JP4064661B2 - 圧力バランス型熱応動弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のオートマチックトランスミッションなどの油圧回路に使用される圧力バランス型熱応動弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記油圧回路に使用される従来の熱応動弁は、具体的には図示しないが、ワックスタイプの感温素子とスプリングを利用して、オイル温度の高低で、油圧回路をオイルクーラー側とリターン側に切り換える構成となっているが、この場合には、弁体がオイル圧を直接受けることとなるので、温度条件によって、弁体を移動させようとすると、必然的に、上記の感温素子を大型化しなければならなかった。
【0003】
そこで、斯かる実情に鑑み、実開昭61−133183号公報に示すように、弁ケースの内部に第1室と中間室と第2室を形成して、第1室と中間室とを開閉自在な弁体により画成し、中間室と第2室とを弁体と一体に連結されたピストンにより画成し、上記第1室にオイルの流入口を設け、中間室にオイルの流出口を設ける一方、第2室に感温素子たる形状記憶合金ばねを配置し、中間室にバイアスばねを配置して、上記ピストンに対して反対方向のばね圧を付与すると共に、第1室と第2室とをバイパス管路にて連通させた圧力バランス型熱応動弁が提案されている。
【0004】
従って、この圧力バランス型熱応動弁の下では、第1室と第2室とをバイパス管路で連通させて、第1室と第2室との圧力バランスを釣り合わせることにより、感温素子たる形状記憶合金ばねの必要作動力を大きく軽減させることができるので、感温素子たる形状記憶合金ばねの小型化が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
確かに、従来の圧力バランス型熱応動弁にあっては、弁体に対する逆方向の開放力と閉止力を釣り合わせて、形状記憶合金ばねの必要作動力を小さくすることは可能となるが、反面、この為には、別に、第1室と第2室を連結するバイパス管路や、シール性を持ったピストンを設けなければならないので、部品点数が増加して、弁構造自体が自ずと複雑となる嫌いがあった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、斯かる従来の圧力バランス型熱応動弁の課題を有効に解決するために開発されたもので、請求項1記載の発明は、感温素子で弁体を作動させて、油圧回路を切り換える熱応動弁において、弁ケース内に算盤珠形状を呈する流入側弁と流出側弁を有する弁体を移動可能に配置すると共に、該弁ケースの上部一側に弁体の移動方向と直交するオイルの流入管路を設け、弁ケースの下部一側にオイルの流出管路を設け、且つ、流入管路直下の弁ケース内に弁体の流入側弁で開閉される弁口を画成する環状突部を設けると共に、流入管路よりも上側の弁ケース内面の内、少なくとも、上記環状突部と対向して流入管路の中心線を軸とした対称位置に存する部位を環状突部の内径と同径となして、オイル温度が感温素子の作動温度以下の場合には、算盤珠形状を呈する流入側弁の中心と流入管路の中心線とを一致させる一方、弁体の内部軸方向にオイルの貫通状流路を開設すると共に、該貫通状流路内でオイルを流入側から流出側に流動させて、該オイルを流出側に形成された圧力室内に流し込ませ、弁体の流入側弁と流出側弁の各々に反対方向から加わる圧力を釣り合わせる構成を採用した。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1を前提として、弁体の動きをガイド手段で規制する構成を採用した。請求項3記載の発明は、請求項2を前提して、ガイド手段は、貫通状流路の入口に嵌入する断面十字状のガイド部と、圧力室側に形成されたガイド面に沿って移動するガイド羽とから成る構成を採用した。
【0008】
依って、請求項1記載の発明にあっては、弁体の貫通状流路内を流動したオイルが流出側に形成された圧力室に流れ込む関係で、流入側弁の受けるオイル圧と流出側弁が受けるオイル圧とが釣り合うこととなるので、極めて簡素化された弁構造の下で、感温素子の必要作動力を小さくすることが可能となるので、感温素子の小型化が期待できることは言うまでもないが、感温素子の小型化に伴い、弁構造自体の小型化と軽量化が可能となると共に、弁体が圧力に影響されることがないので、熱応動弁を設定温度範囲内で確実に作動させることが可能となる。
【0009】
請求項2記載の発明にあっては、ガイド手段の存在によって、弁ケース内における弁体の安定した動きを保障できる。請求項3記載の発明にあっては、断面十字状のガイド部とガイド面に沿って移動するガイド羽の作用で、弁ケース内における弁体の安定した動きをより一層保障できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する好適な実施の形態に基づいて説明すれば、該実施の形態に係る圧力バランス型熱応動弁は、自動車のオートマチックトランスミッションの油圧回路、詳しくは、オイルクーラー回路に使用されるもので、基本的には、感温素子たる形状記憶合金ばねとバイアスばねとを利用して、オイルの温度条件によって、上記回路を切り換えるものである。尚、形状記憶合金ばねに関しては、変態温度以下では収縮し、変態温度以上に加熱されたら伸長するように熱処理されている。
【0011】
これを詳しく説明すると、図1・図2に示す如く、弁ケース1に対しては、その上部の一側にオイルポンプ側に接続される管路2を設け、対向する同他側にラジエーターに内蔵されたオイルクーラー側に接続される管路3を設ける一方、下部の一側に潤滑を要する個所側に接続される管路4を設け、対向する同他側に上記オイルクーラーに接続されてオイルを回帰させる管路5を設ける構成となっている。
【0012】
そして、この弁ケース1の内部に対しては、上部側に形状記憶合金ばね6をセットする収納室7を形成して、該収納室7内の形状記憶合金ばね6を収納室7の上面と後述する弁体11の流入側弁12間に装着すると共に、下部側にバイアスばね8をセットする収納室を兼用する圧力室9を形成して、該圧力室9内のバイアスばね8を圧力室9の下面と後述する弁体11の流出側弁13間に装着し、且つ、上記上部側の管路2・3を結ぶ直下に流入側弁12で開閉される弁口10を積極的に形成するものとする。
【0013】
又、弁ケース1内に上下動可能に配置される弁体11は、その弁軸11aの上部側、即ち、弁ケース1の上部管路2・3側に上記弁口10を開閉する流入側弁12を形成し、弁軸11aの下部側、即ち、弁ケース1の下部管路4・5側に流出側弁13を形成する一方、弁体11の内部軸方向にオイルの貫通状流路14を開設して、該貫通状流路14内でオイルを流入側から流出側に流動させて、上記した圧力室9内にオイルを流し込む構成となっている。
【0014】
尚、この弁体11の上下動に際しては、上部の収納室7側に貫通状流路14の入口に嵌入する断面十字状のガイド部15を形成すると共に、下部の圧力室9側にガイド面16を形成し、流出側弁13の外周に該ガイド面16に沿って移動するガイド羽17を形成して、上下で、弁体11の安定した動きを規制するものとする。
【0015】
依って、斯かる構成の圧力バランス型熱応動弁の下で、オイルポンプ側から管路2を通って弁ケース1内にオイルが圧送されて来た場合において、当該オイルが形状記憶合金ばね6の変態温度以下の時は、形状記憶合金ばね6が収縮したまま伸長することがないので、図1に示す如く、弁ケース1の弁口10が開放されて、オイルが当該弁口10から下方に流動すると同時に、弁体11の貫通状流路14内をオイルがその入口から出口に向かって流動して、オイルが圧力室9内に流れ込んで、潤滑を要する個所側に管路4を通って流出していくこととなる。この場合には、若干ではあるが、オイルは管路3にも流動することはあるが、大半は、オイルの粘性とオイルクーラー側の抵抗で、上記のように流動する。
【0016】
又、斯かる状態にあっては、算盤珠形状を呈する流入側弁12の中心と管路2の中心線が一致しているので、オイルの流動は、弁口10側と貫通状流路14側に均等に分岐されることとなる。
【0017】
しかし、この場合には、弁体11の流入側弁12は管路2から圧送されたオイルによりオイル圧を受けることとなるが、弁体11の流出側弁13も圧力室9に流れ込んだオイルから逆方向のオイル圧を受けて、両弁12・13に対する圧力バランスが相殺されて釣り合うこととなるので、形状記憶合金ばね6はバイアスばね8と釣り合うだけのばね圧を発揮するもので足りる。
【0018】
又、オイルポンプ側から管路2を通って弁ケース1内にオイルが圧送されて来た場合において、当該オイルが形状記憶合金ばね6の変態温度以上の時は、今度は、図2に示す如く、形状記憶合金ばね6がバイアスばね8に打ち勝って伸張して、流入側弁12で弁口10を閉塞することとなるので、高温なオイルは管路3を通ってオイルクーラーで冷却されて、その後、管路5・4を通って潤滑を要する個所側に回帰することとなる。
【0019】
しかし、この場合は、既述したように、弁体11の流入側弁12と流出側弁13とは圧力バランスが釣り合っているので、形状記憶合金ばね6はバイアスばね8のばね圧に打ち勝つだけのばね圧で足り得るので、いずれにしても、感温素子たる形状記憶合金ばね6は小型のものを使用して、コストの低廉化が図れることとなる。
【0020】
従って、本実施の形態にあっては、従来の圧力バランス型熱応動弁の如く、第1室と第2室を連結するバイパス管路や、シール性を持ったピストンが全く不要となるので、弁構造を簡素化して、小型な熱応動弁を提供することが可能となる。又、弁体11が圧力に影響されることがないので、形状記憶合金ばね6を小型にできることは勿論であるが、この小さな力で、熱応動弁を所定の作動温度範囲内で確実に作動させることが可能となる。更に、従来のバイパス管路を不要としたことは、オイル流路も簡素化できるので、弁体11自体も小型化することが可能となる。
【0021】
尚、上記実施の形態にあっては、4本の管路2・3・4・5を有する四方弁を対象としたものであるが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えは、図3に示す如く、オイルクーラーから回帰する管路5を省略して、三方弁となすことも実施に応じ任意である。この場合にあっても、その他の構成は上記した四方弁と一緒であるから、同様な作用効果が得られることは言うまでもないが、管路5の代わりに、弁ケース1を通さない新たな回帰流路が必要となる。
【0022】
【発明の効果】
以上の如く、本発明は、上記構成の採用により、弁体の貫通状流路内を流動したオイルが流出側に形成された圧力室に流れ込む関係で、流入側弁の受けるオイル圧と流出側弁が受けるオイル圧とが釣り合うこととなるので、極めて簡素化された弁構造の下で、感温素子の必要作動力を小さくすることが可能となるので、感温素子の小型化が期待できることは言うまでもないが、感温素子の小型化に伴い、弁構造自体の小型化と軽量化が可能となると共に、弁体が圧力に影響されることがないので、熱応動弁を設定温度範囲内で確実に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る圧力バランス型熱応動弁を弁開状態をもって示す断面図である。
【図2】同熱応動弁を弁閉状態をもって示す断面図てある。
【図3】同熱応動弁の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 弁ケース
2 管路
3 管路
4 管路
5 管路
6 形状記憶合金ばね
7 収納室
8 バイアスばね
9 圧力室
10 弁口
11 弁体
11a 弁軸
12 流入側弁
13 流出側弁
14 貫通状流路
15 ガイド部(ガイド手段)
16 ガイド面(ガイド手段)
17 ガイド羽(ガイド手段)
Claims (3)
- 感温素子で弁体を作動させて、油圧回路を切り換える熱応動弁において、弁ケース内に算盤珠形状を呈する流入側弁と流出側弁を有する弁体を移動可能に配置すると共に、該弁ケースの上部一側に弁体の移動方向と直交するオイルの流入管路を設け、弁ケースの下部一側にオイルの流出管路を設け、且つ、流入管路直下の弁ケース内に弁体の流入側弁で開閉される弁口を画成する環状突部を設けると共に、流入管路よりも上側の弁ケース内面の内、少なくとも、上記環状突部と対向して流入管路の中心線を軸とした対称位置に存する部位を環状突部の内径と同径となして、オイル温度が感温素子の作動温度以下の場合には、算盤珠形状を呈する流入側弁の中心と流入管路の中心線とを一致させる一方、弁体の内部軸方向にオイルの貫通状流路を開設すると共に、該貫通状流路内でオイルを流入側から流出側に流動させて、該オイルを流出側に形成された圧力室内に流し込ませ、弁体の流入側弁と流出側弁の各々に反対方向から加わる圧力を釣り合わせたことを特徴とする圧力バランス型熱応動弁。
- 弁体の動きをガイド手段で規制したことを特徴とする請求項1記載の圧力バランス型熱応動弁。
- ガイド手段は、貫通状流路の入口に嵌入する断面十字状のガイド部と、圧力室側に形成されたガイド面に沿って移動するガイド羽とから成ることを特徴とする請求項2記載の圧力バランス型熱応動弁。
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