JP4092674B2 - セラミック中子を有するワックス模型の成型方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ロストワックス精密鋳造法により製造される内部に空間部を有する鋳造製品、特に、内部に空気冷却孔を有するガスタービン用動翼、静翼等のワックス模型の成型方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ガスタービン用動翼、静翼等は、ロストワックス精密鋳造法により製造されている。その翼は、高温の燃焼ガスに暴露されるために、翼内部に冷却用孔が設けられ強制空冷される構造となっている。そして、その冷却用孔は非常に複雑で、その隙間も数mmと薄く設計されている。
【0003】
ロストワックス精密鋳造法により前記冷却用孔を有するガスタービン用動翼、静翼を製造する場合、製造しようとする動翼、静翼形状ワックス内部に冷却用孔形状のセラミック中子を埋め込んだ模型を成型する必要がある。具体的には製造しようとする動翼、静翼形状のキャビティーを持った金型内部に巾木で保持されたセラミック中子を置き、その後に溶融ワックスを射出することによって得ることが出来る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述した方法により得られるガスタービン用動翼、静翼形状ワックス模型は、内部のセラミック中子に割れが生じる場合があり、成型歩留まりが低いといった問題点がある。このような中子の割れを防止する方法として、例えば、通常シリカで製作される中子にジルコンを配合させたり、有機樹脂を含浸させたりすることで、セラミック中子の強度を上げる手法が提案されている。
【0005】
しかし、前記成型方法ではその強度が十分でなく、中子の折損を抑制するに十分ではない。また、金属鋳造を終えた後のセラミック中子は最終的にアルカリ溶液で製品より溶融除去されるため、アルカリで溶融するシリカ以外が含まれると中子除去に長時間を要するといった問題点もある。
そこで、本発明の目的は、低コストで、中子割れの発生しないガスタービン用動翼、静翼等のワックス模型の成型を可能にする方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、セラミック中子の割れについて詳細に分析したところ、中子の割れは、金型内に溶融ワックスが射出される過程でワックス圧力にセラミック中子が耐え切れずに折損する結果として生じることを突きとめた。つまり、ガスタービン用動翼や静翼を例に取れば、その中子割れは図3及び図4に示す様な状況で生じ、その原因は薄い冷却孔を作るためにセラミック中子が薄いことに加え、巾木以外に金型内でセラミック中子を保持する部分が無く、溶融ワックスの射出時にその圧力に耐え切れず折損するというものである。
【0007】
そこで、本発明者は、上述した中子割れの発生要因に焦点を当て、溶融ワックスの射出によるワックス圧力に耐え得るセラミック中子の強度を得る方法を見いだした。すなわち、本発明は、金型内部に溶融ワックスを射出する前に、予めセラミック中子表面と金型内面の間に固形ワックスを設けるワックス模型の成型方法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の特徴は、単に中子自体の強度を上げる従来の方法に比して、その中子割れが溶融ワックス射出時に起こるところに注目した結果として、中子にかかる圧力に応じ補強部材を設けることで、中子の折損を低コストかつ効率良く抑えられるところにある。
【0009】
中子割れは、図3及び図4に示す様な状況で生じ、その原因の一つが溶融ワックスの射出時にその圧力に耐え切れず折損するというものであることは、前述の通りである。つまり、溶融ワックスが金型内に完全に充填された状態であれば、セラミック中子に折損をきたす力は働かないが、充填途中では金型キャビティーが複雑形状であったり、射出口の位置によりどうしてもセラミック中子の片面にのみ圧力が働き、折損するのである。
【0010】
この場合、セラミック中子の折損防止策として、前述の折損原因を排除することが、すなわち、セラミック中子の全面にかつ均等に溶融ワックスの圧力が掛かるようにすることが考えられる。しかし、そのような条件とするためにはワックス射出口を複数個設け、さらには、それぞれの流量を制御するといった非常に複雑な金型、射出機が必要となり、その実施が困難となる。
【0011】
そこで、本発明者は、セラミック中子の折損を防ぐために種々実験検討の結果、セラミック中子に割れを生じさせない成型方法を見いだし、本発明に至ったのである。具体的には、金型内部に溶融ワックスを射出する前に、予めセラミック中子表面と金型内面の間に固形ワックスを設けるワックス模型の成型方法であり、以下、その詳細を述べる。
【0012】
まず、本発明の成形方法を実施する上での流れとして、その一例を述べる。
最初に、ガスタービン用動翼、静翼といった目的の製品図から、金型とセラミック中子の形状およびワックス射出口の位置が決まる。次に、これらの決定条件によるワックス模型にて、その表面肌、収縮等の状況を見ながら溶融ワックス温度、射出圧力、射出速度等を決定する。
【0013】
すべての条件が決まれば、次にセラミック中子外面と金型内面間に充填される溶融ワックスの流れを見て、セラミック中子のどの面に圧力が作用するかを調査する。具体的には射出を中途で止め、その充填状況を見ても良いし、溶融ワックスに異種のワックスを混入し、射出された模型に縞模様を残して判断しても良い。図5は、ガスタービン用静翼によるその調査結果の一例を示すものであり、この場合、射出された溶融ワックスがセラミック中子のそれぞれの面に対してどちらかが先行した形となっている。つまり、セラミック中子の先行した面から遅れた面側に圧力が作用する(図5中のB部)。
【0014】
このようにして得た溶融ワックスの流れから、金型キャビティー内に置かれたセラミック中子のどの方向に圧力が作用するかを判断することができ、溶融ワックスからの圧力に対する中子の補強箇所が決定されるのである。次に、圧力の作用する反対面のセラミック中子表面と金型内面との間隔(つまり、図5中の寸法A)を求める。そして、この寸法の厚さを持つ固形ワックスを用意し、例えば、圧力の作用する反対面のセラミック中子表面に張り付ける。こうすることにより、溶融ワックスの射出中にセラミック中子が圧力を受けても、金型内面が固形ワックスを介し該セラミック中子を保持し、かつ固形ワックス自体も十分な強度を有するので、中子の折損を防止することができるのである。
【0015】
そして、本発明に使用される固形ワックスは、結果としてワックス模型を構成するワックスの一部となるので、その後のロストワックス工程に支障をきたすこともない。なお、固形ワックスには、容易に入手できる接着剤付きシートワックスが良いが、特に限定するものではない。
また、固形ワックスの寸法は、大き過ぎるとテーパー状に連続変化するキャビティー寸法に対応が出来ないために、金型内面とセラミック中子表面との寸法に合わず、金型閉時に中子が折損したりする。また、小さ過ぎると固形ワックスと言えど強度的に不十分となり、本発明の効果が減少する。望ましくは、5.0mm以下の肉厚部、とりわけ、ガスタービン用動翼、静翼といったワックス模型の翼厚部に対し、2mm角〜8mm角の面積を有する大きさが良い。
【0016】
また、複数個の固形ワックスを要する場合、その個数、間隔は成型する模型形状とセラミック中子の形状に応じて適宜決定すればよい。この場合、個数は多いほど、間隔は狭いほど中子割れ防止に対する効果は高いが、固形ワックスを配する工数が掛かるので必要最小限とすべきである。
【0017】
【実施例】
以下、実施例にもとづいて具体的に説明する。
本実施例では、寸法として翼長200mm、コード長230mmで内外シュラウドのあるガスタービン用静翼のワックス模型を成形する。まず、セラミック中子は内外シュラウド部に巾木があり、巾木を含む翼長方向寸法は250mmである。翼後縁部にも巾木を有し、巾木を含むコード長は252mmである。金型内面とセラミック中子表面により形成される翼厚は最大3.5mm、最小1.4mmである。また、セラミック中子の肉厚は最大30mm、最小1.2mmである。セラミック中子後縁部には鋳物でピンフィン、仕切り壁を形成する孔が空いている。
【0018】
まず、セラミック中子に固形ワックスを張り付けずに金型内にセットし、射出条件を決定した。その後、射出すべき溶融ワックス量の1/5を射出し、順次1/5量増加し計5回の射出により溶融ワックスの流れを把握した。この結果、溶融ワックスの射出時に圧力の作用する面は図1のB部であることが把握出来た。この結果に応じ、固形ワックスを圧力の作用する反対面である図1のC部に張り付けた。なお、使用した固形ワックスは容易に入手可能な接着剤付きのシートワックスである。
【0019】
用いた固形ワックスの寸法は2種類であり、その高さ寸法は予め図面から求めた翼厚に相当する1.8mmおよび2.3mm、そして、断面寸法は2.5×2.5mmである。個数はそれぞれ11個で、間隔は翼長方向に等分とした。図2に固形ワックスを張り付けたセラミック中子を示す。
そして、固形ワックスを張り付けたセラミック中子を金型内にセットし、ワックス温度74℃、射出圧力8Kgf/平方cm、射出速度230立方cm/秒で金型内に溶融ワックスの射出を行なった。
【0020】
成型されたワックス模型のX線透過検査の結果、セラミック中子の割れは皆無であった。また、同模型を150℃の電気加熱炉内に入れ、ワックスを溶融除去し、セラミック中子を取り出し、カラーチェックにより詳細に割れを調査した結果、中子割れは認められず良好であった。
なお、本実施例ではガスタービン用静翼を例に用いたが、静翼に限定するものではなく、セラミック中子を用いる全てのロストワックス精密鋳造法に適用が可能である。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミック中子の折損無く、ワックス模型を成型することが可能である。これにより、ロストワックス精密鋳造法によるガスタービン用動翼や静翼等、高価なセラミック中子を有するワックス模型の成型にて中子折損等の発生を抑制でき、しかも、低コストかつ高歩留りであることから、工業的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】金型内部に溶融ワックスを射出する前において、その本発明の一例を示す図である。
【図2】溶融ワックスを射出する前の金型内部にセットされる中子において、その本発明の一例を示す図である。
【図3】ガスタービン用動翼のワックス模型の成型に係り、その中子に発生する割れの一例を示す図である。
【図4】ガスタービン用静翼のワックス模型の成型に係り、その中子に発生する割れの一例を示す図である。
【図5】金型内部に射出されたワックスの充填状況の一例を示す図である。
Claims (1)
- 金型内部に溶融ワックスを射出する前に、予めセラミック中子表面と金型内面の間に固形ワックスを設けることを特徴とするセラミック中子を有するワックス模型の成型方法。
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