JP4068256B2 - フーリエ変換ラマン分光測定による樹木組織構造の定量方法、定量装置及びコンピュータ読取り可能な記録媒体 - Google Patents

フーリエ変換ラマン分光測定による樹木組織構造の定量方法、定量装置及びコンピュータ読取り可能な記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は試料に赤外領域の励起光を照射し、その試料から発生するラマン散乱光をフーリエ変換(以下、FTともいう)分光部により検出してラマンスペクトルを得るFTラマン分光測定装置と、そのFTラマン分光測定装置を用いた樹木の特性の測定に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
赤外領域の分光光度計としてフーリエ変換を利用したFT分光光度計がある。その中でも、特に試料からのラマン散乱光を測定することを目的として構成されたものにFTラマン分光測定装置がある。汎用のFTラマン分光測定装置では、試料の温度制御、特に試料を冷却することは行なわれていない。
【0003】
パルプなど、樹木を原料とする製品のコストを下げるには、目的とする製品に適した特性をもつ樹木を選択して植林するのが有効である。そのためには、植林する樹木が製品に適した特性のものであるか否かを早い段階で見極める手法が必要となる。そこで、成長に影響を与えない程度の小量のサンプルを樹木から採取して分析することにより、その樹木の特性を評価する試みがなされている。
【0004】
樹木について測定される項目としては、樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率、平均長などがある。
組織比率としては、木繊維、放射柔細胞、道管及び軸方向柔細胞などを挙げることができる。組織の寸法としては、道管の放射方向の直径、接線方向の直径、平均直径、壁厚、木繊維の放射方向の直径、接線方向の直径、平均直径、壁厚などを挙げることができる。
木材組織構造の定量は顕微鏡とイメージアナライザーを組み合わせた分析により行なうことができる。しかし、木材切片を作成し測定するため、何百もの樹木の分析となれば長時間を要する問題がある。
【0005】
そこで、機器を用いて木材組織構造を定量分析する方法が検討されている。そのような方法として、X線回折法とイメージアナラザーを組み合わせた方法などをあげることができる。しかし、X線回折法とイメージアナラザーを組み合わせた方法では表面が平滑な木片を調製する必要があり、また樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率、平均長をすべて測定することはできない問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
赤外領域でのラマン散乱測定の一つとして、樹木の種々の成分の分析が検討されている。その場合、木材試料は粉砕して粉体とし、石英ガラスなど赤外領域に対する透過性をもち、赤外領域でのラマン散乱を無視することのできる試料管に木材粉体試料を充填して試料室に設置し、赤外励起光を照射してそのラマン散乱光を測定することになる。フーリエ変換型の分光装置では、スペクトルを得るために、干渉計における移動鏡の走査(スキャン)を繰り返し、得られた干渉信号を積算してインターフェログラムを得ているため、一試料の測定に数分間を要するのが一般的である。
【0007】
試料が木材粉体の場合には、試料がその測定時間中に励起光の赤外光を吸収し、加熱されて燃焼する虞れがある。また木材のような可燃性の試料でなくても、加熱されて変質する試料の場合には、測定中に特性が変化する虞れもある。
また、木材の組成や組織の分析のように、各樹木それぞれについて測定を行なう場合には試料数が膨大な数となるため、各試料を手動で試料室に装着しようとすれば、試料交換のために余分な作業者が必要となり、測定操作が煩わしいものとなる。
【0008】
そこで、本発明の第1の目的は、FTラマン分光測定装置において、木材試料に限らず、可燃性や変質しやすい試料の測定中での燃焼や劣化を防止するとともに、試料交換を自動化することである。
本発明の第2の目的は、FTラマン分光測定装置を用いて樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率、平均長などを、簡便にかつ高精度に定量測定できるようにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のFTラマン分光測定装置は、少なくとも一部が赤外線を透過しかつ赤外領域におけるラマン散乱が無視できる赤外透過材料にてなる試料容器を、着脱可能に保持し、その試料容器中の試料に対する光導入・出射口を有する試料容器装着部を備えた試料室と、試料容器を冷却する冷却機構と、試料室の外部に複数個の試料容器を収容し、試料容器装着部に対し試料容器を順次着脱する試料容器交換機構と、試料容器の赤外透過材料部に赤外励起光を照射し、試料からのラマン散乱光を検出するFT赤外分光部とを備えている。
測定中は冷却機構により試料容器を冷却するため、試料が可燃性のものであっても、又は変質しやするものであっても、正常に測定することができる。また、試料容器交換機構により試料容器を試料容器装着部に対し自動的に着脱するので、試料容器交換の煩わしさがなくなる。
【0010】
樹木の組織比率などを測定するために、本発明では分析手法としてFTラマン分光法を用い、多変量解析により組織比率など目的とする項目の定量分析を行なう。その際、多変量解析に先立って、定量精度を高めるために、得られたFTラマンスペクトルに対し前処理を施す。
【0011】
すなわち、本発明の定量方法は、以下の工程(A)から(D)を含んで樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率及び平均長のうちの少なくとも1つの項目を測定する方法である。
(A)樹木の任意の部位から採取したサンプルを粉体化し、FTラマン分光法によりラマンスペクトルデータを得るデータ取得工程、
(B)複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理工程、
(C)複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理工程、
(D)第1、第2の前処理を施したラマンスペクトルデータから多変量解析により目的とする項目に関する定量値を求める工程。
【0012】
第1の前処理を施すシフト波数領域は、複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定対象となる項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる程度に少ない領域である。その領域は、サンプルの状態や種類、FTラマン分光測定装置の測定条件などに起因するベースラインが存在する領域であり、したがって、第1の前処理工程はそれらの変動を修正するものである。第1の前処理は、その波数領域でのベースラインが同じレベルになるように、スペクトル全体のレベルを縦軸方向にシフトさせて調整することである。このようなレベルシフトをオフセット処理と呼んでいる。
【0013】
第2の前処理工程は、サンプル間の蛍光の強さの違いを主原因として生じる誤差を取り除くものである。樹木サンプルのFTラマン測定では、サンプルに励起光を照射するとサンプルからは蛍光も同時に発生する。蛍光の強さは樹木の着色の強さ等に依存し、サンプルごとに蛍光強度が異なる。着色は樹木の種類によっても、また1本の樹木の場所によっても変化する。蛍光スペクトルはラマン散乱ピークのベースラインを形成するが、蛍光強度が変化するとその蛍光強度をベースラインとするラマン散乱ピークの大きさも変動することがわかった。そこで、サンプルの着色等に依存する蛍光強度の変化にともなうラマン散乱ピークの変動を補正するために、レベルシフトではなく、ある範囲のシフト波数領域でスペクトル全体の縦軸方向の倍率を調整して複数のラマンスペクトルでラマンスペクトル強度を等しくした。縦軸方向の倍率を調整する処理をアンプリフィケーション処理と呼んでいる。
【0014】
第2の前処理工程は、複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定対象の項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す工程である。ピークを含まない部分には、ピークとピークの間の部分も、端のピークのベースラインの部分も含まれている。第2の処理工程により、複数のサンプルのラマンスペクトルデータでアンプリフィケーション処理用シフト波数領域でのベースラインとしてのラマンスペクトル強度が等しくなるように調整することにより、ラマン散乱ピークの強度が補正されて定量が可能になる。
ラマンスペクトルにはラマン散乱と蛍光がともに含まれる。ここで、「ラマンスペクトル強度」は、ラマン散乱と蛍光の両方を含む部分のスペクトル強度と、いずれかのみを含む部分のスペクトル強度の両方を含む意味で使用している。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のFTラマン分光測定装置において、試料容器装着部の好ましい例は、試料容器と熱伝導可能に接触し、冷却機構はその試料容器装着部を介して試料容器を冷却するものである。その場合の冷却機構の一例は試料容器装着部に密着して取りつけられた電子冷却素子のペルチェ素子であり、他の例は液体冷媒循環型冷却装置である。
試料容器は、一部が金属であるものとすることができる。それにより、試料を効率的に冷却することができるようになる。
測定室を室温以下の一定温度に温度制御することによっても、試料の温度上昇を抑えることができる。試料容器自体を冷却することと併用すれば、試料の冷却をより効率よく行なうことができる。
試料が吸湿することにより測定結果が水分の影響を受けるのを防ぎ、試料が水分により劣化したりするのを防ぐために、測定室を除湿する除湿機構を備えていることが好ましい。
FTラマン分光計、試料室、試料容器装着部及び試料容器交換機構を同一温度条件のケース内に設置することもより好ましい。さらに、その内部を乾燥した窒素や空気によって置換することも好ましく、特に酸化防止の点で窒素はさらに好ましい。
また、FTラマン分光測定装置において、定量精度を上げるために試料容器に振動を伝えないことがより好ましい。その点から、電子冷却素子は特に好ましい。
【0016】
【実施例】
図1は一実施例を表わしたものであり、(A)は平面図、(B)は正面図である。図2は同実施例の光学系の平面図であり、図3は同実施例における試料室での要部を概略的に示した平面図である。
このFTラマン測定装置は、FT赤外分光部にあたるFTラマン分光計2と、FTラマン分光計2の試料室の試料容器装着部に対し、試料容器である石英製ガラス管を順次交換する試料容器交換機構としてのガラス管移送用ロボットユニット4と、FTラマン分光計2及びロボットユニット4を収容し、内部の温度を5℃に保ち、除湿をし、内部を窒素で置換するためのケース6とから構成されている。
【0017】
FTラマン分光計2は図2に示される光学系を備えている。試料室10には試料容器のガラス管を装着する試料容器装着部が設けられており、装着されたガラス管中の試料に励起光を照射するために励起レーザ装置12からの赤外線レーザビーム14が試料室10に導かれる。レーザ装置12から試料室10に至るレーザビーム14の光路には、白色光とレーザ光を切り換えるための入出力用切換えミラー16と、レーザ光量モニタ用のパワーメータ18が設けられている。
【0018】
試料室10内での試料から発生したラマン散乱光を検出するために、干渉計20が備えられており、試料からのラマン散乱光が励起光成分を除去するフィルタ22を経て干渉計20に取り込まれる。干渉計20は、入射した光を2分するビームスプリッタと、その2分された光のそれぞれを再びビームスプリッタに戻す移動鏡と固定鏡を備え、移動鏡を摺動させる走査により光路差を変化させて干渉信号を発生させる。干渉計20での干渉光は励起光成分を除去するフィルタ24を経て検出器26に取り込まれ、インターフェログラムとして測定される。このようなFTラマン分光計の光学系自体は既知のものである。
【0019】
試料室10には図3に示される試料容器装着部34が設けられている。試料容器装着部34は、試料容器のガラス管32を保持する良熱伝導性の金属からなり、ガラス管32中の試料に励起光を入射させ、試料からのラマン散乱光を出射させる開口が設けられている。試料容器装着部34の材質の一例はアルミニウムであり、ガラス管32と接触する試料容器装着部34内面には励起光やラマン散乱光の反射率を高めるために金メッキが施されている。
【0020】
励起光14は、凹面ミラー36の中央部に設けられた入射穴を経てガラス管32中の試料に照射され、試料からのラマン散乱光38は入射方向に対し180°方向に取り出され、凹面鏡36で反射されて干渉計20に導かれる。
試料容器装着部34には試料を冷却するために、冷却機構として電子冷却装置であるペルチェ素子40が接触して設けられている。42はペルチエ素子40の放熱部材であり、表面積を大きくするために金属製放熱部材42aも設けられている。
【0021】
試料容器のガラス管32の一例としては、外径が5mmで、長さが77mmのNMRチューブを用いることができる。
試料室10の試料容器装着部34の上部には、試料容器のガラス管32を着脱する際に開閉される蓋を備えた試料挿入口シャッターユニット44が設けられている。試料挿入口の蓋は自動的に開閉され、試料室10にガラス管32を装着したり交換したりする際に開けられ、測定中には閉じられる。
【0022】
試料容器交換機構であるガラス管移送用ロボットユニット4は、ガラス管32を300個収容するマガジン50と、マガジン50に配置されたガラス管32を掴んで試料室10内の試料容器装着部34に装着し、測定後に試料容器装着部34のガラス管32を掴んでマガジン50に戻すための2本のハンド52a,52bと、そのハンド52a,52bをXY方向(水平面内)と、Z方向(垂直方向)に移動させるアーム54とを備えている。ハンド52a,52bの駆動はモータによってもよく、又はエアーによってもよい。
【0023】
FTラマン分光計2とロボットユニット4を含む空間を覆うケース6内は窒素ガスで置換されており、温度が一定に保たれ、除湿されている。これにより、試料室10を含むFTラマン分光計2の内部も窒素で置換され、温度と湿度が抑えられる。
ロボットユニット4は2本のハンド52a,52bを備えているので、前の試料測定中に次の試料のガラス管32をマガジン50から掴んで試料室10の上部で待機させておき、前の試料の測定が終了すると、空いている他方のハンドで測定ずみのガラス管32を掴んで試料室10から取り出し、待機していた次の試料のガラス管32を試料室10に装着する。FTラマン測定は一試料の測定に数分を要するので、その間に次の試料をマガジン50から取り出して待機させておくことにより、試料交換に要する時間を短縮することができる。
【0024】
次にこの実施例の動作を説明する。
マガジン50に試料容器のガラス管32を配置する。測定条件を入力して測定開始を指示すると、ロボットユニット4はマガジン50からガラス管32を取り出し、試料室10へ搬送して装着する。このとき、試料室10の試料挿入口の蓋はシャッターユニット44により自動的に開閉される。装着を完了するとロボットユニット4からFTラマン分光計2に搬送完了信号が出力される。
【0025】
FTラマン分光計2はロボットユニット4から搬送完了信号を受け取ると、一連の測定を開始し、測定が終了すると終了信号をロボットユニット4に出力する。このとき、ロボットユニット4は次の試料のガラス管32を掴んで試料室10の上部で待機しており、測定終了信号を受け取ると、測定ずみのガラス管32を試料室10から取り出し、待機していた次のガラス管32を試料室32に装着し、搬送完了信号をFTラマン分光計2に出力する。
このように、試料の自動装着、交換とラマン散乱測定を繰り返し、マガジン50に配置した試料の全てを測定し終えると測定完了となる。
【0026】
FTラマン分光測定装置を用いた樹木の特性の測定について説明する。
本発明方法の処理の流れを、具体的な例を用いて図4から図10により説明する。
図4は2種類のサンプルを測定したFTラマンスペクトルである。鋭く現われているピークは特徴的な木材特性に起因したラマン散乱によるピークであり、ブロードなスペクトルは蛍光の影響を強く受けたものである。したがって、ラマンスペクトルにはラマン散乱による狭い意味でのラマン散乱スペクトルと蛍光スペクトルとが重なった状態で現われており、蛍光スペクトルはラマンスペクトルのベースラインを形成している。Aは着色の強いサンプル、Bは着色の弱いサンプルであり、着色の強いサンプルの方が蛍光が強く現われている。横軸は励起波長からのシフト波数であり、+側はストークスラマン散乱、−側はアンチ・ストークスラマン散乱である。測定では強度の大きいストークスラマン散乱側のスペクトルを用いる。Cに示されるピークは試料の状態(形状、寸法、水分等)の要素の影響を強く受けているピークである。
【0027】
定量に使用するシフト波数領域として、例えば100〜1800cm-1を選択する。しかし、それに限定されるものではない。また、使用するシフト波数領域の選択は、FTラマン分光測定装置からデータを取り込む際に行なってもよく、又はそれよりも広いシフト波数領域のデータを取り込んでおき、データ処理の際に所望のシフト波数領域のデータを使用するようにすることによってシフト波数領域を選択してもよい。
【0028】
第1の前処理を施すシフト波数領域として、図4のD1,D2として示されたシフト波数領域、すなわち、2つのサンプルのラマンスペクトルデータについて、S/N比が100未満の領域を用いることが好ましい。
第2の前処理工程を施すシフト波数領域として、図4のEとして示された主要なピーク領域での測定対象の項目に由来するラマン散乱の主要なピークとピークの間の谷間の部分で、谷底の部分を選択するのが好ましい。しかし、それに限らない。例えば、主要なピーク領域Eでの端のピークの肩の部分でもよく、主要なピーク領域EとピークCとの間の部分、又はピークCの左側の部分でもよい。
【0029】
図5はこの2つのラマンスペクトルを100〜1800cm-1の波数領域に拡大して示したものである。100〜110cm-1にはラマン散乱も蛍光も現われておらず、この領域のベースラインはサンプルの状態や種類、FTラマン分光測定装置の測定条件などに起因すると考えられるベースラインである。この2つのラマンスペクトルでずれを生じている。第1の前処理により、2つのラマンスペクトルでこのベースラインが同じレベルになるように、オフセット処理により縦軸方向にレベルをシフトさせる。
図6は第1の前処理を施した後の2つのラマンスペクトルを表わしたものであり、100〜110cm-1で2つのベースラインが一致するように調整されている。
【0030】
次に、サンプルの着色等に依存する蛍光強度の変化にともなうラマン散乱ピークの変動を補正するために、第2の前処理を施す。第2の前処理を施すアンプリフィケーション処理用シフト波数領域として、1520〜1550cm-1を選ぶことができる。図6に示される2つのラマンスペクトルでは、この波数領域のラマン強度は大きくずれている。そこで、第2の前処理として、アンプリフィケーションにより2つのラマンスペクトルのこの領域のラマン強度が同じになるように調整した結果が図7のスペクトルである。
【0031】
ここまでの処理はどの項目の定量を行なう場合にも共通である。ここまでの処理の好ましいシフト波数領域の例は上に示したものであり、再度述べておくと、100〜1800cm-1のラマンスペクトルデータを使用し、第1の前処理工程でのオフセット処理を100〜110cm-1で施し、第2の前処理工程でのアンプリフィケーション処理を1520〜1550cm-1で施すことである。しかし、この波数領域に限定されるものではない。
【0032】
第1の前処理工程は、複数のオフセット処理用シフト波数領域について行ない、得られた結果から計算値と実測値の差が最小となるオフセット処理用シフト波数領域を選択するようにしてもよい。
第2の前処理工程についても、複数のアンプリフィケーション処理用シフト波数領域について行ない、得られた結果から計算値と実測値の差が最小となるアンプリフィケーション処理用シフト波数領域を選択するようにしてもよい。
第1と第2の前処理を施すことにより、蛍光強度の異なる種々のサンプル、すなわち、樹種や樹齢が異なるサンプルについても、また同じ樹木内の異なる場所のサンプルについても共通に定量することができる。
【0033】
定量する項目の一例は組織比率である。組織比率には木繊維、放射柔細胞、道管、軸方向柔細胞などの小項目が含まれている。これらの項目の測定では、第1と第2の前処理工程に続いて、複数のサンプルのラマンスペクトルデータで、木材成分または組織構造に特有のラマン散乱ピークの高さが等しくなるようにアンプリフィケーション処理によりラマン散乱強度を調整する第3の前処理をさらに施す。その第3の前処理を施したラマンスペクトルに対して多変量解析を施すことにより、これらの組織比率をすべて同時に定量することができる。しかし、必ずしもすべての小項目を定量するだけでなく、そのうちの複数個を選択して同時に定量する場合も本発明に含まれる。
【0034】
定量する項目のさらに他の例は組織の寸法である。組織の寸法には道管の放射方向の直径、接線方向の直径、平均直径、壁厚、木繊維の放射方向の直径、接線方向の直径、平均直径、壁厚などの小項目が含まれている。これらの項目の測定では、第1と第2の前処理工程に続いて、複数のサンプルのラマンスペクトルデータで、木材成分または組織構造に特有のラマン散乱ピークの高さが等しくなるようにアンプリフィケーション処理によりラマン散乱強度を調整する第3の前処理をさらに施す。その第3の前処理を施したラマンスペクトルに対して多変量解析を施すことにより、これらの組織の寸法をすべて同時に定量することができる。しかし、必ずしもすべての小項目を定量するだけでなく、そのうちの複数個を選択して同時に定量する場合も本発明に含まれる。
【0035】
定量する項目のさらに他の例は組織の平均細胞壁率及び平均長である。本発明では、第1と第2の前処理工程に続いて、複数のサンプルのラマンスペクトルデータで、木材成分または組織構造に特有のラマン散乱ピークの高さが等しくなるようにアンプリフィケーション処理によりラマン散乱強度を調整する第3の前処理をさらに施す。その第3の前処理を施したラマンスペクトルに対して多変量解析を施すことにより、これらの組織の平均細胞壁率及び平均長を同時に定量することができる。しかし、必ずしもすべての小項目を定量するだけでなく、そのうちの複数個を選択して同時に定量する場合も本発明に含まれる。
【0036】
第3の前処理を施すラマン散乱ピークのデータとして、例えばシフト波数1595cm-1のデータを用いることができる。図8は木繊維比率を測定するために施される第3の前処理を施した後の2つのスペクトルを示したものであり、1595cm-1でのピーク高さが一致するように調整されている。
【0037】
多変量解析は、測定しようとする項目に応じた前処理を施した後のラマンスペクトルデータを用いて実行することができる。しかし、ベースラインとなる蛍光レベル(バックグラウンド)が一定ではないため、ラマン散乱ピーク強度の測定は容易ではない。また、ラマン散乱ピークが孤立した単一のピークではなく、複数のピークが重なったものである場合には、個々のラマン散乱ピーク強度を求めるのは容易ではない。そのため、もとのラマンスペクトルデータを用いるよりも微分したデータを用いる方がラマン散乱ピーク強度を求めるのが容易で、ピークの判別も明瞭になる。図9は図8の2つのラマンスペクトルにそれぞれ2次微分を施した後のスペクトルを示したものである。2次微分によりピーク位置が明瞭になっているだけでなく、なだらかな変化を示していた蛍光成分が除去されてベースラインがゼロレベルとなり、ラマン散乱ピークデータの取得が容易になる。
【0038】
本発明の方法を、具体的な例に基づいて、図10と図11のフローチャートを参照してさらに説明する。
図10は選択した項目の定量を行なうための検量線モデルを作成する手順を示したものである。FTラマン分光測定装置を用いて、複数の標準サンプルのラマンスペクトルデータを得る。得られたラマンスペクトルデータのうち、例えばシフト波数領域100〜1800cm-1を選択して使用する。その選択されたシフト波数領域の複数のラマンスペクトルデータで、測定対象項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できるシフト波数領域、例えば100〜110cm-1でベースラインを揃えるオフセット処理の第1の前処理を施す。
【0039】
次に、その複数のラマンスペクトルデータで、測定対象項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域、例えば1520〜1550cm-1でラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理の第2の前処理を施す。
次に、第2の前処理を施したラマンスペクトルデータに第3の前処理を施し、その後に2次微分を施す。第3の前処理は例えばシフト波数1595cm-1のピークを用いて行なう。
【0040】
2次微分が施されたそれぞれのラマンスペクトルデータに対し、顕微鏡的手法など他の方法により求められたそれぞれのサンプルの分析結果を用いて、それぞれの項目、又はそれぞれの項目に含まれる小項目のそれぞれを定量するための主成分による検量線モデルを作成する。多変量解析の一例として、PLS(部分平均自乗法:partial least squares)回帰法を用いる。PLS回帰法では、ラマンスペクトルデータを、主成分(PC:principal components)と呼ばれるいくらかの数の変数(本発明ではシフト波数)で抽出する。主成分として選ぶシフト波数は任意に選ぶことができるが、例えば目的とする項目に関係する化合物に由来するラマン散乱ピークのシフト波数を用いることにより、相関の一層高い結果を得ることができる。後で述べる実施例には実測や発表されたスペクトルデータから選んだラマン散乱ピークのシフト波数を主成分の候補として例示している。用いられる主成分の数は、項目ごとに分散残渣(residual variance)、すなわち自由度に対して補正された平均自乗残余により決定される。
【0041】
その検量線モデルが妥当であるか否かが、他の1組のサンプルを用いて検定プログラムとして行なわれる。検定用のサンプルに対しても、検量線作成時と同じ条件でラマンスペクトルデータを得、使用するシフト波数領域を選択し、第1の前処理、第2の前処理、第3の前処理を施し、2次微分を施す。2次微分を施したラマンスペクトルデータに対し、検量線モデルを適用して求めようとする項目の定量値を推定する。その推定値を顕微鏡的手法など他の方法により求められたその項目の分析結果と比較し、相関係数や分散誤差を計算してその検量線モデルを評価する。
【0042】
未知サンプルの測定は、図11に示されるように、検量線作成時と同じ条件でラマンスペクトルデータを得、使用するシフト波数領域を選択し、第1の前処理、第2の前処理、第3の前処理を施し、2次微分を施す。2次微分を施したラマンスペクトルデータに対し、検量線モデルを適用して求めようとする項目の定量値を推定し、出力する。
多変量解析の前に2次微分を施すことは好ましいことではあるが、元のラマンスペクトルデータを用いることもできるし、1次微分や3次微分といった他の微分を用いることもできる。
【0043】
本発明の測定装置は樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率、平均長といった項目を個別に測定できるようにしたものと、1台の装置でそれらの項目を選択して切り替えて測定できるようにしたものの両方を含んでいる。また、それらの項目が複数の小項目を含んでいる場合には、必ずしも全ての小項目をすべて測定するものに限らず、必要なものに限定して測定する場合も含んでいる。
【0044】
図12は項目を個別に測定する装置を概略的にまとめて示したものである。図12に示したように、FTラマン分光測定装置102と、そのFTラマン分光測定装置102からの複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定しようとする項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理部104と、第1の前処理部104を経た複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定しようとする項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理部106と、各項目または木材成分に特有のラマン散乱ピークの高さが等しくなるようにアンプリフィケーション処理によりラマン散乱強度を調整する第3の前処理108と、第3の前処理部108を経たラマンスペクトルデータと顕微鏡分析結果などとから検量線モデルを作成したり、その検量線モデルの検定を行なったり、さらに未知サンプルに対してはその検量線モデルを用いて定量値の推定を行なう多変量解析部110と、推定結果を出力する記録計やディスプレーなどの出力部112とを備えている。
【0045】
多変量解析部110はFTラマンスペクトル自体により行なってもよいが、より好ましくはそのスペクトルを2次微分した後に多変量解析を行なうことである。そのため、多変量解析されるデータに対し2次微分を施す2次微分演算部114を多変量解析部110の前段に備えていることが好ましい。
【0046】
図13は樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率及び平均長のうちのいずれの項目も1台の装置で切り替えて測定できるようにしたものである。図12の装置と比較すると、第2の前処理部106からの出力を受けて、測定しようとする項目に応じて選択を行なう項目選択部116が備えられている点で異なっている。FTラマン分光測定装置102、第1の前処理部104、第2の前処理部106、第3の前処理部108、多変量解析部110、2次微分演算部114及び出力部112は図12で説明したものと同じである。項目選択部116は第2の前処理部106の次段に設けられ、第2の前処理部106からのラマンスペクトルデータを第3の前処理部108及び多変量解析部110のいずれかに選択して入力するものである。
【0047】
好ましくは、多変量解析部110の前段にその多変量解析部110に入力されるラマンスペクトルデータに2次微分を施す2次微分演算部114をさらに備えている。
図12、図13において、FTラマン分光測定装置102以外の部分はパーソナルコンピュータにより実現することができる。
【0048】
本発明は、さらに樹木の組織構造等の定量方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体を含んでいる。そのプログラムは上で説明した処理を行なうものである。すなわち、FTラマン分光測定装置からの複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定しようとする項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理ステップと、第1の前処理ステップを経た複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、測定しようとする項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理部ステップと、第2の前処理ステップを経たラマンスペクトルデータもしくは項目に応じてさらに他の前処理を施したデータ、又はそれらの微分されたデータから多変量解析により、測定しようとする項目の定量値を求める多変量解析ステップとを備えている。
【0049】
次に、各項目ごとに分けてそれぞれ定量測定を行なった結果を具体的に示す。以下の実施例では、FTラマンスペクトルデータを得るために、励起光源としてNd:YAGレーザを備え、Ge検出器を備えた Nicolet ラマン950スペクトルメータ(Nicolet Instrument Corp., Madison, USA の製品)を使用し、励起波長1064nm、励起光出力500mWで使用した。サンプルは20メッシュのフィルタを透過したものをNMRチューブに充填し、180°後方散乱法により測定した。分光は解像度4cm-1、256回スキャンで行なった。得られたFTラマンスペクトルデータのうち、100〜1800cm-1の範囲のデータに前述の所定の前処理を施した後、2次微分を施し、多変量解析に供した。
多変量解析には、市販のソフトウエア Unscramber 6.0または6.01(Camo AS.Trondheim, Norway の製品)を用い、パーソナルコンピュータを使用して実行した。
【0050】
(測定例1)
組織比率の定量分析:
組織比率として木繊維、放射柔細胞、道管及び軸方向柔細胞を定量測定した。サンプルとして、異なる樹齢を含む2種類のユーカリ属の樹木を測定した。
PLS回帰法の主成分としては、100〜1800cm-1の範囲内の任意の波数を選ぶことができるが、ここではそれぞれの木材成分および組織比率に由来するラマン散乱ピークのシフト波数を主に用いた。それらのシフト波数を表1、表3および表4にX印で示す。しかし、必要に応じてそれ以外のシフト波数も主成分として併用した。
【0051】
【表1】
Figure 0004068256
【0052】
サンプルの調製において、ユーカリカマルドレンシスとユーカリグロブラスでは各2個体(No.1,No.2)の樹幹各部から2cm×2cm×6cmの大きさのサンプルを複数採取し、少量の木粉を調製し、合計で55個のサンプルを得て、それらを標準サンプルとした。
それらの標準サンプルについて、各組織比率を顕微鏡分析法で定量し、PLS回帰法により検量線モデルを作成した。木繊維比率についての検量線を図14に示す。横軸は顕微鏡分析による定量結果であり、縦軸は得られた検量線モデルからの推定値である。この検量線は0.92以上の相関係数rを示している。他の木材成分の結果は表2にまとめて示した。いずれも0.75以上の相関係数rと、3.9ポイント以下の予測誤差(SEP)を示している。
【0053】
【表2】
Figure 0004068256
【0054】
なお、図14から図16において、図中の記号は次のようにサンプルの種類を表わしている。
○ ユーカリカマルドレンシスNo.1(樹幹内各部)
● ユーカリカマルドレンシスNo.2(樹幹内各部)
△ ユーカリグロブラスNo.1(樹幹内各部)
▲ ユーカリグロブラスNo.2(樹幹内各部)
この検量線モデルを用いて他の1組のサンプルについて検定を行なった。検定にあたっては、検量線作成に用いた2種類のユーカリ属の樹木から合計で25個採取し、それらを検定サンプルとした。検定の結果、すべて良好な相関係数を示し、この方法を用いて組織比率を定量できることがわかった。
【0055】
(測定例2)
組織の寸法の定量分析:
PLS回帰法の主成分としては、表3に示したシフト波数を主に使用し、必要に応じてそれ以外のシフト波数も併用した。
【0056】
【表3】
Figure 0004068256
【0057】
検量線を図15に示す。横軸は木繊維の平均直径であり、顕微鏡法により求めた。この結果は表2に示すように良好な相関係数rと予測誤差SEPを示している。
検定では、樹齢や産地の異なる2種類のユーカリ属の樹幹の種々の場所から合計で25個のサンプルを採取して検定サンプルとした。その結果は、相関係数0.80以上、SEP18.9以下であり、良好であった。
【0058】
(測定例3)
組織の平均細胞壁率及び平均長の定量分析:
PLS回帰法の主成分としては、表4に示したシフト波数から主として選んで使用し、必要に応じてそれ以外のシフト波数も併用した。
【0059】
【表4】
Figure 0004068256
【0060】
検量線の一例として組織の平均長の結果を図16に示す。横軸の定量結果は、組織の平均長を顕微鏡分析して得たものである。検量線の相関係数rと予測誤差SEPを表2に示す。いずれも良好な値である。
検定では、2種類のユーカリ属樹木の種々の場所から25個のサンプルを採取して検定サンプルとした。良好な結果が得られた。
【0061】
【発明の効果】
本発明のFTラマン分光測定装置は、測定中は冷却機構により試料容器を冷却するため、試料が木材粉体のように可燃性のものであっても、又は変質しやするものであっても、正常に測定することができる。
また、試料容器交換機構により試料容器を試料容器装着部に対し自動的に着脱するするので、試料容器交換の煩わしさがなくなる。
本発明のFTラマン分光法は、FTIR法やNIR法に比べて、水の影響を受けないようにすることができるだけでなく、迅速に測定を行なうことができ、不均一サンプルの測定が容易であり、構造特性の解析が容易であるなどの利点を備えている。
また、実施例の測定例に示したように、種々の項目を樹齢や着色などの異なる複数種類の樹木の種々の場所から採取したサンプルについて測定をして良好な結果を得ているので、樹木の種類や採取場所によらず、本発明方法を適用することができる。
このように、本発明方法は樹木から小量のサンプルを採取して、その樹木の特性を容易に、かつ迅速に推定することができるので、用途に適した樹木を選択して植林することができるようになるので、樹木を原料とする製品のコストを削減することや品質管理向上に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】FTラマン分光測定装置の一実施例を表わす図であり、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図2】同実施例の光学系の平面図である。
【図3】同実施例における試料室での要部を概略的に示した平面図である。
【図4】2種類のサンプルを測定したFTラマンスペクトルを示す図である。
【図5】2つのラマンスペクトルを100〜1800cm-1の波数領域に拡大して示す図である。
【図6】第1の前処理を施した後の2つのラマンスペクトルを示す図である。
【図7】さらに第2の前処理を施した後の2つのラマンスペクトルを示す図である。
【図8】木繊維比率を測定するために第2の前処理の後にさらに第3の前処理を施した後の2つのラマンスペクトルを示す図である。
【図9】図8の2つのラマンスペクトルにそれぞれ2次微分を施した後のスペクトルを示す図である。
【図10】選択した項目の定量を行なうための検量線モデルを作成する手順を示すフローチャート図である。
【図11】得られた検量線モデルを用いて未知サンプルを測定する手順を示すフローチャート図である。
【図12】項目を個別に測定する装置を概略的に示すブロック図である。
【図13】複数の項目を1台の装置で切り替えて測定できるようにした装置を概略的に示すブロック図である。
【図14】PLS回帰法による木繊維比率についての検量線を示す図である。
【図15】PLS回帰法による木繊維の平均直径についての検量線を示す図である。
【図16】PLS回帰法による組織の平均長についての検量線を示す図である。
【符号の説明】
2 FTラマン分光計
4 ガラス管移送用ロボットユニット
6 ケース
10 試料室
12 励起レーザ
14 赤外線レーザビーム
20 干渉計
26 検出器
30 試料容器装着部
32 試料容器のガラス管
34 試料容器装着部
38 ラマン散乱光
40 ペルチェ素子
50 マガジン
52a,52b ハンド
102 FTラマン分光測定装置
104 第1の前処理部
106 第2の前処理部
108 第3の前処理部
110 多変量解析部
112 出力部
114 2次微分演算部
116 項目選択部

Claims (3)

  1. 以下の工程(A)から(D)を含んで樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率及び平均長のうちの少なくとも1つの項目を測定する樹木の組織構造の定量方法。
    (A)樹木の任意の部位から採取したサンプルを粉体化し、フーリエ変換ラマン分光法によりラマンスペクトルデータを得るデータ取得工程、
    (B)複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理工程、
    (C)複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理工程、
    (D)前記第1、第2の前処理を施したラマンスペクトルデータから多変量解析により目的とする項目に関する定量値を求める工程。
  2. フーリエ変換ラマン分光測定装置と、
    そのフーリエ変換ラマン分光測定装置からの複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率及び平均長のうちの少なくとも1つの項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理部と、
    第1の前処理部を経た複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理部と、
    第2の前処理部を経たラマンスペクトルデータもしくは項目に応じてさらに他の前処理を施したデータ、又はそれらの微分されたデータから多変量解析により前記項目の定量値を求める多変量解析部とを備えた樹木の成分や特性値等の定量装置。
  3. フーリエ変換ラマン分光測定装置からの複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、樹木の組織比率、組織の寸法、組織の平均細胞壁率及び平均長のうちの少なくとも1つの項目に由来するラマン散乱及び蛍光が無視できる選択された少なくとも1つのオフセット処理用シフト波数領域においてベースラインを揃えるオフセット処理を施す第1の前処理ステップと、
    第1の前処理ステップを経た複数のサンプルのラマンスペクトルデータについて、前記項目に由来するラマン散乱の主要なピークの近傍でピークを含まない部分で任意に選択された少なくとも1つのアンプリフィケーション処理用シフト波数領域においてラマンスペクトル強度が等しくなるように調整するアンプリフィケーション処理を施す第2の前処理ステップと、
    第2の前処理ステップを経たラマンスペクトルデータもしくは項目に応じてさらに他の前処理を施したデータ、又はそれらの微分されたデータから多変量解析により前記項目の定量値を求める多変量解析ステップとを備え、樹木の組織構造の定量方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体。
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