以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
一般家庭で使用される空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1及び図2は、本発明にかかる空気調和機の室内機を示している。
室内機は、本体2と、本体2の前面開口部2aを開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面開口部2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面開口部2aを開放する。なお、図1は前面パネル4が前面開口部2aを閉じた状態を示しており、図2は前面パネル4が前面開口部2aを開放した状態を示している。
図3に示されるように、本体2の内部には、熱交換器6と、前面開口部2a及び上面開口部2bから取り入れられた室内空気を熱交換器6で熱交換して室内に吹き出すためのファン8と、熱交換した空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下羽根12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右羽根(図示せず)とを備えており、前面開口部2aの下方の本体2には、前面開口部2aの吹出口10側で開閉する中羽根14が中羽根駆動機構16を介して揺動自在に取り付けられている。さらに、前面パネル4上部は、その両端部に設けられた2本のアーム18,20を介して本体2上部に連結されており、アーム18に連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面開口部2aの閉塞位置)から前方斜め上方に向かって移動する。また、上下羽根12は、その両端部に設けられた2本のアーム22,24を介して本体2下部に連結されているが、その駆動方法については後述する。
図1(b)及び(c)に示されるように、前面パネル4の上部には、複数(例えば、五つ)のセンサユニット26,28,30,32,34が前面パネル4の主平面から突出した状態で人体検知装置として取り付けられており、これらのセンサユニット26,28,30,32,34は、図4に示されるように、センサホルダ36に保持されている。なお、人体検知装置は、図1(a)に示されるようにカバー5で覆われており、図1(b)はカバー5を取り外した状態を示している。
各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の上部に設けたのは、図5(a)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34の視野範囲(後述する人体位置判別領域)を拡大して遠方視野を最大限確保するためである。また、図5(b)に示されるように、運転開始時に前面パネル4を停止位置より前方に移動させることでより遠くまで視野範囲を確保することができるとともに、図5(c)に示されるように、前面パネル4を停止位置より斜め上方に移動させることで視野範囲をさらに拡大することができる。なお、各センサユニット26,28,30,32,34の位置は前面パネル4の上部に限定されるわけではなく、また、前面パネルが可動でない場合でも、人体検知装置を前面パネルの上部あるいは本体上部に取り付けることにより下部に取り付けた場合に比べ視野範囲を拡大することができる。
また、図5(d)に示されるように、各センサユニット26,28,30,32,34を前面パネル4の主平面から突出させて設けることで、各センサユニット26,28,30,32,34をより前方に配置することができ、図5(b)〜(d)に示されるように、室内機の構成部(例えば、上下羽根12や、前面開口部2aを開放状態の前面パネル4など)による死角発生を防止して視野範囲を拡大させることができる。
本実施の形態では、各センサユニット26,28,30,32,34は前面パネル4に設けられているので、前面パネル4が前面開口部2aを開放状態としたときには前面パネル4に付随して移動することとなり、更に前方に突出することとなる。
また、センサユニット26は、回路基板26aと、回路基板26aに取り付けられたレンズ26bと、レンズ26bの内部に実装された人体検知センサ(図示せず)とで構成されており、この構成は、他のセンサユニット28,30,32,34についても同様である。さらに、人体検知センサは、例えば人体から放射される赤外線を検知することにより人の在否を検知する赤外線センサにより構成されており、赤外線センサが検知する赤外線量の変化に応じて出力されるパルス信号に基づいて回路基板26aにより人の在否が判定される。すなわち、回路基板26aは人の在否判定を行う在否判定手段として作用する。以下、互いに対をなすセンサとレンズをセンサ・レンズ対という。
ここで、前後左右方向の検知領域を得るために、図6の側面図に示されるように任意の球Zの表面上にセンサユニット26,28,30,32,34を配置することが考えられる。この場合、各センサユニット26,28,30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸は球Zの中心Pで交差し、ねじれの位置にない。室内機から見れば、球Zの表面上にセンサユニット26,28,30,32,34が前後方向に飛び出した配置となるため、人体検知装置の小型化は困難である。
また、上記のようなセンサユニットの飛び出しを抑制するため、図7のように任意の球Zを任意の平面Xで切り取り、平面Xと各センサユニット26,28,30,32,34の光軸(ねじれの位置でない)との交点に各センサユニット26,28,30,32,34を配置することも考えられる。この場合、センサユニット26,28,30,32,34の配置は図8の正面視に示されるように前後方向への飛び出しは少なくなるが、センサユニット26と30のように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットの配置が縦横方向に分散してしまい、人体検知装置の小型化に限界がある。
そこで、本実施の形態においては、センサユニット26,28のセンサ・レンズ対の光軸は同一平面上にあり、センサユニット30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸は別の同一平面上にあるものの、センサユニット26,28のセンサ・レンズ対の光軸と、センサユニット30,32,34のセンサ・レンズ対の光軸とは同一平面上にはなく、ねじれの位置となるようにそれぞれの回路基板26a,28a,30a,32a,34aを所定の角度に傾斜させてセンサホルダ36に取り付けている。
このように検知領域と室内機との距離の異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸をねじれの位置とすることで、図1および図2に示されるようにセンサユニット26,28,30,32,34は横方向に略直線状に配置でき、人体検知装置の小型化が可能となる。
なお、室内機からセンサユニットの検知領域までの距離の異なるセンサユニットを横方向に略直線状に配置した例について説明したが、左右方向の異なるセンサユニットを室内機の高さ方向に略直線状に配置する場合も同様のことが言える。
以上のように本実施の形態によれば、室内機に設けられた複数のセンサユニット26,28,30,32,34のうち、該センサユニットの視野エリアと空気調和機との距離が異なるセンサユニットのセンサ・レンズ対の光軸が互いにねじれの位置となるようにしたので、センサユニット26,28,30,32,34が室内機の前面パネル4から飛び出さないように設置できるようになり、人体検知装置の小型化が可能となる。
また、センサユニット26,28,30,32,34を略直線状に配置することで、センサユニット26,28,30,32,34が縦横方向に分散することがなく、センサユニット26,28,30,32,34の小型化が可能となる。
また、このようにセンサ・レンズ対の光軸がねじれの位置にある複数のセンサユニット26,28,30,32,34を人体検知装置に設け、各センサ・レンズ対の光軸が視野方向に向くように配設したので、人体検知装置から見て距離方向に複数の検知領域と、左右方向に複数の検知領域を形成することができるとともに、集光効率が向上することでレンズの小型化が可能になる。
図9は、センサユニット26,28,30,32,34で検知される人体位置判別領域を示しており、センサユニット26,28,30,32,34は、それぞれ次の領域に人がいるかどうかを検知することができる。
センサユニット26:領域A+C+D
センサユニット28:領域B+E+F
センサユニット30:領域C+G
センサユニット32:領域D+E+H
センサユニット34:領域F+I
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、センサユニット26,28で検知できる領域と、センサユニット30,32,34で検知できる領域が一部重なっており、領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサユニットを使用して各領域A〜Iにおける人の在否を検知するようにしている。
また、少なくとも三つの人体検知センサを室内機の上部に取り付けることで、室内における人体の位置を室内機に対して遠近方向と左右方向、すなわち室内フロアのどこにいるのかを二次元的に把握することができる。図10は三つの人体検知センサを設けた場合の検知される領域を示しており、図10の例では、室内機の近傍の領域における人の在否が一つの人体検知センサで検知され、室内機から遠い領域における人の在否が二つの人体検知センサで検知される。
図9に戻って本実施の形態をさらに説明するが、以下の説明ではセンサユニット26,28,30,32,34を第1のセンサ26、第2のセンサ28、第3のセンサ30、第4のセンサ32、第5のセンサ34という。また、領域C,D,E,Fは二つのセンサで検知されるので、重なり領域というのに対し、重なり領域以外の領域(領域A,B,G,H,I)は一つのセンサで検知されるので、通常領域という。また、重なり領域は、左の重なり領域C,Dと右の重なり領域E,Fに分けられる。
図11は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iの各々に後述する領域特性を設定するためのフローチャートで、図12は、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人がいるか否かを判定するフローチャートであり、これらのフローチャートを参照しながら人の位置判定方法について以下説明する。
ステップS1において、所定の周期T1(例えば、5秒)で左の重なり領域における人の在否がまず判定され、ステップS2において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表1は、左の重なり領域の判定方法を示しており、表1に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第1のセンサ26及び第3のセンサ30の出力をクリアする。ここで、1は反応有り、0は反応無し、クリアは1→0にすることと定義する。
ステップS3では、上述した所定の周期T1で右の重なり領域における人の在否がさらに判定され、ステップS4において、所定の条件で所定のセンサ出力をクリアする。
表2は、右の重なり領域の判定方法を示しており、表2に示される三つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第2のセンサ28及び第5のセンサ34の出力をクリアする。
また、表1及び表2に示される六つの反応結果のいずれかに該当する場合は、第4のセンサ32の出力もクリアし、ステップS5に移行する。ステップS5においては、上述した所定の周期T1で通常領域における人の在否が表3に基づいて判定され、ステップS6において、全てのセンサ出力をクリアする。
さらに、図13を参照して第1乃至第3のセンサ26,28,30からの出力のみを使用して領域A,B,Cにおける人の在否を判定する場合について説明する。
図13に示されるように、時間t1の直前の周期T1において第1乃至第3のセンサ26,28,30がいずれもOFF(パルス無し)の場合、時間t1において領域A,B,Cに人はいないと判定する(A=0,B=0,C=0)。次に、時間t1から周期T1後の時間t2までの間に第1のセンサ26のみON信号を出力し(パルス有り)、第2及び第3のセンサ28,30がOFFの場合、時間t2において領域Aに人がいて、領域B,Cには人がいないと判定する(A=1,B=0,C=0)。さらに、時間t2から周期T1後の時間t3までの間に第1及び第3のセンサ26,30がON信号を出力し、第2のセンサ28がOFFの場合、時間t3において領域Cに人がいて、領域A、Bには人がいないと判定する(A=0,B=0,C=1)。以下、同様に周期T1毎に各領域A,B,Cにおける人の在否が判定される。
実際には、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して、領域A〜Iのどの領域に人が存在するかどうかの判定が行われるが、この判定結果に基づいて各領域A〜Iを、人が良くいる第1の領域(良くいる場所)、人のいる時間が短い第2の領域(人が単に通過する領域、滞在時間の短い領域等の通過領域)、人のいる時間が非常に短い第3の領域(壁、窓等人が殆ど行かない非生活領域)とに判別する。以下、第1の領域、第2の領域、第3の領域をそれぞれ、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIといい、生活区分I、生活区分II、生活区分IIIはそれぞれ、領域特性Iの領域、領域特性IIの領域、領域特性IIIの領域ということもできる。また、生活区分I(領域特性I)、生活区分II(領域特性II)を併せて生活領域(人が生活する領域)とし、これに対し、生活区分III(領域特性III)を非生活領域(人が生活しない領域)とし、人の在否の頻度により生活の領域を大きく分類してもよい。
この判別は、図11のフローチャートにおけるステップS7以降で行われ、この判別方法について図14及び図15を参照しながら説明する。
図14は、一つの和室とLD(居間兼食事室)と台所とからなる1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図14における楕円で示される領域は被験者が申告した良くいる場所を示している。
上述したように、周期T1毎に各領域A〜Iにおける人の在否が判定されるが、周期T1の反応結果(判定)として1(反応有り)あるいは0(反応無し)を出力し、これを複数回繰り返した後、ステップS7において、所定の空調機の累積運転時間が経過したかどうかを判定する。ステップS7において所定時間が経過していないと判定されると、ステップS1に戻る一方、所定時間が経過したと判定されると、各領域A〜Iにおける当該所定時間に累積した反応結果を二つの閾値と比較することにより各領域A〜Iをそれぞれ生活区分I〜IIIのいずれかに判別する。
長期累積結果を示す図15を参照して、さらに詳述すると、第1の閾値及び第1の閾値より小さい第2の閾値を設定して、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域はステップS9において生活区分Iと判別する。また、ステップS8において、各領域A〜Iの長期累積結果が第1の閾値より少ないと判定されると、ステップS10において、各領域A〜Iの長期累積結果が第2の閾値より多いかどうかを判定し、多いと判定された領域は、ステップS11において生活区分IIと判別する一方、少ないと判定された領域は、ステップS12において生活区分IIIと判別する。
図15の例では、領域E,F,Iが生活区分Iとして判別され、領域B,Hが生活区分IIとして判別され、領域A,C,D,Gが生活区分IIIとして判別される。
また、図16は別の1LDKのLDに本発明にかかる空気調和機の室内機を設置した場合を示しており、図17はこの場合の長期累積結果を元に各領域A〜Iを判別した結果を示している。図16の例では、領域C,E,Gが生活区分Iとして判別され、領域A,B,D,Hが生活区分IIとして判別され、領域F,Iが生活区分IIIとして判別される。
なお、上述した領域特性(生活区分)の判別は所定時間毎に繰り返されるが、判別すべき室内に配置されたソファー、食卓等を移動することがない限り、判別結果が変わることは殆どない。
次に、図12のフローチャートを参照しながら、各領域A〜Iにおける人の在否の最終判定について説明する。
ステップS21〜S26は、上述した図11のフローチャートにおけるステップS1〜S6と同じなので、その説明は省略する。ステップS27において、所定数M(例えば、15回)の周期T1の反応結果が得られたかどうかが判定され、周期T1は所定数Mに達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、周期T1が所定数Mに達したと判定されると、ステップS28において、周期T1×Mにおける反応結果の合計を累積反応期間回数として、1回分の累積反応期間回数を算出する。この累積反応期間回数の算出を複数回繰り返し、ステップS29において、所定回数分(例えば、N=4)の累積反応期間回数の算出結果が得られたかどうかが判定され、所定回数に達していないと判定されると、ステップS21に戻る一方、所定回数に達したと判定されると、ステップS30において、既に判別した領域特性と所定回数分の累積反応期間回数を元に各領域A〜Iにおける人の在否を推定する。
なお、ステップS31において累積反応期間回数の算出回数(N)から1を減算してステップS21に戻ることで、所定回数分の累積反応期間回数の算出が繰り返し行われることになる。
表4は最新の1回分(時間T1×M)の反応結果の履歴を示しており、表4中、例えばΣA0は領域Aにおける1回分の累積反応期間回数を意味している。
ここで、ΣA0の直前の1回分の累積反応期間回数をΣA1、さらにその前の1回分の累積反応期間回数をΣA2・・・とし、領域における過去の数回分の履歴(例えば、ΣA3、ΣA2、ΣA1、ΣA0の4回分)と生活区分と累積反応期間回数から人の在否を推定する。
次に、上述した人の在否判定から時間T1×M後には、同様に過去の4回分の履歴と生活区分と累積反応期間回数から人の在否の推定が行われる。
すなわち、本発明にかかる空気調和機の室内機においては、判別領域A〜Iの数よりも少ない数のセンサを使用して人の在否を推定することから、所定周期毎の推定では人の位置を誤る可能性があるので、重なり領域かどうかに関わらず単独の所定周期では人の位置推定を行うことを避け、所定周期毎の領域判定結果を長期累積した領域特性と、所定周期毎の領域判定結果をN回分累積し、求めた各領域の累積反応期間回数の過去の履歴から人の所在地を推定することで、確率の高い人の位置推定結果を得るようにしている。
表5は、このようにして人の在否を判定し、T1=5秒、M=12回に設定した場合の在推定に要する時間、不在推定に要する時間を示している。
このようにして、本発明にかかる空気調和機の室内機により空調すべき領域を第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により複数の領域A〜Iに区分した後、各領域A〜Iの領域特性(生活区分I〜III)を決定し、さらに各領域A〜Iの領域特性に応じて在推定に要する時間、不在推定に要する時間を変更するようにしている。
すなわち、空調設定を変更した後、風が届くまでには1分程度要することから、短時間(例えば、数秒)で空調設定を変更しても快適性を損なうのみならず、人がすぐいなくなるような場所に対しては、省エネの観点からあまり空調を行わないほうが好ましい。そこで、各領域A〜Iにおける人の在否をまず検知し、特に人がいる領域の空調設定を最適化している。
詳述すると、生活区分IIと判別された領域の在否推定に要する時間を標準として、生活区分Iと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を短く、不在推定に要する時間は長く設定されることになる。逆に、生活区分IIIと判別された領域では、生活区分IIと判別された領域より長い時間間隔で人の存在が推定されるのに対し、その領域から人がいなくなった場合には、生活区分IIと判別された領域より短い時間間隔で人の不存在を推定することにより、在推定に要する時間を長く、不在推定に要する時間は短く設定されることになる。さらに、前述のように長期累積結果によりそれぞれの領域の生活区分は変わり、それに応じて、在推定に要する時間や不在推定に要する時間も可変設定されることになる。
なお、累積反応期間回数に使用される所定数Mを可変設定することも可能で、所定数Mを運転状況あるいはリモコン設定により可変設定する場合につき、以下説明する。
空気調和機の据付時、据付業者は空気調和機が正しく作動するかどうかを確認する必要がある。また、空気調和機を運転し始めた当初は、ユーザはその位置に応じて風向制御が確実に行われるかどうかを知りたいという願望がある。この場合、室内機が取り付けられた室内の生活区分に関係なく空気調和機の作動状況を素早く把握したり、人の位置に応じて風向制御が行われているかどうかを素早く確認する必要があるが、表5のような設定では作動状況の把握や風向制御の確認に時間がかかる。
そこで、空気調和機の初回運転時(電源投入時)には運転開始から所定の時間(例えば、10分間)は所定数Mを小さく設定し、初回(据付後の確認運転)以降の運転時には運転開始から所定の時間(例えば、10分間)は所定数Mを初回運転時より大きく設定し、所定の時間経過後は所定数Mをさらに大きく設定することで、空気調和機の作動確認作業を短縮することができる。
表6は運転状況に応じて所定数MをM=3、M=6あるいはM=12に設定した場合を示しており、Mを可変設定することで履歴更新時間が増減し、各生活区分の在推定及び不在推定に要する時間が表7のように変更される。ただし、T1はT1=5秒に設定している。
次に、所定数Mをリモコンにより設定する場合につき説明する。
リモコンに表示される「メニュー」の「機能選択」に、「風向設定」の項目を設け、この項目に「はやめ」「標準」「おそめ」の項目をさらに設け、ユーザがリモコンを操作して「はやめ」「標準」「おそめ」のいずれかを選択することで、風向の変更速度を増減することができる。この場合、「はやめ」「標準」「おそめ」の各々に、例えばM=6、M=12あるいはM=18を対応させることで、履歴更新時間が増減し、各生活区分の在推定及び不在推定に要する時間が表8のように変更される。
また、各領域A〜Iにおける空調設定に応じて、ファン8の回転数制御及び上下羽根12と左右羽根の風向制御が行われるが、これらの制御について以下説明する。
暖房時の風向制御は、人がいると判定された領域における人の足元手前に風向きを制御することで足元近傍に温風を到達させ、冷房時の風向制御は、人の頭上上方に風向きを制御することで頭上上方に冷風を到達させる。風向きはファン8の回転数と、上下羽根12あるいは左右羽根の角度により調節する。
図18は、上下羽根12の回転制御を示しており、空気調和機停止時には、図18(a)に示されるように、前面パネル4と上下羽根12と中羽根14は全て閉塞した状態にある。
冷房時は、吹き出し空気(冷風)を人の頭上上方に到達させるため(冷房天井気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(c)に示される状態に至る。まず、アーム18,20が駆動制御されて前面パネル4が前面開口部2aから離反するとともに、アーム22,24が駆動制御されて上下羽根12が吹出口10から離反する。
図18(c)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により水平方向に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が上方へ湾曲しているため、部屋の遠方まで空気を送ることができる。この時、吹出口10の上方、すなわち前面パネル4の下方は中羽根14により閉塞されており、吹出口10から吹き出した空気の一部が前面開口部2aに導かれることはない。
一方、暖房時は、吹き出し空気(温風)を人の足元近傍に到達させるため(暖房足元気流)、図18(a)に示される状態から図18(b)に示される状態を経て図18(d)に示される状態に至る。図18(d)の状態では、吹出口10から吹き出される空気は、上下羽根12により斜め下方に導かれるが、上下羽根12の下流側端部が本体側へ湾曲しているため、部屋の上方に溜まりやすい暖かい空気を部屋の下方に送ることができる。
なお、図18(e)は、安定前の冷房時に利用され、吹き出し空気は人体に向けられる(人体向け気流)。
図19は、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数を示しており、A1,A2,A3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準回転数で、A4は距離が同じ場合の領域の違いによる回転数差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。
A1:800rpm(暖房時)、700rpm(冷房時)
A2:1000rpm(暖房時)、900rpm(冷房時)
A3:1200rpm(暖房時)、1100rpm(冷房時)
A4:100rpm(冷暖共通)
ここで、各領域における室内機からの距離、室内機正面からの角度、高低差等、室内機との位置関係を表す表現として、相対位置という表現を導入する。
また、各領域において空調がし易い、空調がし難い度合いを空調要求度という表現により表し、空調要求度が高いほど空調がよりし難い、空調要求度が低いほど空調がよりし易いとする。例えば、室内機からの距離が遠いほど吹き出し空気が届き難く空調がし難いので空調要求度が高くなる。即ち、空調要求度と室内機からの相対位置には密接な関連性があり、本実施の形態では、室内機からの相対位置に応じて空調要求度を定める。
したがって、各領域A〜Iの空調を行う場合のファン8の設定回転数は、空調要求度が高いほど高く設定されることを意味している。すなわち、空調すべき領域の位置が室内機より遠いほどファン8の設定回転数は高く設定されるとともに、室内機からの距離が同じ場合には室内機の正面より左右にずれた領域ほどファン8の設定回転数は高く設定される。また、空調すべき領域が一つの場合、その領域の設定回転数(風量)に設定され、空調すべき領域が複数の場合、空調要求度が高い領域の設定回転数に設定される。
また、図20は、暖房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、B1,B2,B3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、B4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、C1及びC2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、C3及びC4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、上下羽根12の角度とは、羽根が上に凸の状態で羽根の前後端を結んだ線が水平の場合を0°とし、この位置を基準にして反時計方向に計測した場合の角度のことである。
B1:70°
B2:55°
B3:45°
B4:10°
C1:0°
C2:15°
C3:30°
C4:45°
すなわち、室内機に近い領域AあるいはBの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度(例えば、70°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数(例えば、800rpm)に設定され、領域AあるいはBにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの暖房を行う場合、上下羽根12は、第1の角度より小さい第2の角度(例えば、55°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(例えば、1000rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの暖房を行う場合、上下羽根12は、第2の角度より小さい第3の角度(例えば、45°)に設定されるとともに、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(例えば、1200rpm)に設定され、領域G,HあるいはIにおける室内機側の縁部(人の足元手前)に風向を制御し、足元近傍に温風を到達させるようにしている。
図21は、立ち上がりあるいは不安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、E1,E2,E3は室内機からそれぞれ近距離、中距離、長距離にある領域の基準上下羽根角度で、E4は距離が同じ場合の領域の違いによる上下羽根の角度差分であるのに対し、F1及びF2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、F3及びF4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、立ち上がりとは、空気調和機の運転開始時のことで、不安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっていない状態のことである。
E1:50°
E2:35°
E3:25°
E4:10°
F1:0°
F2:15°
F3:25°
F4:35°
また、図22は、安定領域の冷房時の上下羽根12と左右羽根の設定角度を示しており、H1は天井気流の場合の基準上下羽根角度で、H2はにがし気流の場合の基準上下羽根角度で、H3は距離の違いによる上限羽根角度差分であるのに対し、I1及びI2は左右領域の基準左右羽根角度(左回りが正方向)で、I3及びI4は領域の違いによる左右羽根の角度差分であり、例えばそれぞれ次のように設定される。なお、安定領域とは、現在の室内の空調状態が、設定した条件(例えば設定温度)になっている状態のことである。
H1:180°
H2:190°
H3:5°
I1:0°
I2:15°
I3:25°
I4:35°
ここで、天井気流とは、図18(c)に示されるように、上下羽根12を吹出口10の下部に位置させて吹き出し風を全て羽根の凹面で受けて風を送り出した場合の気流のことであり、にがし気流とは、上下羽根12を天井気流時より多少上部に位置させて、吹き出し風の一部(微量)を羽根の凸面側(羽根の下方)にも流し羽根凸面に結露が発生しにくい状態にして風を送り出した場合の気流のことである。
室内機に近い領域AあるいはBの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ下方に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数(暖房時の第1の回転数より少ない回転数で、例えば、700rpm)に設定され、領域AあるいはBの頭上上方に冷風を到達させ、冷気がシャワー状に落ちてくるように設定されている。また、室内機から中距離にある領域C,D,EあるいはFの冷房を行う場合、上下羽根12は、略水平に設定され、ファン8の回転数は第1の回転数より高い第2の回転数(暖房時の第2の回転数より少ない回転数で、例えば、900rpm)に設定され、領域C,D,EあるいはFの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。さらに、室内機から最も遠い領域G,HあるいはIの冷房を行う場合、上下羽根12は、水平より所定角度(例えば、5°)だけ上方に設定され、ファン8の回転数は第2の回転数より高い第3の回転数(暖房時の第3の回転数より少ない回転数で、例えば、1100rpm)に設定され、領域G,HあるいはIの頭上上方に冷風を到達させるように設定されている。
次に、空調すべき領域の数に応じて行われる風向制御について図23のフローチャートを参照しながら説明する。
空気調和機の運転開始後、ステップS41において、領域A〜Iにおける人の在否判定がまず行われ、ステップS42において、人がいると判定された領域が一つ、すなわち空調すべき領域が一つの場合、ステップS43において、その領域に応じて設定された風量、風向に基づいて空調が行われる。ステップS42において、空調すべき領域が一つではないと判定されると、ステップS44において、空調すべき領域が二つかどうかを判定し、空調すべき領域が二つの場合、ステップS45に移行する。
ステップS45においては、風量は空調要求度の高い領域の設定風量に設定され、二つの領域の配置モードを図24に示されるように五つのモードのいずれかに識別し、次のステップS46において、識別されたモードに応じて表9のように制御する。
ここで、モード1は中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域の場合を表し、モード2は室内機との角度が略一致し、前後関係に隣接する2領域の場合を表している。また、モード3は室内機との角度が略一致し、前後関係に離間する2領域の場合を表し、モード4は室内機との距離が略一致し、角度が異なる2領域の場合を表し、モード5は離間する2領域、換言すれば室内機との距離も角度も異なる2領域の場合を表している。
モード1〜4の上下風向は、暖房時は要求度の低い領域に固定される一方、冷房時は要求度の高い領域に固定される。また、モード5の上下風向は、上下羽根12の動作を制御して、二つの領域(第1及び第2の領域)のうち、第1の領域に所定時間停留(角度固定)した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、例えば室内機からの距離に応じてそれぞれ設定され、室内機からの距離が遠いほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、モード1の左右風向は、隣接した二つの領域の中央に固定され、モード2及び3の場合、二つの領域が室内機から見て距離の異なる略同一方向にあると見なして、その左右風向は、要求度の高い領域に固定される。さらに、モード4及び離間する二つの領域の配置からなるモード5の左右風向は、上下羽根12の制御と同様に左右羽根の動作を制御して、第1の領域に所定時間停留した後、第2の領域に向かって風向を変え、第2の領域に所定時間停留した後、第1の領域に向かって風向を変える動作を繰り返す。なお、各領域の停留時間は、各領域に対する室内機からの相対位置、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
また、ステップS44において空調すべき領域が二つではないと判定されると、ステップS47において、空調すべき三つ以上の領域をその配置に応じて通常モードと特殊モードの二つのモードのいずれかに判定する。ここで、特殊モードは、中距離であり、かつ室内機正面をはさんで隣接する2領域と、遠距離であり、かつ室内機正面に位置する1領域、計3領域の場合を表し、それを除く三つ以上の領域の場合を通常モードと表す。空調すべき領域が三つ以上の場合、風量は空調要求度の最も高い領域の設定風量に設定され、ステップS47において、図25(a)に示される特殊モード(中央隣接)と判定されると、ステップS48において、風向は図24のモード1と同様に設定される。
一方、ステップS47において、特殊モードではないと判定されると、ステップS49において、図25(b)あるいは(c)に示される通常モードの制御が行われ、上下風向は、室内機に最も近い領域の上下羽根12の設定角度と、室内機に最も遠い領域の上下羽根12の設定角度との間で上下羽根12の角度を変更する。
また、通常モードの場合の左右風向は、両端の領域(図25(b)では領域CとI、図25(c)では領域CとH)における左右羽根の設定角度を左端角度及び右端角度に設定して、左端角度に所定時間停留した後、右端側の領域に向かって風向を変え(スイング)、右端角度に所定時間停留した後、左端側の領域に向かって風向を変える動作(スイング)を繰り返す。なお、スイング時の左右羽根の作動速度は、上述したモード4及び5における左右羽根の作動速度より遅く設定される。また、左端角度あるいは右端角度における停留時間は、例えば室内機正面からの角度に応じてそれぞれ設定され、室内機正面からの角度が大きいほど停留時間を長くするのが好ましい。
なお、ステップS43,S46,S48あるいはS49においてそれぞれの空調制御が行われた後、ステップS41に戻る。
また、室内機が図14に示されるように配置された場合、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34を使用して室内機が左側壁の近傍に設置されたと判定し、左側壁より右側に位置する領域のみ左右羽根の作動制御を行うこともできる。この場合、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34で構成される人体検知装置は室内機の設置位置自動認識手段として作用する。
なお、室内機の設置位置自動認識手段としてのセンサは少なくとも二つ設ければよく、図4において光軸が同一平面上にある第1及び第2のセンサ26,28を設けた場合を例に取り、さらに説明する。
二つのセンサ26,28を設けた場合、二つのセンサ26,28からの周期T1毎の出力を所定時間(例えば、3〜4時間)累積し、この累積した反応結果を一つの閾値と比較することにより二つの領域は生活領域と非生活領域あるいは二つの生活領域に区分される。なお、比較される閾値は、例えば上述した第2の閾値であってもよい。
室内機を左側壁の近傍(例えば1m以内)に設置した図26の例では、領域Aは非生活領域と判定され、領域Bは生活領域と判定されるのに対し、室内機を右側壁の近傍(例えば1m以内)に設置した場合には、室内機の正面から左側の領域が生活領域と判定され、室内機の正面から右側の領域が非生活領域と判定される。また、室内機を壁の中央に設置した場合には、室内機の正面から左側及び右側の領域は両方とも生活領域と判定される。
このように室内機の設置位置を自動的に認識することで、生活領域のみの空調を行うことができるように空気調和機の上下方向の風向制御手段や左右方向の風向制御手段の作動制御を行えばよい。本実施の形態の壁掛け型室内機では、風向制御手段である上下羽根や左右羽根の作動制御を行う。
また、室内機が側壁近くに設置されている場合、吹出口10から吹き出される風によりカーテンが揺れると、人体検知センサがカーテンを人と誤検知して人がいる方向に風が流れなかったり、人がいないのに人がいると誤判定する等の問題がある。
しかしながら、第1及び第2のセンサ26,28により構成される人体検知装置は、図26に示されるように、第1のセンサ26が領域Aにおける人の在否を検知する一方、第2のセンサ28が領域Aとは重ならないように分離された領域Bにおける人の在否を検知する。したがって、領域A及びBは、第1のセンサ26の光軸と第2のセンサ28の光軸との間に位置する中心線を境に近接して分離されており、この人体検知装置を室内機に設けた場合、領域A及び領域Bは室内機の正面より左右に分離しており、互いに重なることがない領域A及び領域Bにおけるセンサの検知反応を所定時間それぞれ累積した結果を基に生活領域と非生活領域の区別を確実に行うことができる。ここで、生活領域と非生活領域の区別を行うことにより、非生活領域でセンサの検知反応が有った場合に、非生活領域に対して風向制御を行わない。換言すれば、この場合、生活領域のみの風向制御となる。これによって、生活領域に人がいる場合に、もし非生活領域でカーテンの揺れ等のイレギュラーな反応を検知しても人以外の反応と判定し、非生活領域に風が流れないように風向を制御することで、人がいる生活領域の快適性が損なわれるのを防止することができる。また、室内から人がいなくなった場合においても、もし非生活領域でカーテンの揺れ等のイレギュラーな反応を検知しても人以外の反応と判定し、人がいると誤判定するのを防止することができる。
また、図4に示される第3のセンサ32を人体検知装置に設けて、図27に示されるように、第1のセンサ26の光軸と第2のセンサ28の光軸との間に位置する中心線の両側にまたがる領域Cにおける人の在否を検知することができ、領域Cに人がいると判定した場合、室内機の正面から見て右側の領域C2に人がいると推定でき、一つのセンサ32を追加するだけで、左右にまたがる領域の左右のいずれの位置に人がいるかを判定できる。
図28は、六つのセンサからなる人体検知装置を室内機に設けて人体位置判別領域を複数の領域に区分し、室内機の正面から見て近接して左右に分離された二つの領域を二組配置した場合を示している。
図28に示される例では、領域AとBあるいは領域DとEが左右に近接して分離された領域を示しており、互いに重なることがない領域A及びBあるいは領域D及びEにおけるセンサの検知反応を所定時間それぞれ累積した結果を基に生活領域と非生活領域の区別をより確実に行うことができる。
次に、室内機の設置位置手動設定手段を使用して室内機の設置位置を設定した場合において、カーテン等の揺れに起因するイレギュラーな反応を積極的に除外するようにした誤検知防止制御について説明する。
室内機の設置位置手動設定手段とは、例えば室内機に設けられた切替スイッチのことで、室内機の据付位置に応じて切替スイッチを「左設置」、「中央設置」、「右設置」のいずれかに設定することで、室内機の設置位置が設定される。なお、ここでいう「左設置」とは、図29に示されるように、室内機に向かって室内機が壁の左側に取り付けられた場合のことで、「右設置」は室内機が壁の右側に取り付けられた場合のことである。
まず、誤検知防止機能を持たない室内機が図29に示される「左設置」で、人が領域Eにいる場合について説明する。
この場合、室内機は次のように制御される。
(i)各領域A〜I毎に長期累積結果が記録される居場所メモリが設けられており、空気調和機据付後の運転初期は、各メモリには一切の記録がない。この運転初期には、左右羽根は正面を向き、領域D,Eの中央狙いで風向が固定するように設定されている。
(ii)領域Eにおける人の検知により第2及び第4のセンサ28,32が反応し、この反応に加え、カーテンの揺れにより第5のセンサ34が誤反応する(詳細は後述)。
(iii)検知領域は領域E,Fとなり、領域E,Fの同時空調はモード4に該当し、気流制御は領域E,Fの停留可動となる。
(iv)前記(iii)の風向制御中にカーテン側領域の居場所メモリが増大して、生活領域の生活区分が相対的にランク落ちする(詳細は後述)。
(v)左右羽根はカーテン側に向きやすく、生活領域側に向きにくい。
ここで、前記(ii)についてさらに説明する。図9を参照して第5のセンサ34は領域F,Iをカバーしていると記載したが、これは室内の床面レベル(水平面)のカバー領域であって、室内に存在する動体(例えば、人)を室内の高い位置に設置されたセンサ26,28,30,32,34で検知することから、第5のセンサ34は床面レベルの領域F,Iのみならず、これらの領域F,Iと第5のセンサ34との間の空間に存在する動体をも検知することになる。図29から分かるように、カーテンは領域F,Iと第5のセンサ34との間に存在するので、カーテンが揺れると、第5のセンサ34は誤検知することになる。
また、前記(iv)についてさらに詳述すると、各居場所メモリに記録される累積反応期間回数は有限で、その上限値は、例えば255に設定されている。そこで、本実施の形態においては、カーテンの揺れ等に起因するイレギュラーな反応で一つのメモリに記録された数値が上限値を超えると、全てのメモリに記録された数値を一定の比率で圧縮して(例えば、記録された数値に0.8を掛ける)その数値を減少させている。また、一つのメモリに記録された数値が上限値を超える毎に、数値の圧縮は繰り返される。各メモリに記録された数値が減少すると、その時に生活区分Iあるいは生活区分IIと判別された領域が生活区分IIあるいは生活区分IIIと判別される可能性があり、相対的に生活領域の生活区分がランク落ちする結果となる。
次に、誤検知防止制御について説明する。
室内機の設置位置手動設定手段を使用して室内機の設置位置を設定した場合、各領域A〜Iは次のように判別される。
・「左設置」の場合
居室側(生活領域):領域A,C,D,G,H
非居室側(非生活領域):領域B,E,F,I
・「中央設置」の場合
居室側(生活領域):全領域A〜I
非居室側(非生活領域):なし
・「右設置」の場合
居室側(生活領域):領域B,E,F,H,I
非居室側(非生活領域):領域A,C,D,G
誤検知防止機能を持つ室内機が図29に示される「左設置」で、人が領域Eにいる場合、室内機は次のように制御される。
(i)運転初期には、左右羽根は正面を向き、領域D,Eの中央狙いで風向が固定するように設定されている。
(ii)領域Eにおける人の検知により第2及び第4のセンサ28,32が反応し、この反応に加え、カーテンの揺れにより第5のセンサ34が誤反応する。
(iii)検知領域は領域E,Fとなるが、「左設置」設定のため、非居室側の領域である領域E,Fの長期累積結果を更新しない。したがって、領域E,Fの居場所メモリに記録される数値は増大せず、生活区分IIIに固定される。
(iv)居室側の領域である領域A,C,D,G,Hの少なくとも一つの領域に人がいると判定された場合、非居室側の領域B,E,F,Iの履歴(上述したΣA3、ΣA2、ΣA1、ΣA0の4回分の履歴)や推定結果を全てクリアする(履歴、推定結果を0にする)。履歴が残っていると不在推定に所定の時間がかかり、履歴や推定結果をクリアすることで左右羽根の制御が過去の履歴の影響を受けることがなく、人がいる領域に向かって風向制御が直ちに行われる。
(v)非居室側の領域で再度反応があった場合には、検知禁止ではないので、その領域の履歴や推定結果は更新され、生活区分IIIの在推定あるいは不在推定時間に基づいて風向制御される。例えば、図30に示されるように、室内機が壁から離間した「左設置」設定の場合には、領域Eに人がいる可能性も大きく、非居室側の領域と判別された領域でも人の在否の判定を行う必要がある。
次に、上述した誤検知防止制御とは異なり、室内機の設置位置手動設定手段に依存しない誤検知防止制御について、図31を参照しながら以下説明する。
この誤検知防止制御は、運転開始時と運転60分毎に図31に示されるシーケンスに従って処理が行われ、左右羽根はその中央部を境に左右で異なる動作を行うように制御される。したがって、以下の説明では、「左右羽根」を「左側の左右羽根」あるいは「右側の左右羽根」ということがある。なお、上下風向は誤検知防止制御(カーテン検知制御)直前の角度で固定される。
カーテン検知制御が開始すると、まず図31(a)に示されるように、それまでの左右風向制御によるカーテン揺らぎが収束するまでの第1の所定時間(例えば、10秒間)、左側及び右側の左右羽根は共に正面向きに固定される。
次に、図31(b)に示されるように、左側の左右羽根を正面向きに維持した状態で、右側の左右羽根を右向きに風向制御し(風向角度:右60度)、室内機からの吹き出し風が目標位置に到達後、第1の所定時間より長い第2の所定時間(例えば、30秒間)の全領域A〜Iにおける全センサ26,28,30,32,34の反応回数をカウントする。この時の領域Aにおけるカウント値をΣARとし、他の領域B〜Iのカウント値も同様に表すものとする(ΣBR〜ΣIR)。
その後、図31(c)に示されるように、それまでの左右風向制御によるカーテン揺らぎが収束するまでの第1の所定時間、左側及び右側の左右羽根は再び正面向きに固定される。
さらに、図31(d)に示されるように、右側の左右羽根を正面向きに維持した状態で、左側の左右羽根を左向きに風向制御し(風向角度:左60度)、室内機からの吹き出し風が目標位置に到達後、第2の所定時間の全領域A〜Iにおける全センサ26,28,30,32,34の反応回数をカウントする。この時の領域Aにおけるカウント値をΣALとし、他の領域B〜Iのカウント値も同様に表すものとする(ΣBL〜ΣIL)。
次に、各領域A〜I毎に二つのカウント値の差分(ΣAR−ΣAL等)を取り、この差分の絶対値が所定値(例えば、5)を超えた場合に、該当する領域のカーテン誤検知カウンタに1を加算し、図31に示されるシーケンスを複数回(例えば、3回)繰り返し、カーテン誤検知カウンタのカウント値が所定値(例えば、3)を超えた場合に、その領域をカーテン領域と判定する。
また、カーテン検知制御中は累積履歴、居場所メモリ、人位置推定結果は更新せず、カーテン検知制御終了後は、通常の人位置推定制御が再開される。また、判定結果を次の判定結果が出るまで有効とする。
すなわち、上述したカーテン検知制御は、カーテン揺らぎが収束するまでの第1の風向パターンと、各領域A〜Iにおけるカーテンの有無を検知する第2の風向パターンと、カーテン揺らぎが収束するまでの第3の風向パターンと、各領域A〜Iにおけるカーテンの有無を検知する第4の風向パターンとを所定時間毎に複数回実施し、各領域A〜Iにおける第2の風向パターンでの全センサ26,28,30,32,34の反応回数の積算値と第4の風向パターンでの全センサ26,28,30,32,34の反応回数の積算値との差分に応じて各領域A〜Iがカーテン領域(非生活領域)かどうかを判別しており、カーテン領域におけるセンサ26,28,30,32,34の誤反応で人位置推定結果に誤りが発生するのを防止している。
なお、カーテン検知制御は、カーテンのみならず他の人以外の動体検知制御としてセンサ26,28,30,32,34の誤検知を防止することができる。
また、室内機にはタイマーが設けられており、このタイマーを使用して不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御が行われ、この不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御について以下説明する。
まず、表10及び図32を参照しながら、暖房時の制御について説明する。
図32は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを28℃とし、目標温度(限界値)を20℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに低減する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に低減する。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃低減されて目標温度に等しい20℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(低減温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表10のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より低い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図32の例と同じである。
次に、表11及び図33を参照しながら、冷房時の制御について説明する。
図33は温度シフトの一例を示しており、ここでは設定温度Tsetを20℃とし、目標温度(限界値)を28℃とした場合について説明する。なお、ΔTは設定温度Tsetと目標温度との差温である。
第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。さらに、時間t2(例えば、カウント開始後30分)において人の不在が確認されると、2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的にさらに増大する。以下、同様に時間t3(例えば、カウント開始後1時間)及び時間t4(例えば、カウント開始後2時間)において人の不在が確認されると、それぞれ2℃(1/4ΔT)だけ設定温度Tsetを自動的に増大する。
時間t4においては、設定温度Tsetより合計8℃増大されて目標温度に等しい28℃になっているので、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)までは設定温度Tsetを目標温度のまま維持するが、時間t5においても依然として人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定温度Tsetに復帰させる。
また、温度シフト幅(増大温度)は設定温度Tsetと目標温度との差温ΔTに応じて表11のように設定され、差温ΔTが小さいほど温度シフト幅も小さい。また、設定温度Tsetが目標温度より高い場合は、現状温度に維持されるが、時間t5において人の不在が確認されると、空気調和機の運転を停止するのは図33の例と同じである。
図34は、ファン8の風量(回転数)と室外機に設けられた圧縮機の能力を制御することにより省電力運転を達成する例を示している。
すなわち、ファン8の風量を増大すると熱交換器6の熱交換効率が向上し、圧縮機の周波数が同じ場合には冷房あるいは暖房能力が増大するので、室内温度を同じ設定温度に保持するためには、圧縮機の周波数を低減することが可能となり、必要な消費電力は減少する。また、不在時にファン8の風量を増大しても気流が強すぎることによる不快感や、ファン8の騒音増大による快適性の問題が生じることはない。
図34(a)に示されるように、第1乃至第5のセンサ26,28,30,32,34により全ての領域A〜Iに人がいないことが検知されると、タイマーがカウントを開始し、タイマーによるカウント開始後、時間t1(例えば、10分)において人の不在が確認されると、図34(b)に示されるように、ファン8の風量を増大させるとともに、図34(c)に示されるように、圧縮機の周波数を段階的に時間t2(例えば、カウント開始後30分)まで減少させる。時間t1経過後はファン8の風量は一定(限界値)に保持され、時間t2経過後は圧縮機の周波数は一定(限界値)に保持されるが、時間t2、時間t3(例えば、カウント開始後1時間)、時間t4(例えば、カウント開始後2時間)、時間t5(例えば、カウント開始後4時間)において人の不在が継続して確認されると、時間t5において空気調和機の運転を停止して、空気調和機の切り忘れを防止する。
なお、時間t1から時間t5までの間に人の存在が検知されると、時間t1以前の設定風量及び設定周波数に復帰させる。
また、上述した図32乃至図34の例はいずれも、通常運転中、所定時間人がいない場合には、通常運転時より消費電力が少ない省電力運転を行うものであり、その後さらに所定時間人がいない場合には、空気調和機の運転を停止して省エネを達成している(「通常運転」とは、「使用者が指示した運転」)。
さらに、不在が長時間継続しているにもかかわらず、温度変化を惹起するおそれのあるカーテン等の人以外の外乱を人体検知センサが誤検知した場合、不在(無人)状態で通常運転をいつまでも継続することも考えられるので、時間t5より長い所定時間t6(例えば、24時間)経過すると運転を停止することで確実に切り忘れを防止することができる。また、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の運転停止直前には本体やリモコンに音声やLEDランプ等で聴覚的あるいは視覚的に報知したり、画面に文字を表示するのが好ましい。さらに、時間t5あるいは時間t5より長い所定時間t6経過後の自動運転停止を行うか否かを選択できる自動停止選択手段をリモコン等に設けると使い勝手が向上する。
上述した不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御は、室内機に少なくとも一つの人体検知センサを備えた空気調和機であれば、一つの人体検知センサからの出力に応じて不在検知省エネ制御及び切り忘れ防止制御を行うことができる。