JP4069299B2 - 高周波プラズマの発生方法 - Google Patents
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Description
図20は、薄膜の堆積やエッチングに使用されている容量性結合型プラズマ発生装置70を模式的に示す図である。反応性ガスが封入されているチャンバ71に、2枚の平行平板電極である高周波印加電極72と接地電極73が配設されていて、高周波発振器74から高周波電力を印加してプラズマ75を発生させる。高周波発振器74の一端は、整合器76と直流阻止コンデンサ77を介して高周波印加電極72に接続され、他端は接地電極73に接続されるとともに接地されている。プラズマ75を誘電体とみなすと、平行平板電極72,73がコンデンサの形状であることから容量性結合型プラズマと呼ばれる。このプラズマは、平行平板電極に形成される電界による放電によって生じる。典型的な放電状態は、ガス圧力が10〜1000Pa、電極間隔が1〜10cm、高周波電力が100〜1000W程度であり、プラズマ密度は、1×1016m-3(1×1010cm-3)程度である(非特許文献1参照)。
誘導性結合型プラズマ装置においては、アンテナ電流が作る磁界により放電する。つまり、ファラデーの電磁誘導の法則により磁界の時間変化が電界を誘導し、この電界で電子が加速されてプラズマ放電が維持される。ここで、磁界形放電のためのアンテナとしては、円筒形状のヘリカルアンテナ以外には、渦巻形状のスパイラルアンテナも使用されている。
誘導性結合型プラズマ装置で得られるプラズマは、プラズマ密度として1017〜1018m-3、電子温度2〜4eV、直径30cm程度であり、広い圧力範囲(1〜40Pa)で容易に、大口径の高密度プラズマが得られる(非特許文献1及び特許文献1参照)。
図22は、ヘリコン波プラズマ装置の一例を模式的に示す図である。ヘリコン波プラズマ装置100は、石英管101を備えた反応室102と、ヘリコン波励起用高周波発振器103と、サドルアンテナ104と、電磁石105と、永久磁石106と、基板107を載置するステージ108と、基板バイアス用高周波発振器109とから構成されている。電磁石105と永久磁石106により形成される磁界をBで示している。石英管101に巻かれたサドルアンテナ104に高周波発振器からの高周波電力を印加させると、磁場が励起されヘリコン波プラズマ110が励起される。ここで、高周波電力は、プラズマ110中の波のエネルギーになり、この波の電界により個々の電子が加速や減衰を受けて、最終的に電子の運動エネルギーが増大してプラズマ110が維持される。
ヘリコン波プラズマ装置100で得られるプラズマは、石英管101の直径が10cm、ヘリコン波励起用電磁石による磁界が0.01T(テスラ)、即ち、100G(ガウス)、ヘリコン波励起用高周波発振器103として13.56MHz、1kWを使用し、1〜5Paの圧力において1018〜1019m-3のプラズマ密度が得られる(非特許文献1参照)。
本発明の高周波プラズマの発生方法は、さらに、反応室内に基板が載置されるステージを備えた高周波プラズマ装置を用いることができる。
反応室の軸方向の磁束密度分布において、好ましくは、その両端部の磁場を中心部よりも低くする。
好ましくは、副磁石を電磁石とし、反応室の軸方向のプラズマ密度分布を、電磁石の電流により変化させる。副磁石を電磁石とし、反応室の径方向のプラズマ密度分布を、電磁石の電流により変化させるようにしてもよい。反応室の軸方向のプラズマ密度の最大値は、好ましくは、1×109 cm-3以上である。
反応室内に基板が載置されるステージが設けられている場合には、好ましくは、ステージにバイアス用高周波発振器を接続し、基板のバイアスを制御する。
本発明法によれば、磁場が一様磁場、発散磁場、収束磁場、カスプ磁場の何れかまたは組み合わせにより形成され、アンテナによりプラズマ励起されて、大きな容積をもつヘリコン波からなる高周波プラズマを発生することができると共に、径方向分布のプラズマ密度分布を均一性よく制御できるヘリコン波プラズマを発生することができる。
また、高周波発振器の周波数を上記のように選定すれば、大きな容積をもつヘリコン波プラズマを発生することができると共に、径方向分布のプラズマ密度分布の均一性のよいヘリコン波プラズマを発生することができる。
図1は本発明による高周波プラズマ装置20の第1の実施の形態の構成を模式的に示す図である。高周波プラズマ装置20は、所定の圧力の気体が導入されてプラズマを発生させる反応室1と、この反応室1の左端の所定位置に配置された石英などの窓2と、反応室1の外部に配設される磁石3と、窓部に接して反応室1外に配設されたプラズマ発生用のアンテナ4と、このアンテナ4へ高周波電力を供給する高周波発振器5と、から構成される。図中の10は、発生したICP(誘導性結合型プラズマ)やヘリコン波による高周波プラズマを示している。
従来、効率のよい磁場配位は知られておらず、本発明者らが、高周波プラズマ装置における各種磁場配位とアンテナの検討を行い、プラズマの解析を行うことにより見出したものである。
図2は、本発明の高周波波プラズマ装置に用いる電磁石により反応室に生じる磁束密度分布の一例を示す図である。図2において、横軸が円筒形反応室の中心軸に於けるZ軸方向の距離を示し、縦軸が磁束密度を示している。図1に示すXYZ座標において、横軸のZ=0が図1の反応室の左端のスパイラルアンテナの設置場所であり、Z=Lが反応室の右端部を示している。
本発明の高周波プラズマ装置における磁束密度分布は、Z=0からZ=L1まで、磁束密度がB1からB2まで徐々に増加し、軸方向の中心部(L1〜L2)がほぼ平坦で値がB2の磁束密度を有し、Z=L2からZ=Lまで、磁束密度がB2からB3まで徐々に減少し、Z=LでB3の磁束密度である。
図示するように、(a)の一様磁場はZ方向の磁場が同じである。(b)の発散磁場はZ方向の磁場が増大し、(c)の収束磁場はZ方向の磁場が減少する。また、(d)のカスプ磁場は、発散磁場と収束磁場の組合わせであり、スパラルアンテナ4の近傍に極大値を有している磁場である。
磁石3が電磁石の場合、主電磁石3aと副電磁石3bの巻線数、巻線間隔、通電する直流電流の大きさの変更などにより、所望の磁場配位が得られるようにすることができる。所望の磁場配位を得るには、永久磁石による主磁石3aと副磁石3bの極性を変えた場合、または、主電磁石3aと副電磁石3bの方向が同じ場合で印加する直流電流の向きを互いに反対方向にした場合に生じるカスプ磁界を利用してもよい。
以上、説明したように、図2及び図3で説明した磁場配位などは、これらの一様磁界、収束磁界、発散磁界、カスプ磁界のいずれか又はこれらの磁場の二種以上の組み合わせであればよい。
本発明の高周波プラズマ装置における、磁場の強度は、一例として、イオンサイクロトロン周波数より十分大きく、電子サイクロトロン周波数より十分小さい領域の高周波の周波数となるように選択する。すなわち、図2の磁場分布を例にすると、高周波電力の周波数fは、スパイラルアンテナ近傍の磁場により決まる電子サイクロトロン周波数f1と、反応室1の中央部に印加される磁場B2により決まる電子サイクロトロン周波数f2に対して、fをf1及びf2よりも低くし(f<f1,f2)、かつ、プラズマガス成分によるイオンサイクロトロン周波数よりも高くなるようにする。具体例としては、高周波発振器5の周波数はイオンサイクロトロン周波数の10倍以上で、かつ、電子サイクロトロン周波数f1及びf2よりも1/10以下とすればよい。
一例として図2の磁場分布において、高周波発振器5の周波数fは、スパイラルアンテナ近傍の磁場B1及び平坦部分の磁場B2で決まる電子サイクロトロン周波数よりも十分に低い値とすることにより、ICPやヘリコン波プラズマなどの高周波プラズマを効率よく励起することができる。
ここで、例えばB1を30、60ガウスとした場合のfc は、それぞれ、84MHz、168MHzとなるので、効率良くプラズマを励起させるためには、高周波発振器のfはこれらのfc の約1/10の値である10MHz以下とすることが望ましい。
また、高周波発振器の周波数fを例えば10MHzとした場合には、スパイラルアンテナ近傍の磁場B1は、少なくとも電子サイクロトロン周波数が100MHz以上となる磁場を印加することが望ましいことになる。この際、平坦部のB2を100,150,200ガウスとした場合のfc は、それぞれ、280MHz,420MHz,560MHzとなるので、上記の高周波発振器のfが例えば約10MHzでは、f≪fc となり、ヘリコン波プラズマを効率よく励起することができる。
図4(b)及び図4(c)は、スパイラルアンテナ4のインダクタンスを低減させるためのスパイラルアンテナ4の巻線の構成を示す断面図であり、それぞれ(b)は2本の銅管12を1つの巻線とし、(c)は扁平な銅管13を1つの巻線とすることでインダクタンスの低減化を行う例を示している。さらに、スパイラルアンテナ4のインダクタンス成分の影響を低減する方法として、高周波発振器の周波数fを低減化すればよい。
市販の高周波発振器5のインピーダンスは通常50Ωや75Ωであるので、スパイラルアンテナ4を高周波発振器に直接接続するとインピーダンス不整合となることから、スパイラルアンテナ4と高周波発振器5との間に整合回路6を挿入して、インピーダンス整合をとる必要がある。ここで、スパイラルアンテナ4のインピーダンスの実部は低いので、基本的には、ローインピーダンスから50Ωのハイインピーダンスへ変換する整合回路を使用し、Lを打ち消してインピーダンス変換できる回路が好ましい。
ここで、図5(a)のスプリットタンク回路の整合条件は、高周波発振器の角周波数をωとした場合には、C1、C2は、下記の(1)式及び(2)式で与えられる。
C1=1/Z0 *1/ω*((Z0 /R)−1)0.5 (1)
C2=1/ω*1/(−(R*(Z0 −R))0.5 +ωL) (2)
さらに、必要に応じて高圧側と低圧側に直列に高周波発振器5の周波数fにおいて、十分に容量性インピーダンスの低い直流阻止用コンデンサを接続して、直流カットを行ってもよい。
反応室1を真空排気装置8で所定の圧力となるまで真空排気した後に、図2で示したような磁場を印加するために磁石3に所定の電流を印加する。磁石3が永久磁石の場合にはこの操作は不要である。次に、高周波プラズマを発生させるために所定の圧力のガスをガス導入装置7より反応室1へ導入し一定の圧力となるように真空排気装置8と共に制御する。そして、スパイラルアンテナ4に整合器6を介して高周波発振器5から高周波電力を供給することにより、ICPやヘリコン波プラズマによる高周波プラズマ10を発生することができる。
高周波発振器5の出力電力が低い場合にはICPを容易に発生でき、また、高周波発振器5の出力電力が高い場合にはヘリコン波プラズマを発生できる。ここで、ICPからヘリコン波プラズマへは、高周波発振器5の出力電力の増加だけで移行できる場合もある。
このように、本発明の高周波プラズマ装置では、例えば円筒形の反応室1の長軸方向の磁場配位を、スパイラルアンテナ近傍の磁場をゼロとしないで、高周波発振器の周波数fの10倍程度大きい電子サイクロトロン周波数となる磁場とし、さらに、軸方向中心部の最大磁場における電子サイクロトロン周波数が高周波発振器の周波数fの30倍から数十倍と十分に高くすればよい。
この構成によれば、反応管の外部に設けた磁石3により発生させた磁場配位により、大きな容積の高周波プラズマを効率よく発生させることができる。
図6は本発明の高周波プラズマ装置30の第2の実施の形態を模式的に示す図である。高周波プラズマ装置30は、比較的大きな直径を有するSi基板や液晶のガラス基板などの基板21に、プラズマエッチングやプラズマ堆積を行う高周波プラズマ装置である。図示するように、基板21は、ステージ22に載置されるように、図1の高周波プラズマ装置20を90°回転した構成としている。他の構成は図1と同じであるので、説明は省略する。
ステージ22は例えば、円板形状のステンレスを用いることができる。ステージ22のスパッタリングなどによる基板21の汚染防止のためには、ステージ22を石英板などで被覆するとよい。また、必要に応じて、ステージ22は、基板21の過熱防止のために冷却してもよい。ここで、ステージ22は、例えば反応室1の外部で接地しているので、ヘリコン波プラズマ装置30により高周波プラズマを発生させた場合には、基板21は、プラズマ中のイオンによる、所謂浮遊電位効果により直流電圧が発生する。
ここで、高周波バイアス用発振器23の周波数は、高周波発振器5により発生する高周波プラズマに対して影響がないような周波数に設定し、その出力電力を適宜に調整することで、基板21が載置されているステージ22の電位を浮遊電位ではなく、任意のバイアス電位となるように制御できる。例えば、高周波バイアス用発振器23の周波数は、高周波数の発振器5の周波数の1/10から1/100程度の周波数とすればよい。これにより、高周波プラズマ装置30,35において、基板の電位を浮遊バイアス電位または任意のバイアス電位となるように制御することにより、プラズマプロセスを高精度で処理できる高周波プラズマ装置を実現できる。
図8は本発明の第3の実施の形態の高周波プラズマ装置40を模式的に示す図である。この高周波プラズマ装置40は、高周波プラズマ放電が低圧力で電離しにくい場合に、電子発生部25を備えることにより予備電離を行い、高周波プラズマを効率よく生起させることができる。予備電離のための電子発生部25は、反応室1の左端のアンテナに対向しない反応室1の壁寄りに設けられており、W(タングステン)などの電子発生用ヒータ26と、引き出し電極と、ヒータ加熱用電源28と、電子引き出し用電源29から構成されている。電子発生部25は、高周波プラズマの起動時以外は、反応室1の所定の場所に設ける予備室1Aに退避できる構造となっている。プラズマに用いるガスに腐食性ガスが含まれている場合には、このような予備室1Aを設けることが望ましい。他の構成は図1と同じであるので、説明は省略する。
この電子発生部25は、本発明の第1の実施の形態で説明したヘリコン波プラズマ装置20だけでなく、本発明の第2の実施の形態で説明したヘリコン波プラズマ装置30及び35にも適用できる。
この構成の電子発生手段を備えることにより、低圧力ガスにおいて高周波プラズマが容易に発生でき、かつ大きな容積を有して径方向分布のプラズマ密度分布が制御できるICPやヘリコン波による高周波プラズマ装置を実現できる。
高周波プラズマ装置は図1に示した構成であり、円筒状の反応室1は、外径が75cmで、軸方向長さが486cm、容積は約2m3 である。磁石3は主磁石と3aと副磁石3bから構成される電磁石を用いた。窓2は石英ガラスである。アンテナ4としては、スパイラルアンテナの外径が23cmで、6巻のものを使用し、整合回路6はスプリットタンク回路を用いた。高周波発振器5は周波数7MHzで最大出力が1kWである。ここで、スパイラルアンテナ4への給電は、その外側端部4bを高電位側、内側端部4aを低電位側とした(図4(a)参照)。
なお、反応室1内に設けた磁場センサ、ラングミュアプローブ、窓部などにより、磁場やプラズマ密度、励起高周波(7MHz)の磁場の空間計測、プラズマ発光などの測定を行った。
図9(a)に示すように、主電磁石3aが50A、副電磁石3bが0Aのときに形成される磁束密度分布は、スパイラルアンテナ近傍(Z=0)が10ガウス程度であり、中央付近の平坦部で約140ガウス、反応室1の他端において数ガウスとなっている。
図9(b)に示すように、主電磁石3aが50A、副電磁石3bが10Aのときに形成される磁束密度分布は、スパイラルアンテナ近傍が30ガウス以外は、副磁石3bに電流を流さないときとほぼ同様に、中央付近の平坦部で約140ガウス、反応室の他端において数ガウスとなっている。
図9(c)に示すように、主電磁石3aが50A、副電磁石3bが20Aのときに形成される磁束密度分布は、スパイラルアンテナ近傍が50ガウス以外は、図9(a)や図9(b)と同様な磁束密度分布である。
図10〜図13は、実施例1の高周波発振器の出力電力と得られたプラズマ密度の関係を示す図である。図において、横軸は高周波発振器の出力電力である高周波電力(W)を示し、縦軸はプラズマ密度(cm-3)である。主電磁石3aの電流を50Aと一定にし、副電磁石の電流値を変化させている。副磁石3bの電流は、それぞれ、図10が印加しない0A、図11が5A、図12が10A、図13が15Aである。また、図中の●(黒丸)はZ=37cm、▲(三角)はZ=150cm、■(四角)はZ=370cmの位置のプラズマ密度を示している。
いずれの場合も、高周波発振器の出力電力の増加と共にプラズマ密度が向上する、所謂ジャンプ現象が観察されている。
図10に示すように、副磁石3bの電流が0Aの場合には、高周波発振器の出力電力が約70W以上ではプラズマ密度のジャンプが生起し、約600Wでプラズマ密度が1×1012cm-3となっていることが分かる。
ここで、プラズマ密度分布と励起高周波(7MHz)の磁場の空間計測などの計測により、ジャンプ現象が観測される出力電力以下のプラズマはICP、ジャンプ現象が観測される出力電力以上のプラズマはヘリコン波による高周波プラズマと推定できた。さらに、ジャンプ現象が生起する前においては、高周波電力に対してプラズマ密度が連続的に変化した。また、ジャンプ現象が生起した後も、高周波電力の増加と共に高いプラズマ密度が得られる。そして、この場合には高周波電力の増加に対するプラズマ密度の変化が大きくなるので、所望のプラズマ密度を得るためには高周波電力の正確な制御が必要であることが分かる。なお、ジャンプの前後の状態は、プラズマ密度分布と、励起高周波の磁場の空間計測、反応室に設けたプラズマ観察用窓からのプラズマ発光強度の観測などの測定により容易に判別することができる。
図から明らかなように、ジャンプ現象が生起するときのしきい値高周波電力は、副磁石電流の増加と共に増加した。また、ジャンプ現象が生起する前と生起した後のプラズマ密度も副磁石電流の増加と共に増加することが分かる。
副磁石3bに電流を流さない場合は、高周波電力が42Wで4.4×1010cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布のプラズマ密度が50%に低下する半値幅としては、約22cmである。一方、副磁石電流が5A〜15Aのときの高周波発振器5の出力電力は、69W〜168Wで、プラズマ密度の最大値が5.9〜9.9×1010cm-3のプラズマ密度が得られ、このときのプラズマ密度分布の半値幅としては、副磁石電流を5A〜15Aと変化させた場合に、約34cm〜29cm程度が得られた。これから、副磁石電流を0から増加させるにしたがい、径方向のプラズマ密度分布とその半値幅が変化することが分かる。
図17は、実施例2における径方向のプラズマ密度分布を示す図である。図において、横軸は0を軸中心とする径方向距離(cm)を示し、縦軸はプラズマ密度(cm-3)を示している。主磁石3aの電流は50Aであり、副磁石3bの電流は、図中の○(白丸)が0A、●(黒丸)が16Aの場合を示している。また、Arガスは0.5mTorrの圧力であり、Z=150cmである。
副磁石3bに電流を流さない場合は、高周波電力が520Wで、1.7×1012cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約16cmである。一方、副磁石電流が16Aの場合は、高周波電力が561Wで、8.5×1011cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約38cmである。
副磁石3bに電流を流さない場合は、高周波電力が520Wで、1.7×1012cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約16cmである。一方、副磁石電流が16Aの場合は、高周波電力が561Wで、8.5×1011cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約38cmである。
副磁石電流が16Aの場合のように、比較的プラズマ密度分布が平坦となるのは、ヘリコン波プラズマにおいてはArガス圧力が低い程、またICPプラズマの状態において顕著である。これから、副磁石電流を0から増加させ、スパイラルアンテナ4近傍の磁場を増加させることにより、径方向のプラズマ密度分布が変化し、半値幅が変化することが分かる。これは、副磁石3bの電流増加により、スパイラルアンテナ4近傍の磁場が収束分布の収束度が弱くなり、一様分布に近くなることに拠る。
図から明らかなように、主磁石3aの電流が286A及び副磁石3bの電流が16Aの場合には、高周波電力が549Wで、2.5×1012cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約13cmである。一方、主磁石3a電流が50A及び副磁石3b電流が16Aの場合は、高周波電力が295Wで、4×1011cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約30cmである。主磁石3a電流を50Aから286Aに増大させると、プラズマ密度が増加すると共に、半値幅が低減した。
スパイラルアンテナ4は、その内側2巻の内、その端部4aを高電位側として高周波電力を給電した(図4(a)参照)。
図19は実施例3における径方向のプラズマ密度分布を示す図である。図において、横軸は0を軸中心とする径方向距離(cm)を示し、縦軸はプラズマ密度(×1012cm-3)を示している。主磁石3aの電流は50Aであり、副磁石3bの電流は、図中の■(黒四角)が0A、□(白四角)が16Aの場合を示している。また、Arガスは0.5mTorrの圧力であり、Z=150cmである。
副磁石3bに電流を流さない場合は、高周波電力が255Wで、約4×1011cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約23cmである。一方、副磁石3bに16Aの電流を流した場合は、高周波電力が437Wで、約5.5×1011cm-3のプラズマ密度が得られ、プラズマ密度分布の半値幅は、約36cmである。
このように、副磁石3bに電流を流した場合には、実施例2(図17参照)と同様に、電流を流さない場合に比較してプラズマ密度分布の半値幅が広くなった。
上記実施例においては、磁場分布を主電磁石3aと副磁石電流3bにより変化させたが、所望の磁場分布を1つの電磁石により実現してもよい。
これから、本発明の高周波プラズマ装置において、例えば図9に示すような磁場配位を使用することにより、2m3 の大きな容積の高周波プラズマ装置において、約300Wという低電力で1×1012cm-3のプラズマ密度が得られた。また、スパイラルアンテナ4近傍の磁場強度を増すにつれて、プラズマ密度が増加し、かつ、径方向のプラズマ密度分布の半値幅などを制御することができることが分かる。
2 窓
3 磁石
3a 主磁石
3b 副磁石
4 アンテナ(スパイラルアンテナ)
4a,4b スパイラルアンテナ端部
5 高周波発振器
6 整合器
7 ガス導入装置
8 真空排気装置
9 制御装置
10 高周波プラズマ
12,13 銅管
14,15,16,17 可変容量コンデンサ
18 インダクタンス
20,30,35,40 高周波プラズマ装置
21 基板
22 ステージ
23 高周波バイアス用発振器
25 電子発生部
26 電子発生用ヒータ
27 引き出し電極
28 ヒータ加熱用電源
29 電子引き出し用電源
Claims (7)
- 高周波プラズマとなるガスが導入される反応室と、該反応室の外部に設けられ磁場を印加する磁石と、上記反応室の端部に設けられるプラズマ発生用アンテナと、該アンテナへ高周波電力を印加する高周波発振器と、から成る高周波プラズマ装置を用いて高周波プラズマを発生させる方法であって、
上記磁石を主磁石と副磁石とで構成し、該副磁石を上記反応室の端部側に配置し、
上記反応室内に形成される磁場を、一様磁場、発散磁場、収束磁場、カスプ磁場の何れかまたは該磁場の何れか二種以上の組み合わせとし、
上記磁石により上記反応室の軸方向の磁束密度分布をその中心部において平坦にすると共に、
上記高周波電力の周波数fを、上記アンテナ近傍の磁場により決まる電子サイクロトロン周波数f1と、上記反応室の中央部に印加される磁場により決まる電子サイクロトロン周波数f2とに対して、f<f1/10及びf2/10で、かつ、上記プラズマとなるガス成分によるイオンサイクロトロン周波数よりも10倍以上高い周波数として、上記高周波プラズマとなるヘリコン波プラズマを発生させることにより、
上記反応室の軸方向のプラズマ密度分布を、上記磁束密度分布が平坦となっている軸方向の中心部において平坦にすることを特徴とする、高周波プラズマの発生方法。 - 高周波プラズマとなるガスが導入される反応室と、該反応室の外部に設けられ磁場を印加する磁石と、上記反応室の端部に設けられるプラズマ発生用アンテナと、該アンテナへ高周波電力を印加する高周波発振器と、さらに、上記反応室内に基板が載置されるステージと、から成るアンテナを有する高周波プラズマ装置を用いて高周波プラズマを発生させる方法であって、
上記磁石を主磁石と副磁石とで構成し、該副磁石を上記反応室の端部側に配置し、
上記反応室内に形成される磁場を、一様磁場、発散磁場、収束磁場、カスプ磁場の何れかまたは該磁場の何れか二種以上の組み合わせとし、
上記磁石により上記反応室の軸方向の磁束密度分布をその中心部において平坦にすると共に、
上記高周波電力の周波数fを、上記アンテナ近傍の磁場により決まる電子サイクロトロン周波数f1と、上記反応室の中央部に印加される磁場により決まる電子サイクロトロン周波数f2とに対して、f<f1/10及びf2/10で、かつ、上記プラズマとなるガス成分によるイオンサイクロトロン周波数よりも10倍以上高い周波数として、上記高周波プラズマとなるヘリコン波プラズマを発生させることにより、
上記反応室の軸方向のプラズマ密度分布を、上記磁束密度分布が平坦となっている軸方向の中心部において平坦にすることを特徴とする、高周波プラズマの発生方法。 - 前記反応室の軸方向の磁束密度分布において、その両端部の磁場を中心部よりも低くすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高周波プラズマの発生方法。
- 前記副磁石を電磁石とし、前記反応室の軸方向のプラズマ密度分布を、該電磁石の電流により変化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高周波プラズマの発生方法。
- 前記副磁石を電磁石とし、前記反応室の径方向のプラズマ密度分布を、該電磁石の電流により変化させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高周波プラズマの発生方法。
- 前記反応室の軸方向のプラズマ密度の最大値が、1×109 cm-3以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高周波プラズマの発生方法。
- 前記ステージにバイアス用高周波発振器を接続し、前記基板のバイアスを制御することを特徴とする、請求項2に記載の高周波プラズマの発生方法。
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