JP4066579B2 - 空調装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、蒸発器の冷却度合に応じて圧縮機の作動を断続制御する空調装置において、圧縮機の停止時に蒸発器から不快な臭いが発生するのを防止するようにしたもので、例えば、車両エンジンと走行用電動モータとを搭載したハイブリッド車用の空調装置に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護、省燃費を目的として、信号待ち等の停車時には車両エンジンを自動的に停止する車両(エコラン車)が実用化されている。また、ハイブリッド車においては、停車時とか電動モータによる低速走行時等には車両エンジンの動力が不要であるので、このような条件下では車両エンジンを自動的に停止する。
【0003】
一方、エアコン用冷凍サイクルの圧縮機は車両エンジンにより駆動されるので、車両エンジンの停止に伴って圧縮機も停止してしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、停車時等の車両エンジンの動力不要時に、省燃費効果を優先して車両エンジンと圧縮機の停止時間を単純に長くすると、蒸発器表面の凝縮水が乾ききるまでの過程で不快な臭いが発生し、乗員に不快感を与えるという問題を生じる。
【0005】
そこで、本出願人においては、先に、特願平10−7130号において、蒸発器吸い込み空気の条件(温湿度、風量等)から蒸発器での凝縮水保水量を推定し、この凝縮水保水量に基づいて圧縮機停止可能時間を決定し、この圧縮機が停止してから停止可能時間が経過すると、車両エンジンの動力不要時にも車両エンジンの起動要求の信号を発生し、車両エンジンを再起動させるものを提案している。
【0006】
この先願のものについて実験検討してみると、蒸発器吸い込み空気条件から圧縮機停止可能時間を間接的に推定しているので、蒸発器での臭い発生時期の直前に正確に車両エンジンを再起動させることはできない。そのため、不快な臭い発生を確実に防止するためには圧縮機停止可能時間を安全側の短い時間に設定することになる。
【0007】
その結果、車両エンジンの停止時間が短くなって、省燃費効果を損なうこととなり、省燃費効果(省動力効果)と臭い発生防止による快適性との両立という面で不十分であることが分かった。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、車両エンジン等の圧縮機駆動源の省動力効果と、臭い発生防止による快適性との両立を向上させることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下に説明する実験的知見に基づいて上記目的を達成するための技術的手段を案出したものである。
【0010】
図11は蒸発器吹出温度が11℃まで低下すると圧縮機を停止し、蒸発器吹出温度が23℃まで上昇すると圧縮機を再起動させるという圧縮機の断続(ON−OFF)制御を行った場合における蒸発器吹出空気温度(以下、蒸発器吹出温度と略す)の具体的な変動パターンと蒸発器吹出空気での臭気強度との関連を示す実験結果である。
【0011】
図11において、圧縮機停止直後の期間▲1▼では、冷媒の蒸発潜熱による吸熱の停止のため、蒸発器吹出温度が急上昇する。そして、その後の期間▲2▼では蒸発器吹出温度の上昇が緩やかになり、蒸発器吹出温度が次第に略一定温度にて安定する。これは、蒸発器吸い込み空気温度と蒸発器吹出空気温度の温度差と、蒸発器表面での凝縮水の蒸発による吸熱量(潜熱)とがほぼバランスするためである。
【0012】
更に、時間が経過して次の期間▲3▼になると、蒸発器吹出温度が所定量低下し、その後の期間▲4▼にて、蒸発器吹出温度が再度上昇する。
【0013】
上記期間▲3▼において蒸発器吹出温度が所定量低下するのは次の理由による。すなわち、蒸発器表面での凝縮水が乾ききる直前では、凝縮水の膜が薄くなって凝縮水の熱抵抗が減少するので、凝縮水の蒸発量が増加して凝縮水の蒸発による吸熱量が増加するためである。そして、その後の期間▲4▼にて蒸発器吹出温度が再上昇するのは、蒸発器表面での凝縮水が乾ききって、凝縮水の蒸発による吸熱がなくなるためであり、そのため、蒸発器吹出温度は期間▲4▼で蒸発器吸い込み空気温度まで徐々に上昇していく。
【0014】
本発明者らの実験検討によると、蒸発器吹出空気への臭気発生は上記期間▲3▼の途中、すなわち、蒸発器表面での凝縮水が乾ききる直前に蒸発器のフィン表面から付着臭い成分が離脱することにより開始され、そして、時間の経過とともに徐々に臭気強度が増大することが判明した。このように蒸発器吹出空気への臭気発生の時期が蒸発器吹出温度の一時的な低下が生じる時期▲3▼と合致することが判明した。
【0015】
そこで、上記点に着目して、請求項1記載の発明では、圧縮機駆動源(1)の自動停止に伴って、圧縮機(41)の作動が断続制御される場合の圧縮機(41)の停止時に蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、蒸発器(45)表面の凝縮水が乾ききる直前に生じる、蒸発器(45)の冷却度合の一時的な温度低下(上記期間丸付き数字3での温度低下)を判定して、圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする。
【0016】
これによると、上記のように期間▲3▼の温度低下が生じると、これを判定して直ちに圧縮機(41)を再起動して蒸発器(45)の冷媒蒸発潜熱による冷却作用を再開できる。
【0017】
そのため、期間▲3▼の温度低下の開始直後に凝縮水が再度発生するようになり、蒸発器(45)のフィン表面を濡らすことができる。その結果、蒸発器(45)のフィン表面から付着臭い成分が離脱することを未然に防止でき、これにより、蒸発器吹出空気への臭気発生を阻止できる。
【0018】
しかも、、期間▲3▼の温度低下は臭気強度増大の直前に起きるから、臭気強度増大の直前時期まで圧縮機(41)の停止状態を維持することが可能となる。これにより、臭気発生を確実に阻止しながら、圧縮機(41)の停止時間を最大限長くして、圧縮機駆動源(1)の省動力を効果的に実現できる。よって、圧縮機駆動源の省動力効果と、臭い発生防止による快適性とを良好に両立できる。
【0019】
請求項2に記載の発明では、圧縮機(41)の停止時に蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、蒸発器(45)表面の凝縮水が乾ききることにより生じる、蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定する判定手段(S47)を備え、判定手段(S47)により蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定すると圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする。
【0020】
ところで、期間▲3▼の温度低下状態は、通常の運転条件下では圧縮機(41)の停止ごとに発生するが、蒸発器吸い込み空気の条件(風量、温度、湿度等)によっては期間▲3▼の温度低下状態を判定できない場合がある。例えば、期間▲2▼の終了直前の時期に送風ファン風量が急上昇した場合等のイレギュラーケースでは、期間▲3▼の温度低下状態が発生せず、期間▲2▼から直接、期間▲4▼に移行してしまう。
【0021】
請求項2に記載の発明によると、このようなイレギュラーケースの際に期間▲2▼経過後における温度上昇状態を判定して圧縮機(41)を再起動できる。これにより、イレギュラーケースでも臭気発生の阻止効果をある程度発揮できる。
【0022】
請求項3に記載の発明では、蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定して圧縮機(41)を再起動するまでの停止時間(Toff)を記憶しておき、圧縮機(41)の次回の停止時には、圧縮機(41)の停止時間が前回の記憶しておいた停止時間(Toff)より所定時間短い時間に達すると、圧縮機(41)を再起動することを特徴とする。
【0023】
このように、圧縮機停止時間が前回の記憶しておいた停止時間(Toff)より所定時間短い時間に達すると、圧縮機(41)を再起動することにより、前述の期間▲3▼が発生しないときでも、圧縮機(41)を期間▲3▼に相当するタイミングで再起動することができる。そのため、イレギュラーケースの際にも、蒸発器(45)のフィン表面から付着臭い成分が離脱することを未然に防止でき、これにより、蒸発器吹出空気への臭気発生を確実に阻止できる。
【0024】
しかも、臭気強度増大の直前に圧縮機(41)を再起動できるから、臭気発生を確実に阻止しながら、圧縮機(41)の停止時間を最大限長くして、圧縮機駆動源の省動力効果と、臭い発生防止による快適性とを良好に両立できる。
【0025】
請求項4に記載の発明では、圧縮機(41)の停止後、蒸発器(45)の冷却度合の一時的な温度低下が生じるまでの時間と、前記停止時間(Toff)より所定時間(TA、TB)短い時間のうち、短い方の時間で圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする。
【0026】
これにより、蒸発器吸い込み空気の条件(風量、温度、湿度等)が種々変動しても、圧縮機(41)を臭気発生時期の前に確実に再起動させることができ、臭い発生防止効果をより確実なものとすることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明では、内気と外気を切替導入可能な車両用空調装置であって、請求項3または4における前記所定時間(TA、TB)を、外気モード時より内気モード時の方で大きくしたことを特徴とする。
【0028】
車両用空調装置の内気モードでは車室内空気の再循環により空調がなされ、外気導入による車室内換気が行われないので、臭気強度が比較的小さい段階から乗員は臭気による不快感を感じやすい。そこで、請求項5に記載の発明によると、内気モード時の所定時間(TA)を外気モード時の所定時間(TB)より大きくすることにより、外気モード時より内気モード時の方が早い時期に圧縮機(41)を再起動させることができる。その結果、内気モード時における臭気による不快感をより一層確実に阻止できる。
【0029】
請求項6に記載の発明では、圧縮機(41)の作動を断続制御する制御手段(S8)を備え、この制御手段(S8)は、圧縮機駆動源(1)の自動停止に伴って、圧縮機(41)の作動が断続制御される場合の圧縮機(41)の停止時に蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、蒸発器(45)表面の凝縮水が乾ききることにより生じる、蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定して、圧縮機(41)を再起動するとともに、圧縮機(41)の再起動までの停止時間Toffを記憶しておき、
制御手段(S8)は、圧縮機(41)の次回の停止時には、圧縮機(41)の停止時間が記憶しておいた前回の停止時間Toffより所定時間を減算した時間に達すると、圧縮機(41)を再起動することを特徴とする。
【0030】
これによると、請求項3と同様の理由にて、蒸発器吹出空気への臭気発生を確実に阻止でき、しかも、臭気強度増大の直前に圧縮機(41)を再起動できるから、臭気発生を阻止しながら、圧縮機(41)の停止時間を最大限長くして、圧縮機駆動源の省動力効果と、臭い発生防止による快適性とを良好に両立できる。
【0031】
更に、請求項6に記載の発明によると、請求項1に記載の発明のような期間▲3▼の変化量の小さい温度低下状態を検出せずにすみ、制御が容易となる。
【0032】
なお、冷却度合検出手段(74)は、請求項7に記載のように、蒸発器(45)の吹出空気温度を検出したり、あるいは請求項8に記載のように、蒸発器(45)のフィン表面温度を検出しても良い。
【0033】
特に、請求項8に記載の発明によると、蒸発器吹出温度に比較して蒸発器フィン表面温度の方が凝縮水の蒸発に伴う温度変化の応答が早いので、圧縮機再起動のための温度変動の判定をより適切に行うことができる。
【0034】
請求項9に記載の発明では、車両の走行用駆動源としてエンジン(1)と走行用電動モータ(2)とを備えるハイブリッド車に、請求項1ないし8のいづれか1つに記載の空調装置を搭載し、圧縮機(41)の駆動源はエンジン(1)であり、
エンジン(1)の運転を制御するエンジン制御装置(9)を備え、
エンジン制御装置(9)は、空調側からエンジン作動要求信号が出力されているときはエンジン(1)を運転させ、車両側からエンジン(1)の停止要求があって、かつ空調側からエンジン作動要求信号が出力されていないときはエンジン(1)を停止させるハイブリッド車用空調・エンジン制御装置を特徴とする。
【0035】
本発明は、このようなハイブリッド車用空調・エンジン制御装置において、エンジン(1)の省動力(省燃費)効果と、臭い発生防止による快適性向上の効果とを特に有効に発揮できる。
【0036】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1はハイブリッド自動車の概略構成を示した図で、図2はハイブリッド自動車用空調装置の全体構成を示した図で、図3はハイブリッド自動車用空調装置の制御系を示した図である。
【0038】
本実施形態の空調装置は、ハイブリッド自動車5の車室内を空調するエアコンユニット6の各空調手段(アクチュエータ)を、空調制御装置(以下エアコンECUと言う)7によって制御することにより、車室内の温度を常に設定温度に保つよう自動制御するように構成されたオートエアコンである。
【0039】
ハイブリッド自動車5は、走行用エンジン(内燃機関)1、電動モータ機能と発電機能とを兼ねる走行用電動モータ(モータジェネレータ)2、走行用エンジン1を始動させるための始動用モータや点火装置、燃料噴射装置等を合むエンジン側機器3、および走行用電動モータ2やエンジン制御機器3に電力を供給するバッテリ(ニッケル水素蓄電池)4を備えている。
【0040】
なお、走行用エンジン1と走行用電動モータ2はハイブリッド自動車5の車軸に係脱自在に駆動連結され、ハイブリッド自動車5は走行用エンジン1の動力により走行する場合と、走行用電動モータ2の動力により走行する場合と、両者1、2の動力により走行する場合とを選択できるようになっている。
【0041】
そして、走行用電動モータ2はハイブリッド制御装置(以下ハイブリッドECUと言う)8により自動制御(例えばインバータ制御)されるように構成されている。
【0042】
さらに、エンジン制御機器3は、エンジン制御装置(以下エンジンECUと言う)9により自動制御される。なお、エンジンECU9は、ハイブリッド自動車5の通常の走行時およびバッテリ4の充電が必要な時に、エンジン制御機器3を通電制御して走行用エンジン1を運転する。
【0043】
エアコンユニット(空調ユニット)6は、図2に示すようにハイブリッド自動車5の車室内に空調空気を導く空気通路を形成する空調ダクト10、この空調ダクト10内において空気流を発生させる遠心式送風機30、空調ダクト10内を流れる空気を冷却して車室内を冷房するための冷凍サイクル40、および空調ダクト10内を流れる空気を加熱して車室内を暖房するための冷却水(温水)回路50等から構成されている。
【0044】
空調ダクト10は、ハイブリッド自動車5の車室内の前方側に配設されている。空調ダクト10の最も上流側(風上側)は内外気(吸込口)切替箱を構成する部分で、車室内空気(以下内気と言う)を取り入れる内気吸込口11および車室外空気(以下外気と言う)を取り入れる外気吸込口12を有している。さらに、内気吸込口11および外気吸込口12は、内外気切替手段を構成する回動自在な内外気(吸込口)切替ドア13により開閉されて、吸込ロモードを内気循環モード、外気導入モード等に切り替える。この内外気切替ダンパ13はサーボモータ等のアクチュエータ14(図3)により駆動される。
【0045】
また、空調ダクト10の最も下流側(風下側)は吹出口モード切替部を構成する部分で、デフロスタ(DEF)開口部18、フェイス(FACE)開口部19およびフット(FOOT)開口部20が形成されている。そして、DEF開口部18にはデフロスタダクト15が接続されて、このデフロスタダクト15の最下流端のデフロスタ(DEF)吹出口からハイブリッド自動車5のフロント窓ガラスの内面に主に温風を吹き出す。
【0046】
また、FACE開口部19にはフェイスダクト16が接続されて、このフェイスダクト16の最下流端のフェイス(FACE)吹出口から、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出す。さらに、FOOT開口部20にはフットダクト17が接続されて、このフットダクト17の最下流端のフット(FOOT)吹出口から乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出す。
【0047】
そして、各開口部18〜20の内側には板状の2枚の吹出口切替ダンパ(吹出口切替手段)21が回動自在に取り付けられている。2枚の吹出口切替ダンパ21は、サーボモータ等のアクチュエータ22(図3)によりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モードまたはデフロスタ(DEF)モードのいずれかに切り替える。
【0048】
遠心式送風機30は、遠心式送風ファン31、およびこの送風ファン31を回転駆動するブロワモータ32を有している。そして、ブロワモータ32は、ブロワ駆動回路33(図3)を介して印加されるブロワ電圧に基づいて、送風量(送風ファン31の回転速度)が制御される。
【0049】
冷凍サイクル40は、走行用エンジン1によりベルト駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機41、圧縮された高圧冷媒を冷却し凝縮させる凝縮器42、凝縮された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流す受液器(気液分離器)43、液冷媒を減圧膨張させる膨張弁(減圧手段)44、減圧膨張された低圧冷媒を蒸発気化させる蒸発器45、およびこれらを接続する冷媒配管等から構成されている。
【0050】
このうち、蒸発器45は空調ダクト10内の送風空気を冷却除湿する冷却用熱交換器である。また、圧縮機41には、走行用エンジン1から圧縮機41への回転動力の伝達を断続するクラッチ手段としての電磁クラッチ46が連結されている。この電磁クラッチ46の通電はクラッチ駆動回路47により制御される。従って、電磁クラッチ46への通電のON、0FFにより圧縮機41の作動が断続される。
【0051】
冷却水回路50は、図示しないウォータポンプによって、走行用エンジン1のウォータジャケットで暖められた冷却水を循環させる回路で、ラジエータ、サーモスタット(いずれも図示せず)およびヒータコア51を有している。このヒータコア51は、内部に走行用エンジン1を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する加熱用熱交換器である。
【0052】
そして、ヒータコア51は空気通路を部分的に塞ぐように空調ダクト10内において蒸発器45よりも下流側に配設されている。ヒータコア51の空気上流側にはエアミックスダンパ52が回動自在に取り付けられている。このエアミックスダンパ52はサーボモータ等のアクチュエータ53により駆動されて回動位置が調整され、その回動位置(開度)によって、ヒータコア51を通過する空気(温風)量とヒータコア51を迂回する空気(冷風)量との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する吹出温度調整手段として働く。
【0053】
次に、本実施形態の制御系の構成を図1、図3および図4に基づいて説明する。エアコンECU7には、エンジンECU9から出力される通信信号、車室内前面に設けられたコントロールパネルP上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。
【0054】
ここで、コントロールパネルP上の各スイッチとは、図4に示したように、圧縮機41の起動および停止を指令するためのエアコン(A/C)スイッチ60およびエコノミー(ECO)スイッチ61、吸込ロ(内外気)モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ62、車室内の温度を所望の温度に設定するための温度設定レバー(温度設定手段)63、送風ファン31の送風量を切り替えるための風量切替レバー64、および吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ65〜69等である。
【0055】
このうち、エアコンスイッチ60は蒸発器45の冷却度合いを低温側の状態(圧縮機41のON/OFF温度を例えば、4℃:ON、3℃;OFF)にして快適性を重視するクールモードを指令するスイッチである。また、エコノミースイッチ61は、蒸発器45の冷却度合いを高温側の状態(圧縮機41のON/OFF温度を例えば、13℃:ON、12℃;OFF)にして、圧縮機稼働率を下げることにより、エンジン1の燃料経済性(省燃費性)を重視するエコノミーモードを指令するスイッチである。
【0056】
風量切替レバー64は、ブロワモータ32への通電停止するOFF位置、ブロワモータ32のブロワ電圧を自動コントロールするAUTO位置、ブロワモータ32へのブロワ電圧を最小値にして最小風量とするLO位置、ブロワモータ32へのブロワ電圧を中間値にして中間風量にするME位置、およびブロワモータ32へのブロワ電圧を最大値にして最大風量にするHI位置に操作可能になっている。
【0057】
吹出口切替スイッチには、FACEモードに固定するためのフェイス(FACE)スイッチ65、B/Lモードに固定するためのハイレベル(B/L)スイッチ66、FOOTモードに固定するためのフット(FOOT)スイッチ67、F/Dモードに固定するためのフットデフ(F/D)スイッチ68、およびDEFモードに固定するためのデフロスタ(DEF)スイッチ69が設けてある。
【0058】
そして、各センサとは、図3に示したように、車室内の空気温度(以下内気温度と言う)を検出する内気温度センサ(内気温度検出手段)71、車室外の空気温度(以下外気温度と言う)を検出する外気温度センサ(外気温度検出手段)72、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ(日射検出手段1)73、蒸発器45の吹出温度を検出する吹出温度センサ(冷却度合検出手段)74、およびヒータコア51に流入するエンジン冷却水の温度(冷却水温)を検出する冷却水温度センサ(冷却水温検出手段)75、ハイブリッド自動車5の車速を検出する車速センサ76等がある。
【0059】
このうち、蒸発器温度センサ74は、具体的には蒸発器45直後の部位に配置され、蒸発器45を通過した直後の吹出空気温度を検出するサーミスタからなる。
【0060】
そして、エアコンECU7の内部には、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピー一夕が設けられ、各センサ71〜75からのセンサ信号は、エアコンECU7内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。なお、エアコンECU7は、ハイブリッド自動車5のイグニッションスイッチが投入(オン)されたときに、バッテリ4から直流電源が供給されて作動する。
【0061】
次に、本実施形態のエアコンECU7の制御処理を図5ないし図9に基づいて説明する。ここで、図5はエアコンECU7による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【0062】
まず、イグニッションスイッチがON(オン)されてエアコンECU7に直流電源が供給されると、図5のルーチンが起動され、ステップS1にて各種イニシャライズおよび初期設定を行う。次のステップS2にて、温度設定レバー63等のパネルPの各スイッチからスイッチ信号を読み込む。
【0063】
次のステップS3にて各センサ71〜76からのセンサ信号をA/D変換した後読み込む。続いて、ステップS4にて予めROMに記憶された下記の数式1に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度(TAO)を算出する。
【0064】
【数1】
TAO=KSET×TSET−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+Cなお、TSETは温度設定レバー63にて設定した設定温度、TRは内気温度センサ71にて検出した内気温度、TAMは外気温度センサ72にて検出した外気温度、TSは日射センサ73にて検出した日射量である。また、KSET、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0065】
次のステップS5にて、予めROMに記憶された図6の特性図(マップ)から、目標吹出温度(TAO)に対応するブロワ電圧(ブロワモータ32に印加する電圧:V)を決定する。
【0066】
次のステップS6にて、予めROMに記憶された図7の特性図(マップ参照)から、目標吹出温度(TAO)に対応する吸込ロモードを決定する。すなわち、目標吹出温度(TAO)が低い温度から高い温度にかけて、内気循環モード、内気と外気の両方を吸い込む内外気導入(半内気)モード、外気を吸い込む外気導入モードとなるように決定される。
【0067】
なお、吹出口モードは、図4に示したコントロールパネルP上の吹出口切替スイッチ66から69のいずれかを手動操作することにより吹出口モードが設定されるが、吹出口モードを周知のように目標吹出温度(TAO)に基づいて自動的に設定するようにしても良い。
【0068】
次のステップS7にて、予めROMに記憶された下記の数式2に基づいてエアミックスダンパ52の目標開度(SW)を算出する。
【0069】
【数2】
SW={(TAO−TE)/(TW−TE)}×100(%)
なお、TEは蒸発器温度センサ74にて検出した蒸発器吹出温度で、TWは冷却水温度センサ75にて検出した冷却水温度である。
【0070】
そして、SW≦0(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の全てをヒータコア51から迂回させる全閉位置(MAXCOOL位置)に制御される。また、SW≧100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の全てをヒータコア51へ通す全開位置(MAX HOT位置)に制御される。さらに、0(%)<SW<100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、蒸発器45からの冷風の一部をヒータコア51に通し、冷風の残部をヒータコア51から迂回させる中間位置に制御される。
【0071】
次に、ステップS8に進み、A/Cスイッチ60またはECOスイッチ61がONされている時における圧縮機41の制御状態を決定する。このステップS8は本発明の圧縮機制御手段を構成するもので、その詳細は後述の図8に示す。
【0072】
次に、ステップS9において、上記各ステップS4〜ステップS8にて算出または決定した各制御状態が得られるように、アクチュエータ14、22、53、ブロワ駆動回路33およびクラッチ駆動回路47に対して制御信号を出力する。さらに、ステップS9ではエンジンECU9に対してエンジン作動要求(E/GON)信号またはエンジン停止要求(E/GOFF)信号を出力する(ステップS9)。そして、ステップS10で、制御サイクル時間であるt(例えぱ0.5秒間〜2.5秒間)の経過を待ってステップS2の制御処理に戻る。
【0073】
次に、圧縮機41の断続制御を図8に基づいて説明する。先ず、図8のステップS21にてA/Cスイッチ60がONされているか否かを判定し、この判定結果がYESの場合にはステッブS22に進み、蒸発器温度センサ74にて検出した蒸発器吹出温度TEに基づいて、圧縮機41の起動(ON)および停止(OFF)を決定すると共に、エンジン作動要求(E/GON)信号を出力するかOFFするかを決定する。
【0074】
具体的には、予めROMに記憶されたステッブS22の特性図(マップ)に示したように、蒸発器吹出温度TEが第1着霜限界温度(例えば4℃)以上の時は、圧縮機41を起動(ON〕するように電磁クラッチON信号を出力すると共に、E/GON信号を出力する。また、蒸発器吹出温度TEが第1着霜限界温度よりも低温の第2着霜限界温度(例えば3℃)以下の時は、圧縮機41の作動を停止(OFF)するように電磁クラッチOFF信号を出力すると共に、E/GON信号の出力をOFFする。
【0075】
また、ステップS21の判定結果がNOの場合には、ステップS23にてECOスイッチ61がONされているか否かを判定する。この判定結果がNOの場合には、ステップS24にて圧縮機41をOFFするように電磁クラッチOFF信号を出力すると共に、E/GON信号の出力をOFFする。
【0076】
また、ステップS23の判定結果がYESの場合には、ハイブリッド自動車5が走行中であるか停車中であるかを判定する。具体的には、ステップS25に進み、車速センサ76にて検出したハイブリッド自動車5の車速が所定車速(例えば10km/h)以上であるか否かを判定する。ハイブリッド自動車5が走行中の場合にはこの判定結果がYESとなり、ステップS26に進み、蒸発器吹出温度TEに基づいて、圧縮機41のONおよびOFFを決定すると共に、E/GON信号を出力するかOFFするかを決定する。
【0077】
具体的には、予めROMに記憶されたステップS26の特性図(マップ)に示したように、蒸発器吹出温度TEが第1起動制御温度(例えば13℃)以上の時は、圧縮機41をONするように電磁クラッチON信号出力すると共に、E/GON信号を出力する。また、蒸発器吹出温度TEが第1停止制御温度(例えば12℃)以下の時は、圧縮機41をOFFするように電磁クラッチOFF信号を出力すると共に、E/GON信号の出力をOFFする。
【0078】
また、ハイブリッド自動車5が停車中の場合にはステップS25の判定結果がNOとなり、ステップS27に進み、停車時における圧縮機制御を決定する。このステップS27の詳細は後述の図10に示す。
【0079】
次に、本実施形態のエンジンECU9の基本的な制御処理を図9に基づいて説明する。なお、エンジンECU9は、ハイブリッド自動車5の運転状態を検出する運転状態検出手段としての各センサ信号や、エアコンECU7およびハイブリッドECU8からの通信信号が入力される。なお、センサとしては、エンジン回転速度センサ、スロットル開度センサ、バッテリ電圧計、冷却水温センサおよび車速センサ(いずれも図示せず)等が使用される。
【0080】
まず、イグニッションスイッチがON(オン)されてエンジンECU9に直流電源が供給されると、図9のルーチンが起動され、ステップS31にて各種イニシャライズを行う。次に、ステップS32にてエンジン回転速度センサ、車速センサ、スロットル開度センサ、バッテリ電圧計、冷却水温センサ等からの各センサ信号を読み込む。次に、ステップS33にてハイブリッドECU8との通信(送信および受信)を行う。次に、ステップS34にてエアコンECU7との通信(送信および受信)を行う。
【0081】
次に、ステップS35にて各センサ信号に基づいて、走行用エンジン1のオン、オフを判定する。具体的には、車速センサにて検出したハイブリッド自動車5の車速が所定値例えば40km/h以上であるか否かを判定するとともに、バッテリ電圧計にて検出したバッテリ4の電圧が、モータ2の発電機能による充電が必要な所定電圧以下であるか否かを判定し、車速が所定値以上である時、およびバッテリ電圧が所定電圧以下である時、走行用エンジン1のオン(作動要求)を判定する。
【0082】
このステップS35の判定結果がONの場合には、ステップS36にて始動用モータや点火装置を含むエンジン制御機器3に対して、走行用エンジン1を始動(ON)させるように制御信号を出力する。その後にステップS32に戻る。
【0083】
また、ステップS35の判定結果がOFFの場合にはステップS37に進み、走行用エンジン1を始動することを要求するE/GON信号を、エアコンECU7から受信しているか否かを判定する。このステップS37の判定結果がNOの場合には、エアコンECU7からE/GOFF信号を受信していることになるため、ステップS38に進み、エンジン制御機器3に対して、走行用エンジン1の作動を停止(OFF)させるように制御信号を出力する。その後にステップS32に戻る。
【0084】
また、ステップS37の判定結果がYESの場合には、ステップS36に移行して、エンジン制御機器3の始動装置に対して、走行用エンジン1を始動(○N)させるように制御信号を出力する。
【0085】
次に、前述した図8のステップS27による停車時の圧縮機制御を図10に基づいて詳細に説明する。この停車時の圧縮機制御においては、圧縮機41をONする温度(第2起動温度)を車速が所定速度(例えば10km/h)以上の時の第1起動制御温度(例えば13℃)よりも更に高い温度(例えば、図10の例では23℃)に設定する。これは、停車中におけるエンジン1および圧縮機41の停止時間を長くして、省燃費を実現するためである。
【0086】
図10の制御ルーチンでは、まず、ステップS41にて圧縮機41がOFF(停止)状態にあるか判定する。圧縮機41がON(作動)状態にあるときはステップS42に進み、蒸発器吹出温度TEが停止制御温度(例えば11℃)以下であるか判定する。
【0087】
蒸発器吹出温度TEが11℃より高いときは、ステップS9へ戻り、圧縮機41のON(作動)状態を継続する。これに対し、蒸発器吹出温度TEが11℃以下に低下すると、ステップS42からステップS43に進み、圧縮機41の電磁クラッチOFF信号を出力すると共に、E/GON信号の出力をOFFして、圧縮機41をOFFする。
【0088】
すると、ステップS41の判定がYESとなり、ステップS44でタイマーをスタートして圧縮機41の停止(OFF)時間Tの計測を開始する。次に、ステップS45において、前述の図11における期間▲3▼の温度低下状態の有無を判定する。このステップS45の判定方法の一例を具体的に説明すると、期間▲3▼は圧縮機41の停止期間において唯一の温度低下状態であるから、圧縮機41の停止時に蒸発器吹出温度TEの低下率が所定値以上になっていることを判定すれば、期間▲3▼の温度低下状態を判定できる。
【0089】
より具体的に説明すると、蒸発器吹出温度TEのサンプリングを0.25秒間隔で行い、4回(1秒)の平均値が1秒前の平均値より所定値以上低くなった場合を期間▲3▼の温度低下状態であると判定する。
【0090】
このステップS45の判定がYESになるとステップS46に進み、圧縮機41の電磁クラッチON信号を出力すると共に、E/GON信号を出力して、圧縮機41を起動(ON)する。
【0091】
図12は上記のように期間▲3▼の温度低下状態の判定により圧縮機41を直ちに起動する制御を示すもので、期間▲3▼の温度低下が生じると、これを判定して直ちに圧縮機41を再起動して蒸発器45の冷媒蒸発潜熱による冷却作用を再開できる。
【0092】
そのため、期間▲3▼の温度低下の開始直後に凝縮水が再度発生するようになり、蒸発器45のフィン表面を濡らすことができる。その結果、蒸発器45のフィン表面から付着臭い成分の離脱が生じることを未然に防止でき、これにより、蒸発器吹出空気への臭気発生を確実に阻止できる。
【0093】
しかも、臭気発生の阻止のみならず、停車中におけるエンジン1の省燃費実現のためにも有利である。すなわち、期間▲3▼の温度低下は臭気強度増大の直前に起きるから、臭気強度増大の直前時期までエンジン1および圧縮機41の停止状態を維持することが可能となる。これにより、臭気発生を確実に阻止しながら、エンジン1および圧縮機41の停止時間を最大限長くして、エンジン1の省燃費を効果的に実現できる。
【0094】
ところで、期間▲3▼の温度低下状態は、通常の運転条件下では圧縮機41の停止ごとに発生するが、蒸発器吸い込み空気の条件(風量、温度、湿度等)によっては期間▲3▼の温度低下状態を判定できない場合がある。例えば、期間▲2▼の終了直前の時期に送風ファン風量が風量切替レバー64の手動操作、あるいはオートエアコンによる自動風量制御(図6参照)により、LOレベルからHIレベルに急上昇した場合、あるいは吸込口(内外気)モードの切替により期間▲2▼の終了直前の時期に吸込空気温度が急上昇した場合等のイレギュラーケースでは、期間▲3▼の温度低下状態が発生せず、期間▲2▼から直接、期間▲4▼に移行してしまう。
【0095】
このようなイレギュラーケースではステップS45の判定がNOのままであるから、ステップS47に進み、図11の期間▲4▼の温度上昇状態の有無を判定する。このステップS47の判定方法の一例を具体的に説明すると、期間▲4▼は圧縮機41の停止期間において期間▲2▼経過後における温度上昇状態であるから、圧縮機41の停止時において期間▲2▼経過後に蒸発器吹出温度TEの上昇率が所定値以上になっていることを判定すれば、期間▲4▼の温度上昇状態を判定できる。
【0096】
より具体的に説明すると、蒸発器吹出温度TEのサンプリングを0.25秒間隔で行い、4回(1秒)の平均値が1秒前の平均値より所定値(例えば、1℃)以上急上昇する状態は期間▲1▼であると判定し、そして、4回(1秒)の平均値が1秒前の平均値より所定値未満(例えば、1℃未満)の僅少値しか上昇しない状態は期間▲2▼であると判定し、更に、この期間▲2▼の経過後に、再び、蒸発器吹出温度TEのサンプリングの4回(1秒)の平均値が1秒前の平均値より所定値(例えば、1℃)以上急上昇する状態が生じたら、期間▲4▼の温度上昇状態であると判定する。
【0097】
この期間▲4▼の温度上昇状態が判定されると、ステップS47からステップS48に進み、圧縮機41の停止時間Toffを記憶する。次に、ステップS46に進み、圧縮機41の電磁クラッチON信号を出力すると共にE/GON信号を出力して、圧縮機41を起動(ON)する。
【0098】
上記ステップS48による圧縮機停止時間Toffは、図13に示すように圧縮機41の停止が開始してからステップS47にて期間▲4▼の温度上昇状態が判定され圧縮機41が再起動するまでの時間であり、ステップS44のタイマー信号を用いて決定することができる。
【0099】
ところで、期間▲4▼の温度上昇状態は図11に示すように臭気強度があう程度増大してから生じるので、期間▲4▼の温度上昇状態を判定してから圧縮機41を起動するのでは、臭気発生の阻止効果は不十分となる。しかし、圧縮機41の2回目以降の起動を以下のごとく制御することにより、臭気発生を確実に阻止できる。
【0100】
すなわち、ステップS46にて圧縮機41が起動されて蒸発器吹出温度TEが次第に低下し、11℃以下に低下すると、ステップS42からステップS43に進み、圧縮機41が再度停止する。すると、ステップS41からステップS44,S45、S47を経てステップS49に至り、空調ダクト10の吸込口モードが内気モードであるか判定する。
【0101】
内気モードであるときは、ステップS50にて、圧縮機停止時間Tと1回目の圧縮機41の停止時間Toffから第1所定時間TAだけ短い時間(Toff−TA)との大小を比較する。ここで、圧縮機停止時間Tは圧縮機41が停止する毎にステップS44のタイマーにより計測される時間であり、一方、1回目の圧縮機停止時間Toffとは、期間▲4▼の温度上昇状態の判定により圧縮機41が再起動されるまでの停止時間で、ステップS48にて記憶されている。第1所定時間TAは例えば、6秒である。
【0102】
T≦(Toff−TA)である間はステップS51にて蒸発器吹出温度TEが第2起動温度(23℃)以上であるか判定する。この判定がNOであれば、ステップS9に戻り、圧縮機41の停止が継続される。そして、圧縮機41の停止継続により、T>(Toff−TA)になると、ステップS50からステップS46に進み、圧縮機41の電磁クラッチON信号を出力すると共にE/GON信号を出力して、圧縮機41を起動(ON)する。
【0103】
つまり、期間▲3▼の温度低下状態を判定できないイレギュラーケースでは、2回目以降の圧縮機停止時間Tが1回目の圧縮機停止時間Toffから第1所定時間TAだけ短い時間となり、期間▲4▼の温度上昇状態が生じる時期より第1所定時間TA分だけ前に圧縮機41を再起動できる。
【0104】
この結果、図11において、臭気強度が増大する前に圧縮機41を再起動できるので、上記イレギュラーケースでも臭気発生を確実に阻止できる。
【0105】
特に、内気モードでは車室内空気の再循環により空調がなされ、外気導入による車室内換気が行われないので、臭気強度が比較的小さい段階から乗員は臭気による不快感を感じやすい。そこで、第1所定時間TAを後述の外気モード時の第2所定時間TB(例えば、3秒)より長い時間(例えば、6秒)にすることにより、内気モード時における臭気による不快感をより一層効果的に阻止できる。
【0106】
一方、外気モード時ではステップS49からステップS52に進み、T>(Toff−TB)になると、ステップS46にて圧縮機41の電磁クラッチON信号を出力すると共にE/GON信号を出力して、圧縮機41を起動(ON)する。
これにより、外気モード時においても、2回目以降の圧縮機停止時間Tが1回目の圧縮機停止時間Toffから第2所定時間TBだけ短い時間となり、期間▲4▼の温度上昇状態が生じる時期より第2所定時間TB分だけ前に圧縮機41を再起動でき、イレギュラーケースでの臭気発生を確実に阻止できる
なお、冷房熱負荷が大きい場合には、ステップS50、S52の判定がYESとなる前に蒸発器吹出温度TEが第2起動温度(23℃)以上に上昇する場合があり、この場合はステップS51からステップS53に進み、圧縮機41の電磁クラッチON信号を出力すると共にE/GON信号を出力して、圧縮機41を起動(ON)する。
【0107】
(第2実施形態)
第1実施形態では、蒸発器冷却度合に関連する物理量として蒸発器吹出温度TEを検出しているが、第2実施形態では蒸発器冷却度合に関連する物理量として蒸発器フィン表面温度を検出する。具体的には、蒸発器フィン表面に温度センサを密着配置してフィン表面温度を検出すればよい。
【0108】
図14は第2実施形態による蒸発器フィン表面温度に基づく圧縮機41の断続制御を例示しており、蒸発器吹出温度TEに比較して蒸発器フィン表面温度の方が凝縮水の蒸発に伴う温度変化の応答が早いので、期間▲3▼での温度低下の判定が容易となる。
【0109】
(他の実施形態)
なお、上記の一実施形態では、本発明をハイブリッド自動車用空調装置に適用した場合ついて説明したが、信号待ち等の停車時には車両エンジンを自動的に停止して省燃費を図る車両(エコラン車)において、停車時での圧縮機制御に本発明を適用できることはもちろんである。
【0110】
また、本発明は車両以外の用途の空調装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態による空調装置を含むハイブリッド自動車の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1の空調装置の全体構成を示す模式図である。
【図3】図2の空調装置の制御系を示すブロック図である。
【図4】図3のコントロールパネルを示す正面図である。
【図5】図3のエアコンECUによる基本的な制御処理を示すフローチャートである。
【図6】目標吹出温度とブロワ電圧との関係を示す特性図である。
【図7】目標吹出温度と吸込口モードとの関係を示す特性図である。
【図8】図1のエアコンECUによる圧縮機制御を示すフローチャートである。
【図9】図1のエンジンECUによる基本的な制御処理を示すフローチャートである。
【図10】第1実施形態による圧縮機制御の具体例を示すフローチャートである。
【図11】蒸発器吹出空気の臭気強度および蒸発器吹出温度の挙動と圧縮機制御との関係を示す説明図である。
【図12】第1実施形態による蒸発器吹出温度の挙動と圧縮機制御との関係を示す説明図である。
【図13】第1実施形態による蒸発器吹出温度の挙動と圧縮機制御との関係を示す説明図である。
【図14】第2実施形態による蒸発器フィン表面温度の挙動と圧縮機制御との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1…エンジン(圧縮機駆動源)、2…電動モータ、41…圧縮機、
45…蒸発器、74…蒸発器吹出温度センサ(冷却度合検出手段)。

Claims (9)

  1. 室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(45)と、
    前記蒸発器(45)を通過した冷媒を圧縮し、吐出する圧縮機(41)と、
    前記圧縮機(41)を駆動する駆動源(1)と、
    前記蒸発器(45)の冷却度合に関連する物理量を検出する冷却度合検出手段(74)と、
    前記蒸発器(45)の冷却度合に応じて前記圧縮機(41)の作動を断続制御する制御手段(S8)と、
    前記駆動源(1)の自動停止に伴って、前記圧縮機(41)の作動が断続制御される場合の前記圧縮機(41)の停止時に前記蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程における、前記蒸発器(45)の冷却度合の一時的な温度低下を判定する判定手段(S45)とを備え、
    前記判定手段(S45)により前記蒸発器(45)の冷却度合の一時的な温度低下を判定すると前記圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする空調装置。
  2. 前記圧縮機(41)の停止時に前記蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、前記蒸発器(45)表面の凝縮水が乾ききることにより生じる、前記蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定する判定手段(S47)を備え、
    前記判定手段(S47)により前記蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定すると前記圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
  3. 前記蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定して前記圧縮機(41)を再起動するまでの停止時間(Toff)を記憶しておき、
    前記圧縮機(41)の次回の停止時には、前記圧縮機(41)の停止時間が前記停止時間(Toff)より所定時間(TA、TB)短い時間に達すると、前記圧縮機(41)を再起動することを特徴とする請求項2に記載の空調装置。
  4. 前記圧縮機(41)の停止後、前記蒸発器(45)の冷却度合の一時的な温度低下が生じるまでの時間と、前記停止時間(Toff)より所定時間(TA、TB)短い時間のうち、短い方の時間で前記圧縮機(41)を再起動させることを特徴とする請求項3に記載の空調装置。
  5. 内気と外気を切替導入可能な車両用空調装置であって、前記所定時間(TA、TB)は、外気モード時に比して内気モード時の方を大きくしたことを特徴とする請求項3または4に記載の空調装置。
  6. 室内へ送風される空気を冷却する蒸発器(45)と、
    前記蒸発器(45)を通過した冷媒を圧縮し、吐出する圧縮機(41)と、
    前記圧縮機(41)を駆動する駆動源(1)と、
    前記蒸発器(45)の冷却度合を検出する冷却度合検出手段(74)と、
    前記蒸発器(45)の冷却度合に応じて前記圧縮機(41)の作動を断続制御する制御手段(S8)とを備え、
    前記制御手段(S8)は、前記駆動源(1)の自動停止に伴って、前記圧縮機(41)の作動が断続制御される場合の前記圧縮機(41)の停止時に前記蒸発器(45)の冷却度合が高温側へ上昇する過程において、前記蒸発器(45)表面の凝縮水が乾ききることにより生じる、前記蒸発器(45)の冷却度合の温度上昇を判定して、前記圧縮機(41)を再起動するとともに、前記圧縮機(41)の再起動までの停止時間(Toff)を記憶しておき、
    前記制御手段(S8)は、前記圧縮機(41)の次回の停止時には、前記圧縮機(41)の停止時間が前記停止時間(Toff)より所定時間(TA、TB)短い時間に達すると、前記圧縮機(41)を再起動することを特徴とする空調装置。
  7. 前記冷却度合検出手段(74)は、前記蒸発器(45)の冷却度合に関連する物理量として前記蒸発器(45)の吹出空気温度を検出することを特徴とする請求項1ないし6のいづれか1つに記載の空調装置。
  8. 前記冷却度合検出手段(74)は、前記蒸発器(45)の冷却度合に関連する物理量として前記蒸発器(45)のフィン表面温度を検出することを特徴とする請求項1ないし6のいづれか1つに記載の空調装置。
  9. 車両の走行用駆動源としてエンジン(1)と走行用電動モータ(2)とを備えるハイブリッド車に、請求項1ないし8のいづれか1つに記載の空調装置が搭載され、
    前記圧縮機(41)の駆動源は前記エンジン(1)であり、
    前記エンジン(1)の運転を制御するエンジン制御装置(9)を備え、
    前記エンジン制御装置(9)は、空調側からエンジン作動要求信号が出力されているときは前記エンジン(1)を運転させ、車両側から前記エンジン(1)の停止要求があって、かつ前記空調側からエンジン作動要求信号が出力されていないときは前記エンジン(1)を停止させることを特徴とするハイブリッド車用空調・エンジン制御装置。
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