JP4059467B2 - 誘電体同軸フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は誘電体同軸フィルタに関わり、特に移動体通信の基地局に用いられる送受信用の誘電体同軸フィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
超伝導体は、通常の金属よりも表面抵抗が2〜3桁程度低い。このため、不要な周波数を遮断するフィルタの導体として用いれば、急峻な遮断特性を得るためにフィルタの段数を多くしても通過域での挿入損失を極力小さくすることが出来る。そこで、図15に示すように、誘電体ブロック1に共振器穴3をあけ、該共振器穴3の内面壁3a、誘電体ブロック1の側面1aおよび底面1bに超伝導膜を形成した超伝導フィルタ(誘電体同軸フィルタ)が開発されている。入出力給電は給電線2により行われ、さらに、結合係数調整用穴4を備える。誘電体ブロック1の上面は超伝導膜が形成されていないので各共振器穴はλ/4波長共振器として機能し、挿入損失も0.1dB以下と優れている。すなわち、誘電体ブロック1の上面を誘電体剥き出しにしてopen面(開放面)とし、下面を共振器穴の内壁導体と短絡してshort面(短絡面)とし、これにより挿入損失の少ないλ/4波長共振器を構成している。各共振器穴3は等価的にLC並列共振回路を構成し、結合係数調整用穴4により結合されている。
超伝導フィルタは、超伝導体の臨界温度Tc以下で動作させるが、たとえば最も一般的なYBCO(すなわちY-Ba-Cu-O)ではTc=90K程度であるので、特性が安定するTc=70K程度で動作させる。冷却は、通常、図16に示したように真空容器5内で超伝導フィルタ6をコールヘッド7に取り付けた冷凍機8により行われる。9は入力出力用の給電線である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
超伝導フィルタは、移動通信おいて基地局などのビル屋上といった場所に設置される。このため、数年間メンテナンスフリーであることが必要とされ、超伝導フィルタ6を冷却する冷凍機8の信頼性向上が望まれている。しかし、冷凍機8には回転部分を始めとする摺動部分が多く存在するため、故障する可能性が十分にある。故障した場合、たとえばTc=70Kに保っていた温度が急激に上昇すると超伝導フィルタが超伝導状態を保てなくなってしまう。このようになると、フィルタとしての機能をまったく果たせなくなり誤動作が発生する。したがって、万が一、冷凍機が故障した場合でも、ある程度のフィルタ特性を補償できる超伝導フィルタが要望されている。
以上から本発明の目的は、温度が上昇してもある程度のフィルタ特性を補償できる超伝導フィルタ(誘電体同軸フィルタ)を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の誘電体同軸フィルタは、(1) 温度が低くなると比誘電率が小さくなる誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、(2)超伝導膜を誘電体ブロックの側面、底面、共振器穴の内壁にそれぞれ形成し、(3) 各共振器穴に、少なくとも表面が金属で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、(4) 誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆って形成される。第1の誘電体同軸フィルタによれば、冷凍器の故障等により温度が上昇してフィルタの中心周波数が低下しようとしても、金属構造体と共振器内壁間のギャップ間隔により中心周波数が高くなる傾向を示し、トータル的に中心周波数の変動を抑え、これにより、温度が上昇しても本来のフィルタ特性を維持することができる。
【0005】
又、本発明の第2の誘電体同軸フィルタは、(1) 温度が低くなると比誘電率が大きくなる誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、(2) 金属膜を前記共振器穴の内壁に形成すると共に超伝導膜を誘電体ブロックの側面および底面に形成し、(3) 各共振器穴に、少なくとも表面が超伝導体で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、(4) 誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆って形成される。第2の誘電体同軸フィルタによれば、冷凍器の故障等により温度が上昇してフィルタの中心周波数が高くなろうとしても、金属構造体と共振器内壁間のギャップ間隔が等価的に0となって中心周波数が低くなる傾向を示し、トータル的に中心周波数の変動を抑え、これにより、温度が上昇しても本来のフィルタ特性を維持することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
(A)第1実施例
(a)誘電体同軸フィルタの構成
図1は本発明の第1実施例の誘電体同軸フィルタの分解斜視図、図2は第1実施例の誘電体同軸フィルタの組立て透視斜視図である。
誘電体ブロック11はMgO(酸化マグネッシウム)等のように温度が小さくなると比誘電率が小さくなる特性を備えている。この誘電ブロック11には貫通穴である共振器穴13が3個開けられ、各共振器穴13の内面壁や誘電体ブロック11の側面および底面のそれぞれに超伝導膜15が形成されている。ただし、誘電体ブロック11の上面11aに超伝導膜 15は形成されていない。以上により、誘電体ブロック11の上面を誘電体剥き出しにしてopen面とし、下面を共振器穴の内壁導体と短絡してshort面としてλ/4波長共振器を構成している。又、誘電ブロック11には入出力給電線用穴17が形成されている。この誘電体ブロック11は銅製の直方体の筐体に収納される。
【0007】
筐体は筐体上蓋部21、直方体状の筐体胴部31、筐体底部41で構成されている。筐体上蓋部21には、円柱あるいは円筒状の入出力給電線22がコネクタ23により上蓋24に固着されており、誘電体ブロック11の入出力給電線用穴17に嵌め込まれるようになっている。筐体底部41を構成する底板42にはには、金属棒43が植設され、誘電体ブロック11の共振器穴13に嵌め込まれるようになっている。
【0008】
(b)本発明の原理
図3に示すように、φ26mm、高さh=13.6mmの円柱誘電体MgO(酸化マグネシウム)101を導体103ではさんでなる共振器の通過特性を測定器105で測定して共振周波数f0を求めると、その温度依存性は図4に示すようになる。この特性より明らかなように、温度が低くなるほど共振周波数f0が高くなることが分かる。なお、図4にはMgOの線膨張係数を考慮し、熱膨張(収縮)分によるf0変化分を差っ引いたデータも同時に示している。このデータを基に比誘電率εrを計算すると、比誘電率の温度依存性は図5に示すようになり、温度が低くなるほど比誘電率εrは小さくなり、T=120K以下において飽和領域に入る。
つまり、誘電体を冷却する場合、常温(T=300K付近)と超伝導フィルタを作動させる極低温(T=70K付近)とでは比誘電率εrが変化し、このため、フィルタの中心周波数がずれる。すなわち、温度が上昇するほど中心周波数が低下する。このことは、冷凍器等が故障して温度が上昇したら、中心周波数が高くなるような手段を講じればよいことを意味する。
【0009】
さて、図1、図2に示す誘電体同軸フィルタでは、誘電体ブロック11に共振器穴13が形成され、その内面壁には超伝導膜15が形成される。そして、共振器穴13には金属棒43が差し込まれる。このとき、必ず金属棒43の表面と共振器穴内壁の超伝導膜の間にわずかな隙間が生じる。すなわち、図6に示すように金属棒43の外径をd、共振器穴13(超伝導膜)の内径をDとするとD>dとなる。
極低温(たとえばT=70K)においては超伝導膜のほうが表面抵抗が小さいため、超伝導膜(内径D)がフィルタの導体として作用し、等化的に間隙g=0となる。冷凍機の故障などにより温度が上昇すると、超伝導膜の表面抵抗が上昇し、金属棒43(外径d)がフィルタの導体として作用するようになり、間隙gは(D-d)/2となる。
【0010】
図1、図2に示す誘電体同軸フィルタにおいて、金属棒43が導体として機能するものとしてシミュレーションを行い、金属棒43の外径dによりフィルタの中心周波数がどれほどずれるかを測定する。つまり、誘電体同軸フィルタの導体を外径dとし、かつ、誘電体ブロック11と金属棒43の間にεr=1の隙間が入ったとし、dの変化によりフィルタの中心周波数がどれほどずれるかを測定する。図7はD=2.0mmに固定し、d/Dを可変した場合の中心周波数f0、およびd/D=1における中心周波数を基準にした時の中心周波数の変化率Δf0/f0を示す。図8は図7の測定値をグラフ化したものである。これらの図より、d/Dが小さいほど、つまり、隙間大きいほど中心周波数が高くなることがわかる。これは、隙間(εr=1)が入ることにより、等価的なεrが小さくなるためである。
また、超伝導フィルタとして作用している場合、内径Dの内側に電磁界がほとんど存在しないため、該フィルタには隙間なし、つまりd/D=1であると考えることができる。すなわち、超伝導フィルタとして作用しているときの中心周波数はd/D=1のときの中心周波数であると考えることができる。
【0011】
以上から、誘電体ブロック11の温度が上昇すると比誘電率εrが大きくなるため中心周波数が小さくなろうとするが、金属棒43と共振器内壁間の間隔により中心周波数が増大する傾向を示し、トータル的に中心周波数の大幅な変動を抑え、これにより、温度が上昇してもある程度のフィルタ特性を補償することができる。すなわち、温度上昇による中心周波数のずれを補うように金属棒43と超伝導膜の隙間を決めてやれば、常温においてdがフィルタの導体として機能し、極低温ではDがフィルタの導体として機能するので、中心周波数のずれをキャンセルすることができる。
したがって、冷凍機が故障して超電導膜を用いた誘電体同軸フィルタが常温になっても金属棒が導体として作用するため、本来のフィルタとしての機能を維持するため致命的な特性劣化を免れることが出来る。
【0012】
(c) 実施例
MgOの誘電体ブロック11(図1参照)に直径D=10mmの貫通穴(共振器穴13)を3個形成し、超伝導膜YBCO 15を共振器穴13の内壁および誘電体ブロック11の側面、底面に塗布する。図4よりMgOは極低温(T=70K)から常温(T=300K)になると、中心周波数が0.76%(=(5.049-5.011)×100/5.011)、小さくなろうとする。したがって、図8より中心周波数が0.76%大きくなるようにd/D=0.9976とすれば中心周波数のずれを打ち消すことが出来る。このとき金属棒43の外径はd=9.976mmとなり、金属棒と超伝導膜との隙間は幅12μmとなる。
【0013】
この寸法で図1に示したように銅金属棒43を共振器穴13に差し込み、MgOの誘電体ブロック 11の周りから銅の筐体(筐体上蓋部21、筐体胴部31、筐体底部41)で囲んで誘電体同軸フィルタを構成する。この誘電体同軸フィルタを冷凍機のコールドヘッドに装着し、T=70Kという極低温で動作させれば超伝導膜YBCOが作用し、超伝導フィルタとして機能し、万が一冷凍機が故障すれば金属棒43及び筐体がフィルタの導体として機能する。このとき、常伝導体の表面抵抗は超伝導体よりも大きいため、フィルタの挿入損失が増加するが、本来のフィルタ機能を維持するため致命的な特性劣化を免れることが出来る。
【0014】
(d) 変形例
以上では、金属棒43は円柱状あるいは円筒状の金属体として説明したが、円柱状あるいは円筒状のMgO表面に銅メッキ、銀ペースト等金属膜を形成したもので置き換えることができる。
又、誘電体としてMgO(酸化マグネッシウム)を使用したが、Al2O3(アルミナ)、LaAlO3(ランタンアルミナ)、CeO(酸化セリウム)、TiO2(酸化チタン)のいずれかとしてもよい。
又、金属棒の材料としては、銅、銀、金、ニッケル、ニッケル合金、アルミを用いることができる。
又、超伝導体としてYBCO(すなわちY-Ba-Cu-O)を使用したが、、NBCO(すなわちNd-Ba-Cu-O)、BSCCO(すなわちBi-Sr-Ca-Cu-O)、BPSCCO(すなわちBi-Pb-Sr-Ca-Cu-O)、HBCCO(すなわちHg-Ba-Ca-Cu-O)、TBCCO(すなわちT1-Ba-Ca-Cu-O)のいずれかとしてもよい。
【0015】
(B)第2実施例
第1実施例では、温度が低下すると比誘電率が低下する誘電体ブロックを用いたが、温度が低下すると比誘電率が大きくなる誘電体を用いることもできる。かかる誘電体としてSrTiO3がある。第2実施例は温度が低下すると比誘電率が大きくなる誘電体を用いた誘電体同軸フィルタであり、図1、図2と略同一の構成を備えている。異なる点は、
(1) 誘電体ブロック11として温度が小さくなると比誘電率が大きくなる誘電体ブロックを使用する点、
(2) 誘電体ブロックに形成した共振器穴13の内壁に、図9に示すように金属膜15′を形成し、誘電体ブロックの側面および底面に超伝導膜15を形成する点、
(3) 各共振器穴13に、共振器穴内壁に合わせた形状を有する超伝導塊43′を挿入する点、
である。
【0016】
温度が低下すると比誘電率が大きくなる誘電体を用いると、中心周波数の温度依存特性は図4の場合と逆になり、温度が上昇すると中心周波数が大きくなる。このことは、冷凍器等が故障して温度が上昇したら、中心周波数が減少するような手段を講じればよいことを意味する。
図9のように金属膜15′を共振器穴13の内壁に形成し、超伝導塊43′を共振器穴13に挿入する第2実施例では、常温であればd=D(d/D=1)、極低温であればd<Dであると考えることができる。したがって、誘電体ブロック11の温度が上昇するとd/Dが減少し図8より中心周波数が減少する。
【0017】
以上より、第2実施例の誘電体同軸フィルタでは、温度が上昇すると比誘電率εrが小さくなるため中心周波数が大きくなろうとするが、間隙が0になり中心周波数が減少する傾向を示し、トータル的に中心周波数の大幅な変動を抑え、これにより、温度が上昇してもフィルタ特性を補償することができる。すなわち、温度上昇による中心周波数のずれを補うように超伝導塊43′と金属膜15′の隙間を決めてやれば、極低温ではdがフィルタの導体として機能し、常温ではDがフィルタの導体として機能するので、中心周波数のずれをキャンセルすることができる。したがって、冷凍機が故障して超電導膜を用いた誘電体同軸フィルタが常温になっても金属膜が導体として作用するため、本来のフィルタとしての機能を維持するため致命的な特性劣化を免れることが出来る。
【0018】
以上、まとめると、温度が低下すると比誘電率が大きくなる誘電体ブロックに、貫通穴(共振器穴)を開け、銀ペーストを共振器穴の内壁に塗布し、誘電体ブロックの側面および底面には超伝導膜YBCOを塗布する。又、温度変動による中心周波数のずれを補償する隙間が出来るように円柱状の超伝導塊43′を挿入し、誘電体ブロックの周りから銅の筐体で囲む。この様にしても、第1実施例と同様、万が一冷凍機が故障した場合でも常伝導体の作用により、致命的な特性劣化を免れることが出来る。
ここで、超伝導塊は、円柱あるいは円筒状の金属まはた誘電体の表面にYBCO膜を塗布したものに置き換えても良い。
【0019】
(C)変形例
(a) 第1変形例
以上の実施例では入出力給電線22を金属棒とし、誘電ブロック11の入出力給電線用穴17に挿入する構成としたが、図10に示すように、入出力給電線22を円盤型のアンテナ形状とし、初段、最終段の共振器穴13とコンデンサ結合させる構成としてもよい。このようにコンデンサ結合とすれば、同軸ケーブルからの熱流入を抑制することが出来る。
【0020】
(b) 第2変形例
また、誘電体ブロック11の共振器穴13を非貫通型としてもよい。すなわち、図11に示すように、共振器穴13を誘電体ブロック11の下面より非貫通で開け、ブロック11の上面を含めて全面および共振器穴13の内壁に超電導膜を塗布する(第1実施例の場合)。あるいは、共振器穴13を誘電体ブロック11の下面より非貫通で開け、ブロック11の上面を含めて全面に超電導膜を塗布し、共振器穴13の内壁に銀ペーストを塗布する(第2実施例の場合)。以上のようにすれば、下面は共振器の内壁導体とショートして短絡面(short面)になり、又、共振器は非貫通であるため共振器の上面部は外部導体と接していない開放面(open面)なる。この結果、λ/4波長共振器が形成される。
図1の第1実施例の構成であると、導体をブロックに塗布したあと、上面を誘電体剥き出しにするために導体を削り取るか、あらかじめ上面をコーティングした後に導体を塗布する必要がある。これに対して、図11の構成では、導体をブロック全面に塗布するだけで良く、削り取りやコーティングが不要にできる。すなわち、ブロック上面に超伝導膜を塗ってもλ/4波長共振器として働かせることが出来るため、製造過程の簡略化によりコストを削減できる。
【0021】
(c) 第3変形例
図12、図13に示すように、各共振器13間に結合係数調整用穴71または仕切り板81を設けても良い。この結合係数調整用穴または仕切り板によって、フィルタ特性を調整することができる。なお、仕切り板は図示と同型の空間であっても良く、あるいは、内壁に金属を塗布しても良く、あるいは、金属体であってもよい。
結合係数kはフィルタ内の共振器同士の結合の強さを表す指標で、目標とするフィルタの段数、通過域のリップル値、通過帯域幅、中心周波数などによって一意的に値が決まる。つまり、目標のフィルタ特性が得られるような結合係数をあらかじめ計算しておき、この結合係数が得られるように共振器を配置すれば目標のフィルタが得られる。
【0022】
図14(a)に示すようなモデルで電磁界シュミレータHFSSを用いてシュミレーションすると、偶(even)モード、奇(odd)モードが発生し、それぞれにおいて図14(b)に示す共振周波数fe,foで共振する。このとき、結合係数は次式
k=(fo2-fe2)/(fo2+fe2)
により求められる。図14(c)は、結合係数調整用穴71の深さhを変えたとき、▲1▼穴71に金属を塗らない(no metal)、▲2▼穴71に金属を塗る(metal)、▲3▼穴71を上面(open)から開ける、▲4▼穴71を下面(short)から開けるの場合について結合係数kがどのように変化するか表している。k1はno metalで上面から穴71を開けた場合の結合係数、k2はno metalで下面から穴71を開けた場合の結合係数、k3はmetalで上面から穴71を開けた場合の結合係数、k4はmetalで下面から穴71を開けた場合の結合係数である。図14(c)より明らかなように、結合係数調整用穴71の穴深さhを調整することにより結合係数を調整することができる。すなわち、あらかじめ、計算しておいた結合係数に一致するように、穴の深さhを決めれば所望のフィルタを得ることができる。
以上、本発明を実施例により説明したが、本発明は請求の範囲に記載した本発明の主旨に従い種々の変形が可能であり、本発明はこれらを排除するものではない。
【0023】
【発明の効果】
以上本発明によれば、(1) 温度が小さくなると比誘電率が小さくなる誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、(2) 超伝導膜を誘電体ブロックの側面、底面、共振器穴の内壁にそれぞれ形成し、(3) 各共振器穴に、少なくとも表面が金属で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、(4) 誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆って誘電体同軸フィルタを形成したから、冷凍器の故障等により温度が上昇してフィルタの中心周波数が低下しようとしても、金属構造体と共振器内壁間のギャップ間隔により中心周波数が増大する傾向を示し、トータル的に中心周波数の変動を抑え、これにより、温度が上昇しても致命的な特性劣化を免れることができ、通信システムを安定させて運用することができる。
【0024】
又、本発明によれば、(1) 温度が小さくなると比誘電率が大きくなる誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、(2) 金属膜を前記共振器穴の内壁に形成すると共に超伝導膜を誘電体ブロックの側面および底面に形成し、(3) 各共振器穴に、少なくとも表面が超伝導体で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、(4) 誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆って誘電体同軸フィルタを形成したから、冷凍器の故障等により温度が上昇してフィルタの中心周 波数が増大しようとしても、金属構造体と共振器内壁間のギャップ間隔が等価的に0となって中心周波数が減少する傾向を示し、トータル的に中心周波数の変動を抑え、これにより、温度が上昇しても致命的な特性劣化を免れることができ、通信システムを安定させて運用することができる。
【0025】
又、本発明によれば、入出力給電線をアンテナ形状とし、入出力給電線と初段および最終段の共振器間をコンデンサ結合させるようにしたから、同軸ケーブルからの熱流入を抑制することが出来る。
又、本発明によれば、誘電体ブロックの共振器部を非貫通型とし、誘電体ブロックの上面にも超伝導膜を形成するようにしたから、すなわち、誘電体ブロックの全面に超伝導膜を形成するようにしたから、製造過程の簡略化が可能となり、コストを削減できる。
又、本発明によれば、誘電体ブロックの各共振器間に結合係数調整用の穴または仕切り板を設けてフィルタ特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】誘電体同軸フィルタの分解斜視図である。
【図2】誘電体同軸フィルタの組立斜視透視図である。
【図3】共振器の通過特性測定図である。
【図4】 MgOのfO温度依存性である。
【図5】 MgOのεr温度依存性である。
【図6】金属棒の外径dと共振穴の内径Dの関係図である。
【図7】 D=2.0に固定した場合のd/Dに対するf0、△f0/f0を示す図表である。
【図8】隙間による中心周波数のずれである。
【図9】第2実施例の超電導塊の外径dと共振器穴内壁の金属膜の外径Dの関係図である。
【図10】入出力給電線の形状説明図である。
【図11】共振器穴を非貫通とした誘電体ブロックの説明図である。
【図12】結合係数調整用穴を設けた誘電体ブロックの説明図である。
【図13】結合係数調整用の仕切り板を設けた誘電体ブロックの説明図である。
【図14】結合係数説明図である。
【図15】超電導フィルタの一例である。
【図16】冷却構成説明図である。
【符号の説明】
11・・誘電体ブロック
13・・共振器穴
15・・超伝導膜
21・・筐体上蓋部
22・・出力給電線
31・・直方体状の筐体胴部
41・・筐体底部
43・・金属棒
Claims (5)
- 温度が低くなると比誘電率が小さくなる誘電体ブロックに共振器穴を形成して構成される誘電体同軸フィルタにおいて、
前記誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、超伝導膜を誘電体ブロックの側面、底面、共振器穴の内壁にそれぞれ形成し、
各共振器穴に、少なくとも表面が金属で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆ってなる、
ことを特徴とする誘電体同軸フィルタ。 - 温度が低くなると比誘電率が大きくなる誘電体ブロックに共振器穴を形成して構成される誘電体同軸フィルタにおいて、
前記誘電体ブロックに複数の共振器穴および入出力給電線用穴を設け、金属膜を前記共振器穴の内壁に形成すると共に超伝導膜を誘電体ブロックの側面および底面に形成し、
各共振器穴に、少なくとも表面が超伝導体で、かつ、穴内壁に合わせた形状を有する構造体を挿入し、誘電体ブロックの周囲を金属製の壁で覆ってなる、
ことを特徴とする誘電体同軸フィルタ。 - 前記入出力給電線をアンテナ形状とし、入出力給電線と初段および最終段の共振器間をコンデンサ結合させた、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体同軸フィルタ。 - 誘電体ブロックの各共振器間に結合係数調整用の穴または仕切り板を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体同軸フィルタ。 - 誘電体ブロックの共振器部を非貫通型とし、誘電体ブロックの上面に超伝導膜を形成した、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘電体同軸フィルタ。
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