JP4076875B2 - 混練装置および混練方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、混練対象物を混練するのに好適な混練装置および混練方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の混練装置としては、例えば特開平5−103966号公報に示すものが知られている。この混練装置は、細管を介して左右に分かれて設けられ、ピストンにより容積が変わる2つの室と、上記細管の上部に接続して設けられ、ゴム状の蓋を介して外部と隔絶された液体(混練対象物)の注入抽出口とを備えたものである。
【0003】
上記混練装置においては、左右のピストンを同方向に往復移動することにより、液体が細管を通り、この際に発生する乱流により、液体を混練することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記混練装置においては、細管の上部に注入抽出口が設けられているため、この注入抽出口内に溜まった液体が細管内に流れにくく、よって注入した液体を十分に混練することができないという問題がある。しかも、注射器により注入抽出口内に液体を注入したり、当該注入抽出口から液体を抽出したりしなければならないので、その注入抽出の作業が面倒であるという問題がある。さらに、2つの室および細管を有するシリンダ部分を手で持って、一方のピストンを必ず押し込むように操作しなければならないので、混練作業が面倒であるとともに、雑菌等の付着する確率が高いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、混練対象物を十分に混練することができるとともに、混練対象物の挿入および混練後の混練物の取り出しが簡単であり、しかも雑菌等が付着する確率の低い混練装置および混練方法を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の混練装置は、第1ピストンの移動によって容積が変わる第1室を有し、先端部に上記第1室に連通する第1細孔を有する第1シリンダと、第2ピストンの移動によって容積が変わる第2室を有し、先端部に上記第2室に連通する第2細孔を有する第2シリンダとを、軸線上に配置した状態で、上記先端部同士を分離可能に連結することにより、上記第1細孔および上記第2細孔の少なくとも一方を介して上記第1室と第2室とを連通するように構成し、且つ、上記第1シリンダおよび上記第2シリンダの内径をそれぞれD1、D2とし、上記第1細孔および上記第2細孔の内径をそれぞれd1、d2とした場合に、d1/D1、d2/D2、d1/D2、d2/D1の比で求まる細孔縮径率は、10〜50%に設定されており、上記第1シリンダの基端部から突出する上記第1ピストンの基端部および上記第2シリンダの基端部から突出する上記第2ピストンの基端部を脱着自在に保持するシリンダ支持手段を備えてなり、上記第1シリンダおよび第2シリンダを軸方向に移動することにより、上記第1室および第2室の少なくとも一方に挿入した混練対象物としてのセメント粉剤と、このセメント粉剤と反応を起こす硬化液を混練することを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の混練装置は、請求項1に記載の発明において、上記第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方の先端部は、注入手段が取り付け可能になっていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の混練方法は、第1ピストンの移動によって容積が変わる第1室を有し、先端部に上記第1室に連通する第1細孔を有する第1シリンダと、第2ピストンの移動によって容積が変わる第2室を有し、先端部に上記第2室に連通する第2細孔を有する第2シリンダとを、軸線上に配置した状態で、上記先端部同士を分離可能に連結することにより、上記第1細孔および上記第2細孔の少なくとも一方を介して上記第1室と第2室とを連通させ、且つ、上記第1シリンダおよび上記第2シリンダの内径をそれぞれD1、D2とし、上記第1細孔および上記第2細孔の内径をそれぞれd1、d2とした場合に、d1/D1、d2/D2、d1/D2、d2/D1の比で求まる細孔縮径率は、10〜50%に設定し、上記第1シリンダの基端部から突出する上記第1ピストンの基端部および上記第2シリンダの基端部から突出する上記第2ピストンの基端部をシリンダ支持手段で保持した状態で、上記第1シリンダおよび第2シリンダを軸方向に移動することにより、上記第1室および第2室の少なくとも一方に挿入した混練対象物としてのセメント粉剤と、このセメント粉剤と反応する硬化液を混練することを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の混練方法は、請求項3に記載の発明において、上記混練対象物を混練した後に、上記第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方の先端部に注入手段を取り付けて、上記混練後の混練物を注入対象物内に注入することを特徴としている。
【0012】
請求項1および3に記載の発明においては、第1シリンダおよび第2シリンダの先端部同士の連結を解いた後、これらのシリンダの少なくとも一方のピストンを引くことによって、その先端部から混練対象物を吸引する。これにより、第1室および第2室の少なくとも一方に混練対象物が挿入された状態になる。そして、第1シリンダおよび第2シリンダの先端部同士を連結した後、第1ピストンの基端部および第2ピストンの基端部をそれぞれシリンダ支持手段に保持させる。
これにより、混練の準備が完了する。なお、ピストンをシリンダから引き抜くなどの他の方法によって、第1室および第2室の少なくとも一方に混練対象物を挿入するようにしてもよい。
【0013】
そこで、シリンダ支持手段を手に持って、第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方を軸方向に移動する。そうすると、これらの第1シリンダおよび第2シリンダが連動して移動し、例えば第1室に挿入した混練対象物が第1細孔および第2細孔の少なくとも一方を通って第2室に移動することになり、あるいは第2室に挿入した混練対象物が第1細孔や第2細孔を通って第1室に移動することになる。
【0014】
そして、第1細孔や第2細孔に流入するために絞られたり、同第1細孔等を高速で移動したり、同第1細孔等から第1室や第2室に流出したりする際に、乱流や流速差等が生じることになるので、混練対象物として2つ以上の物質が挿入されていれば、これらの混練対象物は急激に混練されることになる。このため、第1シリンダおよび第2シリンダの往復移動を繰り返すことにより、混練対象物を十分に混練することができる。
【0015】
また、混練の際には、第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方を手で持って軸方向に移動すればよく、第1ピストンや第2ピストンを手で持つ必要がないので、手を触れる範囲が少なくなる。したがって、雑菌が付着する確率が低くなる。しかも、ピストンを必ず押し込む方向に移動させるように操作する必要もないので、混練操作が簡単になる。
【0016】
また、混練後は、第1シリンダおよび第2シリンダをシリンダ支持手段から取り外して、各先端部を分離することにより、各先端部から混練後の混練物を容易に取り出すことができる。すなわち、第1ピストンや第2ピストンを単に押し込むだけで、第1室や第2室に溜まった混練物を先端部から容易に取り出すことができる。したがって、混練対象物の挿入が簡単であるとともに、混練物の取り出しも簡単である。また、混練は、第1細孔および第2細孔の少なくとも一方と、第1室と、第2室とによって密閉された空間内で行われることになるので、混練物内に入り込む空気の量が極めて少ないという利点がある。
【0017】
また、混練対象物としてセメント粉剤とその硬化液とを用いた場合は、先端部同士の連結を解いた後、例えば第1シリンダの先端部から漏斗を介してセメント粉剤を第1室に挿入し、第2ピストンを引くことによって第2シリンダの先端部から第2室に硬化液を吸引した後に、先端部同士を連結し、上述のように第1シリンダおよび第2シリンダをシリンダ支持手段に取り付けてから移動することにより、セメント粉剤と硬化液とを十分に混練することができるとともに、その混練によって硬化直前となった混練物を容易に得ることができる。しかも、空気の入り込む量が極めて少ないので、硬化後は高強度となるセメント材料を得ることができる。
【0018】
なお、セメント粉剤および硬化液は、第1室および第2室の例えば一方に挿入した状態で、第1シリンダおよび第2シリンダの移動により混練するようにしてもよい。
【0019】
また、混練対象物としてセメント粉剤と硬化液とを用いた場合には、第1細孔および第2細孔の内径を2〜10mmに設定することが好ましい。すなわち、2mm未満の場合には、特にセメント粉剤の移動抵抗が大きくなり過ぎて、第1シリンダおよび第2シリンダを円滑に移動することができなくなるからであり、10mmを超えると、絞り効果が少なくなって、セメント粉剤と硬化液とを短時間で十分に混練することができなくなり、セメント材料として強度の低下をきたすおそれがあるからである。
【0020】
また、第1シリンダおよび第2シリンダの内径をそれぞれD1 、D2 とし、第1細孔および第2細孔の内径をそれぞれd1 、d2 とした場合において、d1 /D1 、d2 /D2 、d1 /D2 、d2 /D1 の比で求まる細孔縮径率は、10〜50%にすることが好ましい。その理由は、10%未満になると、絞り率が大きくなって、セメント粉剤等の移動抵抗が大きくなり過ぎるからであり、50%を超えると、絞り効果が少なくなって、短時間で十分に混練することができなくなるからである。そして、上記細孔縮径率の10〜50%は、セメント粉剤と硬化液との組み合わせからなる混練対象物以外の混練対象物に対しても適用することができる。
【0021】
請求項2および4に記載の発明においては、注入手段を例えば第1シリンダの先端部に取り付けることにより、混練物を注入対象物内に容易に注入することができる。例えば、セメント粉剤と硬化液とを混練した場合には、この混練により硬化直前となった混練物を、骨粗しょう症により鬆(す)が多く空いた骨(注入対象物)内に即座に注入することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1〜図4を参照して説明する。この第1実施形態で示す混練装置1は、第1ピストン3の移動によって容積が変わる第1室2aを有し、先端部22dに第1室2aに連通する第1細孔2bを有する第1シリンダ2と、第2ピストン5の移動によって容積が変わる第2室4aを有し、先端部42dに第2室4aに連通する第2細孔4bを有する第2シリンダ4とを備えている。
【0024】
第1シリンダ2と第2シリンダ4とは、軸線上に配置した状態で、先端部22d、42d同士がオスロック6によって分離可能に連結されるようになっており、この連結により、第1細孔2bと第2細孔4bの双方を介して第1室2aと第2室4aとが連通するようになっている。
【0025】
また、第1シリンダ2および第2シリンダ4は、それぞれ円筒部21、41と、これらの円筒部21、41の先端側の部分にそれぞれねじを介して連結されるヘッド部22、42とを備えている。
円筒部21、41は、それぞれ先端側の部分の外周に雄ねじ21a、41aが形成され、基端部に半径方向外方に円形状に広がるフランジ21b、41bが形成されている。
【0026】
ヘッド部22、42は、それぞれ内面に上記各雄ねじ21a、41aに螺合する雌ねじ22a、42aが形成された大径円筒部22b、42bと、各大径円筒部22b、42bから先端側に向けてテーパ状に縮径するテーパ部22c、42cと、各テーパ部22c、42cの先端側に形成された先端部22d、42dとにより一体的に形成されている。なお、各円筒部21、41における雄ねじ21a、41aが形成されている部分の先端位置と、各ヘッド部22、42における雌ねじ22a、42aが形成されている部分の最深位置との間にOリング等のシール部材を介在させるように構成してもよい。
【0027】
また、第1シリンダ2の先端部22dは、図4に示すように、同軸状に形成された内円管22eと外円管22fとによって形成されており、第2シリンダ4の先端部42dは、内円管22eと外円管22fとの間に入る大きさの円管によって形成されている。
【0028】
そして、オスロック6は、一方の先端部22dにおける外円管22fの内周面に形成された雌ねじと、この雌ねじに螺合する他方の先端部42dの外周面に形成された雄ねじとを備えた構成になっており、内円筒22eの外周面と先端部42dの内周面との嵌合によって、あるいはその嵌合部に介在させた粘性を有する液状シールによって、一方の先端部22dと他方の先端部42dとを外部に対して密閉した状態に保持するようになっている。
【0029】
さらに、一方の先端部22dは、その内円筒22eの外周部が図示しない注射針(注入手段)の基端部を嵌合により保持することが可能になっている。また、他方の先端部42dは、その外周部が注射針の基端部を嵌合により保持することが可能になっている。
【0030】
また、第1ピストン3および第2ピストン5は、図1に示すように、それぞれピストンヘッド3a、5aと、これらの各ピストンヘッド3a、5aから各シリンダ2、4の基端部側に延在し、当該基端部(各フランジ21b、41bの位置)からさらに突出する長さのピストンロッド3b、5bとを備えている。各ピストンロッド3b、5bは、図3に示すように、断面が十字状に形成されている。また、各ピストンロッド3b、5bの基端部は、軸方向に対して直角に突出する正方形状の案内板3c、5cによって形成されている。なお、これらの案内板3c、5cについては、後述する樹脂による成形性を考慮し、かつ同じく後述する係止溝71f、72fに挿入することを考慮すると、上述のように正方形に形成することが好ましい。ただし、長方形状等の他の形状であってもよい。
【0031】
なお、各ピストンロッド3b、5bは、断面が円形状、多角形状、円筒状あるいは多角筒状に形成されたものであってもよい。
また、上記第1シリンダ2、第2シリンダ4、第1ピストン3および第2ピストン5は、それぞれPP(ポリプロピレン)やPE(ポリエチレン)等の合成樹脂によって一体的に形成されたものであり、1回混練に使われるたびに廃棄されるものである。
【0032】
また、上記オスロック6によって連結された第1シリンダ2および第2シリンダ4は、第1ピストン3および第2ピストン5の各案内板3c、5cを介して、シリンダ支持手段7によって着脱自在に保持されるようになっている。
【0033】
シリンダ支持手段7は、図1に示すように、第1ピストン3の案内板3cを着脱自在に保持する第1支持部材71と、第2ピストン5の案内板5cを着脱自在に保持する第2支持部材72と、これらの第1支持部材71および第2支持部材72を所定の間隔をおいて平行に保持する4本の支持バー73とを備えている。
【0034】
第1支持部材71および第2支持部材72は、図3に示すように、この実施の形態ではステンレス鋼や黄銅などの金属によって正方形の板状に形成されたものであって、左側縁71a、72aと右側縁71b、72bとがそれぞれ平行に形成され、上側縁71c、72cと下側縁71d、72dとがそれぞれ平行に形成されている。このため、例えば水平のテーブル上におけば、第1シリンダ2および第2シリンダ4を水平状態に維持したり、垂直状態に維持したりすることができ、後述するセメント粉剤と硬化液との混合前後の状態を短時間ではあっても安定的に維持することができる利点がある。なお、第1支持部材71および第2支持部材72の形状については、他の形状であってもよい。
【0035】
また、第1支持部材71および第2支持部材72の一方の面には、それぞれの各上側縁71c、72cから左右の中心線に沿って、各支持部材71、72の中央部まで延びる案内溝71e、72eが形成されている。各案内溝71e、72eには、各案内板3c、5cの側縁部を上下方向に移動自在に案内するとともに、各支持部材71、72に対して直交する方向に離脱するのを防止する係止溝71f、72fが形成されている。
【0036】
各支持バー73は、ステンレス鋼や黄銅などの金属によって丸棒状に形成されたものであり、その各端部が第1支持部材71および第2支持部材72の四隅部にボルト73a(図1参照)によって固定されるようになっている。
そして、上記シリンダ支持手段7は、上述した金属によって剛性の高いものとなっており、混練に際して繰り返し使われるようになっている。
なお、シリンダ支持手段7は、第1および第2支持部材71、72や支持バー73等を、金属以外の硬度や強度の高いプラスチック等を用いたもので構成してもよい。この場合も剛性の高いシリンダ支持手段7を得ることができる。
【0037】
上記のように構成された混練装置1においては、まず各ピストン3、5をそれぞれ備えたシリンダ2、4をシリンダ支持手段7から取り外し、オスロック6による連結を解いて先端部22d、42dを分離する。そして、例えば第1シリンダ2に対しては、そのヘッド部22を外して、セメント粉剤(混練対象物)を第1室2aに挿入する。また、第2シリンダ4に対しては、第2ピストン5を引いて硬化液(混練対象物)を先端部42dの第2細孔4bを介して第2室4aに吸引する。なお、第1ピストン3を抜いて第1シリンダ2内にセメント粉剤を挿入するようにしてもよい。また、硬化液についても、セメント粉剤の場合と同様に、ヘッド部42を外したり第2ピストン5を抜いたりしてから、第2シリンダ4内に挿入するようにしてもよい。さらに、第2シリンダ4にセメント粉剤を挿入し、第1シリンダ2に硬化液を挿入するようにしてもよい。それから、ヘッド22、42、ピストン3、5を取り外した状況に応じて、これらのものを正規の位置に取り付けるとともに、先端部22d、42d同士を連結した後、第1ピストン3および第2ピストン5の各案内板3c、5cをそれぞれ第1支持部材71および第2支持部材72の各案内溝71e、72eに挿入する。これにより、各ピストン3、5をそれぞれ備えたシリンダ2、4がシリンダ支持手段7に取り付けられた状態になり、セメント粉剤と硬化液とを混練する準備が完了する。
【0038】
そこで、シリンダ支持手段7の各支持バー73を掌に載せるように持ち、かつ第1シリンダ2および第2シリンダ4の少なくとも一方を手で持って軸方向に移動する。そうすると、第1シリンダ2および第2シリンダ4が連動して軸方向に移動することになるので、例えば第1室2aに充填されたセメント粉剤が第1細孔2bや第2細孔4bを通って硬化液が充填された第2室4aに移動し、さらに往復移動を繰り返すことにより、セメント粉剤および硬化液が第1細孔2bや第2細孔4bを通って第1室2aと第2室4aとの間を移動することになる。
【0039】
この際、第1細孔2bおよび第2細孔4bに流入するために絞られたり、第1細孔2bおよび第2細孔4bを高速で移動したり、さらに第1細孔2bおよび第2細孔4bから第2室4aや第1室2aに流出したりすることにより、乱流や流速差等が発生し、セメント粉剤と硬化液とが急速に混練されることになる。
【0040】
そうすると、セメント粉剤と硬化液との混練物は硬化直前の状態になるので、第1シリンダ2および第2シリンダ4をシリンダ支持手段7から取り外し、先端部22d、42dの連結を解いて、混練物が充填されている側の例えば第1シリンダ2の先端部22dに注射針を取り付ける。そして、その混練物を、例えば骨粗しょう症により鬆(す)が多く入った骨(注入対象物)内に注入する。
また、セメント粉剤と硬化液とは第1室2a、第2室4a、第1細孔2bおよび第2細孔4bによる密閉した空間内で混練されることになるので、上記混練物に空気の入り込む量が極めて少なくなる。したがって、硬化後には、高強度のセメント材料を得ることができる。
【0041】
なお、セメント粉剤や硬化液を、ヘッド部22、42を取り外したり、ピストン3、5を抜いてから、各シリンダ2、4内に挿入する場合には、ヘッド部22、42の先端部22d、42d同士は連結したままにしておいてもよい。
また、セメント粉剤および硬化液は、第1室2aおよび第2室4aの例えば一方に挿入した状態で、第1シリンダ2および第2シリンダ4を移動して混練するようにしてもよい。
【0042】
一方、混練対象物として上記のようにセメント粉剤と硬化液とを用いた場合には、特に内側に位置する第1細孔2b(最小径の細孔)の内径を2〜10mmに設定することが好ましい。すなわち、2mm未満の場合には、特にセメント粉剤の移動抵抗が大きくなり過ぎて、第1シリンダ2および第2シリンダ4を円滑に移動することができなくなるからであり、10mmを超えると、絞り効果が少なくなって、セメント粉剤と硬化液とを短時間で十分に混練することができなくなり、硬化後のセメント材料の強度の低下をきたすおそれがあるからである。なお、上記寸法2〜10mmは、第1シリンダ2および第2シリンダ4の内径を5〜30mmに設定した場合に特に有効である。
【0043】
そして、第1および第2シリンダ2、4の内径をそれぞれD1 、D2 とし、第1および第2細孔2b、4bの内径をそれぞれd1 、d2 とした場合において、d1 /D1 、d2 /D2 、d1 /D2 、d2 /D1 の比で計算される細孔縮径率は、10〜50%にすることが好ましい。その理由は、10%未満になると、絞り率が大きくなって、セメント粉剤等の移動抵抗が大きくなり過ぎるからであり、50%を超えると、絞り効果が少なくなって、短時間で十分に混練することができなくなるからである。そして、上記細孔縮径率の10〜50%は、セメント粉剤と硬化液との組み合わせからなる混練対象物以外の混練対象物に対しても適用することができる。
【0044】
また、セメント粉剤としては、例えばα型第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム等を主成分とするセメント、具体的には、α型第3リン酸カルシウムまたは第4リン酸カルシウム単体およびこれらの混合物、α型第3リン酸カルシウムと第2リン酸カルシウムおよび/または第1リン酸カルシウムとの混合物、第4リン酸カルシウムと第2リン酸カルシウムおよび/または第1リン酸カルシウムとの混合物、α型第3リン酸カルシウムと第4リン酸カルシウムと第2リン酸カルシウムおよび/または第1リン酸カルシウム等の混合物などが最適である。
一方、硬化液としては、水や、ポリアクリル酸、クエン酸、リンゴ酸またはこれらの混合物の有機酸を溶解した水溶液や、塩化ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、乳酸ナトリウムまたはこれらの混合物の水溶性塩類を溶解した水溶液などが最適である。
【0045】
以上のように、この実施形態で示した混練装置1によれば、混練対象物を十分に混練することができる。しかも、混練の際には、第1シリンダ2および第2シリンダ4の少なくとも一方を手で持って軸方向に移動すればよく、第1ピストン3や第2ピストン5を手で持つ必要がないので、手を触れる範囲が少なくなる。したがって、雑菌が付着する確率が低くなる。また、ピストンを必ず押し込む方向に移動させるという制限を設ける必要もないので、混練操作が簡単である。
【0046】
そして、第1室2aや第2室4aへの混練対象物の挿入は、第1ピストン3や第2ピストン5の着脱により容易に行うことができ、混練後の混練物の取り出しも、第1ピストン3や第2ピストン5を単に押し込むだけで、第1室2aや第2室4aから容易に取り出すことができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図5を参照して説明する。ただし、上記第1実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
この第2実施形態で示す混練装置81は、第1実施形態で示したヘッド部22、42がそれぞれ円筒部21、41に一体に形成されたものである。すなわち、第1シリンダ2の円筒部21には、テーパ部22cおよび内円管22eと外円管22fとからなる先端部22dが一体に形成されている。また、第2シリンダ4の円筒部41には、テーパ部42cおよび先端部42dが一体的に形成されている。
【0048】
上記混練装置81においては、硬化液については先端部22d、42dを分離してから、先端部22d、42dから吸引することが可能である。セメント粉剤については、分離した後の先端部22d、42dから例えば漏斗を用いて第1室2aや第2室4aに挿入したり、第1ピストン3や第2ピストン5を抜くことによって、第1室2aや第2室4aに挿入することになる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図6を参照して説明する。ただし、上記第2実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
この第3実施形態で示す混練装置82は、第2実施形態で示した先端部22dが一つの円管によって形成され、この先端部22dの外周面に他方の先端部42dが嵌合するように構成されている。これらの先端部22d、42dは、それぞれの外周面と内周面との嵌合によって、あるいはその嵌合部に介在させた粘性を有する液状シールによって、外部に対して密閉するようになっている。
また、セメント粉剤や硬化液等の混練対象物は、内側に配置された第1細孔2b内のみを通過するようになっている。
【0050】
上記混練装置82においても、先端部22d、42dから吸引するか、あるいは第1ピストン3や第2ピストン5を着脱するかによって、セメント粉剤や硬化液を第1室2aや第2室4aに挿入することになる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図7を参照して説明する。ただし、上記第1実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
この第4実施形態で示す混練装置83は、第1実施形態で示したヘッド部22、42に代えて、これらのヘッド部22、42が一体になった構造の継手手段831を設けたもので構成されている。
【0052】
すなわち、継手手段831は、円柱状に形成された本体831aの軸心に、雌ねじ22a、42aと、テーパ面831b、831cと、細孔831dとを形成したものである。
【0053】
各雌ねじ22a、42aは、第1実施形態のヘッド部22、42に形成されたものと共通しており、本体831aの各端部から所定の深さに形成されている。テーパ面831b、831cは、各雌ねじ22a、42aから互いに接近するにしたがってテーパ状に縮径するように形成されたものである。これらのテーパ面831b、831cは第1実施形態のテーパ部22c、42cに対応している。
【0054】
細孔831dは、テーパ面831b、831cの最小径の部分を連通するように形成されたものであり、第1実施形態の第1細孔2bおよび第2細孔4bに対応している。すなわち、細孔831dは、第1シリンダ2側の部分が第1細孔2bに対応し、第2シリンダ4側の部分が第2細孔4bに対応したものとなっている。そして、継手手段831は、PPやPE等の樹脂によって一体に形成されている。
【0055】
なお、各円筒部21、41における雄ねじ21a、41aが形成されている部分の先端位置と、継手手段831における雌ねじ22a、42aが形成されている部分の最深位置との間にOリング等のシール部材を介在させるように構成してもよい。
【0056】
上記混練装置83においては、継手手段831を着脱するか、あるいは第1ピストン3や第2ピストン5を着脱するかによって、セメント粉剤や硬化液を第1室2aや第2室4aに挿入することになる。
【0057】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態を図8を参照して説明する。ただし、上記第4実施形態で示した構成要素と共通する要素には同一の符号を付しその説明を簡略化する。
この第5実施形態で示す混練装置84は、第4実施形態で示した継手手段831に相当する継手部21cを第1シリンダ2の円筒部21と一体的に形成したもので構成されている。
【0058】
すなわち、継手部21cは、円筒部21の先端部に同軸状に形成されており、その内面には先端側に向かってテーパ面831b、細孔831d、テーパ面831c、雌ねじ42aが形成されている。
【0059】
テーパ面831bは、円筒部21の内面から、先端側に向かうにしたがって漸次縮径するように形成されている。また、細孔831d、テーパ面831c、雌ねじ42aは、第4実施形態で示したものと共通しているので説明を省略する。
【0060】
なお、円筒部41における雄ねじ41aが形成されている部分の先端位置と、継手部21cにおける雌ねじ42aが形成されている部分の最深位置との間にOリング等のシール部材を介在させるように構成してもよい。
【0061】
上記混練装置84においては、継手部21cと円筒部41とを分離して、当該円筒部41の先端側からセメント粉剤および/または硬化液を第2室4aに挿入するか、あるいは第2ピストン5を引き抜いて、円筒部41の基端側からセメント粉剤および/または硬化液を第2室4aに挿入することになる。また、第1室2aにセメント粉剤および/または硬化液を挿入する場合には、細孔831dから漏斗を介して挿入したり、第1ピストン3を引き抜いてから挿入することになる。
そして、上記のように構成することにより、部品点数の低減を図ることができる。
【0062】
なお、セメント粉剤に対しても、ピストン3、5を引くことによって、先端部22d、42dからシリンダ2、4内に吸引するようにしてもよい。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1および3に記載の発明によれば、第1シリンダおよび第2シリンダを移動することにより、混練対象物を十分に混練することができる。また、第1ピストンや第2ピストンを手で持つ必要がなく、手の触れる範囲が少なくなるので、雑菌が付着する確率が低くなる。しかも、ピストンを必ず押し込む方向に移動させるという制限もないので、混練操作が簡単になる。
【0064】
また、第1室や第2室への混練対象物の挿入は、先端部から吸引するか、あるいは第1ピストンや第2ピストンを着脱するか等によって容易に行うことができ、混練後の混練物の取り出しも、第1ピストンや第2ピストンを単に押し込むだけで、第1室や第2室から容易に取り出すことができる。しかも、混練は、第1細孔および第2細孔の少なくとも一方と、第1室と、第2室とによって密閉された空間内で行われることになるので、混練物内に入り込む空気の量が極めて少ないという利点がある。
【0065】
また、混練対象物としてセメント粉剤とその硬化液とを用いたので、セメント粉剤と硬化液とが十分に混練されて硬化直前となった混練物を容易に得ることができる。しかも、空気の入り込む量が極めて少ないので、硬化後の高強度の高いセメント材料を得ることができる。
【0066】
請求項2および4に記載の発明によれば、注入手段を例えば第1シリンダの先端部に取り付けることにより、混練物を注入対象物内に容易に注入することができる。また、例えば、セメント粉剤と硬化液とを混練した場合には、この混練により硬化直前となった物質を、骨粗しょう症により鬆(す)が多く空いた骨内に即座に注入することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施形態として示した混練装置の断面図である。
【図2】同混練装置を示す図であって、図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】同混練装置を示す図であって、図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】同混練装置を示す要部断面図である。
【図5】この発明の第2実施形態として示した混練装置の要部断面図である。
【図6】この発明の第3実施形態として示した混練装置の要部断面図である。
【図7】この発明の第4実施形態として示した混練装置の要部断面図である。
【図8】この発明の第5実施形態として示した混練装置の要部断面図である。
【符号の説明】
2 第1シリンダ
2a 第1室
2b 第1細孔
3 第1ピストン
3c、5c 案内板(基端部)
4 第2シリンダ
4a 第2室
4b 第2細孔
5 第2ピストン
7 シリンダ支持手段
22d 先端部
42d 先端部
Claims (4)
- 第1ピストンの移動によって容積が変わる第1室を有し、先端部に上記第1室に連通する第1細孔を有する第1シリンダと、第2ピストンの移動によって容積が変わる第2室を有し、先端部に上記第2室に連通する第2細孔を有する第2シリンダとを、軸線上に配置した状態で、上記先端部同士を分離可能に連結することにより、上記第1細孔および上記第2細孔の少なくとも一方を介して上記第1室と第2室とを連通するように構成し、且つ、上記第1シリンダおよび上記第2シリンダの内径をそれぞれD1、D2とし、上記第1細孔および上記第2細孔の内径をそれぞれd1、d2とした場合に、d1/D1、d2/D2、d1/D2、d2/D1の比で求まる細孔縮径率は、10〜50%に設定されており、
上記第1シリンダの基端部から突出する上記第1ピストンの基端部および上記第2シリンダの基端部から突出する上記第2ピストンの基端部を脱着自在に保持するシリンダ支持手段を備えてなり、
上記第1シリンダおよび第2シリンダを軸方向に移動することにより、上記第1室および第2室の少なくとも一方に挿入した混練対象物としてのセメント粉剤と、このセメント粉剤と反応を起こす硬化液を混練することを特徴とする混練装置。 - 上記第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方の先端部は、注入手段が取り付け可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の混練装置。
- 第1ピストンの移動によって容積が変わる第1室を有し、先端部に上記第1室に連通する第1細孔を有する第1シリンダと、第2ピストンの移動によって容積が変わる第2室を有し、先端部に上記第2室に連通する第2細孔を有する第2シリンダとを、軸線上に配置した状態で、上記先端部同士を分離可能に連結することにより、上記第1細孔および上記第2細孔の少なくとも一方を介して上記第1室と第2室とを連通させ、且つ、上記第1シリンダおよび上記第2シリンダの内径をそれぞれD 1 、D 2 とし、上記第1細孔および上記第2細孔の内径をそれぞれd 1 、d 2 とした場合に、d 1 /D 1 、d 2 /D 2 、d 1 /D 2 、d 2 /D 1 の比で求まる細孔縮径率を、10〜50%に設定し、
上記第1シリンダの基端部から突出する上記第1ピストンの基端部および上記第2シリンダの基端部から突出する上記第2ピストンの基端部をシリンダ支持手段で保持した状態で、上記第1シリンダおよび第2シリンダを軸方向に移動することにより、上記第1室および第2室の少なくとも一方に挿入した混練対象物としてのセメント粉剤と、このセメント粉剤と反応する硬化液を混練することを特徴とする混練方法。 - 上記混練対象物を混練した後に、上記第1シリンダおよび第2シリンダの少なくとも一方の先端部に注入手段を取り付けて、上記混練後の混練物を注入対象物内に注入することを特徴とする請求項3に記載の混練方法。
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