゲージGt(mm)とコード径の総和Pg(mm)との関係を前記のように定めたのは、タイヤ10のプライ数が増すほど、より正確に言えばカーカス13の全プライの積層方向におけるコード径の総和Pg(mm)が増加すればする程、タイヤ10の最大静止荷重は増加し、それ故ビードコア12の図形重心Cを通る直線Lp上とその近傍位置でリム20のフランジ20Fと最外側プライのコード最外側表面との間に挟まれるゴム部分は、最大静止荷重の2倍荷重負荷の下でフランジ20から大きな押圧力の作用を受ける。この大きな押圧力がもたらす大きな圧縮ひずみは、総ゴムゲージGt(mm)をコード径の総和Pg(mm)の1.20〜2.51倍の範囲内とすることで大幅に緩和することができ、その結果、最外側プライ中のコード最外側表面に作用する大きなせん断ひずみを大幅に低減することができ、セパレーション故障核の発生は阻止可能となる。
【0021】
ここに、総ゴムゲージGt(mm)が、1.20×Pg未満では押圧がもたらすゴム部分の圧縮ひずみの緩和度合いが不足し、最外側プライのコードの最外側表面とその周囲ゴムとの間のせん断ひずみ低減が不足してセパレーション核の発生阻止が不十分となる一方、2.51×Pgを超えるとゴム部分のタイヤ10の半径方向外側に向くゴム部分の移動が生じ易く、これもまた最外側プライのコードの最外側表面とその周囲ゴムとの間のせん断ひずみを増すことになり、セパレーション核の発生阻止が不十分となるので、いずれも不可である。
【0022】
【実施例】
航空機用ラジアルプライタイヤ10で、サイズが46×17.0R20 30PRであり、タイヤ10の構成は図2に従い、カーカス13は4プライのターンアッププライ及び2プライのダウンプライを有し、各プライのコードは1890D/3の6,6ナイロンコードである。タイヤ10でのプライコード径は0.93mm/本である。ビード部11の幅Bw (mm)に対するブラダーリング2の外周面幅BLw (mm)の比BLw /Bw の値を変えた実施例1〜3のタイヤ及び比較例1、2のタイヤを製造し、ピンチ発生状況を観察し、比BLw /Bw の値を測定した。各タイヤにつき、ピンチ発生状況とそれらの評価及び比BLw /Bw の値とそれらの評価を表1に示す。なお未加硫タイヤ製造には同一未加硫部材を適用した。
【0023】
【表1】
【0024】
表1の評価の項目で、ばつ(×)印は不可、不合格をあらわし、丸(○)印は良好、合格をあらわす。表1から明らかなように、実施例1〜3と同一未加硫部材を用いた比較例1、2のタイヤでは、著しく大きな横ピンチ、縦ピンチが発生し、そのためビード部耐久性向上に必要不可欠な比Gt/Pgの値を得ることができないのに対し、実施例1〜3のタイヤでは目立つピンチの発生は一切なく、これにより比Gt/Pgの値を適正に、しかも僅かな差の下で実現している。なお記載は省略したが、2倍荷重負荷の下で実機のランディングをシュミレートする室内ドラム試験により実施例1〜3のタイヤをテストしたところ、故障が発生しないか又は多少の故障が発生しても完走し、これに対し比較例1、2のタイヤは走行継続不可能な故障を発生し、未完走であった。
【0025】
【発明の効果】
この出願の請求項1に記載した発明によれば、ビード部のピンチ発生を阻止して、タイヤの外側に向くビードコア表面に対応する位置のビード部外側ゴムの所望ゲージを安定して確保することができる重荷重用空気入りラジアルタイヤの製造方法を提供することができる。
そして、この製造方法によれば、最大静止荷重の2倍荷重の負荷転動でも所定距離を致命的故障を発生しない、ビード部耐久性に優れる重荷重用空気入りラジアルタイヤ、なかでも航空機用タイヤをもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態例の、加硫金型要部とその内部の加硫済み重荷重用空気入りラジアルタイヤ要部との断面図である。
【図2】 図1に示すタイヤとリムとの組立体に微圧を充てんした状態のタイヤ要部とリム要部との断面図である。
【図3】 ビード部横ピンチの説明図である。
【図4】 ビード部縦ピンチの説明図である。
【符号の説明】
1 金型本体
2 ブラダーリング
2a ビードベース形成用外周面
2b ビード部外側形状形成用壁面
3 ブラダー
10 航空機用タイヤ
11 ビード部
12 ビードコア
13 カーカス
13u ターンアッププライ
13t 折返し部
13d ダウンプライ
14 チェーファゴム
15 サイドウォールゴム
16 スティフナーゴム
17 インナーライナゴム
20 正規のリム
20F フランジ
C ビードコアの断面図形の重心
BLw ブラダーリングの外周面幅
Bw ビード部の幅
Lp 重心Cを通るタイヤ回転軸線に平行な直線
Claims (1)
- 未加硫タイヤに加硫成型を施し空気入りラジアルタイヤを製造するに当り、
上記加硫成型に用いる金型のうち、製品タイヤの一対のビード部におけるビードベースを形成する外周面と、該ビードベースに曲面を介して連なるビード部外側形状を形成する壁面とを有する一対のブラダーリングそれぞれは、金型内加硫済みタイヤの断面におけるビードコアの図形重心を通るタイヤ回転軸線と平行な直線上で測るビード部幅(Bw )に対し、同じ直線上のブラダーリング壁面位置を基準として測ったブラダーリング外周面幅(BLw )が1.05〜1.15倍の幅をもつものとして、当該一対のブラダーリングを金型本体と共に加硫金型として加硫機に使用し、この加硫金型と、高温・高圧ガスを充てんしたブラダーとの協働の下で未加硫タイヤに加硫成型を施すことを特徴とする空気入りラジアルタイヤの製造方法。
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