JP4069502B2 - 自動車の荷室構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は自動車の荷室構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のRV車の人気の高まりのなかで、ステーションワゴン、1.5ボックスカーなどの多目的車両では、一層の使い勝手の良さが求められる傾向にある。このような中で、特開平7−179150号公報には、後席の座部とシートバックとを別体に作り、座部を前方に立てた後にシートバックを前方に倒すと、このシートバックの背面がラッゲージフロアパネルとほぼ同一レベルとなるように設計し、また、このシートバックの背面及びラッゲージフロアに、夫々、車体前後方向に延びる左右一対のレールを設けた荷室構造が提案されている。
【0003】
この提案によれば、後席のシートバックを前方に倒すことにより拡大した荷室への荷物の積み降ろしに際し、バックドアを開けて荷室の後端部に荷物を置き、次いで、レールを用いて荷物を押し込むことによって、拡大した荷室空間の深部つまりシートバックの背面の上にも容易に荷物を送り込むことができるという利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特開平7−179150号公報の提案では、前方に倒した後席のシートバックの背面の上に荷物を置くことから、その後方の荷室の床面つまりラッゲージフロアの高さレベルを前方に倒した後席のシートバックの背面に一致させる必要があり、この結果、ラッゲージフロアの高さレベルを下げて荷室を下方へ拡大するのが設計上難しくなるという欠点がある。
そこで本発明の目的は、荷室に設けたレールを用いて荷室へ荷物の積み降ろし性を改善しつつ、設計上、ラッゲージフロアの高さレベルを下げて荷室を下方に拡大するのが容易な自動車の荷室構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の技術的課題は、本発明によれば、車両の後端開口を開閉するバックドアを備え、該バックドアを開けることによって車両の後部の荷室に荷物の積み降しを行うことのできる自動車の荷室構造において、荷室の床面に設置された第1のガイドレールと、荷室に配置されて荷物を載置するためのフロアボードであって、第1のガイドレールに案内されて前後移動可能なフロアボードと、所定の格納位置に格納することが出来る後席と、を有し、バックドアが上下に上側ドアと下側ドアとに分割されて、上側ドアはその上端が上ヒンジを介して車体に取り付けられ、下側ドアは、該下側ドアの内側面がほぼ水平状態となる位置まで開くことができるように、その下端が下ヒンジを介して車体に取り付けられ、フロアボードが、第1のガイドレールにより荷室から車両の後方へ所定量突出した突出位置まで後方に移動出来るようになっており、該フロアボードを下側ドアを開けた状態で突出位置まで引き出したときに、該フロアボードによって荷室の床面と下側ドアとの間の隙間が覆われ且つ下側ドアの内側面によりフロアボードが支持されるようになっており、フロアパネルの後席の設置フロア部分に、後席を前後に移動可能に案内する第2のガイドレールが設けられ、該第2のガイドレールは、第1のガイドレールと側面視で少なくとも一部重複するように第1のガイドレールの車幅方向外方で第1のガイドレールと車幅方向に並んで車体前後方向に延びるように設けられ、これにより、第2のガイドレールの車幅方向内方にフロアボードが移動する空間を形成して、フロアボードが第1のガイドレールにより後席の設置フロア部分まで前方に移動出来るようになっている、ことを特徴とする自動車の荷室構造を提供することによって達成される。
【0006】
すなわち、バックドアを、上ヒンジを介して車体に取り付けた上側ドアと、下ヒンジを介して車体に取り付けた下側ドアとの分割構造とすることにより、この下側ドアに例えばバンパーを取り付けることで、設計上、このバンパーの取り付け位置に制約を受ける荷室の床面つまりラッゲージフロアの高さレベルを下げることができる。また、バックドアを上下2分割とすることで、設計上、車体の後端開口を下方に拡大するのが容易であり、高さ寸法の大きな荷物を搭載することのできる荷室を作ることが容易になる。また、下側ドアを開けたときに、前後に移動可能なフロアボードの一部を車体後方まで引き出して、このフロアボードで下側ドアと荷室の床面との間の隙間を覆うので、車外へ突出したフロアボードに荷物を載せて、この荷物をフロアボードを前方に移動させることにより、荷室の中に収容することができるので、バックドアを介した荷物の積み降ろし性を従来よりも改善することができる。
【0007】
また、フロアパネルの後席の設置フロア部分に、後席を前後に移動可能に案内する第2のガイドレールが設けられ、第2のガイドレールは、第1のガイドレールと側面視で少なくとも一部重複するように第1のガイドレールの車幅方向外方で第1のガイドレールと車幅方向に並んで車体前後方向に延びるように設けられ、これにより、第2のガイドレールの車幅方向内方にフロアボードが移動する空間を形成して、フロアボードが第1のガイドレールにより後席の設置フロア部分まで前方に移動出来るようにしている。また、後席は第2のガイドレールによって前後にスライド可能となるが、この後席の前後スライドのための第2のガイドレールと、第1のガイドレールとは別体であるため、この第1のガイドレールの高さレベルを、第2のガイドレールの高さレベルとは関係なく設定することが可能であり、このことから第1のガイドレールで案内されるフロアボードの高さレベルを、後席の要求高さレベルとは無関係に設定することができる。換言すれば、後席の要求高さレベルとは無関係に、フロアボードの高さレベルを下げて荷室の容積を、設計上、実質的に下方に拡大することが容易になる。
【0008】
本発明は、更に、後席が、そのシートバックを前方に倒して座部の上に折り重ねた状態で、座部の前端を中心にして立ち上げて、前席のシートバックの背面に沿ってほぼ直立した格納姿勢をとることができるようにしてもよい。これにより、後席を格納姿勢にすることで、前席の後方の車内空間を実質的に拡大した荷室として利用することができる。そして、このようにして荷室を拡大したとしても、フロアボードが荷室で前後に移動可能であるため、このフロアボードを利用して拡大した荷室の深部へ荷物の送り込みを容易に行うことができる。
本発明の他の目的およびその利点は、以下の本発明の好ましい実施例から明らかになろう。
【0009】
【実施例】
以下に、添付した図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
図1は、1.5ボックスカーの車体後部の概略平面図であり、図2は、図1のIIーII線に沿った断面図である。車体後部1のアンダボディは、リヤサイドメンバ2、リヤクロスメンバ3、後部フロアパネル4等の従来から知られている部材で構成されている。同図において、参照符号5は、後席の後方の荷室6の床を構成するラッゲージフロア部分を示し、参照符号7は後席設置フロア部分を示す。
【0010】
図1及び図2において、参照符号9はバンパーを示し、また、参照符号10はバックドアを示す。バックドア10は上側ドア11と下側ドア12とに上下に2分割された構造を有し、上側ドア11はその上端が上ヒンジ(図示せず)を介して車体に連結された上ヒンジ下開き式のドアで構成されている。他方、下側ドア12は、バンパー9と実質的に同じ高さ寸法を有し、この下側ドア12にバンパー9が取り付けられている。また、下側ドア12は、その下端が下ヒンジ13を介して車体に連結されており(図3参照)、この下ヒンジ13を中心にして下側ドア12を開けることができる下ヒンジ上開き式のドアで構成されている。そして、この下側ドア12を開き状態にしたときには、図4から理解できるように、下側ドア12の内側に添設したプレート部材14がほぼ水平状態となるように設計されている。
【0011】
フロアパネル4には、ラッゲージフロア部分5から後席設置フロア部分7に亘って延びる左右一対の第1のガイドレール15が敷設され、この一対のガイドレール15は、互いに車幅方向に離間して敷設され、また、互いに平行に延在している。フロアパネル4には、また、後席設置フロア部分7に左右一対の第2のガイドレール16が敷設され、この第2のガイドレール16は、後に詳しく説明するように、第1のガイドレール15の外側に配置されている。
【0012】
図中、参照符号20はフロアボードを示し、このフロアボード20は、実質的にラッゲージフロア部分5を覆う大きさを有し、また、上述した第1のガイドレール15に案内されて前後に移動可能とされている。すなわち、フロアボード20の下面には、一対の第1のガイドレール15に対応する位置に一対のアッパーレール21が取り付けられ、このアッパーレール21は対応する第1のガイドレール15に対して摺動可能に嵌合されている(図5及び図6参照)。このフロアボード20に、スペアタイヤ22を出し入れするためにヒンジ止めした開閉ドア23を形成しておくのが好ましく、また、フロアボード20を引き出す際の操作性を向上するために、フロアボード20の後端部分に、横方向に延びる凹所からなる引き手24を設けておくことが好ましい(図1参照)。
【0013】
後席設置フロア部分7は、ラッゲージフロア部分5と同じ高さレベルに設定され、この後席設置フロア部分7に配置された後席25は、第2のガイドレール16によって前後にスライド可能とされている。また、後席25は、横ピン26を中心にして座部27を前方に倒すことができるようになっている。すなわち、後席25は、そのシートバック28を前方に倒してこれを座部27の座面の上に折り重ね、次いで、後席25を横ピン26を中心にして前方に立ち上げることによって、後席25は2つ折りの状態で、前席(図示せず)のシートバックの背面に沿ってほぼ直立した格納姿勢をとることができ、これにより、ラッゲージフロア部分5で形成される荷室6を、このラッゲージフロア部分5と同じ高さレベルの後席設置フロア7まで拡大して、前席の後方の車内空間を、段差の無い荷室として利用することができる。
【0014】
フロアボード20を前後に案内する第1のガイドレール15に対して、前述したように、後席25を前後に案内する第2のガイドレール16は、第1のガイドレール15の外側に配置されているが、この第2のガイドレール16の配置位置は、フロアボード20の前後移動と、後席25の前後移動とが干渉しないように配慮して設定されている。また、後席25の座部27の下方には、後席設置フロア部分7との間に空間Sが設けられ、フロアボード20を前方に押し込んだときに、フロアボード20が空間Sの中に入り込むことができるようになっている(図5参照)。
【0015】
以下に、上述した実施例の作用効果を説明する。
フロアボード20は、典型的には、図7に示すように、ラッゲージフロア部分5に位置する正規位置(図7の(b))を挟んで、図7の(a)に矢印で示すように、正規位置からその前方に移動して後席設置フロア部分7を実質的に覆う前端位置と、正規位置から後方に移動して車両の後方に所定量だけ突出した突出位置(図7の(c))との間で移動自在である。フロアボード20は、車両の走行中に移動するのを抑えるために、前端位置及び正規位置で、フロアボード20を車体に固定するためのストッパ(図示せず)を設けておくのが好ましい。
【0016】
図7から理解できるように、バックドア10を開け、フロアボード20を車体の後方に引き出して突出位置にあるフロアボード20の上に荷物を置き、次いで、フロアボード20を押し込むという作業を行うだけで、荷室6の中に荷物を収容することができる。また、この実施例では、フロアボード20がラッゲージフロア部分5とほぼ同じ大きさを有しているため、数多くの荷物を積み込む際に、突出位置まで引き出したフロアボード20の上に整理しながら荷物を置き、次いで、フロアボード20を押し込むという作業を行うだけで、数多くの荷物を整理した状態で荷室6の中に収容することができる。したがって、荷室6の中に上半身を入れて、荷室6の中に収容されている数多くの荷物を整理する必要が無くなる。
【0017】
図7の(a)は、典型的には、同図に矢印で示したように、後席25を図2の仮想線で示す格納姿勢にした状態のフロアボード20の使い方を図示するものである。このようにフロアボード20をその正規位置(ラッゲージフロア部分5を覆う位置)から更に前方に押し込むことで、拡大した荷室の深部まで、このフロアボード20を用いて荷物を積み込むことができる。
【0018】
フロアボード20を車体後方に突出位置(図7の(c))まで引き出して、この上に荷物を載せたときに、その荷重の一部を車体側に分散させるために、下側ドア12のプレート部材14によってフロアボード20を支持するようにするのが好ましい。
【0019】
上述した実施例によれば、車体後端の開口を開閉するバックドア10は、その下側ドア12によって、実質的にバンパー9の高さレベルまで下方に拡大してあるため、バンパー9の高さレベルに拘束されることなく、車体後部のフロアの高さレベルを下げることができるため、荷室の容積を下方に拡大することが容易になるという利点がある。更に、突出状態のフロアボード20によって、下側ドア12とフロアパネル4との間の隙間G(図4参照)が橋渡しされるため、荷室6へのバックドア10を介した荷物の出し入れ性を向上することができる。
【0020】
また、第2のガイドレール16によって前後に移動可能な後席25がフロアボード20と干渉しないようにしてあるため荷室6の床面を実質的に構成するフロアボード20の存在とは無関係に後席25を後方に移動させることができるため、設計上、この後席25の後方への移動量を大きく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施例の荷室構造が適用された自動車の後部の概略平面図である。
【図2】図1のIIーII線に沿った概略断面図である。
【図3】車体後端部分の断面図である。
【図4】図3に対応した断面図であって、上下2分割のバックドアの下側ドアを開いてフロアボードを車体の後方の突出位置まで引き出した状態を示す図である。
【図5】図2のVーV線に沿った断面図である。
【図6】図2のVIーVI線に沿った断面図である。
【図7】荷室に配置したフロアボードの使用例を例示するための説明図であって、(a)は後席設置フロア部分まで前方に移動させる途中を図示したものであり、(b)はラッゲージフロア部分を覆う正規位置にあるフロアボードを図示したものであり、(c)は、車体の後方に突出させた突出位置あるフロアボードを図示したものである。
【符号の説明】
1 車体後部
5 ラッゲージフロア部分
6 荷室
7 後席設置フロア部分
10 バックドア
11 バックドアの上側ドア
12 バックドアの下側ドア
15 第1のガイドレール
16 第2のガイドレール
20 フロアボード
25 後席
26 後席を前倒しにして格納姿勢をとらせるためのヒンジ
Claims (2)
- 車両の後端開口を開閉するバックドアを備え、該バックドアを開けることによって車両の後部の荷室に荷物の積み降しを行うことのできる自動車の荷室構造において、
前記荷室の床面に設置された第1のガイドレールと、
前記荷室に配置されて荷物を載置するためのフロアボードであって、前記第1のガイドレールに案内されて前後移動可能なフロアボードと、
所定の格納位置に格納することが出来る後席と、を有し、
前記バックドアが上下に上側ドアと下側ドアとに分割されて、上側ドアはその上端が上ヒンジを介して車体に取り付けられ、前記下側ドアは、該下側ドアの内側面がほぼ水平状態となる位置まで開くことができるように、その下端が下ヒンジを介して車体に取り付けられ、
前記フロアボードが、前記第1のガイドレールにより前記荷室から車両の後方へ所定量突出した突出位置まで後方に移動出来るようになっており、該フロアボードを前記下側ドアを開けた状態で前記突出位置まで引き出したときに、該フロアボードによって前記荷室の床面と前記下側ドアとの間の隙間が覆われ且つ前記下側ドアの内側面により前記フロアボードが支持されるようになっており、
前記フロアパネルの前記後席の設置フロア部分に、前記後席を前後に移動可能に案内する第2のガイドレールが設けられ、該第2のガイドレールは、前記第1のガイドレールと側面視で少なくとも一部重複するように第1のガイドレールの車幅方向外方で前記第1のガイドレールと車幅方向に並んで車体前後方向に延びるように設けられ、これにより、前記第2のガイドレールの車幅方向内方に前記フロアボードが移動する空間を形成して、前記フロアボードが前記第1のガイドレールにより前記後席の設置フロア部分まで前方に移動出来るようになっている、ことを特徴とする自動車の荷室構造。 - 前記後席が、そのシートバックを前方に倒して座部の上に折り重ねた状態で、座部の前端を中心にして立ち上げて、前席のシートバックの背面に沿ってほぼ直立した格納姿勢をとることができることを特徴とする請求項1に記載の自動車の荷室構造。
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