JP4070105B2 - 開瞼器及び硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置 - Google Patents

開瞼器及び硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体の眼球の診断や手術の際に用いられる開瞼器、及び、硝子体手術用のコンタクトレンズ(以下、手術用レンズと記載する。)を、人体眼球上に保持する手術用レンズの保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
人体眼球の手術において、良好な術野確保のため手術用レンズは必要不可欠なレンズである。以下、眼科手術の代表的なものである硝子体手術の場合を例として、図12、図13(A)、(B)、図14を用いて手術用レンズについて説明する。なお、図1〜図14において、それぞれ対応する部分には同一の符号を付して示してある。
【0003】
硝子体手術においては、まず、図12に示すように、仰向けに寝かせた患者の眼球100の上眼瞼110と、下眼瞼120とを、開瞼器10を用いてそれぞれ上下に牽引して開く。次に、開瞼された眼球100上の所望の位置に手術用レンズ50を保持する。しかし、眼球100は略球体であるため、手術用レンズ50が眼球上からずり落ちないように保持する必要がある。
【0004】
そこで、従来は、図12に示すように、手術用レンズ50を眼球上に保持するため、リング形状の手術用レンズの保持部30(以下、レンズリング30と呼ぶ)を、眼球100上の強膜130(眼球の白目の部分)に手術糸60を用いて縫着していた。この縫着について、図13(A)、(B)及び図14を用いてさらに詳述する。
【0005】
図13の(A)は2箇所の縫着係合部35を有するレンズリング30を眼球100に縫着した場合を示し、(B)は4箇所の縫着係合部36、37を有するレンズリング30を眼球100に縫着した場合を示し、図14はその際のC−C断面図を示す。
【0006】
ここで、図13(A)、(B)に示すように、レンズリング30は角膜131よりも大きな径を有し、強膜130上に保持される。レンズリング30を強膜130に縫着する手術糸60には、例えば5−0ダクロン糸、7−0絹糸が用いられる。
【0007】
図13(A)に示す例のように、手術者は手術針に手術糸60を通し、図13に示すように強膜130の上半層を掬うように通過させた後、縫着係合部35へ手術糸60を掛け、レンズリング30を眼球100へ縫着する。
【0008】
図13(B)に示す例は、レンズリング30を脱着可能とする場合の縫着方法である。この場合、手術者は手術針に手術糸60を通し、図14に示すように強膜130の上半層を掬うように通過させ、レンズリング30の周囲を周回しながら縫着係合部36、37を固定し、最後に手術糸60を仮縫合61する。
【0009】
レンズリング30を脱離する場合は、仮縫合61を解き、手術糸60を緩めて縫着係合部36、37より手術糸を外す。また、再度縫着する場合は、縫着係合部36、37に手術糸60をかけた後、再び仮縫合61を行って、縫着係合部36、37を固定することで、所望の位置にレンズリング30を再縫着する。
【0010】
上述のようにして、眼球100へのレンズリング30の縫着が完了したら、図12に示すように、手術者は、眼球100へメスを入れ、手術野を照明するライトガイド80、眼球100内の硝子体を切断し吸引する硝子体カッター70等を用いると共に、硝子体が吸引された量に相当する量の灌流液を注入するインフージョン90を眼球100内へ挿入して、眼内手術を行う。
【0011】
図12において、手術用レンズ50の上方には、図示していない手術用顕微鏡を設置し、手術者はこの手術用顕微鏡と、手術用レンズ50とを通して手術野を観察しながら手術を実行する。手術の進行に伴い、異なった手術野を観察する必要が生じた場合は、適宜、綿棒75または手指等を用いて手術用レンズ50を回転させながら手術野を移動する。また、必要に応じて、異なった形状の手術用レンズ50に交換したり、上述したようにレンズリング30の縫着位置を変更したりする。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、眼内手術は上述のように行っているが、その際、下記のような問題点があることが、本発明者らによって明らかとなった。
【0013】
まず、第1の問題点は、手術針を用いて強膜130の上半層を掬うように通過させることは、熟練した手術者にとっても細心の注意と、手間を必要とする操作である。しかもこの段階は眼内手術の準備段階であって、この段階で手術者へ注意力を使わせるという負担を与え、且つ時間を消費してしまうことは、この後の眼内手術にとって大きなマイナスとなるということである。
【0014】
第2の問題点は、たとえ熟練した手術者が細心の注意を払っていたとしても、万一、手術針が強膜130を突き抜けてしまった場合には、強膜下組織が傷つき手術後の合併症を引き起こす原因となる可能性があることである。
【0015】
第3の問題点は、手術針が強膜130を突き抜けることがなかったにせよ、手術針や手術糸60が、強膜130へ侵襲を与えていることには変わりがないことである。
【0016】
第4の問題点は、レンズリング30が眼球100上に固定されているため、手術の進行に伴い、レンズリング30が手術操作の邪魔になる場合、その都度に手術糸60を切るか、または仮縫合61を解いて手術糸60を緩めて、レンズリング30を取り外すことが必要となり、第1〜第3の問題点が繰り返されることである。
【0017】
例えば、水晶体超音波乳化吸引手術と、網膜硝子体手術と、眼内レンズ挿入手術との3種の手術を同時に実施する、いわゆるトリプル手術の場合など、例えば(イ)水晶体超音波乳化吸引、(ロ)硝子体手術、(ハ)眼内レンズ挿入、(ニ)空気置換・眼内光凝固、の順序で手術が進行するが、(ロ)、(ニ)の段階では手術用レンズ50が必要であるのに対し、(ハ)の段階では、眼球100に手術用レンズ50やレンズリング30が縫着されていては手術ができず、結局、(ロ)から(ハ)への移行の際、手術糸60を切るか、または緩めてレンズリング30を取り外し、(ハ)から(ニ)へ移行の際には、再びレンズリング30を縫着する必要があった。
【0018】
第5の問題点は、レンズリング30が眼球100上に固定されているため、上述したように、手術用レンズ50を回転したり、交換しても観察困難な部分が生じてしまうことである。従来このような場合は、レンズリング30の中で手術用レンズ50を若干傾けて観察を行っているが、微調整が困難である。
【0019】
上述の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、レンズリング30を、眼球100に縫着するのではなく、開瞼器10に連結すれば、これらの問題点を一挙に解決できることに想到した。
【0020】
しかしながら、器具の簡易性を優先させて、単に紐状体のようなもので開瞼器10とレンズリング20とを連結した場合、紐状体の位置がずれると、レンズリングの保持が不安定になるおそれがあることが分かった。
【0021】
本発明は、上記事情を考慮し、例えばレンズリングを保持するのに適した開瞼器と、その開瞼器を用いた硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上眼瞼と下眼瞼とを牽引する一対のフックを有した開瞼器において、前記各フックに、相手フックの方向から紐状体を引っ掛けるための引っ掛け部を設け、その引っ掛け部に前記紐状体の位置ずれを防止する係止手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
この開瞼器は、上眼瞼と下眼瞼とを牽引するフックに、紐状体の引っ掛け部を設けたので、紐状体を用いて、例えばレンズリング(手術用レンズの保持器)と開瞼器を簡単に連結することができ、開瞼器によってレンズリングを容易に保持することができる。しかも、その引っ掛け部には、紐状体の位置ずれを防止する係止手段を設けているので、患者に装着した状態で紐状体の位置がずれる心配がなく、レンズリングを安定して保持することができる。また、紐状体の位置がずれないので、紐状体が脱落しにくくなって、レンズリングと連結した状態でも取り扱いがしやすくなる。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1において、前記係止手段が、前記紐状体の嵌まる凹部であることを特徴とする。
【0025】
このように係止手段として凹部を設けることにより、凹部に嵌まった状態の紐状体の位置ずれを阻止することができる。この場合の凹部は、例えばフックの表面を削ったりすることで簡単に形成することができるので、実現が容易である。また、特に凹部を、紐状体が完全に嵌まる大きさに形成して、凹部の入口を狭めておくと、紐状体を一旦凹部に嵌め込んだら抜けないようにすることができる。従って、開瞼器にレンズリング(保持器)を連結した状態で患者に取り付けるときや患者から取り外すときに、紐状体やレンズリングが脱落するのを確実に防止することができる。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1において、前記係止手段が、前記紐状体を位置規制する凸部であることを特徴とする。
【0027】
このように係止手段として凸部を設けることにより、凸部で紐状体の位置ずれを阻止することができる。この場合の凸部は、例えばフックの表面に膨らみを付けることで簡単に形成することができる。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記各フックがワイヤを屈曲成形することにより構成されており、前記係止手段が、前記紐状体を掛け回すワイヤの周面に設けられていることを特徴とする。
【0029】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記各フックがワイヤを屈曲成形することにより構成されており、前記係止手段が、前記ワイヤを局部的に屈曲させることにより形成されていることを特徴とする。
【0030】
このようにワイヤを曲げてフックを形成した場合、係止手段をワイヤの周面に形成したり、ワイヤを局部的に屈曲させて形成するのが、加工の簡易化を実現する上での好ましい例である。
【0031】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記係止手段が、前記フックの幅方向両側部に形成されていることを特徴とする。
【0032】
このように係止手段をフックの幅方向両側部に形成した場合、係止手段を眼瞼に当たる位置から外して設けることができるので、形状的に思い切った設計が可能となる。
【0033】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記係止手段が、開瞼器の装着対象である眼の前後方向に複数設けられていることを特徴とする。
【0034】
このように係止手段を複数設けた場合、フックに対する紐状体の係止位置を適宜に変更することができる。しかも、係止手段は、眼の前後方向に複数設けているので、係止位置を前後に変更することで、レンズリング(保持器)の保持位置を前後にずらすことができ、眼に装着した場合に眼球面に対するレンズリングの押圧力を加減することができる。
【0035】
請求項8の発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記係止手段が、紐状体の係止位置を変更することで紐状体の張力を調節可能な複数の位置に設けられていることを特徴とする。
【0036】
このように複数の位置に係止手段を設けた場合、フックに対する紐状体の係止位置を適宜に変更することで、紐状体の張力を簡単に調節できる。従って、眼に装着した場合に眼球面に対するレンズリング(保持器)の押圧力を加減することができる。
【0037】
請求項9の発明の硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置は、請求項1〜8のいずれかに記載の開瞼器の両フックの間に、硝子体手術用コンタクトレンズを眼球上で保持するための保持器を配置し、その保持器を、紐状体よりなる連結具を前記フックの引っ掛け部に掛け回すことにより、その連結具を介して両フックによって支持したことを特徴とする。
【0038】
この保持装置では、開瞼器として請求項1〜8のいずれかに記載の開瞼器を用いているので、同開瞼器の持つ作用を果たすことができる。
【0039】
請求項10の発明は、請求項9において、前記紐状体よりなる連結具がループ状の弾性材よりなり、各フックと保持器との間をそれぞれ連結していることを特徴とする。
【0040】
この保持装置では、開瞼器と保持器を連結する連結具をループ状の弾性材としたから、開瞼器のフックに対する掛け回しが簡単にできる上、脱着も容易にできるようになる。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、既に説明した部材等については、図中に同一符号または相当符号を付すことにより、説明を簡略化あるいは省略する。
【0042】
図1は、第1の実施形態の開瞼器Kを使用して構成した硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置1(以下、保持装置1と記載する)の実際の使用形態から裏返した状態で見た斜視図である。
【0043】
この保持装置1は、人体の上眼瞼と下眼瞼とを牽引して開かせる一対のフック10a、10b及びこれらフック10a、10bを支持するバネ部20よりなる開瞼器Kと、手術用レンズを眼球上で保持するための保持器であるレンズリング30と、開瞼器Kの各フック10a、10bとレンズリング30とを連結する紐状の一対の連結具40a、40bとから構成されている。
【0044】
開瞼器Kのフック10a、10bは、断面が略円形または略楕円の棒材(ワイヤ)、あるいは、面取りを施した角状の棒材(ワイヤ)を、略半楕円形であって鋭角部のない閉ループとした後、その直線の部分と曲線の部分とを向かい合わせるように緩やかに折り曲げることで、前記直線部としての挿入部11a、11bと、2箇所の折り曲げ部分である牽引部13a、17a、13b、17bと、曲線部としての支持部15a、15bとを形成し、A矢視によれば、略「J」の字形の形態となしたものである。
【0045】
前記挿入部11a、11bと牽引部13a、13bとの間には折れ曲がり部12a、12bが、また、挿入部11a、11bと牽引部17a、17bとの間には折れ曲がり部18a、18bがあり、患者の瞼内に挿入された挿入部11a、11bが、人体組織を傷つけることなく且つ十分な保持力を得られるようになっている。牽引部13a、17a、13b、17bの緩やかな折り曲がりも同様の目的で設けられたものであり、これらの部分には鋭角の部分が存在しない。
【0046】
さらに、前記折り曲げられた部分である牽引部13a、17a、13b、17bと曲線状の支持部15a、15bの境界部分14a、16a、14b、16b間には、断面が略円形または略楕円の棒材19a、19bが掛け渡されており、境界部分14a、14b、支持部15a、15b、境界部分16a、16b、棒材19a、19bが形成する円弧状の部分が、患者の顔面に密着し、保持装置1を安定支持するようになっている。
【0047】
牽引部13a、17a、13b、17bは、紐状体よりなる連結具40a、40bを引っ掛けるための引っ掛け部に相当する部分であり、これらの牽引部13a、17a、13b、17bには、連結具40a、40bの位置ずれを防止する係止手段としての凹部213a、217a、213b、217bが設けられている。凹部213a、217a、213b、217bは、牽引部13a、17a、13b、17bのワイヤ延長方向に並べて複数段設けられている。
【0048】
これらの凹部213a、217a、213b、217bは、紐状体よりなる連結具40a、40bが嵌まる大きさに形成されており、ここではフック10a、10bがワイヤを屈曲成形することで構成されているので、ワイヤの周面に設けられている。
【0049】
この場合、複数段の凹部213a、217a、213b、217bは、開瞼器Kの装着対象である眼球の前後方向に並んでいることになる。従って、フック10a、10bに対する連結具40a、40bの係止位置を適宜に変更することができるし、連結具40a、40bの係止位置を前後に変更することで、レンズリング30の保持位置を前後にずらすことができ、眼球面に対するレンズリング30の押圧力を加減することができる。つまり、連結具40a、40bの係止位置を変更することで、連結具40a、40bの張力を調節することができ、それにより、眼球面に対するレンズリング30の押圧力、即ちレンズリング30が強膜を押す圧力を調節することができる。
【0050】
次にバネ部20について説明する。開瞼器Kのバネ部20は、フック10a、10bで説明した棒材19aと一体化し、折れ曲がり部23a、22a、21、22b、23bを経て棒材19bと一体化し、フック10a、10bを、弾力を持って支持している。この部分は、単純なU字形であっても良いが、本実施の形態では、折れ曲がり部22a、21、22bを設けることで、開閉の際、手術者の指が滑りにくいという好ましい構成をとっている。
【0051】
また、折れ曲がり部23a、23bにより、バネ部20を図1の紙面上方に折り曲げることで、保持装置1を患者に装着した際、折れ曲がり部23a、22a、21、22b、23bを含むバネ部20の全体を、患者顔面に密着させることができ、好ましい構成である。
【0052】
次に手術用レンズを眼球上で保持するためレンズリング30、及び、一対の連結具40a、40bについて説明する。
【0053】
レンズリング30は、上下面の開いた筒状体で、この内側に後述する手術用レンズが装填されるものであり、外側面に2箇所以上(図1は2箇所の例を記載)の係合部31a、31b(以下、係合部31と略記する場合がある。)を有している。
【0054】
連結具40a、40bは弾性材よりなる閉ループの紐状体で、フック10a、10bの牽引部13a、17a、13b、17bと、レンズリング30に設けられた断面形状が円弧状の係合部31a、31bとの間に掛け渡され、レンズリング30をフック10a、10bの間に半固定の態様で連結するものである。
【0055】
次に、図2を参照しながら、保持装置1についてさらに説明する。図2は、保持装置1に手術用レンズ50を装填し、患者の眼球の角膜上に保持している状態を示している。
【0056】
この状態のとき、一対のフック10a、10bの挿入部11a、11b及び牽引部13a、13b、17a、17bは、患者の上下眼瞼110、120の下に挿入され、図示されていないが、バネ部20の弾力により、上眼瞼110と下眼瞼120とを適宜な力で牽引して開かせている。一方、支持部15a、15b、棒材19a、19b及びバネ部20は、患者の顔面に密着してフック10a、10bを支えている。
【0057】
このとき、一対の連結具40a、40bは、適宜な張力をもって、フック10a、10bとレンズリング30の係合部31a、31bとを連結しており、この結果、レンズリング30に装填された手術用レンズ50が、患者の眼球100内の、例えば角膜の直上のような所望の位置に半固定されている。
【0058】
ここで、連結具40a、40bは、牽引部13a、17a、13b、17bの凹部213a、217a、213b、217bに嵌まっているので、患者に開瞼器Kを装着した状態で位置がずれる心配がなく、レンズリング30を安定して保持することができる。また、連結具40a、40bを係止する凹部213a、217a、213b、217bの位置を適宜に選択することにより、レンズリング30が強膜を押す圧力を調節することができる。従って、手術中に出血がひどいとき、圧力を大きめに設定することで、レンズリング30内への血液の流入を防止することができ、手術者は良好な視野のもとで手術することができる。また、眼瞼の開き具合に個人差があっても、圧力調整が簡単にできる。
【0059】
このような方法は、手術者にとって容易で負担がかからないばかりでなく、患者の人体組織に対する侵襲も無いという、極めて利点の多いものである。
【0060】
この一対のフック10a、10bを支える機構として、上述したバネ部20の弾性力を用いた機構をとる以外にも、ネジとバネを組み合わせた機構、雄ネジと雌ネジを組み合わせた機構、ラックとピニオンを組み合わせた機構、等のメカ機構を使用することも可能である。
【0061】
なお、フック10a、10b及びバネ部20の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、鉄、銅、銀、金、白金、またはアルミニウム、チタン、鉄、銅、ニッケル等を含んだ合金、等の金属材料、または、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、その他、多くの熱硬化性及び熱可塑性樹脂、等のような樹脂材料を用いることができる。特に、バネ部20において十分な弾性力を有すること、人体に対して無害でアレルギーの原因とならないこと、消毒・殺菌、滅菌が容易なこと等が求められ、材料コストも考慮すると、金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等が、樹脂材料としてはポリメチルメタクリレート等が好ましい。
【0062】
次に開瞼器の他の実施形態を説明する。
図3は他の実施形態の開瞼器K2を用いた保持装置1Bの例を示している。この開瞼器K2では、フック10a、10bの牽引部13a、17a、13b、17b(連結具40a、40bの引っ掛け部)に設けた係止手段としての凹部313a、317a、313b、317bを、ワイヤを局部的にフック10a、10bの幅方向内側にU字形あるいはV字形に屈曲させることで形成している。この場合、凹部313a、317a、313b、317bは、フック10a、10bの幅方向に向けて設けられているので、眼瞼に当たる方向に出っ張らない。従って、形状的に思い切ったU字形あるいはV字形に形成することができる。その他の構成は図1のものと同様である。
【0063】
なお、開瞼器に設ける連結具の係止手段としては、例えば、図4の(A)〜(G)に示すような色々な態様を採ることができる。ここでは、連結具を90、係止手段を92、フックを構成するワイヤを94で示してある。
【0064】
(A)の例では、係止手段92を、連結具90の嵌まる凹部として形成している。このような凹部は、ワイヤ94の表面を削ったりすることで簡単に形成できるので、実現が容易である。
(B)の例では、係止手段92としての凹部を連結具90が完全に嵌まる大きさに形成して、凹部の入口を狭めている。こうすると、連結具90を一旦凹部(係止手段92)に嵌め込んだら抜けないようにすることができる。従って、開瞼器にレンズリングを連結した状態で患者に取り付けるときや患者から取り外すときに、連結具やレンズリングが脱落するのを確実に防止することができる。
(C)の例では、平べったい断面の連結具90に対応させて、係止手段92としての凹部を平型に形成している。この場合も凹部の入口を狭めることで、連結具90を一旦凹部に嵌め込んだら抜けないようにしている。
【0065】
(D)の例では、ワイヤ94を局部的に屈曲させることで、係止手段92としての凹部を形成している。この例は、図3に示した実施形態に相当するものである。ここでは、ワイヤの屈曲の向きは特に限定されない。要は連結具90を係止できればよい。
(E)の例では、係止手段92として、連結具90が嵌まる大きさの凹部を設けるのではなく、微小凹凸状の滑り止めを設けている。このように構成しても、連結具90に張力がある場合には位置ずれを有効に防止することができる。
【0066】
(F)の例では、係止手段として、連結具90が嵌まる大きさの凹部を設けるのではなく、連結具90の位置ずれを規制する凸部を設けている。この場合の凸部は、例えばワイヤ94の表面に小さな膨らみを付けることで簡単に形成することができる。
【0067】
いままでの例では、フックを構成するワイヤ94に直接係止手段92を形成した場合を示したが、(G)の例では、ワイヤ94に、係止手段92を有する例えば樹脂製のキャップ96を被せている。このようにしても、上記と同様の連結具90の位置ずれ防止効果を得ることができる。
【0068】
次に、図5を用いてレンズリングについてさらに説明する。図5は、レンズリング30の平面図(A)と側面図(B)である。
【0069】
レンズリング30は、筒状体部32により構成される上下面の開いた筒状体である。そして筒状体部32の上面には、2箇所以上(図5では、2箇所の例を記載)の断面形状が円弧状の係合部31a、31bが曲面を内側に向けて設けられている。この係合部31a、31bに一対の連結具40a、40bを掛けることで、レンズリング30は前記保持装置1の牽引部13a、17a、13b、17bに連結されるが、曲面が内側を向いているため連結具40a、40bの脱着が容易であるにも拘わらず、不用意に外れることがなく好ましい構成である。
【0070】
レンズリング30における係合部31a、31bの設置位置は、眼球100への負担軽減の観点より一般的には、眼球100と接しないレンズリング30の上部または上部側端部に設けることが好ましい。しかし、係合部31a、31bの形状や材質に留意すればレンズリング30の下部または下部端部に、係合部31a、31bを設けることも可能であり、手術用レンズ50の安定保持の観点からは好ましい構成である。
【0071】
また、レンズリング30の横断面形状は円形に限られるものではなく、手術用レンズ50を当該部位に保持し得るものであればよい。そこで、手術用レンズ50の形状または手術者の操作性等に応じて、楕円形、三、四、五、、、角形等の角形を採るのも好ましい構成である。
【0072】
さらに、筒状体部32の下部内周面へ患者の眼球形状に沿って緩やかな面取34を施し、患者の眼球への負担軽減を図るのも好ましい構成である。
【0073】
ここで、図6〜図8を参照しながら、レンズリング30及び係合部31の異なる実施の形態例について説明する。図6〜図8は、異なる実施の形態例にかかるレンズリング30及び係合部31の平面図(A)と側面図(B)である。
【0074】
図6に示すレンズリング30及び係合部31は、図5と同様に係合部31a、31bの断面形状が円弧状を有している例であるが、係合部31が筒状体部32の上面部の対向位置に各々2箇所設けられ、レンズリング30の全周では4箇所(係合部31a、31a’、31b、31b’)設けられている例である。
【0075】
図6に示すように、係合部31が前記対向位置に各2箇所設けられていると、連結具がそれぞれ2つの係合部31a、31a’、31b、31b’に掛かるので、掛かりが安定し、レンズリング30が力学的に安定する。従って、例えばレンズリング30の位置を、眼球上で頻繁に移動させる場合などには特に好ましい構成である。さらにこの例でも、筒状体部32の下部内周面へ患者の眼球形状に沿って緩やかな面取り34を施し、患者の眼球への負担軽減を図るのは、好ましい構成である。
【0076】
図7に示すレンズリング30及び係合部31a、31bは、図5と異なり、係合部31a、31bの断面形状が「V」の字形を有している例であり、筒状体部32の上面部の対向位置に2箇所設けられている例である。この例のように、係合部31a、31bが、「V」の字形を有していると、一対の連結具を必要に応じて容易に係合部31a、31bより外すことができる。
【0077】
例えば、前記トリプル手術のように、手術中に複数回のレンズリング30の着脱をおこなう場合は、係合部31が「V」の字形を有していると、レンズリング30からの着脱が容易となり、好ましい構成である。
【0078】
さらにこの例でも、レンズリング30の筒状体部32の下部内周面へ患者の眼球形状に沿って緩やかな面取り34を施し、患者の眼球への負担軽減を図るのが好ましい構成である。
【0079】
図8に示すレンズリング30及び係合部31は、図7と同様に係合部31の断面形状が「V」の字形を有している例であるが、図7において係合部31が筒状体部32の上面部の対向位置に各1箇所設けられていたのに対し、対向位置に各々2箇所設けられ、レンズリング30の全周では、4箇所(係合部31a、31a’、31b、31b’)設けられている例である。
【0080】
図8に示すように、係合部31が対向位置に各2箇所設けられていると、一方の連結具は係合部31a、31a’に掛かり、他方の連結具は係合部31b、31b’に掛かるので、掛かりが安定し、レンズリング30が力学的に安定する。従って、例えば、前記トリプル手術をおこないながら、レンズリング30の位置を眼球上で移動させる場合などには特に好ましい構成である。
【0081】
さらにこの例でも、レンズリング30の筒状体部32の下部内周面に患者の眼球形状に沿って緩やかな面取り34を施し、患者の眼球への負担軽減を図るのが好ましい構成である。
【0082】
レンズリング30の材質としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、鉄、銅、銀、金、白金、またはアルミニウム、チタン、鉄、銅、ニッケル等を含んだ合金、等の金属材料、または、ポリメチルメタクリレート等のメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、その他、多くの熱硬化性及び熱可塑性樹脂、等のような樹脂材料を用いることができる。
【0083】
ここでレンズリング30の材質として、つやのある材料を用いると、照明光を反射し、手術時の顕微鏡観察の妨害になる可能性がある。このような場合は、サンドブラスト等を用いてレンズリング30の材質のつや消しをおこなうのも好ましい構成である。
【0084】
さらに、手術糸による縫着が不要になったことで、レンズリング30の材質として上述した硬質な材料ばかりでなく、手術用レンズ50を所望の場所に保持することが可能な軟質材料も適用可能となった。これらの軟質材料を用いることで、患者への負担をさらに軽減させることも期待でき好ましい構成である。
【0085】
以上のことより、保持装置1と同様に、人体に対して無害でアレルギーの原因とならないこと、消毒・殺菌、滅菌が容易なこと等が求められ、材料コストも考慮すると、金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等が、樹脂材料としてはポリメチルメタクリレート、含水性樹脂、軟質の樹脂等が、ゴム材料としてはシリコーンゴム、フッ素ゴム等が好ましい。
【0086】
くわえて、樹脂材料やゴム材料を用い射出成形等により低コストでレンズリング30を製造し、手術に際しては使い捨ての形態をとることも好ましい構成である。
【0087】
次に、図9を参照しながら連結具についてさらに説明する。上述したように、連結具は保持装置の牽引部とレンズリングの係合部とを、弾力を持って連結している部分である。
【0088】
人体において、上下両瞼および眼球の大きさ、形状および弾性等は患者個人により若干の個人差があるため、レンズリングに装填された手術用レンズを眼球上の最適位置に保持するためには、連結具に位置調節機能および位置保持機能が求められるからであり、手術の途中においてレンズの位置を若干移動できれば、患者の眼球内の観察可能範囲が拡大し、手術者の負担をさらに減らすことが可能になる場合もあるからである。
【0089】
図9は、一対の連結具40a、40bとして、弾性を有する材料の単なる閉ループではなく、閉ループの一部に係合穴41を有している例の斜視図である。なお、一対の連結具40a、40bとも同型である。
【0090】
この係合穴付き材料を一対の連結具40a、40bとし、上述した図5に示す断面形状が円弧状の係合部31、または図7に示す断面形状が「V」の字形を有している係合部31と組み合わせて用いると、一対の連結具40a、40bと係合部31との摩擦力により、予期せぬ力に対しては外れにくく、脱着したいときには容易に脱着可能とすることが可能となり好ましい構成である。
【0091】
さらに係合部31と一対の連結具40a、40bとの連結が、係合穴41により固定されるので、レンズリング30が安定する等、利点の多い構成である。
【0092】
再び、図9において、図示しているのは、連結具40a、40bの各閉ループにおける係合穴41が1箇所の例であるが、係合部31の構造に応じて、適宜、穴の数を設定することが好ましい。即ち、上述した図6、図8に示すようなレンズリングの場合、連結具40a、40bの各閉ループが、各々2箇所以上の係合部31に掛けられることとなるが、このときは、係合部31の箇所数と間隔とに対応して、連結具40a、40bに各々複数の係合穴41を設ける構成とすることが好ましい。
【0093】
もちろん本発明の実施の形態にかかる連結具の例として、上述した図9に示す連結具40a、40b以外にも、様々な形態が考えられる。
例えば、連結具40a、40bは、紐状の材料を結んで閉ループ状としたものであってもよく、この紐状の材料が弾力性を有する材料、例えばゴムであればさらに好ましい。この構成は、連結具40a、40bのコストを大きく下げることができるので、この部分を使い捨てにするときに好ましい構成である。
【0094】
さらに、連結具の異なる態様としては、断面円形に限らず板状断面のものでも良く、材質もゴムに限らず樹脂、金属でも良い。さらに、樹脂または金属のバネ材を使用しても良い。
【0095】
連結具の材料の材質としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、SBR、IR、ブチルゴム、ネオプレンゴム、等のゴム材料、またはポリメチルメタクリレート等のメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリイミド樹脂、その他、多くの熱硬化性及び熱可塑性樹脂、等のような樹脂材料、または、絹糸等の縫合糸材料、または、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン、鉄、銅、銀、金、白金、またはアルミニウム、チタン、鉄、銅、ニッケル等を含んだ合金、等の金属材料、を用いることができる。
【0096】
さらに、フック10a、10bレンズリング30と同様に、人体に対して無害でアレルギーの原因とならないこと、消毒・殺菌、滅菌が容易なこと等が求められ、材料コストも考慮すると、ゴム材料としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が、金属材料としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等が、樹脂材料としてはポリメチルメタクリレート等が好ましい。
【0097】
くわえて、ゴム材料および樹脂材料を用い射出成形等により低コストで一対の連結具40a、40bを製造し、手術に際しては使い捨ての形態をとることは、好ましい構成である。
【0098】
ここで、図10、図11を参照しながら、レンズリング30と連結具40a、40bとが硝子体手術に際し、患者の眼球への負担を軽減する効果について、さらに説明する。
【0099】
図10、図11は、上述のレンズリング30の内側に、手術用レンズ50を装填し、患者の眼球100の強膜130上に保持した状態の断面図であって、図10は係合部31が円弧状を有しているレンズリング30の例であり、図11は「V」の字形を有しているレンズリング30の例である。
【0100】
まず、図10では、患者の眼球100の強膜130上に、レンズリング30の筒状体部32の面取りが施された面34が接触している。そして、レンズリング30は、円弧状の係合部31a、31bに各々掛けられた連結具40a、40bにより、図示していないフック10a、10bに連結され、眼球100上の所望の位置に半固定されている。この眼球100上の所望の位置に半固定されたレンズリング30の内側に手術用レンズ50が装填されている。
【0101】
次に、図11は、図10と同様に患者の眼球100の強膜130上に、レンズリング30の筒状体部32の面取りが施された面34が接触している。そして、レンズリング30の「V」の字状の係合部31a、31bには、係合穴41を有する連結具40a、40bが、各々掛けられているので、「V」の字状の係合部31a、31bは、各々その全周で連結具40aまたは連結具40bと接触し十分な摩擦を得ることができる。
【0102】
この結果、レンズリング30は、図示していないフック10a、10bへ十分な安定性を持って連結される。一方、必要時に、連結具40a、40bを「V」の字状の係合部31a、31bより外すことも容易である。そして、図10と同様に、眼球100上の所望の位置に半固定されたレンズリング30の内側に手術用レンズ50が装填されている。
【0103】
図10、図11のいずれの例においても、レンズリング30を強膜130に縫着することなく、手術用レンズ50を角膜131上に半固定することが可能になり、手術者に対する負担が大きく軽減できたと同時に、患者に対しても手術針や手術糸による強膜130への負担を削除するという大きな効果を挙げた。
【0104】
さらに好ましいことに、従来のレンズリング30においては必要だった縫着係合部も不要となったことから、筒状体部32の下部内周面の全周に渡り眼球100の形状に沿った形で緩やかに面取り34を設けることが可能となり、強膜130への負担をさらに軽減することができた。
【0105】
以上の説明で明らかなように、保持装置1、1B及び開瞼器K、K1が上述の構成を有することにより、手術時において手術用レンズの位置を若干移動したいとの要請が起こった場合にも、レンズリングの眼球上における位置を移動させることで対応が可能になり、手術者は、手術野の正確な情報を容易に観察できるようになり、的確な手術を短時間でおこなうことが可能となった。
【0106】
さらに、保持装置1、1Bは、硝子体手術に限られず、手術用レンズを用いる眼科手術一般に適用可能であると同時に、患者への負担を大幅に削減したことから、手術のみならず診断、診察にも広く適用できる。
【0107】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、例えば手術用レンズ保持用のレンズリングを保持するのに適した開瞼器を提供することができる。即ち、請求項1の発明の開瞼器は、上眼瞼と下眼瞼とを牽引するフックに、紐状体の引っ掛け部を設けたので、紐状体を用いて、レンズリング(手術用レンズの保持器)と開瞼器を簡単に連結することができ、開瞼器によってレンズリングを容易に保持することができる。しかも、その引っ掛け部には、紐状体の位置ずれを防止する係止手段を設けているので、患者に装着した状態で紐状体の位置がずれる心配がなく、レンズリングを安定して保持することができる。
【0108】
また、請求項2の発明の開瞼器は、前記係止手段として凹部を設けたものであるから、例えばフックの表面を削ったりすることで簡単に形成することができるし、特に凹部を紐状体が完全に嵌まる大きさに形成して凹部の入口を狭めておくことにより、紐状体を抜けないようにすることができ、開瞼器にレンズリング(保持器)を連結した状態で患者に取り付けるときや患者から取り外すときに、紐状体やレンズリングが脱落するのを確実に防止することができる。
【0109】
また、請求項3の発明の開瞼器は、前記係止手段として凹部を設けたものであるから、例えばフックの表面に小さな膨らみを付けることで簡単に形成することができる。
【0110】
また、請求項4の発明の開瞼器は、前記係止手段をフックを構成するワイヤの周面に形成しているので、簡単に加工することができる。また、請求項5の発明の開瞼器は、ワイヤを局部的に屈曲させて係止手段を形成しているので、加工の簡易化を実現することができる。
【0111】
また、請求項6の発明の開瞼器は、前記係止手段をフックの幅方向両側部に形成しているので、係止手段を眼瞼に当たる位置から外して設けることができ、形状的に思い切った設計が可能となる。
【0112】
また、請求項7の発明の開瞼器は、前記係止手段を複数設けているので、フックに対する紐状体の係止位置を適宜に変更することができる。しかも、係止手段を眼の前後方向に複数並ぶように設けているので、係止位置を前後に変更することで、レンズリング(保持器)の保持位置を前後にずらすことができ、眼に装着した場合に眼球面に対するレンズリングの押圧力を加減することができる。
【0113】
また、請求項8の発明の開瞼器は、複数の位置に係止手段を設け、フックに対する紐状体の係止位置を適宜に変更することで、紐状体の張力を調節できるようにしたので、眼に装着した場合に眼球面に対するレンズリング(保持器)の押圧力を加減することができる。
【0114】
また、請求項9の発明の硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置は、上述の開瞼器を用いているので、同開瞼器の持つ効果を果たすことができる。
【0115】
また、請求項10の発明の保持装置は、開瞼器と保持器を連結する連結具をループ状の弾性材としているので、開瞼器のフックに対する掛け回しが簡単にできる上、脱着も容易にできるようになる。
【0116】
従って、以上のことから本発明によれば、手術者の気力と時間の消費を抑え、且つ患者の眼球に対する負担を飛躍的に軽減し、さらに手術後の合併症の可能性をも削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の開瞼器を備えた保持装置の実際の使用形態から裏返した状態で見た斜視図である。
【図2】同保持装置を患者の眼球に装着した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態の開瞼器を備えた保持装置の、実際の使用形態から裏返した状態で見た斜視図である。
【図4】本発明の開瞼器における係止手段の種々の例を示す概略説明図である。
【図5】本発明の実施形態の保持装置に使用されるレンズリングの平面図と側面図の一例である。
【図6】他のレンズリングの平面図と側面図の一例である。
【図7】さらに他のレンズリングの平面図と側面図の一例である。
【図8】さらに他のレンズリングの平面図と側面図の一例である。
【図9】本発明の実施形態の保持装置に使用される連結具の一例を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態の保持装置を患者の眼球に装着した状態を示す概略断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態の保持装置を患者の眼球に装着した状態を示す概略断面図である。
【図12】従来の技術にかかる保持装置を患者の眼球に装着し、硝子体手術を行っている状態を示す斜視図である。
【図13】従来の技術にかかる保持装置を患者の眼球に装着した際の平面図である。
【図14】図13におけるC−C断面図である。
【符号の説明】
K,K2 開瞼器
1,1B 保持装置
10a、10b フック
13a,17a,13b,17b 牽引部(引っ掛け部)
30 レンズリング(保持器)
40a,40b 連結具(紐状体)
90 連結具
92 係止手段
94 ワイヤ
110 上眼瞼
120 下眼瞼
213a,217a,213b,217b 凹部(係止手段)
313a,317a,313b,317b 凹部(係止手段)

Claims (10)

  1. 上眼瞼と下眼瞼とを牽引する一対のフックを有した開瞼器において、前記各フックに、相手フックの方向から紐状体を引っ掛けるための引っ掛け部を設け、その引っ掛け部に前記紐状体の位置ずれを防止する係止手段を設けたことを特徴とする開瞼器。
  2. 前記係止手段が、前記紐状体の嵌まる凹部であることを特徴とする請求項1記載の開瞼器。
  3. 前記係止手段が、前記紐状体を位置規制する凸部であることを特徴とする請求項1記載の開瞼器。
  4. 前記各フックがワイヤを屈曲成形することにより構成されており、前記係止手段が、前記紐状体を掛け回すワイヤの周面に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の開瞼器。
  5. 前記各フックがワイヤを屈曲成形することにより構成されており、前記係止手段が、前記ワイヤを局部的に屈曲させることにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の開瞼器。
  6. 前記係止手段が、前記フックの幅方向両側部に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の開瞼器。
  7. 前記係止手段が、開瞼器の装着対象である眼の前後方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の開瞼器。
  8. 前記係止手段が、紐状体の係止位置を変更することで紐状体の張力を調節可能な複数の位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の開瞼器。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の開瞼器の両フックの間に、硝子体手術用コンタクトレンズを眼球上で保持するための保持器を配置し、その保持器を、紐状体よりなる連結具を前記フックの引っ掛け部に掛け回すことにより、その連結具を介して両フックによって支持したことを特徴とする硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置。
  10. 前記紐状体よりなる連結具がループ状の弾性材よりなり、各フックと保持器との間をそれぞれ連結していることを特徴とする請求項9記載の硝子体手術用コンタクトレンズの保持装置。
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