JP4084566B2 - シリンジポンプの送りねじ用支持軸受およびシリンジポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はシリンジポンプの送りねじ用支持軸受およびこの軸受を用いたシリンジポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
体内への栄養補給や輸血、化学療法剤、麻酔剤等の薬液注入を所定の注入速度で行なう装置としてシリンジポンプが多用されている。
このシリンジポンプは、送りねじに係合する直線運動可能なスライダーによりシリンジの押子が押圧されて、シリンジ内の薬液が体内に注入される。スライダーは、送りねじの回転力が軸方向移動に変換されて直線運動となる。
また、薬液の注入前や注入後にシリンジをシリンジポンプにセットしたり、シリンジポンプから除去したりしなくてはならないので、シリンジはシリンジポンプに着脱自在に保持され、必要に応じてシリンジの押子とスライダーとが係合する構造となっている。送りねじとスライダーとの係合は、ハーフナットを送りネジに脱着することによりなされ、送りねじの回転力をスライダーの直線運動に変換したり停止させたりしている。
【0003】
一方、シリンジポンプは薬液が確実に体内に注入されているか否かを常に監視する必要があるため、送りねじの軸方向にかかるスラスト荷重を検知して、薬液注入状態を監視している(例えば、特公平8−24712号公報、特開2000−107288号公報)。
【0004】
従来のシリンジポンプの送りねじの端部の一例を図3に示す。図3はハウジングに組み付けられている部分の拡大断面図である。
シリンジポンプの送りねじの端部3cを支持する送りねじ用支持軸受は、ラジアル荷重に対しては、フランジ付きミニチュアボール軸受10が用いられている。また、スラスト荷重の検知は主に転がりピボット軸受11をねじ軸の端面に接触させ、ねじ軸の軸方向変位を歪みゲージなどの検出手段7bにより測定することによりなされている。このため、軸受を潤滑するために、ねじ軸にグリースが塗布され、定期的に例えば3ヶ月毎に装置を分解してグリースの補充と、スラスト荷重の検知部分の精度確認を行なっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のフランジ付きミニチュアボール軸受を用いた場合、装置を分解して再度組み立てる際に、部品が落下する、スラスト荷重検知部品の組み付けが精度良くできない等の問題がある。
また、軸受はハウジング部に圧入や幅方向固定または接着固定されていることが多く、ねじ軸を取り外す場合、軸受固定部を破壊しなければならないという問題がある。
さらに、ボール軸受等にグリースの補給効果がなくなると、摺動時に異音が発生したり、スラスト荷重の検知が十分でなくなったりするという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、シリンジポンプの送りねじの無潤滑軸受化の実現と、軸受端部の組み立て容易性の向上と、ねじ軸の取り外しを可能とするシリンジポンプの送りねじ用支持軸受およびこの軸受を用いたシリンジポンプの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のシリンジポンプの送りねじ用ラジアル軸受は、送りねじに係合する直線運動可能なスライダーによりシリンジの押子を駆動することでシリンジ内の薬液を送出するとともに、上記送りねじの軸方向にかかるスラスト荷重を検知する手段を軸端部に備えてなるシリンジポンプにおいて、上記送りねじの軸端部を支持するものであり、該送りねじ用ラジアル軸受は、軸受外径部が金属製で、上記送りねじと摺動する内径部がフッ素樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物で構成されてなり、給油を必要としない無潤滑軸受であることを特徴とする。
【0008】
本発明のシリンジポンプは、送りねじに係合する直線運動可能なスライダーによりシリンジの押子を駆動することでシリンジ内の薬液を送出するとともに、上記送りねじの軸方向にかかるスラスト荷重を検知する手段を軸端部に備えてなり、上記送りねじの軸端部と摺動する部分が上記送りねじ用支持軸受であることを特徴とする。
【0009】
本発明のシリンジポンプの送りねじ用ラジアル軸受は、送りねじの軸端部と摺動する部分を合成樹脂製すべり軸受とすることにより、軸受の給油を必要としない無潤滑化ができる。
また、軸受外径部が金属製で、内径部が潤滑性樹脂組成物で作製することにより、シリンジポンプのハウジングへの組み付け性が着脱自在で、かつ容易にできるようになる。
上述した本発明の送りねじ用軸受を用いることにより、シリンジポンプの軸受部の無潤滑化が可能となり、また組み立て性が向上する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のシリンジポンプの一例を図1により説明する。図1はシリンジポンプの構成例を示す。
シリンジポンプ1は、押子2aが内挿されたシリンジ2を着脱自在に保持する手段5と、シリンジ2内の薬液を送出するためのスライダー4と、スライダー4に係合して直線運動させる送りねじ3とから構成される。送りねじ3は、シリンジポンプ装置の一部であるハウジング8に固定されたシリンジポンプの送りねじ用支持軸受およびスラスト荷重検知手段7に、その一端部が軸支されている。また、送りねじ3を回転駆動させるためのモータ9と大歯車9a、小歯車9bを介して他端とに噛合しており、送りねじ3は軸方向に僅かに移動自在に支持されている。
【0011】
シリンジ2を着脱自在に保持する手段5は薬液注入時にシリンジ2が固定できる手段であればよく、例えばクランプ、ばね力などを利用して固定する。
【0012】
スライダー4は、その一端をシリンジ2と平行に配置された送りねじ3を構成するハーフナット3aに、他端を該シリンジの押子2aにそれぞれ固定されている。送りねじ3を構成するねじ軸3bの回転運動がハーフナット3aの直線運動に変換され、そのハーフナット3aの移動とともに押子2aを前進後退させる。例えば、送りねじ3のハーフナット3aは大歯車9a、小歯車9bを介してモータ9と噛合し、モータ9の駆動により押子2aが所定の速度で所定の区間押されて薬液を送出する。
【0013】
ハーフナット3aは、送りねじのナットを軸方向断面において二分割したナットであり、薬液送出時には、送りねじ3とスライダー4とが連動するように、また、シリンジポンプ交換時等には、断絶できるように設定する。例えば、ハーフナット3aを送りねじ3に脱着することによってモータ9の駆動をスライダー4に伝達させたり断絶させたりできる。
ねじ軸3bは、ステンレスなどの耐腐食性金属で形成される。
【0014】
シリンジポンプの送りねじ用支持軸受6およびスラスト荷重検知手段7がハウジング8に組み付けられている部分の拡大断面図を図2に示す。
ねじ軸3bの端部3cがラジアル軸受6に軸支され、この軸受6は軸受外径部6bが金属製で、内径部6aが潤滑性樹脂組成物で構成されている。金属製外径部6bがハウジング8に固定される部分はねじ切り加工がなされており、ハウジング8との着脱が自在にできるようになっている。また、少なくとも軸受外径部6bは、スラスト荷重検知手段7部品の取り付け性や取り付け時の部品の落下等を防ぐために、あるいは後述するスラスト軸受7cを収納できるように、軸受6の幅Dを従来のフランジ付きミニチュア軸受の幅よりも大きくする。
【0015】
軸受内径部6aは、潤滑性樹脂組成物の成形体であり、金属製外径部6bに接着剤等で固定されている。潤滑性樹脂組成物は合成樹脂にフッ素樹脂、黒鉛、二硫化炭素等の固体潤滑材を配合した樹脂材料である。本発明においては摺動性に優れるフッ素樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物が特に好ましい。市販品としては、ベアリーFL3000系列の樹脂組成物(NTN精密樹脂社製、商品名)が挙げられる。
【0016】
ねじ軸の端部3cは、軸方向にかかるスラスト荷重を検知するスラスト荷重検知手段7と端面で摺接している。スラスト荷重検知手段7は、開口部を有する枠7aと、この枠7a内に保持されてねじ軸3bの軸方向変位を検出する検出手段7bと、送りねじの軸端部と摺動する部分が合成樹脂製のスラスト軸受7cと、このスラスト軸受7cとねじ軸の端部3cとの間に介在してスラスト荷重を伝達する球体7dとから構成される。
枠7aはボルトなどの締結部品7eによりハウジング8に着脱自在に取り付けられる。
検出手段7bは板バネと歪みゲージの組み合わせ、半導体を利用した圧力センサーなど軸方向変位を検出できる手段であれば使用できる。検出された変位量はリード線により出力される。
スラスト軸受7cは上述した潤滑性樹脂組成物の成形体を使用できる。スラスト軸受7cは合成樹脂で一体に形成しても、摺動部だけを潤滑性樹脂組成物で形成し金属製ホルダに接着した構造を採用してもよい。この場合、スラスト軸受7cは潤滑性樹脂組成物のシート材を打ち抜いたものであってもバックメタルを有する複層軸受の板材を打ち抜いたものであってもよい。
【0017】
上記スラスト荷重検知手段7は、送りねじの軸端部と摺動する部分をすべりピボット軸受形状とすることにより、スラスト軸受7cを球体7dでガイドすることができるので、スラスト荷重検知感度が向上する。また、スラスト軸受の芯だし、位置決めなどが容易になり、組み立て性が向上する。
なお、図2においては、球体7dを介在させる構造であるが、スラスト軸受にすべりピボット軸受形状を採用しないで、スラスト軸受7cの摺動部に半球状の突起を形成することで球体7dを省いた構造にしてもよい。さらに、スラスト軸受にすべりピボット軸受形状を採用しないでフラット面にして、ねじ軸の端部3cを半球状として球体7dを省いた構造にしてもよい。
【0018】
シリンジ2の内部に異物が詰まったり、シリンジ2が外れたりすることにより、シリンジ2の内圧が定常状態から変動すると、その変動に応じて、軸方向に僅かに移動自在に支持されている送りねじ3が軸方向へ変位する。スラスト荷重検知手段7は、この変位を検知する装置である。本発明のすべりピボット軸受形状とすることにより、転がり軸受の遊びが少なくなるので検出精度が向上する。
【0019】
【発明の効果】
本発明のシリンジポンプの送りねじ用ラジアル軸受は、送りねじの軸端部と摺動する部分を合成樹脂製のすべり軸受とするので、金属製ねじ軸への給油を必要としない無潤滑軸受ができる。
また、ラジアル軸受の軸受外径部が金属製で、内径部が潤滑性樹脂組成物で構成されるので、摺動性に優れるとともにハウジングへの取り付けが容易となる。
【0020】
本発明のシリンジポンプは、送りねじの軸端部と摺動する部分が上記送りねじ用支持軸受であるので、シリンジポンプの軸受部の無潤滑化が可能となるとともに、ねじ軸およびスラスト荷重検知部分の取り付け、取り外しが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】シリンジポンプの構成例を示す図である。
【図2】送りねじ用軸受端部の部分拡大断面図である。
【図3】従来の送りねじ用軸受端部の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 シリンジポンプ
2 シリンジ
3 送りねじ
4 スライダー
5 シリンジ保持手段
6 ラジアル軸受
7 スラスト荷重検知手段
8 ハウジング
9 モータ

Claims (2)

  1. 送りねじに係合する直線運動可能なスライダーによりシリンジの押子を駆動することでシリンジ内の薬液を送出するとともに、前記送りねじの軸方向にかかるスラスト荷重を検知する手段を軸端部に備えてなるシリンジポンプに用いられる、前記送りねじの軸端部を支持する送りねじ用ラジアル軸受であって、
    該送りねじ用ラジアル軸受は、軸受外径部が金属製で、前記送りねじと摺動する内径部がフッ素樹脂をベース樹脂とした樹脂組成物で構成されてなり、給油を必要としない無潤滑軸受であることを特徴とするシリンジポンプの送りねじ用ラジアル軸受。
  2. 送りねじに係合する直線運動可能なスライダーによりシリンジの押子を駆動することでシリンジ内の薬液を送出するとともに、前記送りねじの軸方向にかかるスラスト荷重を検知する手段を軸端部に備えてなるシリンジポンプであって、
    前記送りねじの軸端部が請求項1記載の送りねじ用ラジアル軸受で支持されることを特徴とするシリンジポンプ。
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