JP4050552B2 - Cdma受信機の受信を改善する方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル伝送、例えば、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)のようなディジタル移動無線システムに関し、特に、データを取得するために必要なパラメータの受信端推定を改善する方法と、その方法を実行するのに適応したCDMA(符号分割多元接続)方式の受信機とに関する。
【0002】
【従来の技術】
この分野の当業者にはよく知られているように、パラメータ推定法の例には、変調器と復調器の間の周波数オフセット(これは後で補償される)を推定する方法や、例えばチャネル歪みを除去するようにRAKE受信機の係数を設定するために必要なチャネル推定法がある。RAKE受信機をよりよく理解するためには、特に、A. J. Viterbi, "CDMA", Addison-Wesley, Reading, Mass., 1995、を参照。この刊行物の内容はすべて、本願明細書の内容の一部とみなされるべきである。
【0003】
具体的には、例えば移動無線チャネルによる分散性チャネルを通じてのディジタル伝送の場合、送信信号はノイズによって歪みおよび擾乱を受ける。チャネル歪みは、送信データを取得するための特殊な考え方を必要とする。例えば、GSMシステムで用いられているように、TDMA(時分割多元接続)伝送では、ビタビアルゴリズムを利用した受信端系列推定が実行される。第3世代移動無線システム(例えば、UMTSシステム)で行われるように、伝送がCDMA(符号分割多元接続)法を用いて行われる場合、取得は例えばRAKE受信機によって可能である。より複雑ではあるが、より強力でもある方法は、具体的には、マルチユーザ検出に基づくものである。この点に関して補足的な文献として、S. Verdu, "Multiuser Detection", Cambridge University Press, Cambridge, 1998、を参照。
【0004】
受信方法は通常、チャネルパルス応答の推定値を必要とする。ほとんどのCDMAシステムでは、この目的のために、既知のパイロットシンボル(これに対応する受信値が、推定を実行するために使用可能である)が受信機へ送信される。文献における多くのチャネル推定法はこの考え方に基づいている。
【0005】
RAKE受信機やマルチユーザ検出の電力効率は、チャネル推定値の品質によって大きく影響される。その結果、CDMAシステムは、システム全体の所要容量と伝送品質を達成するために、適応的電力制御の利用に強く依存する。この場合における「電力制御」という用語は、フェージングに反応するための高速な電力制御と、例えばデータレートの変更の場合に必要とされる送信電力の長期的適応との両方を包含する。
【0006】
現存のすべてのCDMAシステムでは、このような電力制御をブロックごとに行うのが通常であり、送信電力がそれぞれの場合に個々のシンボルブロックでは一定に保持され、ブロックどうしの間では不連続に変化するようにしている。
【0007】
これにより、各チャネル推定値は相異なるブロックからの受信値によって一般に影響され、電力制御を有するシステムでは相異なる電力レベルがブロックごとに割り当てられるため、異なる送信電力レベルを有するシンボルを組み合わせる必要が生じる。これらの相異なる送信電力レベルが明示的に考慮されない場合、チャネル推定結果の品質の低下につながりうる。しかし、この問題点は、従来技術のシステムでは無視されるか、あるいは、この不連続性により引き起こされるチャネル推定の明白な劣化が容認されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来技術の上記の問題点、特に上記の劣化を回避することである。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、特に電力制御を有するCDMAシステムの場合において、従来技術による方法を利用するときよりも高い品質の推定値を保証し、同時に、システム実装の複雑さの実質的増大をおおむね回避する、効率的な方法を示すことである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明による解決法は、請求項1、14および18の特徴的構成をそれぞれ有する方法、CDMA受信機および実装プログラムによって提供される。
【0011】
有利な、あるいは、好ましい実施例が、それぞれの従属請求項の内容である。
【0012】
できる限り効率的なパラメータ推定法の目的のため、特にCDMA伝送の場合にチャネルパルス応答を推定する目的のため、本発明は、複数の受信ブロックの相異なる電力レベルをパラメータ推定値について等化することができるための補正ファクタを推定する。これにより、パラメータ推定値の受信信号における不連続な変動は、電力制御ファクタを推定し補償することによって回避することができる。
【0013】
例えばUMTSシステムの場合、電力制御情報は、比較的低い信頼性でのみ伝送されるため、好ましい実施例では、電力制御ファクタを推定するために統計的仮説検定法を使用する。このことの利点は、移動無線における伝送チャネルの減衰と、重畳されるノイズとの、複素ガウス過程としての記述に基づいて、この方法に対する解析的表現を指定することができることである。さらに、電力制御ファクタの推定値は、好ましくは、最大事後アプローチに基づくものであり、規定可能な観測変数の測定に関して生起確率が最大になるような判定が電力制御ファクタに対して行われる。本発明によれば、個々の好ましい推定法に対して異なる観測変数が指定されるため、パイロットシンボルに割り当てられる受信値を利用するとともに、未知データに割り当てられる受信値を利用して、有効に推定を行うことが可能となる。さらに、本発明による方法は、例えば、送信機と受信機の間の周波数オフセットのような、別のパラメータを推定する際の有益な応用にも適している。
【0014】
したがって、本発明による方法と、本発明によりこの方法を実行するように適応した受信機は、特に、電力制御を有するCDMAシステムにおけるチャネル推定のような、受信端でのパラメータ推定の品質の向上を保証する。特に送信データを再構成するためにRAKE受信機を使用する場合には、検出は、チャネル推定値や、例えば周波数オフセットのような他のパラメータの推定値に実質的に基づくため、パラメータ推定における改善は伝送システムのビット誤り率の低減につながり、そのため、必要な送信電力の節減、したがって、全容量の増大が可能となる。他方、実際の実装において、これによる余分の出費はわずかしか生じない。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明によるアプローチと、以下の記述が基礎とするシステムモデルとをよりよく理解するため、まず図2を参照する。図2は、線形歪みチャネルに対するDS−CDMA(直接拡散符号分割多元接続)による伝送のためのRAKE受信機の概略ブロック図である。それ自体は当業者に知られているように、アンテナから来る入力信号は、受信フィルタ1を通過後、この目的のために、RAKE受信機のいわゆるフィンガF、F、FL−1という経路ごとに処理される。フィンガは、複数のデバイス、特に、遅延2、逆拡散3およびチャネル推定4のためのデバイスを有する。
【0016】
図2によるRAKE受信機の離散時間出力信号y[k]は、この場合、次式で与えられる。
【数1】
Figure 0004050552
LはRAKE受信機のフィンガF、F、FL−1の個数を表す。表現を単純化するために、生じる伝搬時間を無視する場合、図2によるi番目のフィンガFの出力信号y[k]は次式で与えられる。
[k]=h[k]・a[k]・s+n[k], i∈{0,1,...,L−1} (2)
この場合における系列a[k]は送信シンボルを含む。送信シンボルは、使用される変調方法に依存して、純粋に実数であることも、複素数であることも可能である。パラメータh[k]は、i番目のRAKEフィンガFに関連する時間依存重みファクタであり、これはチャネルパルス応答によって与えられる。式(1)におけるパラメータ^h[k]は、i番目のRAKEフィンガFに関連する推定される時間依存重みファクタを表し、これは、図2のチャネル推定デバイス4によって決定される。パラメータn[k]は、i番目のRAKEフィンガFの干渉信号を表し、これは通常さまざまな成分(例えばホワイトノイズやMAI(多元接続干渉:Multiple Access Interference))からなる。ファクタsは、受信信号の電力に影響を及ぼす、すなわち、電力制御(高速電力制御または長期電力マッチング)を引き起こす重みファクタであり、期間Kの受信ブロックに対して一定である。
【0017】
さらに、この分野の当業者には知られているように、^h[k]およびn[k]はいずれも、多くの移動無線アプリケーションにおいて、平均ゼロの複素ガウス過程が良好な近似であると仮定することができる。この仮定は、以下の記述の基礎をなす。
【0018】
例えば、UMTSシステムの場合、電力制御ファクタsは、突然に受信機に通信されるが、対応する受信シンボルには、高い信頼性はない。その理由は、遅延を短くすることが要求されるために、これらのシンボルに対する強力なチャネル符号化が不可能なためである。したがって、一般に受信機は、ファクタsの正確な知識を有しないため、sについてのすべての可能性を考慮することが必要、あるいはむしろ本質的である。それらの(事前)確率は、電力制御情報を含む受信シンボルと、対応するシンボル誤り確率とを利用して決定することができる。
【0019】
簡単のため、各ブロックのシンボルは、一定の電力制御ファクタsを有し、離散時間k∈{0,1,...,K−1}で数え上げられるとする。さらに、各ブロックKは、位置k,k,...,kKp−1において、受信機に既知のパイロットシンボルを有すると仮定する。ファクタh[k]を決定するためのチャネル推定は、受信値y[k],y[k],...,y[kKp−1]を利用して行うことができる。この場合、この点に関しては、例えばフィルタリングや補間に基づくさまざまな方法が文献から知られる。そのような文献の例としては以下のものがある。
・J. K. Cavers, "An Analysis of Pilot Symbol Assisted Modulation for Rayleigh Fading Channels", Transactions on Vehicular Technology, VT-40:686-693, Nov. 1991.
・G. Auer et al., "Adaptive Mobile Channel Prediction for Decision Directed Rake Receivers", IEEE Colloquium on Adaptive Signal Processing for Mobile Communications Systems, pages 13/1-13/5, Oct. 1997.
・H. Andoh et al., "Channel Estimation Filter Using Time-Multiplexed Pilot Channel for Coherent Rake Combining in DS-CDMA Mobile Radio", IEICE Trans. Commun., E81-B(7):1517-1526, July 1998.
【0020】
これらの方法では、判定フィードバックの原理を適用することによって、データシンボルに対応する受信値をチャネル推定値に含めることも可能である。これにより、推定の品質が向上する。
【0021】
当業者に知られているように、一般に相異なるブロックからの受信値が現在のチャネル推定値に影響を及ぼし、その結果、シンボルは、例えば図3bからわかるように、さまざまな電力制御ファクタsで組み合わされる。すでに上で言及したように、これは、チャネル推定フィルタの適応の劣化や、チャネル推定の結果の品質低下を引き起こす可能性がある。さらに、同様の問題は、例えば、チャネル自己相関系列の推定値で動作する周波数オフセット推定法においても起こりうる。この点に関しては、例えば、W.-Y. Kuo et al., "Frequency Flat Fading", Transactions on Communications, COM-45:1412-1416, Nov. 1997、を参照。
【0022】
これらの問題点が無視され、あるいは、生じる劣化が容認されている従来技術によるパラメータ推定法とは異なり、本発明による方法のアプローチは、電力制御ファクタsを推定した後、特に、図3bに示されるようなパラメータ推定値の入力信号における急激な不連続性を回避するために電力制御ファクタsを補償するというものである。
【0023】
この目的のために実行される推定について、図1および図4を参照して以下で説明する。
【0024】
送信機から受信機に通信されるファクタsを直接利用することは一般に不可能である。その理由は、この情報を含むシンボルはほとんどの場合、十分に信頼できないからである。そこで、ファクタsを推定するために、例えば、A. D. Whalen, "Detection of Signal in Noise", Academic Press, New York, 1971(この文献は、本明細書の内容の一部とみなされるべきである)に開示されているような統計的仮説検定の方法を適用する。図1によれば、デバイス5で実行される、補正ファクタsの(すなわち、実質的に、電力制御ファクタの)推定の後、パラメータ推定(例えばチャネル推定)のために、値1/s・y[k](これには電力の急激な変化はもはや生じない)がデバイス4′に提供され、これにより、パラメータ推定の結果が改善される。
【0025】
ファクタsの推定を実行するため、ブロックn、n+1ごとに各RAKEフィンガF、F、FL−1の最初のM個の出力値を考慮することが好ましい。これらの値は次の受信ベクトルにまとめられる。
=[y[0] y[1] ... y[M−1]], i∈{0,1,...,L−1} (3)
(・)は転置を表す。これに基づいて、次に、特にyの全密度に注目する。以下では例としてM=2の場合について説明する。h[k]とn[k]は複素ガウス過程とすることができるため、s、a[0]およびa[1](式(2)参照)の与えられた値に対する結果は、yに対する条件付き密度として、次の確率密度関数を有する2次元複素ガウス密度となる。
【数2】
Figure 0004050552
(・)は行列のエルミート共役を表し、自己相関行列Mは次式で与えられる。
【数3】
Figure 0004050552
ここで、以下の定義が用いられている。
σ =E{|h[0]a[0]s+n[0]|
=E{|h[1]a[1]s+n[1]|
=σh,i +σn,i (6)
ただし、
σh,i =E{|h[k]|} (7)
σn,i =E{|n[k]|} (8)
および
【数4】
Figure 0004050552
であり、σ 、σh,i およびσn,i はそれぞれ、i番目のRAKEフィンガFの出力信号の分散、i番目のRAKEフィンガFに関連するチャネル重みファクタの分散、および、i番目のRAKEフィンガFでのノイズ分散を表し、φhihi[κ]およびφnini[κ]はそれぞれ、h[k]およびn[k]の自己相関系列を表し、ここで、φhihi[κ]=E{h[k+κ]h [κ]}およびφnini[κ]=E{n[k+κ]n [κ]}である。
【0026】
自己相関関数ならびに分散σh,i およびσn,i の決定は、例えばチャネル推定値を利用して、受信機で実行することができる。なお、σ は、検定されるべき電力制御ファクタsの関数であり、相関係数ρは、さらに、a[0]およびa[1]の関数である。
【0027】
さらに、以下では、ホワイトノイズn[k]の場合、すなわち、φhihi[κ]=0、κ≠0、の場合を考える。この場合は通常、良好な近似で成り立つ。この場合、次式が得られる。
【数5】
Figure 0004050552
【0028】
電力制御ファクタsの推定の前に、あるベクトル(またはスカラー)
=f(y
を求める。一般に、考えている時間ステップ0,1,...,M−1にはパイロットシンボルが割り当てられないこと、したがって、対応する送信シンボルは推定にとって未知であることを仮定する必要があることが知られる。換言すれば、判定されるデータは利用することができない。その理由は、それらを求めるにはチャネル推定値の知識が必要とされるのに対して、aは、現在のブロックにおけるチャネル推定の上流で推定されるからである。ベクトルまたはスカラー関数f(・)は、未知のデータシンボルの影響をできるだけ小さく保つ目的で用いられ、後述するように、f(・)の適当な定義によって、既知のパイロットシンボルの場合に適用することも可能である。
【0029】
原理的には、当業者に知られている基準を用いてファクタsを推定することも可能であるが、以下の例示的な説明では最大事後アプローチが用いられる。その場合、推定されるファクタは次式に従って決定される。
【数6】
Figure 0004050552
p(s|u,u,,uL−1)は、u,u,,uL−1を既知とした場合のsの条件付き確率密度関数を表す。
【0030】
ベイズの定理を用いて、数値的評価が可能な表式を次式のように得る。
【数7】
Figure 0004050552
【0031】
式(13)は、この場合、すべての可能性、すなわち、ファクタsについての仮説について評価される。ここで、p(u,u,,uL−1)は、最尤値を決定するためには重要でないファクタとして無視することができ、事前確率Pr(s)の計算は、電力制御情報を含むシンボルに関連する誤り確率を利用して簡単に実行することができる。さらに、計算すべき全密度p(u,u,,uL−1|s)は簡単化することができる。それぞれのRAKEフィンガF、F、FL−1に対するチャネル係数h[k]は、干渉過程n[k]と同様に、互いに統計的に独立であるようにモデル化することができるため、関数f(・)を適当に選択することにより、次の因子分解が妥当であることを仮定することができる。
p(u,u,,uL−1|s)=p(u|s)・p(u|s)・...・p(uL−1|s) (14)
密度関数p(u|s)を決定するためには、関数f(・)が既知でなければならない。f(・)を形成するための3つの好ましい可能性について以下で説明する。
【0032】
第1の可能性は、受信機側でトレーニング周波数を知る必要がないものであり、次式のように成分ごとの絶対値の2乗をとることからなる。
f(y)=[|y[0]| |y[1]| ・・・ |y[M−1]| (15)
【0033】
さらに、シンボルの個数はM=2に選び、例えばUMTSシステムで用いられるような2元アンチポーダル変調、すなわち、a[k]∈{±1}が仮定される。p(u|s)を計算するために、次の表現が選ばれる。
【数8】
Figure 0004050552
【0034】
2つの相関する複素ガウス確率変数の絶対値の2乗の全確率密度関数の計算、すなわち、今考えている場合におけるp(u=f(y)|s,a[0],a[1])の計算は、与えられたs、a[0]およびa[1]に対するyの2次元複素ガウス密度の場合についての標準的な問題であることがわかる。その解は、文献から既知であり、例えば、M. Schwartz et al., "Communications Systems and Techniques", McGraw-Hill, New York 1966、および、C. W. Helstrom, "The Resolution of Signals in White, Gaussian Noise", Proceedings of the IRE, 43:1111-1118, Sept. 1955、に記載されている。式(6)および式(10)のそれぞれによるσ およびρと、0次の第1種変形ベッセル関数
【数9】
Figure 0004050552
を用いると、結果は次のようになる(例えば、上記のM. Schwartz et al.を参照)。
【数10】
Figure 0004050552
式(10)によれば、2元アンチポーダル変調およびホワイトノイズの場合、ρの絶対値はa[0]およびa[1]とは独立である。この結果、式(16)および(17)は次のようになる。
【数11】
Figure 0004050552
ただし、
σ =σh,i +σ ,i (20)
および
【数12】
Figure 0004050552
である。
【0035】
信号対ノイズ比が低い場合(これは通常、個々のRAKEフィンガF、F、FL−1の出力において起こる)には簡単化をすることができる。この場合、小さい引数に対して妥当な近似
ln(I(χ))≒χ/4 (22)
を利用すると、次式が得られる。
【数13】
Figure 0004050552
この点に関して補足的な文献として、例えば、D. Raphaeli, "Noncoherent Coded Modulation", Transactions on Communications, COM-44:172-183, Feb. 1996、を参照。最後に、式(13)および式(14)を用いて、推定電力制御ファクタsは、次式を最大化するその値として得られる。
【数14】
Figure 0004050552
【0036】
第2の可能性として、次式のように、個々の受信値の絶対値の2乗の和をとって関数f(・)を作ることができる。
【数15】
Figure 0004050552
【0037】
今度も、例としてM=2に選び、2元アンチポーダル変調の場合を考える。与えられたsに対する条件付き密度関数u=f(y)は、前掲のM. Schwartzによる文献の記載に基づいて導出することができる。今度の場合も、条件付き密度p(f(u)|s,a[0],a[1])に対して、a[0]およびa[1]とは独立の表式が得られ、最終的に次式のようになる。
【数16】
Figure 0004050552
式(20)および(21)がそれぞれ、σ およびρについて成り立つ。したがって、式(13)および(14)を用いて、sの関数として最大化すべき目標関数を直接に指定することが可能となり、これは具体的には次式のようになる。
【数17】
Figure 0004050552
【0038】
もう1つの好ましい可能性は、yを直接用いてsを推定することからなる。すなわち、点k∈{0,1,...,M−1}において、受信端で既知のトレーニングシンボルが現れた場合にu=yとする。例として、M=2およびa[0]=a[1]=1の場合を考える。この場合に得られる条件付き密度関数は次式の通りである。
【数18】
Figure 0004050552
ただし、
【数19】
Figure 0004050552
である。
【0039】
そこで、式(13)および(14)を用いて目標関数を次式のように設定することができ、これは、sの関数として最大化されるべきものである。
【数20】
Figure 0004050552
【0040】
上記では、新たな受信ブロックn+1の信号値のみを考慮してsを推定する場合、すなわち、電力制御ファクタsの変化後のみを考えているが、さらに、前のブロックnの受信値を考慮することによって推定値を形成することも可能である。この点に関して、以下で、例として、新旧の受信ブロックnおよびn+1のそれぞれからの受信値を使用する場合を考える(図4)。すなわち、M=2の場合、i番目のRAKEフィンガFに関連する受信ベクトルは次のように形成される。
=[y[−1] y[0]]
さらに、電力制御ファクタsの補償は、前の受信値に対してすでに行われていると仮定する。今度の場合も、式(4)によるガウス密度が、条件付き密度p(y|s,a[−1],a[1])として得られ、自己相関行列に対する結果は次式のようになる。
【数21】
Figure 0004050552
ここで、sは前ブロックnのすでに決定された電力制御ファクタを表す。こうして、この分野の当業者には認識されるように、今度の場合も、この結果を用いて、関数f(・)および2元アンチポーダル変調に基づく上記の3つの可能性に対してsを推定するための目標関数を導出することが可能となる。
【0041】
実際の実装において、特にCDMAによる移動無線システムの受信機内では、この方法は、ほんのわずかな余分の出費しか伴わず、電力制御の機関に関連して開始される。全部でL個のRAKEフィンガに対するサンプルy[k]の記憶後、これらはさらに、特に上記の3つの好ましい可能性のうちの1つに基づく関数f(・)の形成とともに前処理される。
【0042】
したがって、その後、送信された電力制御コマンドおよび符号化されていない誤り率からそれ自体知られる電力制御ファクタsの生起に対する事前確率Pr(s)を考慮して、すべての可能な電力制御ファクタsに対する目標関数を設定することが可能となり、この場合、受信ブロックn+1からのサンプル、あるいは別法として、相異なるブロックn、n+1からの受信値(図4)を使用することが可能である。例えば、考慮すべきシンボルの個数をM=2と選んだ場合、新しい受信ブロックn+1からのサンプルy[0]およびy[1]、または、相異なる受信ブロックからのサンプルy[−1]およびy[0]のいずれかを使用することが可能である。そして、実際に生じた電力制御ファクタsに対する推定値は、目標関数を最大化することができるものとして選択されることになる。
【0043】
【発明の効果】
したがって、本発明による、補正ファクタを推定する方法は、パイロットシンボルに割り当てられる受信値を利用するとともに、未知データに割り当てられる受信値を利用して、実行することができる。
【0044】
本発明による方法は、パラメータ推定の品質の向上を保証し、したがって、伝送システムのビット誤り率の低減や、必要な送信電力の可能な節減を保証する。
【0045】
特許請求の範囲の発明の要件の後に括弧で記載した番号がある場合は、本発明の一実施例の対応関係を示すものであって、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】電力制御を明示的に考慮した、最大比結合のRAKE受信機の概略ブロック図である。
【図2】図1に対応するが、電力制御を考慮しないブロック図である。
【図3】aは、電力制御の補償のないパラメータ推定値に対する入力信号を示す図である。bは、電力制御の補償のあるパラメータ推定値に対する入力信号を示す図である。
【図4】電力制御ファクタを推定するRAKEフィンガの入力信号を示す図である。
【符号の説明】
1 受信フィルタ
2 遅延デバイス
3 逆拡散デバイス
4 チャネル推定デバイス

Claims (16)

  1. パラメータ推定に基づくCDMA受信機の受信を改善する方法であって、
    受信信号の受信値を得るステップと、
    統計的仮説検定法を用いて、前記受信信号の電力レベルの不連続性とそれから得られる補正ファクタとを推定するステップであって、前記補正ファクタは受信信号の相異なる電力レベルを等化するように作用する、ステップと、
    前記受信値に前記補正ファクタ(s)を与えるステップと、
    前記補正ファクタ(s)を与えられた前記受信値を処理することによりパラメータ推定値を生成するステップと
    を含むことを特徴とする方法。
  2. 受信信号(y[k])の送信電力レベルの現在の不連続性の推定を改善するために、送信電力レベルの特定の不連続性の存在の事前確率(Pr(s))が統計的仮説検定法の場合に使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 補正ファクタ(s)の推定が、移動局の送信電力の現在推定される不連続性を再現するパラメータを提供することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. パラメータ推定法は、1つの送信電力に割り当てられる2つのブロック(n,n+1)の間の送信電力の不連続性を推定することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
  5. 補正ファクタを推定するために、パラメータ推定法は、受信信号(y[k])の絶対値の成分ごとの2乗から得られるベクトルを用いて統計的仮説検定を実行することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 受信信号の絶対値の2乗の和を用いて統計的仮説検定を実行することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
  7. 統計的仮説検定が、トレーニングシンボルに対応する受信値(y[k])の受信中に実行されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
  8. 現在推定されるべき補正ファクタ(s)に属するブロック(n+1)からの受信値(y[k])のみが、電力レベルを推定するために使用されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
  9. 現在推定されるべき補正ファクタ(s)に属するブロック(n+1)からの受信値(y[k])と、前のブロック(n)からの受信値とが、電力レベルを推定するために使用されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
  10. 不連続性がある場合に、補正ファクタ(s)の不連続性の推定は、更なる推定法のための基礎として使用されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記更なる推定法は、伝送チャネルの性質の推定を含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 前記更なる推定法は、送信されたビットストリームの推定を含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. 請求項1ないし12のいずれかに記載のパラメータ推定法を実行するパラメータ推定デバイスを有することを特徴とするCDMA受信機。
  14. 前記受信機はRAKE受信機として設計されることを特徴とする請求項13記載のCDMA受信機。
  15. RAKE受信機の複数のフィンガ(F、F、FL−1)に、パラメータ推定デバイス(5)が割り当てられることを特徴とする請求項14記載のCDMA受信機。
  16. RAKE受信機の複数のフィンガ(F、F、FL−1)からの信号が、統計的仮説検定を実行するために使用されることを特徴とする請求項14または15記載のCDMA受信機。
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