JP4071090B2 - 電子写真感光体の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体の製造方法に関し、更に詳しくは、高感度かつ高耐久な電子写真感光体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用されている電子写真感光体を用いた電子写真方法とは、少なくとも電子写真感光体を帯電させて画像露光し、現像等の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び電子写真感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる方法である。
【0003】
従来、電子写真方式に於いて使用される感光体としては、例えば導電性支持体上に、セレンないしセレン合金を主体とする光導電層を設けた電子写真感光体、酸化亜鉛・硫化カドミウム等の無機系光導電材料をバインダー中に分散させた電子写真感光体、及び非晶質シリコーン系材料を用いた電子写真感光体等が一般的に知られている。しかし、近年ではコストの低さ、感光体設計の自由度の高さ、無公害性等から有機系感光体が広く利用されるようになってきている。
【0004】
有機系の電子写真感光体としては、例えばポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂を用いた電子写真感光体、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型の材質を用いた電子写真感光体、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型の材質を用いた電子写真感光体、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の電子写真感光体等が知られており、これらの中でも、特に機能分離型の電子写真感光体が注目されている。
【0005】
前記機能分離型の電子写真感光体を用いる場合の静電潜像形成のメカニズムは、以下の通りである。先ず、電子写真感光体を帯電した後光照射することにより、照射された光が、透明な電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収される。前記光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界に従って電荷輸送層中を移動し、電子写真感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型の電子写真感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ有用である。
【0006】
ところが、電子写真方法に用いられる有機系電子写真感光体の電荷輸送物質は多くが低分子化合物として開発されている。該低分子化合物は単独では成膜性がないため、通常、不活性高分子に分散・混合して用いられている。しかるに、低分子電荷輸送物質と不活性高分子からなる電荷輸送層は一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合には、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な感光体表面への負荷により、膜削れが生じ易くなったり、耐摩耗性が低い等の問題があった。
【0007】
更に、この構成の電荷輸送層は電荷移動度に限界があり、電子写真プロセスの高速化あるいは小型化の障害になるという問題があった。これは、通常低分子化合物である電荷輸送物質の含有量を50重量%以下で使用することに起因している。即ち低分子化合物である電荷輸送物質の含有量を増すことにより、確かに電荷移動度は上げられるが、このとき逆に成膜性や耐摩耗性が劣化するためである。
【0008】
前記有機系感光体の特性を改善する技術として、有機系感光体のバインダー樹脂を改良した技術(例えば特許文献1)や電荷輸送性ポリマー(例えば特許文献2〜16)が注目され開示されている。
【0009】
上記特許文献において、電荷輸送層のバインダー樹脂を改良した技術は、低分子電荷輸送物質の組成分割合から、著しい耐摩耗性の向上は困難であるという問題があった。一方、電荷輸送性ポリマーを用いた技術は、電荷輸送層成分を高分子化することにより、膜削れの改善がみられるが、感光体を機械寿命まで交換しない据え付け型部品として扱うには、依然十分なものではなく一層の向上が必要である。
【0010】
一方、特許文献17〜19等には、表面層にフッ素変性シリコンオイルを含有させることにより表面性を改善し、クリーニング性を向上させて感光体表面の耐摩耗性を向上させる技術が提案されている。しかし、表面層にフッ素変性シリコンオイルを含有させようとした場合、フッ素変性シリコンオイルは、表面層形成過程で表面近傍に移行して表面に近いところに集中するため、繰り返し使用による表面層の摩耗によって早期にその効果が失われてしまうという問題があった。
【0011】
また、耐摩耗性の向上を目的として、微粒子を添加する系に関しても様々な試みがなされている。例えば、シリコーン樹脂微粒子、フッ素含有樹脂微粒子(特許文献20)、メラミン樹脂微粒子(特許文献21)等を添加する技術が挙げられる。さらに、特許文献22には、表面層にポリエチレン粉体を含有させて表面層の摩擦係数を下げ、クリーニング性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる提案がある。また、特許文献23には、表面層に含フッ素樹脂粉体を含有させて表面層の摩擦係数を下げて、クリーニング性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる提案がある。また、特許文献24、特許文献25には、表面層にシリコーン微粒子を含有させて表面層の摩擦係数を下げ、クリーニング性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる提案がある。また、特許文献26及び特許文献27には、表面層に架橋型有機微粒子を含有させて表面層の摩擦係数を下げ、クリーニング性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる提案がある。更に、特許文献28には、表面層にメチルシロキサン樹脂微粒子を含有させて表面層の摩擦係数を下げ、クリーニング性を向上させて感光体の耐摩耗性を向上させる提案がある。これらの提案は、電子写真感光体表面の摩擦係数低減、表面エネルギーの低減等の機能付与による高耐久化を意図したものであるが、以下のような問題を有する。
【0012】
即ち、電子写真感光体の表面層に、樹脂粉体あるいは微粒子を分散させて感光層表面の耐摩耗性の向上を図った場合、これらの樹脂粉体あるいは微粒子は、バインダー樹脂との相溶性が乏しいため、樹脂粉体あるいは微粒子の分散が不良となり、画像形成時に黒ポチや白ポチ等の異常欠陥が生じ、繰り返し使用中に残留電位の上昇が起きる等の問題がある。また同時に、感光層の光透過性が妨げられるため、感度低下、電荷輸送性能の低下により、画像濃度の不均一が発生する等々問題があり、未だ解決には至っていない。
【0013】
本発明者らは上記従来技術に対し、最表面層にアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有することにより、持続的低摩擦性を持つ、高耐久な電子写真感光体を提供することを見出した。アクリル変性ポリオルガノシロキサンはポリオルガノシロキサン部分が低摩擦性、摺動性を持ち、アクリル部分がマトリックス樹脂との相溶性を持つことから、感光層に偏析せず、よく分散され、電子写真用感光体の繰り返し使用時においても低摩擦の機能が持続することにより、高い耐久性を保つことができる。
【0014】
しかしながら、アクリル変性ポリオルガノシロキサンをバインダー樹脂及び感光材と共にボールミルやサンドミルで分散する場合には、分散工程の効率も良好ではなく、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを一次粒子まで分散できず、感光層として成膜する時、凝集体の残存により塗膜欠陥を生じ、得られた感光体も著しく画像品位を落とす等といった問題が生じた。
【0015】
【特許文献1】
特開平5−216250号公報
【特許文献2】
特開昭51−73888号公報
【特許文献3】
特開昭54−8527号公報
【特許文献4】
特開昭54−11737号公報
【特許文献5】
特開昭56−150749号公報
【特許文献6】
特開昭57−78402号公報
【特許文献7】
特開昭63−285552号公報
【特許文献8】
特開昭64−1728号公報
【特許文献9】
特開昭64−13061号公報
【特許文献10】
特開昭64−19049号公報
【特許文献11】
特開平3−50555号公報
【特許文献12】
特開平4−175337号公報
【特許文献13】
特開平4−225014号公報
【特許文献14】
特開平4−230767号公報
【特許文献15】
特開平5−232727号公報
【特許文献16】
特開平5−310904号公報
【特許文献17】
特開平7−295248号公報
【特許文献18】
特開平7−301936号公報
【特許文献19】
特開平8−082940号公報
【特許文献20】
特開昭63−65449号公報
【特許文献21】
特開昭60−177349号公報
【特許文献22】
特開平2−143257号公報
【特許文献23】
特開平2−144550号公報
【特許文献24】
特開平7−128872号公報
【特許文献25】
特開平10−254160号公報
【特許文献26】
特開平2000−010322号公報
【特許文献27】
米国特許第5,998,072号明細書
【特許文献28】
特開平8−190213号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、上記諸問題を解決し、高感度で且つ高耐久の特性を持つ電子写真用感光体の製造法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の製造法において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを溶媒と共に高圧状態に昇圧し、該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを、該感光体の感光層に含有させることを特徴とする電子写真感光体の製造法を見出し、本発明に到った。
【0018】
即ち、本発明は以下の(1)〜(12)である。
(1) 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の製造法において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを溶媒と共に高圧状態に昇圧し該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン粒子または粉体を、感光層塗工液に含有させ電子写真感光体表面に塗工して、該感光体の感光層に含有させることからなり、前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンが下記一般式 ( I ) で表わされるポリオルガノシロキサン[(イ)成分]と、下記一般式( II )で表わされる(メタ)アクリル酸エステル又はこの(メタ)アクリル酸エステル70重量%以上と共重合可能な単量体30重量%以下との混合物[(ロ)成分]とを、重量比5:95〜95:5の割合で乳化グラフト共重合させて成るアクリル変性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする電子写真感光体の製造法。
【化7】
【化8】
〔式(I)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Yはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基、Z 1 及びZ 2 は、それぞれ同一又は異なる水素原子、低級アルキル基又は下記一般式( III )で表わされる基
【化9】
(式( III )中、R 4 及びR 5 は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R 6 は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基である)、mは10,000以下の正の整数、nは1以上の整数である。式( II )中、R 7 は水素原子又はメチル基、R 8 はアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。〕
(2) 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の製造法において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンをバインダー樹脂及び溶媒と共に高圧状態に昇圧し、該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン粒子または粉体を、感光層塗工液に含有させ電子写真感光体表面に塗工して、該感光体の感光層に含有させることからなりアクリル変性ポリオルガノシロキサンが下記一般式 ( I ) で表わされるポリオルガノシロキサン[(イ)成分]と、下記一般式( II )で表わされる(メタ)アクリル酸エステル又はこの(メタ)アクリル酸エステル70重量%以上と共重合可能な単量体30重量%以下との混合物[(ロ)成分]とを、重量比5:95〜95:5の割合で乳化グラフト共重合させて成るアクリル変性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする電子写真感光体の製造法。
【化10】
【化11】
〔式(I)中、R 1 、R 2 及びR 3 は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Yはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基、Z 1 及びZ 2 は、それぞれ同一又は異なる水素原子、低級アルキル基又は下記一般式( III )で表わされる基
【化12】
(式( III )中、R 4 及びR 5 は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R 6 は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基である)、mは10,000以下の正の整数、nは1以上の整数である。式( II )中、R 7 は水素原子又はメチル基、R 8 はアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。〕
(3) 前記昇圧、粉砕及び/又は分散が、アクリル変性ポリオルガノシロキサン及び溶媒、又はアクリル変性ポリオルガノシロキサン、バインダー樹脂及び溶媒を微細な流路に圧送し、該微細な流路の吐出口直後の高圧液衝突により行なわれることを特徴とする(1)又は(2)記載の電子写真感光体の製造法。
(4) 前記高圧の液の圧力が10MPa以上、300MPa以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
(5) 前記(ロ)成分として用いるグラフト共重合用単量体のポリマー化物のガラス転移温度が20℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
(6) 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層及び電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を順次積層した電子写真用感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該電荷輸送層に含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
(7) 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層及び電荷発生材料を含有する電荷発生層を順次積層した電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該電荷発生層に含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
(8) 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層及び電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を順次積層し、該電荷輸送層上に保護層が積層された電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該保護層に含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
(9) 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層と電荷発生材料を含有する電荷発生層を順次積層し、該電荷発生層上に保護層が積層された電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該保護層に含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
(10) 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単一感光層を有する単層型電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該感光層に含有させることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
(11) 感光体の感光層に含有されるアクリル変性ポリオルガノシロキサンの平均粒径が1μm以下であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
(12) 感光体の感光層に含有されるアクリル変性ポリオルガノシロキサンが粒径1.0μm以下の粒子が95%以上であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
【0031】
本発明における高圧状態に昇圧し、該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させる(高圧液体衝突分散法)とは、例えば、微細な流路に流体を圧送し、該微細な流路の吐出口直後の高圧液同士の衝突、及び高圧液と装置の壁面との衝突により被分散物を粉砕及び/又は分散させることである。このための手段としては、高圧ポンプとこれに配管により接続された複数の小径のオリフィスを有する治具と、該オリフィスより液が吐出される際に液同士が衝突すべく加工された治具により構成される装置を用いることができる。
【0032】
このような装置としては、スギノマシン(株)のアルティマイザーシステム、大和製罐(株)、吉田機械興業(株)等のナノマイザーシステムが利用できる。衝突パス回数が増えると、液衝突の発熱が蓄積しやすいので、分散回路に冷却装置をつけるのが望ましい。
【0033】
本発明でいうところの高圧とは、前記高圧ポンプの吐出量、吐出圧とオリフィス径及び長さ、更には溶媒及び被分散物の粘度によりおおむね決定され、10〜300MPaを好適とする。処理の圧力が10MPaより小さくなると、液同士の衝突エネルギーが足りなく、所望する粒径まで分散できない。一方、処理の圧力が300MPaより大きくなると、液同士の衝突エネルギーが高すぎて、分散物の劣化及び分散液の爆発等の恐れがある。もっと好ましいのは50〜150MPaである。
【0034】
本発明における高圧液体衝突分散法は通常のボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等のメディアミルに比べ、下記のメリットが挙げられる。
▲1▼ナノレベルまで分散できる。
▲2▼瞬時処理のため省エネルギーと生産の高効率が可能である。
▲3▼連続的な大量生産ができる。
▲4▼メディアを使わないので、コンタミネーションが発生しない。
▲5▼高圧の条件で処理するので、可分散液の粘度幅が広い。
▲6▼均一でシャープな粒度分布が得られる。
【0035】
粉砕及び/又は分散させる際には、アクリル変性ポリオルガノシロキサンと溶媒からなる溶液も分散できるし、アクリル変性ポリオルガノシロキサンと溶媒とバインダー樹脂からなる溶液も分散できる。溶媒としては、バインダー樹脂が溶解できるものが望ましい。例えば、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、トルエン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサノン等が挙げられる。バインダー樹脂としては、有機電子写真感光体によく使われている市販樹脂(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる)も使用できるし、特殊な電荷輸送性ポリマーも使用できる。分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの再凝集を防ぐため、分散する時少量の相溶化剤あるいは分散剤を加えれば、得られた分散液の安定性がより高くなる。
【0036】
衝突パス回数はアクリル変性ポリオルガノシロキサンの粒径の変化により決められるが、必要以上となると、アクリル変性ポリオルガノシロキサンの劣化の恐れがあるので、20回以下が望ましい。もっと好ましいのは10回以下である。
【0037】
以下に、本発明において用いられるアクリル変性ポリオルガノシロキサンについてさらに詳細に述べる。
本発明において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンとしては、(イ)下記一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンと、(ロ)下記の一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステル又は該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の混合物を、乳化グラフト共重合させたアクリル変性ポリオルガノシロキサン等が特に好ましい。
【0038】
【化7】
〔式(I)中、R1、R2及びR3は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、Yはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基、Z1及びZ2は、それぞれ同一又は異なる水素原子、低級アルキル基又は一般式(III)で表される基のいずれかであり、mは10,000以下の正の整数、nは1以上の整数である。〕
【0039】
【化8】
(式(III)中、R4及びR5は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R6は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基である。)
【0040】
【化9】
(式(II)中、R7は水素原子又はメチル基、R8はアルキル基、アルコキシ置換アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。)
【0041】
前記一般式(I)において、R1、R2及びR3で表わされる基としては、炭素数1〜20の炭化水素基であれば特に制限はないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基等、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。これらの炭化水素基においては、炭素原子に結合した水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されていてもよい。R1、R2及びR3は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0042】
前記一般式(I)において、Yは、ラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基であれば特に制限はない。前記ラジカル反応性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、γ−アクリロキシプロピル基、γ−メタクリロキシプロピル基、及び、γ−メルカプトプロピル基等が挙げられる。Z1及びZ2としては、例えば、水素原子や、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基や、下記一般式(III)で表されるトリオルガノシリル基等が挙げられる。式(III)において、R4及びR5は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜20の炭化水素基又はハロゲン化炭化水素基、R6は炭素数1〜20の炭化水素基もしくはハロゲン化炭化水素基、あるいはラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つ有機基である。R4、R5、及びR6で表される炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ラジカル反応性基、SH基、これらの両方を持つ有機基としては、前述した具体例が好適に挙げられる。該Z1とZ2は、それぞれ同一であってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0043】
【化10】
【0044】
前記一般式(I)におけるmは、10,000以下の正の整数であり、500〜8,000の整数が好ましい。また、一般式(I)におけるnは、1以上の整数であり、1〜500の整数が好ましい。
【0045】
次に、前記一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンの製造方法について述べる。
前記一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンは、例えば、環状ポリオルガノシロキサン、分子鎖両末端が水酸基で封鎖された液状ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がアルコキシ基で封鎖された液状ポリジメチルシロキサン、分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサン等を、また、ラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を導入するためのシラン類あるいはシラン類の加水分解生成物等を、さらに所望に応じ、本発明の目的をそこなわない程度の量の三官能性のトリアルコキシシラン及びその加水分解生成物等を用い、反応させることにより製造することができる。
【0046】
さらに、一般式(I)で表されるポリオルガノシロキサンの別の製造方法(第1の製造方法、第2の製造方法)について説明する。
まず、第1の方法は、原料として、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサンのような環状低分子シロキサンと、ラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つジアルコキシシラン化合物やその加水分解物とを用い、強アルカリ性又は強酸性触媒の存在下に重合させることにより、高分子量のポリオルガノシロキサンを得る方法である。このようにして得られた高分子量のポリオルガノシロキサンは、次工程の乳化グラフト共重合に供するために、適当な乳化剤の存在下に水性媒体中に乳化分散させる処理が施される。
【0047】
第2の方法は、原料として、例えば低分子ポリオルガノシロキサンと、ラジカル反応性基又はSH基もしくはその両方を持つジアルコキシシランやその加水分解物とを用い、スルホン酸系界面活性剤や硫酸エステル系界面活性剤の存在下、水性媒体中で乳化重合させる方法である。この乳化重合の場合、同様な原料を用い、アルキルトリメチルアンモニウムクロリドやアルキルベンジルアンモニウムクロリド等のカチオン性界面活性剤により、水性媒体中で乳化分散させたのち、適当量の水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等の強アルカリ性化合物を添加して重合させてもよい。
【0048】
上記の方法によって得られた前記一般式(I)で示されるポリオルガノシロキサンは、その分子量が小さいと、組成物から得られる成形体に持続性のある摺動性、耐摩耗性等を付与する効果が劣るようになるので、分子量ができるだけ大きい方が好ましい。このため、前記第1の製造方法においては、重合の際、ポリオルガノシロキサンを高分子量のものとしておき、これを乳化分散することが必要である。また前記第2の製造方法においては、乳化重合後に施される熟成処理の際、熟成温度を低くすることによりポリオルガノシロキサンの分子量を大きくできるため、熟成温度は30℃以下、好ましくは15℃以下とするのが有利である。
【0049】
本発明において、前記一般式(I)で示されるポリオルガノシロキサンに、グラフト重合させる(ロ)成分の単量体として用いられる前記一般式(II)で示される(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
前記(メタ)アクリル酸エステルと共に用いられる共重合可能な単量体としては、多官能性単量体やエチレン性不飽和単量体が挙げられる。該多官能性単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミド及びエチレン性不飽和アミドのアルキロール又はアルコキシアルキル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルアリルエーテル等のオキシラン基含有不飽和単量体、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体、N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体、(メタ)アクリル酸のエチレンオキシドやプロピレンオキシド付加物等のポリアルキレンオキシド基含有不飽和単量体、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸との完全エステル、さらにはアリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
これらの多官能性単量体は、アクリル変性ポリオルガノシロキサンにおけるポリマー間の架橋に関与することによって、成形体に弾性、耐久性、耐熱性等を付与する効果を有している。
【0052】
前記エチレン性不飽和単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらの単量体は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、これらの単量体1種以上と前記官能性単量体1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体の使用量としては、一般式(II)で示される(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体との合計重量に基づき、30重量%以下の範囲で選ぶことが必要である。この量が30重量%を超えると、得られるアクリル変性ポリオルガノシロキサンとバインダー樹脂との混和性が低下する。
【0054】
また、前記(ロ)成分のグラフト共重合用単量体、即ち前記一般式(II)で示される(メタ)アクリル酸エステル、又はこれと共重合可能な単量体との混合物は、成形体に、より優れた摺動性、耐摩耗性を付与するためには、そのポリマー化物のガラス転移温度が20℃、好ましくは30℃以上のものが望ましい。
【0055】
次に本件発明のアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造方法等について述べる。
本発明におけるアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、前記(イ)成分のポリオルガノシロキサンと(ロ)成分の単量体とを、重量比5:95〜95:5の割合で用いて、乳化重合法により、グラフト共重合させることにより得るのが好ましい。前記質量比としては、51/49〜95/5がより好ましく、65/35〜95/5が更に好ましい。
該(イ)成分のポリオルガノシロキサンの使用割合が前記範囲より少ないと、得られるアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシロキサン自体が持つ効果を十分に発揮することができず、かつアクリル系ポリマーの欠点である粘着感が生じるようになる。一方、前記範囲より多いと、該アクリル変性ポリオルガノシロキサンはポリ塩化ビニル系樹脂との混和性が低下し、成形体表面にブリードしやすくなり、摺動性、耐摩耗性等が経時により低下しやすくなる傾向がみられる。
【0056】
前記(イ)成分と(ロ)成分との乳化グラフト共重合は、該(イ)成分としてポリオルガノシロキサンの水性エマルジョンを用い、通常のラジカル開始剤を使用して、公知の乳化重合法によって行うことができる。
【0057】
なおアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造に関しては特公平7−5808号公報(日信化学工業株式会社)に詳細に記載されている。
【0058】
また本発明に用いられるアクリル変性ポリオルガノシロキサンにおいて、重合時に用いる乳化剤、凝集剤等不純物の残留は、電気特性を問題とする像形成部材、とりわけ電子写真用感光体においては、その電気特性を損なう恐れがあるため、必要に応じて精製して用いることが好ましい。
【0059】
アクリル変性ポリオルガノシロキサンを乳化グラフト重合により製造(例えば、特公平7−5808号公報等)すると、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン系乳化剤が使用され、又グラフト重合が終了した後、アクリル変性ポリオルガノシロキサンが含まれたラテックスを塩析、凝固、分離、回収するために、硫酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の金属塩凝集剤も使用されることによって、ナトリウム、イオウ等のイオン成分を残留する。これらの不純物を除く精製法としては酸、アルカリ水溶液、水及びアルコール等で攪拌洗浄処理する方法またソックスレー抽出等による固液抽出法が挙げられる。
【0060】
好ましい精製法としては、アルコールで攪拌洗浄処理する方法が挙げられる。アルコールの洗浄は乳化剤と凝集剤によるアクリル変性ポリオルガノシロキサンのイオン成分の除去に非常に有効である。アルコールとしては、メタノール、エタノール及びイソプロアルコール等が挙げられる。好ましくはメタノールである。洗浄操作を2回以上行うことが好ましい。また、アルコールで洗浄した後、イオン交換水で置換処理して、凍結乾燥を行うとより分散しやすいものが得られる。
上述の精製方法によって得られるアクリル変性ポリオルガノシロキサンに含まれるナトリウム(Na)イオン濃度としては、500ppm以下が好ましく、イオウ含有イオン濃度としては、800ppm以下が好ましい。
【0061】
また、熱水で攪拌洗浄処理する方法、ソックスレー抽出等による固液抽出法及び亜臨界状態乃至超臨界状態の流体を用いる抽出処理法等も有効である。なお不純物除去のための方法は、これらの方法に限定されるものではない。
【0062】
本発明で使用されるアクリル変性ポリオルガノシロキサンの代表的な例を以下に示す。
例えば、市販品としては、日信化学工業(株)のシャリーヌR−170S、R−170、NR-150、NR−130、R−210と信越化学工業(株)のX−22−8084、X−22−8171等が挙げられる。
【0063】
感光層中におけるアクリル変性ポリオルガノシロキサンの割合としては、70重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。70重量%以上使用すると、感光体の表面平滑性の低下、残留電位上昇等の副作用をもたらす。
【0064】
高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを電子写真用感光体の感光層に含有させる実施形態について以下に説明する。
本発明の電子写真感光体の製造法によって得られる電子写真感光体の断面図を図1〜図7に示す。電子写真感光体は、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを感光層に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5、図6あるいは図7に示したように用いることができる。
本発明の製造方法により得られる電子写真感光体は、上記の電子写真感光体に限定されるものではなく、感光層に分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有していればよい。本発明においては、保護層も感光層に含むものであるが、感光層が保護層を含む場合には、アクリル変性ポリオルガノシロキサンはその保護層に含有されていてもよく、また、保護層ではなくその下層に含有されていてもよい。
【0065】
図1における感光体は、導電性支持体1上に、電荷発生物質5と高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を、電荷輸送能を有する樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散させた感光層2が設けられたものである。ここでの電荷輸送能を有する樹脂は、単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体4を形成し、一方、電荷発生物質5(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質5が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を有している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質5と電荷輸送能を有する樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質5に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよいし、低分子電荷輸送物質と結合剤からなる電荷輸送層媒体も用いることができる。
【0066】
図2における感光体は、電荷輸送媒体4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は、電荷輸送媒体4上に、電荷輸送能を有する樹脂あるいは結合剤と併用で、その中に高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を加えて保護層が形成されている。低分子電荷輸送物質と結合剤及び高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンからなる保護層も使用できる。なお電荷輸送物質を含まない、即ち、結合剤と高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンによる保護層としてもよい。
【0067】
図3における感光体は、導電性支持体1上に電荷発生物質5を主体とする電荷発生層7と、電荷輸送能を有する樹脂と高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2''が設けられたものである。この感光体では、電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層7に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質5で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行われる。こうした機構は図1に示した感光体における説明と同様である。なお電荷輸送媒体は電荷輸送能を有する樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層7に電荷輸送能を有する樹脂あるいは低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。同様の目的で電荷輸送層4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよいし、低分子電荷輸送物質と結合剤からなる電荷輸送層媒体も用いることができる。後述の感光層についても同様である。
【0068】
図4における感光体は、図3における感光体の電荷輸送層4を、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を含まないものとし、その上に図2と同様な方法で保護層6を設けたものである。なお電荷輸送層に高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有させても良い。
【0069】
図5における感光体は、図3における感光体の電荷発生層7と、電荷輸送能を有する樹脂あるいは低分子電荷輸送物質と結合剤による組成物を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にし、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を電荷発生層7に含有させた感光体である。
【0070】
図6における感光体は、図5における感光体の電荷発生層を、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3を含まないものとし、その上に図2と同様な方法で保護層6を設けたものである。なお電荷発生層に高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有させても良い。
【0071】
図7における感光体は、導電性支持体1上に、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3、増感染料及び電荷輸送能を有する樹脂単独あるいは結合剤との併用または低分子電荷輸送物質と結合剤で形成される感光層2''''''が設けられたものである。ここでの電荷輸送能を有する樹脂または低分子電荷輸送物質は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動は電荷輸送能を有する樹脂または低分子電荷輸送物質を介して行われる。しかしながら、電荷輸送能を有する樹脂または低分子電荷輸送物質は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0072】
図1に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の電荷輸送能を有する樹脂あるいは結合剤を併用し、溶解した溶液に、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン3と電荷発生物質5の微粒子を分散させ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
感光層2の厚さは3〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。感光層2に占める結合剤の量は、30〜95重量%が好ましい。その高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの含有量は、感光層2における固形分に対し20重量%以下であり、このましくは10重量%以下である。また電荷輸送能を有する樹脂の代わりに、低分子電荷輸送物質と結合剤による組成物も適用できる。
【0073】
又、感光層2に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。
電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコン等の無機材料、有機材料としては、例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)等のアゾ顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)等のインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料等が挙げられる。また下記式(N)に表されるフタロシアニン顔料も電荷発生物質として有用である。式中M(中心金属)は、金属及び無金属(水素)の元素を表す。
【0074】
【化11】
【0075】
ここであげられるM(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、TI、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物等の2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体等多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
【0076】
これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に、特に好ましい。
またこれらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))。このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、y型の結晶系が望ましい。
また上記の電荷発生物質は2種以上混合してもかまわない。
【0077】
図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の電荷輸送能を有する樹脂あるいは結合剤を併用し溶解した溶液、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに溶解した溶液に電荷発生物質5の微粒子を分散させ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2’を形成すればよい。この感光層上に電荷輸送能を有する樹脂を単独で又は結合剤と併用して、あるいは低分子電荷輸送物質と結合剤とともに、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンと溶解、分散し、塗布、乾燥して、保護層6を設ける。保護層の厚みとしては0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める樹脂の量は40〜95重量%であり、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの量は、樹脂に対して、20重量%以下であり、このましくは10重量%以下である。結合剤と高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンからなる保護層としてもよい。
【0078】
図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質5を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質5の微粒子を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥して、更に必要であればバフ研磨等の方法によって表面仕上げ、膜厚調整等を行って電荷発生層7を形成し、この上に1種又は2種以上の電荷輸送能を有する樹脂あるいは結合剤と併用して、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンと溶解、分散した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。なおここで電荷発生層7の形成に用いられる電荷発生物質5は、前記の感光層2の説明と同じものである。
電荷発生層7の厚さは5μm以下が好ましく、2μm以下がより好ましい。電荷輸送層4の厚さは3〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。
【0079】
電荷発生層7が、電荷発生物質5の微粒子を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質5の微粒子の電荷発生層7に占める割合は、10〜100重量%が好ましく、50〜100重量%がより好ましい。又、電荷輸送層4に占める電荷輸送能を有する樹脂の量は、40〜95重量%が好ましく、高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの量は、樹脂に対して、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。電荷輸送能を有する樹脂の代わりに、低分子電荷輸送物質を用いてもよいことは前記のとおりである。
【0080】
ここに用いられる電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号等の公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)等が挙げられる。
【0081】
前記電荷輸送能を有する樹脂としては、従来公知の電荷輸送性ポリマーをそのまま利用することができる。例えば、特開昭51−73888号公報、特開昭54−8527号公報、特開昭54−11737号公報、特開昭56−150749号公報、特開昭57−78402号公報、特開昭63−285552号公報、特開昭64−1728号公報、特開昭64−13061号公報、特開昭64−19049号公報、特開平3−50555号公報、特開平4−225014号公報、特開平4−230767号公報、特開平5−232727号公報、特開平5−310904号公報等が挙げられる。
【0082】
トリアリ−ルアミン構造を有する従来公知の電荷輸送性ポリマーに関しても本発明において同様に利用する事ができる。例えばアセトフェノン誘導体(特開平8−269183号公報に記載)、ジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−71642号公報に記載)、ジフェネチルベンゼン誘導体(特開平9−104746号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開平9−272735号公報及び特開2000−314973号公報に記載)、ブタジエン誘導体(特開平9−235367号公報に記載)、水素化ブタジエン誘導体(特開平9−87376号公報に記載)、ジフェニルシクロヘキサン誘導体(特開平9−110976号公報に記載)、ジスチリルトリフェニルアミン誘導体(特開平9−268226号公報に記載)、ジスチリルジアミン誘導体(特開平11−60718号公報に記載)、ジフェニルジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−221544号、同9−227669号公報に記載)、スチルベン誘導体(特開平9−157378号公報、JP9702582に記載)、m−フェニレンジアミン誘導体(特開平9−302084号、同9−302085号公報に記載)、レゾルシン誘導体(特開平9−328539号公報に記載)、フルオレン誘導体(特開平11−5836号公報に記載)、フェノキシスチルベン誘導体(特開平11−71453号公報に記載)等が挙げられる。
【0083】
またトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂も同様に利用できる。例えば米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報等が挙げられる。
【0084】
図4に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質5を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質5の微粒子を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥して、更に必要であればバフ研磨等の方法によって表面仕上げ、膜厚調整等を行って電荷発生層7を形成し、この上に1種又は2種以上の電荷輸送能を有する樹脂あるいは結合剤と併用し、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成した後、図2に示した保護層6を設ければよい。
【0085】
図5に示した感光体を作製するには、導電性支持体1上に電荷輸送能を有する樹脂の1種または2種以上あるいは結合剤と併用し、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成した後、この電荷輸送層の上に電荷発生物質5の微粒子を高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンと、必要によって結合剤とともに溶解した溶媒中に分散した分散液を、スプレー塗工等の方法で塗布乾燥して、電荷発生層7を形成すればいい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図4で説明した内容と同様である。
【0086】
図6に示した感光体を作製するには、導電性支持体1上に電荷輸送能を有する樹脂の1種または2種以上あるいは結合剤と併用し、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成した後、この電荷輸送層の上に電荷発生物質5の微粒子を、必要によって結合剤とともに溶解した溶媒中に分散した分散液を、スプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層7を形成した後、図2に示した保護層6を設ければよい。
【0087】
図7に示した感光体を作製するには、導電性支持体1上に高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン及び電荷輸送能を有する樹脂の1種または2種以上あるいはそれと結合剤と併用し、または低分子電荷輸送物質を結合剤とともに溶解、分散し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し、乾燥して、感光層2''''''を形成すればよい。
感光層の厚さは3〜50μmが好ましく、5〜40μmがより好ましい。感光層2''''''に占める電荷輸送能を有する樹脂または低分子電荷輸送物質の量は30〜100重量%が好ましく、又、感光層2''''''に占める増感染料の量は0.1〜5重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0088】
なお、これらのいずれの感光体製造においても、導電性支持体1にはアルミニウム等の金属板又は金属箔、アルミニウム等の金属を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは導電処理を施した紙等が用いられる。又、結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート等の縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体等が用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられていてもよく、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤等の添加剤を加えることができる。
【0089】
更に以上のようにして得られる感光体には導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタン等であり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
【0090】
本発明の製造法にて得られた感光体を用いて複写を行うには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行い必要によって紙等へ転写を行う。
【0091】
このようにして得られた高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを含有する感光体は感度が高く、またポリオルガノシロキサンの低摩擦性に加えアクリルのマトリックス樹脂への相溶化機能により、極めて耐久性に優れている。
【0092】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。なお、部はすべて重量部である。
【0093】
−分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例1−
精製された(精製方法は特願2002−175616号明細書精製例2と同様)アクリル変性ポリオルガノシロキサン(シャリーヌR−170S、日信化学工業株式会社製)98.67部をテトラヒドロフラン888部に混合、攪拌した後、アルティマイザーシステム(HJP−25005 株式会社スギノマシン製)で分散処理を実施した。分散時の処理圧力は110MPaである。
吐出口より得られた液を再度投入し、合計10回まで高圧処理し、1回目、5回目と10回目の被分散物をそれぞれ得た。高圧処理回数に対するアクリル変性ポリオルガノシロキサンの粒度分布を堀場製作所粒度分布計(商品名:HORIBA LA−910)で測定した結果と高圧処理の所用時間を表1に示す。
【0094】
−分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例2−
上記製造例1において、使用した高圧処理に代わって通常のボールミル装置を用いた以外は製造例1と全く同様な処理を実施した。なおボールミル装置の回転数は60rpmとし、処理時間は2時間、6時間、12時間とした。これら各条件で得られた分散液に製造例1と同様な粒度分布測定を実施した。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
−分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例3−
上記精製されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン(シャリーヌR−170S、日信化学工業株式会社製)7.43gとポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製)39.31部をテトラヒドロフラン888部に混合、攪拌した後、アルティマイザーシステム(HJP−25005 株式会社スギノマシン製)で分散処理を実施した。分散時の処理圧力は60MPaである。
吐出口より得られた液を再度投入し、合計5回まで高圧処理し、1回目、3回目と5回目の被分散物をそれぞれ得た。高圧処理回数に対するアクリル変性ポリオルガノシロキサンの粒度分布を堀場製作所粒度分布計(商品名:HORIBALA−910)で測定した結果と高圧処理の所用時間を表2に示す。
【0097】
−分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例4〜6−
上記製造例3において分散時の圧力を85MPa、110MPa、150MPaにそれぞれ設定する以外は製造例3と全く同様な処理を実施した。これら各条件で得られた分散液に製造例3と同様な粒度分布測定を実施した。結果と高圧処理の所用時間を表2に示す。
【0098】
−分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンの製造例7−
上記製造例3において、使用した高圧処理に代わって通常のボールミル装置を用いた以外は製造例3と全く同様な処理を実施した。なおボールミル装置の回転数は60rpmとし、処理時間は2時間、6時間、12時間とした。これら各条件で得られた分散液に製造例3と同様な粒度分布測定を実施した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
(実施例1)
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、及び電荷輸送層塗工液を、浸漬塗工によって順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成し、感光体を作製した。
<下引き層塗工液>
二酸化チタン粉末: 400部
メラミン樹脂: 40部
アルキッド樹脂: 60部
2−ブタノン: 500部
【0101】
<電荷発生層塗工液>
下記構造のビスアゾ顔料: 12部
【化12】
ポリビニルブチラール: 5部
2−ブタノン: 200部
シクロヘキサノン: 400部
【0102】
<電荷輸送層塗工液>
ポリカーボネート(Zポリカ、帝人化成製): 10部
下記構造式の電荷輸送物質: 7部
【化13】
テトラヒドロフラン: 87部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業製)
テトラヒドロフラン溶液 1部
製造例1で得られたアクリル変性ポリオルガノシロキサン分散液
(高圧処理5回品) 18.9部
【0103】
(比較例1)
実施例1において、アクリル変性ポリオルガノシロキサン分散液を上記製造例2の分散時間12時間の条件の分散液を用いた以外実施例1と同様にして感光体を作製した。
【0104】
(実施例2)
実施例1において、電荷輸送層塗工液を下記処方とした以外実施例1と同様にして、感光体を作製した。
<電荷輸送層塗工液>
下記構造式の電荷輸送物質: 7部
【化14】
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業製)
テトラヒドロフラン溶液 1部
製造例3で得られたアクリル変性ポリオルガノシロキサン分散液
(高圧処理3回品) 237.8部
【0105】
(実施例3〜5)
実施例2において、電荷輸送層塗工液中のアクリル変性ポリオルガノシロキサン分散液を上記製造例4〜6で得られたもの(高圧処理3回品)をそれぞれ用いた以外実施例2と同様にして感光体を作製した。
【0106】
(比較例2)
実施例2において、アクリル変性ポリオルガノシロキサン分散液を上記製造例7中の分散時間12時間の条件の分散液を用いた以外実施例2と同様にして感光体を作製した。
【0107】
以上のように作製した実施例1〜5の電子写真感光体、及び比較例1、2の電子写真感光体を電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を655nmの半導体レーザーを用いたリコー製レーザープリンタ改造機にて、連続してまず5万枚の印刷を行った後、温度25℃で湿度90%の環境下で画像出しを行い、暗部電位、明部電位、画像品質について評価を行った。暗部電位、明部電位、画像品質については以下のようにして評価した。
暗部電位 :一次帯電の後、現像部位置まで移動した際の感光体表面電位
明部電位 :一次帯電の後、画像露光(全面露光)を受け、現像部位置まで移動した際の感光体表面電位
画像品質 :出力画像の画像濃度、細線再現性、文字かすれ、解像度、地肌汚れ等を総合的に評価
感光体欠陥:感光体表面の目視観察によるアクリル変性ポリオルガノシロキサンの凝集体の感光体への付着を評価する
【0108】
また5万枚印刷後には膜厚測定をおこない、印刷前後の膜厚差より摩耗量の評価を行った。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
次に、実施例1〜5の感光体の電荷輸送層切片をルテニウム酸蒸気で染色して、透過型電子顕微鏡(H−9000NAR)により、モルフォロジーを観察した。ポリカーボネートのマトリックス相に分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンは画像処理ソフトにて平均粒径を求めた。その結果を表4に示す。
【0111】
比較例1と2の感光体の電荷輸送層切片をルテニウム酸蒸気で染色して、透過型電子顕微鏡(H−9000NAR)により、モルフォロジーを観察した。ポリカーボネートのマトリックス相に分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンは画像処理ソフトにて平均粒径を求めた。その結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の感光体の製造法は、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを溶媒とともに、又はバインダー樹脂と溶媒と共に高圧状態に昇圧し、高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを、感光層に含有させるものである。この分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンは、一次粒子に近い均一でシャープな粒度分布を有し、得られた感光体は表面滑り性や耐摩耗性に関し著しい改善がなされ、高耐久でかつ耐久後も高品質な画像特性を有する。且つ、本発明の製造法は連続的な大量生産ができ、生産時間が短く、生産効率が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2、2’、2''、2'''、2''''、2'''''、2'''''' 感光層
3 高圧の液衝突により分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生物質
6 保護層
7 電荷発生層
8 感光層
Claims (12)
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の製造法において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンを溶媒と共に高圧状態に昇圧し該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン粒子または粉体を、感光層塗工液に含有させ電子写真感光体表面に塗工して、該感光体の感光層に含有させることからなり、前記アクリル変性ポリオルガノシロキサンが下記一般式 ( I ) で表わされるポリオルガノシロキサン[(イ)成分]と、下記一般式( II )で表わされる(メタ)アクリル酸エステル又はこの(メタ)アクリル酸エステル70重量%以上と共重合可能な単量体30重量%以下との混合物[(ロ)成分]とを、重量比5:95〜95:5の割合で乳化グラフト共重合させて成るアクリル変性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする電子写真感光体の製造法。
- 導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体の製造法において、アクリル変性ポリオルガノシロキサンをバインダー樹脂及び溶媒と共に高圧状態に昇圧し、該高圧の液衝突により粉砕及び/又は分散させることにより得られる分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサン粒子または粉体を、感光層塗工液に含有させ電子写真感光体表面に塗工して、該感光体の感光層に含有させることからなりアクリル変性ポリオルガノシロキサンが下記一般式 ( I ) で表わされるポリオルガノシロキサン[(イ)成分]と、下記一般式( II )で表わされる(メタ)アクリル酸エステル又はこの(メタ)アクリル酸エステル70重量%以上と共重合可能な単量体30重量%以下との混合物[(ロ)成分]とを、重量比5:95〜95:5の割合で乳化グラフト共重合させて成るアクリル変性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする電子写真感光体の製造法。
- 前記昇圧、粉砕及び/又は分散が、アクリル変性ポリオルガノシロキサン及び溶媒、又はアクリル変性ポリオルガノシロキサン、バインダー樹脂及び溶媒を微細な流路に圧送し、該微細な流路の吐出口直後の高圧液衝突により行なわれることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体の製造法。
- 前記高圧の液の圧力が10MPa以上、300MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
- 前記(ロ)成分として用いるグラフト共重合用単量体のポリマー化物のガラス転移温度が20℃以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
- 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層及び電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を順次積層した電子写真用感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該電荷輸送層に含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
- 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層及び電荷発生材料を含有する電荷発生層を順次積層した電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該電荷発生層に含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
- 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷発生材料を含有する電荷発生層及び電荷輸送材料を含有する電荷輸送層を順次積層し、該電荷輸送層上に保護層が積層された電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該保護層に含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
- 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に、電荷輸送材料を含有する電荷輸送層と電荷発生材料を含有する電荷発生層を順次積層し、該電荷発生層上に保護層が積層された電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該保護層に含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
- 前記電子写真感光体が、導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含む単一感光層を有する単層型電子写真感光体であり、分散されたアクリル変性ポリオルガノシロキサンを該感光層に含有させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子写真感光体の製造法。
- 感光体の感光層に含有されるアクリル変性ポリオルガノシロキサンの平均粒径が1μm以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
- 感光体の感光層に含有されるアクリル変性ポリオルガノシロキサンが粒径1.0μm以下の粒子が95%以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の電子写真用感光体の製造法。
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