JP4086164B2 - 光ディスク原盤露光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光ディスク原盤の露光装置に関し、CDやDVDなどの光ディスク製造時の露光装置として適用され、また半導体デバイスなどのフォトリソグラフィ工程に使用される露光装置、電子線を用いた露光装置に応用される。
光ディスク原盤の製造工程には、露光工程が含まれている。この露光工程において隣接するトラックの溝間隔を高精度に露光する露光装置や、マスタリング装置に関する従来の技術としては、特開平9−190651号公報に記載された発明がある。この特開公報に記載された発明は、ターンテーブルの半径方向に、ターンテーブルと非接触に変位センサーを設け、予めターンテーブルの各回転位置での振れ量を計測している。そして、各回転角位置ごとの振れ量を平均した平均値をメモリに蓄積し、露光時には測定した振れ量から各回転角の位置に対応する平均値を減算して非同期振れ量のみを出力する。この出力値により、露光光の照射位置を調整手段により補正している。
上述した従来技術の場合、光ディスク原盤露光装置ではターンテーブルの各回転角の位置に無関係な非同期振れがリアルタイムに出力できることから、露光中でもトラックピッチの精度に重大な悪影響を及ぼす非同期振れを直ちに把握し、露光作業を中止することができる。また、露光光の照射位置を補正することにより、送り機構がターンテーブルの非同期振れによる影響を受けない。
また、特開平10−293928号公報に記載された発明に見られるように、微小移動手段を介して装置本体に固定されている光を照射するヘッドと、ディスク原盤を支持するターンテーブルが搭載されている移動ステージとを有する構成がある。この構成は、移動ステージを、装置本体に固定されている移動手段によってターンテーブルの直径方向に移動し、微小移動手段によって移動ステージの移動位置に対してヘッドの位置を補正している。
また、特開平10−261245号公報に記載されたマスタリング装置は、レーザ干渉計又はレーザホロスケールを搭載し、送りスライダの微量な送りムラを検出している。検出された送りムラは、それを音響光学光偏向器による記録レーザの光偏向で送りスライダの微量な送りムラを光学的に補正している。また、送りスライダと記録ヘッドとをピエゾアクチュエータを介し一体化し、ピエゾアクチュエータの伸縮により、記録ヘッドを動作させることで送りスライダの微量な送りムラを補正している。
さらに、特開平8−329476号公報に記載された発明では、スライダ上に設けられた露光用光学系によって、露光ビームを対物レンズにより集光している。そして、対物レンズが取り付けられた第1微動テーブルの位置を微調整する圧電素子が、第2微動テーブルに設けられている。また、対物レンズと対向する位置に光ディスク原盤が配置され、この光ディスク原盤を回転させるターンテーブルが配置されている。そして、スライダの振動と同じ距離だけ、第1微動テーブルを振動方向と逆向きに移動させることにより、スライダの振動を打ち消す構成となっている。
また、特開2002−279700号公報によれば、高精度送りを実現できる光ディスク原盤露光装置を提供するために、光ディスク原盤露光装置の基台に、動吸振器、該動吸振器の共振周波数を自在に設定可能な共振周波数制御部、及び半径位置表示器を設けることにより、原盤の回転による振動周波数と動吸振器の共振周波数とを一致させて、高精度な送りを達成している。
しかしながら、特開平9−190651号公報に記載された発明では、ターンテーブルの半径方向に非接触にて変位センサーを設けて、ターンテーブルの原点パルス信号をトリガとして、予めターンテーブルの各回転位置での振れ量を計測し、各回転角位置ごとの振れ量を平均した平均値をメモリに蓄積しておき、露光時には測定した振れ量から各回転角位置に対応する平均値を減算して非同期振れ量のみを出力し、この出力値により露光光の照射位置を調整手段で補正している。
通常、非同期振れの原因は、回転振動の基台伝達による装置構成部品の振動による外乱振動であり、光ディスク原盤上に形成される記録溝のピッチ精度は、ターンテーブルと送り移動台の相対的な非同期振れによって決定されるため、上記のような単独の非同期振れ量から送り補正を行っても補正精度が悪く露光品質上好ましくない。
また、ターンテーブルと送り移動台の相対的な非同期振れを検出できる特開平10−293928号公報の発明では、装置本体に固着されたレーザ測長計のレーザ光を、微小移動手段を介して装置本体に固定されて光を照射するヘッド側面と、ディスク原盤を支持するターンテーブルが搭載されている移動ステージのターンテーブル側面に照射して、上記ヘッドの装置本体に対する位置と、ターンテーブルの装置本体に対する位置との差分に基づいて、この移動ステージの移動位置に対するヘッドの位置が微小移動手段により補正されるように構成されている。
通常、ディスク原盤は、外径に対して数10μm程度の偏心、言い換えれば、数10μm程度の偏重心にてターンテーブル上に搭載される。そのため回転時に働く遠心力により回転部が振れ回り振動を発生するので、ターンテーブル側面のレーザ照射位置が回転角と共に変わってしまうため、正確な送り方向の差分が計測できない。このような差分に基づく信号により微小移動手段を動作させると正確な補正動作ができず、逆にピッチ変動を発生し露光品質上好ましくない。また、計測手段であるレーザ測長計は非常に高価であるため設備コストが高くなる。
また、特開平8−329476号公報に記載された発明では、回転系が回転することによる外乱振動、摩擦駆動によるスライダの微少振動、及び送り系の機械的共振周波数が低いことによる送りサーボゲイン不足によるスライダの微少振動をなくすために、対物レンズを取り付けた第1微動テーブルの位置を微調整する圧電素子が第2微動テーブルに設けられ、スライダの振動と同じ距離だけ、第1微動テーブルを振動方向と逆向きに移動させることにより、スライダの振動を打ち消す構成となっている。しかし、これも上記特開平10−261245号公報の場合と同様に、送りスライダのみの検出量から送り補正を行っているので補正精度が悪く露光品質上好ましくない。
さらに、特開平10−293928号公報、特開平10−261245号公報、及び特開平8−329476号公報に記載された発明は、送り方向の補正機構として、光学ヘッド先端又は光学ヘッド筐体にピエゾアクチュエータを取り付ける構成であるため、構造が複雑で組立調整が困難であり、また機械剛性が低下し、送り系のサーボゲインを高く設定できないので制御上好ましくない。
また、特開2002−279700号公報では、上記従来の課題を解決するのに大きな効果があったが、動吸振器にエアを利用しており、共振周波数の設定範囲が狭いという問題があった。また、バネ定数を細かく制御するのが困難であり、大まかな共振周波数の設定しかできず、圧縮性流体を使用しているために再現性が乏しかった。
また、基台に動吸振器を設置しているために、直動ステージ上に回転スピンドルが設置された露光装置、特に電子線露光装置に多いレイアウトでは効果が得にくかった。その結果、露光速度を向上させることが難しく、生産性が悪化していた。さらに、原盤に記録した情報の形状が、所望の形状から逸脱するなど品質の悪化に繋がっていた。そして、基台、多くの場合は石定盤であるが、この基台のベース部分に穴加工が必要であり、設備が大型化するという問題もあった。
特開2002−279700号公報 特開平9−190651号公報 特開平10−293928号公報 特開平10−261245号公報 特開平8−329476号公報
本発明が解決しようとする課題は、動吸振器の共振周波数を広い範囲において再現性よく、かつ細かく設定できるように、動吸振器の共振周波数設定手段を工夫することにより、また、直動ステージ上に回転スピンドルが設置される露光装置においても振動抑制効果が十分得られるように、動吸振器の設置場所を工夫することによって、従来技術の問題を解決することである。
上記課題に対する解決手段は、基台上に直線移動可能に取り付けられた直動ステージの可動部に、スピンドルと動吸振器が設けられていることが基本となっている。
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた解決手段は、光ディスク原盤にレーザ光又は電子線を照射して所定の情報を記録する露光用光学系と、該露光用光学系から導かれたレーザ光又は電子線を集束する集束手段と、基台上に取り付けられ直線移動可能な直動ステージと、該直動ステージの可動部に取り付けられ回転可能なスピンドルと、上記集束手段に対向して配置された光ディスク原盤を上記スピンドル上に搭載する保持機構と、上記直動ステージに固定された動吸振器と、該動吸振器の共振周波数を自在に制御可能な共振周波数制御部と、を備えていることである。
〔作 用〕
直動ステージに動吸振器を設けて、該動吸振器の共振周波数を共振周波数制御部により自在に制御することにより、光ディスク原盤が偏芯して載置されて回転されるとき、遠心力による回転振動によって起こる直動ステージの振動を減少させることができる。
〔実施態様1〕(請求項1に対応)
実施態様1は、上記解決手段の光ディスク原盤露光装置において、動吸振器は可動部と固定部を持つスライダから構成され、該スライダの可動部の移動方向と直動ステージの可動部の移動方向を一致させ、該直動ステージの可動部又は直動ステージの可動部に固定された支持板に、該スライダの固定部を固定し、該スライダの固定部と可動部の間に、磁界や電界を加えることによりバネ定数が変化する弾性体を介在し、該スライダの可動部に付加質量を加えることである。
〔作 用〕
直動ステージの可動部に動吸振器を取り付けて、磁界や電界を加えて弾性体のバネ定数を変化させ、動吸振器の共振周波数を変化させることにより、直動ステージの可動部の振動による位置決め誤差を低減することができる。そのため、発明を実施するときメカ組立調整や制御系の設計が容易である。
〔実施態様2〕(請求項2に対応)
実施態様2は、上記実施態様1の光ディスク原盤露光装置において、弾性体は機能性流体であることである。
〔作 用〕
弾性体として機能性流体を用いることにより、磁界や電界に反応して粘性減衰係数やバネ定数を変化させことができる。
〔実施態様3〕(請求項3に対応)
実施態様3は、上記実施態様2の光ディスク原盤露光装置において、機能性流体は、磁気に反応して粘性又は弾性が変化する磁気粘性流体であることである。
〔作 用〕
機能性流体として磁気粘性流体(MR流体)を用いることによって、バネ定数を大きく変化させることができる。
〔実施態様4〕(請求項4に対応)
実施態様4は、上記実施態様1の光ディスク原盤露光装置において、弾性体は機能性シートであることである。
〔作 用〕
弾性体として機能性流体をシート状に固めた機能性シートを用いることによって、異物の混入を防ぐことができ、切断などの加工も容易である。
〔実施態様5〕(請求項5に対応)
実施態様5は、上記実施態様1〜実施態様4のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、弾性体は、バネ定数が一定の少なくとも1つの弾性体と、バネ定数を自在に変化することができる弾性体の複数の弾性体から構成されることである。
〔作 用〕
弾性体として、バネ定数が一定の弾性体と、バネ定数を自在に変化することができる弾性体を用いるので、バネ定数が一定の弾性体によりスライダの初期位置を決定し、バネ定数を自在に変化することができる弾性体により共振周波数を変更することができる。
〔実施態様6〕(請求項6に対応)
実施態様6は、上記実施態様1〜実施態様5のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、スライダは、弾性体と付加質量からなる系の共振周波数を、光ディスク原盤を搭載して回転可能なスピンドルの回転周波数と一致させることである。
〔作 用〕
弾性体と付加質量からなる系の共振周波数を、スピンドルの回転周波数と一致させることにより、動吸振器を効率よく作用させて振動を低減させることができる。
〔実施態様7〕(請求項7に対応)
実施態様7は、上記実施態様1〜実施態様6のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、直動ステージは、その移動位置を検出する位置検出手段を備えていることである。
〔作 用〕
CLV駆動方式による露光の場合は、光ディスク原盤の半径方向位置によって、スピンドルの回転数が変化する。そこで、直動ステージの位置を検出すれば、光ディスク原盤の半径方向位置と、スピンドルの回転数を求めることができる。
〔実施態様8〕(請求項8に対応)
実施態様8は、上記実施態様1〜実施態様7のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、スピンドルはその回転数を検出する回転数検出手段を備えていることである。
〔作 用〕
CLV駆動方式による露光の場合は、スピンドルの回転数は一定でなく変化するので、回転数検出手段によりリアルタイムでスピンドル回転数を検知している。
〔実施態様9〕(請求項9に対応)
実施態様9は、上記実施態様7又は実施態様8の光ディスク原盤露光装置において、直動ステージの移動位置を検出する位置検出手段の出力信号から、その移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を演算し、又は該スピンドルの回転数検出手段の出力信号から、その移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を検出し、該スピンドルの回転周波数に動吸振器の共振周波数をリアルタイムで一致させることである。
〔作 用〕
直動ステージの移動位置から、その移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を算出するか、又はスピンドルの回転数検出手段により、直動ステージの移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を検出することによって、リアルタイムでスピンドルの回転周波数に動吸振器の共振周波数を一致させることができ、動吸振器を効率よく作用させることができる。
〔実施態様10〕(請求項10に対応)
実施態様10は、上記実施態様1〜実施態様9のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、直動ステージに加速度センサを設けて、該直動ステージの振動の加速度を検出することである。
〔作 用〕
直動ステージに加速度センサを設けることにより、安価に直動ステージの振動外乱を検出することができる。
〔実施態様11〕(請求項11に対応)
実施態様11は、上記実施態様1〜実施態様10のいずれかの光ディスク原盤露光装置において、直動ステージに速度センサ又は変位センサを設けて、該直動ステージの可動部の速度又は変位を検出することである。
〔作 用〕
直動ステージに速度センサ又は変位センサを設けることにより、低周波数領域の振動を高精度に検出することができる。
〔実施態様12〕(請求項12に対応)
実施態様12は、上記実施態様10又は実施態様11の光ディスク原盤露光装置において、加速度センサの加速度信号、速度センサの速度信号、又は変位センサの変位信号のいずれかを周波数解析してピーク周波数を検出することである。
〔作 用〕
加速度信号、速度信号、又は変位信号のいずれかを周波数解析して、直動ステージのピーク振動の周波数を検出して、外乱や経時変化による振動状況の変化をリアルタイムで把握することができる。
〔実施態様13〕(請求項13に対応)
実施態様13は、上記実施態様12の光ディスク原盤露光装置において、付加質量の送り方向の振動を検出する振動検出手段と、該振動検出手段の出力信号から振動周波数を解析する振動周波数検出手段とを設け、該振動周波数検出手段の出力信号とピーク周波数を比較演算し、該比較演算結果により動吸振器の設定出力を補正して、該動吸振器の共振周波数を該ピーク周波数にリアルタイムで一致させることである。
〔作 用〕
付加質量の送り方向の振動から解析される振動周波数とピーク周波数を比較演算することによって、振動状況をフィードバックして制御出力を補正することにより、外乱や経時変化があった場合でも、動吸振器の共振周波数をピーク周波数にリアルタイムで一致させる。
〔実施態様14〕(請求項14に対応)
実施態様14は、上記実施態様2又は実施態様3の光ディスク原盤露光装置において、機能性流体に対する流体漏れ止めシールが施されていることである。
〔作 用〕
流体漏れ止めシールを施すことにより、機能性流体の流失を防ぐと同時に、異物の混入も防止する。
〔実施態様15〕(請求項15に対応)
実施態様15は、上記実施態様1〜実施態様14の光ディスク原盤露光装置において、動吸振器は磁気シールされていることである。
〔作 用〕
動吸振器を磁気シールすることにより、動吸振器から磁界が漏れるのを防止することができる。
本発明の効果を主な請求項毎に整理すると、次ぎのとおりである。
(1) 請求項1に係る発明
光ディスク原盤が偏芯して載置されて回転されるとき、遠心力による回転振動によって起こる直動ステージの振動を減少させることができる。これにより、送り精度を高くすることができ、露光品質の向上を図ることができる。
また、直動ステージの可動部に動吸振器を取り付けて、磁界や電界を加えて弾性体のバネ定数を変化させ、動吸振器の共振周波数を変化させることにより、直動ステージの可動部の振動による位置決め誤差を低減することができる。そのため、発明を実施するときメカ組立調整や制御系の設計が容易であり、送り系の集光手段部周辺等にメカ的に関与せず、集光手段部周辺等を簡素化、及び軽量化することができる。また、機械剛性の向上を図ることができ、送り系のサーボゲインを高く設定することができる。さらに、送り制御精度の向上を図ることができると共に、組立性が良好で装置コストを安価にできる。
(2) 請求項2に係る発明
弾性体として機能性流体を用いることにより、磁界や電界に反応して粘性減衰係数やバネ定数を変化させことができるので、動吸振器において所望の共振周波数を得ることができる。
(3) 請求項3に係る発明
機能性流体として磁気粘性流体(MR流体)を用いるので、バネ定数の大きな変化が期待でき、動吸振器の共振周波数の制御帯域を広げることができる。
(4) 請求項4に係る発明
弾性体として機能性シートを用いるので、異物の混入による影響を防ぐことができる。また、切断などの加工が容易であり実装し易くなる。
(5) 請求項5に係る発明
バネ定数が一定の弾性体によりスライダの初期位置を決定することができる。また、バネ定数を自在に変化することができる弾性体を組み合わせることにより、所望の共振周波数を設定することができる。
(6) 請求項6に係る発明
弾性体と付加質量からなる系の共振周波数を、スピンドルの回転周波数と一致させることにより、動吸振器を効率よく作用させて振動を低減させることができる。その結果、光ディスク原盤が偏芯して設置されて回転するとき、遠心力による回転振動によって起こる直動ステージの振動を減少させることができる。さらに、送り精度を高くすることができ、露光品質を向上することができる。
(7) 請求項7に係る発明
CLV駆動方式による露光の場合は、光ディスク原盤の半径方向位置によってスピンドルの回転数が変化するので、直動ステージの位置を検出することによって、光ディスク原盤の半径方向位置と、スピンドルの回転数を求めることができる。
(8) 請求項8に係る発明
CLV駆動方式による露光の場合は、スピンドルの回転数は一定でなく変化するが、回転数検出手段によりリアルタイムでスピンドル回転数を検知することができる。
(9) 請求項9に係る発明
直動ステージの移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を、算出するか又は検出することによって、リアルタイムでスピンドルの回転周波数に動吸振器の共振周波数を一致させることができるので、動吸振器を効率よく作用させて振動を低減することができる。
(10) 請求項10に係る発明
直動ステージに加速度センサを設けることにより、安価に直動ステージの振動外乱を検出することができる。
(11) 請求項11に係る発明
直動ステージに速度センサ又は変位センサを設けることにより、低周波数領域の振動を高精度に検出することができる。
(12) 請求項12に係る発明
直動ステージのピーク振動の周波数を検出することにより、外乱や経時変化による振動状況の変化をリアルタイムで把握することができる。
(13) 請求項13に係る発明
振動状況をフィードバックして制御出力を補正することにより、外乱や経時変化があった場合でも、動吸振器の共振周波数をピーク周波数にリアルタイムで一致させるので、より正確でかつ効率よく振動を除去することができる。
(14) 請求項14に係る発明
流体漏れ止めシールを施すことにより、機能性流体の流失を防ぐと同時に、異物の混入も防止するので、長期間安定した特性を維持することができる。
(15) 請求項15に係る発明
動吸振器から磁界が漏れるのを防止するので、安定した電子線による露光が可能になる。
動吸振器の共振周波数を広い範囲において再現性よく、かつ細かく設定できるように、また直動ステージ上に回転スピンドルが設置される露光装置においても振動抑制効果が十分得られるようにするという目的を、弾性体に機能性流体を用いた動吸振器を直動ステージに固定するという、比較的簡単な構成によって安価に実現するものである。
本発明の光ディスク原盤露光装置の実施例(請求項1〜15に対応)について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は光ディスク原盤の露光装置を示しており、(a)は平面図、(b)は正面図である。図2は動吸振器の説明図である。
本発明の光ディスク原盤の露光装置は、ターンテーブルと送り移動台の相対的な非同期振れを補正するものではなく、非同期振れの原因が、スピンドルの回転振動が直動ステージに伝達することにより発生する外乱振動であることに着目して、直動ステージにおける振動を極力小さくするものである。
除振機構、例えば空気圧によるサーボマウンタ上に設けられた基台(11)には、外部より供給される圧縮空気により静圧浮上する直動ステージの固定部(12)が固定されている。直動ステージの可動部(13)にはスピンドル(14)が設けられ、該スピンドル(14)のターンテーブル(15)上にガラス原盤(16)が保持されている。この直動ステージの可動部(13)には、直動ステージの移動方向と同一方向になるように動吸振器(17)の振動方向を合わせて、動吸振器(17)の固定部が固定されている。
このような構成のステージ装置において、光ディスク原盤に露光するためには、レーザ光源、露光用光学系、及び導かれたレーザ光を集光する集光手段によって、レーザ光を所望の状態にして、原盤の上方又は下方から照射する。
また、電子線による露光の場合には、電子線源、電子線偏向手段を経て、所望の状態にした電子線を用いて原盤の上方又は下方から露光する。
ここで、上記集光手段は、例えば高開口数(NA≧0.9)を有する対物レンズを搭載したボイスコイルアクチュエータにより構成されている。さらに、上記直動ステージ(12,13)の下部には、該集光手段の送り方向の位置を計測するために、受光部とスケールから構成される、例えば光学式リニアエンコーダ等の位置検出手段が設けられている。
上記ガラス原盤(16)を回転する回転機構は、ターンテーブル(15)と、外部より供給される圧縮空気によりスラスト及びラジアル方向に静圧浮上して回転自在なエアスピンドル(14)と、AC同期モータと、回転角度を検出する、例えば光学式ロータリーエンコーダ等の角度検出手段とから構成されている。
また、上記回転角度を検出する角度検出手段は、一周を数千等分割したA相及びB相パルスと、一周に1回発生するZ相パルスから構成され、スピンドルコントローラに接続されており、このスピンドルコントローラの出力は上記AC同期モータに接続されている。そして、上記スピンドルコントローラに取り込まれた角度検出手段の一周に1回発生するZ相出力は、送り動作と回転動作の協調を図るためにスライダコントローラに接続されている。さらに、該スライダコントローラと上記スピンドルコントローラは、装置全体を制御するコントローラに接続されている。
次に、動吸収器(17)について説明すると、これは図2に示されているように、スライダ(23,24)と弾性体(26,27)から構成されている。この動吸振器(17)の振動方向を直動ステージ(12,13)の送り方向と一致させ、スライダの固定部(23)は直動ステージの可動部(21)(図1の直動ステージの可動部(13)に対応する)又はスペーサ(22)や支持板(28)に固着されている。
スライダの可動部(24)には、最適な振動減衰特性を得るために付加質量(25)が固着されている。この付加質量(25)は、振動を減衰させたい対象の質量との関係によって最適な条件が決定される。
このスライダの可動部(24)とスライダの固定部(23)との間、又は該スライダの可動部(24)と直動ステージの可動部(21)との間には、機能性流体による弾性体(27)が設けられている。この機能性流体に磁界や電界を加えてそのバネ定数を変化させることにより、動吸振器(17)の共振周波数を変化させることができる。このとき必ずしも機能性流体でなくても、機能性シートでも構わない。
また、機能性流体又は機能性シートによる弾性体(27)とは別に、バネ定数が一定の弾性体(26)を追加して組み合わせて用いることもある。機能性流体による弾性体(27)だけでは、スライダの可動部(24)がスライダのストロークの一方に偏ることがあるが、バネ定数が一定の弾性体(26)を組み合わせることによってセンタリング効果が生じ、初期位置を確保することができ、動吸振器(17)の再現性が向上する。
ここで機能性流体について説明する。機能性流体とは、磁界や電界の強さに応じて、流体の粘性や弾性が変化するものである。代表的なものとしては、磁界に反応して粘弾性が変化して、見かけが液体から固体状に変化する磁気粘性流体(MR流体)、電界に反応して粘弾性が変化する電気粘性流体(ER流体)、及び磁界に反応して引き寄せられ、圧力が発生する磁性流体等が挙げられる。これらのなかでも、MR流体は磁界によって粘弾性の変化する割合が大きく、磁界を制御することにより振動減衰係数や構造体の剛性、又はバネ定数を良好に変化させることができる。
また、これらの機能性流体をシート状に加工して、はさみで切ることができたり、シールで貼り付けられるようにして、取り扱い性を向上させた機能性シートと呼ばれるものもある。
上記MR流体を用いた振動の減衰やバネ定数の変化についての詳細は、後述する参考説明1及び参考説明2において説明する。
次に、上記動吸振器(17)の共振周波数をリアルタイムで変更する構成について説明する。
この動吸振器(17)は、スピンドル(14)の回転によって発生した直動ステージの可動部(13)の振動を減少させるために設置するものである。直動ステージのピーク振動に動吸振器(17)の共振周波数を一致させれば、該動吸振器(17)におけるマス、この場合はスライダの可動部(24)が大きく振動することにより、直動ステージの可動部(13)の振動は弱まる。磁界や電界を制御するには可変直流電源を用いて、電源電圧又は電流を制御することにより、機能性流体又は機能性シートの弾性を変化させて、上記動吸振器(17)のバネ定数、即ち共振周波数を変化させることができる。
この振動減衰は、直動ステージの可動部(13)とスピンドル(14)の質量を合わせた質量に対する、スライダの可動部(24)と付加質量(25)を合わせた質量の比によって減衰特性に差が出てくる。(質量計算の詳細については、振動工学に関する書籍、例えば「振動工学、背戸一登、森北出版」などを参照)
ここで、スライダの可動部(24)の質量と付加質量(25)の質量の合計をMとし、バネ定数一定の弾性体(26)と機能性流体による弾性体(27)の合成バネ定数をKとして、動吸振器(17)の共振周波数をfとすれば、
f=1/(2・π)*(K/M)1/2
となる。これにより、質量Mを変化させなくても、合成バネ定数Kを変化させれば、動吸振器(17)の共振周波数を制御できることが分かる。
次に、上記露光装置の動作について説明する。光ディスク原盤の露光においては、回転数を一定とした直動ステージとスピンドルの協調送り動作であるCAV回転送り駆動と、線速度を一定とした協調送り動作であるCLV送り動作がある。
先ず、露光動作を行う前に、CLV駆動用として予め半径位置rに対する回転周波数ftの関係を下記の式を満足するように計算しておき、また動吸振器(17)の共振周波数特性を計測しておく。
ft=v/(2・π・r)
vs=ft・pt
ここで、v:露光線速度
ft:回転周波数
r:露光半径位置
vs:送り速度
pt:露光トラックピッチ
コントローラから回転送り動作開始指令が送出され、ターンテーブル(15)上に偏重芯が数μm〜数10μm程度で吸着固定された光ディスク原盤(16)が回転を開始すると、回転部全体が振れ回り振動を発生して、送り方向の正弦波状の振動伝達力が直動ステージの可動部(13)に加わる。この時、例えばCAV送り駆動であれば一定回転であり、露光半径位置によらずその一定周波数の正弦波状の振動伝達力が加わる。また、CLV駆動の場合は、前記の式で示したように露光される半径位置が外周に向かうに従って、回転周波数が下がっていく正弦波状の振動伝達力が加わる。
CAV駆動の場合は、スピンドルに設置された、例えば上記エンコーダ等の回転数検出手段によって回転数を検出して、またCLV駆動の場合は、直動ステージに取り付けた位置検出手段により半径位置を参照することによってスピンドルの回転数を算出するか、又はスピンドルの回転数検出手段よって回転数を検出して、動吸振器(17)の共振周波数fを上記スピンドル(14)の回転周波数に手動で逐次合わせながら送り動作を行えば、前述した原理により、光ディスク原盤(16)が偏芯して載置されて回転されるとき、遠心力による回転振動によって起こる直動ステージに対する振動を減少させることが可能となり、回転振動による送り駆動への影響をなくすことができる。このとき、動吸振器(17)の共振周波数fは必ずしも手動で合わせる必要はなく、回転数に応じて自動的に制御しても良いことは言うまでもない。
つづいて、外乱の影響が大きい場合について説明する。
これまでの説明では、いずれも可変直流電源の出力電圧又は出力電流と、動吸振器(17)の共振周波数との間に厳密な関係が必要であり、例えば、供給されている電圧又は電流の変動や機能性流体の経年変化等によって、前もって取得した特性がずれてしまった場合には、前述した原理からはずれてしまう。そのため、本来、動吸振器で想定していた共振周波数と実際の共振周波数が異なってしまうので、振動抑制効果が小さくなり、露光品質上好ましくないという問題がある。これまでは動吸振器に着目して述べたが、ステージやスピンドルに経時変化が起きた場合にも、同様に周波数がずれてしまうので、露光品質に影響があることは言うまでもない。
そこで、直動ステージに振動状態を検出するセンサ、例えば、加速度を検出する加速度センサ、速度を検出するレーザドップラー計測器、及び変位を検出する静電容量式センサやレーザ干渉計などを用いて、発生している振動の状況をリアルタイムに検出して対処することで露光品質を向上させる。
これらのセンサから得られた信号、例えば、加速度、速度、変位を周波数解析することで、ピーク振動の周波数を明らかにすることができる。原盤の露光中に常にピーク振動の周波数を周波数解析によって求め、所定の周波数振動からずれている場合には、電源の出力電圧又は出力電流を補正することにより、動吸振器(17)の共振周波数を直動ステージ(13)での振動周波数にリアルタイムで一致させることができる。これにより、外乱がある場合でも常に好適な露光をすることができる。
また、機能性流体の蒸発や異物の混入を防いで安定して使用するために、漏れ止めのシールを施している。電子線による露光の場合には、真空中に蒸散するのを防ぐためにもシールをする必要がある。
さらに、電子線による露光の場合には、磁界によって電子の進行方向に変化があると、情報記録の品質が悪化するので、機能性流体又は機能性シートを用いた動吸振器から磁界が漏れないように、非磁性帯のカバーのより動吸振器を覆うことによって磁気シールをしている。
次に、動吸振器における機能性流体の動作、及びMR流体の動作原理について、より一層の理解を深めるために、図3に示した位置決め装置(30)を例にとって、図3〜図6を参照しながら、参考説明1及び参考説明2として以下に説明する。
〔参考説明1〕
先ず、機能性流体の動作について、図3を参照しながら参考説明1として説明する。ここでは、機能性流体としてMR流体を用いた場合の振動減衰及び剛性制御(バネ定数制御)の例によって説明する。
温湿度が一定になるようにコントロールされた環境下に除振台(図示せず)を設置し、この除振台の上に、面精度が確保され振動減衰性の良いグラナイト(花崗岩:図示せず)で作られベース(37)を設置し、このベースの中心にエアステージ(31)を設置する。このエアステージ(31)はアクチエータとしてリニアモータ(図示せず)を内蔵しており、該エアステージ(31)とアクチエータは非接触で動作できるので、摩擦要素の影響を極力小さくすることができる。また、分解能と精度の良い位置決めセンサ(図示せず)、例えば分解能0.05nmの光学式変位センサが、上記エアステージの可動部(32)の変位を計測し、その位置情報をエアステージ(31)の制御装置(図示せず)にフィードバックすることにより、エアステージ(31)の移動範囲を±5mmで任意の位置に位置決めすることができる。
上記リニアモータを駆動するドライバはリニアアンプ(図示せず)によって構成されており、該ドライバからのノイズは極力小さくなるようになっている。このように微小振動の発生は、極力小くなるように設計されている。しかしながら、様々な外乱要因、例えば配線や配管経由、大気伝搬、又は除振台上に設置された加振源からの外乱によって、振幅で数〜数10nmの微小振動の混入を避けることは困難である。
このエアステージの可動部(32)には、アーム(33)が取り付けられている。このアーム(33)は磁性体で構成されており、ベース(37)に固定されているMR流体槽(34)の槽部に侵入している。このMR流体槽(34)の槽内にはMR流体(35)が注入されており、該アーム(33)はこのMR流体に浸されている。また、MR流体槽(34)には電磁石(36)が2個取り付けられており、MR流体槽(34)に磁界を印加できるようになっている。MR流体槽(34)は全体が磁性体でも構わないが、MR流体(35)に強い磁界を印加した方が効率がよいので、MR流体槽(34)を非磁性体にして、電磁石(36)が槽部に接触する部分のみを磁性体により構成している。このような構成であれば、電磁石(36)から発生した磁界が、槽部の磁性体を伝わって槽部に注入されているMR流体に伝わり、さらに磁性体のアーム(33)に伝わって反対側のMR流体に伝わり、さらに反対側の槽部の磁性体を経由して反対側の電磁石に伝わる。
この電磁石(36)には磁界の強度を変化させる制御手段(図示せず)が設けてあり、電磁石に通電する電圧又は電流を制御することにより、電磁石(36)の磁界の強度を制御することができる。MR流体(35)は、磁界の強度によってそのバネ定数や粘性減衰係数が変化するので、磁界の強度を変化させることにより所望のバネ定数又は粘性減衰定数を得ることができる。これによって、機構(ここではエアステージ(31))の剛性が変化して共振点を制御することにより、ナノメータオーダの微小振動を減衰又は除去することができる。
従来、機能性流体を用いたダンパでは粘性減衰係数を変化させ、いわゆるダンパのような構成で振動を減衰させていた。しかし、この方法では、比較的振幅の大きな振動、例えば数μm〜数mmオーダの振動には効果があるが、非常に小さな振幅、例えばナノメータレベルの微小振動を減衰させる効果は乏しかった。そこで、MR流体の粘性減衰係数の変化ではなく、バネ定数を変化させることによって、機構(エアステージ(31))の剛性を向上させて該機構の共振点を制御することにより、微小振動を減衰させる。ここで使用している電磁石は一つの例であって、電磁石でも永久磁石でも構わない。また、永久磁石と電磁石を組み合わせることにより、電磁石による発生磁界を弱くすることもできる。
次に、MR流体について説明すると、MR流体は磁気粘性流体とも呼ばれており、溶媒に磁性体を分散させたものである。溶媒にはシリコンオイル、炭化水素油、水などが用いられることが多い。磁性体には純鉄やマグネタイトなどが用いられ、分散性を向上させるために界面活性剤が添加されている。
MR流体と構造が似ているものに磁性流体があるが、この磁性流体の磁性体は粒子径が数〜数10nmであるに対して、該MR流体の磁性体は粒子径が数〜数10μmと大きさが異なっている。この構造の違いにより、磁性流体では磁界を印加しても、液体のままで減衰力はほとんど変化しないが、MR流体では磁界を印加することにより、液体から固体に近い状態に変化して、減衰力が大きく変化する。MR流体としては、米国のLORD社のMRF−122−2ED、MRF−132AD、MRF−241ES、MRF−336AG等がある。磁性流体としは、日本のフェローテック社のAPG810、APG820、REN1020、REN1600等がある。
〔参考説明2〕
次に、MR流体の動作原理について、図4〜図6を参照しながら参考説明2として詳細に説明する。図4はMR流体槽について拡大した模式図であり、図5はエアステージを数nm〜数10nmの微小振動で加振したときの周波数特性を示す図であり、図6は位置決め装置の基本的な動作を説明する動作フロー図である。
図4は、図3に示された位置決め装置(30)に用いられているMR流体槽の拡大図である。磁石(43)が設置された固定部(41)と、磁石(44)が設置された可動部(42)との間に流路(48)が設けてあり、この流路(48)には紛体又は液体が封入されている。この紛体又は液体は磁界に反応する物質であり、いわゆる磁性体としての性質を持つものである。例えば、紛体であれば砂鉄や磁性紛などであり、液体であれば磁性流体、MR流体又は磁気粘性流体などである。特にMR流体は、通常は液体としての挙動を示すが、磁界の強さに比例して粘性減衰係数やバネ定数が変化して、強磁界下では固体のような挙動を示す物質である。同様の特性を持つものに、電界に反応して粘性が変化するER流体又は電気粘性流体と呼ばれるものも存在するが、MR流体は電気粘性流体に比べて、減衰力の変化量が20〜50倍程度大きいという特徴を持っている。なお、図4に示された符号(46)はMR流体である。
流体流路(48)に封入された磁性紛体もしくは磁性流体、又はMR流体は、磁石(43,44)の近傍では磁界が強くなるために、磁性紛体は凝集しMR流体は固体状になる。そのため、強磁界部(45)の粉体は凝集し、流体であれば固体状になるので、可動部(42)の不必要な移動を規制する。このとき、磁石(43,44)は2個必要というわけではなく、磁界を伝達できればよいので、どちらか一方でも構わないし、また別に磁界を印加させる手段があれば、磁石(43,44)は単なる磁性体に置き換えても良い。あくまでも相対運動を規制するものであるから、このとき固定部(41)と可動部(42)の位置関係は逆になっても構わないし、もちろん固定部(41)と可動部(42)の両方とも可動部であっても構わない。
また、磁力線(47)の方向は、位置決め装置(30)の位置ずれ方向に対して略鉛直方向、例えば90°、85°又は98°になるように設置してある。略鉛直方向に磁界をかけることにより、位置決め装置(30)の組み付け時にアレイメントの誤差があったり、MR流体槽(34)の傾きやアーム(33)表面に凹凸形状があっても、磁界をかけたときの位置ずれ発生量を最小限に抑えることができる。また、略平行方向に磁界をかけた場合に比べて、位置ずれ方向に対するMR流体のバネ定数を大きく変化させることができるので、機構(エアステージ)のバネ定数を大きく変化することができ、結果として位置決め装置(30)の剛性を制御することができる。即ち、共振周波数を制御することにより、微小振動を減衰するのに最適な位置決め装置を得ることができる。
通常、除振台を用いれば、床からの振動は大きく減衰されるが、それでも配線や配管から除振台に伝達してくる。また、クリーンルーム内に設置した場合には、エアの噴き出しや周辺騒音のために、大気を伝達して微小な振動が装置に伝わる。また、高性能な除振台を用いても、除振台上の加振源、例えば他のアクチエータから発生する振動は避けられず、不規則的なナノメータオーダの微小振動を除去することは非常に困難である。
近年、半導体の露光装置、光ディスクの露光装置、及び光素子の測定装置などの分野では、位置決めや位置保持の高精度化が求められており、これらの微小振動は無視することができない。そこで、これらの位置決め装置を、例えばステージに取り付けることによって、位置決めした後でその位置を保持・固定し、保持・固定後は微小振動を減衰することが可能となる。
ここで、機構(エアステージ)の周波数特性について、図5を参照しながら解説する。図5は、エアステージを数nm〜数10nmの微小振動で加振したときの周波数特性を表したものであり、横軸は対数表示された周波数であり、縦軸はdB表示されたゲインである。
磁界強度0の一次共振点(51)のグラフは、MR流体(35)をMR流体槽(34)に注入した後、磁石の磁界を0にした場合の特性を表すものである。このグラフに表されているように、一次共振点(51)のゲインは高く、この一次共振点より低い周波数領域、いわゆる低周波領域のゲインも大きくなっている。
次に、磁石から弱い磁界を発生させると、磁界強度小の一次共振点(52)のグラフになる。この一次共振点(52)の周波数は高くなり、それに伴ってこの一次共振点のゲインが低下しており、さらにこの一次共振点(52)よりも低い周波数領域のゲインも低下している。もし、粘性減衰係数の効果により振動のゲインが低下するのであれば、一次共振点(52)の周波数は磁界強度0の一次共振点(51)の周波数に近い値で、一次共振点のゲインが低下することになるが、そのような現象は見られない。微小振動はバネ定数が変化することにより共振点が周波数の高い方にシフトし、共振周波数が高くなることで振動ゲインが低下していることが分かる。即ち、エアステージが静止している状態で磁界をかけた場合に、微小振動を減衰させるには、粘性減衰係数ではなく、バネ定数による効果が大きいことが分かる。このことは、MR流体は、エアステージが移動中と静止しているときでは、振動減衰に影響を与えるメカニズムが異なることを示している。
次に、磁石から中程度の磁界を発生させると、磁界強度中の一次共振点(53)のグラフになる。先の結果と同様に、一次共振点(53)の周波数が高くなり、ゲインは低下している。また、この一次共振点(53)よりも低い周波数領域では、ゲインが0近傍まで低下していることも分かる。
次に、磁石から大きな磁界を発生させると、磁界強度大の一次共振点(54)のグラフになる。先の結果と同じように、低い周波数領域のゲインは低下しているが、逆に高い周波数領域のゲインは上がっていることが分かる。この結果より、微小振動を減衰させるには、減衰させたい微小振動の周波数領域や振幅から、磁界の強度を最適な値に制御する必要があることが分かる。
ところで、ここで用いられている磁界を発生させる装置は、一般的な電磁石である。電磁石は電気を流したときに磁界が発生するので、位置決め前には磁界を発生しないようにして、流路(48)の中は強磁界部(45)は存在せず、注入された流体又は粉体も通常の状態であり剪断抵抗も少ない。このことから、固定部(41)と可動部(42)の間での保持力が小さくなるので、可動部(42)は滑らかに移動することができる。任意の位置で位置決めした後は、電磁石に電気を流し磁界をかけることにより、流路(48)の中に強磁界部(45)を生成して保持力を発生させることができ、さらに磁界の強さを変化させることもできる。勿論、スイッチングができれば良いので、永久磁石を用いてメカ的にスイッチングしても良いことは言うまでもない。
しかし、必ずしもスイッチングが必要というわけではない。磁性流体やMR流体は、せん断速度によって粘性が変わる傾向がある。そこで、可動部(42)を位置決めする際には、ある程度の速度で動かすことにより粘性抵抗を減らし、また任意の位置決め位置では、速度を低下させることによって粘性抵抗を大きくし、位置決め位置では速度が0なので粘性抵抗は最大になる。このような手法を用いれば、磁界のONとOFFのスイッチングをさせることなく、保持力を利用することができる。この場合は、電磁石を用いる必要はなく、また永久磁石とメカ的なスイッチング機構を用いる必要もなく、位置決め装置を構成することができる。
上述した説明の繰り返しになるが、基本的な動作をまとめると次のようになる。これを動作フローとして図6に示す。
(1) 固定部に対して可動部をアクチエータで移動させ、任意の位置で位置決めする。
(2) 磁石からの磁界が磁気回路を経由してMR流体槽にかかる。
(3) MR流体槽に注入してあるMR流体に磁界がかかる。
(4) MR流体のバネ定数又は粘性減衰係数のどちらか一方、あるいは両方が変化する。
(5) MR流体が液体から固体に近い状態に変化し、機構の可動部が固定される。
(6) 固定された位置で、機構の剛性が高くなり、共振点が高くなる。
(7) 減衰したい微小振動の振幅及び周波数帯に合わせて、磁界の強度を制御する。
(8) 機構が固定され、剛性が高くなって共振点が高くなることで、微小振動が減衰又は除去される。
(9) 磁石の磁界を解除すると、機構の固定は解除される。
は、本発明の実施例の光ディスク原盤露光装置の模式図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。 は、動吸振器を説明する模式図である。 は、機能性流体の動作について説明するための位置決め装置に関する斜視図である。 は、MR流体槽を拡大した模式図である。 は、エアステージを数nm〜数10nmの微小振動で加振したときの周波数特性を示す図である。 は、位置決め装置の基本的な動作を説明する動作フロー図である。
符号の説明
11:基台 12:直動ステージの固定部
13:直動ステージの可動部 14:スピンドル
15:ターンテーブル 16:ガラス原盤(光ディスク原盤)
17:動吸振器
21:直動ステージの可動部 22:スペーサ
23:スライダーの固定部 24:スライダーの可動部
25:付加質量 26:弾性体
27:機能性流体による弾性体 28:支持板
30:位置決め装置 31:エアステージ
32:エアステージの可動部 33:アーム
34:MR流体槽 35:MR流体
36:電磁石 37:ベース
41:固定部 42:可動部
43,44:磁石 45:強磁界部
46:MR流体 47:磁力線
48:流路
51:磁界強度0の一次共振点 52:磁界強度小の一次共振点
53:磁界強度中の一次共振点 54:磁界強度大の一次共振点

Claims (15)

  1. 光ディスク原盤にレーザ光又は電子線を照射して所定の情報を記録する露光用光学系と、
    該露光用光学系から導かれたレーザ光又は電子線を集束する集束手段と、
    基台上に取り付けられ直線移動可能な直動ステージと、
    該直動ステージの可動部に取り付けられ回転可能なスピンドルと、
    上記集束手段に対向して配置された光ディスク原盤を上記スピンドル上に搭載する保持機構と、
    上記直動ステージに固定された動吸振器と、
    該動吸振器の共振周波数を自在に制御可能な共振周波数制御部とを備えて成る光ディスク原盤露光装置において
    上記動吸振器は可動部と固定部を持つスライダから構成され
    該スライダの可動部の移動方向と上記直動ステージの可動部の移動方向を一致させ
    該直動ステージの可動部又は直動ステージの可動部に固定された支持板に、上記スライダの固定部を固定し
    該スライダの固定部と可動部の間に、磁界や電界を加えることによりバネ定数が変化する弾性体を介在し
    該スライダの可動部に付加質量を加える
    ことを特徴とする光ディスク原盤露光装置
  2. 上記弾性体は、機能性流体であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク原盤露光装置。
  3. 上記機能性流体は、磁気に反応して粘性又は弾性が変化する磁気粘性流体であることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク原盤露光装置。
  4. 上記弾性体は、機能性シートであることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク原盤露光装置。
  5. 上記弾性体は、バネ定数が一定の少なくとも1つの弾性体と、バネ定数を自在に変化することができる弾性体の複数の弾性体から構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  6. 上記スライダは、上記弾性体と付加質量からなる系の共振周波数を、光ディスク原盤を搭載して回転可能な上記スピンドルの回転周波数と一致させることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  7. 上記直動ステージは、その移動位置を検出する位置検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  8. 上記スピンドルは、その回転数を検出する回転数検出手段を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  9. 上記直動ステージの移動位置を検出する位置検出手段の出力信号から、その移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を演算し、又は上記スピンドルの回転数検出手段の出力信号から、その移動位置でのスピンドルの回転数と回転周波数を検出し、
    該スピンドルの回転周波数に上記動吸振器の共振周波数をリアルタイムで一致させることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の光ディスク原盤露光装置。
  10. 上記直動ステージに加速度センサを設けて、該直動ステージの振動の加速度を検出することを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  11. 上記直動ステージに速度センサ又は変位センサを設けて、該直動ステージの可動部の速度又は変位を検出することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
  12. 上記加速度センサの加速度信号、上記速度センサの速度信号、又は前記変位センサの変位信号のいずれかを周波数解析してピーク周波数を検出することを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の光ディスク原盤露光装置。
  13. 上記付加質量の送り方向の振動を検出する振動検出手段と、
    該振動検出手段の出力信号からピーク周波数を解析する振動周波数検出手段とを設け、
    該振動周波数検出手段の出力信号と上記動吸振器に設定されている共振周波数を比較演算し、
    該比較演算結果により上記動吸振器の設定出力を補正して、
    該動吸振器の共振周波数を該ピーク周波数にリアルタイムで一致させることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク原盤露光装置。
  14. 上記機能性流体に対する流体漏れ止めシールが施されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の光ディスク原盤露光装置。
  15. 上記動吸振器は磁気シールされていることを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれかに記載の光ディスク原盤露光装置。
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