JP4070810B2 - タンパク質キナーゼcの阻害剤としての縮合イソインドロン - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は縮合アリールおよびヘテロアリールの縮合したイソインドール−2−および−2,4−ジオン(以下、「縮合イソインドロン」という)に関する。本発明はまた、これら化合物の製法、および該化合物の使用法に関する。
発明の背景
本明細書に記載の刊行物を出典明示により本明細書の一部とする。
「K-252a」と称される微生物由来の物質の有する種々の機能的活性のため、該物質は過去数年にわたって著しい注目を浴びてきた。K-252aはインドロカルバゾール・アルカロイドであり、初めは、ノコルジオシス種(Nocordiosis sp.)培養物から単離された(Kase,Hら、39 J.Antibiotics 1059, 1986)。K-252aは、タンパク質キナーゼC(「PKC」)およびtrkチロシンキナーゼを含む、数種の酵素の阻害剤である。K-252aの報告されている機能的活性は、例えば、腫瘍阻害作用(米国特許第4877776号および第5063330号;欧州公開第238011号(Nomatoの名称にて));抗殺虫活性(米国特許第4735939号);炎症の阻害活性(米国特許第4816450号);神経細胞の関連する疾患の治療(WIPO公開WO94/02488(Cephalon,Inc.および協和発酵株式会社の名称で1994年2月3日付けで公開)など、多種多様である。
報告されているインドロカルボゾールは共通する属性を幾つか有する。特に、インドロカルボゾールの各々は、ビス−インドール複素環基を有する。スタウロスポリン(Staurosporine(ストレプトマイセス種(Streptomyces sp.)から由来))およびK-252a(ノコルジオシス種から由来)は、各々、さらに2個のN-グリコシド結合(インドールの窒素に結合)を介して結合した糖基を有する。K-252aおよびスタウロスポリンは、長期にわたり、その治療薬としての用途について研究されてきた。インドロカルボゾールは、一般に、脂肪親和性であり、比較的容易に生物膜を交差し、タンパク質物質と異なり、インビボにおける半減期がより長期にわたる。
K-252aはこのような種々のおよび有用な活性を有するが、該化合物の欠点は、微生物を起源とするため、発酵工程を経て培養培地から誘導されなければならないことである。近年、K-252aの総合的な合成方法がある文献で報告されたが、その方法は商業的に用いるのに実用的ではない(Wood,J.ら、J.Am.Chem.Soc.1995, 117, 10413)。したがって、K-252aの所望の機能的活性を有し、化学的合成法を用いて容易に得ることのできる化合物は、現在利用可能なインドロカルバゾール化合物よりも明確な利点を提供するものである。
発明の要約
本発明の特徴は、本明細書中にて「縮合イソインドロン」と称される化合物を提供することにある。これらの化合物は生物学的に活性である。縮合イソインドロンは、新規に化学的に合成できる非インドール含有化合物である。
本発明の縮合イソインドロンは、12−または13−位(Porterら、57 J. Org.Chem.2105,1992に示されるアルファベット式環表示を参考のために利用する)に窒素を含まない点でインドロカルバゾールと異なる。加えて、該縮合イソインドロンは、2個のN−グリコシド結合を介して結合している糖基を含んでいない。これらの化合物はそのような糖基を有しないため、合成を容易に行うことができる。微生物を起源としないこれらの非インドール含有化合物が容易に合成され、その化合物が、これまでのところ、ある種のインドロカルボゾールでのみ観察される広範囲の用途に用いることのできる生物学的活性を有することは有益かつ驚くべきことである。
本発明の縮合イソインドロンは、以下の一般式(式I):
Figure 0004070810
で示される。好ましい縮合イソインドロンは、式II:
Figure 0004070810
で示される。構成因子は以下に詳細に記載する。式Iおよび式IIの両方の、CおよびE環における、構成因子「X」は窒素以外の基である。
ラクタム・アイソマーの製法を含め、好ましい合成経路をさらに本明細書にて記載する。
縮合イソインドロンは、種々の用途、例えば、単独でまたは神経向性因子および/またはインドロカルボゾールを組み合わせて神経系統の細胞の機能および/または生存の強化;タンパク質キナーゼC(PKC)の阻害;およびtrkチロシンキナーゼ活性の阻害に用いることができる。後の活性は、前立腺の癌症状を含め、癌細胞の増殖を阻害することの有用性を示唆するものである。これらの種々の活性のため、本発明の化合物は、研究および医療分野を含め、種々の分野にて有用性がある。
詳細な記載
I.図面の簡単な記載
図1は、縮合イソインドロン誘導体I-1およびI-2の脊髄ChAT活性に対する作用を示すグラフである。
図2は、縮合イソインドロンが基底前脳にてChAT活性を増進することを示すグラフである。
図3は、ビス−インデン誘導体を合成するためのスキームを示す。
図4は、縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図5は、Xが−C(=O)−である縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図6は、1−インダノンから縮合イソインドロン(X=カルボニル)を合成するためのスキームを示す。
図7は、2個のカルボニル基を有する縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図8は、マイケル反応を用いて縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図9は、ウィッチッヒ反応を用いて選択された縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図10は、X−ビス−アルキル化縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図11は、B環複素環式縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図12は、B環およびF環ビス−複素環式縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
図13は、ビス−ベンゾチアフェン誘導体を合成するためのスキームを示す。
図14は、インデニル−ベンゾチアフェン誘導体を合成するためのスキームを示す。
図15は、アセチレンジカルボキシレートとのディールス−アルダー反応を用いて縮合イソインドロンを合成するためのスキームを示す。
II.縮合イソインドロン
本発明の特徴は、式I:
Figure 0004070810
[式中、
B環およびF環は、独立して、
(a)3個までの炭素原子が窒素原子と置換されている6員の炭素環式芳香族環;
(b)5員の炭素環式芳香族環;および
(c)5員の炭素環式芳香族環であって:
(1)1個の炭素原子が酸素、窒素または硫黄原子により置換されている環であるか;または
(2)2個の炭素原子が窒素と硫黄原子で、または窒素と酸素原子で置換されている環
からなる群より選択され;
R1はH;炭素数1〜4のアルキル;アリール;アリールアルキル;ヘテロアリール;ヘテロアリールアルキル;COR9(ここで、R9は、炭素数1〜4のアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択される);−OR10(ここで、R10は、Hおよび炭素数1〜4のアルキルからなる群より選択される);−CONH2;−NR7R8;−(CH2)nNR7R8および−O(CH2)nNR7R8(ここで、nは1−4である)からなる群より選択され、
(a)R7およびR8は、独立して、Hおよび炭素数1〜4のアルキルからなる群より選択されるか;または
(b)R7およびR8は、一緒になって、式:−(CH2)2−X1−(CH2)2−で示される連結基を形成し(ここで、X1は、−O−、−S−および−CH2−からなる群より、選択される);
A1およびA2は、一対にて、H,H;H,−OR11(ここで、R11はH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数6〜10のアリールまたはヘテロアリールである);H,−SR11;H,−N(R11)2;=O;=S;および=NR11からなる群より選択され、ここで、A1およびA2は一緒になって二重結合原子とすることができる;
B1およびB2は、一対にて、H,H;H,−OR11;H,−SR11;H,−N(R11)2;=O;=S;および=NR11からなる群より選択され、ここで、B1およびB2は一緒になって二重結合原子であってもよい;ただし、A1とA2およびB1とB2の対の少なくとも1つは=Oである;
Xは、各位置で、独立して
(a)炭素数1〜3の非置換アルキレン;
(b)R2で置換されている炭素数1〜3のアルキレンであり、ここでR2は:
(1)OR10;−SR10;R15(ここで、R15は炭素数1〜4のアルキルである);フェニル;ナフチル;炭素数7〜15のアリールアルキル;H;−SO2R9;−CO2R9;−COR9;炭素数1〜8のアルキル、アルケニルおよびアルキニルであり、ここで
(i)炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、各々、置換されていないか;または
(ii)炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、各々、1ないし3個の炭素数6〜10のアリール;ヘテロアリール;F;Cl;Br;I;−CN;−NO2;OH;−OR9;−O(CH2)nNR7R8(ここで、nは1〜4である);−OCOR9;−OCONHR9;o−テトラヒドロピラニル;NH2;−NR7R8;−NR10COR9;−NR10CO2R9;−NR10CONR7R8;−NHC(=NH)NH2;−NR10SO2R9;−S(O)yR11(ここで、yは1または2である);−SR11;−CO2R9;−CONR7R8;−CHO;COR9;−CH2OR7;−CH=NNR11R12(ここで、R12はH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数6〜10のアリールおよびヘテロアリールからなる群より選択される);−CH=NOR11;−CH=NR9;−CH=NNHCH(N=NH)NH2;−SO2NR12R13(ここで、R13はH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数6〜10のアリールおよびヘテロアリールからなる群より選択されるか、またはR12とR13は一緒になって連結基を形成する);−PO(OR11)2;−OR14(ここで、R14はカルボキシル基のヒドロキシル基を除去した後のアミノ酸の残基である)からなる群より選択される置換基で置換されており;
(2)炭素数5〜7の単糖類(ここで、単糖類の各ヒドロキシル基は、独立して、置換されていないか、またはH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシまたは炭素数1〜4のアルコキシにより置換されている)
からなる群より選択され;
(c)−CH=CH−;−CHOH−CHOH−;−O−;−S−;−S(=O)−;−S(S=O)2−;−C(R10)2−;−C=C(R2)2;−C(=O)−;−C(=NOR11)−;−C(OR11)(R11)−;−C(=O)CH(R15)−;−CH(R15)C(=O)−;−C(=NOR11)CH(R15)−;−CH(R15)C(=NOR11)−;CONR15;NR15CO;−CH2Z−(ここで、Zは−CR11;−Z−CH2−;−CH2ZCH2−;−O−;−S−;−C(=O)OR11;−C(=NOR11);および−NR11である)からなる群より選択される官能基
からなる群より選択され;
R3、R4、R5およびR6は、各々、独立して、H;アリール;ヘテロアリール;F;Cl;Br;I;−CN;CF3;−NO2;OH;−OR9;−O(CH2)nNR7R8;−OCOR9;−OCONHR9;NH2;−CH2OH;−CH2OR14;−NR7R8;−NR10COR9;−NR10CONR7R8;−SR11;−S(O)yR11(ここで、yは1または2である);−CO2R9;−COR9;−CONR7R8;−CHO;−CH=NOR11;−CH=NR9;−CH=NNR11R12;−(CH2)nSR9(ここで、nは1〜4である);−(CH2)nS(O)yR9;−CH2SR15(ここで、R15は炭素数1〜4のアルキルである);−CH2S(O)yR14;−(CH2)nNR7R8;−(CH2)nNHR14;炭素数1〜8のアルキル、アルケニル、アルキニルからなる群より選択され、ここで
(a)炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、各々、置換されていないか;または
(b)炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニルは、各々、1ないし3個の炭素数6〜10のアリール;ヘテロアリール;F;Cl;Br;I;−CN;−NO2;OH;−OR9;−O(CH2)nNR7R8;−OCOR9;−OCONHR9;o−テトラヒドロピラニル;NH2;−NR7R8;−NR10COR9;−NR10CO2R9;−NR10CONR7R8;−NHC(=NH)NH2;−NR10SO2R9;−S(O)yR11(ここで、yは1または2である);−SR11;−CO2R9;−CONR7R8;−CHO;COR9;−CH2OR7;−CH=NNR11R12;−CH=NOR11;−CH=NR9;−CH=NNHCH(N=NH)NH2;−SO2NR12R13;−PO(OR11)2;−OR14;または炭素数5〜7の単糖類(ここで、該単糖類のヒドロキシル基は、各々、独立して、置換されていないか、またはH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数2〜5のアルキルカルボニルオキシまたは炭素数1〜4のアルコキシで置換されている)で置換されている]
で示される縮合イソインドロンにある。
本発明の好ましい化合物は、式II:
Figure 0004070810
で示される縮合イソインドロンである。
好ましくは、A1およびA2は、H,H;H,OH;および=Oからなる群より一対で選択され;B1およびB2は、H,H;H,OH;および=Oより一対で選択される;ただし、A1およびA2またはB1およびB2は=Oである。
好ましくは、R1はHである。R1がCOR9であって、R9がアリールである場合、好ましくはR9はフェニルまたはナフチルである。
好ましくは、Xは、いずれか一方で、または両方の位置で、炭素数1〜3の非置換アルキレン、−O−または−S−である。XがR2置換基を有する場合、好ましいR2基はOR10である。R2基が炭素数7〜14のアリールアルキルである場合、好ましくはその基はベンジルである。R2がアルキル、アルケニルまたはアルキニルである場合、炭素数1〜4のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであることが好ましい。R2が置換アルキル、アルケニルまたはアルキニルであって、置換基がアリールである場合、そのアリールはフェニルまたはナフチルであることが好ましい。R2上の置換基が−S(O)yR11であって、R11がアリールである場合、好ましくはR11はフェニルまたはナフチルである。R2上の置換基が−CH=NNR11R12または−SO2NR12R13であって、R12およびR13がアリールである場合、その基はフェニルまたはナフチルであるのが好ましい。R12およびR13が一緒になって連結基を示す場合、好ましくは連結基は−(CH2)2−X1−(CH2)2−である;ここでX1は−O−;−S−;および−CH2−からなる群より選択される。
好ましくは、R3、R4、R5およびR6はHである。R3、R4、R5およびR6の少なくとも1つがアリールである場合、その基は炭素数6〜10のアリールであることが好ましく;フェニルまたはナフチルであることがより好ましい;ただし、R3またはR4のいずれかはHであり、R5またはR6のいずれかはHである。R3、R4、R5およびR6の少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル、アルケニルまたはアルキニルである場合、それは炭素数1〜4のアルキル、アルケニルまたはアルキニルであることが好ましい;ただし、R3またはR4のいずれかはHであり、R5またはR6のいずれかはHである。
本明細書にて数値が限定されている場合はいつでも、その範囲は包括的なものである。例えば、「炭素数1〜4」は、数値1、2、3および4を含む。特記しない限り、「アリール」または「ヘテロアリール」なる語を本明細書にて用いる場合はいつでも、アリールまたはヘテロアリール基は置換されていてもいなくてもよいと認識すべきである。
R14の定義中に用いられている「アミノ酸」なる語は、アミノ基とカルボキシル基の両方を有する基を意味する。それはカルボキシル基に隣接する炭素上にアミノ官能基を有する、カルボン酸としての通常の意義の「α−アミノ酸」を包含する。α−アミノ酸は、天然のまたは非天然のものとすることができる。アミノ酸はまた、ペプチド結合にて結合している2つのアミノ酸と本明細書にて定義される「ジペプチド」を包含する。かくして、ジペプチドの構成要素はα−アミノ酸に限定されるものではなく、アミノ基とカルボキシル基の両方を含有するいずれの分子とすることもできる。α−アミノ酸、リシル−β−アラニンなどのジペプチドおよび炭素数2〜8のアミノアルカン酸、例えば、3−ジメチルアミノブチル酸が好ましい。
縮合イソインドロン誘導体の医薬上許容される塩もまた、本明細書に開示されている化合物の範囲内にある。本明細書にて用いる「医薬上許容される塩」なる語は、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩などの無機酸付加塩、または酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩およびクエン酸塩などの有機酸付加塩を意味する医薬上許容される金属塩として、例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩および亜鉛塩が挙げられる。医薬上許容されるアンモニウム塩として、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩が挙げられる。医薬上許容される有機アミン付加塩として、例えば、モルホリンおよびピペリジンとの塩が挙げられる。医薬上許容されるアミノ酸付加塩として、例えば、リシン、グリシンおよびフェニルアラニンとの塩が挙げられる。
本発明にて得られる化合物は、医薬上許容される非毒性の賦形剤および担体と混合することにより医薬組成物に処方できる。前記したように、かかる組成物は特に液体溶液または懸濁液の形態にて、非経口投与に;または特に錠剤またはカプセルの形態にて経口投与に;または特に散剤、点鼻剤もしくはエアロゾルの形態にて経鼻投与に;または例えば、経皮パッチを介する皮膚投与に使用するように調製してもよい。
組成物は単位投与形にて投与されるのが都合がよいが、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、Easton、PA、1980)に記載されているような、医薬分野にて周知のいずれの方法で製造してもよい。非経口投与用処方は、通常の賦形剤として、滅菌水または食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、油および植物起源の硬化ナフタレンなどを含有してもよい。特に、生物適合性の、生物分解性のラクチドポリマー、ラクチド/グリコライドコポリマーまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーが活性化合物の放出を制御する有用な賦形剤である。これらの活性化合物について他に可能性のある有用な非経口デリバリー系は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植性注入系およびリポソームを包含する。吸入投与用処方は、賦形剤として、例えば、ラクトースを含有するか、または例えば、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリココール酸塩およびデオキシコール酸塩を含む水溶液、もしくは点鼻剤の形態にて投与するための油状溶液、もしくはゲルとして経鼻塗布するためのものであってもよい。非経口投与用処方はまた、バッカル投与用にグリココール酸塩を、経直腸投与用にサリチル酸塩を、または膣投与用にクエン酸を含んでいてもよい。経皮パッチ用処方は、好ましくは、脂肪親和性エマルジョンである。
本発明の物質は医薬中に単一活性剤として用いることができ、または他の活性成分、例えば、疾患または障害における神経生存または軸索再生を促進する他の成長因子と組み合わせて癌治療またはHIV感染治療に用いることができる。
医薬組成物中の本明細書に記載されている化合物の濃度は、投与すべき薬物の投与量、使用する化合物の化学的特性(例えば、疎水性)および投与経路を含め、種々の要素に応じて変化するであろう。概して言えば、本発明の化合物は、非経口投与で約0.1ないし10%w/vの化合物を含有する水性生理緩衝液にて提供することができる。典型的な用量範囲は体重1kg当たり一日に約1μgないし約1gであり;好ましい用量範囲は体重1kg当たり一日に約0.01mgないし100mgである。投与すべき薬物の好ましい用量は、疾患または障害の型および進行の度合い、個々の患者の全体としての健康状態、選択した化合物の相対的な生物学的効能、賦形剤の処方、およびその投与経路などの変数に依存するであろう。
III.縮合イソインドロンの有効性
縮合イソインドロンは、研究および医療の両方の分野を含め、種々の環境にて有用性のある重要な機能性薬理活性が証明された。通常、縮合イソインドロンの活性は栄養因子応答細胞の機能および/または生存に対して正の効果を示し、酵素的活性、すなわち、trkおよびPKCの阻害を示す。
栄養因子応答細胞、例えば、神経系統細胞の機能および/または生存に対する効果は、以下に示すアッセイのいずれかで確立することができる:(1)培養した脊髄のコリンアセチルトランスフェラーゼ(「ChAT」)アッセイ;または(2)培養した基底前脳ニューロン(「BFN」)ChAT活性アッセイ。酵素活性の阻害は、PKC阻害アッセイおよびtrkチロシンキナーゼ阻害アッセイを用いて測定することができる。
本明細書にて用いるのに、「機能」および「生存」なる語を修飾するのに用いる場合の「効果」なる語は、正または負の変換または変化を意味する。正の効果は、本明細書にて、「強化」または「強化すること」ということができ、負の効果は「阻害」または「阻害すること」ということができる。
本明細書にて用いるのに、「強化する」または「強化すること」なる語は、「機能」または「生存」なる語を修飾するのに用いる場合、縮合イソインドロンの無い場合の細胞と比較して、縮合イソインドロンの存在が栄養因子応答細胞の機能および/または生存に対して正の効果を有することを意味する。例えば、限定されるものではないが、例えば、コリン作動性ニューロンの生存に関して、縮合イソインドロンを付与していないコリン作動性ニューロン母体と比較して場合に、縮合イソインドロンで処理した母体が非処理の母体よりも相対的に長い間、機能性を有するならば、該縮合イソインドロンは(例えば、損傷、病状、変性症状または自然経過により)死ぬ危険性のあるコリン作動性ニューロン母体の生存を強化する証拠となる。
本明細書にて用いるのに、「阻害する」および「阻害」は、所定の物質の特定応答(例えば、酵素活性)が縮合イソインドロンの存在下で相対的に減少することを意味する。
本明細書にて用いるのに、「ニューロン」、「神経系統の細胞」および「神経細胞」なる語は、限定されるものではないが、単一または複数の伝達物質および/または単一または複数の機能を有する神経型の異種母体を包含する;好ましくは、コリン作動性および感覚ニューロンである。本明細書にて用いるのに、「コリン作動性ニューロン」なる語は、神経伝達物質がアセチルコリンである中枢神経系(CNS)および末梢神経系(PNS)のニューロン、例えば、基底前脳および脊髄ニューロンを意味する。本明細書にて用いるのに、「感覚ニューロン」なる語は、例えば、皮膚、筋肉および関節からの環境的信号(例えば、温度、行動)に応答するニューロン、例えば、DRGからのニューロンを包含する。
本明細書にて定義する「栄養因子−応答細胞」は、栄養因子が特異的に結合しうるレセプターを有する細胞である;例えば、ニューロン(例えば、コリン作動性ニューロンおよび感覚ニューロン)および非神経細胞(例えば、単球および新生細胞)が挙げられる。
本明細書にて用いるのに、「trk」なる語は、trkA、trkBおよびtrkCからなる高親和性神経トロフィンレセプターのファミリーおよび神経トロフィンが結合しうるタンパク質と結合する他の膜をいう。
A.栄養因子応答細胞の機能および/または生存に対する効果
開示されている縮合イソインドロンを用い、神経系統の細胞の機能および/または生存を強化することができる。これに関連して、縮合イソインドロンを、個々にまたは他の縮合イソインドロンと一緒に、あるいは意図する細胞を機能および/または生存させる能力を示すインドロカルボゾールなどの有効な分子と組み合わせて用いることができる。
種々の神経学的障害は、死亡しており、損傷し、または機能的に死ぬ危険性のある、軸策変性等を受けている、神経細胞により特徴付けられる。これらの障害は、限定されるものではないが、アルツハイマー病;運動ニューロン障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症);パーキンソン病;脳血管障害(例えば、発作、虚血症);ハンチントン症;AIDS痴呆症;癲癇;多発性硬化症;糖尿病ニューロパシーを含め、末梢ニューロパシー(例えば、化学療法関連の末梢ニューロパシーにおけるRDGニューロンに影響を及ぼすもの);興奮性アミノ酸により誘発される障害;脳または脊髄の振盪性または穿通損傷に付随する疾患を包含する。
本明細書の実施例にて示すように、縮合イソインドロンが神経系統細胞の機能および/または生存を強化する能力は、(1)脊髄ChAT活性アッセイ;または(2)基底前脳ChAT活性アッセイを用いることにより測定することができる。
ChATは神経伝達物質のアセチルコリンに触媒作用を及ぼし、機能的コリン作動性ニューロンについての酵素的マーカーであると考えられる。機能性ニューロンもまた生存能を有している。ニューロン生存は比摂取量および生ニューロンによる色素(例えば、カルセイン(calcein)AM)の酵素変換量を定量することにより検定される。
その様々な有用性のため、本明細書に開示の縮合イソインドロンは種々の分野に有用性を見出すことができる。化合物は神経細胞の生存、機能、同定のイン・ビトロ実験の開発に、またはその縮合イソインドロンの活性と同様の活性を有する他の合成化合物のスクリーニングに用いることができる。研究分野にて化合物を利用し、機能応答に付随する分子標的を調査、特定および測定することができる。例えば、特異的細胞機能(例えば、有糸分裂誘発)に付随する縮合イソインドロンを放射性標識することにより、縮合イソインドロンが結合する標的の存在を同定し、単離し、特徴化のために精製することができる。
ニューロンの変性、死亡または非機能化は、限定されるものではないが、アルツハイマー病;運動ニューロン障害(例えば、ALS);パーキンソン病;脳血管障害(例えば、発作、虚血症);ハンチントン症;AIDS痴呆症;癲癇;多発性硬化症;脳または脊髄の振盪性または穿通損傷;末梢ニューロパシー;および興奮性アミノ酸により誘発される障害を含む、多くのヒト神経学的障害の特徴である。開示されている化合物は、例えば、ChAT活性の強化において有用性を示し、例えば、ChAT活性の減少またはDRGニューロンの死亡に伴う障害の治療における該化合物の有用性は本発明の範囲内にある。
実施例III(A)(1):脊髄ChAT活性アッセイ
前記したように、ChATは機能的コリン作動性ニューロンについての特異的な生化学的マーカーである。コリン作動性ニューロンは、海馬形成、嗅核、脚間核、皮質、扁桃、視床の一部に取り込まれた主コリン作動物を示す。脊髄において、運動ニューロンはChATを含有するコリン作動性ニューロンである(Phelpsら、J.Comp.Neurol.273:459−472(1988))。ChAT活性を利用して神経トロフィン(例えば、NGFまたはNT−3)のコリン作動性ニューロンの生存および/または機能についての作用を実験した。ChATアッセイはまたコリン作動性ニューロン中のChAT濃度の調節を示すのに役立つ。
縮合イソインドロン誘導体は、分離したラット胎芽脊髄培養アッセイにてChAT活性を増加させた(図1)。細胞を2〜3時間平板培養し、対照組織培養壁に付着させた後、化合物I-2は対照培養(縮合イソインドロンで未処理)よりもChAT活性を150%増加させた。これらのアッセイにおいて、縮合イソインドロンを分離した脊髄培養物に直接付加した。本発明の化合物は脊髄ChAT活性を増加させた。ChAT活性を対照活性の少なくとも120%増加させる化合物は活性であると考えられる。ChAT活性の増加は、縮合イソインドロンを一回添加した後に観察された。該化合物を同じ日に加え、分離した脊髄細胞の培養を始めた。ChAT活性の増加は48時間後に検出できた。
方法:胎児ラットの脊髄細胞を分離し、実験を以下の記載に従って行った(Smithら、J. Cell Biology 101:1608−1621(1985);Glicksmanら、J.Neurochem.61:210−221(1993))。分離した細胞をラット(胎芽形成14−15日)から切り離した脊髄から標準的トリプシン解離法によって調製した(Smithら、J.Cell Biology 10:1508−1621(1985)。0.05%ウシ血清アルブミン(BSA)を補足した血清不含N2培地中のポリ−1−オルニチン被覆プラスチック組織培養壁に細胞を6x105個の細胞/cm2で平板培養した(Bottensteinら、PNASUSA 76:514−517(1979))。5%CO2/95%空気の加湿雰囲気下、37℃で48時間、培養物をインキュベートした。McManamanらおよびGlicksmanら(McManamanら、Developmental Biology 125:311−320(1988);Glicksmanら、J.Neurochem.61:210−221(1993))に従って、Fonnum法(Fonnum、J.Neurochem.24:407−409(1975)の変法を用い、ChAT活性をイン・ビトロにて2日後に測定した。
実施例III(A)(2):基底前脳ChAT活性アッセイ
縮合イソインドロン誘導体を基底前脳培養物のChAT活性を増加させる能力について試験した。縮合イソインドロンは基底前脳培養にてChAT活性を増加させることが判明した(図2)。対照培養物には縮合イソインドロンを付加しなかった。
基底前脳ChAT活性の予備アッセイにて、化合物I-3およびI-4はChAT活性を増加させなかった。
方法:基底前脳をラット胎芽(胎芽形成より17日または18日)より取り出し、細胞を中性プロテアーゼ(DispaseTM、Collaborative Research)で解離させた。ニューロンをポリ−1−オルニチンおよびラミニン被覆プレートにて5x104個の細胞/壁(1.5x105個の細胞/cm2)の密度で平板培養した。0.05%BSAを含む血清不含N2培地中、5%CO2/95%空気の加湿雰囲気下、37℃で細胞を培養した。ChAT活性を、実施例III(A)(1)に記載されているように、ChATアッセイを用いて平板培養した後、5日間評価した。
B.酵素活性の阻害
インドロカルバゾールK-252aの、例えば、PKCの酵素活性を阻害するの能力は周知であり、詳細に記載されている。PKC活性の阻害は、以下に示す文献に記載されているように、炎症性疾患、アレルギーおよび癌症状を含む、種々の病状を阻害、媒介、軽減および/または防止する方法として示唆されている:米国特許第487776号および第4923986号;公開欧州特許明細書第558962号(E.R.Squibb & Sons,Inc. の名称にて1993年9月8日付で公開);Tadka,Tら、170(3)Biochem.Biophys.Res.Comm.1151、1980。trkが構成要素であるチロシンキナーゼは、多くのキータンパク質にてATPのγ−ホスフェートがチロシンのヒドロキシル基に変わることに触媒作用を及ぼす酵素である。活性化タンパク質のチロシンキナーゼは公知のオンコ遺伝子の略半分からなる生成物として同定された(Chang,C-J & Geahlen,R.L.55(11)J.Nat.Prods.1529、1992)。タンパク質キナーゼの阻害を介して種々の癌症状を阻害、介在、軽減および/または防止することは前記と同じである(Chang,C-J、前掲を参照のこと)。
タンパク質キナーゼ活性とある種の疾患および障害(例えば、癌)の間に重要な相関関係があるため、縮合イソインドロンはまた、研究および医療の両分野にて有用性を示す。例えば、研究の分野にて、タンパク質キナーゼ(例えば、PKC、trkチロシンキナーゼ)の阻害が関連した障害および疾患の作用機構にて果たす役割の理解をさらに容易にするために、該化合物をアッセイおよび実験の開発にて用いることができる。医療分野にて、これらの酵素活性を阻害する化合物を用いて、癌などの障害に関するこれら酵素の有害な結論を阻害することができる。
データは、以下のアッセイにより測定される、開示された縮合イソインドロンを用いる酵素活性の阻害を示す:(1)PKC活性阻害アッセイ;(2)trkチロシンキナーゼ活性阻害アッセイ。
実施例III(B)(1):PKC活性阻害アッセイ
縮合イソインドロンはキナーゼCの活性を阻害した(表VI)。タンパク質キナーゼCアッセイは既に開示されている(Murakataら、米国特許第4923986号;Kikkawaら、J.Biol.Chem.257:13341−13348(1982))。該アッセイを数種類の濃度の縮合イソインドロンを用いて行った。タンパク質キナーゼCが50%阻害される濃度(IC50)を測定した。
Figure 0004070810
実施例III(B)(2):trkAチロシンキナーゼ活性阻害アッセイ
ELISAで決定されるように、縮合イソインドロンはtrkAチロシンキナーゼ活性を阻害した。trkAは神経トロフィンの高親和性レセプターである。縮合イソインドロンを、予めホスホリル化基質(ホスホリパーゼC−γ(PLCγ)/pGEX融合タンパク質)を被覆した96−ウェルのマイクロタイタープレートに加えた(Rotinら、11 EMBO J.559、1992)。ついで、これらの化合物をtrkAチロシンキナーゼによる基質のホスホリル化を阻害する能力について試験した。
Figure 0004070810
方法:96−ウェルのELISAプレート(Nunc)を、20mM Tris(pH7.6)、137mM NaClおよび0.02%NaN3中、100μl/ウェルのホスホリル化基質(40μg/ml)(PLCγ/pGEX融合タンパク質)を用い、4℃で一夜被覆した。ついで、プレートをTBST(20mM Tris(pH7.6)、137mM NaClおよび0.2%Tween−20で3回洗浄し、つづいてTBST中3%ウシ血清アルブミン(BSA)を用い37℃で1時間遮断した。プレートをTBSTで3回洗浄し、つづいてTBS(Tween−20不含のTBST)で2回洗浄した。ついで、縮合イソインドロンを反応混合物(全容量100μL中、50mM HEPES、pH7.4、5mM MnCl2、140mM NaCl、16μM ATPおよび15ng trkA)に種々の濃度で添加した。負対照として、100mM EDTAを反応溶液中でインキュベートした。ついで、プレートを37℃で15分間インキュベートした。検出抗体の、モノクローナルホスホチロシン抗体(UBI)を、TBST中、1:2000希釈度で加え、37℃で1時間インキュベートした。ついで、プレートをTBSTで3回洗浄し、つづいて37℃で1時間、アルカリ性ホスファターゼ標識ヤギ抗マウスIgG(TBST中、1:2000(Bio-Rad))と一緒にインキュベートした。TBSTで3回洗浄した後、つづいてTBSで2回洗浄し、アルカリ性ホスファターゼについての基質としてNADPH、およびジアホラーゼとアルコール性デヒドロゲナーゼの結合反応物(GIBCO−BRL ELISA増幅系)を用いることにより着色生成物を得た。着色生成物をマイクロプレート読取り機(Biotek)の490nmで読み取った。
IV.合成方法の一般的記載
本発明の化合物を以下に記載の一般的方法により調製する。化合物(X=CH2,CH2)を図3にて概説する。公知の2−2’ビインデン(3、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(2))を、2−(トリブチルスタンニル)インデン(2)を2−ブロモインデン(1)とパラジウム触媒で結合させることによる改良方法で調製した。文献方法(J.Org.Chem.、1982、47、705)を用いて調製した2−ブロモインデン(1)を用いて2−(トリブチルスタンニル)インデン(2)(実施例IV(1))(図3)を調製した。アリール置換の2−ブロモインデンは、インデンまたは1−もしくは2−インダノンから、有機合成の分野における当業者であれば調製できる。
一般式3の化合物をマレイミドとの付加環化反応(方法1)に、好ましくは160−200℃の温度で付し、対応するテトラヒドロイソインドリル−ジオン4(R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(3))を形成する。2−(2−インデニル)インデンの付加環化反応は、今までに記載されていない。ジエンとマレイミドとの付加環化反応はよく知られている(例えば、J.Chem.Soc.、Perkin Trans.1、1990、2475を参照のこと)。実施例IV(3)を、例えば、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、活性炭上パラジウム、硫黄または亜硝酸ナトリウムを用いる常法(米国特許第4912107号およびそこに示される引用文献)に従って脱水素し、対応する芳香族イソインドロン−イミド誘導体5(実施例IV(4))(化合物I-1、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H)を得る。一般式6のラクタム(実施例IV(5)、化合物I−2、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H)は、イミド5を還元剤(例えば、亜鉛アマルガム、塩化水素気体、酢酸中亜鉛アマルガム、氷酢酸中亜鉛または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物還元剤)で還元することにより調製することができる。R2、R3、R4、R5またはR6がH以外の基である場合には、ラクタム位置異性体(一般式6および7)が形成される。ラクタム位置異性体は、再結晶またはクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの標準的方法により分離することができる。イミドは、ホウ水素化物または水素化アルミニウムなどの水素化還元剤によりヒドロキシラクタム(8、図3)(A1,A2またはB1,B2=H,OH)に還元できる(米国特許第4192107号および第4923986号ならびにその中の引用文献)。選られたヒドロキシル基は、アルコキシまたはチオアルキル基に容易に変換される(米国特許第4923986号)。A1,A2またはB1,B2が一緒になってSまたはNを表す誘導体は、欧州特許出願第0508792A1の記載に従って製造される。
方法II(図15)において、適当なジエンをアセチレン・ジカルボキシレート(R=低級アルキル)で付加環化反応に付し、一般式39の対応する芳香族化合物を得る。イソベンゾフラン(一般式40)は、エステルを求核分子(例えば、LiI、NaCN、NaSCH3、NaSCNなど)で脱アルキル化し、つづいて無水酢酸を用いて無水物形成を行うことにより得ることができる。一般式41のイミドは、式40のイソベンゾフランのイミドを1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンおよびメタノールと反応させることにより製造できる(Tetrahedron Lett. 1990、31、5201−5204)。一般式42のラクタムは、イミド41を還元剤(例えば、亜鉛アマルガム、塩化水素気体、酢酸中亜鉛アマルガム、氷酢酸中亜鉛または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物還元剤)で還元することにより調製することができる。R2、R3、R4、R5またはR6がH以外の基である場合あるいはXが同じものでない場合には、ラクタム位置異性体(一般式42および43)が形成される。ラクタム位置異性体は、再結晶またはクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの標準的方法により分離することができる。イミドは前記したようにヒドロキシラクタム(44、図15)に還元できる。
詳細には、X=Sである化合物は、図13に概説されている。2,2’−ビベンゾチアフェン(25、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(6))は、化合物3と同じ方法で調製した。一般式25の化合物と、好ましくは180−200℃の温度でアセチレンジカルボン酸ジエチルとの付加環化反応に付し、対応するカルボエトキシジベンゾチアフェン(26、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(7))を形成する。2,2’−ビスベンゾチアフェンの付加環化は今までに報告されていない。カルボエトキシジベンゾチアフェンは、該エステルを求核分子(例えば、LiI、NaCN、NaSCH3、NaSCNなど)で脱アルキル化し、つづいて無水酢酸を用いて無水物形成を行うことにより対応するイソベンゾフラン(27、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(8))に変換できる(方法II)一般式28のイミド((化合物I-3)、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(9))は、前記したように、イソベンゾフラン27を1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンおよびメタノールと反応させることにより製造できる(方法II)。一般式29のラクタム((化合物I-4)、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(10))は、イミド28を方法Iに記載したように還元剤で還元することにより調製することができる。イミドは前記したようにヒドロキシラクタム(30、図13)に還元できる。
非対称インデニルベンゾチアフェン(X=S,CH2)の合成は図14に概説されている。2−(2’−インデニル)ベンゾチアフェン(31、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(11))は、化合物3について前記した方法で調製した。一般式31の化合物とアセチレンジカルボン酸ジエチルとの付加環化反応に付し、対応するカルボエトキシジベンゾチアフェン(32、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(12))を形成する。カルボエトキシジベンゾチアフェン32は、前記したように、該エステルを求核分子で脱アルキル化し、つづいて無水酢酸を用いて無水物形成を行うことにより対応するイソベンゾフラン(33、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(13))に変換した。一般式34のイミド((化合物I-5)、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(14))は、図13と同様の方法にて製造した。一般式35のラクタム((化合物I-6)、R1、R2、R3、R4、R5、R6=H;実施例IV(10))は、イミド34を還元剤(例えば、亜鉛アマルガム、塩化水素気体、酢酸中亜鉛アマルガム、氷酢酸中亜鉛または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物還元剤)で還元することにより調製することができる。R2、R3、R4、R5またはR6がH以外の基である場合には、ラクタム位置異性体が形成される。ラクタム位置異性体は、再結晶またはクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの標準的方法により分離することができる。イミドは前記したようにヒドロキシラクタム(37、図14)に還元できる。
一般式II(式中、XがCH2CH2またはCH=CHである)縮合イソインドロン誘導体は、2−ブロモインデンおよび/または2−(トリブチルスタンニル)インデンの代わりに2−ブロモ−または2−(トリブチルスタンニル)−3,4−ジヒドロナフチレン誘導体(図4)を用いる以外、化合物6または7(図3)について記載されている方法により調製する。アリール置換の2−ブロモ−3,4−ジヒドロナフチレンは、有機合成の分野における当業者であれば、1−または2−テトラロンより調製することができる。インデン誘導体を2−ベンゾシクロヘプテン誘導体(J.Am.Chem.Soc.13:1344(1991);J.Org.Chem.44:1342(1979))と置換し、式II(式中、XはCH2CH2CH2である)の縮合イソインドロンを得る。ケトン誘導体(XはC=Oである)は、イミド(5)またはラクタム(6または7)のいずれかを標準的酸化試薬(例えば、SeO2、CrO3、Na2CrO7またはMnO2)を用いて酸化することにより調製してもよい(図5)。また、Xが(C=O,H)である誘導体(11)は、実施例IV(1)に記載の方法により2−(トリブチルスタンニル)インデン−1−オン(10)を調製するのに用いることのできる、2−ブロモインデン−1−オン(9)(J.Org.Chem.、1994、59、3453)で出発して調製することもできる(図6)。同様に、Xが(C=O,C=O)である誘導体(12)は、2−ブロモインデン−1−オン(9)を2−(トリブチルスタンニル)インデン−1−オンと反応させることにより調製することができる(図7)。
XがS、OまたはC=Oなどの他のX基を有する化合物(式II)は、方法I(図4)に記載されているように適当なジエンとマレイミドとの付加環化反応により、または方法II(図15)について記載されている方法により調製することができる。例えば、2−(2−(1−オキソインデニル))インデン(XはC=O,CH2である)、2,2’−(1−オキソ)ビインデン(XはC=O,C=Oである)、2−(2−インデニル)ベンゾチオフェン(XはCH2,Sである)、2−(2−インデニル)ベンゾフラン(XはCH2,Oである)、2,2’−ビベンゾチオフェン(XはS,Sである)、2−(2−ベンゾチエニル)ベンゾフラン(XはS,Oである)は、各々、対応する2−トリブチルスタンニル誘導体を適当な2−ブロモ−アリールまたは−ヘテロアリール誘導体と結合させることにより調製することができる。所望の化合物の調製はまた、例えば、2−(2−ベンゾチエニル)ベンゾフラン(XはS,Oである)または2−(2−ベンゾチエニル)ベンゾチオフェン(XはS,Sである)を、トリフルオロ酢酸またはルイス酸(SnCl4、Et2AlCl)などの酸触媒の存在下でマレイミドと反応させ、一般式13の化合物を得ることにより達成することができる(図8)。触媒、例えば、氷酢酸中Pd(OAc)2またはC2H4Cl2中Pd(OAc)2、テトラクロロ−1,4−ベンゾキノンで処理することにより、これらの化合物を環化し、対応する縮合イソインドロン誘導体14を形成させることができる(図8)。
有機合成の分野の当業者に公知のパラジウム触媒による架橋方法を用い、対応する環状ケトンのビニル−2−(トリフルオロメタンスルホネート)誘導体または適当なアリールまたはヘテロアリール化合物の2−トリフレート誘導体を、前記した適当な錫誘導体と結合させることにより、例えば、図8のXが炭素数1〜3(両端を含む)である、他の誘導体を調製する。
窒素含有のR1が水素により結合している誘導体は、式Iについて記載されているようなR1基に変換することができる(米国特許第4923986号)。
式I(式中、R3、R4、R5またはR6置換基がH以外の基である)の誘導体は、前記の方法を利用し、適宜置換した中間体を用いて出発することにより、または官能基相互変換に関する有機化学の分野における当業者に公知の方法を用いて調製される。
R2置換基を有する誘導体(X基は二重結合オレフィン(式II)である)は、有機合成の分野における当業者によって、Xが(C=O,C=OまたはC=O,H)である誘導体に対するウィッチッヒ関連のオレフィン形成反応より形成することができる(図9)。得られたアルケン(15)は一般構造(16)の化合物に還元することができる(図9)。XがCH2である誘導体は、BuLi、NaNH2またはLiN(iPr)2などの強塩基と反応させ、つづいて適当な親電子物質で処理することにより容易にアルキル化することができる(J.Med.Chem.、1992、35、3919;J.Org.Chem.、1991、56、4499)(図10)。
式Iの縮合イソインドロン(ここで、B環および/またはF環は、E1およびE2について前記したように、独立して、窒素、酸素または硫黄環原子を含有していてもよい)は、炭素環アナログを調製するのに用いられるのと同様の方法により調製できる(図11および図12)。
B環が6員の窒素含有複素環式環(6個のいずれかの位置に窒素がある)である誘導体の調製が図11に概説されている。一般構造式17の化合物をマレイミドとの付加環化反応に付し、一般構造式18の化合物を得る。実施例IV(4)(図3)の製法と類似する方法にて中間体18を脱水素化し、一般構造式19(図11)のイミド誘導体を得る。一般構造式20のラクタム異性体は、一般構造式19のイミド誘導体を亜鉛アマルガム−HCl、亜鉛アマルガム/酢酸または水素化アルミニウムリチウムなどの水素化物還元剤などの還元剤と反応させることにより調製できる。位置異性体は、再結晶またはクロマトグラフィー、例えば、カラムクロマトグラフィーまたはHPLCなどの標準的方法により分離することができる。ホウ水素化物または水素化アルミニウムなどの水素化物還元剤により、イミドはヒドロキシラクタム(ここで、A1,A2またはB1,B2はH,OHである。
B環またはF環が酸素または硫黄含有の5員環である化合物は、インデンの代わりに、各々、フリル−ピロールまたはチエノ−ピロールで出発し、図3および図4に概説されている合成スキームに従って調製することができる。環縮合フリル−ピロールは、前記した確立された文献操作またはその変法を用いて製造できる(Coll.Czech.Chem.Commun.53:1770(1988);Can.J.Chem.56:1429(1978);C.R.Hebd.Seances Acad.Sci.、Ser.C 281:793(1975))。環縮合チエニル−ピロールは、前記した確立された文献操作またはその変法を用いて製造できる(ベルギー特許明細書BE 899925;Ind.J.Chem.20B:271(1981);Can.J.Chem.56:1429(1978);Bull.Soc.Chim.Fr.11−12 pt2:2511(1975);C.R.Hebd.Seances Acad.Sci.、Ser.C 277:1149(1973))。
別法として、B環またはF環が窒素環原子を含有する化合物は、シクロアルカノン縮合のピリジン誘導体(XはC1−C3アルキレンである)で出発して製造できる。シクロアルカノン−ピリジン誘導体の合成は刊行物(J.Med.Chem.36:3381(1993)、Chem Ber.、1970、103、2403)に記載されており、これらの化合物は一般構造式21または22の中間体を調製するのに直接用いることができる(図12)。シクロアルキル−またはシクロアルカノン−ピリジン誘導体縮合環は有機合成の分野における当業者によって環状臭化ビニルに変換することができる。その臭化ビニル中間体は図3および図4に記載の錫架橋方法に付すための適当な基質である。
F環が酸素原子を含有する化合物は、フリル縮合のシクロアルカノンまたはシクロアルケニル誘導体(XはC1−C3アルキレンである)で出発して製造してもよい。F環が硫黄原子を含有する化合物は、シクロアルケニル縮合のチオフェンで出発して製造してもよい。シクロアルキル環縮合のチエニルおよびフリル誘導体は前記した文献操作(Acta Chem.Scand.25:1287(1971);J.Am.Chem.Soc.103:2760(1981))またはその変法を用いて調製してもよい。これらの中間体はフリル−またはチエニル−シクロペンタノンあるいはフリル−またはチエニル−シクロペンテンに変換することができる。また、有機合成の分野における当業者であれば、出発物質を対応する環状臭化ビニルに変えることもできる。その臭化ビニル中間体を用いて、図3および図4に記載の錫架橋法に使用する所望の中間体を得ることもできる。
B環およびF環は共に、図12に示されるように同時にヘテロ原子で置換されていてもよい。中間体23はヘテロ原子置換のB環錫中間体22およびF環ヘテロ原子置換の環状臭化ビニル21(または対応する環状ケトン中間体のトリフレート)より形成することができる。B環およびF環にヘテロ原子を含有するイミドおよびラクタム誘導体は、図3および図4に示される方法により製造することができる。別法として、マイケル付加、つづいて図8に記載のパラジウム触媒の閉環を行い、一般式20(図11)および一般式24(図12)のイミド誘導体を調製してもよい。前記した方法によりイミドを還元すれば、ラクタム異性体が得られる。
実施例IV(1): 2−(トリブチルスタンニル)インデン
Et3N(75ml)に2−ブロモインデン(1.64g、8.4ミリモル)を含有する丸底フラスコに、酢酸パラジウム(II)(304mg、11.4ミリモル)、テトラキス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム(0)(775mg、0.7ミリモル)およびヘキサブチルジ錫(6.4ml、12.7ミリモル)を加えた。反応物を加熱して還流し、TLC(シリカゲル、酢酸エチル:ヘキサン;1:5)でモニター観察した。1時間経過後、出発物質が消費された。反応物を室温に冷却し、ジクロロメタンで希釈し、セライトを介して濾過した。溶媒を減圧下で除去し、化合物をシリカゲルカラム(5%酢酸エチル−ヘキサン)を介して精製し、2−トリブチルスタンニルインデン(4.7g)を無色油(微量のヘキサブチル錫を含む)として得た。該化合物を次の工程にそのままの状態で使用した。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ 0.9(m,15H)、1.2(m,6H)、1.6(m,6H)、3.5(s,2H)、7.10(s,1H)、7.5−7.2(m,4H)
実施例IV(2): 2,2’−ビインデン
還流冷却器を備えた100mlの丸底フラスコに、2−ブロモインデン(1.2g、6.3ミリモル)、2−トリブチルスタンニルインデン(実施例IV(1))(3.4g、8.4ミリモル)およびエタノール(70ml)を加えた。この混合物に、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(422mg、0.63ミリモル)を加えた。反応物を16時間還流温度で攪拌した。反応物を室温に冷却し、ジエチルエーテル(50ml)で希釈し、ついでアルミニウム床を介して濾過した。溶媒を減圧下で濃縮し、生成物をトルエンから再結晶し、2,2’−ビインデン(870mg、60%)を得た。融点238℃(文献の融点=238℃;Chem.Ber.、1988、121、2195)。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ 3.73(s,4H)、6.93(s,2H)、7.30(m,8H);MS(ES+)m/e=231(M+1)
実施例IV(3): 1a,3a,4,7−テトラヒドロインデニル[2,3−c]インデニル[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン
密封式ホウ珪酸塩試験管に、2,2’−ビインデン(実施例IV(2)、98mg、0.4ミリモル)、マレイミド(43mg、0.44ミリモル)、BHT(5mg)およびジクロロメタン(1ml)を添加した。該試験管を密封し、反応物を130℃に24時間か熱した。反応物を室温に冷却し、溶媒を減圧下で濃縮した。粗固体をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、10−75%酢酸エチル−ヘキサン)を介して精製し、白色固体(50mg、38%)を得た。融点244−247℃。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ 3.68(s,4H)、3.80(m,2H)、4.00(bs,2H)、7.24(m,7H)、7.53(d,J=7Hz,2H);
MS(ES+)m/e=328(M+1)
実施例IV(4): 1H−インデニル[2,3−c]−1H−インデニル[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(化合物I-1)
実施例IV(3)(50mg、0.15ミリモル)のトルエン(4ml)中混合物を、固体2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンズキノン(79mg、0.35ミリモル)に一度に加えた。反応物を、窒素下、65−70℃で4時間加熱した。溶液を氷浴中で冷却し、固体を濾過により収集した。粗製沈殿物を冷メタノールで洗浄し、淡黄色固体(28mg、63%)を得た。融点244−247℃。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ 9.17(d,4Hz,2H)、7.55(m.7H)、4.15(s,4H);MS(ES)m/z 346(M+1)
実施例IV(5): 1H−インデニル[2,3−c]−1H−インデニル[2,3−e]−3H−イソインドール−1−オン(化合物I-2)
亜鉛粉(122mg、1.9ミリモル)を水(1ml)に懸濁させ、HgCl2(35mg、0.08ミリモル)を、つづいて4滴の濃塩酸を加えることで亜鉛アマルガムを調製した。この混合物を10分間攪拌し、水層をデカントした。そのアマルガムを水で、ついでエタノールで繰返して洗浄した。
該亜鉛アマルガムをエタノール(5ml)に懸濁させ、化合物I-1(実施例IV(4)、10mg、0.03ミリモル)を加えた。2ないし3滴の濃塩酸を加え、反応物を3時間還流温度で加熱した。加熱して1時間の間に黄色が消滅した。反応物を室温に冷却し、溶液を減圧下で濃縮した。残渣をTHF−酢酸エチル(1:1、10ml)に溶かし、飽和NaHCO3およびNaCl溶液で洗浄し、ついで乾燥(硫酸マグネシウム)させた。濾過により乾燥剤を除去し、溶媒を減圧下で濃縮し、白色固体のラクタム(8mg、88%)を得た。融点256℃。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ 9.20(d,8Hz,1H)、7.50(m,6H)、6.24(s,1H)、4.83(s,2H)、4.05(s,2H)、3.95(s,2H);
MS(ES)m/z 310(M+1)
実施例IV(6): 2,2’−ビベンゾチアフェン
還流冷却器を備えた2口丸底フラスコに、2−ブロモベンゾチアフェン(3.3g、15.6ミリモル)、2−(トリ−n−ブチル錫)ベンゾチアフェン(7.3g、17ミリモル)およびトルエン(40ml)を加えた。この混合物に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(360mg、0.3ミリモル)およびBHT(5mg)を加えた。反応物を16時間還流温度で加熱した。室温に冷却した後、溶媒を真空下で除去し、反応物をDMFに溶かし、セライトを介して濾過した。溶媒を真空下で除去し、固体をヘキサンでトリチュレートし、銀黒色固体として、2,2’−ビベンゾチアフェン(3.58g、13.4ミリモル、収率85%)を得た。融点260−262℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 7.98(m,2H)、7.62(s,1H)、7.36(m,2H)、7.25(s,1H)
実施例IV(7): 3,4−カルボエトキシベンゾチエニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン
密封式ガラス試験管に、2,2’−ビペンゾチアフェン(1.02g、3.8ミリモル)、アセチレンジカルボン酸ジエチル(3.1ml、19ミリモル)およびBHT(5mg)を入れた。反応容器を窒素下で密封し、190℃に加熱した。反応を24時間行った。反応容器を冷却した後、その中身をクロロホルムで丸底フラスコに移し、溶媒を真空下で除去した。固体をジエチルエーテルに溶かし、濾過して3,4−カルボエトキシベンゾチエニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン(468mg、1.07ミリモル、28%)を淡黄色固体として得た。融点206−207℃。濾液を結晶化に付して、さらに280mgの物質を得た(総収率45%)。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 8.27(d,7.4Hz,2H)、8.05(d,7.9Hz,2H)、7.65(m,4H)、4.57(q,7.1Hz,4H)、1.38(t,7.1Hz,6H)
実施例IV(8): ベンゾチエニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン
丸底フラスコに3,4−カルボエトキシベンゾチエニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン(500mg、1.15ミリモル)およびDMF(50ml)を入れた。この混合物に、シアン化ナトリウム(124mg、2.5ミリモル)および固形のヨウ化リチウム三水和物(476mg、2.5ミリモル)を加えた。反応物を150℃に加熱し、つづいてTLCに付した。時間の経過と共に、さらにNaCN/LiIを加えた。合計4当量のNaCNおよびLiIを各々36時間の反応時間にわたって添加し、その時点で出発物質は完全に消費された。反応混合物を室温に冷却し、冷(0℃)水性塩酸に注いだ。混合物を濾過し、水で洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥させた。
ついで、上記の粗固体を丸底フラスコに入れ、無水酢酸(50ml)を加えた。ついで、反応混合物を加熱還流した。還流して4時間経過後、TLC(酢酸エチル/ヘキサン(1:1)にて、Rf0.65に新しいスポット)によれば反応は完了した。溶媒を除去し、粗油をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、明黄橙色固体を得た。この固体をジエチルエーテルでトリチュレートし、ベンゾチエニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン(160mg、0.44ミリモル、収率40%)を明黄色固体として得た。融点>300℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 9.54(dd,5.2Hz,2.5Hz,2H)、8.34(dd,4.0Hz,3.3Hz,2H)、7.73(m,4H)
実施例IV(9): ベンゾチエノ[2,3−c]ベンゾチエノ[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(化合物I-3)
ベンゾチエニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン(75mg、0.2ミリモル)をDMF(3ml)に溶かした。この混合物に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルシラザン(4.4ml、20.8ミリモル)、つづいてメタノール(30μl、1ミリモル)を添加した。約15分経過後、懸濁液は透明になった。1時間経過後、TLCによれば、出発物質は略完全に消費された。反応物を合計8時間の反応時間で一夜攪拌させた。溶媒を除去し、ベンゾチエノ[2,3−c]ベンゾチエノ[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(65mg、0.18ミリモル、収率80%)を黄色固体として得た。融点>300℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 9.8(dd,5.0Hz,4.1Hz,2H)、8.25(dd,4.9Hz,4.1Hz,2H)、7.70(m,4H)
実施例IV(10): ベンゾチエノ[2,3−c]ベンゾチエノ[2,3−e]イソインドール−1−オン(化合物I-4)
亜鉛アマルガム(3当量)のエタノール懸濁液(10ml)に、酢酸(10ml)中溶液としてベンゾチエノ[2,3−c]ベンゾチエノ[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(68mg、0.18ミリモル)を加えた。濃塩酸(5ml)を添加した後、反応物を加熱還流した。一夜還流した後、反応物は透明になり、わずかに黄褐色であった。反応物を冷却し、水銀層をデカントした。溶媒の大部分を除去した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO3で2回洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、溶媒を除去した。粗反応混合物をカラムクロマトグラフィーで精製し、ベンゾチエノ[2,3−c]ベンゾチエノ[2,3−e]イソインドール−1−オン(65mg、0.18ミリモル、収率100%)を黄褐色固体として得た。融点225−226℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 10.17(dd,6.4Hz,2.7Hz,1H)、8.22(s,1H)、8.21(dd,4.1Hz,3.7Hz,2H)、8.11(dd,6.5Hz,2.2Hz,1H)、7.63(t,3.7Hz,2H)、7.55(t,3.7Hz,2H)、5.19(s,2H)
実施例IV(11): 2−(2’−インデニル)ベンゾチアフェン
還流冷却器を備えた2口丸底フラスコに、2−ブロモインデン(2g、13.3ミリモル)、2−(トリ−n−ブチル錫)ベンゾチアフェン(5.1g、11.9ミリモル)およびトルエン(50ml)を加えた。この混合物に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(1g、1.5ミリモル)およびBHT(5mg)を加えた。反応物を16時間還流温度で加熱した。冷却後、溶媒を除去し、反応物をDMF/THFに溶かし、セライトを介して濾過した。溶媒を除去し、固体をヘキサンでトリチュレートし、橙色固体として2−(2’−インデニル)ベンゾチアフェン(1.4g、5.6ミリモル、収率47%)を得た。融点260-265℃。
1H NMR(DMSO d6):δ 7.82(m,4H)、7.61(s,1H)、7.35(m,5H)、3.97(s,2H)
実施例IV(12): 3,4−カルボエトキシインデニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン
密封式ガラス試験管に、2−(2’−インデニル)ベンゾチアフェン(480mg、3.95ミリモル)、アセチレンジカルボン酸ジエチル(3.2ml、19ミリモル)およびBHT(10mg)を入れた。反応容器を窒素下で密封し、190℃に加熱した。反応を24時間行った。反応容器を冷却した後、その中身をクロロホルムで丸底フラスコに移し、溶媒を除去した。粗物質をシリカカラムに通し、上部フラクションを収集した。この固体をジエチルエーテルに溶かし、濾過して3,4−カルボエトキシインデニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン(538mg、1.29ミリモル、23%)を淡橙色固体として得た。融点186℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 8.15(d,7.4Hz,1H)、7.95(d,7.4Hz,1H)、7.71(m,2H)、7.56(m,2H)、7.41(m,2H)、4.50(q,7.0Hz,4H)、4.22(s,2H)、1.33(t,7.0Hz,6H)
実施例IV(13): インデニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン
丸底フラスコに3,4−カルボエトキシエンデニル[1,2−a]ジベンゾチアフェン(250mg、0.6ミリモル)およびピリジン(10ml)を入れた。この混合物に、ヨウ化リチウム三水和物(677mg、3.6ミリモル)を加えた。反応物を115℃に加熱し、つづいてTLCに付した。時間の経過と共に、さらにLiIを加えた。合計5当量のLiIを36時間の反応時間にわたって添加し、その時点で出発物質は完全に消費された。反応混合物を室温に冷却し、冷(0℃)水性塩酸に注いだ。混合物を濾過し、水で洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥させた。
ついで、上記の粗固体を丸底フラスコに入れ、無水酢酸(50ml)を加えた。ついで、反応混合物を加熱還流した。還流温度4時間経過後、TLC(酢酸エチル/ヘキサン(1:1)にて、Rf0.6に新しいスポット)によれば反応は完了した。溶媒を除去し、粗油をフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、明黄橙色固体を得た。この固体をジエチルエーテルでトリチュレートし、インデニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン(160mg、0.44ミリモル、収率40%)を明黄色固体として得た。融点>300℃。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 9.65(d,J=7.2Hz,1H)、8.76(d,J=7.6Hz,1H)、8.15(s,J=7.4Hz,1H)、7.78−7.38(m,5H)、4.97(s,2H)
実施例IV(14): インデニル[2,3−c]ベンゾチエニル[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(化合物I-5)
インデニル[4,5−a]ベンゾチエニル[6,7−a]イソベンゾフラン−1,3−ジオン(120mg、0.35ミリモル)をDMF(3ml)に溶かした。この混合物に、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン(7.4ml、35ミリモル)、つづいてメタノール(50μl、1ミリモル)を添加した。約15分経過後、懸濁液は透明になった。1時間経過後、TLCによれば、出発物質は略完全に消費された。反応物を合計18時間の反応時間で一夜攪拌させた。溶媒を除去し、インデニル[2,3−c]ベンゾチエニル[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(35mg、0.18ミリモル、収率30%)を橙色固体として得た。
1H NMR(300MHz、DMSO d6):δ 12.72(s,1H)、9.84(d,J=8.3Hz,1H)、8.14(d,J=6.4Hz,1H)、8.07(d,J=7.5Hz,1H)、7.82−7.28(m,5H)、5.03(s,2H);MS(APcI)342(M+H)
実施例IV(15): インデニル[2,3−c]ベンゾチエニル[2,3−e]イソインドール−1および3−オン(化合物I-6)
亜鉛アマルガム(3当量)のエタノール懸濁液(2ml)に、酢酸(10ml)中溶液としてインデニル[2,3−c]チアナフテノ[2,3−e]イソインドール−1,3−ジオン(10mg、0.3ミリモル)を加えた。濃塩酸(1ml)を添加した後、反応物を加熱還流した。3時間還流した後、反応物は透明になり、わずかに黄褐色であった。反応物を冷却し、水銀層をデカントした。溶媒の大部分を除去した後、混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO3で2回洗浄した。有機層をMgSO4で乾燥し、濾過し、溶媒を除去し、黄褐色固体として、インデニル[2,3−c]チアナフテノ[2,3−e]イソインドール−1−オンの混合物として標記化合物を得た。
MS(APcI)329(M+H)
本発明はかなり詳細に記載するものであるが、本明細書に開示した発明は現に記載されている範囲に限定されるものではなく、添付した請求の範囲およびその均等なすべての範囲に付与されるものである。

Claims (5)

  1. 構造式I:
    Figure 0004070810
    [式中、A1およびA2は、H,H;H,OH;および=Oよりなる群から一対で選択され;およびB1およびB2は、H,H;H,OH;および=Oよりなる群から一対で選択され;ただしA1およびA2、またはB1およびB2は=Oであり;
    R1はHであり;
    Xは、いずれか一方の、または両方の位置で、炭素数1〜3の非置換のアルキレン、-O-または-S-であり;および
    R3、R4、R5およびR6はH、炭素数1〜4のアルキル、炭素数が4までのアルケニルまたは炭素数が4までのアルキニルであり、ただしR3またはR4のいずれかはHであり、およびR5またはR6のいずれかはHである;]
    で示された化合物またはその医薬上許容される塩。
  2. Xが、いずれか一方の、または両方の位置で、-O-および-S-よりなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
  3. R3ないしR6がHである請求項1または2記載の化合物。
  4. 医薬上許容される賦形剤/担体と共に請求項1ないし3のいずれか1記載の化合物を含む医薬組成物。
  5. 神経細胞系の機能および/または生存を強化するための、請求項1ないし3のいずれか1記載の化合物を含む医薬組成物。
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