しかし、上述の控を使用してブロック塀を補強する方法には改善すべき点がある。
すなわち、この従来の方法を実施する場合には、ブロック塀内に縦筋が1本ずつ、そのブロック塀の長さ方向に間隔を置いて埋設され、その結果、ブロック塀は、1本ずつ一列に並んだ縦筋によって補強される。一方、縦筋は、ブロック塀の倒壊を防止するためにブロック塀内において有効に作用する鉄筋であり、縦筋の数が多いほど、ブロック塀の倒壊が良好に防止される。
そのため、この従来の方法を実施する場合には、縦筋の数が少ないため、縦筋によってブロック塀が補強される程度を高めることが困難であった。その結果、そのようなブロック塀を控を用いて補強するためには、控への依存度が高くなり、そのため、控がサイズアップする傾向があった。
具体的には、この従来の方法を実施する場合には、控をブロック塀の高さ全体を直接に補強するものとすることが必要であり、そのため、補強すべきブロック塀が高いほど、それに合わせてその控を高くしなければならなかった。
さらに、この従来の方法を実施する場合には、控と縦筋との連結が、ブロックの積上げ終了後にしか行うことができない。そのため、ブロックの積上げ段階において縦筋の位置決めにその控を利用してブロック塀施工時の作業効率を向上させることができなかった。
以上説明した事情を背景として、本発明は、地中に基礎を埋設し、その埋設された基礎の上にブロックを複数段積み上げることによってブロック塀を構築し、そのブロック塀の両側のうちの少なくとも一側である補強側に補強金具を設置する技術において、ブロック塀内に埋め込まれた縦筋によるそのブロック塀の補強度を向上させるとともに、ブロックの積上げ段階において補強金具を利用してブロック塀施工時の作業効率を向上させることを課題としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈されるべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきである。
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈されるべきである。
(1)地中に基礎を埋設し、その埋設された基礎の上にブロックを複数段積み上げるとともにそれらブロック内に縦筋と横筋とを補強鉄筋として埋め込むことによってブロック塀を構築し、そのブロック塀の両側のうちの少なくとも一側である補強側に、互いに平行な上側水平板部および下側水平部がそれらに対して傾斜する傾斜部によって同一面内において連結された構造を有する補強金具を設置するブロック塀構築方法であって、
地盤のうち前記ブロック塀を設置しようとする場所にそのブロック塀の長さ方向に延びる溝を掘削し、その溝内に生のセメント材を流し込んで硬化させることにより、前記基礎を構築する基礎工程と、
その構築された基礎の上に前記ブロックを1段ずつ、各ブロックに前記縦筋を挿通するとともにセメント材で充填しながら積み上げる積上げ工程と
を含み、かつ、
前記基礎工程が、
(a)前記生のセメント材の流込みに先立ち、前記ブロック塀の厚さ方向に並んだ2本の縦筋を1対とする複数の縦筋対を、そのブロック塀の長さ方向に間隔を置いて並ぶとともに各縦筋の下端部が前記基礎内に埋め込まれることとなるように配置する縦筋配置工程と、
(b)前記溝のうち前記補強金具を設置しようとする場所にアンカーを、そのアンカーの下端部が前記基礎内に埋め込まれることとなるように配置するアンカー配置工程と
を有し、かつ、
前記積上げ工程が、
(a)予め定められた段数のブロックが積み上げられたときに、前記傾斜部が前記ブロックおよび前記基礎を2辺とする直角三角形の斜辺を構成する姿勢で、前記上側水平板部は前記縦筋対に、前記下側水平部は前記アンカーにそれぞれ連結し、それにより、前記補強金具を設置する補強金具設置工程と、
(b)前記予め定められた段数のブロックが積み上げられたときに、そのブロックの上面近傍において前記横筋を前記縦筋対間の隙間を通過するように配置する横筋配置工程と
を有するブロック塀構築方法。
この方法によれば、2本ずつ間隔を置いて並んだ縦筋がブロック塀内に埋め込まれることによってそのブロック塀が補強されるため、1本ずつ一列に並んだ縦筋によって補強を行う場合より、その補強度を向上させることが容易となる。
さらに、この方法によれば、1対を成す2本の縦筋がブロック塀の厚さ方向に並ぶように配置される。したがって、この方法によれば、ブロック塀を片持ち梁とみてそれの撓みを考えると、各縦筋がブロック塀の中立面から離れて位置するため、それら2本の縦筋を中立面上に配置する場合より、ブロック塀の撓みに対する剛性向上に各縦筋が効果的に作用する。
その結果、この方法によれば、各縦筋の寸法の割に良好にブロック塀の撓みを防止することができる。
このように、この方法によれば、2本ずつ間隔を置いて並んだ縦筋によってブロック塀が内的に補強されてそのブロック塀自体の剛性が向上するため、ブロック塀を外的に補強する補強金具に対する依存度が低くて済むこととなる。その結果、この方法によれば、補強金具の高さをそれが補強すべきブロック塀の高さの割に低くすることが容易となる。
さらに、この方法によれば、ブロックの積上げ段階において2本ずつの縦筋が補強金具と連結される。このとき、補強金具は、それら2本ずつの縦筋を結束する機能を果たす。補強金具は、ブロック塀の完成後にあっては、ブロック塀を補強する機能を果たすことになるから、結局、同じ補強金具でありながら、補強機能のみならず結束機能も果すことになるのである。
したがって、この方法によれば、補強金具の結束機能により、ブロック塀施工時における作業効率を向上させることが容易となる。
さらに、この方法によれば、少なくとも1本の横筋が縦筋対間の隙間を通過するように配置されるため、横筋が縦筋対の外側を通過するように配置される場合より、それら縦筋と横筋との結合を強固に行うことが容易となり、このことによっても、ブロック塀が内的に補強される程度を向上させることが容易となる。
なお付言すれば、本項において「基礎工程」は、それの縦筋配置工程とアンカー配置工程とがそれらの順に実施されるように実施したり、それとは逆の順序で実施されるように実施したり、ほぼ並行的に実施されるように実施することが可能である。
さらに付言すれば、本項において「積上げ工程」は、それの補強金具設置工程と横筋配置工程とがそれらの順に実施されるように実施したり、それとは逆の順序で実施されるように実施したり、ほぼ並行的に実施されるように実施することが可能である。
さらに付言すれば、本項において「複数の縦筋対」は、その縦筋対に該当しない少なくとも1本の縦筋と共に一列に並ぶように配置したり、その縦筋対に該当しないものを含まないで一列に並ぶように配置することが可能である。
さらに付言すれば、本項における「ブロック」は、広義のブロックを意味しており、よって、狭義のブロックであるコンクリート製ブロックのみならず、他の材料で製作されたブロック、レンガ等、直方体状を成すものを含んでいる。また、本項における「下側水平部」および「傾斜部」は、例えば、板状を成す下側水平板部および傾斜板部として構成したり、パイプ状を成す下側水平パイプおよび傾斜パイプとして構成することが可能である。
さらに付言すれば、本項に係る方法は、下記の各項に係る補強金具を用いて実施することが可能である。
(2) 前記積上げ工程が、さらに、前記予め定められた段数のブロックが積み上げられたときに、前記上側水平板部を前記横筋に連結する横筋連結工程を含む(1)項に記載のブロック塀構築方法。
この方法によれば、同じ上側水平板部に2本の縦筋と横筋とが連結されるため、補強金具が、ブロックの積上げ段階において、2本の縦筋を結束して位置決めする機能に加えて、横筋を位置決めする機能も果たすことが可能となる。
したがって、この方法によれば、ブロック塀施工時における作業効率をさらに向上させることが容易となる。
なお付言するに、本項における「横筋連結工程」は、前記(1)項における「横筋配置工程」と一緒に実施することが可能である。
(3) 地中に埋設された基礎の上にブロックを複数段積み上げることによって構築されるブロック塀であって、そのブロック塀の厚さ方向に並んだ2本の縦筋を1対とする複数の縦筋対が、そのブロック塀の長さ方向に間隔を置いて並ぶように前記ブロック塀内に埋め込まれるとともに、予め定められた段数のブロックの上面近傍において横筋が前記縦筋対間の隙間を通過するように前記ブロック塀内に埋め込まれたブロック塀の両側のうちの少なくとも一側である補強側に設置されることにより、そのブロック塀を補強する補強金具であって、
互いに平行な上側水平板部および下側水平部がそれらに対して傾斜する傾斜部によって同一面内において連結された構造を有するとともに、前記傾斜部が前記ブロックおよび前記基礎を2辺とする直角三角形の斜辺を構成し、かつ、前記上側水平板部は前記縦筋対に、前記下側水平部は前記アンカーにそれぞれ連結される状態で、前記ブロック塀に設置されるブロック塀のための補強金具。
この補強金具によれば、ブロックの積上げ段階において2本の縦筋を結束することが可能になるとともに、それら2本の縦筋と基礎に植え込まれたアンカーとを、引張や圧縮に抗するように対角線状に設けられた構造部材であるブレースとして機能する傾斜部によって互いに連結することにより、ブロック塀を外的に補強することが可能となる。
(4) 前記ブロックが、統一された寸法規格に従って製作されたものであり、前記上側水平板部と前記下側水平部との距離が、そのブロックの高さ寸法の整数倍に実質的に一致する(3)項に記載のブロック塀のための補強金具。
この補強金具によれば、それの高さ寸法、すなわち、上側水平板部と下側水平部との距離が、規格化されたブロックの高さ寸法の整数倍に実質的に一致させられる。
したがって、この補強金具によれば、規格化されたブロックを用いてブロック塀を構築しようとする場合である限り、ブロック塀の施工現場においていちいち補強金具を、そのブロック塀の寸法に合わせて組み立てることが不要となる。よって、ブロック塀施工時における作業能率を向上させることが容易となる。
(5) 前記予め定められた段数のブロックが、最下段のブロックであり、前記距離が、1個のブロックの高さ寸法に実質的に一致する(4)項に記載のブロック塀のための補強金具。
前述のように、この補強金具が設置されるブロック塀は、それの厚さ方向に並んだ2本ずつの縦筋によって内的に補強され、それ自体の倒れ剛性が高いため、その補強金具のサイズダウンが容易となる。
そして、本項に係る補強金具は、複数段のブロックのうちの最下段のものに設置される。具体的には、その補強金具の高さ寸法が、1個のブロックの高さ寸法に実質的に一致させられるとともに、2本ずつの縦筋のうち最下段のブロックの上面から突出する部分が、その補強金具のうちの上側水平板部に連結される。
したがって、この補強金具によれば、それの高さが低くなり、その結果、ブロック塀に設置された状態で、基礎の上面からの高さも低くなる。よって、この補強金具によれば、それを埋めるのに必要な土の量が少なくて済むため、補強金具が視覚的にも物理的にも邪魔になることを容易に防止し得る。
(6) さらに、前記上側水平板部と前記下側水平部とに対して直角に延びてそれらを互いに連結する柱部を含み、かつ、その柱部が、前記ブロック塀の表面に沿って鉛直に延びる状態で設置される(3)ないし(5)項のいずれかに記載のブロック塀のための補強金具。
この補強金具によれば、その補強金具によって補強されていない側にブロック塀が倒れようとすると、柱部が上側水平板部から圧縮力を受ける。その圧縮力に柱部が耐え得る限り、上側水平板部が下側水平部に接近してブロック塀が補強されていない側に倒れることが防止される。
したがって、この補強金具によれば、柱部の存在により、さらに効果的にブロック塀の剛性を向上させることが容易となる。
本項における「柱部」は、板状素材で構成したり、閉じた断面で延びる素材(例えば、パイプ)で構成することが可能である。板状素材で構成する場合、真直ぐな断面を有するように構成したり、断面係数を高めるべく曲がり(例えば、C字状、L字状、波状の曲がり)を有する断面を有するように構成することが可能である。
(7) 前記上側水平板部が、前記縦筋対と連結されるべき第1連結部と、前記横筋と連結されるべき第2連結部とを含む(3)ないし(6)項のいずれかに記載のブロック塀のための補強金具。
(8) さらに、設置状態において前記上側水平板部と同じ高さで水平に延びる棚を含む(3)ないし(7)項のいずれかに記載のブロック塀のための補強金具。
この補強金具によれば、棚を例えば、椅子として使用したり、物を置くテーブルとして使用することが可能となり、その結果、この補強金具の機能が多様化されてそれの利便性が向上する。
本項における「棚」は、上側水平板部の一部として構成したり、それから独立した別の部材によって構成することが可能である。
(9) 前記上側水平板部と前記傾斜部と前記下側水平部とが、それらの順に互いに分離不能に結合されている(3)ないし(8)項のいずれかに記載のブロック塀のための補強金具。
(10) 前記下側水平部が、板状を成す下側水平板部として構成され、前記傾斜部が、板状を成す傾斜板部として構成され、前記上側水平板部と前記傾斜板部と前記下側水平板部とが、同一の板状素材の折り曲げによって一体的に形成された(3)ないし(9)項のいずれかに記載のブロック塀のための補強金具。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1の側面の第1実施形態に従う補強金具10が斜視図で示されている。図2には、この補強金具10の使用状態が側面断面図で示されている。図2から明らかなように、この補強金具10は、縦筋12と横筋14とが埋め込まれて内的に補強されたブロック塀20と共に使用される。
図1に示すように、この補強金具10は、共にステンレス製である第1および第2のストリップ(短冊状の板材)30,32によって構成されている。第1のストリップ30は、それの長さ方向における2箇所で折り曲げられて構成されている。その折り曲げにより、第1のストリップ30は、互いに平行な上側水平板部40および下側水平板部42と、それらに対して直角に延びてそれらを互いに連結する柱部44とを含むように構成されている。
このように構成された第1のストリップ30に第2のストリップ32が溶接によって接合されている。その結果、第2のストリップ32が、柱部44と下側水平板部42のうちその柱部44に近い部分とを2辺とする直角三角形の斜辺を構成するとともに、上側水平板部40と下側水平板部42とに対して傾斜する傾斜板部46を構成している。
図2に示すように、上側水平板部40は、1段目のブロック50と2段目のブロック50との間に配置される。さらに、上側水平板部40は、それら両ブロック50,50に挿通されるとともにブロック塀20の厚さ方向に並んだ2本の縦筋12,12に連結される。それら2本の縦筋12,12は、互いに同じL字状の形状を有している。
図1に示すように、上側水平板部40には、2本の縦筋12,12が個別に挿通されて連結されるための2個の連結穴60,60がそれぞれ貫通穴として、第1のストリップ30の長さ方向に並んで形成されている。各連結穴60の直径は、それに挿通されるべき縦筋12の直径より少し大きく設定されている。さらに、それら2個の連結穴60,60間の間隔は、2本の縦筋12,12間の間隔に実質的に一致するように設定されている。
図2に示すように、下側水平板部42は、基礎70の水平な上面に支持される。基礎70にはアンカーボルト(これが前記(1)項における「アンカー」の一例である。)74が植え込まれており、このアンカーボルト74が下側水平板部42に挿通される。そのアンカーボルト74にナット76が螺合されることにより、下側水平板部42が基礎70に固定される。そのため、図1に示すように、下側水平板部42のうち、アンカーボルト74に対応する位置に、そのアンカーボルト74が挿通されて連結されるための連結穴78が貫通穴として形成されている。
図3には、この補強金具10が、それを図2において右側から左側に向かう向きに見た正面図で示されている。図4には、この補強金具10が背面図で示され、図5には、左側面図で示されている。この補強金具10の右側面図は、左側面図と対称にあらわれるため、省略されている。さらに、図6には、この補強金具10が平面図で示され、図7には、底面図で示されている。
図8には、この補強金具10を用いてブロック塀20を構築するブロック塀構築方法が工程図で表されている。このブロック塀構築方法は、本発明の第2の側面の一実施形態に従うものであり、以下、図8および図9を参照しつつ、このブロック塀構築方法を具体的に説明する。本実施形態においては、ブロック塀20が、図2に示すように、敷地80と道路82との境界に設置される。
このブロック塀構築方法においては、まず、図8のステップS100(以下、単に「S100」で表す。他のステップについても同じとする。)において、基礎工程が行われる。
この基礎工程において、まず、S101において、掘削工程が行われ、次に、S102において、縦筋配置工程が行われ、続いて、S103において、コンクリート打込み工程が行われ、その後、S104において、アンカーボルト配置工程が行われる。
掘削工程は、根切り工程ともいわれる工程であり、この工程においては、図9の(a)に示すように、地盤のうちブロック塀20を設置しようとする場所にそのブロック塀20の長さ方向に延びる溝84が掘削される。
縦筋配置工程は、配筋工程ともいわれる工程であり、この工程においては、図9の(a)に示すように、ブロック塀20の厚さ方向に並んだ2本の縦筋12,12を1対とする複数の縦筋対と1本の縦筋12とが交互に、ブロック塀20の長さ方向に間隔を置いて一列に並ぶように配置される。さらに、各縦筋12が、それの下端部において基礎70内に埋め込まれることとなるように配置される。
図10に示すように、ブロック50は、統一された寸法規格に従って製作されており、それの左右の端部にはそれぞれ縦溝90が形成されている。さらに、ブロック50の上面には、左右に延びる横溝92が形成されている。縦溝90には1対の縦筋12,12または1本の縦筋12が挿通され、後述するが、横溝92には1本の横筋14が挿通される。
コンクリート打込み工程においては、図9の(b)に示すように、掘削された溝84内に生のセメント材としてのコンクリート94が流し込まれる。この流込みに先立ち、適宜、溝84と地盤とが木枠96によって互いに仕切られる。
アンカーボルト配置工程においては、図9の(b)に示すように、溝84のうち補強金具10を設置しようとする場所にアンカーボルト74が、そのアンカーボルト74の下端部が基礎70内に埋め込まれることとなるように配置される。アンカーボルト74がコンクリート94に植え込まれるのであり、この植込みはコンクリート94の硬化前に行われる。
溝84に流し込まれたコンクリート94が硬化すると、基礎工程が完了し、次に、図8のS200において、積上げ工程が行われる。この積上げ工程においては、基本的には、図9の(c)に示すように、基礎70の上にブロック50が1段ずつ、各ブロック50に縦筋12を挿通するとともにセメント材で充填しながら積み上げられる。前述のように、縦筋12は2本ずつ、ブロック50の縦溝90に挿通される。
この積上げ工程においては、S201において、横筋配置工程が行われ、S202において、補強金具設置工程が行われる。
横筋配置工程においては、図10に示すように、1段目のブロック50(これが前記(1)項における「予め定められた段数のブロック」の一例であり、最下段のブロックでもある。)が基礎70の上に積み上げられたときに、そのブロック50の上面近傍において横筋14が縦筋対12,12間の隙間を通過するように配置される。横筋14は、それの両側から2本の縦筋12,12によって挟まれることにより、位置が固定される。前述のように、横筋14は、ブロック50の横溝92内に挿通される。
補強金具設置工程においては、1段目のブロック50が基礎70の上に積み上げられるとともに横筋14が配置された後に、図9の(d)に示すように、補強金具10が1段目のブロック50の上面に設置される。
具体的には、傾斜板部46がブロック50および基礎70を2辺とする直角三角形の斜辺を構成する姿勢で、縦筋対12,12は上側水平板部40の2個の連結穴60,60に、アンカーボルト74は下側水平板部42の連結穴78にそれぞれ挿通されて連結される。上側水平板部40はブロック50の上面に、下側水平板部42は基礎70の上面にそれぞれ支持される。下側水平板部42は、アンカーボルト74のねじ部にナット76が螺合されることによって基礎70に固定されるが、この固定は、ブロック50の積上げの途中において行っても、完了後に行ってもよい。
この補強金具設置工程においては、縦筋対12,12が上側水平板部40の2個の連結穴60,60にそれぞれ挿通されることにより、縦筋対12,12が、補強金具10によって結束された状態で位置決めされることとなる。
以上説明した積上げ工程が終了すれば、図8のS300において、仕上げ工程が行われる。この仕上げ工程においては、例えば、図2に示すように、ブロック塀20の外側面(道路82に面する側面である。)にタイル、土壁等の仕上げ材98を接着することや、基礎70の上に土を盛ることが行われる。図2の例においては、補強金具10の全体が完全に地中に埋設されるように土盛りが行われており、その結果、補強金具10が地上に露出する場合とは異なり、補強金具10が視覚的にも物理的にも邪魔にならずに済む。さらに、図2の例においては、地盤の高さが、敷地80の方が道路82より高くなっている。
次に、本発明の第2実施形態に従う補強金具110とそれを用いてブロック塀20を構築する方法とを説明する。ただし、本実施形態は、第1実施形態と共通する要素が多いため、共通する要素については同一の名称または符号を使用して引用することにより、詳細な説明を省略し、異なる要素についてのみ詳細に説明する。なお、後述の他の実施形態についても、これと同様にして説明する。
第1実施形態においては、図1に示すように、上側水平板部40が、1対を成す2本の縦筋12,12との連結部を備えているが、横筋14との連結部は備えていない。
これに対し、本実施形態においては、図11の(a)の側面図、(b)の斜視図および図12の平面図に示すように、上側水平板部40が、1対を成す2本の縦筋12,12との連結部として、2個の連結穴60,60を同一面内に備えるとともに、1本の横筋14との連結部として、2個の連結穴120,120を互いに同軸に備えている。
本実施形態においては、上側水平板部40の両側縁から一対の連結片122,122が下方に延び出している。それら一対の連結片122,122は、ブロック塀20の長さ方向に平行な方向において対面しており、それら一対の連結片122,122にそれぞれ連結穴120,120が、貫通穴として、互いに同軸に形成されている。各連結穴120の直径は、それに挿通されるべき横筋14の直径より少し大きく設定されている。さらに、それら一対の連結穴120,120は、図12に示すように、上側水平板部40を真上から見た場合に、縦筋対12,12のための2個の連結穴60,60の中間に位置するように位置決めされている。
図13には、この補強金具110を使用してブロック塀20を構築するブロック塀構築方法のうちの積上げ工程のみがS400として工程図で表されている。
この積上げ工程においては、横筋配置に先立ち、S401において、図8におけるS202と同様にして、補強金具110が1段目のブロック50に設置される。この設置により、1対を成す2本の縦筋12,12が補強金具110によって結束される。
次に、S402において、1本の横筋14が1段目のブロック50の上面に配置される。この配置に際し、横筋14は、先に設置された補強金具110の2個の連結穴120,120に挿通される。これにより、結局、同じ補強金具110により、1対を成す2本の縦筋12と1本の横筋14とが結束されることとなる。
本実施形態においては、補強金具110が、縦筋12のみならず横筋14にも連結されるため、縦筋12のみに連結される場合より、補強金具110によってブロック塀20が外的に補強される程度を向上させることが容易となる。
次に、本発明の第3実施形態に従う補強金具130を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図1に示すように、上側水平板部40が、1対を成す2本の縦筋12,12との連結部として、2個の連結穴60,60を備えている。
これに対し、本実施形態においては、図14の(a)の側面図および(b)の斜視図に示すように、上側水平板部140が、それの長さ方向(ブロック塀20の厚さ方向に平行な方向である。)に一列に並んだ3個以上の連結穴142を、1対を成す2本の縦筋12,12との連結部として備えている。さらに、本実施形態においては、上側水平板部140の長さが、第1実施形態における上側水平板部40より長く設定されている。
このように構成された補強金具130をブロック塀20に設置する場合には、そのブロック塀20に使用されるブロック50の厚さに応じてそれに埋設される縦筋12の位置が異なるため、その縦筋12の位置に合わせて、3個以上の連結穴142のうちのいずれか2個が選択される。さらに、上側水平板部140のうち、設置状態においてブロック塀20の内側面(敷地80に面する側面である。)から突出する部分が、ブロック塀20内に位置する部分から切り取られ、これにより、上側水平板部140の長さも、ブロック50の厚さに合わせられる。
次に、本発明の第4実施形態に従う補強金具150を第3実施形態との比較において説明する。
第3実施形態においては、上側水平板部140が、1対を成す2本の縦筋12,12との連結を位置可変に行うために、3個以上の連結穴142を備えている。
これに対し、本実施形態においては、図15の(a)の側面図および(b)の斜視図に示すように、上側水平板部40が、1対を成す2本の縦筋12との連結を行うために、1個の連結穴162を、上側水平板部160の長さ方向に延びる長穴として備えている。
この連結穴162の長さを、1対を成す2本の縦筋12,12間の間隔に適合するように予め設定する場合には、その連結穴162によってそれら2本の縦筋12,12が、常に同じ位置において結束される。これに対し、その連結穴162の長さを、それら2本の縦筋12,12間の間隔より長くなるように予め設定する場合には、それら2本の縦筋12,12の位置の変化を吸収できるし、さらに、それら2本の縦筋12,12間の間隔の変化も吸収できる。
次に、本発明の第5実施形態に従う補強金具170を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図2に示すように、補強金具10の高さ、すなわち、上側水平板部40と下側水平板部42との距離(垂直距離)が、ブロック50の1個分の高さに適合させられるとともに、その補強金具10が、基礎70と最下段のブロック50とに設置されている。
これに対し、本実施形態においては、図16に示すように、補強金具170の高さが、ブロック50の複数個分の高さに適合させられるとともに、その補強金具170が、基礎70と、最下段のブロック50を含む複数段のブロック50とに設置されている。ただし、それら複数段のブロック50には最上段のブロック50は含まれない。
したがって、本実施形態においては、補強金具170が3段以上のブロック塀20に設置される場合に、その補強金具170の上側水平板部40が、最下段のブロック50と最上段のブロック50とを除くいずれかの段のブロック50と、それの直ぐ上のブロック50との間に配置される。よって、本実施形態によれば、補強金具170を基礎70と最下段のブロック50とに設置する場合より、補強金具170によって効果的にブロック塀20を補強することが容易となる。
次に、本発明の第6実施形態に従う補強金具180を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図2に示すように、ブロック塀20の両側のうちの一方のみが補強側に選定され、その補強側のみに補強金具10が設置されている。
これに対し、本実施形態においては、図17に示すように、ブロック塀20の両側が共に補強側に選定され、いずれの補強側にも補強金具180が設置されている。
図17に示す補強金具180は、ブロック塀20に関して対称的に配置された2個の補強金具10を、上側水平板部40に関して共通化させて合体させた構造に相当する構造を有している。具体的には、補強金具180は、一方の補強側に配置される連結体184と、他方の補強側に配置される連結体186と、それらに共通の1個の上側水平板部188とを含み、かつ、その上側水平板部188によってそれら2個の連結体184,186が互いに連結されている。各連結体184,186は、第1実施形態における補強金具10のうち下側水平板部42と柱部44と傾斜板部46との連結体として構成されている。
次に、本発明の第7実施形態に従う補強金具200を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図1に示すように、連続した1枚のストリップによって上側水平板部40と柱部44と下側水平板部42とが互いに一体的に形成されている。
これに対し、本実施形態においては、図18に示すように、連続した1枚のストリップがそれの長さ方向における2箇所において折り曲げられることにより、上側水平板部204と傾斜板部206と下側水平板部208とが互いに一体的に形成されている。
さらに、本実施形態においては、図18に示すように、L字状に曲げられたパイプ210がストリップ202に、それの傾斜板部206が、パイプ210を2辺とする直角三角形の斜辺を構成する姿勢で、溶接によって固定されている。パイプ210のうち垂直に延びる部分は、柱部212を構成し、主に引張と圧縮とに耐えて補強金具200の高さを維持するように作用する。さらに、パイプ210のうち水平に延びる水平部214は、下側水平板部208と同一面内で延び、柱部212が傾斜することを抑制するように作用する。
次に、本発明の第8実施形態に従う補強金具230を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図1に示すように、補強金具10が2部材の接合によって互いに一体的に形成されている。
これに対し、本実施形態においては、図19に示すように、補強金具230が、連続した1枚のストリップのみによって形成されている。そのストリップは、それの長さ方向における2箇所において折り曲げられ、それにより、上側水平板部232と傾斜板部234と下側水平板部236とが互いに一体的に形成されている。
さらに、本実施形態においては、補強金具230が、最下段のブロック50と基礎70とに設置されており、この補強金具230の高さ寸法が、ブロック50の1個分の高さに適合させられている。
次に、本発明の第9実施形態に従う2個の補強金具250,252を第1実施形態との比較において説明する。
第1実施形態においては、図1に示すように、補強金具10が、それが埋設されない状態においては、傾斜板部46において露出させられる。
これに対し、本実施形態においては、図20に示すように、第1実施形態における補強金具10と構成がほぼ共通する2個の補強金具250,252が、傾斜板部46,262同士において重なり合う姿勢で合体させられ、この状態でブロック塀20に設置される。
それら2個の補強金具250,252は、設置状態において上側に位置する上側補強金具250と、下側に位置する下側補強金具252とである。下側補強金具252は、第1実施形態に従う補強金具10と共通に構成されてブロック塀20に設置される。
これに対し、上側補強金具250については、上側水平板部260のうち傾斜板部262から突出した部分が、下側補強金具252の上側水平板部40に重ね合わされた状態で、ブロック50の上面に配置される。一方、上側補強金具250の下側水平板部264は、下側補強金具252の下側水平板部42のうち傾斜板部46から突出した部分に重ね合わされた状態で、基礎70の上面に配置される。
上側補強金具250の構成は、下側補強金具252の構成と基本的に共通するが、上側水平板部260と下側水平板部264とについては相違する。なぜなら、上側水平板部260および下側水平板部262のそれぞれの、傾斜板部262に対する相対位置関係が、上側補強金具250と下側補強金具252とで互いに逆であるからである。
したがって、上側補強金具250においては、上側水平板部260のうちブロック50に埋設される部分の構成が、下側補強金具252の上側水平板部40と共通にされるとともに、下側水平板部264の構成が、下側補強金具252の下側水平板部42のうち傾斜板部46から突出した部分と共通にされている。さらに、上側補強金具250は、上側水平板部260と下側水平板部264とに対して直角に延びてそれらを互いに連結する柱部266を備えている。
上側補強金具250の上側水平板部260の一部は、ブロック塀20の内側面(補強側の側面)から水平に突出させられ、水平な棚270を構成している。そして、本実施形態においては、同じブロック塀20に間隔を置いて設置された複数個の上側補強金具250のうちの互いに隣接した2個に、それらの棚270の上に、ブロック塀20の長さ方向に延びる平板(例えば、木製、合成樹脂製、金属製)272が横架されている。
これにより、本実施形態においては、複数個の補強金具250,252を利用して水平面が構成されており、この水平面は、ベンチとして使用したり、植木鉢等の物を置くテーブルとして使用することが可能である。さらに、本実施形態においては、図20の(a)において波状の実線で示すように、基礎70の上に土が盛られていて、補強金具250,252の下部が土で覆われて見えないようになっている。
次に、本発明の第10実施形態に従う補強金具250を第9実施形態との比較において説明する。
第9実施形態においては、図20に示すように、構成が基本的に共通する2個の補強金具250,252がそれらの傾斜板部46,262同士において重ね合わせられることにより、水平面が構成されている。
これに対し、本実施形態においては、図21に示すように、第9実施形態における下側補強金具252が省略され、上側補強金具250のみが用いられることにより、ブロック塀20の補強と水平面の形成とが一緒に行われるようになっている。なお付言するに、同じ補強金具を、図21に示す姿勢(倒立姿勢)で設置することと、図2に示す姿勢(正立姿勢)で設置することとの双方が可能であるように補強金具を設計することが可能である。この場合、例えば、補強金具のうち傾斜部から突出した2つの部分を互いに共通化することが望ましい。
次に、本発明の第11実施形態に従う補強金具290を第9実施形態との比較において説明する。
第9実施形態においては、図20に示すように、水平面を形成するために、2個の補強金具250,252が同じ面内で用いられる。
これに対し、本実施形態においては、第1実施形態に従う補強金具10と構成が基本的に共通する補強金具290が1個用いられるとともに、それの上側水平板部292が第1実施形態に従う補強金具10の上側水平板部40より長くされてれる。そして、その上側水平板部292のうち、ブロック塀20から水平に突出させられた部分が水平な棚296を構成するとともに、ブロック塀20の長さ方向において互いに隣接した複数個の補強金具290の棚296の上に平板298が適数枚横架されることにより、水平面が形成される。
なお付言するに、本発明はその他の形態で実施することが可能である。例えば、同じ補強金具がブロック塀20にそれの高さ方向における複数箇所において連結される形態で本発明を実施することが可能である。さらに、下側水平板部のうち、傾斜部との連結点と柱部との連結点との間の部分が基礎70にアンカーボルトによって固定される形態で本発明を実施することも可能である。さらに、1対を成す2本の縦筋12,12を予め強固に結束して基礎70に植え込む形態で本発明を実施することも可能である。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[課題を解決するための手段]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。