JP4071501B2 - アレーアンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、アレーアンテナ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のアレーアンテナ装置について図面を参照しながら説明する。図5は、例えば特開平11−41024号公報に示された従来のアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
【0003】
図5において、18はアンテナカバー、191〜196は複数個のアンテナ素子よりなるアンテナブロック、201〜2024はアンテナ素子、211〜216は給電ケーブル、22はアンテナ給電部、23は1入力3出力の移相装置、241〜243は移相器、251〜256は第2の位相調整ケーブル、26は装置側端子、271〜273は2分岐器、281〜283は第1の位相調整ケーブルである。
【0004】
つぎに、従来のアレーアンテナ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0005】
装置側端子26より入力された入力電力は、移相装置23内の移相器241〜243および第1の位相調整ケーブル281〜283で所定の振幅位相に分配される。
【0006】
次に、2分岐器271〜273で2分岐され、さらに、第2の位相調整ケーブル251〜256で位相調整される。
【0007】
その後、アンテナカバー18内の各アンテナブロック191〜196に送られ、各ブロック内でさらに分配されてアンテナ素子201〜2024に至り、放射される。
【0008】
アンテナ素子201〜2024の励振位相は、移相装置23内の移相器241〜243および第1の位相調整ケーブル281〜283、第2の位相調整ケーブル251〜256、ならびに各アンテナブロック191〜196の振幅位相特性の加算によっておおむね定まる。このとき、所望の放射特性を実現するためには、上記加算位相特性が各アンテナ素子で所望の励振位相になるように位相調整ケーブルの長さを変更する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような従来のアレーアンテナ装置は、励振電界の位相量を変化させて、上記のようになされていた。しかしながら、各アンテナ素子、各給電ケーブル、及びアンテナ給電部からの多重反射により、励振位相は所望値からのずれを生じる。特に、アンテナ素子間の結合が強い場合や、アンテナ給電部にアイソレーションがない場合は誤差が大きくなるため、さらに複数回の調整を必要とするという問題点があった。
【0010】
この発明は、前述した問題点を解決するためになされたもので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるアレーアンテナ装置を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この発明の請求項1に係るアレーアンテナ装置は、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記素子アンテナの実際の励振電界、及び所望値として予め規定する励振電界の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたものである。
【0012】
この発明の請求項2に係るアレーアンテナ装置は、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記素子アンテナからの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたものである。
【0013】
この発明の請求項3に係るアレーアンテナ装置は、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記分配回路からの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたものである。
【0014】
この発明の請求項4に係るアレーアンテナ装置は、請求項1において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたものである。
【0015】
この発明の請求項5に係るアレーアンテナ装置は、請求項2において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたものである。
【0016】
この発明の請求項6に係るアレーアンテナ装置は、請求項3において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係るアレーアンテナ装置について図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係るアレーアンテナ装置の構成を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0018】
図1において、11〜1n−1は素子アンテナ、2n〜2Nはサブアレー、3n〜3Nは分配回路、4n〜4Nは給電ケーブル、5n〜5Nは位相調整ケーブル(振幅位相制御手段)、6n〜6Nは装置側端子である。
【0019】
つぎに、この実施の形態1に係るアレーアンテナ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0020】
装置側端子6n〜6Nから入力された入力電力は、位相調整ケーブル5n〜5Nにより位相調整された後、給電ケーブル4n〜4Nを介して分配回路3n〜3Nに送られ、この分配回路3n〜3Nにより分配されて素子アンテナ11〜1n−1から放射される。
【0021】
素子アンテナ11〜1n−1の励振振幅位相は、装置側端子6n〜6Nからの入力電力に対して、位相調整ケーブル5n〜5N、給電ケーブル4n〜4N、分配回路3n〜3Nおよび各サブアレー2n〜2Nの位相特性の相乗値によって定まり、全体として所望の放射特性が得られるようにされている。
【0022】
上記位相調整ケーブル5の長さを決定する方法について、図2を用いて説明する。図2は、素子アンテナ11〜1n−1、分配回路3n〜3N、給電ケーブル4n〜4Nの特性をSパラメータで表し、各々の入出力の関係を示したものである。
【0023】
図2において、7は素子アンテナ11〜1n−1全体の特性を表す放射部Sパラメータ、8は分配回路3n〜3Nの特性を表す分配回路部Sパラメータ、9は給電ケーブル4n〜4Nの特性を表す給電ケーブル部Sパラメータである。
【0024】
また、同図において、101〜10n−1は放射部反射波、111〜11n−1は放射部入力波、12n〜12Nは分配回路入力波、13n〜13Nは分配回路反射波、14N+1〜14Mは給電ケーブル部反射波、15N+1〜15Mは給電ケーブル部入力波、16N+1〜16Mは位相調整ケーブル、17N+1〜17Mは装置側からの入力波である。
【0025】
放射部Sパラメータ7、分配回路部Sパラメータ8、及び給電ケーブル部Sパラメータ9のそれぞれのSパラメータについて、入出力の関係を行列式で表すと、放射部Sパラメータ7については式(1)、分配回路部Sパラメータについては式(2)、給電ケーブル部Sパラメータについては式(3)のようになる。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
【数3】
【0029】
式(1)〜式(3)において、a1,a2,・・・,an−1は放射部反射波101〜10n−1、b1,b2,・・・,bn−1は放射部入力波111〜11n−1、an,an+1,・・・,aNは分配回路部入力波12n〜12N、bn,bn+1,・・・,bNは分配回路部反射波13n〜13N、aN+1,aN+2,・・・,aMは給電ケーブル部反射波14N+1〜14M、bN+1,bN+2,・・・,bMは給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mを表している。
【0030】
また、α11,α12,・・・,αn−1,n−1は放射部Sパラメータ7の各成分、S11,S12,・・・,SNNは分配回路部Sパラメータ8の各成分、Snn,Sn,n+1,・・・,SMMは給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分を表している。
【0031】
式(1)〜式(3)より、放射部入力波111〜11n−1を給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mについて行列式で表すと、式(4)のようになる。
【0032】
【数4】
【0033】
式(4)において、b1,b2,・・・,bn−1は放射部入力波111〜11n−1、bN+1,bN+2,・・・,bMは給電ケーブル部入力波15N+1〜15M、D1,N+1,D1,N+2,・・・,Dn−1,Mは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、及び給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0034】
各素子アンテナ11〜1n−1の所望の励振振幅位相を実現するための給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mは、例えば所望の励振振幅位相をb0i(i=1,2,・・・,n−1)とすると、下記の式(5)に示す評価関数f1を最小にするような入力波として求まる。
【0035】
【数5】
【0036】
式(5)において、bi(i=1,2,・・・,n−1)は給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mで表された放射部入力波、b0i(i=1,2,・・・,n−1)は各素子アンテナ11〜1n−1の所望の励振振幅位相である。
【0037】
式(5)の評価関数f1を最小にする給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mを求めることで、入力波17N+1〜17Mと給電ケーブル部入力波15N+ 1〜15Mとの関係から、各素子アンテナ11〜1n−1に所望の励振位相を実現するための位相調整ケーブル16N+1〜16Mの長さを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができる。なお、式(5)の評価関数f1を最小にする給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mは最小二乗法等の最適化法で求めることができる。また、図1に示す位相調整ケーブル5n〜5Nの代わりに、増幅回路等(振幅位相制御手段)を挿入することにより、同様に、所望の励振振幅位相を実現することができる。
【0038】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るアレーアンテナ装置について説明する。
【0039】
上記実施の形態1では放射部入力波111〜11n−1について所望の励振振幅位相を実現するための振幅位相制御手段(位相調整ケーブル、増幅回路等)16N+1〜16Mを決定したが、上記放射部入力波111〜11n−1の代わりに放射部反射波101〜10n−1について考える。
【0040】
式(1)〜式(3)より、放射部反射波101〜10n−1を給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mについて行列式で表すと、下記の式(6)のようになる。
【0041】
【数6】
【0042】
式(6)において、a1,a2,・・・,an−1は放射部反射波101〜10n−1、bN+1,bN+2,・・・,bMは給電ケーブル部入力波15N+1〜15M、β1,N+1,β1,N+2,・・・,βn−1,Mは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、及び給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0043】
放射部反射波101〜10n−1の所望の反射量を実現するための給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mは、例えば所望の反射量をε1i(i=1,2,・・・,n−1)とすると、下記の式(7)に示す評価関数f2を最小にするような入力波として求まる。
【0044】
【数7】
【0045】
式(7)においてai(i=1,2,・・・,n−1)は給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mで表された放射部反射波、ε1i(i=1,2,・・・,n−1)は各素子アンテナ11〜1n−1からの反射量である。
【0046】
式(7)の評価関数f2を最小にする給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mを求めることで、入力波17N+1〜17Mと給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mとの関係から、各素子アンテナ11〜1n−1からの所望の反射量を実現するための位相調整ケーブル16N+1〜16Mの長さを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の反射量を実現することができ、各素子アンテナ11〜1n−1からの反射を少なくすることができる。これは各素子アンテナ11〜1n−1間の相互結合が強い場合に特に有効である。なお、式(7)の評価関数f2を最小にする給電ケーブル部入力波15N+ 1〜15Mは最小二乗法等の最適化法で求めることができる。また、図1に示す位相調整ケーブル5n〜5Nの代わりに、増幅回路等(振幅位相制御手段)を挿入することにより、同様に、所望の反射量を実現することができる。
【0047】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係るアレーアンテナ装置について説明する。
【0048】
上記実施の形態1では放射部入力波111〜11n−1について所望の励振振幅位相を実現するための振幅位相制御手段(位相調整ケーブル、増幅回路等)16N+1〜16Mを決定したが、上記放射部入力波111〜11n−1の代わりに分配回路部反射波13n〜13Nについて考える。
【0049】
式(1)〜式(3)より、放射部反射波101〜10n−1を給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mについて行列式で表すと、下記の式(8)のようになる。
【0050】
【数8】
【0051】
式(8)において、bn,bn+1,・・・,bNは分配回路部反射波13n〜13N、bN+1,bN+2,・・・,bMは給電ケーブル部入力波15N+1〜15M、γn,N+1,γn,N+2,・・・,γNMは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、及び給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0052】
分配回路部反射波13n〜13Nの所望の反射量を実現するための給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mは、例えば所望の反射量をε2j(j=n,n+1,・・・,N)とすると、下記の式(9)に示す評価関数f3を最小にするような入力波として求まる。
【0053】
【数9】
【0054】
式(9)においてbj(j=n,n+1,・・・,N)は給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mで表された放射部反射波、ε2j(j=n,n+1,・・・,N)は各分配回路3n〜3Nからの反射量である。
【0055】
式(9)の評価関数f3を最小にする給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mを求めることで、入力波17N+1〜17Mと給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mとの関係から、各分配回路3n〜3Nからの所望の反射量を実現するための位相調整ケーブル16N+1〜16Mの長さを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の反射量を実現することができ、各分配回路3n〜3Nからの反射を少なくすることができる。これは各分配回路3n〜3Nにアイソレーションがない場合に特に有効である。なお、式(9)の評価関数f3を最小にする給電ケーブル部入力波15N+1〜15Mは最小二乗法等の最適化法で求めることができる。また、図1に示す位相調整ケーブル5n〜5Nの代わりに、増幅回路等(振幅位相制御手段)を挿入することにより、同様に、所望の反射量を実現することができる。
【0056】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4に係るアレーアンテナ装置について図面を参照しながら説明する。図3は、この発明の実施の形態4に係るアレーアンテナ装置の構成を示す図である。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0057】
図3において、11〜1n−1は素子アンテナ、2n〜2Nはサブアレー、3n〜3Nは分配回路、4n〜4Nは給電ケーブル、5n〜5Nは位相調整ケーブル(振幅位相制御手段)、29は移相器、30は装置側端子である。
【0058】
つぎに、この実施の形態4に係るアレーアンテナ装置の動作について図面を参照しながら説明する。
【0059】
装置側端子30から入力された入力電力は、移相器29により所定の振幅位相に分配されて位相調整ケーブル5N+1〜5Mに送られ、この位相調整ケーブル5N+1〜5Mにより位相調整された後、給電ケーブル4n〜4Nを介して分配回路3n〜3Nに送られ、この分配回路3n〜3Nにより分配されて素子アンテナ11〜1n−1から放射される。
【0060】
素子アンテナ11〜1n−1の励振振幅位相は、装置側端子30からの入力電力に対して、移相器29、位相調整ケーブル5N+1〜5M、給電ケーブル4n〜4N、分配回路3n〜3Nおよび各サブアレー2n〜2Nの位相特性の相乗値によって定まり、全体として所望の放射特性が得られるようにされている。
【0061】
上記位相調整ケーブルの長さを決定する方法について図4を用いて説明する。
【0062】
図4は、素子アンテナ11〜1n−1、分配回路3n〜3N、給電ケーブル4n〜4N、移相器29の特性をSパラメータで表し、各々の入出力の関係を示したものである。
【0063】
図4において、7は素子アンテナ11〜1n−1全体の特性を表す放射部Sパラメータ、8は分配回路3n〜3Nの特性を表す分配回路部Sパラメータ、9は給電ケーブル4n〜4Nの特性を表す給電ケーブル部Sパラメータ、31は移相器29の特性を表す移相器部Sパラメータである。
【0064】
また、同図において、101〜10n−1は放射部反射波、111〜11n−1は放射部入力波、12n〜12Nは分配回路入力波、13n〜13Nは分配回路反射波、14N+1〜14Mは給電ケーブル部反射波、15N+1〜15Mは給電ケーブル部入力波、16N+1〜16Mは位相調整ケーブル、32N+1〜32Mは位相調整ケーブルへの入力波、33N+1〜33Mは位相調整ケーブルからの反射波、34は移相器部入力波、35は移相器部反射波である。
【0065】
放射部Sパラメータ7、分配回路部Sパラメータ8、給電ケーブル部Sパラメータ9、移相器部Sパラメータ31のそれぞれのSパラメータについて、入出力の関係を行列式で表すと、放射部Sパラメータ7については式(1)、分配回路部Sパラメータ8については式(2)、給電ケーブル部Sパラメータ9については式(3)と同様である。また、移相器部Sパラメータ31については式(10)のようになる。
【0066】
【数10】
【0067】
【数11】
【0068】
式(10)及び式(11)において、cN+1,cN+2,・・・,cMは位相調整ケーブルへの入力波32N+1〜32M、dN+1,dN+2,・・・,dMは位相調整ケーブルへの反射波33N+1〜33M、cM+1は移相器部反射波35、dMは移相器部入力波34、GN+1,N+1,GN+1,N+2,・・・,GM+1,M+1は移相器部Sパラメータ31の各成分、ejklN+1,ejklN+2,・・・,ejklMは位相調整ケーブルの位相変化量を表している。
【0069】
式(1)〜式(3)、式(10)、式(11)より、放射部入力波111〜11n−1を位相調整ケーブル16N+1〜16Mについて行列式で表すと、式(12)のようになる。
【0070】
【数12】
【0071】
式(12)において、b1,b2,・・・,bn−1は放射部入力波111〜11n−1、ejklN+1,ejklN+2,・・・,ejklMは位相調整ケーブルの位相変化量、D1,N+1,D1,N+2,・・・,Dn−1,Mは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分、移相器部Sパラメータ31の各成分および移相器部入力波34を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0072】
各素子アンテナ11〜1n−1の所望の励振振幅位相を実現するための位相調整ケーブル16N+1〜16Mは、例えば所望の励振振幅位相をb0i(i=1,2,・・・,n−1)とすると、後述の式(13)に示す評価関数f4を最小にするような位相変化量として求まる。
【0073】
【数13】
【0074】
式(13)において、bi(i=1,2,・・・,n−1)は位相調整ケーブル16N+1〜16Mで表される放射部入力波、b0i(i=1,2,・・・,n−1)は各素子アンテナ11〜1n−1の所望の励振振幅位相である。
【0075】
式(13)の評価関数f4を最小にする位相調整ケーブル16N+1〜16Mを求めることで、各素子アンテナ11〜1n−1に所望の励振振幅位相を実現するための位相調整ケーブル16N+1〜16Mを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更し、調整することなく最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができる。なお、式(13)の評価関数f4を最小にする位相調整ケーブル16N+1〜16Mは、最小二乗法等の最適化法で求めることができる。
【0076】
実施の形態5.
上記実施の形態4では放射部入力波111〜11n−1について所望の励振振幅位相を実現するための振幅位相制御手段(位相調整ケーブル、増幅回路等)16N+1〜16Mを決定したが、上記放射部入力波111〜11n−1の代わりに放射部反射波101〜10n−1について考える。
【0077】
式(1)〜式(3)、式(10)、式(11)より、放射部反射波101〜10n−1を振幅位相制御手段16N+1〜16Mについて行列式で表すと、式(14)のようになる。
【0078】
【数14】
【0079】
式(14)において、a1,a2,・・・,an−1は放射部反射波101〜10n−1、ejklN+1,ejklN+2,・・・,ejklMは振幅位相制御手段の位相変化量、β1,N+1,β1,N+2,・・・,βn−1,Mは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、及び給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0080】
放射部反射波101〜10n−1の所望の反射量を実現するための振幅位相制御手段16N+1〜16Mは、例えば所望の反射量をε1i(i=1,2,・・・,n−1)とすると、下記の式(15)に示す評価関数f5を最小にするような入力波として求まる。
【0081】
【数15】
【0082】
式(15)においてai(i=1,2,・・・,n−1)は振幅位相制御手段16N+1〜16Mで表された放射部反射波、ε1i(i=1,2,・・・,n−1)は各素子アンテナ11〜1n−1からの反射量である。
【0083】
式(15)の評価関数f5を最小にする振幅位相制御手段16N+1〜16Mを求めることで、各素子アンテナ11〜1n−1からの所望の反射量を実現するための振幅位相制御手段(位相調整ケーブル)16N+1〜16Mの長さを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更し、調整することなく、最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の反射量を実現することができ、各素子アンテナ11〜1n−1からの反射を少なくすることができる。これは各素子アンテナ11〜1n−1間の相互結合が強い場合に特に有効である。なお、式(15)の評価関数f5を最小にする振幅位相制御手段16N+1〜16Mは、最小二乗法等の最適化法で求めることができる。
【0084】
実施の形態6.
上記実施の形態4では放射部入力波111〜11n−1について所望の励振振幅位相を実現するための振幅位相制御手段16N+1〜16Mを決定したが、上記放射部入力波111〜11n−1の代わりに分配回路部反射波13n〜13Nについて考える。
【0085】
式(1)〜式(3)、式(10)、式(11)より、放射部反射波101〜10n−1を振幅位相制御手段16N+1〜16Mについて行列式で表すと、式(16)のようになる。
【0086】
【数16】
【0087】
式(16)において、b1,b2,・・・,bn−1は分配回路部反射波131〜13n−1、ejklN+1,ejklN+2,・・・,ejklMは振幅位相制御手段の位相変化量、γn,N+1,γn,N+2,・・・,γN,Mは放射部Sパラメータ7の各成分、分配回路部Sパラメータ8の各成分、給電ケーブル部Sパラメータ9の各成分、移相器部Sパラメータ31の各成分および移相器部入力波34を用いて表すことができる行列の各成分である。
【0088】
分配回路部反射波131〜13n−1の所望の反射量を実現するための振幅位相制御手段16N+1〜16Mは、例えば所望の反射量をε2j(j=n,n+1,・・・,N)とすると、下記の式(17)に示す評価関数f6を最小にするような入力波として求まる。
【0089】
【数17】
【0090】
式(17)においてbj(j=1,2,・・・,n−1)は振幅位相制御手段16N+1〜16Mで表された放射部反射波、ε2j(j=n,n+1,・・・,N)は各分配回路3n〜3Nからの反射量である。
【0091】
式(17)の評価関数f6を最小にする振幅位相制御手段16N+1〜16Mを求めることで、各分配回路3n〜3Nからの所望の反射量を実現するための振幅位相制御手段(位相調整ケーブル)16N+1〜16Mの長さを決定することができる。これにより、位相調整用ケーブルの長さを複数回変更し、調整することなく、最適な位相調整用ケーブルの長さを決定し、所望の反射量を実現することができ、各分配回路3n〜3Nからの反射を少なくすることができる。これは各分配回路3n〜3Nにアイソレーションがない場合に特に有効である。なお、式(17)の評価関数f6を最小にする振幅位相制御手段16N+1〜16Mは、最小二乗法等の最適化法で求めることができる。
【0092】
【発明の効果】
この発明の請求項1に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記素子アンテナの実際の励振電界、及び所望値として予め規定する励振電界の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【0093】
この発明の請求項2に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記素子アンテナからの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【0094】
この発明の請求項3に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、複数の素子アンテナと、前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、前記分配回路からの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルとを備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【0095】
この発明の請求項4に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、請求項1において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【0096】
この発明の請求項5に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、請求項2において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【0097】
この発明の請求項6に係るアレーアンテナ装置は、以上説明したとおり、請求項3において、前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器をさらに備えたので、位相調整ケーブルの長さを複数回変更したり、調整することなく、最適な位相調整ケーブルの長さを決定し、所望の励振振幅位相を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係るアレーアンテナ装置の素子アンテナ、分配回路、及び給電ケーブルの特性をSパラメータで表し、各々の入出力の関係を示した図である。
【図3】 この発明の実施の形態4に係るアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
【図4】 この発明の実施の形態4に係るアレーアンテナ装置の素子アンテナ、分配回路、給電ケーブル、及び移相器の特性をSパラメータで表し、各々の入出力の関係を示した図である。
【図5】 従来のアレーアンテナ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 素子アンテナ、2 サブアレー、3 分配回路、4 給電ケーブル、5 位相調整ケーブル(振幅位相制御手段)、6 装置側端子、29 移相器、30装置側端子。
Claims (6)
- 複数の素子アンテナと、
前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、
前記素子アンテナの実際の励振電界、及び所望値として予め規定する励振電界の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルと
を備えたことを特徴とするアレーアンテナ装置。 - 複数の素子アンテナと、
前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、
前記素子アンテナからの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルと
を備えたことを特徴とするアレーアンテナ装置。 - 複数の素子アンテナと、
前記複数の素子アンテナに電力を分配する分配回路と、
前記分配回路からの反射量、及び所望値として予め規定する反射量の差を示す評価関数の値を最小にする前記分配回路の入力波を求め、装置側端子からの入力波と前記分配回路の入力波との関係から決定したケーブル長を有し、前記装置側端子から入力された入力電力を位相調整した後、前記分配回路へ送る位相調整ケーブルと
を備えたことを特徴とするアレーアンテナ装置。 - 前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のアレーアンテナ装置。 - 前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器
をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載のアレーアンテナ装置。 - 前記装置側端子と前記位相調整ケーブルの間に接続され、前記位相調整ケーブルに所定の励振振幅位相を分配する移相器
をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載のアレーアンテナ装置。
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