JP4058972B2 - 表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、及び電子機器 - Google Patents

表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、及び電子機器 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報通信分野に用いられる表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路、及び電子機器に関し、特に圧電体層にニオブ酸カリウム膜を用いた表面弾性波素子の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話などの移動体通信を中心とした通信分野の著しい発展に伴い、表面弾性波素子の需要が急速に拡大している。また、近年の情報化社会の発達に伴い移動体通信のみならず、BS(Broadcast Satellite)放送及びCS(Commercial Satellite)放送を受信するチューナーの需要も高まり、さらにはコンピュータネットワークの発達によりネットワークハブ等の電子機器も高速化されている。
【0003】
従来、この種の電子機器に用いられてきた表面弾性波素子は、大きく分けて圧電材料の単結晶を用いたものと、基板上に圧電材料の薄膜を形成したものとの2種類がある。圧電材料の単結晶を用いたものとしては、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等が代表的なものとして挙げられる。一方、圧電材料の薄膜を用いた表面弾性波素子としては、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)pp.2337−2340に記載されているようなサファイア基板上に酸化亜鉛(以下ZnO)薄膜を形成したもの、あるいはJpn.J.Appl.Phys.Vol.32(1993)pp.L745−L747に記載されているようなサファイア基板上にLiNbO3薄膜を形成したものなどが挙げられる。
また、表面弾性波素子の性能としては、通信分野の目覚ましい発展に伴い、より大きい電気機械結合係数(以下k2)を有するもの、より温度特性が良好なもの、より高周波に適用できるものへの要求が高まっている。高k2の材料としては近年ニオブ酸カリウム(KNbO3)が注目されている。特開平10−65488号公報に記載されているように、KNbO3のk2は53%もあり、従来最も大きいとされていたLiNbO3より1桁大きい。k2が大きくなることにより、櫛歯電極の対数を減らすことができるため、素子を小型化することができる。また、電圧制御型発振器(以下VCSO:Voltage Controlled SAW Oscillator)に用いる場合、周波数の可変幅を大きくできる。またフィルタに用いる場合は、比帯域幅を大きくできる。また、高周波化に関しては、特開平6−164294に記載されているように、音速の速いダイヤモンド基板を用いた表面弾性波素子が提案されている。これによれば、数GHzまでの高周波化が可能とされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のKNbO3を用いた表面弾性波素子は、以下のような問題点がある。
まず、KNbO3は大型の単結晶が得にくいという問題がある。すなわち、量産できないため工業的に向かないという問題がある。これに対しては大型の基板上にKNbO3薄膜を形成すればよいと考えられるが、KNbO3膜の特性は、その結晶方位に依存するため、そのコントロールが極めて重要なものとなる。また、このKNbO3膜の素子特性を最大限に引き出すためには、エピタキシャル成長させる必要があるが、非常に困難である。例えば、(100)チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)基板上にKNbO3膜を形成すると、(001)配向、(110)配向、(−110)配向の3種類の配向方向への成長が観測され、かつ各配向においてもそれぞれの方位が面内で90°回転しているものが1/2の確率で存在すると考えられる。すなわち合計6種類の結晶方位が考えられる。従って、材料としてはk2が53%の能力がありながら、実際の性能はその数分の一の10%前後となってしまう。
また、ダイヤモンド基板を用いた表面弾性波素子としては、圧電体層に酸化亜鉛(以下ZnO)を用いたもののみが実用化されている。ダイヤモンド基板のダイヤモンド層は多結晶であり、ZnOはこのダイヤモンド層上にc軸配向する。この時のk2は約1%程度である。一方、KNbO3の特性は、上記のように結晶方位及び結晶の品質に敏感であるため、結晶性のコントロールが重要であるが、多結晶のダイヤモンド層上に、そのような結晶方位のそろったKNbO3膜を形成することは不可能である。従って、現在のところ、k2が高くかつ音速の速い表面弾性波素子は無い。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、ダイヤモンド基板上に斜方晶(001)KNbO3をエピタキシャル成長させ、高周波化に対応できk2が高く温度特性も良い薄膜を用いた表面弾性波素子を提供することを目的の一つとしている。
また、本発明は、上記k2が高く、温度特性に優れた表面弾性波素子を備えた周波数フィルタ、発振器、電子回路、並びにこれらを適用した電子機器を提供することを目的の一つとしている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る表面弾性波素子は、シリコン基板上にダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板と、該ダイヤモンド基板上に、金属を含む酸化物を少なくとも一層以上エピタキシャル成長させて形成されたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたニオブ酸カリウムからなる圧電体層と、該圧電体層上に形成された酸化シリコン層と、該酸化シリコン層上に形成された電極層と、を備え、前記圧電体層が、(001)配向の斜方晶ニオブ酸カリウムからなり、前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(001)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸バリウム層又はチタン酸バリウム層とからなることを特徴とする。
また、シリコン基板上にダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板と、該ダイヤモンド基板上に、金属を含む酸化物を少なくとも一層以上エピタキシャル成長させて形成されたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたニオブ酸カリウムからなる圧電体層と、該圧電体層上に形成された酸化シリコン層と、該酸化シリコン層上に形成された電極層と、を備え、前記圧電体層が、(001)配向の斜方晶ニオブ酸カリウムからなり、前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(010)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸ストロンチウム層とからなることを特徴とする。
上記構成によれば、より高い周波数での素子駆動が可能なダイヤモンド基板上に、高k2のニオブ酸カリウムからなる圧電体層を形成することができ、また温度特性にも優れた表面弾性波素子を得ることができる。また、バッファ層上に形成されるニオブ酸カリウム膜の結晶配向が安定するため、安定した製造が可能である。
【0007】
次に、本発明に係る表面弾性波素子においては、前記ニオブ酸カリウム膜が、(001)配向の斜方晶ニオブ酸カリウムからなることが好ましい。
ここで、斜方晶ニオブ酸カリウムの(001)配向面とは、斜方晶ニオブ酸カリウムの格子定数のうち、最も短いものをc軸とした場合の(001)面を指すものである。
上記構成によれば、k2が高いというニオブ酸カリウム膜の特性を大きく引き出すことができる。従って、例えば電極層に平面視櫛歯状の電極を形成する場合に、従来よりも電極の対数を減らすことができ、これにより表面弾性素子を小型化することができる。
【0008】
次に、本発明に係る表面弾性波素子においては、前記バッファ層が、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、マグネシウムシリケート、カルシウムシリケート、バリウムシリケート、酸化チタンから選ばれる1又は2以上の材料からなる層を含む構成とすることができる。
また、前記バッファ層が、酸化マグネシウム、マグネシウムシリケート、カルシウムシリケート、バリウムシリケートから選ばれる材料からなる第1バッファ層と、該第1バッファ層上に形成され、ジルコン酸ストロンチウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタンから選ばれる材料からなる第2バッファ層とを備えた積層構造とされた構成とすることもできる。
あるいは、前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(001)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸バリウム層又はチタン酸バリウム層とからなる構成とすることもできる。
あるいはまた、前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(010)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸ストロンチウム層とからなる構成としてもよい。ただし、ジルコン酸ストロンチウム(010)面とは、斜方晶ジルコン酸ストロンチウムの格子定数の一番長い方向をb軸とした場合を指す。
さらに、本発明に係る表面弾性波素子においては、前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層とされた構成とすることもできる。
【0009】
上記いずれの構成のバッファ層を用いた場合にも、音速が速いダイヤモンド基板上でニオブ酸カリウム膜の配向面を(001)面にコントロールして形成することができる。これにより、k2が高く、高周波化が容易な表面弾性波素子を構成することができる。
【0010】
次に、本発明に係る周波数フィルタは、先のいずれかに記載の表面弾性波素子の電極層に、第1電極と、該第1電極に印加される電気信号により前記ニオブ酸カリウム層に生じる表面弾性波の特定周波数又は特定帯域の周波数に共振して電気信号を出力する第2電極とが形成されたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、高周波領域で周波数の比帯域幅を大きくすることができるため、中心周波数が多少ずれても大きなS/N比を維持することができる周波数フィルタを実現することができる。
【0012】
次に、本発明に係る発振器は、先のいずれかに記載の表面弾性波素子の電極層に、表面弾性波を発生させる電気信号を前記ニオブ酸カリウム層に印加するための信号印加電極と、前記信号印加電極からの電気信号により発生した表面弾性波の特定周波数成分、又は特定帯域の周波数成分を共振させる共振電極とが形成されたことを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、高周波化及び周波数可変幅を大きくすることが可能な発振器を実現することができる。また、k2が高いことにより小型化が可能な本発明の表面弾性波素子を備えているので、より小型化することが可能である。
【0014】
次に、本発明に係る電子回路は、先のいずれかに記載の表面弾性波素子の電極層に、表面弾性波を発生させる電気信号を前記ニオブ酸カリウム層に印加するための信号印加電極が形成され、該信号印加電極に対して前記電気信号を印加する電気信号供給素子とを備え、前記電気信号の周波数成分から特定の周波数成分を選択し、又は特定の周波数成分に変換し、又は前記電気信号に対して所定の変調を与え、所定の復調を行い、若しくは所定の検波を行うことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、より品質が高く、高い周波数の電気信号を用いて電気的に種々の操作を行う電子回路を構成することができ、より動作速度の速い電子回路を実現することができる。
【0016】
次に、本発明に係る電子機器は、先に記載の周波数フィルタ、発振器、電子回路の少なくとも一つを備えたことを特徴とする。係る構成によれば、本発明に係る表面弾性波素子を備えることにより小型化することができ、かつGHz帯の高周波に対応した電子機器を得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(表面弾性波素子;第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における表面弾性波素子の断面構造を模式的に示す図である。シリコン(以下Si)基板1とダイヤモンド薄膜2とからなるダイヤモンド基板10と、ダイヤモンド基板10上に積層されたバッファ層3と、KNbO3膜からなる圧電体層4と、酸化シリコン(以下SiO2)層5と、平面視櫛歯状に形成された複数の電極6を含む電極層と、を備えて構成されている。また、前記バッファ層3は、金属を含む酸化物からなる第1バッファ層3A、第2バッファ層3Bとからなる2層構造である。
より詳細には、第1バッファ層3Aは(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム膜からなり、第2バッファ層3Bは(001)配向されたジルコン酸バリウム(以下BaZrO3)膜から構成されている。また、圧電体層4は、(001)配向された斜方晶ニオブ酸カリウム膜から構成されている。
【0018】
本実施形態の表面弾性波素子は、圧電体層4を構成するKNbO3膜が、(001)の単一方向に主に配向していることで、高k2が得られる。上記構成の表面弾性波素子においてKNbO3が(001)方向に主に配向するのは以下の理由によると考えられる。
従来、SrTiO3(100)基板上に形成されたKNbO3膜は、(001)、(110)、(−110)の3種類の成長を示すことが確認されている。これらの配向面におけるKNbO3の格子定数は、(001)面が4.036Å(=√((5.695Å/2)2+(5.721Å/2)2))と4.036Åであり、配向面における単位格子の原子配置はほぼ正方形である。また(110)面は格子定数が4.036Åと3.973Åの長方形、(−110)面は格子定数が4.036Åと3.973Åの長方形である。ここで、例えばSrTiO3の(100)配向面の格子は、格子定数が3.905Åの正方形であり、上記3種類のKNbO3の配向面と比較するといずれの配向面よりも格子定数が小さくなっている。これにより、(110)、(−110)の配向面が優先的に成長し、結果として所望のk2が得られない。
これに対して、本実施形態の表面弾性波素子で用いられている第2バッファ層3BのBaZrO3の(001)面の格子は、格子定数が4.192Åの正方形であり、上記KNbO3の3種類の配向面のいずれよりも大きい。これにより、BaZrO3との格子定数差が比較的小さく、また格子が正方形に近い(001)配向面のみの成長が促進され、格子定数差が大きい(110)、(−110)面の成長は阻害されると考えられる。ただし、本実施形態に係るKNbO3膜はその主配向面は(001)で単一であるものの、面内で90°回転した結晶粒を含むツイン構造となっているため、実質的に2種類の結晶方位を含む構造となっている。しかしながら、従来のKNbO3膜が実質的に6種類の結晶方位を有していたのと比較すると、結晶方位の制御は大幅に改善されている。
【0019】
上記構成の表面弾性波素子の製造方法の一例を以下に詳細に説明する。図1に示す表面弾性波素子を製造するには、まずSi基板1上にダイヤモンド薄膜2をCVD法により成膜して作製されたダイヤモンド基板10を作製する。このダイヤモンド薄膜2は、ダイヤモンド又はダイヤモンド状炭素を含む薄膜を指すものであり、膜中にダイヤモンド結合を有する炭素又は、炭素と水素からなる膜である。本発明において用いられるダイヤモンド薄膜2は、上記のCVD法に限らず、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法等の成膜法により形成することができる。
上記ダイヤモンド薄膜2の膜厚は、3〜20μmとされることが好ましい。3μmより薄い場合には、表面弾性波の伝搬速度を高める効果及びk2を高める効果を得にくくなり、20μmを越えるとダイヤモンド薄膜2に内在する応力により剥離しやすくなる。
【0020】
次に、上記にて得られたダイヤモンド基板10上に、MgOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりMgO膜からなる第1バッファ層3Aを形成する。このMgO膜の成膜工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度500℃の条件で成膜することにより、ダイヤモンド薄膜2上に(100)配向にエピタキシャル成長されたMgO膜を得ることができる。
【0021】
次いで、第1バッファ層(MgO膜)3A上に、BaZrO3ターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりBaZrO3膜からなる第2バッファ層3Bを形成する。このBaZrO3膜の形成工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度600℃の条件で、基板表面に酸素プラズマを照射しながら成膜を行うことにより、上記MgO膜3A上に(001)配向にエピタキシャル成長されたBaZrO3膜を得ることができる。
この第2バッファ層3Bの形成工程は、上記MgO膜の成膜工程と同一のチャンバーを用いて行うことが好ましい。すなわち、成膜後の第1バッファ層3Aの表面を大気に曝すことなく連続的に第2バッファ層3Bの成膜を行うのがよい。このような連続成膜を行うことで、第2バッファ層3Bの結晶性をより良好にできるとともに、基板の温度条件などの工程管理が容易になる。
【0022】
上記第1バッファ層3A、第2バッファ層3Bを構成するMgO膜及びBaZrO3膜は、バッファ層3上に形成される圧電体層4を構成するKNbO3膜の配向制御を主目的として成膜されるため、その膜厚は可能な限り薄くすることが好ましい。具体的には、特に限定されるものではないが、MgO膜、BaZrO3膜ともに20nm以下とすることが好ましい。また、過度に膜厚を薄くするとKNbO3膜の配向制御効果を得づらくなるので、実用的には膜厚の下限は3nm程度である。
【0023】
次に、上記バッファ層3B上に、KNbO3ターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりKNbO3膜からなる圧電体層4を形成する。このKNbO3膜の形成工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度600℃の条件で、基板表面に酸素プラズマを照射しながら成膜を行うことにより、BaZrO3膜3B上に(001)配向のKNbO3膜を形成することができる。
この圧電体層4の形成工程も、上記MgO膜及びBaZrO3膜の成膜工程と同一のチャンバーを用いて行うことが好ましく、このような連続成膜を行うことで、第2バッファ層3Bの表面の汚染を防止してKNbO3膜の結晶性をより良好なものとすることができる。
圧電体層4の膜厚は、表面弾性波素子の特性に応じて最適な膜厚を選択すればよい。
【0024】
次に、上記圧電体層4上に、SiOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりSiO2層5を形成する。このSiO2層5は、表面弾性波素子の温度特性を補償するだけでなく、櫛歯電極をパターニングする際に圧電体層4を保護するための保護層としても作用する。また、表面弾性波素子の経時変化に対する保護層としても働く。このSiO2層5も上述のダイヤモンド基板10上に形成される各層と同一のチャンバーを用いて成膜することが好ましく、このような連続成膜を行うことでKNbO3膜表面の汚染によるKNbO3膜及びSiO2膜の特性劣化を防止することができる。このSiO2層5の膜厚は、表面弾性波素子の設計に応じて最適な膜厚を選択すればよい。
【0025】
最後に、上記SiO2層5上にAlやCu等の金属薄膜を形成し、これをパターニングして櫛歯状の電極6を形成して図1に示す表面弾性波素子を得る。
上述したように、本実施形態に係る表面弾性波素子の製造方法においては、ダイヤモンド基板10上に積層される各層の成膜法としてレーザーアブレーション法を用いたことで、各層を同一の成膜チャンバー内で連続的に形成することができるので、成膜後の各層の表面の清浄度を保持して良好な結晶性の膜を形成することができ、製造がより容易であるとともに、製造歩留まりの向上も容易である。このレーザーアブレーション法に用いる成膜装置としては、例えば複数のターゲットを装着可能なターゲットホルダと、基板ホルダを備えたものを挙げることができる。係る成膜装置を用いる場合は、初めに基板ホルダにダイヤモンド基板を載置した後、順次成膜される層の組成のターゲットを基板ホルダの前面に移動配置し、成膜を行うことで、SiO2層あるいは電極層までの成膜を連続的に行うことができ、より効率的な表面弾性波素子の製造が可能である。
【0026】
また、上記第1の実施形態の表面弾性波素子において、BaZrO3膜に代えてBaTiO3膜を第2バッファ層3Bとして用いても、ほぼ同等のk2が得られることを本発明者は確認しており、その詳細は後述の(実施例)において述べる。
【0027】
尚、本実施形態において上記した各層の成膜条件は一例を示したものであり、本発明を限定するものではない。また、各層の成膜に用いる成膜法も、レーザーアブレーション法に限定されず、種々の成膜法を適用することができる。例えばスパッタ法や、CVD法、あるいはMBE(Molecular Beam Epitaxy)法やゾルゲル法等により成膜しても本発明に係る表面弾性波素子は作成可能である。
また、図1に示す断面構造を備えた表面弾性波素子においては、第1バッファ層3Aとして、MgO膜のほかMgSiO4膜、Ca2SiO4膜、Ba2SiO4膜なども適用することができ、第2バッファ層としては、上記に挙げたBaZrO3膜、BaTiO3膜のほか、TiO2膜であっても良い。
また本発明に係る表面弾性波素子には、金属を含む酸化物の単結晶基板(例えばSrTiO3基板、サファイア基板、YSZ基板等)も用いることができ、この種の基板は、高価で大型基板が作製し難いが、表面弾性波素子としては良好な特性を得ることができる。
【0028】
(表面弾性波素子:第2の実施形態)
次に、本発明に係る表面弾性波素子の第2の実施形態について以下に説明するが、本実施形態の表面弾性波素子の断面構造は、上記第1の実施形態と同様であるため、以下の説明は図1を参照して行う。すなわち、本実施形態の表面弾性波素子は、シリコン基板1上にダイヤモンド薄膜2を形成してなるダイヤモンド基板10上に、2層構造のバッファ層3と、圧電体層4と、酸化シリコン層5と、電極層6とを備えて構成されている。
より詳細には、上記バッファ層3を構成する第1バッファ層3Aが、(100)配向でダイヤモンド基板10上にエピタキシャル成長されたMgO膜から構成され、第2バッファ層3Bが、前記MgO膜3A上に、(010)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸ストロンチウム(以下SrZrO3)膜で構成されている。また、上記圧電体層4は、(001)配向されたKNbO3膜から構成されている。
【0029】
本実施形態の表面弾性波素子の特徴的な点は、第2バッファ層3Bとして(010)配向のSrZrO3膜を用いたことにある。このようなバッファ層を用いることで、本実施形態の表面弾性波素子のKNbO3膜は(001)配向され、高いk2を実現している。
本実施形態に係る圧電体層4を構成するKNbO3膜が、(001)、(110)、(−110)の三種類の配向の成長ではなく、(001)配向のみに成長するのは、上記第1の実施形態と同様の理由によると考えられる。すなわち、本実施形態において第2バッファ層3Bとして用いられているSrZrO3の結晶構造は、a=5.8106Å、b=8.1940Å、c=5.7939Åの斜方晶であり、SrZrO3(010)面の格子定数は4.103Å(√((5.8106Å/2)2+(5.7939Å/2)2))と、4.103Åであり、ほぼ正方形状に原子が配列した構造であり、格子整合性から一辺が4.036Åの正方形状の配列となるKNbO3(001)配向のみが成長し、格子定数が4.036Åと3.973Åの長方形状の配列である(110)及び(−110)配向の成長は抑制されるものと考えられる。ただし、本実施形態に係るKNbO3膜においても、面内で90°回転した方位に配向した結晶粒が混在するツイン構造となっており、KNbO3膜中に2種類の結晶方位が存在している。しかしながら、従来の6種類の結晶方位が存在するKNbO3膜よりも結晶方位が良好に制御されて成膜されていると言える。
【0030】
次に、本実施形態の表面弾性波素子の製造方法の一例を説明する。
本実施形態の表面弾性波素子を製造するには、まずSi基板1上にダイヤモンド薄膜2をCVD法により成膜して作製されたダイヤモンド基板10を作製する。このダイヤモンド薄膜2は、ダイヤモンド又はダイヤモンド状炭素を含む薄膜を指すものであり、膜中にダイヤモンド結合を有する炭素又は、炭素と水素からなる膜である。本発明において用いられるダイヤモンド薄膜2も、上記のCVD法に限らず種々の成膜法により形成することができる。
【0031】
次に、上記にて得られたダイヤモンド基板10上に、MgOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりMgO膜からなる第1バッファ層3Aを形成する。このMgO膜の成膜工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度500℃の条件で成膜することにより、ダイヤモンド薄膜2上に(100)配向にエピタキシャル成長されたMgO膜を得ることができる。
【0032】
次いで、第1バッファ層(MgO膜)3A上に、SrZrO3ターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりSrZrO3膜からなる第2バッファ層3Bを前記MgO膜と同一のチャンバー内で形成する。このSrZrO3膜の形成工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度600℃の条件で、基板表面に酸素プラズマを照射しながら成膜を行うことにより、上記MgO膜3A上に(010)配向にエピタキシャル成長されたSrZrO3膜を得ることができる。
【0033】
上記第1バッファ層3A、第2バッファ層3Bを構成するMgO膜及びSrZrO3膜は、バッファ層3上に形成される圧電体層4を構成するKNbO3膜の配向制御を主目的として成膜されるため、その膜厚は可能な限り薄くすることが好ましい。具体的には、特に限定されるものではないが、MgO膜、SrZrO3膜ともに20nm以下とすることが好ましい。また、過度に膜厚を薄くするとKNbO3膜の配向制御効果を得づらくなるので、実用的には膜厚の下限は3nm程度である。
【0034】
次に、上記第2バッファ層3B上に、KNbO3ターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりKNbO3膜からなる圧電体層4を前記バッファ層3と同一のチャンバー内で形成する。このKNbO3膜の形成工程において、例えば真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、基板温度600℃の条件で、基板表面に酸素プラズマを照射しながら成膜を行うことにより、SrZrO3膜3B上に(001)配向のKNbO3膜を形成することができる。
【0035】
次に、上記圧電体層4上に、SiOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりSiO2層5を前記バッファ層3及び圧電体層4と同一のチャンバー内で形成する。このSiO2層5は、表面弾性波素子の温度特性を補償するだけでなく、櫛歯電極をパターニングする際に圧電体層4を保護するための保護層としても作用する。また、表面弾性波素子の経時変化に対する保護層としても働く。
【0036】
最後に、上記SiO2層5上にAlやCu等の金属薄膜を形成し、これをパターニングして櫛歯状の電極6を形成して本実施形態の表面弾性波素子を得る。
尚、上記の製造方法は、本実施形態の表面弾性波素子の製造方法の一例を示すものであり、例えばダイヤモンド基板10への各層の成膜にレーザーアブレーション以外の成膜法も適用することができる。また各層の成膜は、必ずしも同一のチャンバー内で行わなくともよいが、同一のチャンバー内で成膜を行った方が、各層の結晶成長が良好になり、また製造工程の煩雑さが低減されるのは上記第1の実施形態で述べた通りである。
【0037】
(表面弾性波素子:第3の実施形態)
次に、図2を参照して本発明の第3の実施形態について説明する。図2は、本発明の第3の実施形態における表面弾性波素子の断面構造を示す図である。この図に示す表面弾性波素子は、Si基板31と、その表面に形成されたダイヤモンド薄膜31とからなるダイヤモンド基板30と、このダイヤモンド基板30上に順に積層されたバッファ層33と、圧電体層34と、SiO2層35と、平面視櫛歯状に形成された電極36とを備えて構成されている。より具体的には、バッファ層は(100)配向のMgO膜からなり、圧電体層34は、(001)配向のKNbO3膜から構成されている。
【0038】
本実施形態の表面弾性波素子の特徴的な点は、バッファ層33として、ダイヤモンド基板30上に(100)配向にエピタキシャル成長されたMgO膜を用いていることにある。すなわち、このMgO膜からなるバッファ層33上に形成されたKNbO3膜は、上記第1,第2実施形態に係る圧電体層と同様にc軸に配向したKNbO3膜となり、その結果、本実施形態の表面弾性波素子においても高いk2を得ることができる。
本実施形態に係る圧電体層34を構成するKNbO3膜が、(001)、(110)、(−110)の三種類の配向の成長ではなく、(001)配向のみに成長するのは、上記第1、第2の実施形態と同様の理由によると考えられる。すなわち、本実施形態においてバッファ層33として用いられているMgO(100)面は、格子定数が4.213Åのほぼ正方形状に原子が配列した構造であり、格子整合性から格子定数が4.036Åのほぼ正方形状の配列となるKNbO3(001)配向のみが成長し、格子定数が4.036Åと3.973Åの長方形状の配列である(110)及び(−110)配向の成長は抑制されるものと考えられる。ただし、本実施形態に係るKNbO3膜においても、面内で90°回転した方位に配向した結晶粒が混在するツイン構造となっており、KNbO3膜中に2種類の結晶方位が存在している。しかしながら、従来の6種類の結晶方位が存在するKNbO3膜よりも結晶方位が良好に制御されて成膜されていると言える。
【0039】
以下、本実施形態の表面弾性波素子の作製プロセスを具体的に説明する。
まず、CVD法を用いてSi基板31上にダイヤモンド薄膜32を形成する。本実施形態においても、ダイヤモンド薄膜32の成膜法としてCVD法以外の方法を用いても問題ない。次に、MgOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりダイヤモンド薄膜32上にMgO膜(バッファ層)33を形成する。このMgO膜の成膜条件として例えば真空度1×10-3Torr(=133×10-3Pa)以下、基板温度500℃の条件で成膜することで、(100)配向されたMgO膜を得ることができる。このMgO膜からなるバッファ層33は、その上に形成されるKNbO3膜の結晶配向を制御するための下地としての機能を得るのが主目的であるので、その膜厚は可能な限り薄くすることが好ましく、具体的には20nm以下の膜厚とすることが好ましい。ただし、過度に薄くするとKNbO3膜の配向を制御する効果が得られなくなるので、その下限値は3nm程度である。
【0040】
次に、KNbO3ターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりKNbO3膜(圧電体層)34を前記MgO膜と同一のチャンバー内で形成する。このKNbO3膜34の成膜工程においては、例えば基板温度600℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)以下の条件で、酸素プラズマをMgO膜が形成されたダイヤモンド基板上に照射しながら成膜すれば、(001)配向されたKNbO3膜を得ることができる。
【0041】
次に、上記圧電体層34上に、SiOターゲットを用いたレーザーアブレーション法によりSiO2層35を前記バッファ層33及び圧電体層34と同一のチャンバー内で形成する。このSiO2層35は、表面弾性波素子の温度特性を補償するだけでなく、櫛歯電極をパターニングする際に圧電体層34を保護するための保護層としても作用する。また、表面弾性波素子の経時変化に対する保護層としても働く。
【0042】
最後に、上記SiO2層35上にAlやCu等の金属薄膜を形成し、これをパターニングして櫛歯状の電極36を形成して本実施形態の表面弾性波素子を得る。
尚、上記の製造方法は、本実施形態の表面弾性波素子の製造方法の一例を示すものであり、例えばダイヤモンド基板30への各層の成膜にレーザーアブレーション以外の成膜法も適用することができる。また各層の成膜は、必ずしも同一のチャンバー内で行わなくともよいが、同一のチャンバー内で成膜を行った方が、各層の結晶成長が良好になり、また製造工程の煩雑さが低減されるのは上記第1の実施形態で述べた通りである。
【0043】
(周波数フィルタ)
図3は、本発明の一実施の形態による周波数フィルタの外観を模式的に示す斜視図である。図3に示す周波数フィルタは素子基板40を有する。この素子基板40は、例えば図1に示す上記第1の実施形態の表面弾性波素子を適用することができる。すなわち、素子基板40は、ダイヤモンド基板10上に、MgO膜からなるバッファ層3A及びBaZrO3膜からなるバッファ層3B、KNbO3膜からなる圧電体層4、SiO2層5が順次積層された構成とすることができる。尚、この素子基板としては、上記第2、第3の実施形態の表面弾性波素子を用いることもできる。
【0044】
この素子基板40の上面には、AlやCu及びこれらの合金等からなる平面視櫛歯状のIDT(Interdigital transducer)電極41、42が形成されている。また前記IDT電極41,42を挟み込むように吸音部43(IDT電極41の外側)及び吸音部44(IDT電極42の外側)が、素子基板40上に形成されている。これら吸音部43,44は、素子基板40の表面を伝搬する表面弾性波を吸収するものである。素子基板40上に形成されたIDT電極41には、高周波信号源45が接続されており、IDT電極42には、信号線46A,46Bの一端側が接続され、これら信号線46A,46Bの他端側には、それぞれ端子46a,46bが設けられている。尚、上記IDT電極41は、本発明に係る周波数フィルタの第1電極を成し、IDT電極42は第2電極を成すものである。
【0045】
上記構成において、高周波信号源45からの高周波信号が出力されると、この高周波信号はIDT電極41に印加され、これによって素子基板40上面に表面弾性波が発生する。IDT電極41から吸音部43側に伝搬した表面弾性波は、吸音部43により吸収され、IDT電極42側へ到達した表面弾性波からは、IDT電極42のピッチ等に応じて定まる特定の周波数又は特定の帯域の周波数の表面弾性波が電気信号に変換され、信号線46A,46Bを介して端子46a,46bに取り出される。この電気信号として取り出された成分以外の表面弾性波は、IDT電極42を通過して吸音部44に達し、この吸音部により吸収される。このようにして、本実施形態の周波数フィルタが備えるIDT電極41に供給した電気信号のうち、特定の周波数又は特定の帯域の周波数の表面弾性波を電気信号として取り出すことができる。そして、本実施形態においては、k2が大きいKNbO3を圧電体層に用いた素子基板40が使用されていることで、従来よりも小型で比帯域幅の大きな周波数フィルタを実現することができる。また、本実施形態の周波数フィルタは、素子基板40に、高周波特性に優れるダイヤモンド基板が用いられているので、GHz帯の高周波として用いることができる。
【0046】
(発振器)
図4は、上記本発明の実施形態の表面弾性波素子を電圧制御型の発振器(VCSO)に応用した一例を示す図であり、図4(a)は、本実施形態の発振器の側面透視図であり、図4(b)は上面透視図である。図4に示すVCSOは、パッケージ60内部に実装されている。ここで、図4において符号61は基板であり、この基板61上にIC62、バリキャップ、伸長コイル、及び表面弾性波素子63が実装されている。この表面弾性波素子63は、素子基板64と、この素子基板64上面に形成されて表面弾性波素子63の電極層を成す電極65a〜65cとから構成されている。前記素子基板64は、例えば図1に示したダイヤモンド基板10上に、MgO膜からなるバッファ層3A及びBaZrO3膜からなるバッファ層3B、KNbO3膜からなる圧電体層4、SiO2層5が順次積層された本発明の第1の実施形態の構成とすることができる。電極65a〜65cは、平面視櫛歯状に形成されており、電極65aが表面弾性波素子63の中央部に配置され、電極65b、65cが電極65aの両側に配置されている。
基板61上にはIC62と表面弾性波素子63とを電気的に接続するための2本の配線66,66がパターニングされており、IC62と配線66,66の一端側は金線などのワイヤ線67,67により電気的に接続され、配線66,66の他端側は金線などのワイヤ線68,68により表面弾性波素子63上の電極65aと電気的に接続されている。このようにしてIC62と表面弾性波素子63とが電気的に接続されている。
【0047】
上記構成の本実施形態の発振器は、表面弾性波素子63として、圧電体層にk2の大きいKNbO3を用いた上記本実施形態の表面弾性波素子を備えているので、表面弾性波素子を小型化することができ、結果としてVCSOも小型化することができる。また、表面弾性波素子63の基板にはダイヤモンド基板が用いられているので、GHz帯の高周波にも対応できる高周波発振器として用いることができる。本実施形態のVCSOは例えばPLL(phase lock loop)回路に用いることができる。
【0048】
(電子回路及び電子機器)
図5は、本発明の一実施の形態による電子回路の電気的構成を示すブロック図であり、図6は、本発明の一実施の形態による電子機器の一例である携帯電話機の外観を示す斜視構成図である。
図6に示す携帯電話機100は、アンテナ101、受話部102、送話部103、表示部104、及び操作ボタン部105等を備えて構成されている。図5に示した電子回路は、携帯電話機100内部に設けられる電子回路の基本構成の一例を示しており、送話器80、送信信号処理回路81、送信ミキサ82、送信フィルタ83、送信電力増幅器84、送受分波器85、アンテナ86a、86b、低雑音増幅器87,受信フィルタ88,受信ミキサ89、受信信号処理回路90、受話器91、周波数シンセサイザ92,制御回路93、及び入力/表示回路94を含んで構成される。尚、現在実用化されている携帯電話機は、周波数変換処理を複数回行うなどより複雑な回路構成となっている。
【0049】
上記の送信フィルタ83、受信フィルタ88は、例えば図3に示すような本発明に係る周波数フィルタを用いることができる。フィルタリングする周波数は、送信ミキサ82から出力される信号の打ち必要となる周波数、及び受信ミキサ89で必要となる周波数に応じて送信フィルタ83、及び受信フィルタ88で個別に設定されている。また、周波数シンセサイザ92内に設けられるPLL回路には、例えば図4に示す構成の本発明に係る発振器を設けることができる。そして、これら本発明に係る周波数フィルタや発振器を用いることで、電子回路及びこれを用いた電子機器を小型化することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態による表面弾性波素子、周波数フィルタ、発振器、電子回路及び電子機器について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で自由に変更することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。ただし、以下の実施例は本発明の技術範囲を限定するものではない。
(試料1)
試料1として上記第1の実施形態の構成の表面弾性波素子を作製した。
まず、シリコン基板上に、CVD法により15μmのダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板を作製した。次いで、このダイヤモンド基板をレーザーアブレーション成膜装置に導入し、基板ホルダに固定した。尚、本例では、成膜装置としてチャンバー内にMgOターゲット、BaZrO3ターゲット、KNbO3ターゲット、SiOターゲットが設けられており、これらのターゲットが固定されたターゲットホルダを回転させることで前記基板ホルダの前面側に移動させることができるようになっているものを用いた。すなわち、図1に示すバッファ層3、圧電体層4、SiO2層5を同一チャンバー内で連続的に成膜可能とされた成膜装置である。
次に、成膜装置内に固定された前記ダイヤモンド基板のダイヤモンド薄膜上に、MgOターゲットを用い、基板温度500℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)の成膜条件で、レーザーアブレーション法により10nmの膜厚に(100)配向にエピタキシャル成長されたMgO膜を形成した。次いで、ターゲットホルダを回転させて基板前面側にBaZrO3ターゲットを配置し、基板温度を600℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、成膜中に基板表面に酸素プラズマを照射する成膜条件で、膜厚10nmの(001)配向にエピタキシャル成長されたBaZrO3膜をMgO膜上に形成した。次いで、ターゲットホルダを回転させて基板前面側にKNbO3ターゲットを配置し、基板温度600℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、成膜中に基板表面に酸素プラズマを照射する成膜条件で、BaZrO3膜上に、膜厚2μmの(001)配向されたKNbO3膜を形成した。次いで、ターゲットホルダを回転させてSiOターゲットを基板前面側に配置して前記KNbO3膜上にSiO2層を形成した。
そして、以上の成膜が終了した基板を成膜装置から取り出し、スパッタ法によりAl薄膜をSiO2層上に形成した後、櫛歯状にパターニングして櫛歯電極を形成した。この櫛歯電極のピッチは1μmとした。
【0052】
(試料2)
次に、試料2として、図1に示す断面構造で、第2バッファ層としてBaTiO3膜を備えた表面弾性波素子を作製した。その作製工程は、BaZrO3ターゲットに代えてBaTiO3ターゲットを用い、基板温度600℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、成膜中に基板表面に酸素プラズマを照射する成膜条件で、MgO膜上に膜厚10nmの(001)配向にエピタキシャル成長されたBaTiO3膜を形成した以外は、上記試料1の表面弾性波素子の作製工程と同様とした。
【0053】
(試料3)
次に、試料3として、上記第2の実施形態の構成の表面弾性波素子を作製した。その作製工程は、BaZrO3ターゲットに代えてSrZrO3ターゲットを用い、基板温度600℃、真空度1×10-5Torr(133×10-5Pa)、成膜中に基板表面に酸素プラズマを照射する成膜条件で、MgO膜上に膜厚10nmの(010)配向にエピタキシャル成長されたSrZrO3膜を形成した以外は、上記試料1の表面弾性波素子の作製工程と同様とした。
【0054】
(試料4)
次に、試料4として、上記第3の実施形態の構成の表面弾性波素子を作製した。上記試料1〜3に用いたダイヤモンド基板と同等のダイヤモンド基板を使用し、このダイヤモンド基板のダイヤモンド薄膜上に、基板温度500℃、真空度1×10-3Torr(133×10-3Pa)の成膜条件で、10nmの(100)配向にエピタキシャル成長されたMgO膜を形成し、このMgO膜上に、上記試料1の作製工程と同様にして、2μmの(001)配向されたKNbO3膜からなる圧電体層、SiO2層、及び1μmピッチの櫛歯電極を形成した。
【0055】
(評価)
上記にて得られた試料1〜4の表面弾性波素子について、k2の測定、及びGHz帯の高周波発振試験として2.5GHzでの発振可否を測定した。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0004058972
【0057】
表1に示すように、本発明による表面弾性波素子は、いずれも20%以上の高いk2が得られ、かつ2.5GHzでの発振が可能であり、従来のKNbO3膜を用いた表面弾性波素子のk2に対して大幅な改善が可能であることが確認された。KNbO3のk2の最高値53%と比較すると、試料1〜4ともk2は最高値の約半分程度であったが、これは、KNbO3膜の結晶構造が、面内で90°回転した結晶方位を有する結晶粒とのツイン構造となっているためであると考えられ、KNbO3膜の結晶方位とk2とは相関関係にあると言える。また、試料1〜3のk2と比較して試料4のk2が若干低い値となったが、これは、MgO膜の単層構造のバッファ層を用いたために、KNbO3との格子整合性が試料1〜3よりもやや悪くなり、KNbO3膜の結晶性が若干低下したためであると考えられる。
【0058】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明の表面弾性波素子は、シリコン基板上にダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板と、該ダイヤモンド基板上に、金属を含む酸化物を少なくとも一層以上エピタキシャル成長させて形成されたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたニオブ酸カリウムからなる圧電体層と、該圧電体層上に形成された酸化シリコン層と、該酸化シリコン層上に形成された電極層とを備えたことで、高いk2を得ることができ、またこれにより素子の小型化が可能である。
【0059】
また本発明の表面弾性波素子を発振器に用いた場合には周波数の可変幅を大きくすることができ、周波数フィルタとして用いた場合には比帯域幅を大きくすることができる。さらに、各素子においてはGHz帯の高周波化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の第1の実施形態の表面弾性波素子の断面構造を示す図である。
【図2】 図2は、本発明の第3の実施形態の表面弾性波素子の断面構造を示す図である。
【図3】 図3は、本発明に係る周波数フィルタの一例における外観を示す斜視図である。
【図4】 図4は、本発明に係る発振器の一例を示す図であり、図4(a)は、発振器の側面透視図であり、図4(b)は、上面透視図である。
【図5】 図5は、本発明に係る電子回路の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】 図6は、本発明に係る電子機器の一例としての携帯電話機の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
10,30 ダイヤモンド基板
1,31 シリコン基板
2,32 ダイヤモンド薄膜
3,33 バッファ層
4,34 圧電体層
5,35 酸化シリコン層
6,36 電極層

Claims (6)

  1. シリコン基板上にダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板と、該ダイヤモンド基板上に、金属を含む酸化物を少なくとも一層以上エピタキシャル成長させて形成されたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたニオブ酸カリウムからなる圧電体層と、該圧電体層上に形成された酸化シリコン層と、該酸化シリコン層上に形成された電極層と、を備え
    前記圧電体層が、(001)配向の斜方晶ニオブ酸カリウムからなり、
    前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(001)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸バリウム層又はチタン酸バリウム層とからなることを特徴とする表面弾性波素子。
  2. シリコン基板上にダイヤモンド薄膜を形成したダイヤモンド基板と、該ダイヤモンド基板上に、金属を含む酸化物を少なくとも一層以上エピタキシャル成長させて形成されたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたニオブ酸カリウムからなる圧電体層と、該圧電体層上に形成された酸化シリコン層と、該酸化シリコン層上に形成された電極層と、を備え
    前記圧電体層が、(001)配向の斜方晶ニオブ酸カリウムからなり、
    前記バッファ層が、(100)配向にエピタキシャル成長された酸化マグネシウム層と、該酸化マグネシウム層上に(010)配向にエピタキシャル成長されたジルコン酸ストロンチウム層とからなることを特徴とする表面弾性波素子。
  3. 請求項1又は2に記載の表面弾性波素子の電極層に、第1電極と、該第1電極に印加される電気信号により前記圧電体層に生じる表面弾性波の特定周波数又は特定帯域の周波数に共振して電気信号を出力する第2電極とが形成されたことを特徴とする周波数フィルタ。
  4. 請求項1又は2に記載の表面弾性波素子の電極層に、表面弾性波を発生させる電気信号を前記ニオブ酸カリウム層に印加するための信号印加電極と、前記信号印加電極からの電気信号により発生した表面弾性波の特定周波数成分、又は特定帯域の周波数成分を共振させる共振電極とが形成されたことを特徴とする発振器。
  5. 請求項1又は2に記載の表面弾性波素子の電極層に、表面弾性波を発生させる電気信号を前記ニオブ酸カリウム層に印加するための信号印加電極が形成され、該信号印加電極に対して前記電気信号を印加する電気信号供給素子とを備え、
    前記電気信号の周波数成分から特定の周波数成分を選択し、又は特定の周波数成分に変換し、又は前記電気信号に対して所定の変調を与え、所定の復調を行い、若しくは所定の検波を行うことを特徴とする電子回路。
  6. 請求項3に記載の周波数フィルタ、請求項4に記載の発振器、請求項5に記載の電子回路の少なくとも一つを備えたことを特徴とする電子機器。
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