JP4072095B2 - 歩行補助装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、股関節並びに膝関節の運動に補助力を与えるための歩行補助装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
外傷や疾病、あるいは加齢による筋力低下で自力歩行が困難となった人のために、電動モータなどを用いたアクチュエータを股関節並びに膝関節の各側方に装着し、腰部、大腿部、並びに下腿部のそれぞれに装着されたコルセットのような装具を介してアクチュエータが発生する駆動トルクを下肢に伝達し、これによって下肢の運動を補助するようにした歩行補助装置が種々提案されている。
【0003】
上記のような歩行補助装置は、それを装着する時と脱却する時との姿勢に合わせてアクチュエータに結合されたリンクの角度を動かす必要がある。しかるに、アクチュエータは、小出力の電動モータで所要の駆動トルクを得るために比較的高い減速比とされることが一般的であるが、減速機付きモータは減速比が高いほど逆駆動し難くなるので、電力を供給せずに外力で入出力軸間の角度を自由に変えることは殆ど不可能である。そこで、入力軸及び出力軸間に電磁クラッチを設けて、装着/脱却時に電磁クラッチを切断状態にすることにより、装着/脱却を容易に行い得るようにしたものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−163364号公報(第1図〜第4図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、使用ミスによりバッテリーが充電不足になったりして脱却前に電源がオフ状態になった場合には、クラッチが接続状態のままになってしまう。そのような場合には上記したように外力で入出力軸間の角度を自由に変えることができず、自由な姿勢での脱却ができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、電力が供給されない状態でアクチュエータの入出力軸間の角度を自由に変えることができるように改良された歩行補助装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このような目的を果たすために、本発明は、下肢の運動に補助力を与えるべく股関節の側方に装着される股関節補助動力発生装置(10)と、膝関節の側方に装着される膝関節補助動力発生装置(26)と、両補助動力発生装置同士間を連結する連結バー(25)とを有する歩行補助装置であって、前記補助動力発生装置(10・26)は減速機付きモータ(65・66)からなり、トルク伝達経路中に電磁クラッチ(CL)を有し、前記電磁クラッチ(CL)が、当該クラッチの接離両位置間を変位可能に設けられかつ永久磁石(77)を一体に備えるアーマチュア(74)と、前記アーマチュア(74)に対向して設けられた磁性体(67)及びそれを外囲するコイルを有するソレノイド(76)と、前記アーマチュア(74)を、少なくとも接位置から離位置に手動変位させるための操作部材(79・79a)とを有し、前記ソレノイド(76)を励磁することにより、前記永久磁石(77)を介して、前記アーマチュア(74)を、励磁極性に応じて前記クラッチ(CL)の前記接離両位置の対応する方向に電磁駆動し、前記ソレノイド(76)が励磁されていないときは、前記操作部材(79・79a)を介して、前記クラッチ(CL)の前記離位置の方向に前記アーマチュア(74)を手動駆動し得るようにした。
【0008】
このようにすれば、アクチュエータを順・逆駆動できるので、関節の角度を所望に応じて容易に変えることができるため、減速機の減速比が大きい場合のブレーキ力により関節の角度を変えられないという不都合が生じることがない。また、クラッチにより完全に切断状態になることから、順・逆駆動する場合の外力は小さくて良く、大きな力を出せない場合でも何ら問題が生じることがない。
【0009】
特に、前記電磁クラッチ(CL)を手動で接続状態にするための手動クラッチ接続機構(81・81a)を有すると良い。これによれば、クラッチ切断状態のままでは関節部分でフリー状態となって歩行補助装置全体の取り扱い性が悪くなるような場合に、関節部分を手動で簡単に固定することができ、取り扱い性が向上する。
【0010】
さらに、前記ソレノイド(76)が励磁されていないときは、前記永久磁石(77)の磁気吸引力により前記離位置に前記アーマチュア(74)が保持されると良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に基づき構成された歩行補助装置の人体への装着状態を示している。この歩行補助装置は、腰部装具1と、下腿部装具2と、駆動ユニット3とから構成されており、腰部装具1と下腿部装具2とを下肢に固定し、これらを介して駆動ユニット3が発生する回転トルクを下肢に伝えることにより、低下した筋力を補う力を人体に与える機能を備えている。
【0013】
腰部装具1は、図2に示すように、背当て部4と、ベルト部5と、ライニング部6とからなっている。
【0014】
背当て部4は、図3に併せて示すように、左右の腸骨陵部(骨盤前面端点)7から仙腸関節(脊柱と骨盤の接合点)8を通る後背部に当接するように、平面視が概ねU字形をなしており、その左右両端に設けられた股部駆動源連結部9に連結される股関節補助動力発生装置としての減速機付き電動モータからなる股関節アクチュエータ10の駆動力を受け止めることができるように、実質的な剛体で構成されている。そして背当て部4の後背部は中空に形成されており、その内部には、図には明示されていないが、制御回路と、電動モータ及び制御回路に電力を供給するバッテリーとが内蔵されている。また背当て部4の直接人体に当接する部分には、クッションパッド11が設けられている。
【0015】
ベルト部5は、比較的硬質な材料で形成され、且つ背当て部4の左右両側部に一体的に設けられたベルト結合部13の内面にボルト止めされる左右一対の基部14と、各基部14の前端に固着された左右一対のウェブ部15と、各ウェブ部15の遊端に取り付けられた左右一対のバックル16とからなっている。そしてベルト部5の内面、つまり人体の腰回りとの対向面には、圧着ファスナなどを利用して保護用のライニング部6が貼り付けられるようになっている。
【0016】
背当て部4に設けられたクッションパッド11は、腰椎17に沿う窪みに当たる中央パッド18と、腰椎17の左右にて後方へ僅かに膨出する脊柱起立筋の左右両外側に当たる側部パッド19とからなっている。またライニング部6には、腸骨陵部7に当たる腸骨パッド20が設けられている。これらにより、総計5箇所のパッドが腰回りの要所に当たり、背当て部4がずれないように保持されるようになっている。なお、剛体からなる股部駆動源連結部9が身体に直接当接すると、痛みを与えるおそれがあり、また万一転倒した際に身体に大きな衝撃が加わるおそれがあるので、これらを緩和するために、股部駆動源連結部9との間に挟まれて股関節側面に当たる股関節パッド21がライニング部6に設けられている。
【0017】
各ウェブ部15は、基部14の上下に固着された2本の平織りベルトをその遊端で統合して各バックル16に結合し、前側が狭くなるV字形をなしている。これらウェブ部15の上側部分15Uは、腸骨陵部7に対応する部位に位置する基部14との結合点から、臍と恥骨との中間部(丹田)に位置するバックル16へ向けて、外腹斜筋の筋繊維が走る方向に沿って延在している。そしてウェブ部15の下側部分15Lは、股関節の側方に位置する基部14との結合点からバックル16へ向けて、内腹斜筋の繊維の走る方向に沿って延在している。
【0018】
脊柱の直立姿勢は、背筋、胸筋、および腹筋のバランスで維持されるが、歩行機能に障害を来たした人の筋力低下は、下肢に限らずこれらの筋肉群にも当然表れ、特に腹筋の筋力低下は、腹腔を下垂させると共に脊柱を側面視S字形に湾曲させ、歩行の際の直立姿勢の維持を困難にする。それが本発明装置によれば、直立姿勢の維持に特に大切な腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋などが重なっている丹田と呼ばれる下腹部中央にバックル16を位置させてウェブ部15に緊締力を加えることにより、左右の腸骨陵部7および仙腸関節8を通る後背部にかけて装着された背当て部4が脊柱の湾曲を矯正し、骨盤を安定させて姿勢を正しくすると同時に、腹腔圧を高め、内臓を正しい位置に持ち上げる作用を発揮する。またウェブ部15は比較的広い面積で下腹部に当接するので、腹腔に加わる圧力が下腹部の全体に均一に分散され、圧迫感が軽減される。
【0019】
下腿部装具2は、図4に併せて示すように、前脛骨筋上部の両側からヒフク筋22の下部とアキレス腱23の上部との間の下肢関節の動作時に皮膚の動きが比較的少ない部位付近に巻き付く帯状部24を備えている。これによれば、膝の屈伸運動により周囲長が変化するふくらはぎを避けているので、適度な緊締力をもってしっかりと装具2を下腿部に固定することができる。
【0020】
駆動ユニット3は、図5に併せて示すように、テレスコピック式に伸縮可能な連結バー25の各端に上記した股関節アクチュエータ10並びに膝関節補助動力発生装置としての減速機付き電動モータからなる膝関節アクチュエータ26をそれぞれ結合してなるものであり、腰部装具1の股関節の側方に対応する位置に設けられた股部駆動源連結部9、並びに下腿部装具2の膝関節の側方に対応する位置に設けられた膝部駆動源連結部27に対し、反復着脱自在なように構成されている。
【0021】
股部駆動源連結部9は、図6に示すように、剛体からなるベルト結合部13の近傍に連結板30を介して結合される基板31と、所定範囲を摺動可能なように基板31の内面に重ね合わされたスライド板32と、基板31に一体結合されるインナカバー33にピン軸34をもって支持される操作レバー35と、スライド板32と操作レバー35との間を連動連結するリンク36とからなっている。そして操作レバー35は、図7に併せて示すように、ピン軸34で軸支された中間部を支点として倒伏位置と起立位置との間を略90°の範囲に渡って回動自在にされている。
【0022】
基板31には、ある円周を4等分する位置に4つの丸孔37が形成されている。またスライド板32には、丸孔37と同一直径且つ同一配置で開けられた大径孔38と、各大径孔38から同一方向へ連続的に延出された小径の長孔39とからなる4つのだるま孔40が形成されている。
【0023】
股関節アクチュエータ10の股部駆動源連結部9との対向面には、基部31に設けられた4つの丸孔37に対応する4つのピン41が立設されている。これらのピン41は、丸孔37と略同一直径の拡径頭部42と、長孔39の幅と略等しい直径の首下部43とからなっている。
【0024】
操作レバー35の起立位置では、スライド板32に設けられただるま孔40の大径孔38が基板31の丸孔37と整合している。従って、股関節アクチュエータ10に設けられた4つのピン41を基板31の丸孔37に挿通すると、だるま孔40の大径孔38を経てスライド板32の内面からピン41の拡径頭部42が突出する。この状態で操作レバー35を倒すと、操作レバー35とリンク36を介して連結されたスライド板32が摺動し、スライド板32の長孔39がピン41の首下部43に係合し、拡径頭部42にて長孔39からのピン41の抜け止めがなされる。これにより、股部駆動源連結部9に対し、股関節アクチュエータ10を所謂ワンタッチ操作で着脱することができるようになっている。
【0025】
他方、膝部駆動源連結部27は、図8(a)に示したように、下腿部装具2の上端に一体形成された結合片2aに対し、例えばねじ結合されている。この膝部駆動源連結部27には、一対の係合アーム27aが一体形成されており、各係合アーム27aの先端部には、ロック爪52が形成されている。また、一対の係合アーム27a同士の間には、弾性変形可能な薄肉の弾性アーム27bが、両係合アーム27aと同一方向に延出形成されている。
【0026】
膝関節アクチュエータ26には、膝部駆動源連結部27に形成されたロック爪52と係合して膝関節アクチュエータ26を下腿部装具2に連結するためのラッチ部51が設けられている。このラッチ部51には、図8(b)に示したように、膝部駆動源連結部27に一体形成された一対の係合アーム27a及び弾性アーム27bを差し込み可能なスロット51bが形成されており、その内部には、差し込まれた一対の係合アーム27aの図8(b)における下方にてロック爪52と係合するように、その遊端が斜め上向きに延出された弾性係合片51aが設けられている。
【0027】
係合アーム27a及び弾性アーム27bをラッチ部51のスロット51bに差し込むと、ロック爪52の進行によって弾性係合片51aが図8(b)において下向きに撓む。そして奥の所定位置にロック爪52が達すると、弾性係合片51aが上向きに弾性復元してその遊端部とロック爪52とが係合し、係合アーム27aのスロット51bからの抜け止めがなされる。
【0028】
このように構成されたラッチ機構の係合力は、ラッチ部51の外面に設けられた押釦53を押し込むことで解除される。すなわち、押釦53を図8(b)における下方へ押し込むと、弾性アーム27bを介して弾性係合片51aが押圧され、その遊端部が図8(b)の矢印に示すように下向きに変位する。これにより、弾性係合片51aとロック爪52との係合が解除される。このようにして、膝関節アクチュエータ26に対し、所謂ワンタッチ操作で下腿部装具2を着脱することができるようになっている。
【0029】
次に、股関節アクチュエータ10の構造について示す。なお、膝関節アクチュエータ26の構造も股関節アクチュエータ10の構造と同様であり、その説明は省略する。
【0030】
図9に示されるように、股関節アクチュエータ10は、装着状態で外側となる側に配設された扁平な有底円筒状のケーシング61を有する。ケーシング61内には、モータハウジング62と、支持プレート63と、リングギヤプレート64とがこの順に積層されかつボルトにより一体に結合されて受容されいる。ケーシング61は例えばリングギヤ支持プレート64にかしめにより一体化されている。
【0031】
モータハウジング62と支持プレート63との間にはモータハウジング62により支持されたモータ65が受容されており、支持プレート63とリングギヤ支持プレート64との間に減速機66が設けられている。支持プレート63及びモータハウジング62の各中心部にそれぞれボールベアリングを介して支持された入力軸67が回転自在に設けられている。入力軸67の両ボールベアリング間となる中間部にはモータ65のロータ68が一体化され、ロータ68を外囲するようにモータハウジング62の内周面にステータ69が固設されている。なお、ロータ68には永久磁石が設けられ、ステータ69にはコイル69aが設けられており、コイル69aは多芯の接続ケーブル70を介して外部回路と接続される。
【0032】
減速機66は、図10に併せて示されるように遊星歯車機構からなる。入力軸67に第1サンギヤZs1が形成され、支持プレート63が第1キャリヤC1となり、第1キャリヤC1により複数の第1プラネタリギヤZp1が自転可能に支持されている。複数の第1プラネタリギヤZp1を外囲する環状部材71が自転し得るように設けられ、その環状部材71の内周には複数の第1プラネタリギヤZp1と噛み合う第1リングギヤZr1が設けられている。このようにして、第1キャリヤC1が固定されて第1リングギヤZr1が回転可能なスター型の第1減速段が構成されている。
【0033】
リングギヤ支持プレート64の周壁部の内周面には軸線方向に積層された環状部材72・73がねじ結合にて固定されている。モータ65側の環状部材72の内周面にボールベアリングを介して第2キャリヤC2が回転自在に支持され、上記環状部材71の外周には第2サンギヤZs2が設けられ、環状部材72の内周面の一部に第2リングギヤZr2が形成され、第2キャリヤC2により複数の第2プラネタリギヤZp2が自転可能に支持されており、第2プラネタリギヤZp2が第2リングギヤZr2と第2サンギヤZs2とに噛み合っている。このようにして、プラネタリ型の第2減速段が構成されている。
【0034】
そして、装着状態で内向き側の環状部材73の内周面にボールベアリングを介して第3キャリヤC3が回転自在に支持され、その環状部材73の内周面の一部に第3リングギヤZr3が形成され、第3キャリヤC3により複数の第3プラネタリギヤZp3が自転可能に支持されている。また、入力軸67に対して同軸的に対向するようにアーマチュアとしての可動部材74が設けられている。この可動部材74の外周に第3サンギヤZs3が設けられており、第3サンギヤZs3と第3プラネタリギヤZp3とが噛み合っている。このようにして、プラネタリ型の第3減速段が構成されている。なお、第1減速段と第2減速段とが軸線方向に対して同列に配設され、第3減速段が2列目として配設されており、このようにして2列−3段減速の減速機が構成されている。また、第3キャリヤC3には上記股部駆動源連結部9との連結用ピン41を結合するためのねじ孔78が適所に設けられている。
【0035】
第3キャリヤC3の中央部には装置の内側に向けて凹設された蓋体75が取り付けられており、その蓋体75の凹設部に可動部材74が同軸的に受容可能にされている。また、第2キャリヤC2の軸心側には可動部材74の第3サンギヤZs3に噛み合い可能なクラッチギヤZcが形成されており、この第3サンギヤZs3とクラッチギヤZcとによりクラッチCLが構成されている。可動部材74は、入力軸67に対して接離するように軸線方向変位可能に、第3サンギヤZs3が第3プラネタリギヤZp3と常時噛み合っている。なお、可動部材74は、入力軸67から離反した状態では蓋体75の凹部の内周面によりガイドされるようになっている。
【0036】
また、入力軸67が磁性体により形成されていると共に、入力軸67の外周に電磁コイル76が設けられており、これらによりソレノイドが構成されている。なお、電磁コイル76と上記接続ケーブル70とが例えばスリップリングを介して電気的に接続されている。
【0037】
図11に併せて示されるように、可動部材74には永久磁石77が内蔵されており、可動部材74の入力軸67側には円錐台形状の突部74aが形成されている。入力軸67の対向する軸線方向端面には、可動部材74の上記突部と補完的形状をなすすり鉢状の凹部67aが形成されている。
【0038】
電磁コイル76に通電する電流の向きを切り換えることにより、入力軸67と可動部材74の永久磁石77との間に磁気吸引力と磁気斥力とが選択的に作用する。磁気吸引力が作用した場合には、図9の下半分及び図11に示されるように可動部材74が入力軸67に吸着されて、第3サンギヤZs3が第2キャリヤC2のクラッチギヤZcと噛み合い状態になる。反対に磁気斥力が作用した場合には、図9の上半分に示されるように可動部材74が入力軸67から離反して、第3サンギヤZs3とクラッチギヤZcとの噛み合いが解除される。
【0039】
本歩行補助装置の稼働時には、電磁コイル76に可動部材74を入力軸67側に吸引する向きの電流を流し、第3サンギヤZs3と第2キャリヤC2とを一体化する。これにより、入力軸67がモータ65により駆動されると、上記した2列−3段減速構造の遊星歯車の減速比で入力軸67と第3キャリヤC3との間で相対的に回転トルクが発生し、第3キャリヤC3を介して上記股部駆動源連結部9にトルクが伝達される。
【0040】
本歩行補助装置を一時的に使用しない場合や外す場合には、電磁コイル76に可動部材74が入力軸67から離反する向きの電流を流し、第3サンギヤZs3と第2キャリヤC2との一体化を解除する。これにより、クラッチCLが切断状態になるため、関節部分を自由に曲げることができる。
【0041】
しかしながら、使用ミスによりバッテリーが充電不足になったりして稼働中に電源がオフ状態になった場合には、クラッチCLが接続状態のままになる。この状態では第3キャリヤC3側から回すことは減速比の大きさから不可能である。
【0042】
次に、上記クラッチCLの接続状態を強制的に切断状態にし得るようにしたクラッチリリース機構について示す。
【0043】
入力軸67には、その軸心に軸線方向に貫通する貫通孔67bが設けられている。装着状態で外側となるケーシング61の端版部には可撓性の皿状蓋体79が取り付けられている。その皿状蓋体79の内側には傘状の部材がその柄の部分となる突き出し棒79aを貫通孔67bに向けて延出した状態で傘部を保持されている。突き出し棒79aの先端は貫通孔67bの可動部材74側開口近傍に至るようにされている。
【0044】
皿状蓋体79とケーシング61との間には弾性カラー80が介装されている。この弾性カラー80の弾発力に抗して皿状蓋体79を軸線方向に押し込むことにより、突き出し棒79aの先端が貫通孔67aの反対側に突出し、それにより可動部材74が押し戻される(図12)。これにより、第3サンギヤZs3とクラッチギヤZcとの噛み合いが解除されるため、手動でクラッチCLを強制的に切断状態にすることができる。なお、皿状蓋体79の押し込み力を無くすことにより、弾性カラー80の復元力により皿状蓋体79は元の位置(図11)に戻る。
【0045】
また、装着状態で内向き側となる蓋体75にはドーム状の可撓性キャップ81が取り付けられている。キャップ81の内面中央部には可動部材74の突部74aとは相反する側の背面に向けて突出するピン81aが同軸かつ一体的に設けられている。なお、ピン81aは剛性を有するように形成されており、その突出端の位置は、図12のクラッチCLを切断状態において可動部材77の背面となる永久磁石77の露出面にほぼ接触状態になるようにされている。また、キャップ81と蓋体75との間には空室が形成されており、その空室内に弾性カラー82が収容されている。
【0046】
これにより、キャップ81を弾性カラー82の弾発力に抗して押し込むことにより、ピン81aにより可動部材74が入力軸67側に向けて押し出されて、クラッチCLが接続状態になる。このように、電源オフ状態でも手動でクラッチCLを接続状態にし得るため、関節部のフリー状態では取り扱い難い場合に電源を入れることなく手動で固定状態でき、取り扱い性が向上する。
【0047】
また、本発明装置は、テーピングを施したのと同様な緊締力が特定の筋肉に作用するように製造された運動用スパッツS(特開2001−214303号公報を参照されたい)の上に装着すると、スパッツSを形成する繊維の緊締力による筋肉支持作用と相俟って、運動機能を高める上により一層効果的である。また本発明装置は、駆動トルクを逆に作用させれば負荷トルクを関節に作用させることができるので、運動機能補助装置としての用途のみならず、医療用、リハビリテーション用、並びに筋力増強トレーニング用の負荷発生装置としても利用することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上詳述した通り本発明によれば、以下の如き格別な効果を奏することができる。電源オフ状態でも電磁クラッチを手動で強制的に切断状態にし得るため、アクチュエータを順・逆駆動することができる。これにより、関節の角度を所望に応じて容易に変えることができるため、減速機の減速比が大きい場合のブレーキ力により関節の角度を変えられないという不都合が生じることがない。また、クラッチにより完全に切断状態になることから、順・逆駆動する場合の外力に負担が掛からず、大きな力を出せない場合でも何ら問題が生じることがなく、装置の着脱を容易に行い得る。
【0049】
特に、電磁クラッチのアーマチュアをアーマチュア強制変位部材により手動でクラッチ切断方向に変位させる機構とすることにより、簡単な構造にて手動でクラッチリリースを行うことができる。さらに、電磁クラッチを手動で接続状態にするための手動クラッチ接続機構を設けることにより、クラッチ切断状態のままでは関節部分でフリー状態となって歩行補助装置全体の取り扱い性が悪くなるような場合に、関節部分を手動で簡単に任意の位置へ固定することができ、取り扱い性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置を装着した状態の下半身を示す斜視図
【図2】本発明装置の腰部装具の構成を示す分解斜視図
【図3】背当て部と人体との関係を示す説明図
【図4】下腿部装具を下腿部に装着した状態を示す説明図
【図5】本発明装置の要部斜視図
【図6】股関節駆動源連結部の斜視図
【図7】股関節駆動源連結部の操作要領の説明図
【図8】(a)は膝部駆動源連結部を示す斜視図であり、(b)は膝関節アクチュエータのラッチ部を膝部駆動源連結部に連結した状態を示す縦断面図。
【図9】アクチュエータを示す縦断面図。
【図10】アクチュエータの減速機を示すスケルトン図。
【図11】電磁クラッチ及びクラッチリリース機構を示す要部拡大断面図。
【図12】クラッチリリース機構によりクラッチを切断した状態を示す図11に対応する図。
【符号の説明】
10 股関節アクチュエータ(股関節補助動力発生装置)
26 膝関節アクチュエータ(膝関節補助動力発生装置)
25 連結バー
65・66 減速機付きモータ
CL 電磁クラッチ
79 皿状蓋体(手動クラッチリリース機構)
79a 突き出し棒(アーマチュア強制変位部材)
76 ソレノイド
74 アーマチュア
81 キャップ(手動クラッチ接続機構)
81a ピン(手動クラッチ接続機構)

Claims (3)

  1. 下肢の運動に補助力を与えるべく股関節の側方に装着される股関節補助動力発生装置と、膝関節の側方に装着される膝関節補助動力発生装置と、両補助動力発生装置同士間を連結する連結バーとを有する歩行補助装置であって、
    前記補助動力発生装置は減速機付きモータからなり、トルク伝達経路中に電磁クラッチを有し、
    前記電磁クラッチが、当該クラッチの接離両位置間を変位可能に設けられかつ永久磁石を一体に備えるアーマチュアと、前記アーマチュアに対向して設けられた磁性体及びそれを外囲するコイルを有するソレノイドと、前記アーマチュアを、少なくとも接位置から離位置に手動変位させるための操作部材とを有し、
    前記ソレノイドを励磁することにより、前記永久磁石を介して、前記アーマチュアを、励磁極性に応じて前記クラッチの前記接離両位置の対応する方向に電磁駆動し、
    前記ソレノイドが励磁されていないときは、前記操作部材を介して、前記クラッチの前記離位置の方向に前記アーマチュアを手動駆動し得るようにしたことを特徴とする歩行補助装置。
  2. 前記電磁クラッチを手動で接続状態にするための手動クラッチ接続機構を有することを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置。
  3. 前記ソレノイドが励磁されていないときは、前記永久磁石の磁気吸引力により前記離位置に前記アーマチュアが保持されることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の歩行補助装置。
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