JP4048860B2 - オイルゲル組成物 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオイルゲルに関し、さらに詳しくはこれを基材とした化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
液状炭化水素は分子量によって低粘性から高粘性まで幅広い特性を有した各種油性材料として使用されている。例えば、溶剤、潤滑剤、絶縁剤、粘着剤、離型剤、可塑剤として幅広く使用されている。さらに、その生体安全性が高いので、用途分野が、上述の一般的な工業分野から、化粧料、医薬部外品、食品添加物までに拡大している。これら液状炭化水素の中でも、ポリブテンにはスクワラン、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマーといった液状の油性材料に比べると、軽質品から高粘性品まで幅広い性状があり、熱・光に対する安定性がより高いなどの特性がある。
【0003】
一方で、ポリブテンで代表される液状炭化水素は、形状が液状であるため、形状保持が要求されるような用途では使用に適さない。そのため、固形型、クリーム型の化粧料や薬剤、さらに一般的な固形形態を必要とする用途では、無機物、ワックス、油脂等の固形性を有する材料と混合して使用することが必要となり、液状炭化水素を含むオイルゲルが種々検討されている。例えば特開平14−3340号公報には、ポリブテン、デキストリン脂肪酸エステル及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸から成るオイルゲル化粧料が開示されている。
【0004】
また、透明ゲル化粧料としては、特開平05−117130号公報、特開平06−279265号公報、特開平08−73313号公報に、水溶性高分子、多価アルコール、界面活性剤からなる水性透明化ゲル化粧料が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平14−3340号公報で開示された方法で得られたオイルゲル化粧料は、つやの向上や系の安定性には有効なものが得られるものの、透明性に優れたものは得られていない。特開平05−117130号公報、特開平06−279265号公報、特開平08−73313号公報には、透明性のある水性化粧料が提供されているが、化粧料としてのつやの向上性、安定性、耐乾燥性の点では十分ではなかった。
本発明は、透明性に優れたオイルゲル組成物、これを基材とした化粧料を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の発明である。
(1)液状炭化水素(A成分)と、軟化点が40℃以上である脂環族炭化水素樹脂(B成分)とを含有し、A成分とB成分との混合割合が重量比で5/95〜90/10であり、融解混合後に型や容器に入れ冷却して製造されるオイルゲル組成物を基材とした化粧料。
(2)A成分が、数平均分子量150〜3000のポリブテンである前記(1)のオイルゲル組成物を基材とした化粧料。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、A成分の液状炭化水素は常温で液状の脂肪族炭化水素であり、例えば、ポリブテン、スクワラン、流動パラフィン、α−オレフィンオリゴマーなどであり液状の油性材料として使用できる。
なかでも、ポリブテンでは軽質品から高粘性品まで幅広い性状があり、かつ熱・光に対する安定性が高いなどの特性を有するので好ましい。ここで、ポリブテンとしては、イソブチレン単独重合体、イソブチレンとその異性体との共重合体、イソブチレンあるいはその異性体と他のオレフィンとの共重合体、及びこれらの水素添加化合物である水添ポリブテン等である。水添ポリブテンは熱や光による酸化劣化が少ないため、本発明の使用に特に好ましい。
本発明において使用に適した液状炭化水素は、数平均分子量が150から3000であるものが好ましく、数平均分子量が150未満では臭気や刺激性といった安全性に問題があり、3000を超えると流動性が低下するため配合物の柔軟性や使用感に問題を生じる。
【0008】
本発明において使用に適した液状炭化水素の粘度は、100℃で6000cSt以下で、40℃で0.5cSt以上の範囲である。40℃で0.5cSt未満では前記と同様に安全性に問題があり、100℃で6000cStを超えると組成物の柔軟性や使用感を損ねる。
本発明に使用する液状炭化水素は安全性の高い材料であるとともに、本発明のオイルゲルに透明な外観と共に、潤滑性、溶剤としての作用、揮発性等の一般的な機能を付与することができる。また、化粧料としては皮膚や毛髪に対するつやの向上、耐乾燥性等を付与することができる。
【0009】
本発明に用いるB成分である炭化水素樹脂は、軟化点が40℃以上である。好ましくは軟化点が50℃以上である。
炭化水素樹脂としては、石油樹脂であっても、テルペン樹脂であってもかまわない。さらに、耐熱性、耐候性や安全性の面から不飽和基のより少ない飽和炭化水素樹脂が好ましく、これら炭化水素樹脂を水素添加処理した不飽和基のほとんど存在しない飽和炭化水素樹脂がより好ましい。炭化水素樹脂の分子量は、樹脂の軟化点が40℃以上であればよく、数平均分子量が300〜1500、より好ましくは350〜1000の範囲が、液状炭化水素との相溶性やオイルゲルの加工温度の観点で適している。
【0010】
本発明に用いる炭化水素樹脂としては、例えば、市販の脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂等である。ここで、具体的な脂肪族系炭化水素樹脂としては、ESCOREZ1000(登録商標、エクソン モービル社製)、ESCOREZ1102(登録商標、エクソン モービル社製)等、脂環族系炭化水素樹脂としては、ESCOREZ5300(登録商標、エクソン モービル社製)、ESCOREZ5320(登録商標、エクソン モービル社製)、ESCOREZ5380(登録商標、エクソン モービル社製)、アルコンP−70(登録商標、荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0011】
本発明に用いるB成分である炭化水素樹脂は、A成分である液状炭化水素と相溶性が良好で透明性が維持できるとともに、液状炭化水素との混合比によって、より硬い固形状から柔らかいゲル状の形態を形成することができる。
本発明に用いるA成分の液状炭化水素とB成分の炭化水素樹脂の混合比は、重量比で5/95〜90/10が好ましい。より好ましくは、10/90〜80/20である。混合比が5/95未満では、オイルゲル中の液状炭化水素による可塑効果が不十分となり、90/10を超えると炭化水素樹脂によるオイルゲルの形状保持性効果が不十分となる。
本発明のオイルゲルは、透明性に優れているが、A成分、B成分の配合組成、及び後述する他の添加物等によって影響を受けることもある。特に、透明化粧料材料としては、光路長2mmにおいて光線透過率が70%以上であることが好ましい。
【0012】
本発明のオイルゲル組成物に、さらに界面活性剤を添加することにより硬さや透明度を調整することもできる。界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や両性イオン界面活性剤から選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられるが、皮膚や眼に対する刺激性がより低く、環境に対する影響の少ないものがより好ましい。非イオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ソルビタンエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、例えば脂肪酸のアルカリ金属塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、N−アルキル−N,N−ジメチルオキシド等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン酢酸塩、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。また、両性イオン界面活性剤としては、例えばジメチルアルキルベタイン、アルキルアミドベタイン等が挙げられる。
界面活性剤が用いられる場合、界面活性剤の添加量は、オイルゲル組成物中、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲である。0.1重量%未満では添加する効果が不十分であり、20重量%を超えるとオイルゲルの透明性が損なわれたり、眼への刺激が大きい等安全性の面で十分ではない。
【0013】
本発明のオイルゲル組成物は、所望の透明性を維持でき、安全性の高いものであればさらに他の各種添加剤を添加することもできる。添加剤としては、例えば、植物性油脂、動物性油脂、ロウ、ポリブテン以外のパラフィン、ワセリン、脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール等の油性材料;酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、シリカ、カオリン、炭酸ナトリウム、ホウ砂等の無機化合物;エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の有機溶媒;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体、無水マレイン酸とメチルビニルエーテルの共重合体等の他の水溶性高分子;その他にも紫外線吸収剤、酸化安定剤、防腐・殺菌剤、着色剤、香料、薬剤等を挙げることができる。これらの添加剤は必要に応じて、1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0014】
本発明のオイルゲル組成物の製造方法は、公知の方法で行うことができる。例えば、前述の各成分を、通常の加熱源及び攪拌機を付した混合機、プラストミル、ロール試験機、ニーダー等の混練機を用いて、室温〜200℃の温度範囲で、容量にもよるが5〜120分程度混合する。さらに得られた混合物を所定の形状の型や容器に入れ、冷却して固形状からゲル状の透明性オイルゲル組成物を製造することができる。
これらのオイルゲル組成物を所定の形状に加工することにより、例えばスティック状あるいはゲル状の口紅類、アイメイクアップ、頭髪用化粧品、ファンデーション、マスカラ、美爪料等の化粧料にすることができる。
さらに、ハップ剤、膏体、捕虫剤、潤滑剤等の多くの用途に使用できる。
【0015】
【実施例】
実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
A成分として、ポリブテン(NAS−3、日本油脂(株)製、数平均分子量170)25重量部、B成分として脂環族系炭化水素樹脂(登録商標:アルコンP−70、荒川化学工業(株)製、軟化点70℃、数平均分子量610)75重量部、さらに芳香成分としてリモネン(和光純薬工業(株)製)を1重量部機械的に混合して、攪拌機を付した容器中で脱気下120℃で15分間溶融混合した。
その溶融物を板状金型に流し込み、0℃まで冷却して50×50×2(mm)の板状成型物を得た。得られた板状成型物は、東京電色(株)製ヘーズメーターにより光線透過率を測定した結果90%であり、オスカーゴム硬度計により硬度を測定した結果5の値で、さらに柑橘系の臭気を確認することができた。なお、1週間後においても同様に柑橘系の臭気を確認することができた。
【0016】
実施例2
A成分として流動パラフィン(和光純薬工業(株)製)を40重量部、B成分として実施例1の脂環族系炭化水素樹脂60重量部を用いた以外、実施例1と同様にして板状成型物を得た。成型物は、同様に物性値を測定した結果、光線透過率が91%であり、硬度が7の値で、さらに柑橘系の臭気を確認することができた。なお、1週間後においても同様に柑橘系の臭気を確認することができた。
【0017】
参考例1
A成分として、ポリブテン(登録商標:パールリーム18、日本油脂(株)製、数平均分子量1350)50重量部、B成分として脂肪族系炭化水素樹脂(登録商標:ESCOREZ1000、エクソン モービル社製、軟化点:100℃、数平均分子量1200)50重量部、さらに顔料として雲母チタン10重量部を加え、実施例1と同様に溶融混合後、50×10×5mmの直方体成型物を得た。得られた直方体成型物の物性を実施例1と同様にして測定した結果、光線透過率が62%、硬度が6の値であった。これを、スティック状の口紅として使用したとき、使用感が良好であった。
【0018】
実施例4
A成分として、ポリブテン(登録商標:パールリーム4、日本油脂(株)製、数平均分子量220)70重量部、流動パラフィン10重量部、B成分として、水添脂環族系炭化水素樹脂(ESCOREZ5300 エクソン モービル社製、軟化点:105℃、数平均分子量420)20重量部に、香料としてゲラニオール0.5重量部を加え、実施例1と同様に溶融混合後、冷却して柔らかいゲル状の油性配合物を得た。ゲル状の油性配合物を、ガラスセルに入れた光路長2mmでの光線透過率は91%、硬度が0の値であった。
【0019】
実施例5
A成分としてスクアラン(和光純薬工業(株)製)70重量部、B成分として実施例4の水添脂環族系炭化水素樹脂30重量部を用いた以外、実施例4と同様にして柔らかいゲル状の油性配合物を得た。ゲル状の油性配合物は、ガラスセルに入れた光路長2mmでの光線透過率が89%、硬度が0の値であった。
【0020】
比較例1
実施例1においてB成分の炭化水素樹脂を使用しない以外同様に操作して配合物を得ようとしたが、流動性が大きく所定の成型物は得られなかった。
【0021】
比較例2
実施例3においてB成分の炭化水素樹脂を使用しない以外同様に操作して配合物を得ようとしたが、配合物は流動性が大きく所定の成型物は得られなかった。
【0022】
比較例3
流動パラフィン40重量部、さらに、デキストリンパルミチン酸エステル10重量部及びリンゴ酸ジイソステアリル50重量部、芳香成分としてリモネンを1重量部使用して、攪拌機を付した容器中で脱気下90℃で15分間溶融混合した。その後、実施例1と同様に溶融物を板状金型に流し込み、板状成型物を得て評価を行った。その結果、柑橘系の臭気は確認できたものの、光線透過率は12%、硬度は1であり、不透明な柔らかい材料であった。
【0023】
比較例4
スクアラン10重量部、さらに、蜜ロウ60重量部、ラノリン15重量部、ワセリン15重量部及び顔料として雲母チタン10重量部を実施例2と同様に配合し、実施例3と同様な直方体成型物を得て評価した。得られた直方体成型物は、光線透過率が0%、硬度が3の値であり、柔らかく不透明な材料であった。
【0024】
比較例5
流動パラフィン5重量部、さらに、ワセリン95重量部、香料としてゲラニオール0.5重量部を加え、実施例1と同様に溶融混合後、冷却して柔らかいゲル状の油性配合物を得た。ゲル状の油性配合物は、ガラスセルに入れた光路長2mmの光線透過率が47%、硬度は0の値であった。
【0025】
【発明の効果】
本発明のオイルゲル組成物は、透明性に優れると共に安全性が良好な油性組成物で、組成によって固形から軟性のゲル状物とすることができる。そのため、スティック状やゲル状の化粧料、芳香剤、ハップ剤、膏体、捕虫剤、潤滑剤等の多くの用途に使用できる。

Claims (2)

  1. 液状炭化水素(A成分)と、軟化点が40℃以上である脂環族炭化水素樹脂(B成分)とを含有し、A成分とB成分との混合割合が重量比で5/95〜90/10であり、融解混合後に型や容器に入れ冷却して製造されるオイルゲル組成物を基材とした化粧料。
  2. A成分が、数平均分子量150〜3000のポリブテンである請求項1に記載のオイルゲル組成物を基材とした化粧料。
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