JP4088244B2 - エキシマ・ランプの点灯装置 - Google Patents
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Description
この現象の根拠として、1[MHZ]近辺ではイオン・トラップ、0.1[GHZ]近辺では電子トラップという現象が記載されている。
これは放電空間に生じている一部のイオンや電子が放電電極に捕らえられることなく、加えられている外部電界により放電空間で振動しながら滞留している状態であるとしている。
尚、この放電管の放電電極対は、両極共に放電空間内に配置されている。
1[MHZ]近辺では多くのイオンが放電空間に捕捉されその空間電荷作用に伴うγ効果により二次電子作用が増し、負電位となっている金属電極からの二次電子の放出を促進し、放電開始をし易くしている、と記載されている。
又、この冊子では、エキシマ・ランプ内の放電領域の不特定の部位において、連続点灯のきっかけとなる点灯開始用火花放電を生じさせるための点火(トリガ)電圧と、これに続く結果として、エキシマ・ランプ内の放電領域全体が一様にグロー状放電による発光で満たされた状態となる連続点灯電圧を得て点灯する時、点火(トリガ)電圧と連続点灯電圧を最も低くする事ができる周波数が、放電用ガスの種類やそのイオン密度によって決まるイオン・プラズマ振動周波数に概略一致する、という事に関しても言及していないし、イオン・プラズマ振動周波数なる語句や表現もない。
これは放電空間に存在するプラズマは何らかのきっかけで、その中に正または負の空間電荷が局所的に現れると、そのプラズマは固有振動を始めるということを運動方程式より求めている。このきっかけが電子に起因するものであれば電子プラズマ振動が、イオンに起因するものであればイオン・プラズマ振動が生じる。そして、その周波数はそのプラズマのイオン密度と、電子の場合は電子の質量、イオンの場合はイオンの質量によって決まる固有の集団振動であるとされている。
又、プラズマの生成に関して、放電ガスに対して外部エネルギーとして印加する高周波高電圧の周波数をイオン・プラズマ振動周波数に合わせると、エキシマ・ランプ内の放電領域の不特定の部位において、連続点灯のきっかけとなる点灯開始用火花放電を生じさせるための点火(トリガ)電圧と、これに続く結果として、エキシマ・ランプ内の放電領域全体が一様にグロー状放電による発光で満たされた状態となる連続点灯電圧を得て点灯する時、点火(トリガ)電圧と連続点灯電圧を最も低くする事が出来る事や、プラズマを効率よく生成できること等に関しても記載されていない。
更に、1〜1.7[MHZ]の減衰振動はイオン・プラズマ振動周波数による減衰振動と考えられる。
オゾン管内の反応はマイクロ・ディスチャージそのものの強さより、その中に含まれるイオン・プラズマ振動の強さに比例することが考えられる。
この時点では、このイオン・プラズマ振動の概念が考えられていなかったことと、この周波数での実験や試みは技術的な問題で行われていなかったと考えられる。
又、具体例として、厚さ1mmの石英板2枚の間隙Yを4mmとし、これを放電空間Gとして、キセノン・ガスが約40,000Pa(25℃基準)の圧力で満たされた電極面積200cm2の誘電体バリア放電ランプを、周波数約100KHz、印加電圧約4KVrmsにおいて点灯した、という記載もある。
しかし、ここでは印加電圧の波形に関する具体的な表記はないが、文中において、放電時に大電流パルス、瞬間的な大電流パルスのバースト等と記載されていることから判断すると、印加電圧の波形は方形波に近いものと考えられる。又、LC直列共振回路を接続する例も記載されているが、このときの波形は、方形波の波形の立上がりと立下り部分において、LC直列共振回路による減衰振動波形が重畳されたものと考えられる。この減衰振動の重畳により、更にバースト状の高い電圧を得ているようである。
本発明の実験例では、外側の直径が約25mmφ、長さが1200mm、肉厚が約1.2mm、の石英製外側管と、外側の直径が約12mmφ、長さが1200mm、肉厚が約1mm、の石英製内側管を同軸に配置すると、その間隙は5.3mmである。
その両端を気密に封じて放電空間とし、キセノン・ガスを約300Torr(≒40,000Pa)(25℃基準)の圧力で満たし、外側管の外周に、長さが1000mmの金属製の網電極を概略密着して巻きつけ、これを外部放電電極とし、内側管の内側に、概略密着するように長さが1000mmの金属製の網電極を挿入し、これを内部放電電極としたとき、外部放電電極の電極面積は約785cm2、内部放電電極の電極面積は約314cm2となる。
以上のような、エキシマ・ランプを、本発明による高周波電源で点灯する場合、出力周波数を約2MHzにすると、点火(トリガ)電圧は概略正弦波で約2.1KVrms(約6KVp−p)が得られ、火花放電による点火(トリガ)が行われる。
点火直後に周波数を約1.8MHzに下げると、最大の紫外線量での連続点灯となり、印加電圧は概略正弦波で約1KVrms(約2.8KVp−p)となる。
ガスの圧力Pは同一の圧力になっており、電極間の距離Dは4mmに対して、本発明では5.3mmと約1.3倍になっているにもかかわらず、本発明による放電電圧は概ね低くなっている。
この放電プラズマは一般的に微小放電またはマイクロ・ディスチャージと呼ばれており多くの欠点を有している。
第一に、エキシマ・ランプの点灯中は、常時2KV〜10KVrmsの電圧が10KHZ〜200KHZの周波数で加えられている。
高電圧になるほど回路が周辺の湿度や塵等の影響を受けやすくなり、回路の長期的な安定性維持が難しく、これがエキシマ・ランプの点灯性能に悪い影響を与え、点灯しない時がある。
又、放電が生じたときは短時間の間に大きな電流が流れる大電流パルス波形であるために、それが発生する電磁波の不要輻射は広帯域の周波数に及びその遮蔽対策が難しい。
更に、エキシマ・ランプを構成する放電容器のガラスに対しても高電圧のストレスを連続して与えることになり、その寿命に悪い影響を与えることになる。
このため紫外線量を多く得ようとするときは、単位面積、単位時間あたりのマイクロ・ディスチャージ量を多くしなければならないが、これには電荷を、放電容器の内側壁面に壁電荷として十分に付着させるための蓄積時間が必要となり、原理的な限界がある。
この蓄積時間が放電の休止時間となる。点灯周波数が低いため、この休止時間が長いので放電容器の平均した温度上昇は低いが、マイクロ・ディスチャージ部分の温度は非常に高い。
エキシマ・ランプを構成する放電容器のガラスには放電毎に局部的に膨張収縮が与えられ、その結晶化を早めてその寿命に悪い影響を与えると考えられる。
特に加速されたイオンの全てが、エキシマ・ランプを構成する放電容器のガラスに衝突する。
その衝突エネルギーがエキシマ・ランプを構成する放電容器のガラスに与えられ、その寿命に対しては更に悪い影響を与えると考えられる。
エキシマ・ランプを構成する放電容器のガラス寸法精度は悪く、電極の周辺空間(放電容器外)での不要放電をなくすためには、放電電極をエキシマ・ランプに完全に密着させ、放電容器外での電界集中を極力少なくして使用せざるをえない状況において、放電電極間距離はガラスの寸法精度に頼らざるを得ない結果となる。
このような状況下では、マイクロ・ディスチャージの密度分布を均一にすることは困難である。
結果として、発光面全域での紫外線量の均一性をよくすることが難しくなる。
これはPDPパネル等の蛍光体検査等で、蛍光体にエキシマ・ランプの222nmの紫外線を照射し、その蛍光体を発光させて、その塗布状態を検査するとき、CCDカメラ等でその塗布状態の映像を取り込み、画像処理するには、明るさのゆらぎが生じ不適当である。
このため、紫外線量を少なくしても、常に2KV〜10KVrmsの電圧を印加し、ピーク値100%の高エネルギー密度の紫外線を照射していることになる。
高エネルギー密度の紫外線を敬遠する用途においては使用できない。
又、紫外線量を更に少なくするときには消灯時間が長くなり紫外線が明滅してしまい、被照射対象物が高速で移動するような用途では設定した積算紫外線量を得にくい。
もちろん、前記第五項の用途に関しても同様である。
少ない紫外線量を連続して照射しなければならない用途においては、この方法は使えない。
しかし、電子部品の中でコアはその形状と寸法等に関して標準規格品の種類が少なく、設計上から算出した形状と寸法のものを探し出す事はほとんどできず、特別注文品になることが多い。
特に、大型のコアは確実に特別注文品となるので、大型ランプ用の出力トランスを製作するためには製作期間が長くなり、価格が高価になる。
管理上一番面倒な代物である。
これを使用することが、点灯電源の出力電力容量を変更するときに問題となる。
出力トランスはその出力電力容量に応じてその都度、半ばカット・アンド・トライで設計製作をしなければならない。
当然、前段の増幅器もその影響を受けて設計変更等が生じる。
図面や書類、それに部品管理や製造管理面等で煩雑になり、その管理費用は製品価格に上乗せされるため経済性に劣る。
そこには点灯用の高周波電源の他に、連続点灯のきっかけとなる点灯開始用の火花放電を生じさせるためのトリガ(点火)用電極とトリガ(点火)用電源を有しており、1MHz〜100MHzの範囲で電界放電させる、と記載されている。
約5mmの放電空間にXeガスを約600Torr封入し、2.65MHzの固定周波数で、概略正弦波電圧を印加して、エキシマ・ランプを一様な放電(霧状の放電)で点灯させているが、周波数固定の高周波電源とエキシマ・ランプの間にマッチング回路を挿入しエキシマ・ランプからの反射波をなくすようにマッチング回路を調整し高効率の電源を得ている、としている。
周波数を可変する方式のものではない。
又、周波数を可変しての紫外線量の調整に関しては記載されていない。
点灯用電極の他に、トリガ(点火)用電極を設けなければならず、電極構造が難しくなる、と同時に、回路構成も複雑になり、装置の信頼性や経済性にも問題がある。
点火(トリガ)時、最大紫外線量での点灯時それに最小紫外線量の点灯時においても共振特性を利用しているため、印加電圧は全て概略正弦波であり、比較的に電圧も少ないので、エキシマ・ランプと点灯装置からの基本波とその電磁的な不要輻射であるスプリアスに関しては少ない。
172nmの紫外線量はランプの管面において約100mW/cm2であり非常に高い。点灯装置の入力電力対紫外線量の効率は約10%であり、高効率である。
放電電圧が低いこと、グロー状の放電であること、イオン・トラップされているのでイオンがエキシマ・ランプを構成するガラスに衝突する量が少ないこと等でランプの表面温度も低くいので、エキシマ・ランプの寿命が長くなる。
エキシマ・ランプを構成するガラスの寸法精度が若干悪いときや、放電電極の寸法やエキシマ・ランプへの取り付け精度が若干悪くても、グロー状の放電がエキシマ・ランプ内に充満する形態であるから、エキシマ・ランプの発光面全域での紫外線量の均一性が優れている。
放電形態がグロー状であり、詳細に観察すると霧がゆっくりと流れているような状態であるから点灯周波数による明滅は行われておらず、時間的に途切れのない連続発光である。
放電用ガスを充填した石英ガラス製の箱型放電容器1に、一方の放電電極2と他の一方の放電電極3で、その放電容器1を上下から挟むように、又、水平方向にずれることなく対向配置して、放電電極2と放電電極3を放電容器1に概略密着して取り付け、これをエキシマ・ランプとする。
石英ガラスの厚みはT1、放電用ガスの厚みはT2、放電電極2と放電電極3の面積はSとする。
平行平板電極の間に石英ガラス、放電用ガス、石英ガラスの順に誘電体が三層構造になっているキャパシタンスである。
CBaは図1の放電電極2と概略密着する石英ガラスによるキャパシタンスで、
CBa≒ε0εS1S/T1となる。
CBbは図1の放電電極(3)と概略密着する石英ガラスによるキャパシタンスで、
CBb≒ε0εS1S/T1となる。
CGは図1の上下2枚の石英ガラスで挟まれている放電用ガスによるキャパシタンスで、
CG≒ε0εS2S/T2となる。
ここで、ε0=8.854×10-12[F/m]、εs1=3.4〜4.5、εs2≒1であり、等価回路はCBa、CG、CBbの順に直列接続された回路構成となる。
合成キャパシタンスC0は、
C0=1/(1/CBa+1/CBb+1/CG)となる。
エキシマ・ランプの点灯装置は、出力周波数を自動調整できる高周波電源4の出力端子5と6に、図1と同様のキャパシタンスC0のエキシマ・ランプ7を接続した構成である。
高周波電源4は、出力周波数を自動調整できる電力増幅部8に、出力インダクタンスL0の出力トランス9を接続したものである。
出力周波数を自動調整できる電力増幅部8は、エキシマ・ランプ7を点灯、消灯するためのON−OFFスイッチ10と、発信器11と、発信器11の発振周波数を自動制御する制御部12と、発信器11の出力を増幅する電力増幅器13で構成される。
ここで、
電子の電荷e=1.602×10-19[C]で、
真空の誘電率ε0=8.854×10-12[F/m]である。
イオンの質量miは陽子の質量mpとエキシマ・ランプに封入されている放電用ガスの原子量Mを乗じたものであるから、
イオンの質量mi=mp×M=1.673×10-12×M[Kg]となり、
これ等を代入すると、
fi=0.2096(n0/M)1/2[Hz]となる。
更に、低温プラズマであるグロー放電のイオン密度n0は概略1014〜1018[m-3]であるからイオン密度:n0≒1016[m-3]と仮定すると、
fi=20.96×M-1/2[MHz]となる。
このとき、キャパシタンスC0はそのエキシマ・ランプ7の構造によりあらかじめ決まった値となっている。
エキシマ・ランプ7内の放電用ガスを、そのガスが持つ固有のイオン・プラズマ振動周波数fiと、概略同一周波数の外部電界で共鳴振動させるために、この共振回路の共振周波数f0をイオン・プラズマ振動周波数fiに概略一致させるようにする。
ω0L0=1/ω0C0、ω0=2πf0の共振条件より、
L0=1/ω0 2C0=1/(2πf0)2C0となるから、
ここで、f0≒fiとして、
L0=1/(2πfi)2C0で求める。
ここで、イオン・プラズマ振動周波数fiにおいて絶縁破壊電圧VBが最も低下しVBiとなる。
この理由は、放電容器内の偶存電子が、放電容器の外部電極に印加された高周波高電圧の電界を受けて、電界の方向が変わる毎に、放電容器内を瞬時に移動し、常に陽極側の壁に張り付き壁電荷になる。陽極側の壁は石英ガラスであり、壁電荷をほとんど吸収しないので、電子はほとんどその数を減らさない。
更に、偶存電子が放電空間を何度も往復するに間に、放電用ガスを電離させて、電離電子を増殖させる。この電離電子も偶存電子と同様に振舞う。
陽イオンによる空間電荷群が陰極に接近したとき、空間電荷群と陰極間の電界は強められ、その電界内に、存在する電離していない放電用ガスを電離しやすくする。
このときの外部電界の周波数を、この放電用ガスのイオン・プラズマ振動周波数fiに概略一致させると空間電荷群と陰極間の電界強度は最大になり、放電用ガスの絶縁破壊電圧VBが最も低下しVBiになると考えられる。
外部電界の周波数がイオン・プラズマ振動周波数fiより低くなるに従い、陽イオンによる壁電荷が徐々に増えて、陽イオンによる空間電荷群の密度が減り、空間電荷群と陰極間の電界強度も徐々に弱くなる。
外部電界の周波数がイオン・プラズマ振動周波数fiより高くなるに従い、陽イオンは陰極側に移動する距離が少なくなる。壁電荷が徐々に減って、陽イオンによる空間電荷群の密度が減る量は少なくなるが、空間電荷群と陰極間の平均距離が広がり、電界強度も徐々に弱くなる。
fiHになると、陽イオンのほとんどがその場所から移動できず、陰極付近の電界強度をほとんど強められず、直流電界による絶縁破壊電圧VBDCとほぼ同等になる。
ちなみに、fiH以上の周波数において、fiの約100倍の周波数においては電子プラズマ振動により、再度、絶縁破壊電圧VBは低下する。
更に、周波数が高くなると、絶縁破壊電圧VBは上昇しVBDC以上の値になる。これは、偶存電子が十分な加速エネルギーを得られなくなるためである。
図6(A)に、エキシマ・ランプの消灯時における静特性を説明するための簡略回路を示す。
ここでは、周波数が調整できる高周波電源14の出力はスイッチ15が切られているので、その電力は出力トランス16には印加されていない。よって、一方の放電電極17と他の一方の放電電極18が取付けられたエキシマ・ランプ19は消灯している。当然、放電管内にはプラズマは存在しない。
ここで、L0は図6(A)に示す出力トランス16の出力インダクタンスである。
R0は図6(A)に示す出力トランス16のコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
CBaは放電電極17と概略密着する石英ガラスの誘電体によるキャパシタンスである。
CBbは放電電極18と概略密着する石英ガラスの誘電体によるキャパシタンスである。
CGは石英ガラスの誘電体で挟まれている放電用ガスの誘電体によるキャパシタンスである。
ここで、L0は図6(A)に示す出力トランス16の出力インダクタンスである。
R0は図6(A)に示す出力トランス16のコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
C0は図6(B)のCBaとCBbそれにCGを直列接続したときの合成キャパシタンスであり、
C0=1/(1/CBa+1/CBb+1/CG)である。
又、出力トランス16におけるコイルの巻線間には漂遊キャパシタンスが存在し、エキシマ・ランプのキャパシタンスC0に対して無視できない値となることがあるが、ここでは混乱を避けるために無視し記載しない。
ここで、一点鎖線で示す特性図は図5のエキシマ・ランプに充填されている放電用ガスの絶縁破壊電圧VBの周波数特性である。
実線で示す特性図は図6(C)のエキシマ・ランプ消灯時の等価回路の共振特性である。
点線で示す特性図は後述する図7(D)のエキシマ・ランプ連続点灯時における等価回路の共振特性である。
一点鎖線で示す特性図に関係する記号を以下に示す。
VBDCは直流電圧の印加による放電ガスの絶縁破壊電圧である。
VBiはイオン・プラズマ振動周波数fiにおいてVBDCより最も低下した時の放電ガスの絶縁破壊電圧である。
実線で示す特性図に関係する記号を以下に示す。
f0はfiに概略一致させるようにL0を製作したときの共振特性の中心周波数である。
この共振周波数f0≒fiであり、
f0=1/2π(L0C0)1/2≒fiとなる。
判りやすくするために、出力トランスの1次側回路の影響は無視すると、
Q0=2πf0L0/R0となる。
ここで、R0はL0のコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
R0≪2πf0L0の関係があるので、Q0は大きな値となり、特性図はf0で共振電圧が最大値となる鋭く尖った高い曲線である。
その急峻さは、その高さが最大値の約70%であるときの周波数の幅をfW0とするとQ0=f0/fW0となる。(ここで、fW0は図中には記載しない。後述するf0Wと混同に注意。)
VT0はこの共振回路にf0の周波数を印加したときに得られる共振電圧である。
f0Lはこのエキシマ・ランプを点火(トリガ)できる電圧が得られる最低の周波数である。
f0Hはこのエキシマ・ランプを点火(トリガ)できる電圧が得られる最高の周波数である。
f0H−f0L=f0Wはこのエキシマ・ランプを点火(トリガ)できる電圧が得られる周波数範囲である。
この瞬間、放電ガスの絶縁破壊が生じてエキシマ・ランプ内において1〜数箇所で火花放電による点火(トリガ)が行われる。点火(トリガ)が行われた位置にはプラズマの小集団が残る。これはグロー状放電の発光を伴う。このプラズマの小集団は電界エネルギーを得ながら比較的に遅い速度で拡散拡大し、エキシマ・ランプ内に充満する。このとき、エキシマ・ランプ両端の電圧がB点のVBiからC点のVCへ移動する。その移動速度は、プラズマの拡散拡大速度に比例する。
同様に、スイッチ15を投入し、例えば、高周波電源14の周波数をf0Hより高い周波数のD点よりf0に向って低くしてゆくときも共振電圧が急激に大きくなり、f0HのE点に達したとき共振電圧がVBiと等しくなる。
ここで点火により1〜数箇所で生じる火花放電は誘電体バリア放電と概略同じ形態の火花であるが、誘電体バリア放電のように多くのマイクロ・ディスチャージは生じない。
ここで注意する点は、高周波電源の出力電力容量が十分にないとプラズマの小集団はエキシマ・ランプ内に拡散拡大する途中で停止し、一部においてプラズマを生じない所ができる。又、出力電力容量が不足すると、プラズマの小集団は縮小消滅に至り、エキシマ・ランプは消灯する。
図7(A)に、エキシマ・ランプの連続点灯時における静特性を説明するための簡略回路を示す。
ここでは、周波数が調整できる高周波電源14の出力はスイッチ15が投入されているので、その電力は出力トランス16に印加されている。よって、一方の放電電極17と他の一方の放電電極18が取付けられたエキシマ・ランプ19は点灯していて、プラズマ20が生じている。
ここで、プラズマ20と放電電極17に概略密着する石英ガラスとの間にはシース21と呼ばれるプラズマを形成できない領域が生じる。
同じく、プラズマ20と放電電極18に概略密着する石英ガラスとの間にもシース22が生じる。
このシース領域と、放電電極に挟まれていない放電空間領域を除き、エキシマ・ランプ内にはプラズマ20が均等に充満して存在している。ランプ内のプラズマ20は放電電極間の距離に若干のバラツキがあっても概略均一に分布する特性があるので、発光面全域における紫外線量の均一性が保たれる。
概略、このプラズマ20には、電離していない電気的に中性な放電用ガスの他に、電離電子と陽イオン化した放電用ガスが等量で混在していると考えられる。
そして、このプラズマ20は電気的には良導体であるため、放電電極17と放電電極18の放電距離方向において、プラズマ20の厚み分だけ、等価的に放電距離を近づける働きをする。
出力トランス16の出力インダクタンスL0は変化しないので、エキシマ・ランプの等価キャパシタンスが大きくなるということは、この時の共振回路の共振周波数fnは消灯時の共振周波数f0よりも低くなる、という共振特性の変化として現れる。
ここで、L0は図7(A)に示す出力トランス16の出力インダクタンスである。
R0nは図7(A)に示す出力トランス16のコイル巻線の、周波数fnにおける表皮効果を加味した抵抗。コイル巻線には高周波特性の良い線材を使用していることと、fnとf0の周波数の差は少ないので、各々の周波数において、その表皮効果を加味した抵抗値の差はほとんどないに等しいので、以後R0n≒R0とする。
CBaは放電電極17と概略密着する石英ガラスの誘電体によるキャパシタンスである。
CBbは放電電極18と概略密着する石英ガラスの誘電体によるキャパシタンスである。
CSaはシース21のキャパシタンスである。
CSbはシース22のキャパシタンスである。
RPnはランプ内の変位電流に反比例する負荷抵抗である。
この変位電流はこの共振回路を流れる伝導電流と同じ値である。
ここで、L0は図7(A)に示す出力トランス16の出力インダクタンスである。
R0は図7(A)に示す出力トランス16のコイル巻線の周波数f0における表皮効果を加味した抵抗である。
R0≒R0nである。
CSnは図7(B)のCBaとCBbとCSaそれにCSbを直列接続したときの合成キャパシタンスであり、
CSn=1/(1/CBa+1/CBb+1/CSa+1/CSb)である。
プラズマ20は電気的には良導体であるため、等価的に放電電極17と放電電極18を近づける働きをするから、
CSn>C0となる。
RPnはプラズマ20内の変位電流に反比例する抵抗である。
ここで、一点鎖線で示す特性図は図6(D)のエキシマ・ランプが消灯しているときの放電用ガスの絶縁破壊電圧VBの周波数特性である。
実線で示す特性図は図7(C)のエキシマ・ランプ連続点灯時の等価回路の共振特性である。
点線で示す特性図は図6(D)のエキシマ・ランプ消灯時の等価回路の共振特性である。
一点鎖線で示す特性図に関係する記号を以下に示す。
VBDCは直流電圧の印加による放電ガスの絶縁破壊電圧である。
VBiはイオン・プラズマ振動周波数fiにおいてVBDCより低下した放電ガスの絶縁破壊電圧である。
実線で示す特性図に関係する記号を以下に示す。
fnはL0にR0が直列接続されたものと、CSnに負荷抵抗RPnが直列接続されたものとの共振特性の中心周波数であり、fn=1/2π(L0CSn)1/2である。
CSn>C0であり、
fn<f0である。
判りやすくするために、出力トランスの1次側回路の影響は無視する。
負荷Qn=(R0+RPn)/2πfnL0である。
fnはf0より若干小さくなってはいるが、負荷抵抗RPnの影響が強く負荷QnはQ0より小さな値となる。
負荷Qn<Q0である。
特性図はfnで最大値Vnとなる緩く膨らんだ低い山型の曲線である。
その急峻さは、その高さが最大値の70%であるときの周波数の幅をfWnとするとQn=fn/fWnとなる。(ここで、fWnは図中には記載しない。)
Vnの点灯電圧のときに、100%の紫外線量とすると、VC又は、VFの電圧ではVnの約40%の紫外線量が得られる。
目的の紫外線量がこの程度でよければ、このf0Lやf0Hの周波数で連続点灯すれば目的は果たせるが、多くの場合、この値では紫外線量が不足する。
そこで、点火(トリガ)後、自動的に紫外線量を100%にする方法として、点火(トリガ)後、自動的に周波数をfnに変化させればVnの電圧が得られ、目的の100%の紫外線量が出せる。
又、80%の紫外線量が必要であれば、Vnの電圧の80%の電圧になるような周波数にすればよい。
最小の紫外線量は約40%であり、これ以下にすると、放電距離のバラツキが現れて、放電距離の長いところでプラズマが消滅し始める。放電容器の寸法精度や、放電電極と放電容器の密着精度をよくすれば、最小の紫外線量は40%以下にすることも可能である。
周波数の調整領域は、このfnを境にして周波数が高い方での調整領域と、反対に、周波数が低い方での調整領域が考えられる。周波数が高い方で調整すると、共振回路のインピーダンスは誘導性の影響が強くなる。周波数が低い方で調整すると、共振回路のインピーダンスは容量性の影響が強くなる。
ここで、容量性のインピーダンスは周波数が直流に近づくにつれて急激に無限大のインピーダンスに近づくという特性があるので、安定した紫外線量の調整が行いにくい。
一方、誘導性のインピーダンスは周波数が大きくなるにつれ、比例してインピーダンスが大きくなるという変化率一定の特性があるので、安定した紫外線量の調整が行える。
以上の理由で、紫外線量の調整領域はfnを境にして周波数が高い方での調整がよい。
図6(A)の高周波電源14は下記のような機能を有している。
高周波電源14は点火(トリガ)するために必要なタイマーを装備している。
この点火(トリガ)用タイマーは、エキシマ・ランプを点灯するためにスイッチ15を投入したときのみ、ある短時間の間だけ動作する。
この点火(トリガ)用タイマーが動作している間、高周波電源14は点火(トリガ)電圧が得られる周波数を出力する。
図6(D)において、放電用ガスの絶縁破壊電圧以上の点火(トリガ)電圧が得られる周波数はf0Lからf0Hの範囲内であるから、あらかじめf0Lからf0Hの範囲内のある値に設定しておく。
この例では、点火(トリガ)電圧が得られる周波数は、あらかじめf0Lに設定したと、仮定する。
VBiの電圧が印加されると、エキシマ・ランプは時間的にただちに点火(トリガ)による火花放電を生じるのではなく、点火(トリガ)電圧の印加直後から点火(トリガ)による火花放電が生じるまでには、ある時間を必要とする。
エキシマ・ランプの放電空間内における偶存電子をきっかけにして点火(トリガ)が行われているので、その時間にはバラツキがあり不確定である。この不確定の時間内においては点火(トリガ)電圧が印加され続ける。
又、この不確定の時間はエキシマ・ランプを点灯するためにスイッチ15を投入する度に、その都度変化する。
点火(トリガ)までの時間は、点火(トリガ)電圧が得られる周波数範囲f0Lからf0Hにおける印加電圧範囲VT0からVBiの大きさに概略反比例する傾向がある。
点火(トリガ)電圧の印加から、火花放電が生じるまでの時間が不確定になるので、点火(トリガ)用タイマーの設定時間は、このバラツキの最大値を包含できる値で、尚且つ、点火(トリガ)に続く連続点灯に支障がでないような最小値に設定する。
以上のような設定により、点火(トリガ)は点火(トリガ)用タイマーの設定時間内で行われる。
その理由は、プラズマの成長と共にエキシマ・ランプのキャパシタンスが大きくなり、高周波電源の出力トランスのインダクタンスとの共振周波数が周波数の低い方へ推移するためである。
エキシマ・ランプの動作点が図6(D)のC点に移ってからも、点火(トリガ)用タイマーの設定時間は必ず余り、動作を継続している。
この余った時間の間は、図6(D)のC点の電圧VCで連続点灯を続ける。
目的とする紫外線量がこの値でよければ、点火(トリガ)用タイマーの設定時間終了後の連続点灯時においても、引続きf0Lの周波数を出力し続ければ目的を果たせる。
そのような場合には、点火(トリガ)用タイマーの設定時間終了後の連続点灯時には、その目的とする紫外線量が得られる電圧が出力される周波数に、自動的に変化させればよい。
例えば、連続点灯時に100%の紫外線量を得ようとするときは、連続点灯時の周波数をfnに設定しておけば、自動的にVnの電圧が得られ、目的が果たされる。
出力電力容量が大きい高周波電源を使用して、点火(トリガ)後に100%の紫外線量を得ようとするとき、周波数を変化させる速度が速すぎると、グロー状放電のプラズマが維持できず、大電流によるプラズマ・ピンチ効果を生じプラズマが収束してしまう。この放電形態は火花放電状で、太く、明るいストリーマが数多く発生する。このような放電状態になると紫外線量は一気に低下し、エキシマ・ランプを流れる電流も増大してしまい、効率の低下、発光面全域で紫外線量の不均一が生じる。
エキシマ・ランプの動特性を判り易くする都合上、図6(A)に示したエキシマ・ランプの放電電極17と放電電極18の各々を、等しくn個の微小区間に区切り、その微小区間を、図8(A)に示すような等価微小電極対(1)〜(n)に置き換え、以下のような静特性の遷移順序に従って、総合的な動特性を説明する。
図8(A)に、エキシマ・ランプの放電電極対を等価微小電極対に置き換えた時の、消灯時における静特性を説明するための簡略回路を示す。
このエキシマ・ランプは図6(A)に示したエキシマ・ランプの放電電極対を等しくn個の微小区間に区切り、その各々を微小電極対(1)〜(n)として表記したものである。
ここでは、高周波電源の出力はスイッチが切られているので、その電力は出力トランスには印加されていない。よって、エキシマ・ランプは消灯している。当然、放電管内にはプラズマは存在しない。
ここで、L0は図8(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図8(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
ΔC1、ΔC2、ΔC3、・・・ΔCnは微小電極対(1)〜(n)の個々のキャパシタンスで、その値は全て同じでΔCとする。
これらは図6(B)と同様に微小電極対に挟まれた石英ガラスと放電用ガスの誘電体によるキャパシタンスである。
ここで、L0は図8(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図8(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
C0はΔC1、ΔC2、ΔC3、・・・ΔCnが並列接続されている総合キャパシタンスで、
C0=ΔC1+ΔC2+ΔC3+・・・+ΔCn=n×ΔCである。
ωL=1/ωCの共振条件より、
L=1/(2πf)2Cとなる。
ここで共振周波数fはイオン・プラズマ振動周波数fiとし、キャパシタンスCはエキシマ・ランプのキャパシタンスC0にすると、出力トランスの出力インダクタンスL0は、
L0≒1/(2πfi)2C0のように製作する。
このように製作されたL0とエキシマ・ランプのキャパシタンスC0による共振周波数をf0とすると、
f0=1/2π(L0C0)1/2≒fiである。
この式は、出力トランスのL0とエキシマ・ランプのキャパシタンスC0による共振周波数f0が、エキシマ・ランプに封入されている放電用ガスのイオン・プラズマ振動周波数fiに概略一致している、ということである。
判りやすくするために、出力トランスの1次側回路の影響は無視すると、
Q0=2πf0L0/R0である。
ここで、R0はL0のコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
R0≪2πf0L0の関係があるので、Q0は大きな値となり、特性図はf0で共振電圧が最大値VT0となる鋭く尖った曲線である。
その急峻さは、その高さが最大値VT0の約70%であるときの周波数の幅をfW0とするとQ0=f0/fW0となる。(ここで、fW0は図中には記載しない。)
図9(A)に、エキシマ・ランプの放電電極対を等価微小電極対に置き換えた時の、点火(トリガ)時における静特性を説明するための簡略回路を示す。
図9(A)は、スイッチが投入され、図8(D)のf0における電圧VT0が印加されて、火花放電が生じた瞬間を示した模式図を示す。
点火(トリガ)電圧が印加されると、エキシマ・ランプ内の偶存電子が高電圧の電界により瞬時に加速されて高速度のエネルギーを得て放電用ガスを電離し始める。不確定な時間を経過し、電離電子や陽イオンの密度がある値に達すると、火花放電を生じる。
この火花放電は誘電体バリア放電と概略同じ火花の形態であるが、誘電体バリア放電のように多くのマイクロ・ディスチャージは生じない。1〜数箇所の微小電極対において火花放電が生じる。
この図では、仮に、微小電極対(1)の1箇所において火花放電が生じたことにしてある。
その火花放電により、その微小電極対(1)に挟まれる放電空間が短絡されたときの等価回路を示す。
この火花放電により、図8(B)におけるΔC1は図9(B)のΔCTとΔRTの等価回路に置き換わる。
L0は図9(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図9(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
ΔCTは微小電極対(1)の面積に接触している石英ガラスを誘電体とするキャパシタンスである。
放電空間は火花放電で短絡されるため、そのキャパシタンスはなくなっている。
ΔCT>ΔC1の関係となる。
ΔC2、ΔC3、・・・ΔCnは変化しない。
ΔRTは火花放電の電流値に反比例して生じる抵抗値である。
L0は図9(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図9(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
CTは微小電極対(2)〜(n)の面積に接触している石英ガラスと放電ガスを誘電体とするキャパシタンスΔC2、ΔC3、・・・ΔCnの総合キャパシタンスである。
CT=ΔC2+ΔC3+・・・+ΔCn=(n−1)×ΔCである。
ΔCTは微小電極対(1)の面積に接触している石英ガラスを誘電体とするキャパシタンスである。
放電空間は火花放電で短絡されるため、そのキャパシタンスはなくなっている。
ΔCT>ΔC1である。
ΔRTは火花放電の電流値に反比例して生じる抵抗で、これはL0とCTで構成される共振回路に対して結合キャパシタンスとして働くΔCTを介しての負荷抵抗となる。
fTは共振周波数で、
fT≒1/2π{L0(CT+ΔCT)}1/2である。
VTは周波数fTのときの共振電圧である。
負荷抵抗ΔRTが接続された共振回路の良さを示す負荷QTは次式のようになる。
負荷QT=RT/2πfTL0である。
fT<f0の関係になるが、その差は若干の値であり、fT≒f0となる。
負荷QT<Q0となり若干負荷QTが小さくなる。
図10(A)は、火花放電が生じた経路の跡に残留した電子と陽イオンが収束し、概略球形状の小さなグロー状放電の発光を伴うプラズマの小集団が取り残された瞬間を示した模式図である。
プラズマの小集団と一方の微小電極(1)に概略密着する石英ガラスとの間にはシースと呼ばれるプラズマを形成できない領域を生じる。
同じく、そのプラズマの小集団は他の一方の微小電極(1)に概略密着する石英ガラスとの間にもシースを生じる。
このプラズマの小集団は微小電極対(1)から加えられる電圧エネルギーの強さによって、その密度と大きさを変える。高周波電源の出力電力容量が小さくて、そのプラズマの小集団を維持できる電力が得られなければ、プラズマの小集団は拡散して消滅する。高周波電源の出力電力容量が十分であれば、そのプラズマの小集団を維持できる。ピンチ効果によりプラズマの小集団は集団を維持しようとするが、ここでは微小電極対(1)の間に生じたプラズマの小集団は図中矢印で示すように、隣接する微小電極対(2)に加えられている電圧エネルギーのある方向へと拡散する挙動を示す。
その微小電極対(1)に挟まれた放電空間にシースを介して小さなグロー状放電の発光を伴うプラズマの小集団が残留した瞬間の等価回路を示す。
火花放電からプラズマの小集団への変化により、図9(B)におけるΔCTとΔRTは図10(B)のΔCS1とΔRP1の等価回路に置き換わる。
L0は図10(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図10(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
ΔCS1は微小電極対(1)の面積に接触している石英ガラスを誘電体とするキャパシタンスとそれに直列に接続されるシース部のキャパシタンスの合成キャパシタンスである。
ΔCS1<ΔCTの関係となる。
ΔC2、ΔC3、・・・ΔCnは変化しない。
ΔRP1はΔCS1を介してプラズマの小集団内を流れる変位電流の電流値に反比例して生じるプラズマの小集団の抵抗値である。
L0は図10(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図10(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
C1は図9(C)のCTと同じで、微小電極対(2)〜(n)の面積に接触している石英ガラスと放電ガスを誘電体とするキャパシタンスΔC2、ΔC3、・・・ΔCnの総合キャパシタンスである。
C1=CT=ΔC2+ΔC3+・・・+ΔCn=(n−1)×ΔCである。
CS1=ΔCS1=1×ΔCSである。
CS1<ΔCTの関係となる。
RP1=ΔRP1である。
RP1はL0とC1で構成される共振回路に対して結合キャパシタンスとして働くCS1を介しての負荷抵抗となる。
f1は共振周波数で、
f1≒1/2π{L0(C1+CS1)}1/2である。
V1は周波数f1のときの共振電圧である。
負荷抵抗RP1が接続された共振回路の良さを示す負荷Q1は次式のようになる。
負荷Q1=RP1/2πf1L0である。
f1>fTの関係になるが、その差は若干の値であり、f1≒fTとなる。
グロー状放電するプラズマの小集団に流れる少ない電流に関係するRP1より、火花放電による大きな電流に関係するΔRTの方が小さな値となる。
RP1>ΔRTとなり、共振回路の負荷RP1はΔRTのときより軽くなる。
負荷Q1>負荷QTとなり、若干負荷Q1が大きくなる。
図11(A)に、エキシマ・ランプの放電電極対を等価微小電極対に置き換えた時の、プラズマの成長過程における静特性を説明するための簡略回路を示す。
図11(A)は、微小電極対(1)の間に取り残された少量のグロー状放電の発光を伴うプラズマの小集団が、微小電極対(2)の電界エネルギーを得て拡散拡大し、成長した様子を示す模式図である。
成長したプラズマと一方の微小電極(1)と(2)に概略密着する石英ガラスとの間にはシースと呼ばれるプラズマを形成できない領域を生じる。
同じく、その成長したプラズマは他の一方の微小電極(1)と(2)に概略密着する石英ガラスとの間にもシースを生じる。
しかし、ここでは微小電極対(1)と(2)の間に生じた成長したプラズマは図中矢印で示すように、続いて隣接する微小電極対(3)に加えられている電圧エネルギーのある方向へと、更に拡散する挙動を示す。
図11(B)は、微小電極対(1)の間に取り残された少量のグロー状放電の発光を伴うプラズマの小集団が、微小電極対(2)の電界エネルギーを得て拡散拡大し、成長したときの等価回路を示す。
プラズマの小集団から成長したプラズマへの変化により、図10(B)におけるΔC2は図11(B)のΔCS2とΔRP2の等価回路に置き換わる。
L0は図11(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図11(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
ΔCS1とΔCS2は微小電極対(1)と(2)の面積に各々接触している石英ガラスを誘電体とするキャパシタンスとそれに直列に接続されるシース部のキャパシタンスの合成キャパシタンスである。
ΔCS2=ΔCS1の関係となる。
ΔC3、・・・ΔCnは変化しない。
ΔRP1はΔCS1を介して、ΔRP2はΔCS2を介してプラズマ内を流れる変位電流の電流値に反比例して生じるプラズマの抵抗値である。
L0は図11(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図11(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
C2は微小電極対(3)〜(n)の面積に接触している石英ガラスと放電ガスを誘電体とするキャパシタンスΔC3、・・・ΔCnの総合キャパシタンスである。
C2=ΔC3+・・・+ΔCn=(n−2)×ΔCである。
ΔCS1=ΔCS2=ΔCSである。
CS2=ΔCS1+ΔCS2=2×ΔCSである。
CS2>CS1の関係となる。
RP2=1/{(1/ΔRP1)+(1/ΔRP2)}である。
ここで、ΔRP1=ΔRP2である。
RP2はL0とC2で構成される共振回路に対して結合キャパシタンスとして働くCS2を介しての負荷抵抗となる。
f2は共振周波数で、
f2≒1/2π{L0(C2+CS2)}1/2である。
V2は周波数f2のときの共振電圧である。
負荷抵抗RP2が接続された共振回路の良さを示す負荷Q2は次式のようになる。
負荷Q2=RP2/2πf2L0である。
f2<f1の関係になるが、その差は若干の値であり、f2≒f1となる。
RP2<RP1であり、共振回路の負荷抵抗RP2はRP1のときより重くなる。
負荷Q2<負荷Q1となり、若干負荷Q2が小さくなる。
その過程で共振周波数はf2>f3>f4>・・・>fnと低下してゆく。
又、共振回路の良さを示す負荷Qは負荷Q2>負荷Q3>負荷Q4>・・・>負荷Qnと小さくなり、その特性も鋭く尖った高い曲線から緩く膨らんだ低い山型の曲線へと推移する。
図12(A)に、エキシマ・ランプの放電電極対を等価微小電極対に置き換えた時の、連続点灯時における静特性を説明するための簡略回路を示す。
図12(A)は、微小電極対(1)〜(n)の間にグロー状放電の発光を伴うプラズマが充満した様子を示す模式図である。
充満したプラズマと一方の微小電極(1)〜(n)に概略密着する石英ガラスとの間にはシースと呼ばれるプラズマを形成できない領域を生じる。
同じく、その充満したプラズマは他の一方の微小電極(1)〜(n)に概略密着する石英ガラスとの間にもシースを生じる。
図12(B)は、微小電極対(1)〜(n)の間にグロー状放電の発光を伴うプラズマが充満したときの等価回路を示す。
プラズマの充満により、図11(B)におけるΔC3〜ΔCnは図12(B)のΔCS3とΔRP3〜ΔCSnとΔRPnの等価回路に置き換わる。
L0は図12(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図12(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
ΔCS〜ΔCSnは微小電極対(1)〜(n)の面積に各々接触している石英ガラスを誘電体とするキャパシタンスとそれに直列に接続されるシース部のキャパシタンスの合成キャパシタンスである。
ΔRP1〜ΔRPnはΔCS1〜ΔCSnを介してプラズマ内を流れる変位電流の電流値に反比例して生じるプラズマの抵抗値である。
ΔCS1=ΔCS2=・・・=ΔCSnの関係となる。
L0は図12(A)に示す出力トランスの出力インダクタンスである。
R0は図12(A)に示す出力トランスのコイル巻線のf0における表皮効果を加味した抵抗である。
CSn=ΔCS1+ΔCS2+・・・+ΔCSn=n×ΔCSである。
RPn=1/{(1/ΔRP1)+(1/ΔRP2)+・・・+(1/ΔRPn)}である。
ここで、ΔRP1=ΔRP2=・・・=ΔRPnである。
L0とCSnで構成される共振回路に対してR0とRPnが直列に接続される。
fnは共振周波数で、
fn≒1/2π(L0×CSn)1/2である。
Vnは周波数fnのときの共振電圧である。
L0とCSnで構成される共振回路に対してR0と負荷抵抗RPnが直列に接続されたときの負荷Qnは次式のようになる。
負荷Qn=(R0+RPn)/2πfnL0である。
ここで、エキシマ・ランプ内のプラズマはこれ以上に拡散できないためにキャパシタンスは一定値となり、共振周波数もfnで安定する。負荷Qnも変化しない。
この特性曲線のfnからそれより高い周波数範囲で、周波数を調整することにより、エキシマ・ランプの紫外線量の調整が可能となる。周波数の上限はf0より少し高い周波数まで使用できる。そのとき、紫外線量は最大値の約40%である。
このとき、厳密には、共振周波数fnと負荷Qnはプラズマの濃度変化に比例して変化していると考えられるが、実用上では、その変化は認められない。
図13は、出力周波数を自動調整できる大電力容量の高周波電源23の出力端子24と25に、大型エキシマ・ランプ26を接続した構成である。
大電力容量の高周波電源23は、出力周波数を自動調整できる大電力容量の電力増幅部27に、<1>〜<n>で示すN個(Nユニット)の1次コイルを巻付けた出力トランス28を接続したものである。
出力周波数を自動調整できる大電力容量の電力増幅部27は、大型エキシマ・ランプ26を点灯、消灯するためのON−OFFスイッチ29と、発信器30と、発信器30の発振周波数を制御する制御部31と、発信器30の出力を増幅する[1]〜[N]で示すN台(Nユニット)の電力増幅器32で構成される。
[1]〜[N]で示すN台(Nユニット)の電力増幅器32は全て同じ回路構成のものである。1台の出力電力容量をP[W]とすると、総合出力電力容量PN=N×P[W]となる。
又、出力トランス28は空芯ボビンに2次コイルを先に単層ソレノイド巻きし、この2次コイルの上層に絶縁シートを巻きつけ、更に、この絶縁シートの上層に1次コイルを巻きつける構造のものである。
1次コイルの巻数は1〜2回であり、<1>〜<n>で示す1次コイルどうしを隣接してN個(Nユニット)巻きつけるようにする。
[1]〜[N]で示すN台(Nユニット)の電力増幅器32の各々の出力を、この<1>〜<n>で示すN個(Nユニット)の1次コイルに接続し、[1]〜[N]で示すN台(Nユニット)の電力増幅器32の出力電力を、<1>〜<n>で示すN個(Nユニット)の1次コイルに伝達し、最終的に1個の2次コイルに全電力を集合させるものである。
エキシマ・ランプの大きさが変わり、その消費電力容量が変わった時に、電力増幅器32と出力トランス28の1次コイルのN数(Nユニット数)を決めるだけでよいから、高周波電源の出力電力容量を変更する際に、新たに、高周波電源の設計を、始めから行わなくてもよくなり設計工数の低減が行え、製品納期の短縮化ができる。
使用する部品の種類は少ない数で標準化できるために在庫経費が減り、管理も容易になり、製造管理費用の低減化が図れる。
エキシマ・ランプは放電管であり、その基本的な放電電圧の特性は、放電用ガスの圧力と放電ギャップで決まる概略定電圧特性になっている。
図14の横軸は高周波電源が出力する周波数、縦軸は高周波電源の出力トランスとエキシマ・ランプの共振回路で生じる共振電圧で、この電圧は紫外線量に概略比例する。
Nユニットの特性曲線はエキシマ・ランプに対して最適な出力電力容量の高周波電源で連続点灯している状態で、高周波電源の発振周波数を変化させて、紫外線量を制御したものである。
N−1ユニットの特性曲線はエキシマ・ランプに対して出力電力容量不足の高周波電源で連続点灯している状態で、高周波電源の発振周波数を変化させて、紫外線量を制御したものである。
N+1ユニットの特性曲線はエキシマ・ランプに対して出力電力容量過剰の高周波電源で連続点灯している状態で、高周波電源の発振周波数を変化させて、紫外線量を制御したものである。
目視観測による点灯状態は、エキシマ・ランプ内全体が均一なグロー放電状であり、それに加えて濃霧がランプ内において速い速度で渦巻いているような状態である。プラズマ・ピンチ効果が生じる直前の状態である。
周波数fNでは、共振特性曲線のb点となり、エキシマ・ランプに印加される電圧はVである。この時、最小の紫外線量が得られ、このとき最大紫外線量の約40%が得られる。
目視観測による点灯状態は、エキシマ・ランプ内全体がグロー状放電で均一に発光している。霧状の放電は見られない。
周波数調整範囲fadjNは紫外線量を周波数で調整する範囲である。
エキシマ・ランプ電圧範囲VadjNはエキシマ・ランプ全体が均一に発光し、紫外線量を調整できる範囲である。
ちなみに、fnから周波数を順次下げてゆくと、a点からc点までの範囲では急激に紫外線量が減衰し、c点を越えると一気に消灯する。
又、fNから周波数に順次上げてゆくと、b点より周波数が高くなるに従い、電極のバラツキ等により、放電距離が離れている位置において消灯し始めるが、放電距離が近い位置においてはかなり高い周波数まで弱いグロー状放電の発光を維持する。
目視観測による点灯状態は、エキシマ・ランプ内全体が均一なグロー放電状であり、それに加えて薄い霧がエキシマ・ランプ内においてゆっくりと渦巻いているような状態である。プラズマ・ピンチ効果が生じる大分手前の状態である。
周波数fN-1では、共振特性曲線のe点となり、エキシマ・ランプに印加される電圧はVである。
目視観測による点灯状態は、エキシマ・ランプ内全体がグロー状放電で均一に発光している。霧状の放電は見られない。
周波数調整範囲fadjN-1は紫外線量を周波数で調整する範囲である。
エキシマ・ランプ電圧範囲VadjN-1はエキシマ・ランプ全体が均一に発光し、紫外線を調整できる範囲である。
ちなみに、fnから周波数を順次下げてゆくと、d点からf点の範囲では急激に紫外線量が減衰し、f点を越えると一気に消灯する。
又、fN-1から周波数を順次上げてゆくと、e点より周波数が高くなるに従い、電極のバラツキ等により、放電距離が離れている位置において消灯し始めるが、放電距離が近い位置においてはかなり高い周波数まで弱いグロー状放電の発光を維持する。
ここでは、その定電圧特性が現れてa点に抑えられ、エキシマ・ランプに印加される電圧はVnになる。
エキシマ・ランプに投入される電圧がVnb−Vnに相当する分だけ過剰になり、その余剰電圧により大きな電流が流れる。この電流によりプラズマ・ピンチ効果を生み濃霧状のプラズマを収束させ、火花放電状で、太く、明るいストリーマを数多く発生させてしまう。ストリーマの数は余剰電圧量に概略比例する。このストリーマ数に比例して、更にVnは若干低下する。
このような放電状態になると紫外線量は、若干量低下した電圧Vnには比例せずに大分低下する。
エキシマ・ランプを流れる電流も増大してしまい、効率の低下、発光面全域で紫外線量の不均一が生じる。
この特性曲線において、g′点付近において最大の紫外線量が得られる。Nユニットのときの100%を基準にすると、同等の紫外線量が得られるが、1ユニット分の電力容量が増している分だけ、紫外線出力対入力電力比の効率が低下している。
余剰電圧が微量であれば、伝染拡大はランプ全体に波及せずに途中で拡散を停止する。周波数の変動以外の理由でもこのようなプラズマ・ピンチ効果によるストリーマの発生やその伝染が生じることがある。
この時、最小の紫外線量が得られ、このときNユニットの最大紫外線量の約40%が得られる。
目視観測による点灯状態は、エキシマ・ランプ内全体がグロー状放電で均一に発光している。霧状の放電は見られない。
周波数調整範囲fadjN+1は紫外線量を周波数で調整する範囲である。
エキシマ・ランプ電圧範囲はVadjN+1にならずVadjNに抑えられる。
VadjNはエキシマ・ランプ全体が均一に発光し、紫外線を調整できる範囲である。
ちなみに、fn′から周波数を順次下げてゆくと、g′からa点の範囲では太く、明るいストリーマが生じ、その数が増大する。急激に紫外線量が減衰し、エキシマ・ランプ電流が増大する。a点を過ぎてi点の範囲でも太く、明るいストリーマはなくならず、その数は減少する。i点を越えj点の範囲では急激に紫外線量が減衰し、j点を越えると一気に消灯する。
又、fN+1から周波数を順次上げてゆくと、h点より周波数が高くなるに従い、電極のバラツキ等により、放電距離が離れている位置において消灯し始めるが、放電距離が近い位置においてはかなり高い周波数まで弱い発光を維持する。
このような中で、ある消費電力容量のエキシマ・ランプをNユニットの高周波電源で点灯した時にはその容量が不足し、同じく、N+1ユニットの高周波電源で点灯した時にはその容量が多過ぎるようなときには、Nユニットの高周波電源の出力トランスに印加されている電源電圧を若干大きな電圧に調整すると、このエキシマ・ランプを最高の効率で点灯できる。
又、N+1ユニットの高周波電源の出力トランスに印加されている電源電圧を若干少ない電圧に調整しても、このエキシマ・ランプを効率良く点灯できる。
図15,図16に、エキシマ・ランプの点灯装置における基本回路構成図を示す。
エキシマ・ランプの点灯装置は、出力周波数を自動調整できる高周波電源『1』の出力端子『2』と『3』に、エキシマ・ランプ『4』を接続した構成である。
出力周波数を自動調整できる高周波電源『1』は、エキシマ・ランプ『4』を点灯、消灯するためのON−OFFスイッチ『5』と、ロジックICを用いた論理制御部『6』と、演算増幅器とアナログ・スイッチを用いた直流アナログ電圧制御部『7』と、演算増幅器とロジックICを用いた電圧制御発信部『8』と、ロジックICとトランジスターとパワーMOS−FETを用いた電力増幅器『9』と、出力トランス『10』と、デカップリング・コンデンサ『11』と、直流電源部『12』で構成する。
ノーマル・オープン接点NOとノーマル・クローズ接点NCそれにコモン端子COMを有するオルターネート型トグル・スイッチである。
ノーマル・オープン接点NOとノーマル・クローズ接点NCは論理制御部『6』のフリップ・フロップ『13』の/SET入力と/RESET入力に各々接続する。
フリップ・フロップ『13』はスイッチ『5』をON−OFFするときに接点の振動で発生するチャタリングをなくすためのSET−RESET型フリップ・フロップとして使用する。
エキシマ・ランプを点灯するためにスイッチ『5』を“ON”すると、フリップ・フロップ『13』のQ出力にはチャタリングのない論理“1”が出力される。
フリップ・フロップ『13』のQと/Q出力は、R3とC1の時定数回路と、2入力ANDゲート『14』とインバータ『16』で構成するところの、タイマー回路『15』と、後述する電力増幅器『9』の動作を可能にするイネーブル入力端子Eに接続する。
2入力ANDゲート『14』の出力と、その出力を論理反転するインバータ『16』の出力は直流アナログ電圧制御部『7』に接続する。
2入力ANDゲート『14』の出力は、点火(トリガ)電圧が得られる周波数を出力するためのタイマーによるタイミング信号T0で、スイッチ『5』を“ON”してから約0.1秒間論理“1”を出力する。
インバータ『16』の出力は連続点灯電圧が得られるタイミング信号Tで、スイッチ『5』を“ON”してから、タイマー信号を約0.1秒間論理“0”を出力した後、論理“1”に切り替わり、その後スイッチ『5』が“OFF”されるまで論理“1”を出力し続ける。
タイマーによるタイミング信号T0とタイミング信号Tにより点火(トリガ)電圧と連続点灯電圧を自動的に切り替える。
可変抵抗RV1と可変抵抗RV2で発生させる電圧の代わりに、ディジタル/アナログ変換器を使用して、外部よりディジタル信号で遠隔制御してもよい。
演算増幅器『17』で構成される定電圧源の出力はアナログ・スイッチ『19』に入力し、タイミング信号T0の論理“1”でONする。
演算増幅器『18』で構成される定電圧源の出力はアナログ・スイッチ『20』に入力し、タイミング信号Tの論理“1”でONする。
アナログ・スイッチ『19』と『20』の出力は階段状に変化する電圧信号である。
直流電圧掃引部『21』は、この階段状に変化する電圧信号を連続的に変化させる。
ここでは、簡易的に、R4とC2で構成する積分回路としている。
直流電圧掃引部『21』の出力電圧VVCOは電圧制御発信部『8』の入力に接続する。
キャパシタンスC3に積分された電圧値が電源電圧の約1/2になったとき、バッファ・ゲート『23』の出力は論理“1”になる。その切り替わった論理“1”出力により、リセット・スイッチ『24』を“ON”してキャパシタンスC3に積分された電圧を0[V]にする。
以後、キャパシタンスC3は再び抵抗R5を介して電流を積分しはじめる。この繰り返しにより発信を継続する。
この電圧制御発信器は入力される電圧VVCOに概略比例した周波数を論理レベルで出力する。ここではVVCO=+4.5[V]で約9[MHz]、VVCO=+2.6[V]で約2[MHz]である。
この周波数はエキシマ・ランプを駆動する周波数の2倍であるが、この出力は論理“1”と論理“0”の時間比であるところのデューティが正確に1対1でないので、これを1対1にするために、この出力をロジックICの1/2分周器『25』の入力に接続する。
論理Qの出力に、R6aとC4aの時定数回路と、2入力ANDゲート26aで構成する、立ち上がりエッジ遅延回路を接続する。
反転論理/Qの出力に、R6bとC4bの時定数回路と、2入力ANDゲート26bで構成する、立ち上がりエッジ遅延回路を接続する。
ここで、R6a=R6b、C4a=C4bにする。
この目的は、出力トランスを高速でプッシュ・プル駆動するとき、パワーMOS−FET32a、33aが“ON”から“OFF”へ切り替わると同時にパワーMOS−FET32b、33bが“OFF”から“ON”へ切り替わるが、この切り替わりの瞬間に同時に“ON”してしまうというクロス・オーバが生じてしまう、勿論、次の半周期でパワーMOS−FETの“ON”/“OFF”が逆になる時にも、クロス・オーバが生じてしまうが、このクロス・オーバを少なくし、損失電力を少なくするためのものである。
論理Q側の2入力ANDゲート26aの出力と、反転論理/Q側の2入力ANDゲート26bの出力は電力増幅器『9』のQと/Q入力に接続する。
エキシマ・ランプを点灯するためにスイッチ『5』を“ON”すると、電力増幅器『9』がイネーブルとなり、論理Qと反転論理/Qの周波数信号が、ノンインバーティング・バッファ28aと28bに入力される。
ノンインバーティング・バッファ28aと28bは、パワーMOS−FETのゲート容量の電荷をより高速に放電する目的で、論理“0”時の吸い込み電流を大きくするためである。
R8a、トランジスター29a、R9aで構成される回路は、制御用+5Vの直流電源V1で動作している論理Q側の電圧レベルを、制御用+12Vの直流電源V2の電圧レベルに変換するレベル変換回路である。
R8b、トランジスター29b、R9bで構成される回路は、制御用+5Vの直流電源V1で動作している反転論理/Q側の電圧レベルを、制御用+12Vの直流電源V2の電圧レベルに変換するレベル変換回路である。
この目的はパワーMOS−FETのゲート電圧をより高速に立ち上げ、そのスピードを速めるためである。
トランジスター30aと31aはコンプリメンタリー型のエミッター・フォロワーでパワーMOS−FETのゲート容量の電荷をより高速に充放電する目的のものである。
トランジスター30bと31bはコンプリメンタリー型のエミッター・フォロワーでパワーMOS−FETのゲート容量の電荷をより高速に充放電する目的のものである。
他の一方のコンプリメンタリー型のエミッター・フォロワーの出力はゲート抵抗R10bとR11bを介して2個のパワーMOS−FET32b、33bのゲートに接続する。
ここで、2個のパワーMOS−FETは並列に接続する。
パワーMOS−FETのソースはGNDへ接続する。
パワーMOS−FET32a、33aのドレインは出力トランス『10』の1次コイルのプッシュ側巻き線34に接続する。
パワーMOS−FET32b、33bのドレインは出力トランス『10』の1次コイルのプル側巻き線35に接続する。
出力トランス『10』の1次コイルのコモン端子36は電源のリップルを除去するデカップリング・コンデンサ『11』のプラス極性端子に接続する。
デカップリング・コンデンサ『11』のマイナス極性端子はパワーMOS−FETのソースのGNDへ接続する。
デカップリング・コンデンサ『11』のプラス極性端子に電力用+12Vの直流電源V3のプラス極性電圧に接続する。
デカップリング・コンデンサ『11』のマイナス極性端子に電力用+12Vの直流電源V3の0V電圧を接続する。
パワーMOS−FETが各々“OFF”するときに、各々のドレインに、
V=L(dI/dt)により約100Vのフライバック電圧を発生する。
このフライバック電圧は空芯出力トランス『10』の1次対2次巻線の巻数比により昇圧される。
あらかじめ、スイッチ『5』は“OFF”しておく。
点灯装置を交流の主電源に接続すると、制御用の直流電源V1、レベル変換用の直流電源V2、電力供給用の直流電源V3が動作を開始し、各々、直流電圧を発生し、全ての電子回路が動作を開始する。
論理制御部『6』では、電力増幅器『9』の動作を可能にするイネーブル信号Eと、点火(トリガ)のためのタイミング信号T0と、連続点灯のためのタイミング信号Tを発生させる機能を持っている。
ここで、タイミング信号Tは論理“1”で出力されており、電圧制御発信部『8』は連続点灯のための周波数で発信している。しかし、この信号は電力増幅器『9』のイネーブル信号Eが論理“1”にならないと高周波電源『1』からは出力されないので、エキシマ・ランプ『4』は消灯している。
タイマーが動作中に、点火(トリガ)のための火花放電がエキシマ・ランプ『4』内で生じる。
タイマーの設定時間が終了すると、このタイミング信号T0は論理“0”に戻る。
タイミング信号T0が論理“0”に戻ると、同時にタイミング信号Tが論理“1”になり、エキシマ・ランプ『4』を連続点灯動作に導く。
以後、スイッチ『5』を“OFF”するまで、エキシマ・ランプ『4』は点灯し続ける。
スイッチ『5』を“OFF”すると、イネーブル信号Eがなくなり、電力増幅器『9』の動作を止め、エキシマ・ランプ『4』を消灯させる。
この時、タイミング信号Tは論理“1”のままであり、電圧制御発信部『8』は連続点灯の周波数を発信し続けているが、電力増幅器『9』の動作が止められているので、エキシマ・ランプ『4』を連続点灯させる電圧は出力されていない。
可変抵抗RV1と演算増幅器『17』で構成される、ランプを点火(トリガ)するための周波数を得るための定電圧源の電圧を導通させる。
タイミング信号T0が論理“0”になると、その電圧を非導通にさせる。
エキシマ・ランプを点火(トリガ)するための周波数は可変抵抗RV1で希望する周波数に設定できる。
ここでは、放電用ガスのイオン・プラズマ振動周波数に概略設定する。
タイミング信号Tが論理“1”でアナログ・スイッチ『20』を“ON”させる。
可変抵抗RV2と演算増幅器『18』で構成される、エキシマ・ランプを連続点灯するための周波数を得るための定電圧源の電圧を導通させる。
タイミング信号Tが論理“0”になると、その電圧を非導通にさせる。
タイミング信号Tはタイミング信号T0が論理“1”の時のみ、論理“0”である。
エキシマ・ランプを連続点灯するための周波数は可変抵抗RV2で希望する周波数に設定できる。
可変抵抗RV1と可変抵抗RV2の設定例1としては、点火(トリガ)電圧が得られる周波数>100%の紫外線量が得られる連続点灯の周波数であり、可変抵抗RV1の設定電圧値>可変抵抗RV2の設定電圧値にする。
可変抵抗RV1と可変抵抗RV2の設定例2としては、点火(トリガ)電圧が得られる周波数<40%の紫外線量が得られる連続点灯の周波数であり、可変抵抗RV1の設定電圧値<可変抵抗RV2の設定電圧値にする。
アナログ・スイッチ『19』と『20』の出力は時間軸において階段状に変化する電圧信号であるため、直流電圧掃引部『21』は、この階段状に変化する電圧信号を連続変化させる機能を持っている。
ここでは、簡易的に、R4とC2で構成する積分回路としているので、その積分曲線に倣って周波数が掃引されるような電圧が出力される。
直流電圧掃引部『21』の出力電圧VVCOは電圧制御発信部『8』の入力に接続する。
ロジック信号レベルの周波数出力は、相補出力型であり、論理Qと、その反転論理/Qの2つの出力が有る。
論理Qとその反転論理/Qは、各々が論理“0”から論理“1”に切り替わる瞬間を若干遅延させている。Qと/Qの論理が切り替わる瞬間、互いの信号の重なりであるクロス・オーバを無くすような信号に加工してある。
論理Q側の出力と、反転論理/Q側の出力は電力増幅器『9』のQと/Q入力に接続する。
この出力周波数はVVCO=+4.5[V]で約4.5[MHz]、VVCO=+2.6[V]で約1[MHz]である。
He=10.48[MHz]、Ne=4.66[MHz]、Ar=3.31[MHz]、Kr=2.29[MHz]、Xe=1.83[MHz]、Rn=1.4[MHz]となる。
スイッチ『5』が“ON”されて、イネーブル信号Eが論理“1”になると、+5[V]レベルの論理Qと反転論理/Qの周波数信号は+12[V]レベルの論理Qと反転論理/Qの周波数信号にレベル変換される。これはパワーMOS−FETのゲート電圧を高速で立ち上げ、パワーMOS−FETを高速で“ON”させるためである。
又、コンプリメンタリー型のエミッター・フォロワー回路はパワーMOS−FETのゲート容量の電荷をより高速に充放電し、その“ON”“OFF”速度を高速にする目的のものである。
論理Qと反転論理/QのパワーMOS−FETは入力されている周波数で交互に“ON”“OFF”を繰り返す。
I=(E/L)t[A]であり、
時間t[Sec]に比例して単調増加する電流となる。
V=L(dI/dt)[V]である。
ここで、dI=Iであるから、前式を代入して、
V=L(dI/dt)=L{(E/L)t/dt}=Et/dtとなる。
この式より、パワーMOS−FETが“OFF”する時間dtを少なくすれば、より大きなフライバック電圧Vが得られることが判る。
昇圧された2次電圧は出力トランス『10』の出力インダクタンスL0と、これに接続されているエキシマ・ランプ『4』のキャパシタンスで構成される共振回路に印加されて、概略正弦波の高電圧に変換さる。
タイミング信号T0の直後にタイミング信号Tに自動的に切り替え、点火(トリガ)周波数から目的の紫外線量が得られる連続点灯の周波数に掃引してその周波数による共振電圧を得て点灯し続ける。
スイッチ『5』を“OFF”すると、エキシマ・ランプ『4』は消灯する。
その構造と寸法は、石英製で長さが1250mm、外側の直径が約30mmφ、肉厚が約1.2mmの外側管アと、その外側管アと同軸に配置した石英製で長さが1250mm、外側の直径が約18mmφ、肉厚が約1.2mmの内側管イを、その各々の両端で気密に封じて竹輪形状にした放電容器ウに放電用ガスとしてXeガスを約450Torrの圧力で充填し、外側管アの外周に金属製で長さが1200mmの網電極エを概略密着して巻きつけ一方の放電電極端子オとし、内側管イの内側に概略密着するように金属製で長さが1200mmの網電極カを挿入し、これを他の一方の放電電極端子キとしたものである。
エキシマ・ランプの長さは放電領域で1200mmである。
外側管外周の網電極はステンレス製で太さ約0.1mmφの極細線を、一辺が約1mmの正方形の網目に編んだものである。
内側管内周の網電極はアルミニュウム製のエキスパンド・メタルで網目の形状は菱形で、その対角線の寸法は4mm×2mm、円筒状に加工し、アルマイト処理したものである。
測定周波数が2[MHZ]のとき、
C0≒140[pF]である。
図18、図19は、出力周波数を自動調整できる大電力型高周波電源『1』の出力端子『2』と『3』に、大型のエキシマ・ランプ『4』を接続した構成である。
出力周波数を自動調整できる大電力型高周波電源『1』は、大型のエキシマ・ランプ『4』を点灯、消灯するためのON−OFFスイッチ『5』と、ロジックICを用いた論理制御部『6』と、演算増幅器とアナログ・スイッチを用いた直流アナログ電圧制御部『7』と、演算増幅器とロジックICを用いた電圧制御発信部『8』と、ロジックICとトランジスターとパワーMOS−FETを用いた電力増幅器『9』を[No.1]〜[No.14]の14台使用し、これらの入力回路を並列接続し、それらの出力を、1次コイルがNo.1〜No.14の14回路ある出力トランス『10』と、14個のデカップリング・コンデンサ11-1〜11-14と電力容量が大きな直流電源部『12』で構成する。
円筒型空芯ボビンaはセラミック製等の耐熱性のある絶縁材料を用い、外径が約19mmφで、長さが約170mm、肉厚が約1mmの寸法のものとする。
円筒型空芯ボビンには最初に2次コイルbを単層ソレノイド巻きにする。
電線の種類は0.1mmφの銅線にポリイミド絶縁した絶縁電線を約20本束ねたリッツ線を用いる。巻始めの端子cより、巻線のピッチは約1mmで120回巻き、巻終わりの端子dで終える。
そのシートの上層に1次コイルfを巻付ける。1次コイルの電線の種類は約0.1mmφの銅線にポリイミド絶縁した絶縁電線を約60本束ねたリッツ線gを用いる。
絶縁を強化するためにシリコンゴム系の熱収縮チューブhを、このリッツ線に被せ収縮し1次コイル用電線とする。
1次コイルの巻き方はバイファイラ巻きにする。
長さが約50cmの2本の1次コイル用電線を平行に束ねて約25cmの中央部分をボビンに押付け、電線の両端を閉じるようにして1回巻付ける。
一方の電線の時計回り方向の端と、もう一方の電線の反時計回り方向の端を1本にまとめてコモン端子iとする。
この1次コイルを14回路分、隣同士密着させて巻付ける。
2次コイルbに対する1次コイルfの巻付け位置は2次コイルbの中央付近がよいが、1次2次間の短絡防止のため若干2次コイルbの巻終わりの端子d寄りにする。
このように1次コイルfを後から巻付ける構造にすると、エキシマ・ランプへの供給電力を増強するときには、更に同じ構造の1次コイルを後から追加で巻付けることが容易に行える。
エキシマ・ランプへの供給電力を減らすときには、既に巻付けてある1次コイルを取外せばよい。
原子量をMとするとイオン・プラズマ振動周波数は
f=20.96×M-1/2[MHz]
であらわせる。
ここで、エキシマ・ランプに封入されているキセノン・ガスの原子量はM=131.3であるから、キセノン・ガスのイオン・プラズマ振動周波数はf=1.83[MHz]となり、この近辺のある周波数範囲において、放電電圧の低下と最大の紫外線量が得られる周波数がある。
電圧が高いほど点火(トリガ)時間は短くなる。
点火(トリガ)時の共振周波数:f0=1/2π(L0C0)1/2=1.8[MHz]であり、
最大紫外線量のときの共振周波数:fn=1/2π(L0×CSn)1/2=1.6[MHz]であるから、
CSn/C0=f0 2/fn 2=1.27となる。
エキシマ・ランプのキャパシタンス変化は、点灯後に約10%の周波数低下を生じる。
これは点灯後のキャパシタンスがプラズマの発生によって、点灯前のキャパシタンスに対して約1.27倍増加したことになる。
その測定値からエキシマ・ランプ内のイオン密度n0[m-3]を概略計算で推測してみた。
測定値は、エキシマ・ランプの電極に接続されている電線に流れる伝導電流がIc=2.54[Arms]の概略正弦波であり、その共振周波数がfn=1.6[MHz]であった。
印加電圧と伝導電流の位相関係は、印加電圧に対して伝導電流が概略70度〜80度進んでいた。
ここでは、電子の挙動を判りやすく説明するために、伝導電流は印加電圧に対して90度進んでいることで説明する。
伝導電流Icは電流に垂直な断面をある時間T[Sec]に通過する電気量Q[C]であり、
Ic=Q/T[C/Sec]である。
ここで、T=1[Sec]とすると、測定値より、Q=Ic=2.54[C/Sec]となる。
伝導電流の電荷は電子であるから、電子群が流れる電線の垂直な断面を通過する電子の数をNe[個/Sec]とすると、電子の電荷量e=1.602×10-19[C]であるから、仮に直流電流であった場合、電子群は電線の垂直な断面を一方向に通過してゆく。
そして、そのときの電子の数Neは、
Ne=Q/e=2.54/1.602×10-19=1.59×1019[個/Sec]である。
この周波数1サイクル分において伝導電流に寄与する電子の数ne1は、
ne1=Ne/fn=1.59×1019/1.6×106=0.994×1013[個/サイクル]である。
そして、その1サイクル分での電子群の動作は、最初の半サイクルで正の方向に1回流れるとすると、それらの流れ去った電子群は、次の半サイクルでは逆方向の負の方向に流れ元の位置に戻ってくる。
この電子群は伝導電流Icに対して2倍の効用を果たしている。
よって、本例における伝導電流Icの電子の数ne2は、
ne2=ne1/2=0.994×1013/2=0.497×1013[個/半サイクル]である。
そして、その電極に印加されている電圧が徐々に負極性になるに従いその壁電荷は放電容器の内側ガラス壁から剥れてゆき、放電空間に戻ってゆく。負極性の最大値になったとき、その壁電荷は全て放電空間に戻り、壁電荷は無くなる。この瞬間、壁電荷の移動がないので変位電流Id=dq/dt=0である。当然、伝導電流Ic=0である。
その電極に印加されている電圧が負の最大値から減じてゆくとき、他の一方の電極の印加電圧は正の最大値からその電圧を減じてゆくが、このとき、この電極には放電空間内から電離電子が壁電荷として徐々に張付いてゆく。
このことからすると、半サイクル中の、更に半サイクルの期間において、電離電子が生じていることになり、その平均値の21/2倍が最大値となるので、放電空間内で生じている電離電子の数neは、
ne=(21/2/2)×ne2=0.497×1013/21/2=0.351×1013[個/(1/4サイクル)]である。
外側管の内側半径roi=13.8×10-3[m]。
内側管の外径が約18mmφであるから、
内側管の外側半径rio=9×10-3[m]である。
放電電極が取付けられた長さであるところの有効発光長l=1.2[m]である。
エキシマ・ランプの放電空間の体積vは、
v=π(roi2−rio2)×l=412×10-6[m3]である。
単位体積あたりのイオン密度n0[個/m3]は、電離電子の数ne=0.351×1013[個/(1/4サイクル)]であり、イオンの数も同数となるから、
n0=ne/v=0.852×1016[個/(1/4サイクル)m3]となり、
イオン・プラズマ振動周波数を計算する際に仮定したイオン密度n0=1016[m-3]とほぼ一致する結果が得られた。
ちなみに、20℃のキセノン・ガスを450[Torr]の圧力にすると、その原子密度nxは次のようになる。
nx=9.66×1024×450/293=1.48×1025[個/m3]となり、電離していない原子の数は非常に多い、このことからすると電離電子が全て壁電荷になってしまった瞬間では放電空間には少量のキセノン・イオンと多くの電離していない原子や励起キセノン、ダイマーそれにトリマー等が残留していると推測できる。
Claims (1)
- 出力周波数を自動調整できる機能を有し、空芯型出力トランスを最終出力段に装備した高周波電源に、
エキシマ・ランプ内に充填された放電用ガスに放電現象を誘起させるための、一対の放電電極対が装着されたエキシマ・ランプの放電電極対を接続し、
空芯型出力トランスの出力インダクタンスと、エキシマ・ランプに装着された放電電極対間のキャパシタンスとで共振回路を構成し、
該共振回路の共振作用により概略正弦波の高周波高電圧を発生させる事により、
エキシマ・ランプ内の放電領域の不特定の部位において、
連続点灯のきっかけとなる点灯開始用火花放電を生じさせるための点火(トリガ)電圧と、これに続く結果として、
エキシマ・ランプ内の放電領域全体が一様にグロー状放電による発光で満たされた状態となる連続点灯電圧を得て点灯する時、
消灯時から点火(トリガ)を経て、エキシマ・ランプ内の放電領域全体が一様にグロー状放電による発光で満たされた状態となる連続点灯までに至る途中の過程において、
エキシマ・ランプの放電電極対間のキャパシタンスは、エキシマ・ランプ内のグロー状放電による発光を伴うプラズマの成長と共に、概ね増加しながら推移するという特性を持つことに連動して、空芯型出力トランスの出力インダクタンスとエキシマ・ランプの放電電極対間のキャパシタンスとの共振周波数も概ね低下しながら推移するので、
前記高周波電源の出力周波数を、概ね低下しながら推移する共振周波数に、概略一致させるように自動調整する事と、前記空芯型出力トランスの出力インダクタンスと前記エキシマ・ランプに装着された放電電極対間のキャパシタンスとの共振周波数が、前記エキシマ・ランプに充填されている放電用ガスが持つ特性であるところのイオン・プラズマ振動周波数に概略一致するように、前記空芯型出力トランスの出力インダクタンスを製作し、
点火(トリガ)電圧と連続点灯電圧を低下させたことを特徴とするエキシマ・ランプの点灯装置。
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