JP4072673B2 - 弾性表面波素子片の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾性表面波素子片の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通信機器等では、様々な周波数の電気信号から所定周波数の電気信号を取り出すため、弾性表面波フィルタが利用されている。弾性表面波フィルタは、弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装したものである。この弾性表面波素子片は、圧電体平板上に、少なくとも電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT(Interdigital Transducer)電極と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極とを形成したものである。
【0003】
弾性表面波フィルタは、トランスバーサル型と共振子型とに大別される。トランスバーサル型は、各IDT電極から漏出した弾性表面波が、圧電体平板の端面で乱反射するのを防止するため、弾性表面波素子片における各IDT電極の外側に、吸音材を貼り付けたものである。一方の共振子型は、各IDT電極から漏出した弾性表面波を積極的に反射させて共振を発生させるため、弾性表面波素子片における各IDT電極の外側に、反射器電極を形成したものである。共振子型では、共振周波数における電気信号の伝達率が高くなるので、トランスバーサル型に比べて挿入損失が小さい点で優れている。
【0004】
図8に、共振子型の弾性表面波フィルタにおける周波数特性のグラフを示す。共振子型の弾性表面波フィルタとして、縦2重モード弾性表面波フィルタが開発されている。この縦2重モード弾性表面波フィルタは、図8において破線で示すように、基本波対称縦モードS0(以下、S0モードと呼ぶ)、および基本波斜対称縦モードA0(以下、A0モードと呼ぶ)と呼ばれる、2つの縦共振モードを利用するものである。なお、特開昭61−285814号公報では、2個のIDT電極を有する縦2重モード弾性表面波フィルタが開示され、特開平1−231417号公報では、3個のIDT電極を有する縦2重モード弾性表面波フィルタが開示されている。この縦2重モード弾性表面波フィルタでは、図8において実線で示すようにインピーダンス整合を行うことにより、両共振モードの共振周波数の間が通過帯域となる。すなわち、両共振モード間の共振周波数の格差が、通過帯域の幅になっている。
【0005】
通過帯域の幅は、弾性表面波フィルタを使用する通信機器等に対応して、様々に設定される。通過帯域幅は、IDT電極の対数を変化させることにより設定している。図9に、IDT電極の対数を変化させた場合の、周波数特性のグラフを示す。図9に示すように、IDT電極の対数を50対から70対に増加させると、通過帯域幅が狭くなる。一方、IDT電極の対数を50対から30対に減少させると、通過帯域幅が広くなる。なお、IDT電極対数の減少は、挿入損失の増加を伴うことになる。このようにして、弾性表面波フィルタの通過帯域幅を所望の値に設定している。
【0006】
また、IDT電極の電極膜厚を変化させることにより、通過帯域幅を設定する場合もある。すなわち、IDT電極の電極膜厚を厚くすると、通過帯域幅は狭くなり、電極膜厚を薄くすると、通過帯域幅は広くなる。この場合でも、弾性表面波フィルタの通過帯域幅を所望の値に設定することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
IDT電極の対数を変化させて通過帯域幅を設定する方法では、通過帯域幅を狭くする場合に、IDT電極の対数を増加させる必要がある。この場合、弾性表面波素子片が大型化し、弾性表面波フィルタも大型化するという問題がある。近年の通信機器の小型化に伴って、弾性表面波フィルタにも小型化が強く要請されているが、上記の場合にはこの要請に応えられないことになる。一方、通過帯域幅を広くする場合には、挿入損失の増加を伴うという問題がある。この場合、弾性表面波フィルタの周辺機器等における電力消費量が増加することになる。
【0008】
また、IDT電極の電極膜厚を変化させて通過帯域幅を設定する方法では、弾性表面波素子片の周波数温度特性における頂点温度が大幅に変化し、温度特性が著しく悪化するという問題がある。
【0009】
本発明は上記問題点に着目し、弾性表面波フィルタを大型化することなく、挿入損失を増加させることなく、また温度特性を悪化させることなく、通過帯域幅の設定が可能な、弾性表面波素子片の製造方法の提供を目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、弾性表面波素子片の電極を陽極酸化する際に、陽極酸化電圧を変化させることにより、通過帯域幅を変化させることができるとの知見に基づいている。図1に、陽極酸化電圧と弾性表面波素子片の周波数特性との関係図を示す。なお、同図において陽極酸化電圧が0Vの場合とは、陽極酸化を行っていない場合を示している。
【0011】
図1(1)は、陽極酸化電圧を変化させた場合の、S0モードおよびA0モードの共振周波数の変化を示すグラフである。同図に示すように、陽極酸化電圧を上昇させると、S0モードおよびA0モードの共振周波数はいずれも低下する。これは、陽極酸化により電極の表面に酸化膜が形成され、陽極酸化電圧の上昇により酸化膜の膜厚が増加して、電極膜厚を厚くした場合と同様の効果が得られるためと考えられる。
【0012】
ここで注目すべきは、S0モードおよびA0モードの共振周波数の低下率が異なる点である。すなわち、陽極酸化電圧を上昇させると、両共振モード間の共振周波数の格差が小さくなる。したがって、陽極酸化電圧を上昇させることにより、通過帯域幅を狭くすることができるのである。
【0013】
また、電極を陽極酸化しても、弾性表面波素子片の周波数温度特性における頂点温度は、ほとんど変化しないことが報告されている。すなわち、温度特性を悪化させることなく、上記のように通過帯域幅を設定することができるのである。
【0014】
上述した知見に基づいて、本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法は、電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極と、前記各IDT電極の外側に伝搬された前記弾性表面波を反射する反射器電極とを、圧電体平板上に形成する弾性表面波素子片の製造方法であって、陽極酸化電圧の上昇変化に対する縦2重モードの両共振周波数の格差が小さくなるとの関係から、要求される通過帯域幅となる電圧を求め、前記各電極の表面を前記求めた電圧に向けて順次電圧を上げることにより通過帯域幅を狭くする方向に調整して陽極酸化することにより、所定の周波数通過帯域の幅を有する前記弾性表面波素子片を製造する構成とした。
【0015】
これにより、高電圧で陽極酸化すれば、IDT電極の対数を増加させることなく、通過帯域幅を狭くすることができる。したがって、弾性表面波フィルタを大型化させることがない。また、陽極酸化電圧の設定を変えることにより、弾性表面波フィルタの挿入損失を増加させることなく、所望の通過帯域幅にすることができる。したがって、弾性表面波フィルタの周辺機器等における電力消費量が増加することはない。
【0016】
また前記圧電体平板は、STカット水晶平板である構成としてもよい。水晶は周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。しかし、本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法を使用すれば、挿入損失を増加させることなく通過帯域を所定の幅に設定できるので、電気機械結合係数が問題となることはない。したがって、圧電体平板には、周波数温度特性の安定性に優れたSTカット水晶平板を使用することができる。
【0017】
本発明に係る方法を使用して弾性表面波素子片を製造することにより、上記効果を伴った弾性表面波素子片を提供することができる。
【0018】
本発明に係る方法を使用して製造した弾性表面波素子片を用い、前記弾性表面波素子片をパッケージの内部に実装し、前記弾性表面波素子片の前記各IDT電極と前記パッケージの外部端子とを導通可能とした弾性表面波フィルタを製造できる。これにより、上記効果を伴った弾性表面波フィルタを提供することができる。
【0019】
また、前記弾性表面波フィルタを使用して通信装置を製造することにより、上記効果を伴った通信装置を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明に係る弾性表面波素子片の製造方法の好ましい実施の形態を、添付図面に従って詳細に説明する。なお以下に記載するのは本発明の実施の一形態にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
本実施形態に係る製造方法で製造する弾性表面波素子片は、いわゆる共振子型の弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波素子片である。この弾性表面波素子片では、圧電体平板の表面に、信号入力用の第1IDT電極と、信号出力用の第2IDT電極と、反射器電極とを形成する。圧電体平板には、STカット水晶平板や、タンタル酸リチウム(LiTaO3)平板などを使用することができる。このうち水晶は、周波数温度特性の安定性に優れているが、電気機械結合係数が低いという欠点がある。そのため、水晶平板を使用した弾性表面波素子片において、電気・機械エネルギー相互間の変換効率を確保するには、IDT電極の対数を確保する必要があり、弾性表面波素子片が大型化するという問題がある。しかし、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法を使用すれば、挿入損失を増加させることなく通過帯域を所定の幅に設定できるので、電気機械結合係数が問題となることはない。したがって、圧電体平板には、周波数温度特性の安定性に優れたSTカット水晶平板を使用することができる。
【0022】
図2(1)に、弾性表面波素子片の代表的な電極パターンの平面図を示す。本実施形態に係る弾性表面波素子片では、電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極11と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極12とを、圧電体平板6の中央部に隣接して配置する。IDT電極10は、多数の電極指13を有する2個のすだれ状電極パターンにつき、それぞれの電極指を交互に平行に配置して構成する。また、IDT電極10から漏出した弾性表面波を反射する反射器電極20を、各IDT電極10の外側に配置する。反射器電極20は、多数の導体ストリップ23を足掛かりとしたはしご状電極パターンにより構成する。なお、各電極はAlまたはAl合金で形成する。また、各IDT電極10の電極指13のピッチおよび電極膜厚は、弾性表面波フィルタの中心周波数に対応して設定する。
【0023】
もっとも、本実施形態に係る製造方法で製造する弾性表面波素子片は、上記以外の電極パターンとすることも可能である。図2(2)から(4)には、他の電極パターンの平面図を示している。図2(2)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、励振された弾性表面波の振幅を制御する目的で、反射器電極32を配置したものである。また、図2(3)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、圧電体平板の上方における電磁波をシールドする目的で、交差導体34を配置したものである。さらに、図2(4)は、第1IDT電極11と第2IDT電極12との間に、反射器電極32および交差導体34の両方を配置したものである。
【0024】
一方、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法では、後述するように各電極の表面を陽極酸化する。図3に、IDT電極の電極指の断面図を示す。各電極の表面を陽極酸化することにより、圧電体平板6上の電極指13の表面に酸化膜15を形成する。各電極をAlで構成した場合には、Al2O3の酸化膜を形成する。なお、陽極酸化電圧を上昇させれば、酸化膜の膜厚も増加する。一方、反射器電極の導体ストリップの表面にも、同様に酸化膜を形成する。
【0025】
次に、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法について説明する。弾性表面波素子片は、圧電体ウエハにおいて複数個を同時に製造する。概略的には、圧電体ウエハの表面に各電極を形成し、各電極の表面を陽極酸化し、さらに圧電体ウエハから各弾性表面波素子片を分離して、弾性表面波素子片を形成する。
【0026】
最初に、圧電体ウエハの表面に各電極を形成する。具体的には、まず圧電体ウエハの表面全体に、蒸着法やスパッタ法を用いて電極膜を形成する。次に、電極膜の表面全体にレジストを塗布し、露光および現像して、電極形成部分以外の部分のレジストを除去する。そして、残したレジストをマスクとして電極膜をエッチングし、電極形成部分以外の部分の電極膜を除去する。その後、残したレジストを除去すれば、圧電体ウエハの表面に各電極が形成される。なお、図4に示すように、圧電体ウエハ4の表面には、IDT電極10および反射器電極20の他に、これらと導通するターミナル電極30を形成しておく。
【0027】
次に、各電極の表面を陽極酸化する。図4に陽極酸化装置の説明図を示す。陽極酸化装置40には、酸化液槽41および電源44が設けられている。酸化液槽41には、酸化液42として、リン酸塩やホウ酸塩などの水溶液が満たされている。なお、ほぼ中性のクエン酸塩やアジピン酸塩などの水溶液を、酸化液42として使用してもよい。一方、電源44は、電圧の調整手段を有している。また、電源44の陰極端子には、電流計48を介して陰極電極板47が接続されている。一方、電源44の陽極端子には、金属クリップ46が接続されている。なお、電源44の両端子間には、電圧計49が接続されている。
【0028】
ここで、所定幅の通過帯域を有する弾性表面波素子片を形成するため、陽極酸化電圧を設定する。具体的には、図1(1)に示すグラフを参考にして、所定の通過帯域幅を実現することが可能な陽極酸化電圧を求める。そして、電源44により印加する電圧を、上記で求めた陽極酸化電圧に設定する。なお、陽極酸化電圧を変化させると、通過帯域の中心周波数も変化することになる。そこで、その中心周波数の変化量を見込んで、IDT電極の電極指のピッチおよび電極膜厚を設定しておく。
【0029】
その後、電源44の陽極端子に接続された金属クリップ46に、圧電体ウエハ4のターミナル電極30を接続する。次に、電源44の陰極端子に接続された陰極電極板47とともに、圧電体ウエハ4を酸化液42中に浸漬する。そして、電源44により陽極酸化電圧を印加する。すると、ターミナル電極30と導通するIDT電極10および反射器電極20が陽極酸化され、各電極の表面に酸化膜が形成される。なお、陽極酸化時間を変化させた場合にも、陽極酸化電圧を変化させた場合と同様に、通過帯域幅を変化させることができる。しかし、陽極酸化時間を延長すると製造効率が悪化するので、本実施形態では、陽極酸化時間を一定の短時間とし、陽極酸化電圧のみを設定の対象とする。
【0030】
次に、圧電体ウエハを弾性表面波素子片の個片に分離する。その分離はダイシング等によって行う。以上により、本実施形態に係る弾性表面波素子片が完成する。
【0031】
次に、本実施形態に係る製造方法で製造する弾性表面波素子片をパッケージ内部に実装して、弾性表面波フィルタを形成する。図5に、本実施形態に係る弾性表面波フィルタの説明図を示す。なお、同図(1)は同図(2)のC−C線における平面断面図であり、同図(2)は同図(1)のB−B線における正面断面図である。同図に示すように、パッケージ130のベース部132におけるキャビティ内部に、接着剤128を介して、弾性表面波素子片5を実装する。
【0032】
一方、ベース部132の底面には、外部端子134が形成されている。また、ベース部132におけるキャビティの側壁は階段状に形成され、その中段部上面に、外部端子134と導通するボンディング用パッド136が形成されている。一方、弾性表面波素子片5の表面には、IDT電極10の形成と同時に、これと導通するボンディング用パッド110を形成しておく。そして、弾性表面波素子片5に形成されたパッド110と、ベース部132に形成されたパッド136との間を、ワイヤ129により連結する。これにより、ベース部132の外部端子134と、弾性表面波素子片5のIDT電極10とが導通可能となる。さらに、ベース部132の上面開口部にリッド138を装着し、必要に応じてパッケージ130の内部を窒素雰囲気等に気密封止する。以上により、弾性表面波フィルタ100が完成する。
【0033】
さらに、上記のように形成した弾性表面波フィルタ100を、図6に示すように使用することにより、スーパーヘテロダイン受信機などの通信装置を形成することができる。
【0034】
以上に詳述した本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法を使用することにより、弾性表面波フィルタを大型化することなく、また挿入損失を増加させることなく、通過帯域幅の設定が可能となる。従来、通過帯域幅を狭くすることによって、所望の通過帯域幅に設定する場合には、IDT電極の対数を増加させていた。この場合、弾性表面波素子片が大型化し、弾性表面波フィルタも大型化するという問題があった。一方、通過帯域幅を広くすることによって、所望の通過帯域幅に設定する場合には、IDT電極の対数を減少させていたが、これには挿入損失の増加を伴うという問題があった。
【0035】
しかし、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法は、各電極の表面を所定の電圧で陽極酸化することにより、所望の通過帯域幅を有する弾性表面波素子片を製造する構成とした。これにより、高電圧で陽極酸化すれば、IDT電極の対数を増加させることなく、通過帯域幅を狭くすることができる。したがって、弾性表面波フィルタを大型化させることがない。また、陽極酸化電圧の設定を変えることにより、弾性表面波フィルタの挿入損失を増加させることなく、所望の通過帯域幅にすることができる。したがって、弾性表面波フィルタの周辺機器等における電力消費量が増加することはない。
【0036】
図7は、実施形態に係る方法で製造した弾性表面波素子片および従来技術に係る弾性表面波素子片の、周波数特性の一例を示したグラフである。中心周波数400MHzの弾性表面波フィルタの場合、従来技術に係る弾性表面波素子片の製造方法では、同図に示す通過帯域幅を確保するために、IDT電極の対数を95対とする必要があった。そのため、弾性表面波素子片の弾性表面波伝搬方向における長さは2950μmになっていた。これに対し、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法では、各電極の表面を60Vの電圧で陽極酸化することにより、上記と同様の通過帯域幅を確保することができる。この場合、IDT電極の対数は70対でよく、弾性表面波素子片の弾性表面波伝搬方向における長さを2550μmとすることができる。したがって、400μm(13.6%)の小型化が可能となる。
【0037】
なお、IDT電極の電極膜厚を変化させることにより、通過帯域幅を設定することも可能である。しかしこの場合には、弾性表面波素子片の周波数温度特性における頂点温度が大幅に変化し、温度特性が著しく悪化するという問題がある。この点、本実施形態に係る弾性表面波素子片の製造方法のように、各電極の表面を陽極酸化する場合には、頂点温度がほとんど変化しない。したがって、温度特性を悪化させることなく、通過帯域幅の設定を行うことができる。
【0038】
【発明の効果】
電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極と、前記各IDT電極の外側に伝搬された前記弾性表面波を反射する反射器電極とを、圧電体平板上に形成する弾性表面波素子片の製造方法であって、陽極酸化電圧の上昇変化に対する縦2重モードの両共振周波数の格差が小さくなるとの関係から、要求される通過帯域幅となる電圧を求め、前記各電極の表面を前記求めた電圧に向けて順次電圧を上げることにより通過帯域幅を狭くする方向に調整して陽極酸化することにより、所定の周波数通過帯域幅を有する前記弾性表面波素子片を製造する構成としたので、IDT電極の対数を増加させることなく、挿入損失を増加させることなく、また温度特性を悪化させることなく、通過帯域幅を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (1)は、陽極酸化電圧を変化させた場合のS0モードおよびA0モードの周波数変化を示すグラフであり、(2)は、陽極酸化電圧を変化させた場合の周波数特性のグラフである。
【図2】 (1)は、弾性表面波素子片の代表的な電極パターンの平面図であり、(2)ないし(4)は、他の電極パターンの平面図である。
【図3】 IDT電極の電極指および反射器電極の導体ストリップの断面図である。
【図4】 陽極酸化装置の説明図である。
【図5】 実施形態に係る弾性表面波フィルタの説明図である。
【図6】 通信装置のブロック図である。
【図7】 実施形態に係る弾性表面波素子片および従来技術に係る弾性表面波素子片の、周波数特性の一例を示すグラフである。
【図8】 共振子型の弾性表面波フィルタの周波数特性と通過帯域との関係を示すグラフである。
【図9】 IDT電極の対数を変化させた場合の周波数特性のグラフである。
【符号の説明】
4………圧電体ウエハ、5………弾性表面波素子片、6………圧電体平板、10,11,12………IDT電極、13………電極指、15………酸化膜、20………反射器電極、23………導体ストリップ、32………反射器電極、30………ターミナル電極、34………交差導体、40………陽極酸化装置、41………酸化液層、42………酸化液、44………電源、46………金属クリップ、47………陰極電極板、48………電流計、49………電圧計、100………弾性表面波フィルタ、110………ボンディング用パッド、128………接着剤、129………ワイヤ、130………パッケージ、132………ベース部、134………外部端子、136………ボンディング用パッド。
Claims (2)
- 電気信号を入力して弾性表面波を励振する第1IDT電極と、励振された前記弾性表面波を受信して電気信号を出力する第2IDT電極と、前記各IDT電極の外側に伝搬された前記弾性表面波を反射する反射器電極とを、圧電体平板上に形成する弾性表面波素子片の製造方法であって、
陽極酸化電圧の上昇変化に対する縦2重モードの両共振周波数の格差が小さくなる関係に基づいて、要求される通過帯域幅となる電圧を求め、前記各電極の表面を前記求めた電圧に向けて順次電圧を上げることにより通過帯域幅を狭くする方向に調整して陽極酸化することにより、所定の周波数通過帯域の幅を有する前記弾性表面波素子片を製造することを特徴とする弾性表面波素子片の製造方法。 - 請求項1に記載の弾性表面波素子片の製造方法において、
前記圧電体平板は、STカット水晶平板であることを特徴とする弾性表面波素子片の製造方法。
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