JP4093926B2 - 光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザーにより情報の記録及び再生が可能な光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型の光記録媒体の開発が行なわれている。
青色レーザ対応の有機材料としては、例えば、特許文献1〜5に記載されている。しかし、これらの公報では、実施例において溶液と薄膜のスペクトルを測定したのみで、記録再生に関する記載がない。
特許文献6〜8には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は488nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な記録ピットが形成できた旨の記載があるのみである。
特許文献9には、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は430nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な変調度が得られた旨の記載があるのみである。
特許文献10〜19には、実施例に記録波長430nm、NA0.65での記録例があるが、最短ピットが0.4μmという低記録密度条件(DVDと同等の記録密度)である。
特許文献20には、記録再生波長405〜408nmの記載があるが、記録密度に関する具体的な記載はなく、14T−EFM信号の記録という低記録密度条件である。
【0003】
また、従来のCD、DVD系光記録媒体と異なる層構成や記録方法に関して、以下のような技術が公開されている。
特許文献21には、基板/過飽和吸収色素含有層/反射層という構成で、過飽和吸収色素の消衰係数(本発明でいう吸収係数)の変化により記録を行なう技術が開示されている。
特許文献22には、基板/金属蒸着層/光吸収層/保護シートという構成で、光吸収層によって発生した熱によって、金属蒸着層を変色又は変形させることで記録を行なう技術が開示されている。
特許文献23には、基板/誘電体層/光吸収体を含む記録層/反射層という構成で、記録層の膜厚を変え溝部の深さを変えることにより記録を行なう技術が開示されている。
特許文献24には、基板/光吸収体を含む記録層/金属反射層という構成で、記録層の膜厚を10〜30%変化させることにより記録を行なう技術が開示されている。
【0004】
特許文献25には、基板/有機色素を含有する記録層/金属反射層/保護層という構成で、基板の溝幅を未記録部に対して20〜40%広くすることにより記録を行なう技術が開示されている。
特許文献26には、基板/中間層/金属薄膜という構成で、金属薄膜を変形させてバブルを形成することにより記録を行なう技術が開示されている。
特許文献27には、基板/絶縁層/シアニン記録膜/反射膜/保護膜という構成で、絶縁膜に熱を逃がし記録部を修正する技術が開示されている。
特許文献28には、基板/光吸収層/記録補助層/光反射層という構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行なう技術が開示されている。
特許文献29には、基板/光吸収層/多孔質な記録補助層/光反射層、或いは基板/多孔質な記録補助層/光吸収層/光反射層という構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行なう技術が開示されている。
【0005】
特許文献30には、基板/多孔質な光吸収層/光反射層という構成で、光吸収層を凹状に変形させると共に、光吸収層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させて記録を行なう技術が開示されている。
特許文献31には、基板/有機色素を含む記録層/記録補助層という構成で、記録補助層と有機色素が相溶して、有機色素の吸収スペクトルを短波長側へシフトさせることで記録を行なう技術が開示されている。
しかしながら、上記の諸々の技術は、何れも青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく、青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−181524号公報
【特許文献2】
特開2001−158865号公報
【特許文献3】
特開2000−343824号公報
【特許文献4】
特開2000−343825号公報
【特許文献5】
特開2000−335110号公報
【特許文献6】
特開平11−221964号公報
【特許文献7】
特開平11−334206号公報
【特許文献8】
特開2000−43423号公報
【特許文献9】
特開平11−58955号公報
【特許文献10】
特開2001−39034号公報
【特許文献11】
特開2000−149320号公報
【特許文献12】
特開2000−113504号公報
【特許文献13】
特開2000−108513号公報
【特許文献14】
特開2000−222772号公報
【特許文献15】
特開2000−218940号公報
【特許文献16】
特開2000−222771号公報
【特許文献17】
特開2000−158818号公報
【特許文献18】
特開2000−280621号公報
【特許文献19】
特開2000−280620号公報
【特許文献20】
特開2001−146074号公報
【特許文献21】
特開平7−304258号公報
【特許文献22】
特開平8−83439号公報
【特許文献23】
特開平8−138245号公報
【特許文献24】
特開平8−297838号公報
【特許文献25】
特開平9−198714号公報
【特許文献26】
特許第2506374号公報
【特許文献27】
特許第2506867号公報
【特許文献28】
特許第2591939号公報
【特許文献29】
特許第2591940号公報
【特許文献30】
特許第2591941号公報
【特許文献31】
特許第2982925号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術に鑑みて、特に405nm近傍の波長領域であっても記録可能な、有機材料からなる光記録媒体、また、高密度化が図れ、変調度が大きく、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少なく、保存性にも優れた光記録媒体の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜)の発明(以下、本発明1〜という。)によって解決される。
1) プレグルーブが形成された基板上に、第一の層、光吸収層、第二の層がこの順に設けられ、第一の層及び第二の層が金属材料及び/又は無機材料を含有し、光吸収層が、一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を含み、405nmの波長域で記録可能な光記録媒体において、プレグルーブのトラックピッチが0.32μmであり、プレグルーブ内における光吸収層の膜厚が35〜45nmであることを特徴とする光記録媒体。
【化2】
Figure 0004093926
(式中のMは、Cu、VO、Ni、H、Zn、Pd、Cd、Co、Feの何れかであり、4個のRは何れもC −(CF C−O−である。)
) 第一の層は、銀、銅若しくはアルミニウムである金属材料又はこれらを主成分とする合金材料で構成され、第二の層は、Al、MgO、BeO、ZrO、ZnO、UO、ThO、SiO、SiN及びSiの少なくとも1つを含むことを特徴とする1)に記載の光記録媒体。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
従来は、光吸収層が光を吸収して光熱変換を行い、その熱により光吸収層材料が分解・変質、変形することにより記録が行われており、殆どの熱が記録に使用されているのに対して、本発明の光記録媒体では、記録に用いる熱を、隣接する二つの層で制御することを特徴とする。
また、従来の多くの有機色素を用いた光記録媒体では、反射を利用した干渉効果によりコントラストを得ることができたため、高いパワーを必要とせず、小さな記録範囲で高いコントラストを得ることが出来ていたが、光吸収層材料として高い反射率を有する材料を用いるという限定が課せられていた。
これに対して、本発明の光記録媒体では、高いパワーを記録に用いた場合でも、隣接する層に熱を逃がして熱の制御を行うことにより、記録範囲の小さい、高いコントラストの記録を達成することができるので、従来の様に有機光吸収層が高い反射率を有する必要はない。
更に、色素材料においてはHOMOからLUMOへの遷移以外の遷移を利用するため、多数の吸収域を記録に用いることができ、色素の持っている吸収波長と記録再生に用いるレーザ光の波長が合うように調整することが容易である。
【0010】
本発明の光記録媒体の構成の一例を、図1及び図2に基づいて説明する。図1は本発明の光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図であり、図2は本発明の光記録媒体(光ディスク)の構成の一例を示す斜視図である。
これらの図から明らかなように、この光記録媒体は、片面に微細な凹凸状のプリフォーマットパターン2を有する透明基板1、第一の層3、光吸収層4、第二の層5、保護層10がこの順に積層された構成を有する。
【0011】
透明基板1は、レーザーに対して透明性を維持し、優れた衝撃強度を有し、80〜200℃の温度で容易に膨脹又は変形、変質する材料からなる。
例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ樹脂、ポリエステル、非晶質ポリオレフィンなどの透明樹脂材料(好ましくはガラス転移温度Tgが100〜200℃)を所望の形状に成形し、その片面に所望のプリフォーマットパターンを転写したものや、所望の形状に形成されたガラス等の透明セラミックス板の片面に所望のプリフォーマットパターンが転写された透明樹脂層を密着したものなど、公知に属する任意の透明基板を用いることができる。ディスク状光記録媒体(以下、光ディスクという)を構成する透明基板1は、図2に示すように、中心部にセンタ孔1aを有する円盤状に形成される。なお、透明基板1の作製は、公知の方法で行うことができる。
また、基板表面には、記録又は再生時に入射レーザー光を案内するためのプリグルーブが形成されており、その深さは10〜200nmであることが望ましい。プリグルーブの深さが10nm未満の場合には、記録後の基板膨脹により反射率が大きく増加されて記録信号にノイズが多くなり、200nmを超える場合には、光吸収層にもプリグルーブが深く生じるため均一な成膜をし難い。
【0012】
プリフォーマットパターン2は、少なくとも記録・再生用レーザビームを記録トラックに追従させるためのビーム案内部を含んで構成される。
図1、図2の例では、ビーム案内部が、センタ孔1aと同心の渦巻状又は同心円状に形成された案内溝2aをもって構成されており、当該案内溝2aに沿って、アドレスピットやクロックピット等のプリピット2bが形成されている。
プリピット2bが案内溝2a上に重ねて形成される場合には、両者を光学的に識別できるようにするため、図1に示すように、案内溝2aとプリピット2bとをそれぞれ異なる深さに形成する。プリピット2bが相隣接する案内溝2aの間に形成される場合には、両者を同じ深さに形成することもできる。
なお、ビーム案内部としては、案内溝2aに代えて、ウォブルピットを記録トラックに沿って形成することもできる。また、プリピット2bを省略し、案内溝のみで形成しても良い。
【0013】
第一の層3の材料としては、Fe、Ti、Zr、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Rh、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Si、Ge、Te、Sn、Bi、Sb、Tl、Na、Ga及びPtからなる群より選ばれる少なくとも一種の物質を用いることができる。また、各種セラミックス材料も使用可能である。
特に、少なくとも2種類の元素を主成分とし、これらの元素の融点が600℃以下である材料が好ましく、例えばBi、In、Pb、Sn、Te、Tl、Zn、Na、Gaなどからなる材料のうちから少なくとも2種類を選ぶことができる。具体的には、In−Bi系、Bi−Na系、Pb−Bi系、Sn−Bi系、In−Pb系、In−Sn系、In−Tl系、In−Zn系、Sn−Pb系、Tl−Sn系、Zn−Sn系などの組み合わせが可能である。また、これらの元素が融点600℃以下の共晶組成を有し、その含有量が共晶組成又はその近辺の組成であるものを用いてもよい。
【0014】
更に、2種類の元素を主成分とし、少なくとも1方の元素の融点が600℃以上であって、その元素がもう一方の元素との間で融点600℃以下の共晶組成を有し、該2種類の元素の含有量が共晶組成又はその近辺の組成である材料がより好ましい。例えば、Bi、In、Pb、Sn、Te、Tl、Zn、Na、Ga、Ag、Al、Ca、Ge、Sb、Si、Au、Cu、Ni、Ce、La、Mg、Pr、Pd、Ptなどからなる材料のうちから少なくとも2種類を選ぶことができる。具体的には、Ag−Al系、Ag−Bi系、Ag−Ca系、Ag−In系、Ag−Pb系、Ag−Sb系、Ag−Sn系、Ag−Te系、Ag−Tl系、Al−Au系、Al−Cu系、Al−Ge系、Al−Si系、Al−Sn系、Al−Te系、Al−Zn系、Au−Bi系、Au−Ge系、Au−Pb系、Au−Sb系、Au−Sn系、Au−Si系、Au−Te系、Au−Tl系、Ni−Ce系、Cu−La系、Cu−Mg系、Cu−Pr系、Cu−Sb系、Ga−Te系、Ge−Te系、Zn−Ge系、In−Sb系、Pb−Pd系、Pt−Pb系、Pb−Sb系、Sb−Te系、Tl−Sb系などの組み合わせが可能である。
【0015】
セラミックスとしては、Al、MgO、BeO、ZrO、ZnO、UO、ThOなどの単純酸化物系の酸化物;SiO、2MgO・SiO、MgO・SiO、CaO・SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、2MgO・2Al・5SiO、LiO・Al・4SiOなどのケイ酸塩系の酸化物;AlTiO、MgAl、Ca10(PO(OH)、BaTiO、LiNbO、PZT〔Pb(Zr、Ti)O〕、PLZT〔(Pb、La)(Zr、Ti)〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;SiN、Si、Si6−ZAl8−Z、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、BC、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB、TiB、ZrBなどのホウ化物系の非酸化物;CdS、MoSなどの硫化物系の非酸化物;MoSiなどのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイアモンド等の炭素系の非酸化物を用いることができる。
【0016】
更に、Fe、Ti、Zr、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Rh、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Si、Ge、Te、Sn、Bi、Sb及びTlからなる群より選択される少なくとも一種の物質の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物を含有することが望ましい。酸化物の具体例としてはSiO、ZnO−SiO2、SiC、ZnO、In−SnO、In−ZnO等、硫化物の具体例としてはZnS等、窒化物の具体例としてはSiN、AlN、炭化物の具体例としてはTiC、ZnC、TaC、NbC、TiC−TiO2、TaC−TaO2、NbC−NbO等が挙げられる。
上記の中でも特にIn、Si、Sn、Znの酸化物、炭化物は、光透過率が高く吸光度が小さい(光吸収が少ない)ため好適である。ここでいう吸光度は材料の光吸収の程度を意味する。反射を有する材料の吸光度を分光器で測定した場合、ディテクターにディテクトされる光が反射のため少なくなり、見かけ上の吸光度が増加する場合もあるが、ここでの吸光度には反射により増加する量は加味せず、材料が吸収する光量のみを吸光度とする。
一方、反射が無視できる程度に少ない材料に関しては、ディテクターにディテクトした光量より計算された吸光度、即ち分析機器から得られた値をそのまま吸光度とすることができる。
【0017】
また、第一の層3は、反射層としての機能を有する材料で形成される場合もある。用いる材料に特に限定はないが、銀、銅、アルミニウムなどの金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を使用することができる。特に銀又は銀を主体とする合金を用いることが好適である。ここで銀を主体とするとは、銀の含有率が80〜100原子%、好ましくは90〜100原子%であることを意味する。
また、安価で且つコンパクトディスクにおいて使用されて実績があることから、アルミニウムを使用することもできる。
金属又は合金材料を用いる場合には、スパッタリングや真空蒸着などの真空成膜方法によって成膜することができる。この場合、真空槽内の真空度を変えて(例えば、10〜5torr程度)スパッタリングを行い、密度又は結晶化の状態の違う膜を形成して第一の層の反射率を高くする技術を適用することもできる。
【0018】
また、各種金属にN、Oを添加することもできる。Nは第一の層が結晶の場合、結晶粒径を小さくしてノイズを下げる効果を持つ。Oは第一の層を構成する元素の少なくとも1種類の酸化物となって存在し、第一の層の熱伝導率を小さくして記録感度を向上させる効果を持つ。添加量は20原子%以下が好ましく、特に15原子%以下が好ましい。
また、S、Se、又はSbを添加すると耐酸化性が向上する。これらの元素を第一の層の表面付近に多く含ませることにより耐酸化性が一層向上する。なお、Sbは第一の層に用いられる元素として挙げたものであるが、添加元素として用いられるのは、Sbが第一の層の主成分として用いられていない場合に限られる。
【0019】
第一の層3の膜厚は、1〜200nmが好適である。1nmより薄いと、熱の伝導が不十分であり、200nmより厚いと、吸収率が高くなり反射率が低下してしまう。
材料としてSiCを選択した場合の膜厚は8〜14nm、Agを選択した場合の膜厚は10〜40nm、Te合金を選択した場合の膜厚は1〜10nmが好適である。
第一の層にはマイクロポアが存在してもよく、貫通している連続気泡タイプのものが存在してもよい。
【0020】
光吸収層4を形成可能な色素材料としては、例えばポリメチン系色素、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン系色素、ピリリウム系色素、アズレン系色素、含金属アゾ染料、アゾ染料、ベンゾビスアゾール系色素、ナフトピラン系色素、メロシアニン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、ポリエン系色素、ベーススチリル系色素、ホルマザンキレート系色素等を挙げることができる。
これらの中では、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、メロシアニン系、アゾ系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ポリエン系、ベーススチリル系及びホルマザンキレート系各色素が好適に用いられる。
特にフタロシアニン系色素としては下記一般式(I)で表される化合物が好適である。
【0021】
【化3】
Figure 0004093926
【0022】
上記式中、Mは、Cu、VO、Ni、H、Zn、Pd、Cd、Co、Feの何れかであり、Rとしては、下記表1〜表8に示すものが挙げられる。
但し、表8に示した化合物のMは、表に記載した通りの有機置換基を有するものである。また、表1〜表8中、(1/4)とあるのは、4個のRのうち1個がその置換基であることを意味し、同様に(2/4)(3/4)(4/4)とあるのは、2〜4個がその置換基であることを意味する。また(1/3)とあるのは、4個のRのうち一個は水素であり、残りの3個のRのうち1個がその置換基であることを意味し、同様に(2/3)とあるのは、2個がその置換基であることを意味する。また、上記のような表示が無いものは、4個のRが全てその置換基であることを意味する。
【表1】
Figure 0004093926
【表2】
Figure 0004093926
【表3】
Figure 0004093926
【表4】
Figure 0004093926
【表5】
Figure 0004093926
【表6】
Figure 0004093926
【表7】
Figure 0004093926
【表8】
Figure 0004093926
【0023】
また、アミニウム系色素などの各種クエンチャが添加された色素材料を用いることもできる。更には、上記色素材料群より選択される1種又は2種以上の色素材料を樹脂中に分散したものを用いることもできる。
色素材料を分散可能な樹脂材料としては、アクリル樹脂、ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂などを挙げることができる。
光吸収層4は、先に例示的に列挙した色素材料群より選択された色素材料の溶剤溶液をスピンコートして形成する。基板の溝状のプリフォーマットパターン2に対応して形成されている第一の層の溝内に色素材料を充填した後、該溝の間の平坦部(基板のプリフォーマットパターン2の間のランド部2cに対応して形成されている平坦部)に付着した色素材料を選択的に除去し、第一の層の表面を露出すると共に、前記溝内にのみ色素材料を充填することによって形成できる。
なお、色素材料の溶剤としては、アルコール系溶剤又はセルソルブ系溶剤などを用いることができる。
【0024】
更に、二座配位を取り得るキレート材を含有させて色素の褪色防止を図ることもできる。このようなキレート材としては、無機酸類、ジカルボン酸類、オキシカルボン酸類、ジオキシ化合物類、オキシオキシム類、オキシアルデヒド及び誘導体類、ジケトン及び類似化合物類、オキシキノン類、トロボロン類、N−オキシド化合物類、アミノカルボン酸及び類似化合物類、ヒドロキシルアミン類、オキシン類、アルジミン類、オキシアゾ化合物類、ニトロソナフトール類、トリアゼン類、ピウレット類、ホルマザン類及びジチゾン類、ビクアリド類、グリオキシム類、ジアミン及び類似化合物類、ヒドラジン誘導体類、チオエーテル類などが挙げられる。
更に、イミノ基を有する誘導体も使用可能である。
【0025】
光吸収層4を成膜するための溶剤は、第一の層3にマイクロポアがある場合は、マイクロポアに進入しない一定の接触角を有する溶液を形成しうる材料を選択する必要があるが、それ以外には特に限定はない。
ここで、マイクロポアに進入しない一定の接触角は、マイクロポアのサイズにより必要とされる表面張力が異なるため、その値を数値で示すことはできない。しかし、成膜後のマイクロポア部分に発生する平均膜厚よりも平均膜厚の2%以上薄い部分の面積は225μmが上限であり、225μmを超えるとトラッキング精度、エラー訂正が不可能になるなどの問題が発生するので、マイクロポアに溶液が浸透した場合でも上記の範囲以上に浸透が広がらなければ、マイクロポアに進入しない一定の接触角を有する溶液に相当すると判断する。
【0026】
上記マイクロポアに進入しない一定の接触角を有する溶液を形成することができる溶剤としては、例えば、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルムなどの塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミドなどのアミド;シクロヘキサンなどの炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール;2,2,3,3−テトラフルオルプロパノールなどのフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類などが挙げられる。
また、これらの溶剤としては、使用する色素の溶解度が5mg/1ml以上あるものを用いる必要がある。そこで使用する色素の溶解性を考慮して適宜単独で又は二種以上併用して用いる。また、塗布液中には、必要に応じて酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤など各種の添加剤を添加してもよい。
【0027】
光吸収層4の材料として結合剤を併用する場合の結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴムなどの天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂;ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂;ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物などの合成有機高分子を挙げることができる。
上記結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01〜50倍量(質量比)の範囲とし、好ましくは0.1〜5倍量(質量比)の範囲とする。
このようにして調製される塗布液の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲とし、好ましくは0.1〜5質量%の範囲とする。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法などを挙げることができる。
【0028】
また、光吸収層の材料としては、芳香族化合物、脂肪族化合物、アミド、エステル、アミン、ウレア、硫黄化合物及びヒドロキシ化合物からなる群から選択される少なくとも1つを用いることもできる。
更に、光吸収層は、分解温度が160〜500℃の有機物質を含有することが望ましい。このような有機物質は、上記例示化合物の中から適宜選択すればよい。
分解温度が160℃よりも低いと環境に影響され、保存性に問題が発生する。また、分解温度が500℃よりも高いと記録時に材料の分解を誘発することができず記録感度が低下する問題ある。
【0029】
一方、光吸収層4は光を吸収して変形、変質するか又は光学的に変化する。
光吸収層の変形、変質に伴なって、第一の層、第二の層、基板、保護層も変形、変質することがある。
第一の層にAg、Cu、Alなどの金属を選択し、第二の層にSiC、SiOなどの誘電体又はTeなどの金属を選択した場合、熱伝導率の比は3〜310倍の範囲となり、変質部分が記録マーク領域とほぼ等しく、ジッターやディビエーションの少ない良好な記録をすることができた。この場合の光吸収層は変質が促進され変形は僅かであった。
光吸収層4の膜厚は、5nmより薄いと熱の吸収が十分でなく、変形や変化が不十分となる。また、200nmより厚いと体積が大きいため変形が抑えられたり、熱的な影響を受けて光学的に変化できない部分が存在するため問題である。
光吸収層は単層でも重層でもよい。
【0030】
第二の層5に用いる材料としては、金属材料を含有すること以外、特に限定はなく、例えば前記の第一の層に用いるのと同様の材料を使用することができる。
保護層10は、例えばSiO、SiN、AlN等の無機材料や、光硬化性樹脂などの有機材料を用いて形成することができる。
無機保護層は、真空成膜法によって形成することができ、有機保護層は、第二の層5上に光硬化性樹脂膜(例えば、大日本インキ化学工業社製のSD1700、SD318、SD301)をスピンコートした後、樹脂硬化光を照射することによって形成できる。
また、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合には、保護層を光透過性とする必要がある。
例えば高NA化すると、再生光が透過する部分の膜厚を薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って、基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにしている。
【0031】
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射膜を設け、更にこの上に光を透過する薄膜である光透過性の保護層を設けるようにし、保護層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射膜を設け、その上に熱受容層、光吸収層を形成して記録層とし、更にこの上に光透過性を有する保護層を設けるようにし、保護層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。
このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このような保護層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成されるのが一般的である。厚みは0.1mm以下が好適である。またポリカーボネートシートは変性アクリル樹脂系両面接着剤で固定される。
【0032】
一方、第一、第二の層には超解像技術を付加することも可能である。通常光ディスクの再生限界はλ/2NAで表される。(ここで、λは波長、NAは光の絞り込み角度の正弦である)
この限界を超える分解能を実現するため、以下の超解像技術を適応する。即ち、対物レンズでレーザー光を媒体の上に集光させた再生ビームの強度分布Iは
I=I×exp〔−2(r/r
で表される(ここで、Iはレーザービームの中心部の強度、rはレーザービームの強度が1/eになる半径である)。
このように強度分布がガウス分布の再生ビームで記録媒体が加熱されると、ビームが照射された部分の温度分布も同じようにガウス分布に近いものとなる。
ビームの中心付近の温度が高い部分を再生領域とし、周辺部分の温度の低い部分を記録再生に関与しない部分とすることで実効的なビームスポットの径が小さくなり分解能が向上する。
ガウス分布では中心温度のおよそ0.6倍のところ、即ち半径r/2のところで傾斜が急になる。この部分に合わせると安定した記録再生が可能となる。
【0033】
ディスク形態としては、第一の層、光吸収層、第二の層からなる3層構造(以下、3層構造という)を内側にはさむ形で2枚の基板を貼り合わせた構造とすることができる。また、2枚の基板を貼り合わせず、いわゆる単板の構造とすることもできる。
これら2枚の基板は、それぞれが3層構造を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによって、それぞれの光吸収層に情報の記録を行い、光ビームを照射する側の基板及び3層構造が上記光ビームのうち40%以上を透過する構成としてもよい。
また、ディスク形態として、1枚の基板上に3層構造を2組以上設けることも可能である。
このとき、光ビームを基板側から照射することによって、それぞれの光吸収層に情報の記録を行ってもよいし、光ビームを基板と反対側から照射することによって、それぞれの光吸収層に情報の記録を行ってもよい。
【0034】
上記のように、光ビームをある一方向から照射して複数の光吸収層に情報の記録を行うような場合、光ビーム入射側の光吸収層と、その反対側の光吸収層とが異なる膜厚を有していてもよい。
また、光ビーム入射側の第一の層の主成分となる元素と、その反対側の第一の層の主成分となる元素とが同一であり、該主成分となる元素の含有量が光ビーム入射側の第一の層とその反対側の第一の層とで異なっていてもよい。
更に、光ビーム入射側の第一の層の主成分となる元素のうち少なくとも1種類の元素と、その反対側の第一の層の主成分となる元素のうち少なくとも1種類の元素とが、異なる元素であってもよい。
光ビーム入射側の光吸収層の融点と、その反対側の光吸収層の融点とが異なっていてもよい。
【0035】
基板上に螺旋状又は同心円状に案内溝を形成し、案内溝上又は隣接する2本の案内溝の間(案内溝間と呼ぶ)のどちらか一方を記録トラックとし、該記録トラックに情報を記録する構成を取ることができる。また、基板上に螺旋状又は同心円状に案内溝を形成し、案内溝上及び案内溝間の両方を記録トラックとし、該記録トラックに情報を記録する構成を取ることもできる。
2枚の基板のそれぞれが3層構造を有しており、光ビームをどちらか一方の基板から照射することによってそれぞれの光吸収層に情報の記録を行う場合、基板上に形成された螺旋状又は同心円状の案内溝の形状が、光ビーム入射側とその反対側とで異なっていることが好ましい。
このとき、光ビーム入射側の基板の案内溝の深さが、その反対側の基板の案内溝の深さよりも浅いか、又は光ビーム入射側の基板の案内溝の幅が、その反対側の基板の案内溝の幅よりも広ければ、より好ましい。
【0036】
光記録媒体のアドレス情報等をプリフォーマット信号として基板に予め形成することができる。その形態としては、凹形状又は凸形状のエンボスピット、或いは情報に応じてグルーブ部やランド部の幅を変調するウォーブル方式が可能である。ウォーブル方式としては、グルーブ部の内周側又は外周側の一方の側面のみ、或いはグルーブ部の内周側及び外周側の両方の側面を蛇行させる方式を採用することができる。
【0037】
上記二組の3層構造を有する場合において、第一組の反射率、透過率、吸収率をr1、t1、a1、第二組の反射率、透過率、吸収率をr2、t2、a2とし、第一組からの全反射率をR1、第二組からの全反射率をR2とし、更に第一組の全吸収率をA1、第二組の全反射率をA2とすると、これらのパラメータに対して次の関係が成立する。
r1+t1+a1=1
r2+t2+a2=1
R1=r1
R2=r2×t12
A1=a1
A2=a2×t1
第一組と第二組の信号品質が同じであるためには両者の反射率が同一であることが、また、両者の記録感度が同じであるためには両者の吸収率が同一であることが必要条件であり、従って、次式を満足する必要がある。
r1=r2×t12
a1=a2×t1
ここで、t1は1より小さい値であるため、
r1<r2
a1<a2
を満たさなければならない。即ち第一組の反射率は第二組の反射率より小さく、第一組の吸収率は第二組の吸収率よりも小さくなければならない。第一組の透過率t1を40%以上とすると、この関係を満たすことが容易になり好ましい。
【0038】
第一組の反射率、吸収率と、第二組の反射率、吸収率を異なる値に設定する方法として、第一組と第二組の膜厚を変える方法がある。第一組の膜厚を第二組の膜厚よりも薄く設定すると、上記の関係式を満たすことができる。このとき第二組の透過率を略0(ゼロ)にすると第二組の反射率、吸収率をより大きくすることが可能になり好ましい。
一方、信号強度の点からr1<r2を満たす必要があるが、a1≧a2であっても第一組と第二組の記録感度をほぼ同等にする方法がある。それは第二組の光吸収層の融点を第一組の光吸収層の融点よりも低くして少ない吸収率でも記録が可能となるようにする方法である。この方法によれば第二組の吸収率が低くても記録可能になる温度が低いため、第一組と同じパワーのレーザ光照射で記録が可能になる。融点を変える方法としては、光吸収層の組成を変えるといった方法がある。
上記のように、一方の側からレーザ光を入射して2組の各々の光吸収層に対して情報の記録再生を行う場合、本発明のような媒体は、記録感度が良好であるため光吸収層自身の吸収率を従来の媒体のように大きくする必要がなく、反射率を大きくとることができる。光吸収層として高反射率かつ低融点の材料を選べば更にこの効果が高い。
【0039】
光吸収層や第一の層を、スパッタ法、蒸着法、スピンコート法などによって成膜すると、各層の基板側と反対の面が、基板の形状と異なる場合がある。特に、スピンコート法によって成膜すると、基板に形成されたグルーブや凹凸ピットが埋まってしまう傾向があり、基板形状と、基板と反対側の膜の形状とが大きく異なる。
前述した3層構造を内側にはさむ形で2枚の基板を貼り合わせた構造の媒体に対し、一方から光を入射して両方の光吸収層に記録再生を行う場合、第一組は光入射側の面が基板面であり、第二組は光入射側の面が基板面と反対側の面であるため、同一の基板を使用すると、基板に予め形成された溝又はピットに関わるパラメータ、即ち、プッシュプル信号、デバイデッドプッシュプル信号、プリピットの信号振幅などが、第一組と第二組とで異なってしまう。そこで、第一組を担持する基板と第二組を担持する基板の溝形状、ピット形状を変えてやれば溝又はピットに関わるパラメータを揃えることが可能になる。
【0040】
次に、本発明に係る光記録媒体(ディスク)の製造工程の一例のフローチャートを図4に示す。各工程は公知であるが、簡単に説明すると以下の通りである。
S1:ガラス円盤を研磨、洗浄する。
S2:シランコートを行う。
S3:ガラス円盤上にフォトレジストをスピンコートし、所定の膜厚を有するレジスト層を形成する。
S4:溶剤をとばすためプリベークを行う。
S5:集光レンズを介してレジスト層にレーザーを照射する(カッティング)。
S6:この露光済みガラス円盤を現像処理する。
S7:レジストをTg以上に加熱し溝形状を整形する(第一ベーク)。
S8:パターンの固化のためベークを行う(第二ベーク)。
S9:蒸着、メッキを行う。
S10:ガラス円盤の凹凸面に金属膜を形成し、該金属膜を剥離することによりスタンパを作成する。
S11:スタンパを用いて射出成形を行い、所定の膜厚を有するレプリカを形成する。
S12:必要に応じて透明基板の片面にスピンコート法によりハードコート層を形成する。
S13:透明基板のもう一方の片面にスパッタ法により第一の層を形成する。
S14:第一の層の上にスピンコート法により光吸収層を形成する。
S15:光吸収層の上にスパッタ法により第二の層を形成する。
S16:必要に応じて保護層などの他の層を積層し、ディスク単板とする。
(単板のままで使用する場合)
S17:必要に応じて保護層などの他の層を積層して得られる単板ディスクを2枚貼り合わせて両面ディスクとする。
S18:ディスクをカートリッジに収納する。
S19:特性の評価を行う。
このフローチャートにおいて、S7とS8の工程は同時に行うこともできる。また、S7工程の溝形状の整形は、加熱温度90〜180℃、時間5〜90分の範囲から任意に選択できる。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。特に実施例では、ディスク状光記録媒体を対象としているが、本発明は、例えばカード状、スティック状、テープ状など、他の形態の光記録媒体にも応用できることは勿論である。
これらの実施例から、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の有機材料からなる光記録媒体、更には高変調度が確保できる光記録媒体の実現に非常に有効であることが分る。
【0042】
実施例1
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、次に示す材料を用いて膜厚100nmの第一の層、膜厚80nmの第二の層をスパッタ法により成膜した。
・第一の層(カッコ内の数値は、熱伝導率W/m・k at300k)
SiO(1.38)、Al(46)、Te(3.96)、Ge
(59.9)、MgO(60)の何れか一つ
・第二の層(カッコ内の数値は、熱伝導率W/m・k at300k)
Ag(427)、Au(315)、Al(237)の何れか一つ
上記第一の層と第二の層の熱伝導率の比は、何れの組み合わせについても3〜310倍の範囲内にあり、第二の層の方が熱伝導率が高い。
なお、第二の層を形成する前に、第一の層の上に、下記〔化〕で示される基本骨格を有し、中心金属MがVO、Zn、Pd、Coの何れかであり、4個のRがC−(CFC−O−である4種のフタロシアニン化合物の等量混合溶液をスピンコート法により成膜し(平均膜厚100nm)光吸収層を形成した。
次に、第二の層の上に大日本インキ化学工業社製のSD1700(熱伝導率1.0以下)を膜厚5μmで積層し保護層とした。
【化4】
Figure 0004093926
【0043】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で記録を行なった。第一の層にTeを用い、第二の層にAgを用いた場合の結果を図3に示す。
Figure 0004093926
この光記録媒体では、光吸収層に10個以上のφ=2μmのマイクロポア、4個のφ=5μmのマイクロポア、1個のφ=10μmのマイクロポアが存在し、この影響により、225μmの範囲で、平均膜厚より平均膜厚の2%以上薄い部分があったが、プレヤーでエラー訂正され良好に再生することができた。
また、マイクロポアが存在しない部分でも島状に平均膜厚より平均膜厚の2%以上薄い部分があることが確認できた。この部分は連続気泡ではなく、独立気泡となっていた。
【0044】
第一の層と第二の層の熱伝導率の比に関して、3〜310倍の範囲外の場合、例えば、第一及び第二の層に同じ材料を用いた場合(相対比=1)は、第一又は第二のどちらかの層に光吸収層の色素が選択的に癒着することがなくなり、特に反射を決定する界面での色素の変質が少なくなり、光学的特性の変化が小さくなった。
また、無機材料含有層を用いた系で310倍を越えた場合、例えば、第一の層をガラス(Pyrex7740、熱伝導率=1.10W/m・k)、第二の層をAgとした場合(相対比=388)では、色素層が変質してAgに優先的に癒着し、光学的特性の変化は得られるが、無機材料含有層である第一の層が堅いために、熱により亀裂、剥離などの問題が起きた。
【0045】
フタロシアニンからなる光吸収層の膜厚は、10〜100nmの範囲で任意に選定できる。10nmより薄いと光吸収量が少なくなり、良好な記録が行われなかった。また、100nm以上では吸収率が高くなって反射率が不足し、更に、体積が大きくなり過ぎ、記録ピットを形成することができなかった。
上記の光学的特性は、フタロシアニンのB帯の分子吸光係数εを用いて、その強度をlog10εで表した場合、3.5以上の値が必要であった。3.5より小さい場合は、膜厚を厚くしても吸収が不純分であり、良好な記録を行うことができなかった。
また、光吸収層に隣接する第一、第二の層の熱伝導率は、Geの59.9(W/m・k at300k)以下である必要がある。熱伝導率が60.0(W/m・k at300k)のMgOを用いた場合、熱伝導率が高いために良好な記録ができなかった。
また、第一の層に用いたTeは、保存性を向上するために酸化又は窒素化すると良い。その方法はTeを酸素又は窒素存在下でスパッタするか、Te成膜後、大気中で3時間程度放置することにより達成できる。
酸素又は窒素存在下でスパッタする場合は、その含有量はアルゴン量100に対して5〜30%の範囲が好適であった。
【0046】
実施例2
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、次に示す材料を用いて膜厚50nmの第一の層、膜厚90nmの第二の層をスパッタ法により成膜した。
・第一の層:Bi15Te85、SiC、Ag60Sb40、Ag60Cu40
Ge15Te85、Ge15Sb85、Au70Bi30の何れか一つ
・第二の層:Ag
なお、第二の層を形成する前に、第一の層の上に実施例1と同じ〔化〕で示される色素4種の混合物からなる有機材料層をスピンコート法によって成膜し(平均膜厚100nm)、光吸収層を形成した。
その他の層は実施例1と同様にして成膜した。
以上の様にして作製した追記型光記録媒体に対して、実施例1と同様の記録を行ったところ、明瞭な信号が得られた。
【0047】
参考例3
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、第一の層として膜厚15nmのTeをスパッタ法で成膜し、その上に下記〔化5〕のシアニン色素と下記〔化6〕のメロシアニン色素の混合物からなる有機材料層をスピンコート法によって成膜し(平均膜厚100nm)、光吸収層を形成した。
この光吸収層上に、スパッタ法によりAgからなる膜厚80nmの第二の層を積層した。
更に、この第二の層上に大日本インキ化学工業社製のSD1700(熱伝導率1.0以下)を膜厚5μmで積層し保護層とした。
以上の様にして作製した追記型光記録媒体に対して、実施例1と同様の記録を行ったところ、短マーク、長マークとも、変調度が充分大きく非常に明瞭な信号が得られた。
【化5】
Figure 0004093926
【化6】
Figure 0004093926
【0048】
参考例4
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、第一の層として酸素を含有した膜厚15nmのTeをスパッタ法で成膜し、その上にバナジル5,14,23,32−テトラフェニル−2,3−ナフタロシアニンをスピンコート法によって成膜し(平均膜厚100nm)、光吸収層を形成した。
この光吸収層上に、スパッタ法によりAgを材料とする膜厚80nmの第二の層を積層した。
更に、この第二の層上に大日本インキ化学工業社製のSD1700(熱伝導率1.0以下)を膜厚5μmで積層し保護層とした。
以上の様にして作製した追記型光記録媒体に対して、実施例1と同様の記録を行ったところ、短マーク、長マークとも、変調度が充分大きく非常に明瞭な信号が得られた。
【0049】
参考例5
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、第一の層として窒素を含有した膜厚10nmのTeをスパッタ法で成膜し、その上に下記一般式〔化7〕で示されるアゾ染料からなる有機材料層をスピンコート法によって成膜し(平均膜厚100nm)、光吸収層を形成した。
この光吸収層上に、スパッタ法によりAgを材料とする膜厚90nmの第二の層を積層した。
更に、この第二の層上に大日本インキ化学工業社製のSD1700(熱伝導率1.0以下)を膜厚5μmで積層し保護層とした。
以上の様にして作製した追記型光記録媒体に対して、実施例1と同様の記録を行ったところ、短マーク、長マークとも、変調度が充分大きく非常に明瞭な信号が得られた。
【化7】
Figure 0004093926
(式中、Rはフェニル基、R〜Rは水素原子を表す。)
【0050】
参考例6
光吸収層として、次に示す色素の何れかを用いた点以外は、実施例1と同様にして追記型光記録媒体を作製し、実施例1と同様の記録を行ったところ、何れも良好な信号が得られた。
1,4−ビス(5′−フェニルオキサゾール−2′−イル)ベンゼン、1,4−ビス(4′−メチル−5′−フェノキサゾール−2′−イル)ベンゼン、4,4′−ビス(2′−スルホスチリル)ビフェニル、2,5−ビス(5′−メチルベンゾオキサゾール−2′−イル)チオフェン、NK1342、NK1977、NK1886、NK1819、NK1331、NK1837、NK863、NK3212、NK88、NK3989、NK1204、NK723、NK3984(何れも日本感光色素社製)、
【化8】
Figure 0004093926
【化9】
Figure 0004093926
【化10】
Figure 0004093926
【化11】
Figure 0004093926
【化12】
Figure 0004093926
【化13】
Figure 0004093926
【化14】
Figure 0004093926
【0051】
実施例7〜16
射出成形により、表面に下記のようなトラックピッチ、グルーブ幅、グルーブ深さのスパイラル状のプレグルーブが形成された、直径120mm、厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上に、スパッタ法により膜厚60nmのAgからなる第一の層を設け、その上に下記〔化15〕のフタロシアニン色素をTHF(テトラヒドロフラン)2.6g、エチルシクロヘキサン6.2g、IPA(イソプロピルアルコール)2.4g、1−メトキシ−2−プロパノール4.6gの混合溶媒に溶解した塗布液をスピンコート法により塗布し、光吸収層(プレグルーブ内の厚さ約35〜45nm)を形成した。
トラックピッチ グルーブ幅 グルーブの深さ
・実施例7 0.32μm 0.16μm 0.06μm
・実施例8 0.37μm 0.18μm 0.06μm
・実施例9 0.40μm 0.20μm 0.06μm
・実施例10 0.43μm 0.21μm 0.06μm
・実施例11 0.46μm 0.23μm 0.06μm
・実施例12 0.32μm 0.16μm 0.08μm
・実施例13 0.37μm 0.18μm 0.08μm
・実施例14 0.40μm 0.20μm 0.08μm
・実施例15 0.43μm 0.21μm 0.08μm
・実施例16 0.47μm 0.23μm 0.08μm
【化15】
Figure 0004093926
〔式中、MはVOであり、4個のRはC−(CFC−O−である。〕
次いで、その上に第二の層として厚さ約40nmのZnS−SiO層をスパッタにより形成した。
なお、光吸収層の波長λ=405nmにおける吸光度は0.2とした。
更にその上に、UV硬化接着剤(大日本インキ化学工業社製、商品名:SD−347)をスピンコート法により200rpmで塗布し、300rpmから4000rpmまで変化させながら全面に接着剤を広げた後、0.07mm厚のポリカーボネート樹脂シート(帝人社製、商品名:ピュアエース)からなるカバー層を重ね、紫外線を照射して接着剤を硬化させカバー層を貼り合わせて光記録媒体を作製した。
【0052】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業社製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.85)を用いて、下記の条件で記録を行なったところ、短マーク、長マーク共に、変調度が充分大きく、非常に明瞭な信号が得られた。
<記録条件>
記録線速度 :6.0(m/s)
記録ストラテジ:Basic strategy(基本ストラテジ)
Ttop−Tmp=1.40−0.75(T)
記録パワー :4.5〜8.0(mW)
ストラテジ :矩形波
上記〔化15〕の色素の光吸収スペクトルを図5に示す。図から明らかなように、波長λ=350nm付近に副吸収の極大を有する。
比較のため、副吸収の極大が波長λ=320nm付近に存在するフタロシアニン色素の光吸収スペクトルを図6に示す。
なお、図5、図6の吸光度は、石英基板上に材料をスピンコート又はスパッタし、そのサンプルを島津製作所社製UV−2500(PC)SGLPを用いて測定した値である。
副吸収の極大が330nmより長波長にある色素を用いた実施例7の場合、ジッタは8.8%と良好であった。これに対して、副吸収の極大が330nmより短波長にある図6のフタロシアニン色素を用いて実施例7と同様にして作製した光記録媒体の場合は、記録感度が悪く、短いピットを形成することができなかった。
従って、波長405nmで記録を行う場合、色素の吸収は330nm以上の長波長側に存在する必要がある。なお、実施例8〜16の光記録媒体は何れも実施例7と近似したアイパターンとジッタを示した。
また、波長405nmで記録を行う場合、副吸収の極大が400nmより長波長側にある場合は、吸収が大きくなり過ぎるために良好な記録を行うことができなかった。
以上の結果から、光吸収層は、波長λが330〜400nmの範囲に吸収極大を有することが好適である。
【0053】
一方、記録再生消去に用いる波長をλ1として、λ1±10nmの範囲の測定光を基板側より入射して得られる光吸収層の反射率が7%以上あれば、干渉効果により高いコントラストが得られる。
同様に、記録再生消去に用いる波長をλ1として、λ1±10nmの範囲の測定光を光吸収層側より入射して得られる光吸収層の反射率が8%以上であることが好ましい。
なお、上記記録再生消去に用いる波長λ1は、現状では390〜420nmの範囲が一般的であり、更に詳しくは、780nmのSHG(非線形効果)を利用した場合は390〜400nm、ブルーレーザを使用した場合は400〜410nm、830nmのSHGを使用した場合は410〜420nmである。
ブルーレーザを使用した場合は、波長λ1=395〜415nmの範囲の測定光を基板側より入射して得られる光吸収層の反射率が7%以上であることが必要であり、また、波長λ1=395〜415nmの範囲の測定光を光吸収層側より入射して得られる光吸収層の反射率が8%以上であることが好ましい。
更に、光吸収層の膜厚を、記録再生に用いる波長において反射極大を示す膜厚より厚くすることにより、記録前後のコントラスト比を大きく取ることができる。
図7〜図8に実施例7の記録再生消去に用いる波長での反射を有する場合のスペクトルを示す。図中のRgは基板側からの測定光を照射した場合、Rlは膜面側から光を照射した場合である。
図7、図8の反射率は、石英基板上に材料をスピンコート又はスパッタし、そのサンプルを島津製作所社製UV−2500(PC)SGLPを用いて測定した絶対反射率である。
【0054】
実施例17
図1及び図2に示すプリフォーマットパターンを有するポリカーボネート基板上に、ZnS・SiOからなる膜厚150nmの第一の層、In・ZnOからなる膜厚50nmの第二の層をスパッタ法により成膜した。
なお、第二の層を形成する前に、第一の層の上に、バナジル5,14,23,32−テトラフェニル−ナフタロシアニンをスピンコート法によって成膜し(平均膜厚100nm)、光吸収層を形成した。
その他の層は実施例1と同様にして成膜した。
以上の様にして作製した追記型光記録媒体に対して、実施例1と同様の記録を行ったところ、明瞭な信号が得られた。
また、本実施例の媒体は、記録後、200℃で30分以上ベークすることにより記録を消去することができた。
【0055】
【発明の効果】
本発明1〜によれば、青色レーザ波長領域、特に405nm近傍の波長領域であっても記録可能な、有機材料からなる光記録媒体、また、高密度化が図れ、変調度が大きく、更には、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少なく、保存性にも優れた光記録媒体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光記録媒体の層構成の一例を示す要部拡大断面図。
【図2】 本発明の光記録媒体(光ディスク)の構成の一例を示す斜視図。
【図3】 実施例1の光記録媒体に対して記録を行なった結果を示す図。
【図4】 本発明に係る光ディスク製造のフローチャートを示す図。
【図5】 〔化15〕の色素の光吸収スペクトルを示す図。
【図6】 副吸収の極大が波長λ=320nm付近に存在するフタロシアニン色素の光吸収スペクトルを示す図。
【図7】 実施例7の記録再生消去に用いる波長での反射を有する場合のスペクトルを示す図(基板側からの測定光を照射した場合)。
【図8】 実施例7の記録再生消去に用いる波長での反射を有する場合のスペクトルを示す図(膜面側から光を照射した場合)。
【符号の説明】
1 透明基板
1a センタ孔
2 プリフォーマットパターン
2a 案内溝
2b プリピット
2c ランド部
3 第一の層
4 光吸収層
5 第二の層
10 保護層

Claims (2)

  1. プレグルーブが形成された基板上に、第一の層、光吸収層、第二の層がこの順に設けられ、第一の層及び第二の層が金属材料及び/又は無機材料を含有し、光吸収層が、一般式(I)で表されるフタロシアニン系色素を含み、405nmの波長域で記録可能な光記録媒体において、プレグルーブのトラックピッチが0.32μmであり、プレグルーブ内における光吸収層の膜厚が35〜45nmであることを特徴とする光記録媒体。
    Figure 0004093926
    (式中のMは、Cu、VO、Ni、H、Zn、Pd、Cd、Co、Feの何れかであり、4個のRは何れもC −(CF C−O−である。)
  2. 第一の層は、銀、銅若しくはアルミニウムである金属材料又はこれらを主成分とする合金材料で構成され、第二の層は、Al、MgO、BeO、ZrO、ZnO、UO、ThO、SiO、SiN及びSiの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
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