JP4053714B2 - 液晶表示素子および液晶表示素子の製造方法 - Google Patents

液晶表示素子および液晶表示素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、可撓性基板を用いた液晶素子(液晶セルとも言う)、該液晶素子を用いた液晶表示素子、特に、ポリマーフィルムを用いた液晶表示素子および該液晶表示素子を用いた液晶表示装置は、使用条件や保存条件によっては、液晶セル内に気泡が発生し表示品質が損なわれることがあるため、液晶素子、液晶表示素子および液晶表示装置における気泡の発生を防止することにより、それらの信頼性、耐久性などを向上する技術に関する。
【0002】
本発明に関連した従来技術としては、例えば以下のような技術が挙げられる。
1.特開平5−142548(松下電産):変形可能な中空のスペーサーを用いることにより低温時の液晶材料の体積収縮による内部の圧力減少を緩和でき、気泡発生を防止。
2.特開平5−165039(松下電産):液晶注入終了部位を特定化し、そこに気泡溜めを設けて非表示部とし気泡を集める。
3.特開平5−203897(リコー):液晶セルの加圧力を液晶セル内の気泡及び過剰液晶の除去量を最適に出来るように設定する。
4.特開平6−75209(セイコーエプソン):基板にガスバリアフィルムを使用し、セル両端面に接着剤を硬化させてガス、水分の侵入を減少させる。
【0003】
5.特開平8−313889(ソニー):気泡が集まりやすい部分を非画素部分に設け、気泡が発生しても顕在化させないパネル構造。
6.特開平9−101528(セイコーエプソン):プラスチック基板の液晶表示体において、プラスチック基材及びシート材の表面をガスバリヤー性の材料で覆い、気泡発生を防止。
7.特開平9−22003(日本触媒):プラスチックフィルムを用いた液晶表示装置において、耐熱性、可とう性、透明性、耐湿性、耐溶剤性に優れガスバリア性の湿度依存性の極めて小さいガスバリア層をプラスチック基板に設けて気泡を防止。
8.特開平8−304832(シチズン時計):径の小さいガラスファイバースペーサーと径の大きなプラスチックビーズスペーサーの伸縮性の違いを用いて、低温時の気泡発生を防止する。
【0004】
9.特開平7−230090(松下電器産業):カラーLCD、フィルムLCD、プラスチックLCDにおいて、配向膜パターンをシール樹脂に接するように形成し、基板から発生する吸着ガスや水分を抑え、気泡を防止。
10.特開平6−11699(リコー):低温時や機械的衝撃時にも液晶セル内の溶存ガスの気泡化による点欠陥を防止するため、液晶セル内に通常のスペーサの他にポリスチレン系多孔粒子から成るガス吸着材を散布する。
11.特開平6−281941(リコー):スペーサーの分布状態を規定し、セルギャップを均一化することで気泡等の表示不良を無くす。
12.特開平6−186573(リコー):画像表示領域以外の液晶パネル内に液晶の体積変化に追随して基板間隔が変化する領域を設け気泡発生を防止。
13.特開平9−101509(セイコーエプソン):液晶セル内外の圧力を、液晶セル内圧力−液晶セル外圧力≧0の関係にして気泡の発生を防止。
14.特開平8−248436(セイコーエプソン):基板対向部の端部におけるシール部の外側に支持柱を設けて基板の変形量を低減し、気泡の発生を防止。
15.特開平11−119679(リコー):負圧気泡の防止方法。
その他、関連があると思われる従来技術は以下の通りである。
実開平6−10928(シチズン)、特開平6−160866(カシオ計算機)、特開平6−3685(日立製作所)、特開平5−27210(東芝)、特開平10−157774(セイコーエプソン)、特開平7−218921(セイコーエプソン)、特開平8−262455などがある。
【0005】
液晶素子は薄型、軽量でかつ省電力性に優れることから、多岐の分野で利用されている。現在では特に表示素子としての用途が目立っており、携帯用電子機器の表示素子としては、まさにその省電力という特長を十分に活かすものとして利用されている。表示素子または表示装置としての用途以外では、調光手段や大口径の光変調手段としての用途がある。
液晶素子は一般的には2枚のガラス基板の間に液晶組成物を挟みこんだ構成となっているが、基板を透明な可撓性高分子基板、たとえばポリマーフィルムにした場合には、ガラス基板を使用した場合よりも格段に薄型化、軽量化や耐衝撃性が向上し、かつ基板が極端に薄いたために基板厚みによる視差の影響が少ないので表示も明瞭に見えるなど、携帯用途に好適なデバイスとなる。
しかしながら、ポリマーフィルムを基板として液晶素子を作った場合、何らかの外部刺激がきっかけとなって、場合によっては液晶素子内に気泡を発生することがある。この不具合は頻度こそは少ないもののガラス基板を用いた液晶素子でも見られることがある。気泡が発生した部分には液晶が充填されていない状態になってしまうために、その部分は表示が欠落するなど表示品質が著しく損なわれ、液晶素子として機能しなくなってしまう。
【0006】
図1および図2は、従来の一般的な液晶素子の構成例であるが、これら図を用いて前記従来技術の課題を簡単に説明する。
図1および図2において、上基板4および下基板6はシール剤1によって貼り合わされており、その間隔はスペーサー5によって均一に保持されている。液晶組成物7は封入口2から上基板4、および下基板6とシール剤1で形成された間隙の中に導入される。従来技術においては、その後、この封入口2から外気が流入することや、液晶組成物7が流出することを防止するために、封止剤(図1で封入口の位置)と呼ばれる接着剤の一種で封入口2を封止していた。
従来の方法によると、液晶素子(以下、液晶セルという)は周囲環境温度の低下では液晶組成物の体積収縮によって微小な泡状の液晶欠損部(これも広義の気泡と解釈する)が表示品質に欠陥をきたしていた。また、プラスチック基板のような可撓性基板を用いた液晶セルは外部から気体が透過しやすく、あるいは基板やセル内蔵物から出る気体が気泡となって現れやすい。可撓性基板の場合は、液晶セル内に溶存している気体が、外部の温度、気圧や液晶セルへの力学的な力の刺激によって気泡となって顕在化しやすい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
(1)ガラス基板で構成された液晶セルに対する課題
外部からの気体透過性が著しく低いガラス基板で構成された液晶セルの気泡の発現に対しては、特開平5−142548、特開平5−165039、特開平8−313889に見られるように、液晶材料の体積収縮による液晶セル内の急激な圧力減少を緩和する処置をとって気泡を防止したり、発生した気泡の気泡溜めを設けるなどの技術がある。しかしながら、これらの方法では液晶内の溶存気体の制御は、ガラス基板といえども非常に難しい。なぜならば、基板がガラス材料であってもシール剤や封止剤は有機化合物であり、上下基板のシールや封入口の封止の効果は安定的永続的なものではなく、液晶内の溶存気体量は経時的に増加し、ある範囲の安定域で変動を繰り返したり、温湿度等の環境変動に敏感なことは自明である。セル内に気泡溜めを設ける技術は経時的に気泡が拡散する恐れがあり一時的な回避にしかならない。このような対策にあっては液晶セル内の急激な圧力変化の影響を回避することは出来ない。この問題は、可撓性基板を用いた場合にはもっと顕著である。
【0008】
(2)可撓性基板で構成された液晶セルに対する課題
(イ)透明ポリマーフィルムのような可撓性基板を用いた液晶セルでは、特開平6−75209、特開平9−101528、特開平9−22003などに見られるように基板をガスバリア性フィルムとしたり、シール剤表面をガスバリア性の材料で覆うなどの技術があるが、液晶セル内部に発生する気体に対しては防ぎようもなく、ガスバリア性材料が高価であったり、工程が増えるなどコスト面でも問題が多かった。基板内部や部材から液晶セル内部に発生する気体に関しては、特開平7−230090、特開平6−11699に見られるように液晶セル内の溶存気体(ガス)を吸収するような材料を液晶セル内に配置したり、セル構成で吸着ガスや水分を抑制する技術がある。しかしこれらの方法では、セル外部の気体が経年的に侵入してくるとその気体量は多量となり、それに反して数ミクロンのギャップで構成される液晶セルにおいて気体吸着能を有する材料が配置されても微量であり、吸着量には限度があることは自明である。工程上のコスト増加、セルギャップコントロールの困難さが倍加するなど課題が多かった。
【0009】
(ロ)透明ポリマーフィルムのような可撓性基板を用いた液晶セルでは、ガラス基板で構成された液晶セルのように低温時の液晶材料の収縮によって気泡が発生することも問題であるが、常温時や高温多湿時の影響の方が甚大である。基板の変形による液晶セル内の圧力変化によって気泡が発生しやすくなると理解される。このようなセル内部の圧力変化の課題に対しては、特開平5−203897に見られるように液晶セル作製工程において、セル内の圧力や余剰液晶をコントロールして気泡を防止する技術が提案されており、ガラス基板の液晶セルでは特開平8−304832に見られるように低温時の気泡が発生しないようなセル内の変形、圧力変化の防止が提案されている。これらの方法では、工程による変動や、効果を狙う材料の配置方法など、工程に振られることが大きく狙いの作用効果の安定化が難しい。また、特開平6−281941、特開平6−186573に見られるようなセルギャップの均一化や基板間隔の制御によって気泡を回避する方法もあるが、作用効果の永続性の点で問題がある。これらの方法は、セル作製工程での制御をしなければならないため、可撓性基板では一定のコントロールを安定的に実現することは極めて難しい。
【0010】
(ハ)可撓性基板を用いた液晶セルでは基板の変形によるセル内部の圧力変化に着目し、基板の変形を規制したり、セル内圧力をセル外圧より大きくするなど、特開平8−248436、特開平9−101509に技術が提案されている。しかし、これらの方法では、液晶セル毎に基板間の距離のばらつきを解消することが出来ず、表示むらなど量産時の歩留りが低下するだけでなく、微小なギャップをもつ液晶セル内の圧力を正確に把握し、セル外圧との差をコントロールすることは非常に難しい。特開平9−101509では、液晶セルが力学的な無負荷状態においてのセル内外の圧力関係を規定するもので、製造時には所望の目的を達せられても、基板の吸水による変形や張力の変化が経時的にあるため永続的なセル内外の圧力制御は困難である。特開平11−119679では外部から液晶セルを押圧して、セル内の負圧を回避する方法であるが、液晶セル全面にわたってまんべんなく押圧されているわけではなく、セルギャップの均一性や押圧の均等性に問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明の第1の目的は、液晶表示素子において気泡発生を液晶素子(セル)内外の圧力差やその変動に関係なく、いかなる環境的変化においても確実に気泡の発生を抑制することにある。
【0012】
本発明において、「大気圧」とは、一般名詞的に使われる場合の760Torr(101080Pa)を指すのではなく、その時々のセル外部の気圧(外気圧)という意味で使用される。
【0013】
本発明の第2の目的は、液晶表示素子において表示品質を低下させることなく気泡の発生を簡便に抑制することにある。
【0014】
本発明の第3の目的は、液晶表示素子において表示品質を低下させることなく気泡の発生を簡便に抑制することにある。特に、液晶表示において液晶表示素子と外部の透明基板との微小な空隙を均一化し全体あるいは部分に発生する光学的干渉を防止し表示を見やすくすることにある。
【0015】
そこで、本発明の第1は、上下基板の間に液晶組成物が充填されて成り、かつ液晶素子の全体またはその一部に対し、該素子内部の圧力が常に大気圧より大きくなるように外力を印加する部材を有する液晶表示素子において、外力を印加する部材が、液晶素子を収納する筐体内に設置され、かつ該素子と接触しており、液晶素子表示面と透明部材からなる筐体面とは対向して構成され、かつ該液晶素子表示面と透明部材からなる筐体面の空隙には透明スペーサーが設置されており、前記透明部材や液晶素子表示面の最表面の構成部材と同等の屈折率をもつ物質で充填されていることを特徴とする液晶表示素子に関する。
【0016】
本発明の第2は、外力を印加する部材が復圧可能な圧縮性材料からなることを特徴とする請求項 1 記載の液晶表示素子に関する。
この発明は、液晶表示素子の表示品質を低下させることなく気泡の発生を簡便に抑制することを目的とする。特に、液晶表示において液晶表示素子と外部の透明基板との微小な空気層を排除して光学的干渉を防止し表示を見やすくすることを目的とする。
【0017】
本発明の第3は、上下基板のうち少なくとも一方がポリマーフィルムからなることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子に関する。
この発明は、気泡の発生を回避すると同時に、携帯性、視認性、耐衝撃性に優れた液晶素子を提供することを目的とする。
【0018】
本発明の第4は、液晶表示素子の組立最終工程で、請求項1〜3いずれか記載の液晶素子の全体またはその一部に対し、該素子内部の圧力が常に大気圧より大きくなるように外力を印加する工程を行うことを特徴とする液晶表示素子の製造方法に関する。
この発明は、液晶表示素子製作工程の工程影響を排除し、最終的に簡便な方法で液晶表示素子の気泡発生を抑制することを目的とする。
【0019】
本発明を説明するために、本発明者らが実験、考察により知り得た事実についてまず説明する。
従来の方法によると、液晶素子は環境温度の低下では液晶組成物の体積収縮によって微小な泡状の液晶欠損部(これも広義の気泡と解釈する)が表示品質に欠陥をきたしていると理解される。また、ポリマーフィルム基板のような可撓性基板を用いた液晶セルは外部から気体が透過しやすく、あるいは基板やセル内蔵物から出る気体が気泡となって現れやすい。
可撓性基板の場合は、液晶セル内に溶存している気体が、外部の湿度、気圧や力学的な力の刺激によって気泡となって顕在化しやすい。発明者らは多岐にわたる実験や考察を通じて、液晶セル内に発生する気泡の原因として以下のことを見いだした。
【0020】
(A)液晶セル中に気体が気泡として顕在化するほどにはその気体が存在し得ない場合、すなわち、ガラス基板で構成された液晶セルのように外部からの気体透過性が低いもの(=ガスバリア性が大きいもの)は、温度低下によって液晶組成物の急激な体積収縮によって気泡が出る。
(B)気体透過性が比較的大きい基板を使った液晶セルでは、経時的に液晶セル内の気体存在量(溶存量)が増加し、液晶組成物に溶解した気体がある限度(飽和溶解度)を越えた過飽和状態になると、外部の力学的刺激によって気泡の核となる「気泡核」が発生し成長するという事実がある。
【0021】
本発明者らの実験、観察結果による結果を図3に示す。
可撓性基板を用いた液晶表示素子は外気圧が大気庄より低い状態、いわゆる減圧下では気泡が発生しやすいこと、高温下あるいは高湿下でも気泡が発生しやすい傾向がある。高温、高湿下では液晶セルを構成する基板のガスバリア性が低下するからである。このような事実に鑑み、基板の種類と液晶セル外部圧力を変えた場合の気泡の消滅時間を評価した。基板Aは基板Bに比べて著しくガスバリア性がよく気体透過が少ない基板である。基板Aは例えば、ポリカーボネートのべースフィルムに無機材質の透明薄膜をガスバリア層とし、その他の処理層を積層した基板である。基板Bは有機薄膜のガスバリア層やその他の処理層を積層した基板である。
【0022】
図3の実験では、液晶セル内部の圧力は直接計測することが難しいので、液晶セル外部圧力を変化させて気泡が消滅するまでの時間を測定した。ガスバリア性が乏しいB基板を用いたものは、液晶セル内部や液晶内に溶存する気体量が多いためセル外気圧を大気圧より小さくすると気泡が簡単に発生し安定して消えない。これは上記の(B)を反映したものである。ガスバリア性に優れた基板Aを用いた液晶セルは、気泡は消滅するが、セル外部の圧力が大気圧より低い場合には消滅までに時間がかかる。図3の示すところは、液晶セル内の圧力が外気圧より低く、液晶内の気体溶存量が多いほど、気泡が発生しやすく安定して消滅しにくくなることである。
【0023】
本発明者らは上記の実験事実を基にして、液晶セル内の気泡の消長を支配する力学的関係式を下記式(1)のように導出した。
【数1】
f=−Pi−Ps+Pb ……(1)
上記式(1)では、fは液晶内の一個の気泡に加わる力であり、fが正の値をとれば、気泡は拡大する。fが負の値をとれば気泡は収縮消滅し、fがゼロであれば気泡は拡大もせず、消滅もせず安定化する。Psは気泡に加わり気泡を収縮させようとする表面張力の項であり、常に正の値をとる。Psは気泡が目に見えるほど大きい場合は、右辺の他の項に比べて無視出来るほど小さい。Pbは気泡を膨張させようとする圧力で常に正の値をとり液晶内の溶存気体量が多いほど大きくなる。Piは外気圧Poとセルを構成する部材が有する力Pcとの差であり、Piはセル内部の液晶に加わる圧力となり、Piが正の値であれば気泡を収縮させる方向に働く。Piは正または負の値をとる。すなわち、下式(2)で表される。
【0024】
【数2】
Pi=Po−Pc ……(2)
前式(2)を説明したものが図6である。液晶内の1つの気泡について、ある程度大きいものは力Psが無視出来るので、PiとPbのバランスで成長したり消滅したりする。従って液晶内の溶存気体が少なくPbの作用が小さくてもPiが負の値で大きければ、fは全体として正の値をとり気泡は拡大(膨張)する。このようにみると、基板のガスバリア性を高めるだけでは気泡の根本的な防止には至らないことがわかる。セル内の圧力Piを負の値にしないように保持する方が得策である。しかし、発明者らが用いたポリマーフィルム基板を用いた液晶表示素子はSTN液晶を用いた場合には、セルギャップを均一に保つ必要性からセル内圧力を負の値に保持したものであり、そのために外部刺激によって気泡が発生しやすくなっている。このような液晶の場合、(Po−Pc)を調整して常に正の値に維持することは実際には非常に難しく、特開平9−101509に提案されているようなセル内外の圧力の関係を規定する、すなわち無負荷状態でセル内部とセル外部の圧力の大小を規定するだけでは気泡の発現を防止できない。実際には工程上の操作によってセル内外の圧力関係を規定し、セルギャップの均一性を保ったり、基板の力を制御してPiを常に正の値に保つことは至難である。
【0025】
本発明は液晶表示素子製造後、図7に示されるように、この素子を筐体や保護ケースに組み込む際に、外部から強制的にセル内部圧力Piよりは大きい外力Foを常に印加し、その反作用力Fiによってセル内部の圧力を総合的に正の値に保ち、液晶中の溶存気体が過飽和であっても気泡の発現を防止するものである。Fiは気泡に対しては収縮する方向に作用するので常に正の値をとる。本発明によれば、1つの気泡に着目したとき、気泡に係わる力学的関係式は下式(3)で表される。
【数3】
f=−Pi−Fi−Ps+Pb ……(3)
前式(3)でPsの項は無視できるほど小さく、FiはPiおよびPbよりも絶対値が格段に大きい。そのため、Piがたとえ負の値となっても、fは全体としては負の値になるので気泡は消滅する方向になる。
【0026】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0027】
実施例1
本発明の実施例を図4および5に示す。両方の図で、13は少なくとも一方の基板がポリマーフィルムからなる液晶表示素子(以下、素子ともいう)である。これらのポリマー基板は例えばPC、PET、PESなどのベースフィルムにガスバリア層、表面処理層などが施されたもので厚さは120μm程度であり、可撓性を持っている。これらの基板には透明電極が形成され、基板に囲まれた閉空間には液晶組成物や液晶を配向させるための配向膜、基板間のギャップを均一に保つためのスペーサー、閉空間を密閉するためのシール剤などの構成要素が使われる。液晶組成物にはTN液晶やSTN液晶が多く使われるが、本発明の中では液晶組成物の種類が限定されるものではない。
【0028】
製造された素子13は、最終的に保護ケースや装置に組み込まれるが、素子の外部を取り囲むことで表示機能や素子の保護をおこなう。8は上部ケース、9は下部ケースである。この時に、ケースを上下2つに分け、ケース嵌合部10において嵌合出来るようにしておき、ケース内部には素子の表示部とは対向する側の一部または全体に接するようにケース内の空隙を埋める部材を配置し、かん合後に素子に外力が加わる構成になっている。液晶素子を収納する筐体などの内部には外部環境の影響を軽減するため、更にシリカゲルや吸水性ポリマー材などの水分・ガス吸着物質を配置することも有効である。
図4では基板全面に、図5では素子の非表示部に限定して外力を印加しておりバックライト(補助照明装置)を使う場合は図5のような配置にしている。
【0029】
実施例2
図4及び図5に示されるように素子の表示側には素子の保護のためガラス板、ポリカーボネートフィルムやシート、透明アクリルのシートなど透明部材11が配置されている。安全性と耐衝撃のためプラスチック部材が望ましいが限定されたものではない。透明部材は表示窓となるとともに、外部環境からの温度及び湿度、機械的刺激の保護の役目も果たす。そのため、素子内部への気体や水分の透過を最小限に防ぎ、気泡の未然の防止にも役割を果たす。ICカードのような薄いデバイスを使用する場合は、透明部材は気体透過性の小さいフィルムシートとした構造が望ましい。
【0030】
素子と透明部材11の間には空隙の厚さの不均一による表示不良を避け、素子全体に均一な外力を常に印加できるようスペーサー12が適切な面密度で散布され、望ましくは30個/mm以上の分布密度で散布する。スペーサー12は透明質のプラスチックやシリカのビーズが使われ、平均粒径はおおよそ6〜7μm程度である。プラスチックビーズはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などが適切な材料である。これらのスペーサーは印加する外力を均一化し永続的に素子に外力を与えるだけでなく、素子と透明部材11の間のギャップ不均一で生じる光学的な干渉縞など表示不良を回避する。また、上記スペーサーは空隙の均一化、外力の均一化に効果があったが、表示品質を更に良くするために、該空隙を透明部材や液晶素子表示最表面の部材と同等の屈折率をもつ物資、たとえばグリセリン剤を塗布充填して使用した。
【0031】
実施例3
図4および5に示されるように、圧縮性部材14は素子の表示部と対向する面の一部または全部に接するように配置される。この圧縮性部材は復圧可能な材料であり、外部への放出ガスが少ないバイトン系のゴム弾性材料やバネ部材でも良い。本実施例では、ケースは嵌合部を設けて固定する形態であるが、これに限定したものではなく、ビスやクランプで上下ケースを合わせる方法でも素子に外力を印加するに十分である。
【0032】
実施例4
従来では、液晶表示素子の気泡を製造時および使用時に防止するために、細心の注意を払って設計や工程の吟味をおこなってきたが、それでも気泡の発現は防止できなかった。また、適切な材料を用い標準的な工程設定で製造された液晶表示素子、たとえば、ポリカーボネート(PC)フィルムをべースフィルム基板とし、液晶をSTN型にした表示素子を作り、外部ケースに入れて常に素子に外力を印加している表示装置Xと、ケースには収納するが素子に強制的に外力を印加せず、素子の製造工程において基板が有する変形力やギャップ制御を入念におこない液晶セル内部圧力を負の値にしないように調整して作った表示装置Yをそれぞれ10台製造した。これを加速試験のため60℃、90%RHの環境下で240時間保存し、気泡の出現状態を評価した結果、Xのタイプの表示装置は気泡が確認されたものは1つもなく、一方Yのタイプの表示装置では10台中に8台に目視出来る気泡の集団が多数観察された。
【0033】
【効果】
1.請求項1の効果
(1)液晶素子内部の液晶に力の作用を及ぼし、液晶内に溶存する気体が過飽和状態になっている場合でも、定常的かつ強制的に液晶表示素子に外力を印加できるため液晶セル内部の圧力を絶対的に正の値とすることができたため気泡の発生を抑制し、発生した場合でも速やかに消滅させる作用をもった液晶素子が提供される。
(2)液晶表示素子を収納する筐体、保護ケース、フィルム等と液晶表示素子間の力学的作用・反作用を利用して液晶表示素子内部の液晶に確実に外力を定常的に印加することができた。そのため液晶セル内部の圧力を絶対的に正の値とすることができたため気泡の発生を抑制し、発生した場合でも速やかに消滅させる作用をもった液晶素子を所望の装置に組み込むことが可能となった。
(3)ケース等の筐体への組み付け後に圧縮性部材の復圧力を使用することで非常に簡便に、液晶表示素子全体へ外力を定常的に印加することができるため、気泡の発生を防ぐことが出来た液晶表示素子が提供される。
【0034】
2.請求項2の効果
液晶表示素子と透明部材の間の間隙を制御でき、ニュートンリング等の光学的干渉を除去出来たため、ケース等の筐体収納後においても液晶素子の表示品質、表示機能を確保することが出来た液晶表示素子が提供される。
3.請求項3の効果
ポリマーフィルムを用いることによって、軽量で携帯性に富み、耐衝撃性や安全性に優れ、さらに気泡が発生しない液晶表示素子が提供される。従来では、対応できなかったICカードの表示部への掲載など新規な表示装置への組み込みが可能となった。
4.請求項4の効果
従来は設計や材料・プロセス技術、工程において細心の注意をしても気泡の発生を根絶することは出来なかったが、本請求項の発明では標準的な工程設定で製造された液晶表示素子であっても、最終的に装置に組み込む段階で、非常に簡便な構成、機構で永続的に気泡の発生を回避することができ、外部環境のいかなる変動においても対処できる液晶表示素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液晶表示素子の概要図(平面図)である。
【図2】従来の液晶表示素子の断面図である。
【図3】基板種類とセル外部圧力の差による気泡の依存性を示す図である。
【図4】実施例1の液晶表示素子の構成を示す図である。
【図5】実施例1の液晶表示素子の他の構成を示す図である。
【図6】セル内部の圧力Piが負圧の場合に気泡が成長する様子を模式的に表現した図である。
(a)セル内部の圧力が負圧の場合、押圧などの刺激によって気泡の核が発生する状態を示す図である。
(b)液晶中の溶存ガス(気体分子)が小さい気泡に侵入し、気泡を拡大する状態を示す図である。
(c)(b)の状態より、さらに気泡中にガス分子が侵入し、気泡が拡大する状態を示す図である。
【図7】液晶セル内の気泡の発現を防止する原理を説明した図である。
【符号の説明】
Fi セル内部圧力Piより大きい外力Foを印加した場合に生ずる反作用力
Ps 気泡に加わり気泡を収縮させようとする表面張力
Pb 気泡を膨張させようとする圧力
Pi セル内部圧力
Pc セルを構成する部材が有する力
Po 外気圧
Fo 外部から強制的に印加するセル内部圧力Piよりは大きい外力
1 シール剤
2 封入口(封入剤)
3 基板
4 上基板
5 スペーサー
6 下基板
7 液晶組成物
8 上部ケース
9 下部ケース
10 ケースかん合部
11 透明部材
12 スペーサー
13 液晶表示素子
14 圧縮性部材
15 液晶表示素子非表示部

Claims (4)

  1. 上下基板の間に液晶組成物が充填されて成り、かつ液晶素子の全体またはその一部に対し、該素子内部の圧力が常に大気圧より大きくなるように外力を印加する部材を有する液晶表示素子において、外力を印加する部材が、液晶素子を収納する筐体内に設置され、かつ該素子と接触しており、液晶素子表示面と透明部材からなる筐体面とは対向して構成され、かつ該液晶素子表示面と透明部材からなる筐体面の空隙には透明スペーサーが設置されており、前記透明部材や液晶素子表示面の最表面の構成部材と同等の屈折率をもつ物質で充填されていることを特徴とする液晶表示素子。
  2. 外力を印加する部材が復圧可能な圧縮性材料からなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子。
  3. 上下基板のうち少なくとも一方がポリマーフィルムからなることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子。
  4. 液晶表示素子の組立最終工程で、請求項1〜3のいずれか記載の液晶素子の全体またはその一部に対し、該素子内部の圧力が常に大気圧より大きくなるように外力を印加する工程を行うことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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