JP4058257B2 - 撮像素子におけるノイズ低減方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般に撮像(image capture)に関し、より詳細には、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジのディジタルイメージ(sparsely sampled extended dynamic range digital image)からノイズを除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電荷結合素子(CCD)及びCMOSイメージセンサなどの撮像素子は、ディジタルカメラ、スキャナ、ビデオカメラなどの製品に広く見られる。従来からの写真フィルム製品に比べると、これら撮像素子のダイナミックレンジには制限がある。一般的な電子撮像素子は約7ストップ(絞り:stop)のダイナミックレンジを持つ。これは、結果的な信号のクリッピングを避けるために、通常シーンの露光をかなりの精度で決定しなければならないことを意味する。これに対し、自然シーンは、9ストップ以上のダイナミックレンジを示すことが多いが、これは、主として光強度が大きく異なる多数の光源が被写体シーンを照射するためである。また、反射ハイライト(specular highlights)も自然シーンのダイナミックレンジに寄与している。
【0003】
感光フィルムのスキャンに使用する電子センサは、信号強度の高いダイナミックレンジにも対処しなければならない。Milchによる米国特許第5,221,848号(1993年6月22日発行)には、電子イメージセンサのダイナミックレンジを拡張すべく設計された方法及び装置が開示される。感光フィルムのスキャンを主たる目的とするこの特許には、線形アレイを備える電荷結合素子スキャナを用いたワンパスフィルムスキャナ(one pass film scanner)の方法が開示されている。アレイの1つが高い光強度に対応し、別のアレイが低い光強度に対応する。これら2つのアレイからの情報を合成してディジタル化することで、ダイナミックレンジが拡張されたディジタルイメージを生成する。上記特許に開示された方法及び装置は、スペクトル感度は同じだが光強度に対する固有応答が異なるフォトサイト(photosite)を有する電子イメージセンサに関し、きわめて高いダイナミックレンジでディジタルイメージを生成できる。
【0004】
電子撮像素子により生成された信号に含まれるノイズは、ノイズ低減アルゴリズムの適用により除去できる。ノイズ低減アルゴリズムの一例として、雑誌論文"Digital Image Smoothing and the Sigma Filter"(Computer Vison, Graphics,and Image Processing, vol.24,1983,pp.255-269)に記載のジョンセンリー(Jong-Sen Lee)によるシグマフィルタがある。リーによる論文には、中心画素を中心とする矩形ウィンドウからサンプリングされた非線形画素の平均化技術を使用するノイズ低減フィルタが開示されている。局所的に近接する画素を、その画素と中心画素との差に基づく数値平均から、包含あるいは除外する。シグマフィルタは、主たるノイズ源がガウスの加法ノイズである画像処理アプリケーションに対して設計されたものである。ノイズ低減制御パラメータを信号強度の関数にすることにより、信号依存ノイズ源を取り込むことができる。しかしながら、信号独立ノイズと信号依存ノイズのいずれの場合にも、予想されるノイズ標準偏差が最適な結果を得ることが分かっていなければならない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
リーによる上記のシグマノイズ低減方法は、拡張ダイナミックレンジの電子撮像素子により生成された信号には直接、最適に適用できない。これは、フォトサイトの種類が異なるとノイズ特性が異なるという事実のためである。したがって、拡張したダイナミックレンジでイメージを記録可能な電子イメージセンサにより生成されたイメージに対し、改良されたノイズ低減方法が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の要望は、光の露出に対して所定の応答を有し高速応答ディジタル画素値を生成する高速応答フォトサイトと、同じ光の露出に対しより遅い応答を有し、低速応答ディジタル画素値を生成する低速応答フォトサイトとを備える撮像素子により生成された、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージからノイズを除去する方法であって、高速及び低速応答ディジタル画素値を有する、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージを提供するステップと、ディジタルノイズフィルタ方法を使用し、関心画素と同一のノイズ特性を有する画素であって関心画素の局所的近接領域内の画素の画素値を用い、関心画素が低速応答ディジタル画素値を有するときは低速応答ディジタル画素値のみを用いてノイズ低減した低速応答ディジタル画素値を生成し、関心画素が高速応答ディジタル画素値を有するときは高速応答ディジタル画素値のみを用いてノイズ低減した高速応答ディジタル画素値を生成して、前記散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージからノイズを除去するステップと、前記ノイズ低減した低速応答ディジタル画素値と前記ノイズ低減した高速応答ディジタル画素値とを組み合わせてノイズ低減した散在的にサンプリングされたディジタルイメージを生成するステップと、を備えることを特徴とする方法を提供することにより達成される。
また、ディジタルノイズフィルタ方法は、関心画素と、その関心画素について局所的に近接する複数の局所近接画素とを特定するステップと、複数の局所的近接画素の各ディジタル画素値を、関心画素のディジタル画素値と比較し、各局所的近接画素の各ディジタル画素値と関心画素の画素値との絶対差を計算するステップと、ノイズ低減した画素値を計算するために、絶対差を計算するステップで計算された絶対差を用いるステップと、を含むことが好ましい。
また、計算された絶対差を用いるステップは、さらに、計算された絶対差を予め定められた閾値と比較し、ノイズ低減した画素値を計算するために、計算された絶対差が閾値以下のときには、局所的近接画素の各ディジタル画素値のみを用いることが好ましい。
また、閾値の決定は、複数のノイズ特性値を準備し、複数のノイズ特性値の中の1つを選択するために、各局所的近接画素の各ディジタル画素値を用い、選択されたノイズ特性値を閾値として用いることが好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
ディジタルイメージは、1つ以上のディジタルイメージチャネルで構成され、各ディジタルイメージチャネルは、画素の二次元アレイで構成される。各画素値は、その画素の幾何学的領域に対応した撮像素子(imaging capture device)が受光する光の量に関連付けられる。カラー撮像のアプリケーションでは、ディジタルイメージは、一般に、赤、緑、青のディジタルイメージチャネルから構成される。例えば、シアン、マゼンタ、イエローのディジタルイメージチャネルなど他の構成も実施されている。モノクロのアプリケーションでは、ディジタルイメージは1つのディジタルイメージチャネルで構成される。動画の撮像は、ディジタルイメージの時間的な連続であると考えられる。当業者であれば、本発明が、上述のいずれのディジタルイメージアプリケーションにも適用できると共に、これらに限定されないことが理解できよう。
【0008】
本発明では、ディジタルイメージチャネルを行及び列に並べられた2次元アレイの画素値として記載しているが、当業者であれば、本発明をモザイク(非直線)アレイに適用しても同様の効果を得られることが理解できよう。
【0009】
電子センサを用いる撮像素子はよく知られているので、ここでの記載は、特に発明の装置を形成する要素、または本発明の装置と直接的に協働する要素に関する。ここに示されない要素または記載されない要素については、当業界で知られるものから選択可能である。なお、ここで用いるイメージとは、2次元アレイ状の値である。あるイメージは、別のイメージの2次元の部分集合であってもよい。本発明は、プログラムされたディジタルコンピュータまたはカスタム集積ディジタル画像処理回路を使用して実施することができる。かかるコンピュータプログラムを以下の開示に基づき作成することは、プログラミング技術の十分なスキル範囲である。コンピュータは、パーソナルコンピュータなどの汎用ディジタルコンピュータでも、ディジタルイメージの処理用に特別に設計された特殊目的のディジタルコンピュータでもよい。本発明は、ディジタルカメラ内で全体としてまたは一部として実施できる。
【0010】
本発明の本質的な要素を、図1の機能ブロック図に示す。被写体またはシーンからの光はレンズ2に入射し、電荷結合素子(CCD)などの撮像素子10にて写真イメージを形成する。なお、CMOS素子など、他の素子を撮像素子10として使用してもよい。レンズ2と撮像素子10との間に設けられた光ローパスフィルタ6は、エイリアシングの発生を低減するため、結像した光に対してわずかなぶれ(blurring)を与える。A/D変換器14は撮像素子10からの結像光に対応する電圧信号を入力し、この電圧信号に対応するイメージ信号を生成する。A/D変換器14の出力は、散在的にサンプリングされた、拡張ダイナミックレンジのディジタルイメージ201(図2参照)である。散在的にサンプリングされたイメージとは、複数タイプのフォトサイトを備えた単一のイメージセンサを有する撮像素子で撮影したイメージであると定義される。本発明によれば、散在的サンプリングという用語は、さらに応答の速い及び遅いフォトサイトが散在するイメージセンサにより生成されたイメージをも意味する。ここでは、このようなイメージを、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージと呼ぶ。散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージは、カラーフィルタアレイ及び応答の速いフォトサイトと応答の遅いフォトサイトとを有するイメージセンサにより生成してもよい。
【0011】
ディジタルイメージプロセッサ200は、A/D変換器14から散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージを入力し、これにノイズフィルタリングを施すことにより、ノイズの低減された、散在的サンプリング拡大ダイナミックレンジディジタルイメージを生成する。このノイズの低減された散在的サンプリング拡大ダイナミックレンジディジタルイメージがディジタルイメージプロセッサ200で処理され、ノイズの低減したディジタルイメージ202が生成される。
【0012】
図1に示すA/D変換器14は、撮像素子10により生成された電圧信号を、イメージ信号、すなわち、撮像素子10のフォトサイトにより生成された電圧信号に対応するディジタル画素値の列に変換する。より詳細には、A/D変換器14は、入射光の強度に対してほぼ線形である撮像素子10からの電圧信号を、個別のディジタルイメージ信号、例えば、線形符号化値が0から1023の範囲である10ビット信号に変換する。また、A/D変換器14は、当業界で一般的に行われているように、線形符号値領域のイメージ信号を、8ビット対数信号などの非線形符号値領域のイメージ信号に変換する処理を行ってもよい。例えば、次式を用いて、10ビットの線形イメージ信号a(x,y)を、8ビットの対数イメージ信号b(x,y)に変換できる。ここで、(x,y)は撮像素子10に関する信号位置の行及び列指標(index)を特定する。
【0013】
【数1】
なお、(撮像素子の線形応答領域における)各露光ストップは、線形イメージ信号a(x,y)を倍増させ、この結果、対数的に符号化されたイメージ信号b(x,y)は51増加する。この場合、51の値は、露光のストップ(絞り)当たりの符号値(cvs)の数を表している。
【0014】
図1のディジタルイメージプロセッサ200を図2により詳細に示す。イメージ信号は、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージ201の形でノイズ低減モジュール210に入力される。ノイズ低減モジュール201は、イメージ信号にノイズフィルタリングを施してノイズを除去し、ノイズ低減イメージ信号を、ノイズが低減した散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージとして生成する。ノイズが低減された、散在的にサンプリングされた拡大ダイナミックレンジディジタルイメージは、ダイナミックレンジ拡張フィルタアレイ(DREFA)プロセッサ22に入力される。DREFAプロセッサ22は、信号のダイナミックレンジを拡張し、サンプル値を補間することによりノイズ低減されたイメージ信号を処理する。続いて、DREFAプロセッサ22は、この修正されたノイズ低減イメージ信号をCFA補間器26に送り、ここで、色値が補間され、各画素における色値を得る。CFA補間器26の出力が、ノイズ低減したディジタルイメージ202である。
【0015】
CFA補間器26の目的は、検出した写真イメージの各位置に対する色を完全に描写(full description)することである。好ましい実施形態においては、撮像素子10は、フォトサイトと呼ばれる感光要素のアレイにより構成される。バイヤー(Bayer)による米国特許第3,971,065号(1976年7月20日発行)に記載されるように、各フォトサイトは通常赤、緑、または青のフィルタで被覆されている。バイヤー特許のカラーフィルタアレイにおいては、フォトサイト上に緑のフィルタがチェッカーボードのパターンに配置され、赤と青のフィルタはこのチェッカーボードパターンの間隙を埋めるように1ラインずつ交互に配置されている。このようなカラーフィルタの場合、緑のフィルタサイトは、赤と青のいずれのフィルタサイトの2倍になる。本願に記載される方法は、原色の構成や原色の数、原色の組み合わせが異なるカラーフィルタアレイにも簡単に拡大できる。よって、好ましい実施形態では、各フォトサイトが赤、緑または青のいずれかの光に反応する。しかしながら、各フォトサイト位置において、赤、緑、青のそれぞれに対する露光に対応する画素値を得るのが望ましい。イメージ信号の画素値により、赤、緑、青の画素値を近接画素位置において有する散在的にサンプリングされたイメージが形成される。CFAディジタルイメージは、散在的にサンプリングされたディジタルイメージの一例である。
【0016】
本明細書においては、「赤」、「緑」及び「青」は、画像処理技術において周知のように、撮像素子10の原色スペクトル感度(primary spectral sensitivities)を表す。CFA補間器26は、A/D変換器14から出力されたイメージ信号から、各フォトサイトに対する原色に対応する画素値で構成される、補間されたイメージ信号を生成する。例えば、特定のフォトサイトが赤のフィルタで被覆されている場合、赤のフィルタはこの特定フォトサイトから緑及び青の光を本質的にブロックするので、A/D変換器14はこのフォトサイトに対して赤の画素値を出力する。対応フォトサイトが緑及び青の光に応答しないとしても、CFA補間器26はこの対応フォトサイトに対して緑の画素値及び青の画素値を計算する。同様に、CFA補間器26は、青のフォトサイトに対応する緑の画素値及び赤の画素値を計算し、緑のフォトサイトに対応する赤の画素値及び青の画素値を計算する。
【0017】
一般に、CFA補間器26は、対応するフォトサイトの画素値及び関連する周辺フォトサイトの画素値を考慮して動作する。一般的に知られた任意の補間器が使用できるが、好ましいCFA補間器がアダムスジュニア他による米国特許第5,652,621号(1997年7月29日発行)に開示されている。アダムス他の特許には、行及び列に整列し、各フォトサイト位置に対して1つの色値のみ、少なくとも3つの別々の色値を生成するカラーフォトサイトを有するイメージセンサから得られるディジタル化されたイメージ信号を処理する装置、及び3つの異なる色値を有するように各フォトサイト位置に対する色値を補間する構造が記載されている。装置は、あるフォトサイト位置から欠如した適当な色値を、かかるフォトサイト位置に対する更なる色値の補間により、近傍のフォトサイト位置における、前記欠如した色値以外の色値から生成する。装置は、さらに、同じ列及び行の近傍フォトサイトに対応する画素値から、少なくとも2つのイメージ方向において、ラプラシアン2次(second-order)値、グラジエント値、色差バイアス値を求め、これらの値から展開した分級(classifier)に基づき、欠如した色値の補間の好ましい方位を選択する。そして、この好ましい方位に一致するように、近傍の複数色画素値から欠如した色画素値を選択する。
【0018】
ノイズを低減したイメージ信号(ノイズ低減した散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージ)がDREFAプロセッサ22により入力され、ここでノイズ低減されたイメージ信号のダイナミックレンジが拡張する。好ましい実施形態においては、撮像素子10の特定のフォトサイトを遅い応答を有するように選択することにより、撮像素子10のダイナミックレンジを拡張する。選択されたフォトサイトの撮像素子10に対する配置については、以下により詳細に説明する。好ましい実施形態においては、選択されたフォトサイトの応答は、ここでは遅いフォトサイト(低速応答フォトサイト)と呼ばれる、選択されたフォトサイトの利得を変えることにより低速化されすなわち遅らされる。フォトサイトの利得の変更は、ディジタルカメラの設計及び製造の分野において広く実施されている。
【0019】
図3に関連し、イメージセンサ製造の分野では、各フォトサイトの頂部に樹脂性小型レンズ51を設けることは一般的である。例えば、特に撮像素子10がインターライン型固体撮像素子の場合、小型レンズの1技術が、イシハラによる米国特許第4,667,092号(1987年5月19日発行)に記載されている。イシハラ特許には、ブロック面を有する画像記憶ブロックを含む固体撮像素子が開示される。ブロック面に沿って複数の記憶要素が埋設され、イメージを電荷の形で記憶する。被覆層を設けることにより、この記憶要素に一致する光学レンズのアレイが形成される。ブロック面と被覆層との間には中間層が設けられる。入射光は、レンズ及び中間層を通過して記憶要素に収束する。中間層は、焦点距離を調整する調整層として機能する。
【0020】
図3は、インターライン型固体撮像素子の断面図である。小型レンズ51を設けない場合、フォトサイトの各感光領域55に関連する信号読出し領域により半導体基板の全体領域を光電トランスデューサ領域として使用することができなくなる。従来の固体撮像素子は、その入射光のすべてを有効に利用できないために感度が低い。フォトサイトの頂部に樹脂性小型レンズ51をさらに設けることにより、フォトサイトの光活性領域に入射光線を収束させることができ、よって、入射光線をより効果的に利用できるとともに、フォトサイトの感度を高めることができる。したがって、小型レンズ51の大きさと効率の少なくともいずれかを変えることにより、フォトサイトの感度(利得)を簡単に変更できる。よって、インターライン型素子及びCMOSセンサに対し、フォトサイトの利得を変更する好ましい方法は、フォトサイトの頂部に設けた小型レンズ51を変更する方法である。図3に示すように、位置52にはレンズを設けていないので、感光領域に関して入射する入射光線はより少なくなる。あるいは、小型レンズ51とは半径、形状、大きさまたは材料の異なるレンズを位置52に設けることにより、位置52においては入射光線が感光領域55に収束する効率を小型レンズ51に比べて低くすることもできる。当業者であれば、小型レンズ51が入射光線の80%を感光領域55に収束し、レンズを設けない(または応答の遅いレンズを有する)位置52では入射光線の20%が感光領域55に入射可能である場合、小型レンズ51に被覆されるフォトサイトは、位置52に比べ2ストップ応答が速いことが理解できよう。この場合、小型レンズ51は高速応答フォトサイトに対して用いられ、位置52で表される低速応答フォトサイトにはレンズが使用されない。
【0021】
図4は、フルフレーム型撮像素子10の断面図である。撮像素子10がフルフレーム型素子の場合、フォトサイトの感光領域55に入射する光線は、通常金属性の光遮断層の開口を通過しなければならない。図4の断面図に示される光遮断層は、光ブロックマスク部54と、この光ブロックマスク部の間に散在する大型及び小型開口とを含む。好ましい実施形態においては、フォトサイトの利得は、光ブロックマスク部54の修正により変更できる。この場合、フォトサイトの感度は、光ブロックマスク部54の開口に直接関連する。例えば、第2フォトサイトの開口の大きさの50%の開口を備えるフォトサイトは、第2フォトサイトに対して50%の応答を有する。例えば、光ブロックマスク部54の大型開口56は、このフォトサイトに入射する光線の80%を通過させることができるが、小型開口57は、入射光線の20%しか通過させることができない。当業者であれば、大型開口56を備えたフォトサイトは、小型開口57を備えたフォトサイトに比べて2ストップ応答が速いことが理解できよう。この場合、大きな開口56は高速応答フォトサイトに使用され、小さい開口57は低速応答フォトサイトに使用される。したがって、光ブロックマスクの開口を修正することにより、選択されたフォトサイトの応答を調整できる。イーストマンコダック社は、全画素の画素活性領域を約80%から20%に低減する(センサが水平方向及び垂直方向に1/2画素間隔だけ移動し、4画像が撮影されるディザードスキャナアプリケーションの場合)金属マスク光遮断層を備えるフルフレーム型撮像素子を製造している。このように、上記手法は、開口サイズは異なるが、このようなマスク技術を利用し、イメージ光に対して異なる応答を有するイメージセンサを提供する。
【0022】
好ましい実施形態においては、図5にグラフで示すように、選択された低速応答フォトサイトの応答は、同じ露光に対する高速応答フォトサイトの応答のX%(X≦100)である。好ましい実施形態では、選択されたフォトサイトは、高速応答フォトサイトに対して2ストップ(−logX/100)遅れた応答を有し、この結果X=25となる。このように、撮像素子10はフォトサイトの複数のセット、すなわち高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトから構成される。高速応答フォトサイトの出力応答の集合体が、速いイメージ、すなわち高速応答フォトサイトにより撮像したシーンの散在的にサンプリングされたイメージを形成する。同様に、低速応答フォトサイトの出力応答の集合体が、遅いイメージ、すなわち低速応答フォトサイトにより撮像したシーンの散在的にサンプリングされたイメージを形成する。
【0023】
別の例としては、選択した低速応答フォトサイトの応答を、フォトサイトを被覆する中性フィルタにより遅らせることができる。図6は、カラーフィルタアレイ53を備える撮像素子の断面図である。カラーフィルタアレイ53aは赤、53bは緑、53cは赤、53dは緑である。中性フィルタ層58がカラーフィルタアレイ53の上部に設けられるが、ここで中性フィルタの層58及びカラーフィルタアレイ53の位置関係は問題ではない。中性フィルタ59によって示されるように、中性フィルタ層58は、選択されたフォトサイトの位置においてのみ中性フィルタを含む。この場合では、中性フィルタ層58は、高速応答フォトサイトに対しては透明またはほぼ透明であり、低速応答フォトサイトに対して中性フィルタ59を含む。例えば、中性フィルタ59がX%の光を透過できる材料から構成される場合、その低速応答フォトサイトの応答は、高速応答フォトサイトの応答に対して、−log2(X/100)ストップだけ遅くなる。
【0024】
好ましい実施形態においては、撮像素子のフォトサイトの50%が遅い応答を持つべく選択される。当業者であれば、遅い応答を有するフォトサイトの割合を変更しても本発明の効果が得られることが理解できよう。全フォトサイトのスペクトル感度がほぼ同じである撮像素子10(パンクロマティック(全整色性)撮像素子)の場合、撮像素子10の全フォトサイトの約50%となる低速応答フォトサイトの配置が図7(A)に示されている。図において、応答の遅いフォトサイト28にはアスタリスク(*)が付けられ、応答の速いフォトサイト30は無地で示されている。散在的にサンプリングされたディジタルイメージを、カラーフィルタアレイを有する撮像素子により撮像したイメージであるとあらかじめ定義した。本発明によれば、散在的にサンプリングされたとは、高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトが散在した、図7(A)に示すようなイメージセンサにより生成されたイメージのことも指す。
【0025】
図7(B)には、各フォトサイトタイプ(赤、緑、または青に反応する)の50%が遅い応答を有するカラーイメージセンサの構成が示されている。例えば、フォトサイト32,34及び36はそれぞれ応答の遅い赤、緑及び青のフォトサイトであり、フォトサイト38,40及び42はそれぞれ応答の速い赤、緑及び青のフォトサイトである。
【0026】
図7(A)及び7(B)には、低速応答フォトサイトの配置の規則的なパタンが示されている。低速応答フォトサイトが規則的なパターンに配置されることは好ましいが、これは絶対要件ではない。低速応答フォトサイトを撮像素子10の表面全体にランダムまたはややランダムに配置することもできる。
【0027】
再び図5を参照すると、図5は特定の露光に対する高速応答フォトサイトの応答及び同じ露光に対する低速応答フォトサイトの応答を示している。なお、ノイズのレベルnが応答に重畳されている場合、高速応答フォトサイトは、低速応答フォトサイト(露光レベル100/X・Eで始まる有効信号を生じる)よりも低い露光(露光レベルEで始まる)で有効信号を生じることがはっきり見られる。あるいは、低速応答フォトサイトからのデータは、高速応答フォトサイト(E2Sの露光までの有効応答を生成する)よりも高い露光レベル(100/X・E2Sまでの信号レベル。なお、Sは単一フォトサイトの固有ダイナミックレンジであり、通常約5ストップでもよい)に対して有効である。高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトのいずれもが露光ストップ(stop of exposures)(S)において同じ応答範囲を有するが、図5に示すように、低速応答フォトサイトの応答は、高速応答フォトサイトより好ましくは−log2(X/100)ストップだけ遅い。高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトの応答は露光に関して重複することが好ましい。すなわち、−log2(X/100)<Sであることが好ましい。高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトのいずれをも考慮すると、撮像素子10の全体的なダイナミックレンジは、S−log2(X/100)である。好ましい実施形態の場合には、S=5、X=25であるので、撮像素子10の有効ダイナミックレンジは、7露光ストップである。
【0028】
図2に示すDREFAプロセッサ22をさらに詳細に説明する。DREFAプロセッサ22の目的は、高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトの光応答(photoresponse)における差を補償しながら入力されたノイズ低減イメージ信号を処理することにより、ダイナミックレンジの拡大したイメージ信号を作成することである。したがって、DREFAプロセッサ22の出力は、数値の増大したダイナミックレンジを有する拡張したイメージ信号である。この拡張イメージ信号は、CFA補間器26に入力され、前述のように処理される。
【0029】
A/D変換器14、ノイズ低減モジュール210及びDREFAプロセッサ22が直接接続されることは本発明の要件ではない。DREFAプロセッサ22は、A/D変換器14及び撮像素子10に近接するハードウェアまたはソフトウェアに設けてもよい。例えば、DREFAプロセッサ22をディジタルカメラ内部に直接設けてもよい。逆に、DREFAプロセッサ22を撮像素子10から隔離して設けてもよい。例えば、A/D変換器14から出力されたイメージ信号を(圧縮後に)有線または無線接続でパーソナルコンピュータデバイス、プリンタ、またはリモートサーバに送信し、ノイズ低減モジュール210及びDREFAプロセッサ22に供給することもできる。イメージ信号の送信には、ファイル転送プロトコルまたはEメールを含んでもよい。さらに、クレジットカードまたはその他の手段による支払いを、ノイズ低減モジュール210及びDREFAプロセッサ22によりユーザから要求してもよい。
【0030】
好ましい実施形態においては、撮像素子のフォトサイトの50%が遅い応答を持つべく選択される。当業者であれば、遅い応答を有するフォトサイトの割合を変更しても本発明の効果が得られることが理解できよう。全フォトサイトのスペクトル感度がほぼ同じである撮像素子10(パンクロマティック(全整色性)撮像素子)の場合、撮像素子10の全フォトサイトの約50%となる、低速応答フォトサイトの配置が図7(A)に示されている。図において、応答の遅いフォトサイト28にはアスタリスク(*)が付けられ、応答の速いフォトサイト30は無地で示されている。散在的にサンプリングされたディジタルイメージを、カラーフィルタアレイを有する撮像素子により撮像したイメージであると予め定義した。本発明によれば、散在的にサンプリングされたとは、高速応答フォトサイトと低速応答フォトサイトが散在した、図7(A)に示すようなイメージセンサにより生成されたイメージのことも指す。
【0031】
図7(B)には、各フォトサイトタイプ(赤、緑、または青に反応する)の50%が遅い応答を有するカラーイメージセンサの構成が示されている。例えば、フォトサイト32,34及び36はそれぞれ応答の遅い赤、緑及び青のフォトサイトであり、フォトサイト38,40及び42はそれぞれ、応答の速い赤、緑及び青のフォトサイトである。
【0032】
図7(A)及び7(B)には、低速応答フォトサイトの配置の規則的なパターンが示されている。低速応答フォトサイトが規則的なパターンに配置されることは好ましいが、これは絶対要件ではない。低速応答フォトサイトを撮像素子10の表面全体にランダムまたはややランダムに配置することもでき、これらの位置がDREFAプロセッサ22にアクセス可能な場所に記憶される。
【0033】
DREFAプロセッサ22を利用して、本発明で生成されるディジタルイメージの全体的なダイナミックレンジを拡張してもよい。これは、低速応答フォトサイトに対応する画素値を使用し、きわめて高い露光に対応する領域においてイメージ信号を再構成することにより行われる。同様に、DREFAプロセッサ22は、応答の速いフォトサイトに対応する画素値を用いて、きわめて低い露光に対応するイメージ信号を再構成する。
【0034】
図8は、DREFAプロセッサ22のブロック図である。A/D変換器14から出力される対数イメージ信号b(x、y)は、低速応答画素(以下、低速画素と呼ぶ)等価器(slow pixel equalizer)44に送られる。低速画素等価器44の目的は、応答におけるXストップのオフセットを考慮して低速応答フォトサイトに対応するイメージ信号を補償することである。あるいは、高速応答画素(以下、高速画素と呼ぶ)を反対方向に調節することにより、高速画素を低速画素に等価することができる。好ましい実施形態においては、低速応答フォトサイトに対応するイメージ信号は、量−cvslog(X/100)(cvsは露光のストップ当たりの符号値数)だけインクリメントされる。好ましい実施形態においては、量cvsは51である。あるいは、低速画素等価器44に入力されるイメージ信号が露光に対して(対数的でなく)線形の関係であれば、低速画素等価器44は低速応答フォトサイトに対応するイメージ信号を100/X倍する。なお、低速応答フォトサイトの位置は低速画素等価器44に知られていると仮定する。低速画素等価器44の出力は、低速応答フォトサイトの対応位置にて高速応答フォトサイト応答に対する低速応答フォトサイト応答の差を補償したイメージ信号i(x,y)である。高速応答フォトサイトの対応位置においては、A/D変換器14から出力されたイメージ信号b(x,y)の値は、低速画素等価器44から出力されたイメージ信号i(x,y)と同値である。なお、イメージ信号i(x,y)は8ビットの範囲に制限されない。好ましい実施形態では、i(x,y)の値は0から357(すなわち9ビット)の範囲である。
【0035】
次に、低速画素等価器44から出力されたイメージ信号i(x,y)は、低速画素閾値部(thresholder)46に入力される。低速画素閾値部46の目的は、有効な信号を生成するための十分な光子を入力していないフォトサイトに起因する、質の低い低速画素値を判定することである。続いて、信号拡張器50にて実行される処理において、これら(x,y)位置における画素値を、新しい画素値を付近の高速画素値に基づいて計算することにより置換える。所定の閾値未満の低速画素値はすべて、問題画素値であると考えられる。低速画素値の場合、この所定閾値を低露光応答閾値と呼ぶ。したがって、ある画素値i(x,y)は、低速応答フォトサイトでかつ次式を満たせば問題画素値とみなされる。
【0036】
【数2】
i(x,y)<T1
ここで、T1は予め定められている。好ましい実施形態においては、T1の値は次式により与えられ、
【数3】
T1 = −cvs log2(X/100)
好ましい実施形態では、値102に設定される。なお、閾値T1は、位置(x,y)におけるフォトサイトの色感度に依存してもよい。問題低速画素値はノイズ画素を呼ばれる。これは,i(x,y)の値が、有効な撮像素子のノイズレベルを十分に上回っていないためである。
【0037】
同様に、低速画素等価器44から出力されたイメージ信号i(x,y)は、高速画素閾値部48に入力される。高速画素閾値部48の目的は、質の低い高速画素を決定することである。これらの位置における画素値は、以下に詳細に説明する信号拡張器50により実行される処理において、付近の低速画素値に基づき新しい画素値を計算することにより置換される。所定閾値より大きい高速画素値がすべて問題画素と考えられる。高速画素の場合、問題高速画素の検出目的で使用されるこの所定閾値を高露光応答閾値と呼ぶ。よって、次式を満たせば高速画素値i(x,y)は問題画素値とみなされる。
【0038】
【数4】
i(x,y)>T2
ここで、T2は所定閾値である。好ましい実施形態では、T2の値は254に設定される。なお、閾値T2は位置(x,y)におけるフォトサイトの色に依存してもよい。問題位置である高速応答フォトサイトは飽和画素と呼ばれる。これはi(x,y)の値がこれらの位置において最大限に高いためである。
【0039】
低速画素閾値部46により決定した問題低速画素の(x,y)位置及び高速画素閾値部48により決定した問題高速画素の(x,y)位置が、信号拡張器50に入力される。さらに、低速画素等価器44から出力されたイメージ信号i(x,y)も信号拡張器50に入力される。撮像素子10の各フォトサイトの固有ダイナミックレンジがより大きければ、信号拡張器50の目的は問題位置(x,y)におけるイメージ信号i(x,y)を、ここで置換値と呼ぶ信号の予想値と置換することである。問題位置が低速応答フォトサイトに一致すれば、置換値は、高速応答フォトサイトに一致する近接イメージ信号画素値から計算する。この実施形態では、「近接」という用語はある空間的な距離を意味する。好ましい実施形態では、選択されたフォトサイトの近接フォトサイトとは、この選択されたフォトサイトから2フォトサイト分の距離範囲にあるフォトサイトである。同様に、問題位置が高速応答フォトサイトに一致する場合には、低速応答フォトサイトに一致する近接イメージ信号値から置換値を計算する。好ましい実施形態においては、問題フォトサイトにおけるフォトサイトの色も考慮される。任意の問題位置に対する置換値は、好ましくは、同色の近接フォトサイトから発生する信号によってのみ決定する。信号拡張器50から出力されるイメージ信号i’(x,y)は、撮像素子10の各フォトサイトに対する実際の固有ダイナミックレンジSではなく、次式のダイナミックレンジを有するフォトサイトを備えた撮像素子10により捉えた場合のダイナミックレンジを有する。
【0040】
【数5】
S=−log2(X/100)
なお、問題位置ではない(x,y)位置すべてについては、i’(x,y)の値はi(x,y)と同値である。
【0041】
図7(B)に示されるバイヤーのCFAパターンに対し信号拡張器50が実行する処理の一例を説明する。位置(x,y)が問題位置であり、かつ(x,y)が緑のフォトサイト(図7(B)におけるフォトサイト34など)の対応位置である場合、イメージ信号i(x,y)に対する置換値i’(x,y)は、次の方法で計算する。
【0042】
【数6】
i’(x,y)=0.25*[i(x−1,y−1)+i(x+1,y-1)+i(x-1,y+1)+i(x+1,y+1)]
なお、i’(x,y)の計算が依存する信号値は、特定要件を満たしていることが期待される。例えば、(x,y)が問題位置であり、かつ(x,y)が応答の遅い緑のフォトサイトに対応しているとする。この場合、近接フォトサイトの信号レベルを用いて置換値i’(x,y)を計算する。しかしながら、これは各近接フォトサイトの信号値がT3未満であることを仮定している。好ましい実施形態においては、T3=T1である。信号値がT3未満ではない各近隣フォトサイトの信号レベルは、置換値i’(x,y)の計算から省く。例えば、i(x−1,y−1)>T3の場合には、i’(x,y)の値は次式により計算する。
【0043】
【数7】
i’(x,y)=1/3*[i(x+1,y-1)+i(x-1,y+1)+i(x+1,y+1)]
一般に、問題位置(x,y)における置換値を求めるための補間スキームは、この位置(x,y)がバイヤーパターンのフィルタアレイを有する撮像素子における高速応答フォトサイトである緑のフォトサイトに対応する場合、次式により与えられる。
【0044】
【数8】
ここで、
【数9】
なお、問題位置が低速応答フォトサイトである緑のフォトサイトに対応する場合の置換値を求める際にも同一の式が適用される。しかしながら、この場合には、
【数10】
ここで、好ましい実施形態では、T4=T2である。
【0045】
同じく図7(B)に示されるバイヤーのCFAパターンに関する別の例として、位置i(x,y)が問題フォトサイトであり、かつ(x,y)が赤または緑のフォトサイトの位置に対応する場合、イメージ信号i(x,y)に対する置換値i’(x,y)は以下の方法で計算される。
【0046】
【数11】
i’(x,y)=0.25*[i(x−2,y)+i(x+2,y)+i(x,y+2)+i(x,y−2)]
位置(x,y)が赤または青のフォトサイトに対応し、かつ高速応答フォトサイトであれば、置換値i’(x,y)を求める式を以下のように一般化してもよい。
【0047】
【数12】
ここで、
【数13】
なお、この場合、jとkのいずれかが0でなければならないが、jとkのいずれもが0ではならない。また、問題位置が低速応答フォトサイトである赤または青のフォトサイトに対応する場合の置換値を求める際にも同一の式が適用される。しかしながら、この場合には、
【数14】
ここで、好ましい実施形態においては、T4=T2である。
【0048】
1つ以上の散在的にサンプリングされたイメージ信号からダイナミックレンジが拡張したイメージ信号を生成するための上記補間スキームは、当業者による修正が可能である。上記の補間スキームに対して多くの修正が得られるが、これらの修正は本発明から相当程度に逸脱していると考えるべきではない。
【0049】
当業者であれば、信号拡張器により実行される上記補間スキームが、当業界で周知のローパスフィルタであることがわかるであろう。通常、イメージ信号にローパスフィルタを適用することは、イメージ信号の解像度を低減するのと同様の作用がある。DREFAプロセッサ22により実行される処理は、撮像素子10の空間解像度と引き換えに、撮像素子10のダイナミックレンジを得ることのできる方法である。実際に、この補間スキームを実施して信号のダイナミックレンジを拡大したイメージの領域は、イメージの同領域をセンサにより(低速画素閾値部46と高速画素閾値部48により決定するような)「問題位置」がまったく発生しないように撮像した場合に比べ、明らかによりソフトに(より鋭さがなく)見える。
【0050】
本発明では、イメージ信号に対してDREFAプロセッサ22及びCFA補間器26を使用する前に、ノイズ低減プロセッサ210によりこのイメージ信号からノイズを除去する。補間処理に先立つノイズ低減処理は、本発明の重要な効果である。特に、補間処理はイメージ信号に存在するノイズを増幅する可能性がある。したがって、補間の前にノイズ低減処理を行う結果、これら2つの処理モジュールの順序が逆である場合に比べ、よりノイズの少ない、処理されたディジタルイメージを得ることができる。本発明の別の重要な側面は、信号依存型のノイズ低減を取り入れたことである。この方法を用いることにより、ノイズ特性の異なるイメージ信号の画素に対するノイズ低減方法が最適化される。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、前出の雑誌記事"Digital Image Smoothing and the Sigma Filter"(Computer Vison, Graphics,and Image Processing, vol.24,1983,pp.255-269)に記載のジョンセンリー(Jong-Sen Lee)によるシグマフィルタの修正バージョンを用いて、イメージ信号からノイズを除去する。局所的に近接する画素、すなわちnxnの画素(nは行または列のいずれかの方向における画素の長さ)に含まれる画素値を、中心画素すなわち関心画素の値と比較する。局所的に隣接する各画素には、関心画素値とその局所近接画素値との絶対差に基づき1または0の重み付け係数が与えられる。画素値の差の絶対値が閾値ε以下であれば、重み付け係数は1に設定される。それ以外の場合には重み付け係数を0に設定する。数値定数εは、予想されるノイズ標準偏差の2倍に設定される。数学的には、ノイズ低減した画素値の計算式は次式により与えられる。
【0052】
【数15】
さらに、
【数16】
ここで、pmnは局所的に近接する画素に含まれるmn番目の画素を表し、pijは行i及び列jに位置する関心画素の値を表し、amnは重み付け係数を表し、qijはノイズを低減した画素値を表し、εはノイズ低減フィルタの閾値変数を表す。変数δmnijは、中心画素pij及び画素pmnに関連する対応フォトサイトのタイプに応じて0.0と1.0のいずれかである係数である。例えば、画素pij及び画素pmnのいずれもが同じタイプのフォトサイト、すなわち光に対するスペクトル感度が同一であり、光の大きさに対して応答が同じであるフォトサイトに対応する場合、δmnijの値は1.0である。一方、画素pij及び画素pmnが光に対するスペクトル感度が異なる、または光の大きさに対する応答が異なるフォトサイトに対応している場合には、δmnijの値は0.0である。したがって、ノイズを低減した画素値qijは、同一のノイズ特性を有する画素の小さい局所近隣領域内の画素値から計算する。よって、本発明によれば、低速応答フォトサイトに対応する画素のみを用いて、低速応答フォトサイトに対応する画素のノイズ低減した画素値を計算する。同様に、高速応答フォトサイトに対応する画素のノイズ低減した画素値を計算するには、高速応答フォトサイトに対応する画素のみを使用する。
【0053】
一般に、撮像素子10のフォトサイトのタイプが異なればノイズ特性も異なる。すなわち、2つのフォトサイトは、光に対するスペクトル感度または絶対光強度のいずれかが異なれば、そのノイズ特性も異なる。本発明の信号依存型ノイズ特性は、次式(17)により与えられるεの式に組込まれる。
【0054】
【数17】
ε=Sfacσn(pij) (17)
ここで、σnは、中心画素値pij(すなわち関心画素)において求めた、イメージ信号のノイズ標準偏差を表す。パラメータSfacを使用し、ノイズ低減の程度を変えることができる。Sfacとεの変数はいずれもノイズ調整パラメータの例である。次に、2つの和の除法(division)として、ノイズ低減した画素値の計算を行う。この処理を、イメージ信号に含まれる全画素に対して行い、ノイズ低減した画素値をイメージ信号画素値と置き換える。
【0055】
リーによるシグマフィルタは、本発明で使用できる画素差フィルタの一例である。画素差フィルタの中心側面は、関心画素を中心とした局所的近接画素における画素値に基づきノイズ低減した画素値を計算する空間フィルタであり、各局所画素の影響力は、その局所画素値と、局所近接画素から求めた基準数値との差に基づく。本発明の好ましい実施形態では、関心画素の値を基準数値として使用する。局所近接画素における画素の平均など、他の値を基準数値として使用することもできる。
【0056】
画素差フィルタの別の例は、D.C.Cワン他による反転グラジエントフィルタ(Inverse Gradient Filter)(Gradient Inverse Weighted Smoothing Scheme and the Evaluation of its Performance、 Computer Graphics and Image Processing Vol.15,p.167-181,1981)である。このアルゴリズムでは、中心画素の周囲の矩形サンプリング領域から局所画素値の非線形の重みを取ることにより、ノイズ低減したイメージを生成する。重み付け係数は、中心画素と周辺画素値との大きさの差に基づいている。
【0057】
本発明は、イメージ信号のノイズ特性に依存しないノイズ低減方法により実施が可能である。本発明の別の実施形態においては、メジアンフィルタを使用してノイズ低減された画素値を計算する。上記の好ましい実施形態と同様に、この別の実施形態においても、低速応答フォトサイトに対応する画素だけを使用して、低速応答フォトサイトに対する画素のノイズ低減画素値を計算し、高速応答フォトサイトに対応する画素のみを使用して高速応答フォトサイトに対応する画素のノイズ低減した画素値を計算する。
【0058】
本発明では、低速応答フォトサイト及び高速応答フォトサイトにそれぞれ対応する低速画素値と高速画素値に対し、別々のノイズ特性テーブルを使用している。表(1)は、低速画素と高速画素のいずれかに使用できるノイズ特性テーブルの一例である。本発明の実施においては、低速画素と高速画素に対し、異なるノイズテーブルを使用できる。式(17)の標準偏差変数σn()は、赤、緑、青の画素に対して異なる値を想定している。各画素タイプに対してエントリを1つだけ有するノイズ特性テーブルにより、本発明を実施することも可能である。これは、信号依存型の場合である。
【0059】
【表1】
当業者であれば、標準偏差値の表以外の特性を必要とする、他のノイズ低減方法によっても本発明を実施可能であることが理解できるだろう。
【0060】
【発明の効果】
本発明の重要な効果は、ダイナミックレンジが拡張された撮像素子に使用される異なるタイプのフォトサイトに関連する各タイプの画素に対し最適化された、ノイズ低減方法を使用することである。
【0061】
本発明の更なる効果は、補間処理ステップに先立ちノイズ除去処理ステップを行う、処理ステップの順序に関する。本発明により処理されたディジタルイメージは、これら2つの処理ステップの順序が逆の場合に比べてノイズがより少ない。
【0062】
本発明のさらに別の効果は、ノイズ特性の異なるイメージ信号の画素に対するノイズ低減方法を最適化するための、信号依存型ノイズ低減方法を取り入れたことである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による拡張ダイナミックレンジ撮像素子及びディジタルイメージプロセッサを使用したディジタル撮像システムのブロック図である。
【図2】 ディジタルイメージプロセッサの機能ブロック図である。。
【図3】 選択されたフォトサイトの応答を変える小型レンズアレイを用いた、インターライン型イメージセンサの断面図である。
【図4】 選択されたフォトサイトの応答を変える金属マスクを用いた、フルフレーム型イメージセンサの断面図である。
【図5】 高速応答フォトサイト及び低速応答フォトサイトの応答を示したグラフである。
【図6】 選択されたフォトサイトの応答を変えるために使用される中性密度フィルタアレイを用いたイメージセンサの断面図である。
【図7】 (A)はパンクロマティック撮像素子における低速応答フォトサイトと高速応答フォトサイトの配置を示す図であり、(B)はカラー撮像素子における低速応答フォトサイトと高速応答フォトサイトの配置を示す図である。
【図8】 ダイナミックレンジ拡張フィルタアレイ(DREFA)プロセッサのブロック図である。
【符号の説明】
1 レンズ、6 光ローパスフィルタ、10 撮像素子、14 A/D変換器、22 DREFA プロセッサ、26 CFA補間器、28 低速応答フォトサイト、30 高速応答フォトサイト、32 赤の低速応答フォトサイト、34緑の低速応答フォトサイト、36 青の低速応答フォトサイト、38 赤の高速応答フォトサイト、40 緑の高速応答フォトサイト、42 青の高速応答フォトサイト、44 低速画素等価器、46 低速画素閾値部、48 高速画素閾値部、50 信号拡張器、51 小型レンズ、52 低速応答フォトサイト位置、53a−d カラーフィルタアレイ、54 光ブロックマスク部分、55 感光領域、56 大型開口、57 小型開口、58 中性フィルタ層、59 中性フィルタ、200 ディジタルイメージプロセッサ、210 散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージ、202 ノイズ低減したディジタルイメージ、210 ノイズ低減プロセッサ。
Claims (4)
- 光の露出に対して所定の応答を有し高速応答画素値を生成する高速応答フォトサイトと、同じ光の露出に対しより遅い応答を有し低速応答画素値を生成する低速応答フォトサイトとを備える撮像素子により生成された、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジイメージからノイズを除去する方法であって、
a)高速及び低速応答ディジタル画素値を有する、散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージを生成するステップと、
b)ディジタルノイズフィルタ方法を使用し、関心画素と同一のノイズ特性を有する画素であって関心画素の局所的近接領域内の画素の画素値を用い、関心画素が低速応答ディジタル画素値を有するときは低速応答ディジタル画素値のみを用いてノイズ低減した低速応答ディジタル画素値を生成し、関心画素が高速応答ディジタル画素値を有するときは高速応答ディジタル画素値のみを用いてノイズ低減した高速応答ディジタル画素値を生成して、前記散在的にサンプリングされた拡張ダイナミックレンジディジタルイメージからノイズを除去するステップと、
c)前記ノイズ低減した低速応答ディジタル画素値と前記ノイズ低減した高速応答ディジタル画素値とを組み合わせてノイズ低減した散在的にサンプリングされたディジタルイメージを生成するステップと、
を備えることを特徴とする方法。 - 請求項1に記載の方法において、ディジタルノイズフィルタ方法は、
関心画素と、その関心画素について局所的に近接する複数の局所近接画素とを特定するステップと、
複数の局所的近接画素の各ディジタル画素値を、関心画素のディジタル画素値と比較し、各局所的近接画素の各ディジタル画素値と関心画素の画素値との絶対差を計算するステップと、
ノイズ低減した画素値を計算するために、絶対差を計算するステップで計算された絶対差を用いるステップと、
を含むことを特徴とする方法。 - 請求項2に記載の方法において、計算された絶対差を用いるステップは、さらに、
計算された絶対差を予め定められた閾値と比較し、
ノイズ低減した画素値を計算するために、計算された絶対差が閾値以下のときには、局所的近接画素の各ディジタル画素値のみを用いることを特徴とする方法。 - 請求項3に記載の方法において、閾値の決定は、
複数のノイズ特性値を準備し、
複数のノイズ特性値の中の1つを選択するために、各局所的近接画素の各ディジタル画素値を用い、
選択されたノイズ特性値を閾値として用いることを特徴とする方法。
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