JP4051949B2 - 湾口の水門施設 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比較的大規模な港湾などの出入口に配置される水門施設に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
大規模な港湾施設などにおいては、異常高潮位が生ずる期間や、これと台風などが重なって生ずる湾内の水害を未然に防止するために、湾口に水門施設を設け、これを一定期間閉じるようにする場合がある。
【0003】
この種の大規模水門施設は、その湾口を通過する船舶の大きさやマスト高さに制約を設けることができないため、例えば河口や取水堰など、小規模な水門施設に見られる門型支持構造物に支持させた門扉を昇降して開閉する構造は採用できず、従来では専ら旋回方式による開閉構造が採用されている。
【0004】
図9は従来の旋回式水門施設を示すものであり、湾口を所定の航路幅Wに仕切って両側に構築された一対の護岸1と、両護岸1にそれぞれ左右対称に配置され、海底面に設けられた旋回ガイド2に沿って扇形の軌跡で移動可能な複数の門扉3と、護岸1上に軸止されるとともに、各門扉3に連結した複数の旋回アーム4とからなっており、(a)に示すように、通常の解放状態では、各門扉3は護岸1上に格納され、湾口閉塞時には、各アーム4を適宜な駆動機構によりその軸止点4aを基点に旋回させることによって、各門扉3は湾口の中央側に向けて展開しつつ移動し、(b)に示すように、航路幅Wの中央で互いに突合わされることで、湾口を閉塞する構造となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この構造の水門施設では、航路幅Wが例えば200〜400mときわめて幅広の場合には、門扉3に大きな断面力が生ずるため、大断面かつ大重量の門扉が必要となり、これを開閉するのための設備も大規模かつ大動力を必要とし、開閉に多大な時間を要していた。また、特に門扉3を旋回駆動するための各アーム4の強度や軸止点4aの強度も大がかりなものとなり、そのために軸止点4aを支持するための基礎構造も大規模となっていた。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決するものであって、その目的は規模の割には軽量にでき、簡易な動力設備により容易かつ短時間で門扉の開閉を行えるようにした水門施設を提供するものである。
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、湾口を所定の航路幅で仕切る一対の護岸の間にあってその海底面に密集して所定配列で沈埋された複数の基礎と、各基礎内に設けた縦ガイドに沿って昇降可能に格納された門扉と、各門扉を昇降させるための駆動機構を備え、上昇位置で前記各門扉が護岸間の水面上に直線配列されて湾内外を仕切る湾口の水門施設であって、前記門扉が底面開口した中空函体からなり、その上部には遠隔操作により開閉される開閉弁を備える一方、前記基礎には前記縦ガイドの下部空間に連通する空気導入路及び水抜き路を形成したものであり、前記門扉の閉鎖時には、前記開閉弁が閉じられている状態で前記空気導入路を通じて空気を門扉の下部よりその中空内部に供給しつつ水抜き路を通じて水を外部に排出することで、門扉に浮力を生じさせて上昇させるとともに、格納時には、前記開閉弁をあけることで空気を排出し、自重により沈下格納するものであり、前記門扉には、当該門扉が所定の上昇位置にあるときに海底面直上に位置する孔が設けられていることを特徴とするものである。したがって、本発明では、湾口閉鎖時においては複数の門扉が海底面からせり上がり海上にその姿を現した状態で湾口を閉塞するため、門扉一つあたりの駆動動力が小さくてよく、大がかりな駆動設備が不要となるとともに、門扉を軽量にでき、エアコンプレッサなどの空気圧により動作されるため、簡易な動力設備で容易かつ短時間で開閉を行うことができ、さらに、門扉に余剰浮力が生じた場合に余剰空気を孔から排出させることができる。
【0009】
また、本発明では、前記縦ガイドの下部空間より門扉に水圧を加えることによりピストン押出し式に門扉を上昇させる構成も採用できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る水門施設の平面図及び正面図を示す。この水門施設は湾口位置における一対の護岸10の間において、4つのケーソン(門扉基礎)12を湾口の航路幅W一杯に直線配列して海底面に沈埋し、各ケーソン12の中央に門扉ユニット14を昇降可能に直線配列したものであり、水門閉鎖時においては、各門扉14はわずかな隙間を設けて護岸10と同一高さに上昇し、一直線に配列される。
【0012】
なお、隣合う各ケーソン12間は図示しない止水用のゴムにより水密に接合され、また、隣合う門扉ユニット14間には水門閉鎖時に図示しない止水板が密着配置され、各隙間を閉鎖するとともに、妻側門扉14ユニットと護岸10との間は水圧により膨張収縮する漏水防止ゴム16が介在され、これによって水門閉鎖時に湾内外を水密に仕切るようにしている。
【0013】
各ケーソン12は、図2〜図4に拡大して示すように、中央に3列、その両側に2列筒の合計6つの円筒型シェルを一体化したハニカム形状であり、両側に2つずつ配列されたシェルを全体の支持ユニット12aとし、中央に配列された3つのシェルを門扉14のガイドユニット12bとしてそれぞれの内部に門扉14aを昇降可能に配置し、この3つの門扉14aで一つの門扉ユニット14を構成している。
【0014】
各ガイドユニット12bは、特に図4に示すように、門扉14aを昇降可能に格納した中空の縦ガイド18と、縦ガイド18の左右に配置され、これの下部空間に連通する空気導入路20及び水抜き路22とからなっており、空気導入路20及び水抜き路22の上部位置におけるガイドユニット12bの肩部にはそれぞれ電磁弁24,26が設けられている。
【0015】
空気導入路20用の電磁弁24は、例えば、海底をはわせた高圧ホースを介して陸上部に設けたエアーコンプレッサに接続され、通常時にはこのエアーコンプレッサの駆動により生じた圧力空気を縦ガイド18内に送ることによって、内部に空気を満たし、門扉14aに浮力を生じさせて上昇動作させる。
【0016】
また、水抜き路22用の電磁弁26は単なる開閉により海中に連通するほか、図示しないバイパス弁及びホースを介して陸上部に設けた送水ポンプに接続し、空気圧によって門扉14aが上昇しない場合などの非常時において、水圧を縦ガイド18内に作用させることによって門扉14aを強制上昇動作させる機能も兼用している。
【0017】
門扉14aは下面が開口した内部中空の鋼板製函体であり、その上部に同じく開閉用の電磁弁28を備えているほか、後述する上昇位置規制用のラッチ機構及び側面に設けた余剰空気の排出孔などを備えている。
【0018】
以上の電磁弁24,26,28はケーブルを介して地上の管理棟に設けた制御盤などに接続されている。
【0019】
以上の門扉ユニット14は、通常状態では海底面に格納され、異常高潮位時期やこれと台風が重なった時期に、図5,6に示す手順で閉鎖が実行される。なお、図5は格納状態から上昇、閉鎖完了から再格納までの門扉14aの状態を示し、また図6は実行手順を示すフローチャートであり、各手順における経過時間も併記している。
【0020】
まず、図6において、水門閉鎖が必要であると判断されたことをスタートとして、最初に水門浮上予告警報が発令される。これは湾内に設けたサイレンや電光掲示板によってなされる。これと同時に船舶運行管理者、関係機関への通報がなされる。
【0021】
次いで、水面の安全確認がなされる。これは現時点で湾口を通過する船舶などの有無の確認を行うもので、目視レーダなどによって行われる。
【0022】
安全確認後、水門浮上警報が発令される。これも同じく電光掲示、またはサイレンなどによる。
【0023】
次に、門扉ユニット14の近傍に沿って空気浮上形水中ネットの展張作業がなされる。これは門扉浮上位置を表示するために設けられ、作業時における船舶の不用意な進入を防止する。
【0024】
その後両端部の門扉ユニット14の浮上作業がなされ、次いで中央部の門扉ユニットの浮上作業がなされ、最後に妻部の漏水防止ゴム16に注水を行い、護岸10との間を水密に封鎖することで、水門閉鎖作業を完了する。
【0025】
以上の一連の作業は2分毎に行われ、作業開始から閉鎖作業までの経過時間は10分ときわめて短時間のうちになされることになる。
【0026】
これら一連の作業のうち、門扉14aの浮上作業は、図5(a)に示すように、管理棟30からの制御操作により、門扉14aの電磁弁28を閉とし、空気導入路20及び水抜き路22の電磁弁24,26を開とし、エアーコンプレッサを駆動することで、空気を門扉14aの中空内部に導入し、内部の水を水抜き路22を通じて外部に排出すると、門扉14aは予備浮力が生じ、その結果、(b)に示すように縦ガイド18に沿って上昇する。
【0027】
そして門扉14aが予定高さまで浮上したら、(c)に示すように、前述するラッチ機構32により門扉14aをその位置にロックする(門扉14aの抜け出しを防止するためラッチ機構に代えて他の機構を採用することもできる)。この位置には余剰空気の排出用小孔34があけられており、余剰浮力が生じた場合には、ここから海中に排出される。以後圧力センサの検出結果に応じて、わずかながら浮力状態を保てるようにコンプレッサを駆動制御することで、門扉14aを閉鎖位置に保持できる。
【0028】
なお、例えばかじり込みなど、何らかの原因によって門扉14aが浮力によっては上昇操作できない場合には、非常用としてバイパスバルブを介して送水ポンプに接続し、その水圧によりピストン押出し式に上昇させることも可能である。
【0029】
次に、閉鎖状態から、水門開放までの手順を図7を用いて説明する。まず、異常高潮位時期が過ぎ去ったことを判断した時点をスタートとして水門開放予告警報が発令される。これは前記と同様湾内に設けたサイレンや電光掲示板によってなされる。同時に船舶運行管理者、関係機関への通報がなされる。
【0030】
その後、水面の安全確認がなされる。この場合の安全確認は、門扉上の人の有無や船舶などの接舷の有無であり、前記と同様に目視レーダなどによって確認がなされる。その後水門格納警報がなされ、引続き漏水防止ゴム16に対する排水がなされ、左右門扉ユニット14と護岸10との間を縁切りする。
【0031】
次いで、中央部門扉ユニット14の沈設作業と、これに引続く左右門扉ユニット14の沈設作業及び水中ネットの格納作業により、水門の解放作業が完了する。その後は、水門開放警報を発し、その後船舶運行管理者、関係機関への通報がなされることで、全ての作業を完了する。以上の作業も実際の作業開始から完了まで10分間ときわめて短時間で行われる。
【0032】
これら一連の格納作業のうち、門扉14aの下降動作は、図5(c)に示す閉鎖位置に保持されている状態からラッチ32を掛けはずし、管理棟30からの制御操作により、門扉14aの電磁弁28を開とし、空気導入路20の電磁弁24を閉及び水抜き路22の電26を開とすることで、(d)に示すように、門扉14a内に溜められた空気は抜け、予備浮力を失って門扉14aは下降する。そして、(e)に示すように、門扉14aが着底した時点で各電磁弁24,26,28を閉じれば、門扉14aは満水状態で格納状態に保持される。
【0033】
なお、図示はしていないが、門扉14aの昇降動作と連動して起伏し、門扉14aの上昇時に隣り合う門扉14a間を覆ってこれを止水する止水板を配置することもできる。この止水板は、門扉14aの下降動作と連動して、海底上に倒伏する。門扉14a及び止水板の対向面には、いずれかに例えばゴム製のシール材を配置することが好ましい。
【0034】
図8は門扉の他の実施形態を示すものである。なお、前記実施形態と同一箇所には同一符号を付し、異なる箇所にのみ異なる符号を用いて説明する。図において、この門扉40は3段のテレスコピック構造となっていて、門扉下部40aの内側に昇降可能に設けられた門扉中部40bと、門扉中部40bの内側に昇降可能に設けられた門扉上部40cとからなっており、それぞれの上昇上限位置にストッパが配置されているとともに、図示しないラッチ機構などにより上昇位置でロックされる構造となっているほかは前記実施形態と同様である。
【0035】
本実施形態では、ケーソン12の沈埋深さが制限されたり、海底から海水面までの高さが高い場合に好適である。
【0036】
なお、以上の各実施形態では、門扉開閉駆動用として空気圧を用い、空気の注入排出により、浮力を増減させて門扉を昇降させるようにしたが、他の機械的手段によっても昇降させるようにできることは言うまでもない。また、水圧利用によるピストン押出し式は非常用の補助手段として利用したが、この駆動方式をメインに利用することも可能である。
【0037】
さらに、以上の電磁弁の制御系やコンプレッサ、送水ポンプなどの電源などは二系統とし、商用電力利用のほかに、自家発電により得られた電源を駆動源とすることも可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明による湾口の水門施設にあっては、従来の旋回方式による水門施設に比べて規模の割には軽量にでき、簡易な動力設備により容易かつ短時間で門扉の開閉を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る水門施設の全体構成を示す平面図及び正面図である。
【図2】同水門施設に用いられるケーソンの1つを示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図2のB−B線断面における門扉上昇時及び格納時の状態を示す図である。
【図5】(a)〜(d)は門扉の浮上から閉鎖及び格納までの状態を示す説明図である。
【図6】水門閉鎖時の実行手順を示す流れ図である。
【図7】水門解放時の実行手順を示す流れ図である。
【図8】他の実施形態における門扉上昇時及び格納時の状態を示す断面図である。
【図9】(a),(b)は従来の旋回式水門の解放時及び閉鎖時の平面説明図である。
【符号の説明】
10 護岸
12 ケーソン
12b ガイドユニット
14 門扉ユニット
14a 門扉
18 縦ガイド
20 空気導入路
22 水抜き路
24,26,28 電磁弁
30 管理棟
40 テレスコピック式門扉
W 航路幅

Claims (2)

  1. 湾口を所定の航路幅で仕切る一対の護岸の間にあってその海底面に密集して所定配列で沈埋された複数の基礎と、各基礎内に設けた縦ガイドに沿って昇降可能に格納された門扉と、各門扉を昇降させるための駆動機構を備え、上昇位置で前記各門扉が護岸間の水面上に直線配列されて湾内外を仕切る湾口の水門施設であって、
    前記門扉が底面開口した中空函体からなり、その上部には遠隔操作により開閉される開閉弁を備える一方、前記基礎には前記縦ガイドの下部空間に連通する空気導入路及び水抜き路を形成したものであり、
    前記門扉の閉鎖時には、前記開閉弁が閉じられている状態で前記空気導入路を通じて空気を門扉の下部よりその中空内部に供給しつつ水抜き路を通じて水を外部に排出することで、門扉に浮力を生じさせて上昇させるとともに、格納時には、前記開閉弁をあけることで空気を排出し、自重により沈下格納するものであり、
    前記門扉には、当該門扉が所定の上昇位置にあるときに海底面直上に位置する孔が設けられていることを特徴とする水門施設。
  2. 前記縦ガイドの下部空間より門扉に水圧を加えることによりピストン押出し式に門扉を上昇させるものであることを特徴とする請求項1に記載の湾口の水門施設。
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