JP4076482B2 - 移動ノード、移動通信システム及び通信制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行されるとともに所定のエリア内の移動ノード(以下「MN」(Mobile Node)ともいう)に無線リンクを提供するアクセスルータ(以下「AR」(Access Router)ともいう)が複数存在する移動通信システムにおいて何れかのアクセスルータから無線リンクの提供を受ける移動ノード、当該移動通信システム、及び通信制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、下記の非特許文献1及び2に準拠した従来のMNが、ハンドオフの直前まで接続していたAR(以下「oAR」 (old AR)という。不図示)から、新たに接続したAR(以下「nAR」 (new AR)という)へハンドオフした際のシーケンス図を示す。この図1に示すように、MNはリンクレイヤのハンドオフ(L2 handoff)の後、nARから(2)ルータ広告メッセージ(以下「RA」 (Router advertisement)という)を受信する。もちろん、図1の例のようにMNは、RAをいち早く受信する目的で、nARにRAの送信を促す(1)ルータ要請メッセージ(以下「RS」 (Router solicitation)という)を送信してもよい。
【0003】
(2)RAを受信したMNは、新しい気付アドレス(以下「nCoA」 (new Care of Address)という)を生成し、(3)結合更新メッセージ(以下「BU」 (Binding update)という)を、モビリティ制御ノード(Home agent (HA)またはMobility anchor point (MAP))に送信する。なお、ここでの送信先は、モバイルIPに基づくモビリティ制御ではHA、階層型モバイルIP(下記の非特許文献3参照)に基づくモビリティ制御ではMAPとなる。
【0004】
そして、HAまたはMAPは、(3)BUに対し(4)結合確認メッセージ(以下「BA」 (Binding acknowledgement)という)を返信する。(4)BAを受信したnARは、これをルーチング(転送)しようとするが、宛先アドレスであるnCoAの近隣キャッシュエントリ(以下「Neighbor cache entry」という)はこの時点では存在しないため、nARはnCoAのMACアドレスがわからない。そこで、nARは前記BAを一時保持しながら(5)近隣要請メッセージ(以下「NS」 (Neighbor solicitation)という)を送信することで、nCoAのアドレスを持つノードにMACアドレスを問い合わせる。
【0005】
(5)NSを受信したMNは、これに対し近隣広告メッセージ(以下「NA」 (Neighbor advertisement)という)を送信することで、MACアドレスを通知する。(6)NAを受信したnARは、nCoAのNeighbor cache entryを作成し、一時保存しておいた(4)BAをMNに送信する。
【0006】
【非特許文献1】
IETFインターネット・ドラフト「Mobility Support in IPv6」 draft-ietf-mobileip-ipv6-21.txt
【非特許文献2】
IETF RFC2461「Neighbor Discovery for IP Version 6 (IPv6)」
【非特許文献3】
IETF インターネットドラフト“Hierarchical Mobile IPv6 mobility management (HMIPv6),"draft-ietf-mobileip-hmipv6-07.txt, Oct. 2002 (work in progress).
【非特許文献4】
IETF RFC2463「Internet Control Message Protocol (ICMPv6) for the Internet Protocol Version 6 (IPv6) Specification」
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来技術のようにnARがBAをMNに転送しようとする際にnCoAのNeighbor cache entryを保持していないと、nAR上でnCoAのMACアドレスを解決するために、NS送信処理及びNA受信処理が必要になる。これらの処理の実行中、nARは、BA及びBAに続いてMNのnCoA宛に転送するべきパケットを一時的にバッファする必要があるため、このような一時的なバッファリングにより、BA及びBAに続いてMNのCoA宛に転送されるパケットの伝送遅延値が増大するおそれがあった。
【0008】
また、バッファすべきパケットの量がnARにおけるバッファ容量を超過した場合には、後続のパケットが到着する度にバッファ中の先頭のパケットから破棄されてしまう。その結果、上記の一時的なバッファリングにより、伝送遅延値の増大のみならず、パケットロスをも発生させるおそれがあった。
【0009】
具体的に図2には、上記の一時的なバッファリングがパケット伝送遅延及びパケットロスを発生させる様子を示す。この図2では、(4)BAに続いて、nCoA宛のデータ・パケット(Data packet)(7)〜(13)がnARに到着している。nARは(4)BAを転送するためにnCoAのNeighbor cache entryを、(5)NS送信及び(6)NA受信を行うことにより作成する。しかし、このNeighbor cache entry作成中にもnCoA宛のData packetがnARに到着するので、nARはこれらをバッファする。
【0010】
このときnARのバッファ容量が、標準的な値の3個であったとすると、図2に示すようにData packet(9)の到着時に(4)BAが、Data packet(10)の到着時にData packet(7)が、Data packet(11)の到着時にData packet(8)が、それぞれ破棄される。また、Data packet(9)〜(11)はMNに転送されるものの、nAR上でnCoAのentry作成までバッファされていたので、その伝送遅延値は増大することとなる。このように従来技術には、MNのハンドオフ後、nCoA宛に届くパケットの内の最初のいくつかに関し、伝送遅延値の増加やパケットロスを伴うという問題点があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、nARにおけるMACアドレス解決に起因する伝送遅延の増加やパケットロスの発生を回避することができる移動ノード、移動通信システム、及び通信制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願出願人は、BAがnARに到着する時点で既にnCoAのNeighbor cache entryが存在していたと仮定した場合のシーケンスを想定し、このシーケンスを図3に示す。この図3に示すように、仮に(4)BAがnARに到着する時点で既にnCoAのNeighbor cache entryが存在していれば、(4)BA及びその後続のData packets((5)〜(7))は、伝送遅延もパケットロスもなくMNに転送されることがわかる。そこで、本願出願人は、MNのハンドオフ後、nCoA宛パケットがnAR到着する前に、nAR上にnCoAのNeighbor cache entryを作成させる技術的手段を発明し、上記課題の解決を図ろうとしている。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動ノードは、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行されるとともに所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供するアクセスルータが複数存在する移動通信システムにて、何れかのアクセスルータから無線リンクの提供を受ける移動ノードであって、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
この移動ノードでは、生成手段が、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い新たな気付アドレスを生成すると、第1の作成送信手段が、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する。このように、nAR上に新たな気付アドレス(nCoA)のNeighbor cache entry(当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付け)を作成させることを目的として、エコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する動作は、既存のプロトコルには存在せず、本発明の特異な動作である。
【0015】
これにより、エコー要求メッセージを受信したノードは、上記返事要求に対し、送信元(即ち、新たな気付アドレス)への返事を送信する。このとき、移動ノードが新たに接続したアクセスルータは、上記の返事を移動ノードへ送信するか、又は他のノードからの返事を移動ノードへ中継することになる。このとき、上記新たに接続したアクセスルータは、IETF RFC2461「Neighbor Discovery for IP Version 6 (IPv6)」準拠の動作として、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する。
【0016】
このため、新たに接続したアクセスルータは、結合確認(Binding Acknowledgement)メッセージや当該移動ノード宛のデータ・パケットを転送する時に、従来のように改めてMACアドレス解決を行う必要がなくなる。これにより、新たに接続したアクセスルータにおけるMACアドレス解決に起因する伝送遅延の増加やパケットロスの発生を回避することができる。
【0017】
なお、メッセージパケットとしてエコー要求メッセージ(Echo Request)を作成し、新たに接続したアクセスルータに送信する構成とすることにより、新規のメッセージを規定する労力をかけずとも、IETF RFC2463「Internet Control Message Protocol (ICMPv6) for the Internet Protocol Version 6 (IPv6) Specification」で規定されたエコー要求メッセージを用いることができる。また、エコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータ(即ち、移動ノードに直接接続されたアクセスルータ)に送信することで、当該アクセスルータは、より速やかに且つ確実にエコー要求メッセージを受信し、より迅速且つ確実に当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶できる。
【0018】
上記発明は、以下のように、移動通信システムに係る発明や通信制御方法に係る発明として捉えることもできる。
【0019】
即ち、本発明に係る移動通信システムは、移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムであって、前記移動ノードは、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信手段とを備え、前記アクセスルータは、自機が無線リンクを提供する配下の移動ノードからエコー要求メッセージを受信したこと、又は前記配下の移動ノード宛の前記返事を中継したことを契機に、当該配下の移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第1の対応付け記憶手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る通信制御方法は、移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムにおける通信制御方法であって、移動ノードが、自ノードがエリアを跨って移動したことにより無線リンク提供元のアクセスルータが変更した場合に、新たな気付アドレスを生成する生成工程と、移動ノードが、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信工程と、前記移動ノードが新たに接続したアクセスルータが、前記移動ノードからエコー要求メッセージを受信した場合又は前記移動ノード宛の前記返事を中継した場合に、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第1の対応付け記憶工程とを有することを特徴とする。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明に係る移動ノードは、以下の構成とすることもできる。即ち、本発明に係る移動ノードは、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行されるとともに所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供するアクセスルータが複数存在する移動通信システムにて、何れかのアクセスルータから無線リンクの提供を受ける移動ノードであって、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信手段とを備えたことを特徴とする。
【0022】
この移動ノードでは、生成手段が、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い新たな気付アドレスを生成すると、第2の作成送信手段が、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する。このように、nAR上に新たな気付アドレス(nCoA)のNeighbor cache entry(当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付け)を作成させることを目的として、近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する動作は、既存のプロトコルには存在せず、本発明の特異な動作である。
【0023】
これにより、近隣要請メッセージを受信したアクセスルータ(即ち、移動ノードが新たに接続したアクセスルータ)は、上記対応付けの記憶要求に対し、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する。
【0024】
このため、新たに接続したアクセスルータは、結合確認メッセージ(BA)や当該移動ノード宛のデータ・パケットを転送する時に、従来のように改めてMACアドレス解決を行う必要がなくなる。これにより、新たに接続したアクセスルータにおけるMACアドレス解決に起因する伝送遅延の増加やパケットロスの発生を回避することができる。
【0025】
メッセージパケットとして、近隣探索時に用いられる「近隣要請メッセージ(NS)」を作成する構成とすることにより、新規のメッセージを規定する労力をかけずとも、IETF RFC2461「Neighbor Discovery for IP Version 6 (IPv6)」で規定されたNeighbor solicitationを用いることができる。
【0026】
上記発明は、以下のように、移動通信システムに係る発明や通信制御方法に係る発明として捉えることもできる。
【0027】
即ち、本発明に係る移動通信システムは、移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムであって、前記移動ノードは、自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信手段とを備え、前記アクセスルータは、自機が無線リンクを提供する配下の移動ノードから近隣要請メッセージを受信したことを契機に、当該配下の移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第2の対応付け記憶手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る通信制御方法は、移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムにおける通信制御方法であって、移動ノードが、自ノードがエリアを跨って移動したことにより無線リンク提供元のアクセスルータが変更した場合に、新たな気付アドレスを生成する生成工程と、移動ノードが、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信工程と、前記移動ノードが新たに接続したアクセスルータが、前記移動ノードから近隣要請メッセージを受信した場合に、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第2の対応付け記憶工程とを有することを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る各種の実施形態について説明する。
【0034】
[第1実施形態]
第1実施形態では、本発明に記載の発明を、上記の非特許文献1に記載のMobile IPv6準拠のMNに適用した場合の実施形態を説明する。
【0035】
図6は、第1実施形態のMN10の機能ブロック構成及び移動通信システムの構成を示す。この図6に示すように、MN10は、ユーザインターフェース11、アプリケーション実行部12、IP制御部13、IPモビリティ制御部14、Neighbor discovery実行部15、リンク制御部16、Neighbor cache17、及び送受信インターフェース18を含んで構成される。
【0036】
このうちユーザインターフェース11は、ユーザがアプリケーション実行部12を操作するためのインターフェースである。アプリケーション実行部12はアプリケーションを実行する構成要素であり、IP制御部13はIPレイヤの通信制御を実行する構成要素であり、リンク制御部16は、リンクレイヤの通信制御を実行する構成要素である。アプリケーション実行部12が他ノードへ送信するデータは、IP制御部13、リンク制御部16及び送受信インターフェース18を経て無線リンク上へ送信される。逆に、他ノードからアプリケーション実行部12へ送信されたデータは、送受信インターフェース18、リンク制御部16及びIP制御部13を経てアプリケーション実行部12により受信される。
【0037】
IPモビリティ制御部14はモバイルIPv6に準拠したモビリティ制御を実行する構成要素であり、当該モビリティ制御を実行するためのパケット(BUやBA)を処理する。また、Neighbor discovery実行部15は、RFC2461に規定されるNeighbor discoveryを実行するためのパケット(NSやNAなど)を処理する。さらに、Neighbor cache17には、図9のようにIPアドレスとMACアドレスとの対応を表すNeighbor cache entryが記憶されている。
【0038】
リンク制御部16はNeighbor cache17を参照することにより、IP制御部13から受信したIPパケットに対し、送信先IPアドレスに対応した適切なMACアドレスを付与し、送受信インターフェース18へ送出する。なお、Neighbor cache17に記憶されているNeighbor cache entryは、Neighbor discovery実行部15により最新情報に更新される。
【0039】
本実施形態では、後述するIPモビリティ制御部14及びNeighbor discovery実行部15の動作に特徴がある。即ち、IPモビリティ制御部14は、HA宛のBUを生成しIP制御部13経由でHAへこれを送信した直後、Neighbor discovery実行部15に対しNS送信命令を出す。このNS送信命令を受けたNeighbor discovery実行部15は、NSを生成し、その送信元アドレスをnCoA、送信先アドレスをdefault routerに設定した後、当該NSをリンク制御部16及び送受信インターフェース18経由で無線リンク上へ送出する。
【0040】
図4には、MNがoAR(不図示)からnARへハンドオフする場合のシーケンスを示す。この図4に基づき、第1実施形態の動作を説明する。
【0041】
MNはハンドオフ後、nARにRAの送信を促す(1)RSを送信し、nARから(2)RAを受信すると、新リンク上での新しい気付アドレスnCoA (例えば「2001:23::200:e2ff:fe56:ee87」とする) を生成する。そして、MNは、(3)HA宛のBUを送信し、上記生成されたnCoAをHAに通知する。なお、HAのアドレスを「2001:12::200:e2ff:fe5c:ef01」とする。
【0042】
ここで、MNは、(3)HA宛のBUを送信した直後に、送信元アドレスをnCoAとした(4)Echo requestをnARに送信する(本発明で特徴的な動作)。
【0043】
(4)Echo requestを受信したnARは、Echo replyを前記Echo requestの送信元アドレスであるnCoAに送信しようとする。これはRFC2463(非特許文献4に記載)に準拠した動作である。しかし、この時点では、nARのNeighbor cacheには、nCoAに関するNeighbor cache entryは存在しない。そこで、nARは、(5)NSをMNに送信し、MNから(6)NAを受信することで、nCoAのNeighbor cache entry(図9参照)を作成する。これは、RFC2461に準拠した動作である。そしてnARは、作成されたNeighbor cache entryに従い、(7)Echo replyをMNに送信する。
【0044】
このとき、MNによる(4)Echo request送信からnARによる(7)Echo reply送信までに要する時間(図4における“時間a”)は、MNによる(3)BUの送信から(8)BAがnARに到着するまでに要する時間(図4における“時間b”)よりも短いと考えられる。なぜなら、MNにとって、(3)BUの送信及び(8)BAの受信は、多くのノードを経由して到達できるHAとの間の通信であるのに対し、(4)Echo requestの送信及び(7)Echo replyの受信は、隣接するノードであるnARとの間の通信だからである。
【0045】
その結果、図4に示すように、(8)BA、及び(8)BAに続いてnARへ到着するデータ・パケット((9)〜(11))は、(7)Echo reply送信の際に作成されたnCoA宛のNeighbor cache entryに従い、nARでバッファされることなくMNへ転送されることになる。これにより、nARにおけるNeighbor cache entry作成に起因した遅延増加やパケットロスの発生を回避することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態におけるMNは、nARに対し(1)RSを送信することで(2)RAの送信を要求しているが、これは必ずしも必要ではなく、MNは、(1)RSを送信することなく、nARが定期的に送信する(2)RAを受信してもよい。
【0047】
また、本実施形態は、本発明をIPv6へ適用した例であるが、文献"IETF RFC2002「Mobile IPv4」"に記載されたco-located modeのモバイルIPv4に適用しても同様の効果が得られる。
【0048】
[第2実施形態]
第2実施形態では、本発明を、上記の非特許文献1に記載のMobile IPv6準拠のMNに適用した場合の実施形態を説明する。なお、第2実施形態におけるMN10の機能ブロック構成及び移動通信システムの構成は、前述した第1実施形態におけるMN10の機能ブロック構成及び移動通信システムの構成(図6)と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
図5には、MNがoAR(不図示)からnARへハンドオフする場合のシーケンスを示す。この図5に基づき、第2実施形態の動作を説明する。
【0050】
MNはハンドオフ後、nARにRAの送信を促す(1)RSを送信し、nARから(2)RAを受信すると、新リンク上での新しい気付アドレスnCoA (例えば「2001:23::200:e2ff:fe56:ee87」とする) を生成する。そして、MNは、(3)HA宛のBUを送信し、上記生成されたnCoAをHAに通知する。なお、HAのアドレスを「2001:12::200:e2ff:fe5c:ef01」とする。
【0051】
ここで、MNは、(3)HA宛のBUを送信した直後に、送信元アドレスをnCoAとした(4)NSをnARに送信する(本発明で特徴的な動作)。
【0052】
nARは、この(4)NSを受信することで、nCoAのNeighbor cache entry(図9参照)を作成する。これは、RFC2461に準拠した動作である。そして、nARは、(5)NAをMNに送信する。
【0053】
この結果、図5に示すように、(6)BA、及び(6)BAに続いてnARへ到着するデータ・パケット((7)〜(9))は、(4)NS受信の際に作成されたnCoA宛のNeighbor cache entryに従い、nARでバッファされることなくMNへ転送されることになる。これにより、nARにおけるNeighbor cache entry作成に起因した遅延増加やパケットロスの発生を回避することが可能となる。
【0054】
なお、第1実施形態と同様に、第2実施形態におけるMNは、nARに対し(1)RSを送信することで(2)RAの送信を要求しているが、これは必ずしも必要ではなく、MNは、(1)RSを送信することなく、nARが定期的に送信する(2)RAを受信してもよい。
【0055】
[第3実施形態]
第3実施形態では、本発明を、上記の非特許文献1に記載のMobile IPv6準拠のARに適用した場合の実施形態を説明する。
【0056】
図7は、第3実施形態のAR30の機能ブロック構成及び移動通信システムの構成を示す。この図7に示すように、AR30は、無線リンク側MN送受信インターフェース31、ネットワーク側送受信インターフェース32、無線リンク制御部33、有線リンク制御部34、IP制御部35、ルーチングテーブル36、Neighbor cache37、及びBU判定部38を含んで構成される。
【0057】
このうち無線リンク制御部33は、無線リンク側MN送受信インターフェース31から受信されたフレームを複製し、複製により得られた2つのフレームのうち1つをBU判定部38に伝送し、残った1つのフレームについてはそのMACヘッダを外してIP制御部35へ伝送する。また、無線リンク制御部33は、IP制御部35からIPパケットを受信した場合、Neighbor cache37を参照してMACヘッダを当該IPパケットに付与した後、無線リンク側MN送受信インターフェース31経由で当該IPパケットを無線リンクへ送信する。
【0058】
有線リンク制御部34は、ネットワーク側送受信インターフェース32から受信されたフレームのMACヘッダを外した後、当該フレームをIP制御部35へ伝送する。また、有線リンク制御部34は、IP制御部35からIPパケットを受信した場合、Neighbor cache37を参照してMACヘッダを当該IPパケットに付与した後、ネットワーク側送受信インターフェース32経由で当該IPパケットを無線リンクへ送信する。
【0059】
IP制御部35は、無線リンク制御部33又は有線リンク制御部34から受信されたIPパケットについて、ルーチングテーブル36を参照することで無線リンクへ送信したらよいか有線リンクへ送信したらよいかを判断し、無線リンク制御部33又は有線リンク制御部34のうち送信すべき方へ当該IPパケットを伝送する。また、IP制御部35は、RFC2461に従って、近隣探索に関連するICMPパケットに関する処理を行い、Neighbor cache37を管理する。
【0060】
Neighbor cache37は、図9のような隣接ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けをNeighbor cache entryとして記憶する。
【0061】
また、BU判定部38は、次ヘッダ番号チェック及びモビリティヘッダのtype fieldチェックによってBUを判別し、MNのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを作成し、これをNeighbor cache entryとして、Neighbor cache37に記憶する。
【0062】
なお、本実施形態では、無線リンク制御部33のフレーム複製機能とBU判定部38の全機能とが本発明に該当する。
【0063】
図8には、MNがoAR(不図示)からnARへハンドオフする場合のシーケンスを示す。この図8に基づき、第3実施形態の動作を説明する。なお、本実施形態では、nARの提供する無線リンクは、IEEE802.11に準拠した無線LANであるとする。
【0064】
MNはハンドオフ後、nARにRAの送信を促す(1)RSを送信し、nARから(2)RAを受信すると、新リンク上での新しい気付アドレスnCoA (例えば「2001:23::200:e2ff:fe56:ee87」とする) を生成する。そして、MNは、(3)HA宛のBUを送信し、上記生成されたnCoAをHAに通知する。なお、HAのアドレスを「2001:12::200:e2ff:fe5c:ef01」とする。
【0065】
このBUを中継する際に、ARでは、BU判定部38は、次ヘッダ番号チェック及びモビリティヘッダのtype fieldチェックによって当該パケットがBUであることを認識する。
【0066】
ここで、ARが中継パケットをBUと認識する手法について述べる。ARは、受信したIPパケットの先頭から、順に次ヘッダ番号をチェックする。次ヘッダ番号がモビリティヘッダを示す値である場合、ARは、該モビリティヘッダ内のtype fieldに記されたタイプ番号をチェックする。タイプ番号がBUを示す“5”である場合、ARはこのパケットをBUであると認識する。そして、ARは、MACヘッダ内の送信元アドレスフィールドに格納されているMNのMACアドレスと、IPヘッダ内の送信元アドレスフィールドに格納されているMNのCoAとを対応付けることで、新たなNeighbor cache entryを作成する。このEntryの状態は「STALE」に設定する。
【0067】
このようにしてBU判定部38は、送信元MACアドレスと送信元IPアドレスとの対応付けを得て、当該対応付けを新たなNeighbor cache entry(図9参照)として作成し、Neighbor cache37に記憶する(本発明の動作)。
【0068】
この結果、図8に示すように、(4)BA、及び(4)BAに続いてnARへ到着するデータ・パケット((5)〜(7))は、(3)BU中継の際に作成されたnCoAのNeighbor cache entryに従い、nARでバッファされることなくMNへ転送されることになる。これにより、nARにおけるNeighbor cache entry作成に起因した遅延増加やパケットロスの発生を回避することが可能となる。
【0069】
なお、第1、第2実施形態と同様に、第3実施形態におけるMNは、nARに対し(1)RSを送信することで(2)RAの送信を要求しているが、これは必ずしも必要ではなく、MNは、(1)RSを送信することなく、nARが定期的に送信する(2)RAを受信してもよい。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、新たに接続したアクセスルータは、結合確認メッセージや当該移動ノード宛のデータ・パケットを転送する時に、従来のように改めてMACアドレス解決を行う必要がなくなるため、新たに接続したアクセスルータにおけるMACアドレス解決に起因する伝送遅延の増加やパケットロスの発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のハンドオフ時のシーケンス図である。
【図2】従来技術にて一時的なバッファリングがパケット伝送遅延及びパケットロスを発生させる様子を示すシーケンス図である。
【図3】 BAがnARに到着する時点で既にnCoAのNeighbor cache entryが存在していたと仮定した場合のシーケンス図である。
【図4】第1実施形態のハンドオフ時のシーケンス図である。
【図5】第2実施形態のハンドオフ時のシーケンス図である。
【図6】第1、2実施形態のMNの機能ブロック及び移動通信システムの構成を示す図である。
【図7】第3実施形態のARの機能ブロック及び移動通信システムの構成を示す図である。
【図8】第3実施形態のハンドオフ時のシーケンス図である。
【図9】 Neighbor cache entryの一例を示す図である。
【符号の説明】
10…移動ノード(MN)、11…ユーザインターフェース、12…アプリケーション実行部、13…IP制御部、14…IPモビリティ制御部、15…Neighbor discovery実行部、16…リンク制御部、17…Neighbor cache、18…送受信インターフェース、30…アクセスルータ(AR)、31…無線リンク送受信インターフェース、32…ネットワーク側送受信インターフェース、33…無線リンク制御部、34…有線リンク制御部、35…IP制御部、36…ルーチングテーブル、37…Neighbor cache、38…BU判定部。
Claims (6)
- モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行されるとともに所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供するアクセスルータが複数存在する移動通信システムにて、何れかのアクセスルータから無線リンクの提供を受ける移動ノードであって、
自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、
生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信手段と、
を備えた移動ノード。 - モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行されるとともに所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供するアクセスルータが複数存在する移動通信システムにて、何れかのアクセスルータから無線リンクの提供を受ける移動ノードであって、
自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、
生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信手段と、
を備えた移動ノード。 - 移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムであって、
前記移動ノードは、
自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、
生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信手段とを備え、
前記アクセスルータは、
自機が無線リンクを提供する配下の移動ノードからエコー要求メッセージを受信したこと、又は前記配下の移動ノード宛の前記返事を中継したことを契機に、当該配下の移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第1の対応付け記憶手段を備えた、
ことを特徴とする移動通信システム。 - 移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムであって、
前記移動ノードは、
自ノードがエリアを跨って移動したことによる無線リンク提供元のアクセスルータの変更に伴い、新たな気付アドレスを生成する生成手段と、
生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信手段とを備え、
前記アクセスルータは、
自機が無線リンクを提供する配下の移動ノードから近隣要請メッセージを受信したことを契機に、当該配下の移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第2の対応付け記憶手段を備えた、
ことを特徴とする移動通信システム。 - 移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムにおける通信制御方法であって、
移動ノードが、自ノードがエリアを跨って移動したことにより無線リンク提供元のアクセスルータが変更した場合に、新たな気付アドレスを生成する生成工程と、
移動ノードが、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、送信元への返事を要求するエコー要求メッセージを作成し、作成したエコー要求メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第1の作成送信工程と、
前記移動ノードが新たに接続したアクセスルータが、前記移動ノードからエコー要求メッセージを受信した場合又は前記移動ノード宛の前記返事を中継した場合に、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第1の対応付け記憶工程と、
を有する通信制御方法。 - 移動ノードと、所定のエリア内の移動ノードに無線リンクを提供する複数のアクセスルータとを含んで構成され、モバイルIP又はその拡張方式に基づくモビリティ制御が実行される移動通信システムにおける通信制御方法であって、
移動ノードが、自ノードがエリアを跨って移動したことにより無線リンク提供元のアクセスルータが変更した場合に、新たな気付アドレスを生成する生成工程と、
移動ノードが、生成された新たな気付アドレスが送信元アドレスとして設定された、自パケットの送信元のIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶することを要求する近隣要請メッセージを作成し、作成した近隣要請メッセージを、新たに接続したアクセスルータに送信する第2の作成送信工程と、
前記移動ノードが新たに接続したアクセスルータが、前記移動ノードから近隣要請メッセージを受信した場合に、当該移動ノードのIPアドレスとMACアドレスとの対応付けを記憶する第2の対応付け記憶工程と、
を有する通信制御方法。
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