JP4085851B2 - 内燃機関の補機駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に付随して設けられ、その内燃機関を含む複数の駆動源からの駆動力が切り替え可能に供給される補機を駆動する内燃機関の補機駆動装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の内燃機関の補機駆動装置としては、内燃機関と圧縮機等の補機とを、内燃機関の出力軸に取着されたクランクプーリと、補機の駆動軸に取着された補機プーリとの間にベルトを掛け渡して作動連結させたものが知られている。ここで、補機が圧縮機である場合には、冷房要求の有無に応じて圧縮機の作動と停止とを切り替えるために、圧縮機の駆動軸に取着される補機プーリには、電磁クラッチが設けられている。そして、この電磁クラッチを必要に応じて接離させることにより、内燃機関のクランク軸から圧縮機の駆動軸への駆動力(回転力)の供給と供給停止とを切り替えられるようになっている。
【0003】
この内燃機関及び補機駆動装置を搭載した車両において、運転者がアクセルペダルを踏み込む等して運転者から加速要求がなされると、内燃機関に対する負荷要求が増大することになる。このような内燃機関に対する負荷要求が増大された状態で前記圧縮機が作動していると、圧縮機の作動による負荷も内燃機関に加わることとなる。このような状態では、前記運転者によるアクセル操作に対する内燃機関の応答性が低下して、車両の加速性能、そしてドライバビリティが低下することとなる。
【0004】
このような加速性能の低下を回避するために、例えば特許文献1に開示される発明には、運転者からの加速要求が存在する時には、圧縮機側の電磁クラッチを離間させ、内燃機関と圧縮機とを切り離なす、いわゆる加速カットを行う構成が知られている(第1従来構成)。
【0005】
ところで、近年、環境保護の要求が大きく高まっている。このような環境保護要求に対応すべく、アイドリング状態が所定時間継続すると、エンジンを自動的に停止する、いわゆるアイドリング・ストップ機能を有する車両も開発されてきている。この車両では、運転者がアクセルを踏み込むなどして内燃機関に再び負荷要求がなされると、内燃機関が自動的に再始動されるようになっている。そして、アイドリング・ストップ中には、圧縮機等の補機は、モータにより駆動されるようになっている。
【0006】
このようなアイドリング・ストップ機構を有する車両において、加速中における圧縮機の作動に基づく内燃機関への負荷を低減する構成としては、例えば特許文献2に開示される発明が知られている。この発明の制御装置を搭載する車両では、走行用エンジンと、走行用モータと、走行用モータ及びコンプレッサ用モータで駆動されるコンプレッサを備えている。そして、走行用エンジンの加速時には、走行用モータ及びコンプレッサ用モータを駆動して、コンプレッサの作動に伴う負荷を低下させるようにしたものである(第2従来構成)。
【0007】
【特許文献1】
特開平11−268520号公報
【特許文献2】
特開2001−95101号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記第1従来構成では、車両の加速時において、内燃機関と圧縮機との作動連結を解除するために、電磁クラッチのオフにする必要があるため、圧縮機における駆動軸の回転が一旦停止されることになる。なお、アイドリング・ストップ時に圧縮機を駆動させるモータを別途備える構成であっても、加速カットを行う構成では、圧縮機が一旦停止されることになる。このため、圧縮機が、内燃機関またはモータからの駆動力により再始動されるまでの間は、冷房ができない状態となる。
【0009】
また、内燃機関が運転されている状態で圧縮機を停止した状態から始動させる際には、内燃機関からの駆動力により回転されている圧縮機プーリに対して、停止状態の圧縮機の駆動軸に連結されるクラッチ板が継合され、圧縮機の駆動軸が急速に回転され始める。このため、圧縮機の始動に伴って内燃機関に伝達される負荷が急激に立ち上がることになり、内燃機関の回転速度が一瞬低下するような始動ショックが生じるおそれがあって、ドライバビリティの低下を招くことがあるという問題があった。
【0010】
一方、前記第2従来構成では、車両の加速時に圧縮機の作動に伴って発生する負荷を、走行用エンジンだけでなく走行用モータをも駆動させて吸収するものとなっている。このため、走行用エンジンに伝達される圧縮機からの負荷が低減されるものの、走行用モータに電力を供給するバッテリの負担が大きくなる。この際、バッテリは、コンプレッサに対しても駆動用の電力を供給する必要があるため、負担が著しく増大することになる。このため、バッテリの蓄電量が何らかの原因で低下しているような状態では、走行用モータ及びコンプレッサ用モータの両者に十分な電力を供給することが困難になるおそれがある。この状態では、走行用エンジンの加速性能が犠牲になることになり、ドライバビリティの低下を回避できないという問題があった。また、この第2従来構成は、走行用モータの存在が必須であり、走行用モータを有しない車両には適用できないという問題がある。
【0011】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両に搭載することで、補機を駆動させつつ、内燃機関の負荷要求に対する応答性を向上可能な内燃機関の補機駆動装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関に付随して設けられ、内燃機関に付随して設けられ、前記内燃機関及びモータからの駆動力が切り替え可能に供給される吐出容量を変更可能な可変容量補機を駆動する内燃機関の補機駆動装置であって、前記補機の駆動軸に前記内燃機関が作動連結される第1駆動力伝達手段と、前記モータが連結される第2駆動力伝達手段とを備え、前記第1駆動力伝達手段と第2駆動力伝達手段との間には、前記第2駆動力伝達手段の回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度以下であるときには、前記内燃機関からの駆動力を前記駆動軸に伝達するとともに、前記第2駆動力伝達手段の回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度よりも大きいときには、前記第1駆動力伝達手段と第2駆動力伝達手段との間で空転を生じさせるワンウェイクラッチ機構を設け、運転者による加速要求に応じて、前記モータにより前記第2駆動力伝達手段をその回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度より大きくなるように回転させるように制御するとともに、同制御に際して前記可変容量補機の運転状態を、その吐出容量が最小となるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
前記構成によれば、第2駆動力伝達手段の回転速度を前記第1駆動力伝達手段の回転速度より大きくなるようにすることで、第2駆動力伝達手段が第1駆動力伝達手段に対して空転することになる。このため、両駆動力伝達手段の間での駆動力伝達及び負荷伝達が遮断されて、運転者による加速要求時において、補機に起因して生じる負荷が内燃機関に伝達されるのを抑制することができる。従って、補機の駆動状態においても、運転者による加速要求に対する応答性を向上させることができる。
【0014】
また、運転者による加速要求時において、その加速要求に対応すべく補機の駆動が停止され、停止状態の補機が突然再始動されたりすることがなく、再始動時にショックを発生したりすることがない。従って、これら加速要求への応答性の向上と補機の再始動に伴うショック発生の抑制との効果により、車両に搭載した状態でドライバビリティを大きく向上させることができる。
【0016】
また、車両に搭載した状態で、補機の駆動状態での車両の加速性能が向上され、ドライバビリティをさらに向上させることができる。
さらに、運転者による加速要求に応じて、第2駆動力伝達手段の回転速度が増大されたとしても、圧縮機の吐出容量を調整することで余分な圧縮仕事をなされるのを抑制することができる。
加えて、運転者による加速要求に応じて、圧縮機において発生する負荷を最小にすることができ、運転者による加速要求に対する応答性を大きく向上させることができ、車両に搭載した状態ではドライバビリティをさらに向上させることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の補機駆動装置において、前記補機が空調装置に接続される圧縮機からなることを特徴とする。
【0017】
圧縮機は、内燃機関に付随して設けられる補機のうちで、内燃機関に与える負荷が最も大きい。このため、前記構成によれば、前記請求項1に記載の発明の効果を、特に顕著に発揮させることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の補機駆動装置において、前記可変容量補機は、内燃機関及びモータの少なくとも一方が運転されている状態では、第1駆動力伝達手段または第2駆動力伝達手段を介して、前記内燃機関及びモータの少なくとも一方からの駆動力が常に駆動軸に伝達され、冷房要求の存在しない状態であっても最小吐出容量での運転が継続されるものであることを特徴とする。
【0027】
一般に、冷房要求の存在しない状態で内燃機関と圧縮機との作動連結を遮断するために、電磁クラッチを装備することが多い。この電磁クラッチは、重量が大きく、内燃機関で圧縮機を駆動する際に内燃機関に与える負荷を大きくするものである。前記構成によれば、このような電磁クラッチを省略することができる。
【0028】
そして、補機駆動装置の軽量化を図ることができ、搭載車両の軽量化を進めることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の補機駆動装置において、前記モータは、前記内燃機関がアイドリング状態が所定時間以上継続され自動的に停止された時に前記補機に駆動力を供給するためのものであることを特徴とする。
【0029】
前記構成によれば、アイドリング・ストップ機構を有する内燃機関において、前記請求項1〜3に記載の発明の優れた効果を発揮させることができる。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の補機駆動装置において、前記モータが自動的に停止された前記内燃機関を、運転者による再始動要求に応じて前記内燃機関に駆動力を供給し、その内燃機関を再始動させるための再始動用モータを兼ねることを特徴とする。
【0030】
前記構成によれば、アイドリング・ストップ時に補機を駆動させる駆動源を、別途設ける必要がない。
【0031】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を、車両に搭載される内燃機関の補機駆動装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0032】
図1は、内燃機関としてのガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」という)11と、その周辺構成及び制御装置のシステム構成図である。
エンジン11の出力は、エンジン11の出力軸をなすクランク軸12からトルクコンバータ13及びオートマティックトランスミッション(自動変速機:以下「A/T」という)14を介してドライブシャフト15側に出力される。そして、エンジン11の出力は、さらにディファレンシャル・ギア16を介して最終的には車輪17に伝達される。
【0033】
また、エンジン11の出力は、このような車輪17への動力伝達系とは別に、クランク軸12に接続されたクランクプーリ20を介して、ベルト21に伝達される。そして、そのベルト21により連結された圧縮機プーリ22が回転される。なお、クランクプーリ20には、電磁クラッチからなるエンジンクラッチ23が備えられており、必要に応じてオン(継合)またはオフ(解放)されるようになっている。そして、このエンジンクラッチ23のオンまたはオフにより、クランクプーリ20とクランク軸12との間で出力の伝達・非伝達が切り替えられる。
【0034】
前記圧縮機プーリ22には、空調装置に接続される補機としての可変容量圧縮機(以下、単に「圧縮機」という)24の駆動軸25が、補助駆動源としてのモータ26の連結軸27を介して、ベルト21から伝達される駆動力(回転力)により駆動可能に連結されている。この圧縮機24は、エンジン11の運転状態に応じて、ベルト21及び圧縮機プーリ22とを介して伝達されるエンジン11からの回転力による駆動と、エンジン11とは独立して駆動されるモータ26からの回転力による駆動とに切り替え制御されるようになっている。
【0035】
なお、図1で省略しているが、前記ベルト21には、圧縮機24以外にも、パワーステアリングポンプ、エンジン冷却用ウォータポンプ、オイルポンプ等の1つまたは複数の補機がプーリを介して連結されている。そして、これらの補機は、その回転軸がプーリを介してベルト21と連動して回転され、作動されるようになっている。
【0036】
前記モータ26は、インバータ28に電気的に接続されている。インバータ28は、必要に応じて、電力源である高圧電源用バッテリ29からモータ26へ電力を供給することで、モータ26を駆動する。このモータ26の駆動により、エンジン11の停止時において圧縮機24の駆動軸25を回転させる。なお、インバータ28は、高圧電源用バッテリ29からの電気エネルギーの供給を調整することで、モータ26の回転速度を調整できる。また、インバータ28は、スイッチングにより、高圧電源用バッテリ29が、DC/DCコンバータ30を介して、点火系、メータ類あるいは各種ECUその他に対する電源となるように切り替える。
【0037】
なお、エンジン11には、スタータ31が設けられている。スタータ31は、低圧電源用バッテリ32から電力を供給されて、リングギアを回転させてエンジン11を始動させる。このスタータ31は、冷間始動時や運転者によるイグニッションキー操作に伴う始動時の他、アイドリング状態が所定時間以上継続され自動的に停止された後の再始動時などに、エンジン11のクランキングを行う。
【0038】
上述したエンジンクラッチ23のオンオフ切り替え、モータ26の運転、インバータ28の制御、スタータ31の制御、その他各バッテリ29,32に対する蓄電量制御は、制御手段をなすエコノミーランニングシステムECU(以下、「ERS−ECU」という)35によって実行される。ここで、エコノミーランニングシステム(ERS)とは、車両の燃費改善などのために、車両が交差点等で走行停止したときにエンジン11を自動的に停止し、運転者により発進操作がなされたときにエンジン11を自動的に再始動して、車両を発進可能とさせる自動停止始動システムのことである。
【0039】
なお、ERS−ECU35は、モータ26に内蔵されるモータ回転速度センサ36からモータ26の連結軸27の回転速度、ERSスイッチ37から運転者によるERSの始動操作の有無、その他のデータの検出をしている。
【0040】
また、圧縮機24を除く補機類の駆動オンオフ制御、A/T14の変速制御、燃料噴射弁(吸入ポート噴射型あるいは筒内噴射型)38による燃料噴射制御、電動モータ39によるスロットルバルブ40の開度制御、その他のエンジン制御は、制御手段をなすエンジンECU41により実行される。
【0041】
また、エンジンECU41には、アイドルスイッチ42、アクセル開度センサ43、車速センサ44、スロットル開度センサ45、ブレーキスイッチ46、エンジン回転速度センサ47、水温センサ、シフト位置センサ、その他のセンサが接続され、データをエンジン制御のために検出している。ここで、アイドルスイッチ42はアクセルペダルの踏み込み有無状態に、アクセル開度センサ43はアクセル開度ACCPに、車速センサ44は車速SPDに、スロットル開度センサ45はスロットル開度TAに、関する情報をそれぞれ出力している。また、ブレーキスイッチはブレーキペダル踏み込み有無状態に、エンジン回転速度センサ47はエンジン回転速度NEの情報を、水温センサはエンジン冷却水温に、シフト位置センサはシフト位置に、関する情報をそれぞれ出力している。
【0042】
また、図2は、圧縮機24を中心に空調装置48の概略構成を示す断面図である。図1及び図2に示すように、圧縮機24の吐出容量等の運転状態制御、その他の車室内を空気調和するための空調装置(エアコン)48の制御は、制御手段をなす空調装置ECU(以下、「A/C−ECU」という)49により実行される。
【0043】
ここで、空調装置48の構成について、説明する。図2に示すように、空調装置48の冷媒循環回路(冷凍サイクル)は、圧縮機24、コンデンサ(凝縮器)52、レシーバ53、膨張弁(エキスパンジョンバルブ)54、エバポレータ(蒸発器)55等によって構成されている。
【0044】
この冷媒循環回路では、冷媒が次のようにその状態が変化しながら流れる。すなわち、ガス状の冷媒は、圧縮機24で圧縮されて高温・高圧となる。圧縮機24から吐出されたガス状の冷媒はコンデンサ52で冷却されて液化した後、レシーバ53で一旦貯留される。レシーバ53を出た高圧の液状の冷媒は、膨張弁54で急激に膨張され、低温・低圧の霧状の冷媒になる。この霧状の冷媒はエバポレータ55を通過する際、そのエバポレータ55の周囲の空気から熱を奪って蒸発(気化)し、その後、圧縮機24に吸込まれる。
【0045】
このように、冷媒循環回路では、エバポレータ55において冷媒が気化する際に熱が奪う。このエバポレータ55の周りに車室内の空気を循環させることによって、車室内が冷却される。この際、空気が冷却されることにより空気中の水蒸気が水滴になり除湿される。また、エバポレータ55において冷媒が奪った熱は、コンデンサ52において冷媒が液化するときに車室外へ放出される。
【0046】
前記A/C−ECU49には、空調スイッチ57、圧縮機回転速度センサ58、内気センサ59、外気センサ60、日射センサ、エバポレータ後温度センサ61等が接続されている。ここで、空調スイッチ57は運転者による空調装置48のオンオフ操作の有無に、圧縮機回転速度センサ58は圧縮機回転速度NAに、内気センサ59は車室内の温度に、外気センサ60は車室外の温度に、関する情報をそれぞれ出力している。また、日射センサは日射量に、エバポレータ後温度センサ61はエバポレータ55を通過した直後の冷気の温度(エバポレータ温度T)に関する情報を出力している。この他、A/C−ECU49は、空調装置吹出口における風量及び温度、コンデンサ52の温度、膨張弁54の開度、その他のデータを、圧縮機24を含む空調装置制御のために検出している。
【0047】
なお、前記各ECU35,41,49は、マイクロコンピュータを中心として構成されており、内部のROMに書き込まれているプログラムに応じてCPUが必要な演算処理を実行し、その演算結果に基づいて各種制御を実行している。これらの演算処理結果及び前述のごとく検出されたデータは、ECU35,41,49間で相互にデータ通信が可能になっており、必要に応じてデータを交換して相互に連動して制御を実行することが可能となっている。
【0048】
次に、圧縮機24の構造について説明する。図2に示すように、圧縮機24は、斜板式の可変容量圧縮機となっている。圧縮機24のケーシング64内にはクランク室65が形成されるとともに、駆動軸25が回転可能に支持されている。
【0049】
ケーシング64から露出する駆動軸25の一方(図2の左方)の端部は、前記モータ26の連結軸27に連結されている。また、圧縮機24の駆動軸25とモータ26の連結軸27との間には、圧縮機24の作動を断続するための電磁クラッチが設けられておらず、この圧縮機24は、いわゆるクラッチレス圧縮機となっている。
【0050】
駆動軸25上には、ラグプレート66が一体回転可能に取付けられている。また、駆動軸25には、斜板67が軸方向へのスライド可能かつ傾動可能に支持されている。斜板67は、ヒンジ機構68を介してラグプレート66に連結されている。この連結により斜板67は、ラグプレート66及び駆動軸25と一体回転可能であり、また駆動軸25に対して傾動可能である。
【0051】
ケーシング64内には複数のシリンダ69が形成され、各シリンダ69内にピストン70が往復動可能に収容されている。各ピストン70は、シュー71を介して斜板67に係留されている。このため、各ピストン70は、駆動軸25に対して傾斜した斜板67の回転によってシリンダ69内を往復動する。このとき、斜板67の傾斜角度(斜板角度θ)に応じてピストン70のストロークが変化する。ここで、斜板角度θは、駆動軸25に直交する面に対し斜板67が交わる角度である。
【0052】
ケーシング64内において、シリンダ69の斜板67とは反対側には、吸入ポート、吸入弁、吐出ポート及び吐出弁(いずれも図示略)を有する弁・ポート形成体72が配置されている。さらに、弁・ポート形成体72のシリンダ69とは反対側には、吸入室73及び吐出室74がそれぞれ設けられている。吐出室74は、吐出絞り75を有する壁76によって第1吐出室77と第2吐出室78とに仕切られている。第1吐出室77は壁76よりもシリンダ69側に形成され、第2吐出室78は第1吐出室77及び壁76を挟んでシリンダ69とは反対側に形成されている。そして、吸入室73内の冷媒ガスは、各ピストン70が上死点から下死点(図2の右から左)へ向けて移動する際、弁・ポート形成体72の吸入ポート及び吸入弁を介してシリンダ69内へ吸入される。また、シリンダ69内の冷媒ガスは、ピストン70が下死点から上死点(図2の左から右)へ向けて移動する際に所定の圧力まで圧縮され、弁・ポート形成体72の吐出ポート及び吐出弁を介して吐出室74に吐出される。
【0053】
ケーシング64内には、クランク室65と吸入室73とを連通させる抽気通路79が設けられている。また、ケーシング64内には、吐出室74とクランク室65とを連通させる給気通路80が設けられ、その給気通路80の途中に流量制御弁83が配置されている。そして、流量制御弁83の開度を調整することにより、給気通路80を通じてクランク室65に導入される高圧の吐出ガスの流量と、抽気通路79を介してクランク室65から導出されるガスの流量とのバランスが制御される。このバランスの制御により、クランク室65の内圧Pcが、所定の範囲内において任意の圧力に変更される。この内圧Pcの変更に応じて、ピストン70両側の圧力差、すなわち内圧Pcとシリンダ69の内圧との差圧が変化し、斜板角度θが所定の範囲内で任意の角度に変化する。
【0054】
その結果、ピストン70のストローク、ひいては圧縮機24の吐出容量が、所定の範囲内で任意の容量に調節される。例えば、クランク室65の内圧Pcが低下すると、斜板角度θが大きくなってピストン70のストロークが大きくなり、吐出容量が増加する。そして、図2に示すように、斜板67の前端がラグプレート66に当接した状態では、斜板角度θが最大となり、吐出容量も最大となる。
【0055】
これとは逆に内圧Pcが上昇すると、斜板角度θが小さくなり、ピストン70のストロークが小さくなり、吐出容量が減少する。そして、図3に示すように、斜板角度が0°に近づいた状態、すなわち斜板67と駆動軸25とがほぼ直交した状態では、吐出容量が最小となる。
【0056】
次に、流量制御弁83の構造について説明する。
図4に示すように、流量制御弁83のハウジング84内には、その一方(図4の上方)の端部から他方(図4の下方)の端部に向けて、感圧室85、連通路86及び弁室87が順に設けられている。連通路86及び弁室87は給気通路80の一部を構成している。連通路86は、給気通路80の上流部を介して第1吐出室77に連通され、弁室87は給気通路80の下流部を介してクランク室65に連通されている。従って、第1吐出室77から給気通路80へ吐出された冷媒ガスは、流量制御弁83を通過する過程で連通路86及び弁室87を順に流れる。
【0057】
そして、弁室87から流量制御弁83外へ出た冷媒ガスは、再び給気通路80を通ってクランク室65に導かれる。
ハウジング84内には、弁体として、作動ロッド88が軸方向(図4の上下方向)へ往復動可能に配置されている。この作動ロッド88の一方(図4の上方)の端部によって、連通路86と感圧室85とが遮断されている。弁室87と連通路86との境界部分は弁座をなしている。一方、作動ロッド88には弁体部89が形成されており、作動ロッド88の往復動にともない弁体部89が弁座に接近及び離間することによって、給気通路80の開度が調整される。弁体部89が弁座に着座したとき給気通路80が閉鎖される。
【0058】
感圧室85内には、ベローズ等からなる感圧部材90が収容されている。感圧部材90は、ロッド受け91を介して作動ロッド88に連結されている。ロッド受け91と感圧室85の底部との間には感圧部材付勢ばね92が配置されており、ロッド受け91は、感圧部材90が伸長しようとする力と、感圧部材付勢ばね92の付勢力とが釣合う位置で静止している。感圧室85内は、感圧部材90により、その感圧部材90の内側の空間と外側の空間とに仕切られている。内側の空間には、第1吐出室77内の圧力PdHが導かれ、外側の空間には第2吐出室78内の圧力PdLが導かれている。圧力PdHは冷媒が吐出絞り75を通過する前の圧力である。また、圧力PdLは冷媒が吐出絞り75を通過した後の圧力であり、前記圧力PdHよりも低い。そして、感圧室85、感圧部材90、ロッド受け91、感圧部材付勢ばね92等によって感圧機構93が構成されている。
【0059】
感圧機構93は、冷媒循環回路における2箇所(第1吐出室77、第2吐出室78)での差圧ΔPd(PdH−PdL)の変動に基づいて感圧部材90が伸縮することで、その差圧ΔPdの変動を打消す側に圧縮機24の吐出容量が変更されるように弁体部89を変位させる。
【0060】
一方、流量制御弁83には電磁アクチュエータ94が組込まれている。電磁アクチュエータ94は磁性材からなる固定子95を備え、前述した作動ロッド88がこの固定子95に往復動可能に挿通されている。固定子95から露出する作動ロッド88の他方(図4の下方)の端部には、磁性材からなる可動子96が固定されている。可動子96は、可動子付勢ばね97により常に弁室87から遠ざかる方向(図4の下方)、すなわち開弁方向へ付勢されている。固定子95及び可動子96の周りにはコイル98が巻回配置されている。電磁アクチュエータ94では、コイル98への通電により、その通電量に応じた大きさの電磁力が、開弁方向の力に対向する力(閉弁方向の力)として、可動子96と固定子95との間に発生する。開弁方向の力としては、(a)感圧室85においてロッド受け91を介して作動ロッド88に作用するもの、(b)連通路86において弁体部89に作用するもの、(c)可動子付勢ばね97の付勢力によるもの等が挙げられる。
【0061】
流量制御弁83では、A/C−ECU49によりコイル98への通電時間がデューティ制御される。この制御に応じて、閉弁方向の力としての電磁力が変化する。弁体部89の位置が変更され、給気通路80の開度が調整される。
【0062】
例えば、コイル98に通電されない場合、すなわち、デューティ比が0%の場合には、可動子96に閉弁方向への電磁力が発生しない。前述した可動子付勢ばね97の付勢力等による開弁方向の力が支配的となり、弁体部89が弁座から離れて給気通路80が全開状態となる。このため、クランク室65の内圧Pcは、そのときおかれた状況下において取り得る最大値となり、同内圧Pcとシリンダ69の内圧との差圧が大きい。従って、斜板角度θが最少となり、圧縮機24の吐出容量が最小となる。
【0063】
また、コイル98への通電(デューティ比が0%よりも大)にともない発生する閉弁方向の電磁力が、感圧部材付勢ばね92、感圧部材90等による開弁方向の付勢力に打勝つと、作動ロッド88が閉弁方向への移動を開始する。この状態では、電磁力が、感圧部材90、可動子付勢ばね97等の付勢力によって加勢された前記差圧ΔPdに基づく開弁方向への押圧力に対抗する。そして、これら開弁方向及び閉弁方向に作用する力が均衡する位置に、作動ロッド88の弁体部89が弁座に対して位置決めされる。
【0064】
例えば、エンジン回転速度NEが低下して冷媒循環回路の冷媒流量が減少すると、差圧ΔPdに基づく開弁方向の力が減少し、その時点での電磁力では、作動ロッド88に対し、開弁方向及び閉弁方向の両方向から作用する力の均衡が図れなくなる。従って、作動ロッド88が閉弁方向へ移動して給気通路80の開度が減少し、クランク室65の内圧Pcが低下する。斜板角度θが大きくなって、ピストン70のストロークが大きくなり、圧縮機24の吐出容量が増大する。これにともない冷媒循環回路における冷媒流量が増加し、差圧ΔPdが増加する。
【0065】
前記とは逆に、エンジン回転速度NEが上昇して冷媒循環回路の冷媒流量が増大すると、差圧ΔPdに基づく開弁方向の力が増大して、その時点での電磁力では作動ロッド88に作用する付勢力の均衡が図れなくなる。従って、作動ロッド88(弁体部89)が開弁方向へ移動して給気通路80の開度が増加し、クランク室65の内圧Pcが上昇する。斜板角度θが小さくなって、ピストンのストロークが小さくなり、圧縮機24の吐出容量が減少する。これにともない冷媒循環回路における冷媒流量が減少し、差圧ΔPdが減少する。
【0066】
また、コイル98に対する通電のデューティ比を大きくして電磁力を大きくすると、その時点での差圧ΔPdに基づく力では、開弁方向及び閉弁方向の両方向から作用する力の均衡が図れなくなる。このため、作動ロッド88(弁体部89)が閉弁方向へ移動して給気通路80の開度が減少し、圧縮機24の吐出容量が増大される。その結果、冷媒循環回路における冷媒流量が増大し、差圧ΔPdも増大する。
【0067】
逆に、コイル98に対する通電のデューティ比を小さくして電磁力を小さくすると、その時点での差圧ΔPdに基づく力では、開弁方向及び閉弁方向の両方向から作用する力の均衡が図れなくなる。このため、作動ロッド88(弁体部89)が開弁方向へ移動して給気通路80の開度が増加し、圧縮機24の吐出容量が減少する。その結果、冷媒循環回路における冷媒流量が減少し、差圧ΔPdも減少する。
【0068】
このように、流量制御弁83では、コイル98に対する通電のデューティ比によって決定された差圧ΔPdの制御目標(設定差圧)を維持するように、この差圧ΔPdの変動に応じて自律的に作動ロッド88(弁体部89)が位置決めされる。また、この設定差圧は、コイル98に対する通電のデューティ比を調節することで変更可能である。このため、エバポレータ55での熱負荷の状況にほとんど影響されることなく、応答性及び制御性の高い吐出容量の制御を行うことができる。
【0069】
次に、モータ26の構造について、説明する。図5は、モータ26の概略構成を示す断面図である。
モータ26のケーシング101内には、連結軸27が一対のニードルベアリングからなるラジアルベアリング102を介して回転可能に支持されており、モータ26のステータ103及びロータ104が収容されている。ステータ103は、ケーシング101の内周面上に環状をなすように形成され、通電することにより磁界を発生するステータコイルとなっている。ロータ104は、連結軸27の中央に固着されており、永久磁石を有しステータ103内で回転するマグネットロータとなっている。ロータ104とケーシング101の前後方向の両内壁面との間には、ニードルベアリングからなる一対のスラストベアリング105が介装されている。
【0070】
連結軸27の一端は、ケーシング101から外部に突出されており、前記圧縮機24の駆動軸25に連結されている。連結軸27の他端は、ケーシング101から外部に突出されており、ワンウェイクラッチ機構106を内蔵する圧縮機プーリ22が取着されている。
【0071】
この圧縮機プーリ22は、第2駆動力伝達手段としてのリテーナ108と、一対のアンギュラベアリング109と、複数の係合部材110と、第1駆動力伝達手段としての回転ヨーク111とからなっている。前記リテーナ108は、有底円筒状をなし、連結軸27の前端にボルト107により固着されている。前記一対のアンギュラベアリング109は、そのリテーナ108の外周面上に装着されている。前記係合部材110は、それらアンギュラベアリング109の間に配設されている。前記回転ヨーク111は、アンギュラベアリング109及び係合部材110の外周面上に装着されている。そして、この回転ヨーク111の外周側部分112と、クランクプーリ20との間に、ベルト21が掛け渡されている。
【0072】
ワンウェイクラッチ機構106としては、例えばスプラグ式、ローラ式、エンゲージ式等の一般的なものを用いることができる。いずれのタイプでも、ワンウェイクラッチ機構106は、インナレースとアウタレースと係合部材110とを備えている。ここで、インナレースは連結軸27に回り止めされた状態で固着されるリテーナ108によって構成され、アウタレースは回転ヨーク111の内周側部分113によって構成されている。
【0073】
係合部材110は、アウタレースとインナレースとの間において、前記一対のアンギュラベアリング109間に、潤滑用のグリースに封入された状態で配置されている。エンジン11の運転に伴ってクランク軸12が回転されるとともに、モータ26が運転されていない状態では、係合部材110がインナレースとアウタレースとに噛み合ってロック状態となる。この状態では、クランク軸12の回転は、クランクプーリ20、ベルト21及び圧縮機プーリ22を介してモータ26の連結軸27に伝達され、さらに圧縮機24の駆動軸25に伝達される。これにより、圧縮機24がエンジン11からの駆動力(回転力)によって駆動される。
【0074】
また、エンジン11とモータ26が同時に駆動されている場合には、モータ26側のリテーナ108の回転速度がエンジン11側の回転ヨーク111の回転速度よりも小さい範囲では、係合部材110がインナレースとアウタレースとに噛み合ったロック状態が維持される。なお、このとき、エンジン11からの駆動力によって回転される回転ヨーク111の回転方向と、モータ26によって回転されるリテーナ108の回転方向とが、同じになるように設定されている。このため、前記と同様に、エンジン11からの駆動力(回転力)がモータ26の連結軸27を介して圧縮機24の駆動軸25に伝達される。この場合、圧縮機24は、エンジン11からの駆動力とモータ26からの駆動力とによって駆動される。
【0075】
一方、モータ26側のリテーナ108の回転速度がエンジン11側の回転ヨーク111の回転速度よりも大きくなると、係合部材110がインナレースとアウタレースとに噛み合わなくなり、フリー状態となる。このため、ワンウェイクラッチ機構106が切り離された状態となり、エンジン11からの駆動力(回転力)がモータ26の連結軸27に伝達されなくなる。そして、圧縮機24は、専らモータ26からの駆動力によって駆動されるとともに、圧縮機24側の負荷がエンジン11側に伝達されなくなる。
【0076】
さらに、エンジン11の運転が自動停止されるなどして、エンジン11からの駆動力の伝達が停止されている状態で、車室内に冷房要求が存在するときには、モータ26を駆動させる。この状態では、エンジン11側の回転ヨーク111の回転速度はゼロとなる。これに対して、モータ26側のリテーナ108は、モータ26の回転速度に対応する回転速度で回転されていることになり、見かけ上、モータ26側のリテーナ108の回転速度がエンジン11側の回転ヨーク111の回転速度よりも大きくなっていることになる。このため、係合部材110は、インナレースとアウタレースとに噛み合わずフリー状態となる。
【0077】
次に、A/C−ECU49にて実行される前記モータ26及び圧縮機24の動作の制御について説明する。
エンジンECU41では、アクセル開度センサ43からのアクセル開度ACCP、車速センサ44からの車速SPD、エンジン回転速度センサ47からのエンジン回転速度NE等に関する情報に基づいて、車両の走行状態及びエンジン11に対する負荷状態を検出している。そして、エンジンECU41は、検出された車両の走行状態と負荷状態とに応じてエンジン11の運転状態を制御している。
【0078】
A/C−ECU49では、空調スイッチ57からの空調装置48のオン・オフ操作、圧縮機回転速度センサ58からの圧縮機回転速度NA、内気センサ59からの車室内温度、外気センサ60からの外気温、エバポレータ後温度センサ61からの冷気温度等に関する情報に基づいて冷房要求を検出している。そして、A/C−ECU49は、検出された冷房要求に基づいて圧縮機24の吐出容量を変更すべく流量制御弁83の開度を調整している。これにより、前述のように、圧縮機24の給気通路80の開度が変更され、クランク室65の内圧Pcとシリンダ69の内圧との差圧が調整され、斜板角度θが変化して吐出容量が制御される。
【0079】
ここで、運転者が加速の必要があると判断しアクセルを踏み込むと、エンジンECU41は、アクセル開度センサ43からもたらされるアクセル開度ACCPの増大を検出し、加速要求、つまりエンジン11に対する負荷要求がなされたと判断する。この加速要求に基づいて、エンジンECU41は、ERS−ECU35に対し、モータ26を駆動させるように指令する。このとき、エンジンECU41は、ERS−ECU35に対し、エンジン回転速度センサ47からのエンジン回転速度NEに関する情報も併せて出力する。
【0080】
このエンジンECU41からの指令に基づいて、ERS−ECU35は、インバータ28に対しワンウェイクラッチ機構106がフリー状態となる回転速度に到達するようにモータ26への電力供給を指令する。このフリー状態は、モータ26により回転される圧縮機プーリ22のリテーナ108の回転速度が、エンジン11により回転される圧縮機プーリ22の回転ヨーク111の回転速度より大きくなったときに実現される。このフリー状態を実現するための条件式は、次の(1)式となる。
NM > NE×Dap/Dcp …(1)
なお、NM : モータ26の回転速度
NE : エンジン回転速度
Dap : 圧縮機プーリ22の径
Dcp : クランクプーリ20の径
言い換えると、モータ26の連結軸27を、エンジン11からの駆動力を得て回転させる状態より、モータ26自身の駆動により高速に回転させることで、係合部材110と回転ヨーク111及びリテーナ108との噛み合いが解除され、回転ヨーク111がリテーナ108に対して空転することになる。この状態では、エンジン11からモータ26の連結軸27、ひいては圧縮機24の駆動軸25への駆動力伝達は遮断されることはもとより、圧縮機24からエンジン11への負荷伝達も遮断された状態となる。
【0081】
また、エンジンECU41は、このERS−ECU35によるモータ26の駆動制御の指令に同期して、A/C−ECU49に対し圧縮機24の吐出容量を最小とするように指令する。A/C−ECU49は、圧縮機24の給気通路80が全開状態となるように、流量制御弁83のコイル98への通電を停止させる。これにより、クランク室65の内圧が、そのときおかれた状況下で取り得る最大となり、斜板角度θが最小となり、圧縮機24の吐出容量が最小となる。
【0082】
そして、例えば運転者によるアクセルの踏み込みが弱められ、エンジンECU41がアクセル開度センサ43からもたらされるアクセル開度ACCPの減少を検出すると、エンジンECU41は加速要求がなくなったと判断する。そして、エンジンECU41は、ERS−ECU35に対し、モータ26の駆動を停止するように指令する。
【0083】
このエンジンECU41からの指令に基づいて、ERS−ECU35は、インバータ28に対し、モータ26への通電を停止するように指令する。このモータ26への通電停止によりモータ26が駆動されなくなり、連結軸27及びリテーナ108の回転速度が徐々に低下していく。そして、リテーナ108の回転速度が、エンジン11により回転される回転ヨーク111の回転速度より小さくなると、ワンウェイクラッチ機構106の係合部材110がインナレースとアウタレースとの間に噛み合ってロック状態となる。これにより、エンジン11からの駆動力がリテーナ108へと伝達され、モータ26の連結軸27、ひいては圧縮機24の駆動軸25がエンジン11からの駆動力によって駆動されるようになる。
【0084】
また、エンジンECU41は、このERS−ECU35によるモータ26の駆動停止の指令に同期して、A/C−ECU49に対し、そのときの冷房要求に応じて圧縮機24の吐出容量を制御するように指令する。すなわち、A/C−ECU49は、空調スイッチ57での設定、内気センサ59及び外気センサ60からの内外気温、エバポレータ後温度センサ61からの冷気の温度、圧縮機回転速度センサ58からの圧縮機回転速度NA等の情報に従って、車室内の冷房要求を検出する。A/C−ECU49は、検出した冷房要求の強弱に応じて、圧縮機24の給気通路80の開度を調整すべく、流量制御弁83のコイル98への通電のデューティ比を調整する。これにより、給気通路80の開度が調整され、クランク室65の内圧Pcとシリンダ69の内圧との差圧が変更され、斜板角度θが調整され、圧縮機24の吐出容量が調整される。
【0085】
次に、ERS−ECU35により実行されるエンジン11の自動停止に応じた圧縮機24の駆動制御について説明する。
上述のようにERS−ECU35は、車両の走行停止に応じてエンジン11を自動的に停止させている。そしてこのときに車室内の冷房要求が存在していれば、モータ26を駆動させ、圧縮機24の作動を維持している。
【0086】
ただしバッテリ29の充電量が十分に確保されていない状態で、モータ26を駆動させれば、その駆動に伴う電力消費のため、エンジン11の再始動に必要な電力が不足する虞がある。
【0087】
そこでERS−ECU35は、エンジン11が自動停止されているときに、バッテリ29の充電量を監視し、その不足が確認されたときには、モータ26駆動を禁止する。それと共に、エンジン11を再始動させて、その動力で圧縮機24の作動を維持させる。
【0088】
なお、ここではバッテリ29の充電量の過不足を、同バッテリ29の出力電圧に基づいて判断するようにしている。具体的には、バッテリ29の出力電圧が所定の判定値A未満であるときに、充電量が不足していると判断して、上記のようなモータ26の駆動禁止が実施されている。
【0089】
図6に、そうした圧縮機24の駆動制御に係る「補機駆動制御ルーチン」のフローチャートを示す。本ルーチンの処理は、エンジン11の運転中、ERS−ECU35により周期的に実行されている。
【0090】
本ルーチンの処理が開始されると、まずステップ600において、エンジン11が停止中であるか否かが判断される。ここでエンジン11が停止中であれば(YES)、処理をステップ601に移行する。またエンジン11が停止中でなければ(NO)、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0091】
ステップ601では、空調スイッチ57がオンとされているか否かが判断される。ここで空調スイッチ57がオンであれば(YES)、処理をステップ602に移行する。また空調スイッチ57がオフであれば(NO)、ステップ604においてモータ26が停止され、本ルーチンが一旦終了される。
【0092】
ステップ602では、バッテリ29の出力電圧(バッテリ電圧)が上記判定値A未満であるか否かが判断される。ここでバッテリ29の出力電圧が判定値A以上であれば(NO)、ステップ605においてモータ26が駆動される。このときの圧縮機24は、モータ26により駆動される。
【0093】
一方、バッテリ29の出力電圧が判定値A未満である場合には(YES)、すなわちバッテリ29の充電量が十分に確保されていなければ、ステップ603においてエンジン11が再始動され、ステップ604においてモータ26の駆動が停止される。このときの圧縮機24は、エンジン11により駆動される。
【0094】
以上詳述したように、この実施形態にかかる補機駆動装置によれば、以下に示すような優れた効果が得られるようになる。
(1)この補機駆動装置では、圧縮機24の駆動軸25には、圧縮機プーリ22が取着されている。その圧縮機プーリ22には、エンジン11のクランクプーリ20にベルト21を介して連結される回転ヨーク111と、モータ26の連結軸27に固着されたリテーナ108とを有している。これら回転ヨーク111とリテーナ108との間には、ワンウェイクラッチ機構106が設けられている。
【0095】
このワンウェイクラッチ機構106は、リテーナ108の回転速度が回転ヨーク111の回転速度以下ではエンジン11からの駆動力を圧縮機24の駆動軸25に伝達し、リテーナ108の回転速度が回転ヨーク111の回転速度よりも大きいとリテーナ108に対して回転ヨーク111を空転させる。そして、加速要求等でエンジン11に対する負荷要求が所定以上に増大したときには、モータ26によりリテーナ108をその回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させるように制御するようになっている。
【0096】
前記構成によれば、エンジン11に対する負荷要求が所定以上に増大したときには、圧縮機プーリ22において、リテーナ108に対して回転ヨーク111を空転させることができる。このため、これら回転ヨーク111とリテーナ108の間での駆動力伝達及び負荷伝達が遮断されて、エンジン11の負荷要求増大時において、圧縮機24に起因して生じる負荷がエンジン11に伝達されるのを抑制することができる。従って、圧縮機24の駆動状態においても、エンジン11の負荷要求に対する応答性を向上させることができる。
【0097】
また、エンジン11の負荷要求増大時において、その負荷要求増大に対応すべく駆動が停止された圧縮機24が突然再始動されたりすることがなく、再始動時にショックを発生したりすることがない。従って、これら負荷要求への応答性の向上と圧縮機24の再始動に伴うショック発生の抑制との効果により、車両に搭載した状態でドライバビリティを大きく向上させることができる。
【0098】
(2)この補機駆動装置では、エンジンECU41が、運転者による加速要求に応じて、モータ26により圧縮機プーリ22のリテーナ108をその回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させるべく制御する。
【0099】
このため、車両に搭載した状態で、圧縮機24の駆動状態での車両の加速性能が向上され、ドライバビリティをさらに向上させることができる。
(3)この補機駆動装置では、駆動する補機が空調装置48に接続される圧縮機24となっている。圧縮機24は、エンジン11に付随して設けられる補機のうちで、エンジン11に与える負荷が最も大きい。このため、前記構成によれば、前記(1)または(2)に記載の効果を、特に顕著に発揮させることができる。
【0100】
(4)エンジン11に対する加速要求に対応すべくワンウェイクラッチ機構106をフリー状態にするため、モータ26の回転速度が増大されると、圧縮機24の駆動軸25の回転速度も増大することになる。これにより、圧縮機24のなす仕事も増大することとなる。
【0101】
これに対して、この補機駆動装置では、圧縮機24が、吐出容量を変更可能な可変容量圧縮機からなっている。このため、圧縮機24の吐出容量を調整することで余分な圧縮仕事をなされるのを抑制することができる。
【0102】
(5)この補機駆動装置では、加速時などエンジン11に対する負荷要求が増大したときに、モータ26によりワンウェイクラッチ機構106のリテーナ108をその回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させる。この負荷要求増大時におけるリテーナ108の回転速度の制御を行うと、圧縮機24の駆動軸25の回転速度が、エンジン11からの駆動力により駆動される加速開始前に比べて増大することになる。ここで、この補機駆動装置では、前記リテーナ108の回転速度の制御と同時に、圧縮機24の吐出容量が加速開始前より小さくなるように制御するようになっている。このため、圧縮機24において余分な圧縮仕事がなされることなく、加速性能等のエンジン11に対する負荷要求に対する応答性を高く維持することができる。
【0103】
(6)この補機駆動装置では、モータ26により圧縮機プーリ22のリテーナ108をその回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させるべく制御する際に、圧縮機24の運転状態を、その吐出容量が最小となるように制御するようになっている。このため、加速要求等でエンジン11に対する負荷要求が増大されたときに、圧縮機24において発生する負荷を最小にすることができる。そして、圧縮機24をモータ26で駆動する際にも、圧縮機24の圧縮仕事に伴って発生する負荷が最小となるため、消費される電力を最小にすることができる。
【0104】
(7)この補機駆動装置では、圧縮機24が、その駆動軸に25に、エンジン11またはモータ26からの駆動力が常時伝達され、車室内に冷房要求の存在しない状態であっても最小吐出容量での運転が継続されるようになっている。
【0105】
一般に、冷房要求の存在しない状態でエンジン11と圧縮機24との作動連結を遮断するために、電磁クラッチを装備することが多い。この電磁クラッチは、重量が大きく、エンジン11で圧縮機24を駆動する際にエンジン11に与える負荷を大きくするものである。これに対して、前記構成によれば、このような電磁クラッチを省略することができる。そして、補機駆動装置の軽量化を図ることができ、搭載車両の軽量化を進めることができる。
【0106】
また、圧縮機24の始動及び停止の回数を低減することができ、多くの回転部分及び摺動部分を抱える圧縮機24において、それら回転部分及び摺動部分の潤滑切れを起こしにくくすることができる。
【0107】
さらに、エンジン11の運転状態において、圧縮機24が停止状態から始動しつつエンジン11に作動連結されることがない。このため、圧縮機24とエンジン11との作動連結再開時において、圧縮機24がエンジン11に与える負荷をより小さくすることができる。従って、さらなるドラバビリティの向上を図ることができる。
【0108】
(8)この補機駆動装置では、モータ26が、加速時等、エンジン11に対する負荷要求の増大時に、ワンウェイクラッチ機構106をフリー状態にするべく圧縮機プーリ22のリテーナ108を回転させる。そして、このモータ26は、エンジン11がアイドリング状態が所定時間以上継続され自動的に停止された時に圧縮機24に駆動力を供給するためのモータ26の役割も担っている。このため、アイドリング・ストップ機構を有するエンジン11において、前記(1)〜(7)に記載の発明の優れた効果を発揮させることができる。
【0109】
(9)この補機駆動装置では、エンジン11の自動停止中に、バッテリ29の充電量が十分に確保されていないときには、モータ26による圧縮機24の駆動を禁止させている。このため、エンジン11の再始動に必要な電力が不足することを好適に回避することができる。
【0110】
更にこの補機駆動装置では、そうしたモータ26の駆動禁止と共に、エンジン11を再始動させている。このため、バッテリ29の充電量が十分に確保されていないときにも、圧縮機24の駆動を継続することができる。
【0111】
(第2実施形態)
次に、本発明を、前記第1実施形態と同様に、車両に搭載されるエンジン11の補機、特に圧縮機24の駆動装置に具体化した第2実施形態について、前記第1実施形態と異なる点を中心に、図7を参照して説明する。
【0112】
この第2実施形態の補機駆動装置では、圧縮機24の駆動軸25と、補助駆動源及び再始動用駆動源をなすモータジェネレータ(以下、「M/G」という)121とが互いに独立して設けられている。このM/G121は、ERS−ECU35の制御のもとで、アイドリング状態で所定時間以上継続され自動停止されたエンジン11を、運転者からの再始動要求に基づいて再始動させる役割を担っている。また、このM/G121は、エンジン11により駆動されるときには、発電機の役割を果たしている。さらに、エンジン11の自動停止中に、圧縮機24をはじめとする補機を駆動させる役割を担っている。
【0113】
このM/G121の回転軸122の一端には、第1M/Gプーリ123と第2M/Gプーリ124とが一体回転可能に取着されている。第1M/Gプーリ123と第2M/Gプーリ124とは、ともに同一の径に形成されている。第1M/Gプーリ123には、電磁式のM/Gクラッチ125が取着されている。
【0114】
圧縮機24の駆動軸25の一端には、第1圧縮機プーリ126と第2圧縮機プーリ127とが一体回転可能に取着されている。第1圧縮機プーリ126と第2圧縮機プーリ127とは、ともに前記第1及び第2M/Gプーリ123,124と同一の径に形成されている。第1圧縮機プーリ126には、ワンウェイクラッチ機構106が取着されている。
【0115】
そして、エンジン11のクランクプーリ20と第1M/Gプーリ123と第1圧縮機プーリ126とにわたって主駆動ベルト128が掛け渡されている。また、第2M/Gプーリ124と第2圧縮機プーリ127とにわたって補助駆動ベルト129が掛け渡されている。
【0116】
この補機駆動装置では、エンジン11が運転状態にあるときには、エンジンクラッチ23がオン状態にされ、クランク軸12のクランクプーリ20及び主駆動ベルト128を介して、第1圧縮機プーリ126及び第1M/Gプーリ123に伝達される。このエンジン11が通常の運転状態にあるときでは、エンジンECU41は、ERS−ECU35を介して、M/Gクラッチ125がオン状態となるように制御する。このため、第1M/Gプーリ123の回転は、M/G121の回転軸122に伝達され、M/G121が発電機として作動される。そして、発電された電力は、インバータ28を介して主に高圧電源用バッテリ29の充電に供される。
【0117】
このエンジン11が通常に運転されている状態では、第2圧縮機プーリ127には、第1M/Gプーリ123と同期して回転される第2M/Gプーリ124の回転が補助駆動ベルト129を介して伝達される。ここで、第1及び第2M/Gプーリ123,124及び第1及び第2圧縮機プーリ126,127は、いずれも同じ径に形成されている。このため、第1圧縮機プーリ126のワンウェイクラッチ機構106におけるエンジン11側に連結される回転ヨーク111の回転速度と、M/G121側に連結されるリテーナ108の回転速度は、ほぼ同一となる。これにより、係合部材110が回転ヨーク111とリテーナ108との間に噛み合って、ワンウェイクラッチ機構106がロック状態となり、エンジン11からの駆動力(回転力)が圧縮機24の駆動軸25に伝達される。そして、圧縮機24は、このエンジン11からの駆動力によって、A/C−ECU49の制御の下で、そのときの車室内における冷房要求に応じて吐出容量が調整されつつ運転される。
【0118】
また、運転者によりアクセルが踏み込まれ、エンジンECU41が、加速要求がなされたと判断すると、エンジンECU41はERS−ECU35を介してM/Gクラッチ125がオフ状態となるように制御する。これにより、M/G121の回転軸122へのクランクプーリ20の回転の伝達が遮断される。そして、ERS−ECU35は、この制御と同期してM/G121の駆動を指令する。このとき、ERS−ECU35は、M/G121の回転速度を、前記式(1)を満足するように設定する。(ただし、前記式(1)なお書きにおいて、モータ26をM/G121に、圧縮機プーリ22を第1圧縮機プーリ126にそれぞれ読み替えるものとする。)
この状態では、第1圧縮機プーリ126のワンウェイクラッチ機構106において、M/G121により駆動されるリテーナ108の回転速度が、エンジン11により駆動される回転ヨーク111の回転速度より大きくなる。これにより、係合部材110は、回転ヨーク111とリテーナ108との噛み合いが解除され、回転ヨーク111がリテーナ108に対して空転することになる。これにより、圧縮機24は、M/G121からの駆動力により駆動され、圧縮機24からエンジン11への負荷伝達が遮断される。
【0119】
一方、エンジン11がアイドリング状態で所定時間以上掛架すると、ERS−ECU35は、エンジン11を自動停止すべく、スロットルバルブ40を全閉にするとともに、エンジンクラッチ23及びM/Gクラッチ125をオフにするように制御する。そして、車室内に冷房要求が存在するときには、M/G121を駆動させ、M/G121からの駆動力を第2M/Gプーリ124、補助駆動ベルト129及び第2圧縮機プーリ127を介して圧縮機24の駆動軸25に伝達させ、圧縮機24を作動させる。
【0120】
また、エンジン11が自動停止されている状態から、運転者によりアクセルが踏み込まれると、エンジンECU41は、アクセル開度センサ43からの情報により再始動要求がなされたものと判断する。そして、エンジンECU41は、ERS−ECU35を介して、エンジンクラッチ23及びM/Gクラッチ125をオフ状態からオン状態への切り替えを指令する。また、ERS−ECU35は、M/G121を所定の回転数で回転させ、M/G121からの駆動力を、第1M/Gプーリ123、主駆動ベルト128及びクランクプーリ20に伝達させる。
【0121】
これにより、停止状態にあるエンジン11のクランク軸12がクランキングされ、エンジン11が再始動される。
ところで、本実施形態の補機駆動装置では、A/C−ECU49は、前記加速時でのM/G121の駆動制御に同期して、次のような圧縮機24の吐出容量制御を行う。
【0122】
すなわち、エンジン11からの駆動力からM/G121からの駆動力での駆動に切り替えられると、ワンウェイクラッチ機構106をフリー状態とするために、圧縮機24の駆動軸25の回転速度は高められることになる。このため、そのまま圧縮機24の運転を継続すると、圧縮機24が過大な圧縮仕事をすることになり、車室内の冷房要求を超える冷房がなされるおそれがある。
【0123】
このような過剰な冷房を抑制するために、A/C−ECU49は、駆動源の切り替えに伴う圧縮機24の駆動軸25の回転速度の増分に見合う吐出容量の増分を打ち消すように、圧縮機24の吐出容量を低下させるように制御する。これにより、ワンウェイクラッチ機構106のフリー状態を実現するために、圧縮機24の駆動軸25の回転速度を高めたとしても、車室内が過剰に冷却されることが抑制される。
【0124】
以上詳述したように、この第2実施形態にかかる補機駆動装置によれば、前記第1実施形態に記載の(1)〜(5)、(7)及び(8)とほぼ同様の効果に加えて、以下に示すような優れた効果が得られるようになる。
【0125】
(9)この補機駆動装置では、加速時等のエンジン11に対する負荷要求の増大時に、M/G121によりワンウェイクラッチ機構106のリテーナ108を、その回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させる。そして、前記圧縮機24を、エンジン11からの駆動力により駆動軸25が回転されている状態と、M/G121からの駆動力により駆動軸25が回転される状態との間における駆動軸25の回転速度の増分に応じて、圧縮機24の吐出容量を低減させるようになっている。
【0126】
このため、加速時等のエンジン11に対する負荷要求の増大時に、圧縮機24において発生する負荷を低減して、エンジン11の負荷要求に対する応答性を向上させることができ、車両に搭載した状態ではドライバビリティを大きく向上させることができる。これと同時に、前記リテーナ108の回転速度を制御する際に、圧縮機24を車室内の冷房要求に沿った運転状態とすることができ、車室内を過不足なく冷房することができる。
【0127】
(10)この補機駆動装置では、M/G121は、加速時等のエンジン11に対する負荷要求の増大時に、ワンウェイクラッチ機構106のリテーナ108を、その回転速度が回転ヨーク111の回転速度より大きくなるように回転させる。また、このM/G121は、アイドリング・ストップ機能により、自動的に停止されたエンジン11を、運転者による再始動要求に応じてエンジン11に駆動力を供給し、そのエンジン11を再始動させる。このため、アイドリング・ストップ時に圧縮機24を駆動させる駆動源を、再始動用のM/G121とは別途に設ける必要がない。
【0128】
(変形例)
なお、前記各実施形態は、例えば以下のように適宜変形することもできる。
・前記第1実施形態では、補助駆動源をなすモータ26が、圧縮機プーリ22と圧縮機24との間に圧縮機プーリ22及び圧縮機24とは独立して設けられている。これに対して、モータ26を、圧縮機プーリ22内または圧縮機24のケーシング64内に収容した状態で設けてもよい。
【0129】
・前記各実施形態では、圧縮機24として、いわゆるクラッチレスタイプの可変容量圧縮機を採用した。これに対し、圧縮機として、電磁クラッチを有する可変容量圧縮機を採用し、加速時等のエンジン11に対する負荷要求の増大時にも、圧縮機を停止させることなく、モータ26、M/G121等で駆動させるようにしてもよい。
【0130】
この場合、前記負荷要求の増大時に、単に電磁クラッチをオフ状態にして、圧縮機を停止させ、圧縮機からエンジン11に伝達される負荷をカットする方法(例えば、加速カット)では得られない、次のような効果が得られる。すなわち、前記負荷要求の増大時であって、車室内に冷房要求が存在する時に、空調装置48を作動を確保することができる。また、前記負荷要求が低下した際にも、圧縮機が一気に駆動されることがなく、圧縮機の再始動に伴って圧縮機からエンジン11に伝達される負荷が急増し、その負荷の急増に伴うショックの発生を抑制することができる。さらに、圧縮機が停止及び再始動の回数が削減され、圧縮機内の回転部分及び摺動部分の潤滑性を高く維持することができる。
【0131】
・前記各実施形態では、圧縮機24として、斜板式の可変容量圧縮機を採用したが、例えばスクロール式、ベーン式、ワブル式、波板式等の可変容量圧縮機を採用してもよい。
【0132】
・前記各実施形態では、圧縮機24として、片頭ピストン式の可変容量圧縮機を採用したが、例えば両頭ピストン式の可変容量圧縮機を採用してもよい。
・前記各実施形態では、圧縮機24の給気通路80の途中に流量制御弁83を設け、その流量制御弁83の開度を調整するようになっている。要は、この流量制御弁83の開度調整により、給気通路80を通じてクランク室65に導入される高圧の吐出ガスの流量と、抽気通路79を介してクランク室65から導出されるガスの流量とのバランスを制御することができればよい。例えば、圧縮機24の抽気通路79の途中に流量制御弁83を設け、その流量制御弁83の開度を調整するようにしてもよい。または、圧縮機24の給気通路80と抽気通路79の両方の途中に流量制御弁83を設け、両流量制御弁83の開度を調整するようにしてもよい。
【0133】
・前記各実施形態では、運転者による加速要求時に、モータ26またはM/G121を駆動させて、ワンウェイクラッチ機構106をフリー状態にとするように制御するものとした。これに対して、例えば車両が登坂路あるいは悪路にさしかかるなどして、運転者によるアクセル踏み込み量がほぼ一定であるにもかかわらず、車速センサ44で検出される車速SPDが低下してきているような場合に、前記各実施形態と同様のワンウェイクラッチ機構106にかかる制御を行うようにしてもよい。
【0134】
・前記各実施形態では、本発明をガソリンエンジン11の補機駆動装置に具体化したが、ディーゼルエンジンの補機駆動装置に具体化してもよい。
・前記各実施形態では、本発明を圧縮機24の駆動装置に具体化したが、その他の補機、例えばパワーステアリングポンプ、ウォータポンプ、オイルポンプ等の駆動装置に具体化してもよい。
【0135】
・前記各実施形態では、本発明をA/T14を搭載した車両において具体化したが、その他の変速機、例えば全自動式のマニュアルトランスミッション、従来のマニュアルトランスミッション、あるいは無段変速機(CVT)などを搭載する車両において具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態の補機駆動装置を示す概略構成図。
【図2】図1の空調装置の概略構成を含めて、斜板角度が最大となった状態の圧縮機を示す断面図。
【図3】図1の斜板角度が最小となった状態の圧縮機を示す断面図。
【図4】図2の容量制御弁を示す断面図。
【図5】図1のモータの概略構成を示す断面図。
【図6】第1実施形態のモータ駆動制御のフローチャート。
【図7】第2実施形態の補機駆動装置を示す概略構成図。
【符号の説明】
11…内燃機関としての(ガソリン)エンジン、24…補機としての(可変容量)圧縮機、25…駆動軸、26…補助駆動源をなすモータ、35…制御手段をなすエコノミーランニングシステムECU(ERS−ECU)、41…制御手段をなすエンジンECU、48…空調装置、49…制御手段をなす空調装置ECU(A/C−ECU)、106…ワンウェイクラッチ機構、108…第2駆動力伝達手段をなすリテーナ、111…第1駆動力伝達手段をなす回転ヨーク、121…補助駆動源及び再始動装置をなすモータジェネレータ(M/G)。
Claims (5)
- 内燃機関に付随して設けられ、前記内燃機関及びモータからの駆動力が切り替え可能に供給される吐出容量を変更可能な可変容量補機を駆動する内燃機関の補機駆動装置であって、
前記補機の駆動軸に前記内燃機関が作動連結される第1駆動力伝達手段と、前記モータが連結される第2駆動力伝達手段とを備え、前記第1駆動力伝達手段と第2駆動力伝達手段との間には、前記第2駆動力伝達手段の回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度以下であるときには、前記内燃機関からの駆動力を前記駆動軸に伝達するとともに、前記第2駆動力伝達手段の回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度よりも大きいときには、前記第1駆動力伝達手段と第2駆動力伝達手段との間で空転を生じさせるワンウェイクラッチ機構を設け、運転者による加速要求に応じて、前記モータにより前記第2駆動力伝達手段をその回転速度が前記第1駆動力伝達手段の回転速度より大きくなるように回転させるように制御するとともに、同制御に際して前記可変容量補機の運転状態を、その吐出容量が最小となるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする内燃機関の補機駆動装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の補機駆動装置において、
前記補機が空調装置に接続される圧縮機からなることを特徴とする内燃機関の補機駆動装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の補機駆動装置において、前記可変容量補機は、内燃機関及びモータの少なくとも一方が運転されている状態では、第1駆動力伝達手段または第2駆動力伝達手段を介して、前記内燃機関及びモータの少なくとも一方からの駆動力が常に駆動軸に伝達され、冷房要求の存在しない状態であっても最小吐出容量での運転が継続されるものであることを特徴とする内燃機関の補機駆動装置。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関の補機駆動装置において、
前記モータは、前記内燃機関がアイドリング状態が所定時間以上継続され自動的に停止された時に前記補機に駆動力を供給するものであることを特徴とする内燃機関の補機駆動装置。 - 請求項4に記載の内燃機関の補機駆動装置において、
前記モータが自動的に停止された前記内燃機関を、運転者による再始動要求に応じて前記内燃機関に駆動力を供給し、その内燃機関を再始動させるための再始動用モータを兼ねることを特徴とする内燃機関の補機駆動装置。
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