JP4056311B2 - ボビンツールを用いた摩擦攪拌接合装置とその接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両、航空機、建物等の構造体を製造する際の側構体、床構体、屋根構体等の製造に用いるシングルスキンやダブルスキンパネル(二面中空パネル)の摩擦攪拌接合装置とその製造方法に係り、特にボビンツールを用いた摩擦攪拌接合装置とその接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば特表平7−505090号公報には、摩擦攪拌による固相接合方法として長尺材同士の新規な接合方法が開示されており、かかる接合方法は、加工物より実質的に硬い材質からなる回転ツ−ルを加工物の接合部に挿入し、回転ツ−ルを回転させながら移動することにより、回転ツ−ルと加工物との間に生じる摩擦熱による塑性流動によって加工物を接合する接合方法で、かかる摩擦接合法は、接合部材を固相状態で、回転ツ−ルを回転させながら移動させつつ軟化させた固相部分を一体化しながら接合できるために、熱歪みがなく接合方向に対して実質的に無限に長い長尺材でもその長手方向に連続的に固相接合できる利点がある。さらに、回転ツ−ルと接合部材との摩擦熱による金属の塑性流動を利用した固相接合のため、接合部を溶融させることなく接合できる。また、加熱温度が低いため、接合後の変形が少ない。接合部は溶融されないため、欠陥が少ないなどの多くの利点がある。
【0003】
さらに、かかる摩擦接合を利用して、鉄道車両等の大型構造物に用いられる長尺のダブルスキンパネルからなる中空型材を複数平行に配設したものを突き合わせ接合して構成した摩擦撹拌接合による広幅の二面構造体(パネル)を形成する技術が特許第3152420号公報に開示されている。
【0004】
次に摩擦撹拌接合に使用される回転工具について説明する。摩擦撹拌接合は特表平7−505090号に開示されているように、ブローブ型とボビンツール型の回転工具が存在し、プローブ型工具20は図6(A)に示すように、ショルダ部21とこのショルダ部21に備えられたプローブ22とを備えており、このショルダ部21は円形ショルダ面を有している。そして、複数の型材を突き合わせ、若しくは嵌合された状態の接合線表面より、前記回転工具20を回転させて、プローブ21を被加工物の接合線に設けた不図示の孔に侵入させるとともに、複数の型材の接合線上で摺接回転する円形ショルダ面21によって被加工物に摩擦熱が付与されるとともに、プローブ22周囲が塑性流動化し、この状態で回転工具20を接合線に沿って移動させることにより、接合線周囲が塑性流動化しつつ接合線に沿って2つの素材が圧力を受けながら撹拌混練され、プローブの後方側に移行する。この結果塑性流動した素材は後方側で摩擦熱を失って急速に冷却固化するので両パネル板は素材同士が混じり合って完全に一体化した状態で接合される。
【0005】
しかしながらかかる接合方法では接合時に摩擦熱を発生させるために、回転工具20を接合線側に押しつける必要があり、従ってこの反力に対処するために、裏当金が使用されている。この裏当金は被加工物の面板の裏面に密着させて設置するものであり、高い剛性を必要とする。
【0006】
かかる欠点を解消するために、図6(B)に示すように、ボビンツール10と呼ばれる回転工具が提案されている。
かかる工具は接合する金属板の表裏両面を挟持するように一定間隔を設けた一対のショルダ10A、10Bが設けられているとともに、該上下一対のショルダ10A、10B間にプローブ11が設けられているので、接合面の両面において摩擦発熱させることが出来、裏面側の接合不良が生じないのみならず、上下一対のショルダ10A、10B間で互いの反力を受けているために、裏当金や前記した支柱が不要になるが、ブローブ11により上下一対のショルダ10A、10B間隔が固定されているために、被接合部材の変形や肉厚の変動があると、これを吸収することができず、円滑な摩擦攪拌接合ができない。
又、接合前に2つの部材の突き合せ部の端面の間に隙間(ギャップ)がある場合には、接合部に凹み等の欠陥が発生する。このため、強度低下を生じ、特に車両等の大型構造物においてはダブルスキンパネルが長尺になることによって、前記ギャップの管理は困難になり、凹みが大きくなり、また、欠陥が発生しやすくなる。
【0007】
更に、ボビンツール10を用いた際、ショルダ部10A、10Bの間隔と接合部との間に空隙があると、接合部に圧力がかからないため、空洞的な欠陥が発生してしまう。ショルダ部の間隔と接合部の厚さが同一の場合には、接合部が接合部以外の厚さより薄くなる。このため、接合部の品質に問題が発生することがある。
【0008】
また、突き合わせ接合のように接合部にギャップ(隙間)が存在すると、ボビンツール10を用いて接合部を接合する際、ギャップを補充することができず、接合欠陥が生じることがある。
【0009】
このような不具合に対処するため、例えば、特開2002−18580公報に記載されたものでは、上下ショルダ部の間に挟まれる接合材の接合部厚さを、上ショルダ部と下ショルダ部との間隔よりも大きくして、(具体的には、従来例では、互いに対向する二つの接合材の接合部をはめ込み構造として、接合の厚さを接合部以外の厚さよりも局部的に厚くして)さらに、接合部の厚みを上下ショルダ部の間隔よりも大きくしている。これによって、摩擦熱によって接合部のギャップが変化することを防止するとともに、接合後の接合部の厚さが他の部分よりも薄くなることを防止している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来例においては、予め接合部の厚さを上下ショルダ部の間隔よりも局部的に大きくしておく必要があり、接合過程(製造過程)において、接合部に生じるギャップが異なることを考慮すると、接合部の厚さを接合部以外の部分に対してどの程度厚くしておければよいか事前に知ることは難しい。つまり、ギャップを考慮して、予め接合部の厚さを上下ショルダ部の間隔よりも局部的に大きくしておくことは極めて困難であり、ギャップが大きいと、接合部の厚さを上下ショルダ部の間隔よりも局部的に大きくしておいても、接合過程においてギャップが十分に補充できないことがある。このため、接合欠陥が生じる恐れがある。
【0011】
又裏面押圧部材と表面押圧部材を備え、該押圧部間が可変のボビンツールを用いた摩擦攪拌接合装置は公知であり、例えば特開2000−33484において、コイルスプリングを用いて下面押圧部のを軸方向に可変にした技術が存在する。
すなわち図7に示すごとく、回転筒81の先端に凹形底面81aを形成しており、この凹形底面81aの中央部分に、回転筒81と同一の軸線となる攪拌ピン80を螺合にて取り付けている。この攪拌ピン80は下面押圧部85に形成した貫通孔85aを摺動自在に貫通し、その先端には、ストッパ部84を固設している。攪拌ピン80の軸線と平行な軸線を有し、かつ、ストッパ部84側(図7の下方)へ延びるガイドバー82、82の上端部側面が、下面押圧部85の周面に固着されている。したがって、ガイドバー82、82は、下面押圧部85の移動に伴い、攪拌ピン80の軸線に平行に移動する。下面押圧部85は、短円柱状部材であり、攪拌ピン80が貫通する貫通孔85aは、短円柱状部材の上面から下面に抜けており、この上面に凹形上面85bが形成されている。また、この下面押圧部85と前記ストッパ部84との間には付勢手段であるコイルスプリング83が配設されている。つまり、このコイルスプリング83が、下面押圧部85を、常時、被接合部材の下面側に付勢し、下面押圧部85は、攪拌ピン80の軸線に沿って移動し、この凹形上面85bが被接合部材の下面に当接する。また、コイルスプリング83の上・下端の各々が下面押圧部85の下面とストッパ部84の上面のそれぞれに固着されている。このため、攪拌ピン80の回転は、ストッパ部84とコイルスプリング82を介して下面押圧部85に伝えられ、下面押圧部85は攪拌ピン80の回転に同期して回転する。
【0012】
従ってかかる従来技術においては、下面押圧部として機能する攪拌ピン80の回転は、ストッパ部84とコイルスプリング82を介して下面押圧部85に伝えられるものであるために、コイルスプリング82の押し付け力によってその荷重が規定され、下面押圧部85の押し付け力を制御できない。
しかもコイルスプリング82の押し付け力には上限があり、基本的に上面押圧部として機能する回転筒11の押し付け力より大きくすることができない。
【0013】
このため本出願人による整理番号200201401の出願に示すように、パネル自由端の裏面側(中空部側)の板厚を厚くすることで、継ぎ手部でショルダ面との摩擦熱による入熱により裏面側の軟化した部分が接合ギャップ空間に進入させて、前記従来技術のように表面側に厚肉部を設ける必要がなく、外部から見える表面側は凹部が発生することなく、平坦を維持できるいう実用的効果を達成できるボビンツールを形成できない。
【0014】
本発明はかかる従来技術の欠点に鑑み、母材接合部の表裏両面側での入熱量を調整でき、これにより母材をボビンツールを用いて摩擦攪拌接合する際に該摩擦攪拌接合の柔軟性と円滑化を計ることのできる摩擦撹拌接合装置とその接合方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本第一発明は、裏面押圧部材と表面押圧部材を備え、該押圧部間が可変のボビンツールを用いた摩擦攪拌接合装置において、
前記裏面押圧部材よりの接合面への摩擦入熱付与量と前記表面押圧部材よりの接合面への摩擦熱付与量を夫々独立して調整可能に構成し、
更に前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設けたことを特徴とする。
そしてこのように、裏面押圧部材と表面押圧部よりの接合面への摩擦熱付与量を夫々独立して調整する具体的な第1の手段として、前記裏面押圧部材よりの接合面への押圧力と前記表面押圧部材よりの接合面への押圧力とを夫々独立して調整可能に構成したことを特徴とする。
又、第2の手段は、前記裏面押圧部材の回転速度と前記表面押圧部材よりの回転速度とを夫々独立して調整可能に構成したことを特徴とする。
更に、第3の手段は、前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設けたことを特徴とする。
そこで本発明は、前記第3の手段を要旨とするものであるが、前記第3手段に第1若しくは第2手段とを組み合わせることも可能である。
【0016】
第2発明はかかる製造装置を用いた製造方法にかかるもので、母材接合部を挟んで裏面押圧部材と表面押圧部材を備え、その表面側押圧部材と裏面側押圧部材より夫々摩擦入熱を加えてその接合部の塑性流動により接合を行う摩擦攪拌接合方法において、
前記表面側押圧部材よりの接合部への摩擦入熱付与量と前記裏面側押圧部材よりの接合部への摩擦熱付与量を夫々独立して制御して接合を行うとともに、前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設け、
前記裏面側若しくは表面側を塑性流動可能な温度域に達するまでの間に前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1に内蔵したヒータ若しくは冷却機構により予熱若しくは予冷して接合を行うことを特徴とする。
このような発明の具体的な接合方法として前記「前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設ける」という第3の手段を要旨とするものであるが、又前記第3の手段を組み合わせて前記第1手段を利用して前記裏面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力と前記表面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力とを夫々独立して制御して接合を行ってもよく、又前記第3の手段を組み合わせ第2手段を利用して前記裏面側に摩擦熱を付与する押圧部の回転速度と前記表面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力とを夫々独立して制御して接合を行ってもよく、さらには第3手段単独で前記裏面側若しくは表面側を塑性流動可能な温度域に達するまでの間に摩擦熱以外の熱付与手段で予熱して接合を行ってもよく、勿論これらを組み合わせてもよい。
【0017】
そしてこれらの発明は、例えば接合されるスキンパネルを自由端側の面板の厚みをその自由端より該パネルのリブを介して自由端内側に位置する中空部の面板厚みより他の自由端の面板厚みを大に設定するとともに、該ブルスキンパネルの自由端同士を突き合わせ、その突き合わせ面において、表裏両面側にショルダ面より摩擦熱が入熱されるボビンツールにより、裏面側入熱量を表面側入熱量より大にしながら摩擦攪拌接合がなされるようにして接合させることができ、これにより接合部の継ぎ手構造が突き合わせになっているために、その突き合わせ部にギャップ(隙間)が生じるが、パネル自由端の裏面側(中空部側)の板厚を厚くすることで、継ぎ手部でショルダ面との摩擦熱による入熱により裏面側の軟化した部分が接合ギャップ空間に進入するため、外部から見える表面側は凹部が発生することなく、平坦を維持できる。
この結果、接合後における表面加工処理が基本的に不要であり、特に車両構造体のような長尺ものについては、その作業が大幅に簡単化する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1は本発明の参考例にかかる摩擦接合装置の具体的構成を示し、図中10Aは表面側円筒ショルダで、ブローブ11として機能する回転軸29が中心軸に沿って延在し、その軸端にサーボモータ等の回転駆動部17を設ける。
一方、10Bは裏面側ショルダで、該ショルダ10Bは前記回転軸29に回転自在に遊嵌されたリング状円筒体で構成されるとともに、前記回転軸29に外嵌された筒状回転筒26に連結され、その軸端にサーボモータ等の回転駆動部27を設ける。
【0020】
そして前記夫々の回転駆動部17、27は、送りねじ49A、49Bと送りねじ駆動モータ42A、42B及びロードセル44A、44Bが収納されたねじ収納部41A、41Bからなる荷重負荷体40が連結されており、これらの荷重負荷体40及び回転駆動部17、27は制御回路28に接続され、荷重負荷体40夫々のロードセル44A、44Bの信号に基づいて送りねじ駆動モータ42A、42Bの回転位相を制御して例えば前記裏面側と表面側のショルダ面10A、10B間にダブルスキンパネル30A、30Bの突き合わせ接合部を挟持した状態で、該接合面の表側にかかる表側ショルダ10A面の荷重が10kgf、裏側ショルダ面10Bの荷重が200kgfになるように制御し、前記表側ショルダ10A面にかかる荷重を裏側ショルダ10B面にかかる荷重より大幅に小にしている。
【0021】
更に制御回路28では、回転駆動部17、27のサーボモータの回転数も制御可能に構成し、例えば裏面側のショルダ10B面との摩擦入熱と表面側のショルダ10A面の摩擦入熱量を制御可能に回転速度と押圧荷重のいずれか一方もしくは両者の組み合わせにて制御している。
【0022】
図2は裏面側ショルダ10Bと表面側ショルダ10Aの両者を同期して回転可能にした他の参考例で、表面側円筒ショルダ10Aは、ブローブ11として機能する回転軸29が中心軸に沿って延在し、その軸端にサーボモータ等の回転駆動部17を設ける点は前記実施例と同様であるが、その回転軸の裏面側ショルダ10A嵌合部分をスプライン状に構成し、スプライン70を介して裏面側ショルダ10Bが回転軸に摺動自在に連結され、これにより表面側ショルダ10Aと同期して回転可能に構成されている。
すなわち裏面側ショルダ10Bは前記回転軸29にスプライン70を介して、前記回転軸29に摺動自在に連結され、回転軸29の軸端に連結された共通する回転駆動部27により回転可能に構成されている。
【0023】
そして前記回転駆動部27は、送りねじ49Aと送りねじ駆動モータ42A、及びロードセル44Aが収納されたねじ収納部41Aからなる荷重負荷体40が連結されており、又裏面側ショルダ10Bは軸受71が内蔵された支持リング72を介して、送りねじ49Bと送りねじ駆動モータ42B及びロードセル44Bが収納されたねじ収納部41Bからなる荷重負荷体40が連結されている。
この結果、これらの荷重負荷体40、40及び回転駆動部17は制御回路28に接続され、荷重負荷体40の夫々のロードセル44A、44Bの信号に基づいて送りねじ駆動モータ42A、42Bの回転位相を制御して例えば前記裏面側と表面側のショルダ面10A、10B間にダブルスキンパネル30A、30Bの突き合わせ接合部を挟持した状態で、該接合面の表側にかかる表側ショルダ10A面の荷重が10kgf、裏側ショルダ面10Bの荷重が200kgfになるように制御し、前記表側ショルダ10A面にかかる荷重を裏側ショルダ10B面にかかる荷重より大幅に小にしている。
【0024】
図3は荷重負荷体40が、送りねじと送りねじ駆動モータ及びロードセル収納部からなる荷重負荷体ではなく、ロードセル24A、24Bが収納された油圧シリンダ23A、23Bと油圧源25A、25B(油圧が一定圧に制御出来ればロードセルは不要となる)とから構成されているもので、その作用効果は図1と同様である。又図2に示すように、裏面側ショルダ10Bと表面側ショルダ10Aの両者を同期して回転可能に構成してもよい。
【0025】
図4(A)は、裏面側ショルダ10B内にヒータ47を内蔵し、摩擦攪拌接合初期に裏側ショルダ10B面を摩擦攪拌接合の温度域である450℃〜560℃に先に到達させ、ダブルスキンパネル30A、30Bの裏面側のみ先に軟化させ、前記突き合わせ接合部のギャップ34部に、ダブルスキンパネル30A、30Bの軟化されたアルミ母材が先に進入するように構成した実施例で、図1〜図3の参考例に組み込んでも、又図4(A)のみ単独で若しくは図4(B)との組み合わせで構成することもできる。
従って本実施例にはヒータ47、裏面側ショルダの温度を検出する温度センサ48、摩擦攪拌接合の温度域付近に達した時点で前記ヒータのオフを行うヒータ制御回路46が必要となる。
【0026】
図4(B)は、前記実施例とは逆に表面側ショルダ10A内に冷却水通路470を内蔵し、冷却機構471により冷却水の温度を制御しながら、摩擦攪拌接合初期に裏側ショルダ10B面が摩擦攪拌接合の温度域である450℃〜560℃に先に到達させ、ダブルスキンパネル30A、30Bの裏面側のみ先に軟化させ、前記突き合わせ接合部のギャップ34部に、ダブルスキンパネル30A、30Bの軟化されたアルミ母材が先に進入するように構成した他の実施例で、冷却水の表面側ショルダ10Aへの通流は、図1〜図3の実施例に組み込んでも、又図4のみ単独で構成することもできる。
従って本実施例には表面側ショルダ10A内に内蔵した冷却水通路470、冷却水の温度と通流及びその停止を制御する冷却機構471、裏面側ショルダの温度を検出して裏側ショルダ10B面が摩擦攪拌接合の温度域である450℃〜560℃に到達するのを予測した時点で冷却機構471の冷却水の通流を停止する温度センサ48とその冷却水制御回路460が必要となる。
【0027】
次に前記接合装置を用いてダブルスキンパネルの自由端同士を突き合わせ接合により製造した例を図5に基づいて説明する。
同図に示す如く、ダブルスキンパネル30A、30Bは上下二面の平行な面板31、32とその面板31、32間を連接する如く、ジグザグ三角形状に連設したリブ39を有し、その三角リブ39の両外側には垂直リブ38を介して二面の自由端33A、33Bが面板31、32と平行且つ水平に延在している。そして両自由端33A、33Bとも面板31、32と面一に延在され、両者がギャップ34を介して突き合わせて面板31、32表面が面位置になるように構成されている。
【0028】
そして同図に示す如く、両ダブルスキンパネル30A、30Bの接合に自由端面が自由端33A、33Bの突き合わせによって表裏両面が平面状であるために、前記図1〜図4に示すボビンツール10を用いた場合は、接合するダブルスキンパネル30A、30Bの自由端33A、33Bの表裏両面を上下一対のショルダ10A、10B間でプローブ11を介して挟持させる事ができるために、接合面の両面において摩擦発熱させることが出来、又ボビンツール10の裏面側ショルダ10Bがスキンパネル自由端33A、33B長手方向に移動可能で、その自由端33A、33Bの内部空間37にリブ39、38が存在しない中空状であることが必要である。
又、この場合において、ダブルスキンパネル30A、30B同士を突き合わせて得られる面板31、32と平行な自由端33A、33B内部空間長Lが、裏面側のボビンツール直径Dより大きいことが必要であるが、あまりに大きいとその部分の強度が低下する。従ってその範囲はボビンツール直径Dに対し、1.1〜2倍の範囲に設定する。
【0029】
なお、前記表面側が平坦度を維持するには、裏面側で軟化した母材がギャップ34を埋めるだけの余肉容量が必要であり、自由端33A、33B内部空間長Lがボビンツール直径Dの2倍の場合は、直径Dに対応する裏面部位、言い換えれば自由端33A、33Bの裏面の1/3程度がが軟化してギャップ34に進入するために、軟化する部位は余肉が、前記自由端33A、33B側に位置する面板31、32厚みTt、該パネルのリブ39を介して自由端33A、33B内側に位置する中空部の面板31、32厚みt、突き合わせ部のギャップ34幅をGとした場合に、
Tt=t+(3)G
になるように厚み設定されているのがよい。
又自由端33A、33B内部空間長Lがボビンツール直径Dの2倍の場合は、直径Dに対応する裏面部位、言い換えれば自由端33A、33Bの裏面の3/4程度が軟化してギャップ34に進入するために、軟化する部位は余肉が、前記自由端33A、33B側に位置する面板31、32厚みTt、該パネル30A、30Bのリブを介して自由端33A、33B内側に位置する中空部の面板31、32厚みt、突き合わせ部のギャップ34幅をGとした場合に、
Tt=t+(1.3≒1)G
になるように厚み設定されているのがよい。
【0030】
更に、この場合、表面側より裏面側が先に軟化することにより、表面側の平坦度が維持でき、裏面側をギャップ34に進入させる軟化余肉として利用することが可能となる。
そしてこのような裏面側入熱量を表面側入熱量より大にしながら摩擦攪拌接合を行う具体的な手段として、図1、図2若しくは図3の装置を用いて、裏面側押し付け力を表面側押し付け力より大にするか、若しくは図1若しくは図3の装置により裏面側ショルダの回転速度を表面側より大にして、裏面側入熱量を表面側入熱量より大にしながら摩擦攪拌接合がなされるようにして接合させることができ、これにより接合部の継ぎ手構造が突き合わせになっているために、その突き合わせ部にギャップ(隙間)が生じるが、パネル自由端の裏面側(中空部側)の板厚を厚くすることで、継ぎ手部でショルダ面との摩擦熱による入熱により裏面側の軟化した部分が接合ギャップ空間に進入するため、外部から見える表面側は凹部が発生することなく、平坦を維持できる。
【0031】
更に図4に示す装置により裏面側ショルダに内蔵したヒータを利用して前記裏面側若しくは表面側を塑性流動可能な温度域に達するまでの間に摩擦熱以外の熱付与手段で予熱して接合を行ってもよく、勿論これらを組み合わせてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、母材接合部の表裏両面側での入熱量を調整でき、これにより母材をボビンツールを用いて摩擦攪拌接合する際に該摩擦攪拌接合の柔軟性と円滑化を計ることができる。
特に車両、航空機、建物等の大型構造体を製造する際の側構体、床構体、屋根構体等の広幅パネル体の製造に用いるダブルスキンパネル同士をボビンツールを用いて摩擦攪拌接合する際に該摩擦攪拌接合の円滑化とその接合部の表面が平坦な平面状の接合面を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例に係るボビンツールを用いて表裏両面側の押し付け力若しくはショルダの回転速度を独立して制御可能に構成した摩擦攪拌接合装置の第1例を示す全体概略図である。
【図2】 本発明の参考例に係るボビンツールを用いて表裏両面側の押し付け力を独立して制御可能に構成した摩擦攪拌接合装置の第2例を示す全体概略図である。
【図3】 本発明の参考例に係るボビンツールを用いて表裏両面側の押し付け力若しくはショルダの回転速度を独立して制御可能に構成した摩擦攪拌接合装置の第3例を示す全体概略図である。
【図4】 本発明の実施例に係るボビンツールの裏面側ショルダにヒータを内蔵した摩擦攪拌接合装置(A)及び、ボビンツールに冷却機構を設けた摩擦攪拌接合装置(B)を示す全体概略図である。
【図5】 本発明の実施例装置に基づいて、ダブルスキンパネル自由端を突き合わせて広幅パネルを製造する方法を示す概略図である。
【図6】 従来技術に係る摩擦撹拌接合のプローブツールとボビンツールの基本構成図である。
【図7】 従来技術に係る補便ツールを用いた摩擦撹拌接合装置を示す断面概略図である。
Claims (6)
- 裏面押圧部材と表面押圧部材を備え、該押圧部間が可変のボビンツールを用いた摩擦攪拌接合装置において、
前記裏面押圧部材よりの接合面への摩擦入熱付与量と前記表面押圧部材よりの接合面への摩擦熱付与量を夫々独立して調整可能に構成し、
更に前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設けたことを特徴とする摩擦攪拌接合装置。 - 請求項1記載の摩擦攪拌接合装置において、
前記裏面押圧部材よりの接合面への押圧力と前記表面押圧部材よりの接合面への押圧力とを夫々独立して調整可能に構成したことを特徴とする摩擦攪拌接合装置。 - 請求項1若しくは2記載の摩擦攪拌接合装置において、
前記裏面押圧部材の回転速度と前記表面押圧部材よりの回転速度とを夫々独立して調整可能に構成したことを特徴とする摩擦攪拌接合装置。 - 母材接合部を挟んで裏面押圧部材と表面押圧部材を備え、その表面側押圧部材と裏面側押圧部材より夫々摩擦入熱を加えてその接合部の塑性流動により接合を行う摩擦攪拌接合方法において、
前記表面側押圧部材よりの接合部への摩擦入熱付与量と前記裏面側押圧部材よりの接合部への摩擦熱付与量を夫々独立して制御して接合を行うとともに、前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1にヒータを内蔵、若しくは冷却機構を設け、
前記裏面側若しくは表面側を塑性流動可能な温度域に達するまでの間に前記裏面押圧部材若しくは前記表面押圧部材の少なくとも1に内蔵したヒータ若しくは冷却機構により予熱若しくは予冷して接合を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。 - 請求項4記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記裏面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力と前記表面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力とを夫々独立して制御して接合を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。 - 請求項4若しくは5記載の摩擦攪拌接合方法において、
前記裏面側に摩擦熱を付与する押圧部の回転速度と前記表面側に摩擦熱を付与する押圧部の接合面への押圧力とを夫々独立して制御して接合を行うことを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
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