JP4075130B2 - 走行車両のステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はホイールクレーンやホイールショベル等のように下部走行体上に上部旋回体が搭載され、下部走行体にあるホイールを上部旋回体の運転室から操作する走行車両のステアリング装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような上部旋回体を備えた走行車両(以下、上部旋回式走行車両をという)においては、上部旋回体が回転するという特異性から、トラック等の一般走行車両に装備されているような、ハンドル操作力を増幅してホイールに伝えるための倍力装置である周知のインテグラル式パワーステアリングユニットをアームやドラッグリンクといった機械的なリンク機構を介して前部ホイールに接続する構成をそのまま採用することができない。
【0003】
このため、従来の上部旋回式車両においては、図4に示すように、上部旋回体に、ステアリングユニット1、下部走行体にステアリングシリンダ2,3をそれぞれ配置し、ハンドル4の操作量に応じた高圧作動油をステアリングユニット1から、上部旋回体の回転中心に配置された回転接手5を通して上記ステアリングシリンダ2,3に供給することによって前部ホイールを操舵する構成をとっていた(特公平2−8940号公報参照)。
【0004】
図4中、6はエンジンで駆動されるステアリング用の油圧ポンプである。また、同図では、ステアリングユニット1の内部機構をサーボ弁7と油圧モータ8の油圧記号で模式的に表している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術によると、走行時に、周知のホイールアライメント機構によって前部ホイールに加えられる直進復元力がハンドル4に伝達されないため、ハンドルに中立位置(直進位置)に自動的に戻ろうとする力が働かない。
【0006】
すなわち、前部ホイールが受ける直進復元力はステアリングシリンダ2,3に加えられ、これによって同シリンダ2,3が作動油をステアリングユニット1に向けて吐出しようとするが、ステアリングユニット1はハンドル操作後に自動的に中立復帰し、この中立位置では上記吐出された作動油をブロックするため、ハンドル4に前部ホイールが受ける直進復元力が伝達されない。
【0007】
このため、運転者は、ハンドル4を切ってカーブを曲がった後に、いちいち目測でハンドル4を中立位置に戻さなければならなかった。
【0008】
このことから、とくに、素早いハンドル操作が要求される車線変更を行う際に車体がふらつくことがあり、車両の走行安全性が低下するだけでなく、上部旋回式走行車両が大形車両であることと相俟って周りの車両の運転者に恐怖感を与えることがあった。
【0009】
以上の事情により、従来の上部旋回式走行車両はハンドル操作が容易でないため運転技能の習得に時間がかかり、一般走行車両とは相当異なった特殊な運転技能を必要とするものとなっていた。
【0010】
そこで本発明者は、特願平9−345275号の出願において、上部旋回式走行車両の上部旋回体に上部ステアリングシリンダ、下部走行体にホイールの舵角を変える下部ステアリングシリンダをそれぞれ設けるとともに、この両シリンダ同士を油路で接続して閉回路を構成し、走行時にホイールが受ける直進復元力を上記閉回路の油圧およびステアリングユニットを介してハンドルに伝える技術を提案した。
【0011】
このステアリング装置によると、閉回路の静油圧によって力の伝達を行うため、操舵後のハンドルが、トラック等の一般走行車両と同様に、自動的に中立位置に復帰する。
【0012】
このため、上部旋回式走行車両でありながら直進復元性にすぐれ、ハンドル操作が容易となる。また、車線変更時に車体がふらつくおそれがない。
【0013】
ところが、この構成によると、下部ステアリングシリンダに加えて上部ステアリングシリンダの摺動抵抗がハンドルの中立復帰の抵抗となるため、ハンドルが中立に戻り切る前にホイールの中立復帰力が無くなってしまい、ハンドルの戻りが悪くなって直進走行性が低下するという新たな問題が生じていた。
【0014】
また、別の問題として、ステアリングシリンダが計四つに増えることでシリンダの内部リークが増え、回転接手からの油のリークも加えて閉回路内の油が減少し、これによってハンドルの中立位置が直進位置からずれる事態が発生する。
【0015】
こうなると、直進走行性が低下するとともに、シリンダの有効ストロークが短くなってホイールの総舵角が減少し、本来の走行時旋回能力が出なくなる。
【0016】
そこで本発明は、上下のステアリングシリンダを閉回路でつないだ構成を前提として、操舵後にハンドルを確実に中立復帰させることができる走行車両のステアリング装置を提供するものである。
【0017】
また本発明は、油の内部リークによってハンドルの中立位置がずれた場合に、容易に修正することができる走行車両のステアリング装置を提供するものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ホイールを有する下部走行体の上部に、操舵用のハンドルを有する運転席を備えた上部旋回体が旋回自在に搭載され、かつ、上記ハンドルの操作力を増幅して上記ホイールに操舵力として伝えるステアリングユニットを有する車両において、次の構成を具備するものである。
【0019】
(i) 上記上部旋回体に、上記ハンドルの操作に応じて作動する上部ステアリングシリンダが設けられていること。
【0020】
(ii) 上記下部走行体に、上記ホイールの舵角を変える下部ステアリングシリンダが設けられていること。
【0021】
(iii) 上記上部および下部両ステアリングシリンダ同士が、上部旋回体の旋回中心に配置された回転接手を介して油路により接続されて閉回路が構成されていること。
【0022】
(iv) 走行時に上記ホイールが受ける直進復元力が上記閉回路の油圧および上記ステアリングユニットを介して上記ハンドルに伝達可能に構成されていること。
【0023】
(v) 上記ハンドルを中立位置に復帰させる方向に力が作用する中立復帰手段として、油圧シリンダからなる中立復帰シリンダが設けられていること。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、中立復帰シリンダが、互いに接続された両側油室と、この両側油室内で摺動可能に設けられたフリーピストンと、この両フリーピストンとの間で力の伝達を行うロッドとを具備するものである。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、上部および下部ステアリングシリンダの油室をタンクに連通させる位置とタンクに対して遮断する位置との間で切換わり作動する中立復帰弁が設けられたものである。
【0026】
請求項4の発明は、請求項3の構成において、中立復帰弁として電磁切換弁が用いられたものである。
【0027】
請求項5の発明は、請求項4の構成において、中立復帰弁としての電磁切換弁が、運転室に設けられた中立復帰スイッチの操作によって作動するように構成されたものである。
【0028】
上記構成によると、上部旋回式走行車両において、ホイールが受ける直進復元力が閉回路の静油圧を介してハンドルに伝えられて直進走行性が確保される。
【0029】
そして、中立復帰手段としての中立復帰シリンダを設けたことにより、走行時に、操舵後のハンドルがこの中立復帰シリンダの力によって中立位置に確実に復帰する。
【0030】
この場合、中立復帰手段として油圧シリンダ(中立復帰シリンダ)を用いているため、同シリンダをステアリング油圧回路中に組み込んでその動力源(油圧源)を容易に確保することができる。すなわち、別途動力源を付加する必要がない。
【0031】
また、中立復帰シリンダとして、両側フリーピストンとこれらとの間で力の伝達を行うロッドとを具備するシリンダを用いた請求項2の構成によると、押し用と引き用の一対のシリンダを用いた場合と比較してシリンダ設備が簡単、小形ですむ。
【0032】
一方、請求項3〜5の構成によると、各ステアリングシリンダや回転接手で発生した内部リークによってハンドルの中立位置のずれが生じた場合に、中立復帰弁の操作によって各ステアリングシリンダの油室をタンクに連通させて等圧にした状態で中立復帰シリンダを作用させることにより、ハンドルを中立位置に修正することができる。
【0033】
これにより、直進走行性を維持することができるとともに、シリンダの有効ストローク(ホイール操舵角)の減少を防止して本来の走行時旋回能力を確保することができる。
【0034】
この場合、中立復帰弁として電磁切換弁を用いた請求項4、5の構成によると、この電磁切換弁をスイッチによって遠隔操作できるため、上記ハンドルの中立修正機能を運転者が随意に働かせることができる。
【0035】
とくに、請求項5の構成によると、ハンドルの中立位置のずれを察知した場合に運転室でのスイッチ操作によって即座にかつ手軽に修正機能を働かせることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態を図1〜図3によって説明する。
【0037】
図1に本発明が適用される上部旋回式走行車両の一例であるホイールクレーンの全体概略構成を示している。
【0038】
同図において、11は下部走行体で、この下部走行体11上に上部旋回体12が旋回軸受13を介して垂直軸Xまわりに回転自在に搭載されている。
【0039】
上部旋回体12には、伸縮自在なブーム14が起伏自在に設けられるともに、キャビン(運転室)15が配置され、このキャビン15内に操舵用のハンドル16が設けられている。
【0040】
一方、下部走行体11は、走行体フレーム17の前部にこの実施形態での操舵輪である前部ホイール18、後部に後部ホイール19がそれぞれ左右両側に設けられて成っている。
【0041】
また、走行体フレーム17には、後端部に図示しない走行およびクレーン操作の動力源となるエンジンが収容されたエンジンボックス20が設けられるとともに、前部および後部の各左右両側に、クレーン作業時に機体を持ち上げ支持するアウトリガ21…が設けられている。
【0042】
さらに、上部旋回体12の旋回中心である垂直軸Xまわりに回転接手22(図2に示す)が設けられ、下部走行体11側と上部旋回体12側の油圧配管同士がこの回転接手22を介して接続される。
【0043】
次に、このステアリング装置の油圧回路構成を図2によって説明する。
【0044】
回転接手22よりも上方側である上部旋回体側にはステアリングユニット23が配置され、ハンドル16の操作によって回転するハンドル軸16aがこのステアリングユニット23の入力側に接続されている。
【0045】
このステアリングユニット23は、公知のインテグラルタイプのパワ−ステアリングユニットであり、ハンドル操作に応じて動作し、リンク24の動作として出力される。
【0046】
なお、ステアリングユニット23は、インテグラルタイプのものに限定されず、他の形式のステアリングユニットを用いることもできる。例えば、ブースタタイプ(リンケージタイプ)のものであってもよい。
【0047】
また、上部旋回体側には、上部左右ステアリングシリンダ25,26が設けられている。
【0048】
この両シリンダ25,26は、同一仕様の複動型片ロッド式シリンダであり、互いのロッド25R,26R同士が連結された状態でリンク24に接続されている。
【0049】
一方、回転接手22よりも下方側である下部走行体側には、下部左右ステアリングシリンダ(上部ステアリングシリンダ25,26と同一容量の複動型片ロッド式油圧シリンダ)27,28が設けられ、この両シリンダ27,28のロッドが前部左右ホイール18,18のナックルアーム18a,18aに接続されている。29は左右両ナックルアーム18a,18a同士を連結するタイロッドである。
【0050】
これら各ステアリングシリンダ25,26,27,28において、
(i) 上部左ステアリングシリンダ25のロッド側油室25bと同右ステアリングシリンダ26のヘッド側油室26aがシリンダシリンダ油路30によって接続され、
(ii) 上部左ステアリングシリンダ25のヘッド側油室25aと同右ステアリングシリンダ26のロッド側油室26bがシリンダ油路31によって接続され、
(iii) 一方のシリンダ油路30が下部左ステアリングシリンダ27のロッド側油室27bと下部右ステアリングシリンダ28のヘッド側油室28aに、また他方のシリンダ油路31が下部左ステアリングシリンダ27のヘッド側油室27aと下部右ステアリングシリンダ28のロッド側油室28bに、それぞれ回転接手22を通る上下接続油路32,33によって接続されている。
【0051】
これら各ステアリングシリンダ25〜28と、各油路30,31,32,33によって、一定の圧力を持った閉回路Aが構成され、この閉回路Aの静油圧により、ハンドル操作力がホイール18,18に伝えられるとともに、ホイール18,18が受ける直進復元力がハンドル16に伝えられる。
【0052】
この点の作用を次に説明する。
【0053】
ハンドル16を図2矢印で示すように右に回すと、その動きはステアリングユニット23を介してリンク24に伝達されて、上部左右両ステアリングシリンダ25,26のロッド25R,26Rがそれぞれ図右方向に移動する。
【0054】
これにより、上部左ステアリングシリンダ25のロッド側油室25b、および同右ステアリングシリンダ26のヘッド側油室26aから作動油が吐出され、油路30,32を通って下部左ステアリングシリンダ27のロッド側油室27b、および同右ステアリングシリンダ28のヘッド側油室28aに供給される。
【0055】
これにより、下部左右両ステアリングシリンダ27,28が作動して前部左右のホイール18,18が右に操舵される。
【0056】
このとき、下部左ステアリングシリンダ27のヘッド側油室27a、および同右ステアリングシリンダ28のロッド側油室28bから吐出された作動油は、油路,33,31を通って上部左ステアリングシリンダ25のヘッド側油室25a、および同右ステアリングシリンダ26のロッド側油室26bにそれぞれ供給される。
【0057】
一方、ハンドル16を左に回すと、各部が上記と逆方向に作動して両ホイール18,18が左に操舵される。
【0058】
なお、この第一実施形態の場合、各ステアリングシリンダ25〜28のシリンダ容量が同一であるため、上下シリンダ間で給排される作動油の量はほぼ等しい。
【0059】
ただし、各ステアリングシリンダ25〜28のシリンダ容量を完全同一にする必要はなく、若干は異なっていてもよい。
【0060】
また、上下のステアリングシリンダ間に受圧面積の差を持たせてもよい。この場合、ハンドル16の切れ角とホイール18,18の切れ角の比率が異なってくる。つまり、下部より上部のシリンダの受圧面積を小さくすれば、ホイール18,18の切れが小さくなり、逆に上部より下部のシリンダ受圧面積を小さくすれば、ホイール18,18の切れが大きくなる。
【0061】
また、操舵後、ホイール18,18に加えられる直進復元力は、下部ステアリングシリンダ27,28から閉回路Aの静油圧を通じて上部ステアリングシリンダ25,26に伝えられ、リンク24およびステアリングユニット23を介してハンドル16に伝達される。
【0062】
これにより、ホイール18,18が直進位置に復帰すると同時に、ハンドル16も中立位置(直進位置)に自動復帰する。
【0063】
この場合、上下の各ステアリングシリンダ25〜28には摺動抵抗があり、このシリンダ摺動抵抗の総和がハンドル中立復帰の抵抗となるため、ホイール18,18の直進復元力がハンドル16に100%伝わらずに、ハンドル16が完全には中立復帰しなくなる事態が発生し得る。
【0064】
そこで、中立復帰手段としての中立復帰シリンダ34によってハンドル16を中立位置に確実に復帰させる構成がとられている。
【0065】
中立復帰シリンダ34は、図3に拡大して示すように、左右二つの油室34a,34bを備え、この両油室34a,34bにそれぞれフリーピストン35,36(以下、図の方向性に従って左側、右側油室またはフリーピストンという)が設けられている。
【0066】
この両フリーピストン35,36間には、これら両フリーピストン35,36との間で力の伝達を行う頭付きロッド37の頭部37aが導入され、このロッド37の先端部がステアリングユニット23のリンク24の中間部に連結されている。
【0067】
図3中、38は両フリーピストン35,36のシリンダ中央側での停止位置を決めるストッパ、39は両フリーピストン35,36間に形成された油室で、この油室39はタンクポート40を介してタンクTに接続され、フリーピストン35,36の移動に応じて油室39に対して油が給排される。
【0068】
また、左右両側油室34a,34bには中立シリンダ油路41,42が接続されている。
【0069】
この両中立シリンダ油路41,42は、図2に示すように合流して中立復帰シリンダライン43に接続され、この中立復帰シリンダライン43が中立復帰シリンダ用油圧ポンプ44に接続されている。
【0070】
すなわち、このポンプ44から中立復帰シリンダ34の両側油室34a,34b(両側フリーピストン35,36)に等しい油圧が供給されるようになっている。
【0071】
なお、中立復帰シリンダライン43にアキュムレータを接続し、このアキュムレータの圧力を中立復帰シリンダ34に供給するようにしてもよい。
【0072】
また、両側フリーピストン35,36には等圧が作用することが望ましいが、ロッド39が左側フリーピストン35を貫通している分だけ、同ピストン35の受圧面積が右側ピストン36よりも小さくなる。この受圧面積の差が問題になる場合には、中立復帰シリンダ34における右側のシリンダ径を左側のシリンダ径よりも小さくして完全等圧を図ってもよい。
【0073】
一方、上部ステアリングシリンダ25,26同士を接続する二つのシリンダ油路30,31にはそれぞれタンクライン45,46が接続されている。
【0074】
この両タンクライン45,46は、それぞれ開通位置イと遮断位置ロとの間で切換わり作動する電磁切換弁である中立復帰弁47,48を介して合流タンクライン49に接続され、この合流タンクライン49がタンクTに接続されている。
【0075】
中立復帰弁47,48は、図1のキャビン15内に設けられた中立復帰スイッチ50によって操作される。
【0076】
なお、図2中、51はステアリングユニット23の油圧源としてのステアリング用油圧ポンプ、52はステアリングユニット23のポンプおよびタンク両ポートとポンプ51およびタンクTとを結ぶ油路中に設けられたフローデバイダ、53は中立復帰シリンダ用油圧ポンプ44の吐出圧を設定するリリーフ弁、54はステアリングユニット用油圧ポンプ51の吐出圧を設定するリリーフ弁である。
【0077】
中立復帰・中立位置修正作用を説明する。
【0078】
I.操舵後の自動中立復帰作用
中立復帰弁47,48は、通常は図示の遮断位置ロにあり、この状態では閉回路Aは外部に対して閉じた状態となっている。
【0079】
また、中立復帰シリンダ34は、非操舵時は両側油室34a,34bがほぼ等圧となり、ロッド頭部37aが両側フリーピストン35,35に押されてシリンダ中央部に位置する。
【0080】
この状態で操舵されると、リンク24の出力によって同シリンダ34が図の左側または右側に押されてシリンダ両側油室34a,34bに圧力差が生じる。
【0081】
なお、このとき中立復帰シリンダ34の推力がステアリングユニット23の出力に対して抵抗となるが、このステアリングユニット出力を十分大きくしておけば問題はない。
【0082】
操舵後、前記したようにホイール18,18に作用する直進復元力がステアリングユニット23のリンク24に伝えられると同時に、中立復帰シリンダ34が中立位置に戻ろうとし、このシリンダ復帰力がリンク24に直進復元力とともに加えられる。
【0083】
このシリンダ復帰力は、各ステアリングシリンダ25〜28の摺動抵抗の総和よりも大きく設定され、この合計の復帰力によってハンドル16が中立位置に確実に復帰する。
【0084】
なお、中立復帰シリンダ34の推力をステアリングシリンダ25〜28の摺動抵抗の総和よりも小さく設定した場合でも、ハンドル16を中立位置に復帰させる助力となり、同シリンダ34を設けない場合よりもハンドル16の戻りが良好となることはいうまでもない。
【0085】
こうして、操舵後、ハンドル16を確実に中立位置に復帰させ、所期の直進走行性を確保することができる。
【0086】
一方、閉回路Aには、各ステアリングシリンダ25〜28および回転接手22での内部リークによって油量が減少し、そのまま放置すると、ハンドル16の中立位置が直進位置からずれる。つまり、操舵後のハンドル16の戻り位置が正確な中立位置(ホイール18,18の直進位置)から外れ、直進走行性が損なわれるだけでなく、ステアリングシリンダ25〜28の有効ストロークが短くなり、クレーン本来の走行時旋回能力が低下する事態が発生する。
【0087】
そこで、適時、次のようにハンドル16の中立合せを行う。
【0088】
II.中立位置修正作用
ホイール18,18を目視で直進位置に合せた状態で中立復帰スイッチ50を操作して中立復帰弁47,48を作動させ、図の遮断位置ロから開通位置イに切換える。
【0089】
こうすると、閉回路AがタンクTに連通されて左右の上部ステアリングシリンダ25,26の各油室25a,25b,26a,26bがタンク圧に揃えられ、中立復帰シリンダ34の推力によって上部ステアリングシリンダ25,26およびハンドル16が中立位置に戻される。
【0090】
なお、下部ステアリングシリンダ27,28は、ホイール18,18を中立位置に合せた際に中立となる。
【0091】
こうして、ハンドル16の中立位置からのずれを修正して、直進走行性およびステアリングシリンダ25〜28の本来の有効ストロークを確保することができる。
【0092】
また、上記した位置修正方法によると、上部ステアリングシリンダ25,26の中立位置が不明のままでよく、このシリンダ中立位置を検出するセンサ類が不要となる。
【0093】
ところで、クレーン作業時に閉回路A内の油の温度が上昇して内圧が上昇する場合があるため、所謂圧抜きを行うのが望ましい。
【0094】
そこで、この圧抜きの一つの方法として、アウトリガが張出されたこと(油温の上昇が生じるクレーン作業が開始されること)をセンサで検出し、このセンサからのアウトリガ張出し信号に基づいて中立復帰弁47,48を作動させるようにしてもよい。この場合、中立復帰シリンダ34は作動不能にロックしておく。
【0095】
また、上記実施形態では中立復帰シリンダ34としてフリーピストン35,36とロッド37からなるシリンダを用いたが、押し用と引き用の一対の油圧シリンダを対向させて配置する等、他のシリンダ構成によっても中立復帰手段を構成することができる。
【0096】
さらに、中立復帰手段は、必ずしも、走行時にハンドル16を完全に中立復帰させるものである必要はなく、走行に差し支えない範囲(完全中立に近い状態)まで中立復帰させるものであってもよい。
【0097】
【発明の効果】
上記のように本発明によるときは、上部旋回式走行車両において、ホイールが受ける直進復元力を、上下のステアリングシリンダを含む閉回路の静油圧を介してハンドルに伝え、直進復元性を確保することができる。
【0098】
そして、中立復帰手段としての中立復帰シリンダを設けたことにより、各ステアリングシリンダの摺動抵抗に抗してハンドルを中立位置に確実に復帰させることができる。
【0099】
この場合、中立復帰手段として油圧シリンダ(中立復帰シリンダ)を用いているため、同シリンダをステアリング油圧回路中に組み込んでその動力源(油圧源)を容易に確保でき、別途動力源を付加する必要がない。
【0100】
とくに、中立復帰シリンダとして、両側フリーピストンとこれらの間に挟まれた主ピストンからなるシリンダを用いた請求項2の発明によると、押し用と引き用の一対のシリンダを用いた場合と比較してシリンダ設備が簡単、小形ですむ。
【0101】
一方、請求項3〜5の発明によると、各ステアリングシリンダや回転接手で発生した内部リークによってハンドルの中立位置のずれが生じた場合に、中立復帰弁の操作によって各ステアリングシリンダの油室をタンクに連通させて等圧にした状態で中立復帰手段を作用させることにより、ハンドルを中立位置に修正することができる。
【0102】
これにより、直進走行性を維持することができるとともに、シリンダの有効ストローク(ホイール操舵角)の減少を防止して本来の走行時旋回能力を確保することができる。
【0103】
この場合、中立復帰弁として電磁切換弁を用いた請求項4、5の発明によると、この電磁切換弁をスイッチによって遠隔操作できるため、上記ハンドルの中立修正機能を運転者が随意に働かせることができる。
【0104】
とくに、請求項5の発明によると、ハンドルの中立位置のずれを察知した場合に運転室でのスイッチ操作によって即座にかつ手軽に修正機能を働かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用されるホイールクレーンの全体概略構成を示す側面図である。
【図2】 本発明の実施形態にかかるステアリング装置の油圧回路構成図である。
【図3】 同装置に使用される中立復帰シリンダの拡大断面図である。
【図4】 従来のステアリング装置の油圧回路構成図である。
【符号の説明】
16 ハンドル
18,18 操舵される前部ホイール
23 ステアリングユニット
25,26 上部ステアリングシリンダ
27,28 下部ステアリングシリンダ
A 閉回路
30〜33 閉回路を構成する油路
22 回転接手
34 中立復帰手段としての中立復帰シリンダ
35,36 両側フリーピストン
37 ロッド
37a ロッド頭部
47,48 中立復帰弁
50 中立復帰スイッチ
Claims (5)
- ホイールを有する下部走行体の上部に、操舵用のハンドルを有する運転席を備えた上部旋回体が旋回自在に搭載され、かつ、上記ハンドルの操作力を増幅して上記ホイールに操舵力として伝えるステアリングユニットを有する車両において、次の構成を具備することを特徴とする走行車両のステアリング装置。
(i) 上記上部旋回体に、上記ハンドルの操作に応じて作動する上部ステアリングシリンダが設けられていること。
(ii) 上記下部走行体に、上記ホイールの舵角を変える下部ステアリングシリンダが設けられていること。
(iii) 上記上部および下部両ステアリングシリンダ同士が、上部旋回体の旋回中心に配置された回転接手を介して油路により接続されて閉回路が構成されていること。
(iv) 走行時に上記ホイールが受ける直進復元力が上記閉回路の油圧および上記ステアリングユニットを介して上記ハンドルに伝達可能に構成されていること。
(v) 上記ハンドルを中立位置に復帰させる方向に力が作用する中立復帰手段として、油圧シリンダからなる中立復帰シリンダが設けられていること。 - 中立復帰シリンダが、互いに接続された両側油室と、この両側油室内で摺動可能に設けられたフリーピストンと、この両フリーピストンとの間で力の伝達を行うロッドとを具備することを特徴とする請求項1記載の走行車両のステアリング装置。
- 上部および下部ステアリングシリンダの油室をタンクに連通させる位置とタンクに対して遮断する位置との間で切換わり作動する中立復帰弁が設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の走行車両のステアリング装置。
- 中立復帰弁として電磁切換弁が用いられたことを特徴とする請求項3記載の走行車両のステアリング装置。
- 中立復帰弁としての電磁切換弁が、運転室に設けられた中立復帰スイッチの操作によって作動するように構成されたことを特徴とする請求項4記載の走行車両のステアリング装置。
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