JP4069811B2 - 濾過容器、濾過装置及び濾過方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、濾過容器、前記濾過容器を含む濾過装置、及び前記濾過容器又は前記濾過装置を用いた濾過方法に関する。本発明の濾過容器、濾過装置及び濾過方法は、化学、工業、臨床、バイオ等の種々の分野で、液体の精製や濃縮のために用いられる。
【0002】
【従来の技術】
臨床やバイオ分野において、ゲノム解析やプロテオーム解析のための前処理として、核酸やタンパクなどの生体関連物質を精製する場合、▲1▼スピンカラム、▲2▼エタノール沈殿、▲3▼マグネットビーズなどを用いた精製方法がある。▲1▼スピンカラム又は▲2▼エタノール沈殿を用いた精製では、遠心装置が必要である。▲3▼マグネットビーズを用いた精製では、ビーズの供給、マグネットによるB/F分離、溶出などの各工程が必要であり、設備も大きくなってしまう。また、各工程ごとに新しい容器に試料液を移し換える必要がある。
【0003】
一方、液体の精製や濃縮のために、限外濾過膜、セラミック膜等の濾過膜を用いた種々の濾過技術が知られている。例えば、特開平6−296829号公報、特開平7−116481号公報などが参照される。しかしながら、従来の濾過技術では、濾過を実施している際に、被処理液の濃度分極、すなわち、被処理液中の濾過膜を通過しない成分の濃度は濾過膜に近いほど高くなるという濃度分極が徐々に起こり濾過能力が次第に低下する。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−296829号公報
【特許文献2】
特開平7−116481号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような背景から、濾過を実施している際の被処理液の濃度分極が抑制され、一般の化学分野のみならず、臨床やバイオ分野においても、液体の精製や濃縮のために用いられる濾過技術の開発が望まれる。
【0006】
本発明の目的は、濾過を実施している際の被処理液の濃度分極が抑制され高効率での濾過が達成される濾過容器、前記濾過容器を含む濾過装置、及び前記濾過容器又は前記濾過装置を用いた濾過方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の目的は、濾過を実施している際の被処理液の濃度分極が抑制され高効率での濾過が達成され、且つコンパクトで簡便な濾過容器、前記濾過容器を含む濾過装置、及び前記濾過容器又は前記濾過装置を用いた濾過方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明には、以下の(1) 〜 (9) に記載の発明が含まれる。
(1) 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、
第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、
第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材とを備え、
液体流通路は、第1の液体槽の最深部から略鉛直面に沿って蛇行しながら第2の液体槽の最深部にまで延びている蛇行流通路である濾過容器。
【0009】
この濾過容器によれば、第1の液体槽と第2の液体槽とは液体流通路を介して連通させられているので、第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させることができる。そのため、この濾過容器を用いると、被処理液の濃度分極が抑制され、高効率での濾過が達成される。
また、この濾過容器によれば、蛇行流通路によって、第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を相互に移動及び/又は揺動させることができる。
【0010】
(2) 膜状濾過素材を通過した濾過された液を回収する手段を備えている、(1) に記載の濾過容器。
【0011】
この濾過容器によれば、膜状濾過素材を通過した濾過された液を確実に回収することができる。
【0012】
前記液体流通路は、第1の液体槽の最深部から水平状に第2の液体槽の最深部にまで延びている略水平流通路である濾過容器。
【0013】
この濾過容器によれば、略水平流通路によって、第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を相互に移動及び/又は揺動させることができる。略水平流通路は、直線的に幅広状に形成されていてもよいし、略水平面に沿って蛇行して形成されていてもよい。
【0014】
前記第1の液体槽、略水平流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つの底面を画定するように膜状濾過素材が配置されている、前記の濾過容器。
【0015】
この濾過容器によれば、第1の液体槽、略水平流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つの底面に配置された膜状濾過素材によって、濾過が行われる。膜状濾過素材は略水平流通路の底面のみに配置されていてもよい。この場合には、略水平流通路の面積が大きく、膜状濾過素材の面積が大きい方が濾過の効率が高くなる。また、膜状濾過素材は、第1の液体槽、略水平流通路及び第2の液体槽のすべての底面に配置されていてもよい。この場合には、膜状濾過素材の面積がより大きくなり、濾過の効率がより高くなる。
【0018】
(3) 蛇行流通路の垂直両側面のうちの少なくとも一方を画定するように膜状濾過素材が配置されている、(1) 又は (2)に記載の濾過容器。
【0019】
この濾過容器によれば、蛇行流通路の垂直両側面のうちの少なくとも一方に配置された膜状濾過素材によって、濾過が行われる。蛇行流通路の垂直側面の面積が大きく、膜状濾過素材の面積が大きい方が濾過の効率が高くなる。膜状濾過素材が蛇行流通路の垂直両側面に配置されていると、膜状濾過素材の面積がより大きくなり、濾過の効率がさらに高くなる。
【0020】
(4) 膜状濾過素材は交換可能に備えられている、(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載の濾過容器。
【0021】
この濾過容器によれば、所定の濾過操作の終了後に、膜状濾過素材を新しいものに交換することができ、膜状濾過素材の洗浄操作の必要がない。
【0022】
(5) 膜状濾過素材は、生体関連物質を濾過精製するための膜状素材である、(1) 〜(4) のうちのいずれかに記載の濾過容器。
【0023】
この濾過容器によれば、生体関連物質の濾過精製に適する。膜状素材としては各種のものが使用できる。
【0024】
(6) 膜状濾過素材は、フィルター、限外濾過膜、半透膜、膜状担体、及び担体を保持している膜状素材からなる群から選ばれる、(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載の濾過容器。
【0025】
この濾過容器によれば、被処理液の種類や目的に応じて、膜状素材を選択使用することができる。担体とは、ある特定の物質に着目し、その特定の物質のみを物理的、化学的又は生物学的に吸着したり、あるいは通過させたりする性質を有する担体を意図する。担体自体が膜状に形成されていてもよいし、膜状素材に担体が保持されていてもよい。
【0026】
(7) 第1の液体槽及び/又は第2の液体槽は、被処理液についての吸収、蛍光又は散乱光の光学的測定が可能なように、及び/又は被処理液の液量が光学的に確認可能なように構成されている、(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載の濾過容器。
【0027】
この濾過容器において、被処理液についての吸収、蛍光又は散乱光の光学的測定が可能であると、濾過操作中においてサンプル液を採取することなく直接的に被処理液についての濾過の進行度合いや精製度合いを測定することができる。また、この濾過容器において、被処理液の液量が光学的に確認可能であると、濾過操作中において直接的に濾過の進行度合いや、第1及び第2の両液体槽間での移動や揺動の様子を観察することができる。
【0028】
本発明において、膜状濾過素材を含めた濾過容器は、膜状濾過素材を含めてディスポーザブル(使い捨て)であることも好ましい。濾過容器がディスポーザブルであると、膜状濾過素材を含めた濾過容器の洗浄が不要であり、生体関連物質の濾過精製に好適である。
【0029】
(8) 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、
第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、
第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材と、
第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させる手段とを備え、
被処理液の移動及び/又は揺動手段は、1つの加圧口を有し且つプランジャを備えたシリンジポンプと、前記加圧口から第1液体槽に通じるパイプと、前記パイプを貫通させた第1液体槽の上部シール用キャップと、第2液体槽の上部シール用キャップとから主として構成される濾過装置。
【0030】
この濾過装置は、上記のいずれかに記載の濾過容器に、第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させる手段を備えたものである。この濾過装置によれば、被処理液の第1及び第2の両液体槽間での移動や揺動によって、被処理液の濃度分極が抑制され、高効率での濾過が達成される。
【0031】
また、この濾過装置において、被処理液の移動及び/又は揺動手段は、第1の液体槽の内部を加圧する。
【0032】
つまり、この濾過装置によれば、第1の液体槽の内部を加圧することにより、第1の液体槽中の被処理液を液体流通路を介して第2の液体槽中に押し入れることができ、加圧を止めて大気圧付近に戻すことにより、第2の液体槽中の被処理液を液体流通路を介して第1の液体槽中に引き戻すことができ、同時に被処理液は揺れ動く。このようにして、被処理液の第1及び第2の両液体槽間での移動や揺動が行われる。また、加圧された状態で濾過を行うことにより、濾過の効率が上がる。加圧度によって、移動や揺動が制御される。
【0033】
さらに、この濾過装置においては、加圧する装置としてプランジャを備えたシリンジポンプが用いられる。加圧すべき液体槽の上部をシールしてこの液体槽内の空間を密閉系として、シリンジポンプから前記液体槽の内部にエアーを送り込み加圧する。続いて、シリンジポンプのプランジャを往復させると、被処理液の第1及び第2の両液体槽間での連続的な移動や揺動が行われる。
【0036】
(9) 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材とを備え、液体流通路は、第1の液体槽の最深部から略鉛直面に沿って蛇行しながら第2の液体槽の最深部にまで延びている蛇行流通路である濾過容器を用いて、第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させながら膜状濾過素材によって濾過する濾過方法。
【0037】
上記(9)の濾過方法は、上記(1) 〜(7)のうちのいずれかに記載の濾過容器又は上記(8)に記載の濾過装置を用いた濾過方法であり、被処理液の第1及び第2の両液体槽間での移動や揺動によって、被処理液の濃度分極が抑制され、高効率での濾過が達成される。
【0038】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、濾過容器の一例の斜視図である。図2は、図1の濾過容器の垂直断面図である。図3は、濾過液回収底板の斜視図である。以下の説明において、左右とは、図2を基準として、その左を左、右を右といい、前後とは、図2の紙面表側を前、紙面裏側を後というものとする。
【0039】
図1及び図2を参照すると、濾過容器10は、被処理液Lを入れる第1の液体槽11と、第1液体槽11と液体流通路13を介して連通された被処理液Lを入れる第2の液体槽12と、膜状濾過素材Mと、膜状濾過素材Mを通過した濾過された液Fを回収する手段31とを備えている。
【0040】
第1液体槽11及び第2液体槽12は共に、光学的透明なプラスチックから形成された上部開口された断面四角形の筒状構造のものである。第1液体槽11の右側壁11a の最深部は前後方向の全領域にわたって開口11b させられている。第2液体槽12の左側壁12a の最深部は前後方向の全領域にわたって開口12b させられている。第1液体槽11の開口11b と、第2液体槽12の開口12b とを連通させるように直線状に水平流通路13が形成されている。水平流通路13の前後方向の幅は、水平流通路13の底面の面積をできるだけ大きくするべく、開口11b 及び開口12b の幅と同一とされている。水平流通路13の前後側壁及び頂壁は、第1液体槽11及び第2液体槽12と一体成形されたものである。
【0041】
第1液体槽11、第2液体槽12及び水平流通路13の全底面にわたって、膜状濾過素材Mが配置されている。すなわち、第1液体槽11、第2液体槽12及び水平流通路13の各底面は膜状濾過素材Mによって画定・形成されている。膜状濾過素材Mは、濾過液Fの回収底板31の上に支持配置されており、交換可能である。
【0042】
回収底板31は、図3に示すように、平面視長方形であり、周縁部にフランジ32,33 (左右フランジ32, 前後フランジ33)が形成され、上面には前後方向に延びた多数の凸状34が互いに平行に且つ前後フランジ33,33 とは一定の間隔Cを保つように形成されている。さらに、底板31の中央部には濾過液Fの排出口35が形成され、前記間隔Cは、左右方向中央部に近づくに従って低くなるように形成された濾過液流路とされ、排出口35に濾過液Fが集まるようにされている。多数の凸状34によって、膜状濾過素材Mが支持されている。
【0043】
図4には、濾過液Fの回収手段の変形例が示されている。第1液体槽11、第2液体槽12、水平流通路13及び膜状濾過素材Mについては、図1及び図2に示したものと同一である。濾過液Fの回収手段は、回収底板41と回収底板41上に載せられたスペーサー45とを含む。回収底板41は、平面視長方形であり、周縁部にフランジ42が形成された皿状のものであって、底板41の中央部には濾過液Fの排出口44が形成されている。また、底板41の左右両端部内側にはフランジ42に連続して、スペーサー45受け用の突起43が形成されている。スペーサー45は、図5に示すように、平面視長方形板であり、濾過液Fを通すための多数の孔46が形成されている。スペーサー45は、回収底板41の突起43上に支持され、スペーサー45と底板41上面との間には間隔が存在する。スペーサー45上に、膜状濾過素材Mが支持されている。
【0044】
上記濾過容器10を用いて、第1液体槽11及び第2液体槽12に入れられた被処理液Lのいずれか又はタイミングを調整して両者に空気圧をかけて、水平流通路13を介して被処理液Lを相互に移動及び/又は揺動させながら濾過を行う。そうすると、被処理液Lの濃度分極が抑制されるので、高効率での濾過が達成される。
【0045】
上記濾過容器10では、水平流通路13の底面の面積が大きく、且つ、膜状濾過素材Mが水平流通路13の底面のみならず、第1液体槽11の底面及び第2液体槽12の底面にも配置されているので、膜状濾過素材Mの面積が非常に大きくなり、濾過の効率がより高くなる。膜状濾過素材Mを通過した濾過液Fは、回収底板31,41 により回収され、排出口35,44 より排出される。上記濾過容器では、水平流通路13を有するので、装置構成がシンプルである利点がある。
【0046】
図6は、本発明の濾過容器の一例の斜視図である。図7は、図6中のVII-VII 線に沿う垂直断面図である。以下の説明において、左右とは、図7を基準として、その左を左、右を右といい、前後とは、図7の紙面表側を前、紙面裏側を後というものとする。
【0047】
図6及び図7を参照すると、濾過容器10は、被処理液Lを入れる第1の液体槽51と、第1液体槽51と液体流通路53を介して連通された被処理液Lを入れる第2の液体槽52と、膜状濾過素材Mと、膜状濾過素材Mを通過した濾過された液Fを回収する手段とを備えている。
【0048】
第1液体槽51及び第2液体槽52は共に、光学的透明なプラスチックから形成された上部開口された断面四角形の筒状構造のものである。第1液体槽51の右側壁51a の最深部は、前側から前後方向の半分の領域にわたって開口51b させられている。第2液体槽52の左側壁52a の最深部は、前側から前後方向の半分の領域にわたって開口52b させられている。第1液体槽11の開口51b と、第2液体槽12の開口52b とを連通させ、且つ鉛直面に沿って流路仕切り板54によって蛇行させられた蛇行流通路53が形成されている。蛇行流通路53は、その側面の面積が大きくなるように、第1液体槽51及び第2液体槽52と同一の高さにまで形成されている。蛇行流通路53の底壁、前側壁、頂壁及び仕切り板54は、第1液体槽51及び第2液体槽52と一体成形されたものである。
【0049】
蛇行流通路53の後側の全側面にわたって、膜状濾過素材Mが鉛直に配置されている。すなわち、蛇行流通路53の後側面は膜状濾過素材Mによって画定・形成されている。膜状濾過素材Mは、交換可能である。
【0050】
膜状濾過素材Mの後ろ側には、濾過液Fの回収室55が形成されている。回収室55の後側壁55a は、第1液体槽51及び第2液体槽52と一体成形されたものである。回収室55の底壁には、濾過液Fの排出口56が形成されている。
【0051】
上記濾過容器10を用いて、第1液体槽51及び第2液体槽52に入れられた被処理液Lのいずれか又はタイミングを調整して両者に空気圧をかけて、蛇行流通路53を介して被処理液Lを相互に移動及び/又は揺動させながら濾過を行う。そうすると、被処理液Lの濃度分極が抑制されるので、高効率での濾過が達成される。
【0052】
上記濾過容器10では、蛇行流通路53の側面の面積が大きく、すなわち膜状濾過素材Mの面積が大きく、濾過の効率が高い。流通路53から膜状濾過素材Mを通過した濾過液Fは、回収室55の排出口56より排出される。
【0053】
上記濾過容器10では、蛇行流通路53の後側面にのみ膜状濾過素材Mが配置されている。蛇行流通路53の前側面にも膜状濾過素材Mが配置されると、膜状濾過素材Mの面積は2倍となり、さらに濾過効率は高くなる。
【0054】
以上説明した濾過容器の例ではいずれも、濾過容器は2つの液体槽、すなわち第1液体槽11,51 及び第2液体槽12,52 を有している。しかしながら、被処理液の移動及び/又は揺動をさせるために、互いに液体流通路で連通された3つ以上の液体槽を設けることも可能であろう。
【0055】
図8は、以上説明した濾過容器に、被処理液を加圧された状態で移動及び/又は揺動させる手段を備えた濾過装置の概略構成を示す図である。図8においては、水平流通路13を有する図1〜5に例示の濾過容器が便宜的に描かれている。しかしながら、蛇行流通路53を有する図6〜7に例示の濾過容器を用いても全く同様に濾過装置を構成することができる。
【0056】
図8を参照すると、濾過装置は、第1液体槽11、第2液体槽12、液体流通路13、膜状濾過素材M及び濾過液の排出口35を備える濾過容器10と、被処理液Lの移動及び/又は揺動手段60とを備えている。
【0057】
移動及び/又は揺動手段60は、2つの加圧口61A,61B を有し且つプランジャ62を備えたシリンジポンプ61と、一方の加圧口61A から第1液体槽11に通じる第1パイプ64と、第1パイプ64を貫通させた第1液体槽11の上部シール用キャップ65と、他方の加圧口61B から第2液体槽12に通じる第2パイプ66と、第2パイプ66を貫通させた第2液体槽12の上部シール用キャップ67と、第2パイプ66の途中に介在させられた三方バルブ68とから主として構成される。第1パイプ64には圧力センサ69が備えられている。シール用キャップ65及びシール用キャップ67は、上下移動可能であり、上下移動は自動的に制御されている。
【0058】
この濾過装置を用いた濾過操作について説明する。初期において、三方バルブ68は第2液体槽12側が閉じられている。第1液体槽11及び第2液体槽12に被処理液Lを入れる。続いて、シール用キャップ65及びシール用キャップ67を下降させ、第1液体槽11及び第2液体槽12の上部をシールする。シリンジポンプ61のプランジャ62を左ヘ作動させ、加圧口61A から第1パイプ64を介して第1液体槽11内の圧力を上昇させる。この段階で、被処理液Lに圧力がかかり被処理液Lの一部は第1液体槽11側から第2液体槽12側へ移動する。その後、三方バルブ68の大気側を閉じ、第1液体槽11内が加圧された状態で、シリンジポンプ61のプランジャ62を左右に往復させる。これにより、被処理液Lは加圧された状態で、第1液体槽11と第2液体槽12との間を連続的に移動又は揺れ動きながら、膜状濾過素材Mによって濾過が行われ、排出口35から濾過液が得られると共に被処理液Lは濃縮される。第1液体槽11と第2液体槽12との間での移動や揺動によって、被処理液の濃度分極が抑制され、しかも加圧された状態で濾過するので、高効率での濾過が達成される。加圧度やプランジャ62の往復速度によって、移動や揺動が制御される。
【0059】
図9には、移動及び/又は揺動手段の変形例が示されている。図9を参照すると、濾過装置は、第1液体槽11、第2液体槽12、液体流通路13、膜状濾過素材M及び濾過液の排出口35を備える濾過容器10と、被処理液Lの移動及び/又は揺動手段70とを備えている。
【0060】
移動及び/又は揺動手段70は、1つの加圧口71A を有し且つプランジャ72を備えたシリンジポンプ71と、加圧口71A から第1液体槽11に通じるパイプ73と、パイプ73を貫通させた第1液体槽11の上部シール用キャップ74と、第2液体槽12の上部シール用キャップ75とから主として構成される。パイプ73には圧力センサ76が備えられている。シール用キャップ74は、上下移動可能であり、上下移動は自動的に制御されている。
【0061】
この濾過装置を用いた濾過操作について説明する。第1液体槽11及び第2液体槽12に被処理液Lを入れ、続いて、シール用キャップ74及びシール用キャップ75を下降させ、第1液体槽11及び第2液体槽12の上部をシールする。または、まず、シール用キャップ75を下降させ第2液体槽12の上部をシールし、その後、第1液体槽11に被処理液Lを入れ、シール用キャップ74を下降させ第1液体槽11の上部をシールしてもよい。第2液体槽12内は完全に密閉される。
【0062】
シリンジポンプ71のプランジャ72を下方に作動させ、加圧口71A からパイプ73を介して第1液体槽11内の圧力を上昇させる。この段階で、被処理液Lに圧力がかかり被処理液Lの一部は第1液体槽11側から第2液体槽12側へ移動する。第1液体槽11内が加圧された状態で、シリンジポンプ71のプランジャ72を上下に往復させる。プランジャ72が下方に作動する際に、第1液体槽11内の空気が圧縮され、被処理液Lの一部が第1液体槽11側から第2液体槽12側へ移動し、また、密閉された第2液体槽12内の空気が圧縮される。プランジャ72が上方に戻る際に、密閉された第2液体槽12内の圧縮された空気の反動により、被処理液Lの一部が第2液体槽12側から第1液体槽11側へ移動する。このようにして、プランジャ72の上下往復によって、処理液Lは加圧された状態で、第1液体槽11と第2液体槽12との間を連続的に移動又は揺れ動きながら、膜状濾過素材Mによって濾過が行われ、排出口35から濾過液が得られると共に被処理液Lは濃縮される。第1液体槽11と第2液体槽12との間での移動や揺動によって、被処理液の濃度分極が抑制され、しかも加圧された状態で濾過するので、高効率での濾過が達成される。加圧度やプランジャ72の往復速度によって、移動や揺動が制御される。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、濾過を実施している際の被処理液の濃度分極が抑制され高効率での濾過が達成される濾過容器、前記濾過容器を含む濾過装置、及び前記濾過容器又は前記濾過装置を用いた濾過方法が提供される。
【0064】
本発明の濾過容器や濾過装置は、コンパクトな装置構成が可能であり、一般の化学分野のみならず、臨床やバイオ分野においても、液体の精製や濃縮のために好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 濾過容器の斜視図である。
【図2】 図1の濾過容器の垂直断面図である。
【図3】 濾過液回収底板の斜視図である。
【図4】 濾過液の回収手段の変形例を示す、濾過容器の垂直断面図である。
【図5】 スペーサーの斜視図である。
【図6】 本発明の濾過容器の一例の斜視図である。
【図7】 図6中のVII-VII 線に沿う垂直断面図である。
【図8】 濾過装置の概略構成の一例を示す図である。
【図9】 本発明の濾過装置の概略構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
L:被処理液
10:濾過容器
11:第1の液体槽
13:液体流通路
12:第2の液体槽
M:膜状濾過素材
F:濾過液
31:濾過液Fの回収手段
Claims (9)
- 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、
第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、
第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材とを備え、
液体流通路は、第1の液体槽の最深部から略鉛直面に沿って蛇行しながら第2の液体槽の最深部にまで延びている蛇行流通路である濾過容器。 - 膜状濾過素材を通過した濾過された液を回収する手段を備えている、請求項1に記載の濾過容器。
- 蛇行流通路の垂直両側面のうちの少なくとも一方を画定するように膜状濾過素材が配置されている、請求項1又は2に記載の濾過容器。
- 膜状濾過素材は交換可能に備えられている、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の濾過容器。
- 膜状濾過素材は、生体関連物質を濾過精製するための膜状素材である、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の濾過容器。
- 膜状濾過素材は、フィルター、限外濾過膜、半透膜、膜状担体、及び担体を保持している膜状素材からなる群から選ばれる、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の濾過容器。
- 第1の液体槽及び/又は第2の液体槽は、被処理液についての吸収、蛍光又は散乱光の光学的測定が可能なように、及び/又は被処理液の液量が光学的に確認可能なように構成されている、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の濾過容器。
- 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、
第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、
第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材と、
第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させる手段とを備え、
被処理液の移動及び/又は揺動手段は、1つの加圧口を有し且つプランジャを備えたシリンジポンプと、前記加圧口から第1液体槽に通じるパイプと、前記パイプを貫通させた第1液体槽の上部シール用キャップと、第2液体槽の上部シール用キャップとから主として構成される濾過装置。 - 濾過すべき被処理液を入れる第1の液体槽と、第1の液体槽と液体流通路を介して連通された濾過すべき被処理液を入れる第2の液体槽と、第1の液体槽、液体流通路及び第2の液体槽のうちの少なくとも1つに備えられた膜状濾過素材とを備え、液体流通路は、第1の液体槽の最深部から略鉛直面に沿って蛇行しながら第2の液体槽の最深部にまで延びている蛇行流通路である濾過容器を用いて、
第1の液体槽及び第2の液体槽に入れられた被処理液を、液体流通路を介して相互に移動及び/又は揺動させながら膜状濾過素材によって濾過する濾過方法。
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