JP4047023B2 - ダイオード型ナノピンセット及びこれを用いたナノマニピュレータ装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はナノサイズの物質(以後、ナノ物質という)を把持したり放出したりできるナノピンセットに関し、更に詳細には、ナノ物質を把持するナノチューブからなる少なくとも二つのアーム間の離間距離を電圧又は電流として検出してナノ物質の把持・放出の最適制御を可能にし、またこのナノピンセットを利用してナノ物質を搬送制御してナノサイズ部品、ナノ分子デバイス等のナノ構造物を組み立てることができるダイオード型ナノピンセット及びこれを用いたナノマニピュレータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の技術開発はますます極小領域を指向している。例えば、光・電子情報関連の新素材やナノサイズ部品の創製、細胞やタンパク質の集積による新しいバイオ関連機能物質の創製のように、ナノ領域における革新的な製造技術の開発が要望されている。
【0003】
このようなナノ構造物を構築するには、ナノ物質を把持したりそれを放出したりできるナノピンセットの開発が必要になり、更にナノ物質を把持・移動・放出させるためにナノマニピュレータ装置の開発が要請される。
【0004】
まず、ナノピンセットの第1原型は、Philip KimとCharles M. Lieber により1999年12月10日に発行されたサイエンス誌上に発表された。このナノピンセットは、ガラスチューブを先端直径が100nmになるまで引張って延伸させ、この先端にカーボンナノチューブを固定して構成されている。このナノピンセットは、二つのカーボンナノチューブに直流電圧を印加してカーボンナノチューブの先端に正負の静電気を発生させ、この静電引力によってカーボンナノチューブの先端を開閉させる方式を採用している。
【0005】
しかし、このナノピンセットの基体は延伸加工して先端を先鋭にしたガラスチューブであるから極めて脆く、しかもカーボンナノチューブをその先端に強固に固定する技術が確立されていなかったために、カーボンナノチューブがガラスチューブから脱落する危険性があった。また、ガラスチューブを自在に搬送制御する技術も確立されていなかったので、ナノピンセットとしての利用が制限されていた。
【0006】
これらの欠点を改善するために、本発明者等は原子間力顕微鏡(AFM)に用いられるカンチレバーとそのカンチレバーの駆動制御装置に着目した。そして、特開2001−252900により、AFM用のカンチレバーの突出部に2本のカーボンナノチューブを強固に固定する技術を開発し、このカーボンナノチューブに静電圧を印加して静電引力によりカーボンナノチューブの先端間を開閉できるナノピンセットを開発した。同時に、カンチレバーの駆動制御装置を用いてナノピンセットをナノスケールで自在に搬送制御できるナノマニピュレータ装置を開発したのである。
【0007】
更に、本発明者等は、特願2000−404006により、前記カンチレバーの突出部に3本以上のカーボンナノチューブを固定し、3本以上のカーボンナノチューブの先端間を静電引力により開閉することによって、球状ナノ物質や棒状ナノ物質のような異形のナノ物質でも確実に把持・搬送できるナノピンセットを開発することに成功した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ナノピンセットはナノ物質を自在に操作できるナノロボットとも呼ぶことができる。人間と同程度の大きさを有するマクロのロボットで考えると、例えばコップを把持する場合において、単にコップを把持できるだけでなく、コップを割らない程度に制御された握力でコップを把持することが必要とされる。この握力制御の要請は当然にナノロボットにおいても要請される。
【0009】
ナノピンセットでナノ物質を搬送制御するためには、まずナノピンセットによりナノ物質を把持したかどうかを検出し、次にどの程度の握力でナノ物質を把持しているかを検出することが必要となる。その理由は、握力が過剰に大きくなると、ナノ物質が構造的に変形する可能性があるからである。このような握力の制御技術は従来の技術では未だに開発されていない。
【0010】
従って、本発明は、ナノ物質を把持する際に、把持したかどうかを検出でき、またナノ物質を把持する握力を検出することができるナノピンセットを開発し、同時にこのナノピンセットを使用してナノ物質を操作できるナノマニピュレータ装置を開発することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ホルダーから突出状に形成された少なくとも第1アームと第2アームを静電気により開閉自在にしてナノ物質を把持するナノピンセットにおいて、前記第1アームは基端部をホルダーに固定して先端部を突出させたゲート用ナノチューブで形成され、前記第2アームは2本の基端部をホルダーに固定し先端部にダイオード特性部を形成したナノチューブダイオードで構成されることを特徴とするダイオード型ナノピンセットである。ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオードの間の静電引力とダイオード特性との相互作用を利用して、ナノ物質を把持したかどうかを検出し、またナノ物質を把持する握力の大きさを検出できる静電ナノピンセットを実現するものである。
【0012】
第2の発明は、ナノチューブダイオードが、1本のナノチューブを2本に折り畳んで構成され、その両端が基端部として前記ホルダーに固定され、先端折畳部はダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。1本のナノチューブを折り畳むだけでダイオード特性を発現できる極めて独創的なナノチューブダイオードの構成を提供したものである。
【0013】
第3の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部は相互に接触してその接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。2本のナノチューブの先端を軽く接触させるだけで、その接触部がダイオード特性を発現するという新規な知見に基づいてなされた発明であり、ダイオード特性の発現様式の多様性を示すものである。
【0014】
第4の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に接触させて介装し、この接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。2本のナノチューブの先端間に中間ナノチューブを接触介在させるだけでダイオード特性の強化を実現したものであり、ナノ物質の把持と握力の計測を簡単に行えるダイオード型ナノピンセットを提供できる。
【0015】
第5の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間には独立した中間ナノチューブがカーボン堆積物の充填により相互に電気的に絶縁状態になるように介装され、この電気絶縁部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。カーボン堆積物により2本のナノチューブの先端と中間ナノチューブを相互に絶縁状態に保持すると、ダイオード特性の更なる強化が実現でき、ナノ物質の把持と握力の計測を確実にして、ナノピンセットの操作性や制御性の高度化を図ることができる。
【0016】
第6の発明は、ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加し、このゲート電圧を制御してナノ物質を握力状態で把持するときに、このゲート電圧を通してナノ物質に対する握力を検出するダイオード型ナノピンセットである。ゲート電圧の測定により握力計測を可能にしたもので、ナノ物質を脱落寸前状態で把持する限界ゲート電圧と比較すれば、そのゲート電圧の超過分により握力を正確に検出でき、ダイオード電流との組み合わせにより更に正確な握力制御を実現する事ができる。
【0017】
第7の発明は、ナノチューブダイオードの基端部間にダイオード電圧を印加しながらゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加してナノチューブダイオードに流れるダイオード電流を制御し、このダイオード電流を通して両アームによるナノ物質を把持する握力を検出するダイオード型ナノピンセットである。ナノ物質を把持した瞬間にダイオード電流が急上昇する現象や、ナノ物質を把持する前後でダイオード電流の増加直線が折れ曲る現象を用いることにより、ダイオード電流の計測を通してナノ物質の把持や握力の自在制御を実現したものである。
【0018】
第8の発明は、ダイオード型ナノピンセットと、このダイオード型ナノピンセットに印加するゲート電圧とダイオード電圧とダイオード電流を可変制御するピンセット制御回路と、ダイオード型ナノピンセットをXYZ方向に搬送制御する搬送制御回路から構成されるナノマニピュレータ装置である。ナノ物質に対する握力制御が可能なダイオード型ナノピンセットを制御回路と組み合わせてナノロボット機能を有したナノマニピュレータ装置を具現したものであり、このナノロボットを活用することにより自在にナノ構造物の構築を可能にする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るダイオード型ナノピンセット及びこれを用いたナノマニピュレータ装置の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明に係るダイオード型ナノピンセットの実施形態の斜視図である。このダイオード型ナノピンセット1はホルダーの先端にナノチューブからなる二つのアームを取り付けて構成される。この実施形態では、ホルダーの一例としてAFM用のカンチレバー2の突出部6が利用されているが、その他の構造でも構わない。ここでAFMとは原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)の略称である。
【0021】
カンチレバー2は、カンチレバー部4とその先端に突設された突出部6から構成されている。この突出部6の形状には種々あるが、ここでは先端面6a、側面6b・6c、後端面6d及び突出端6eからその外形が形成されている。カンチレバー部4と先端面6aにはリード電極12が形成され、カンチレバー部4の両側面から側面6b・6cにはリード電極13・14が形成されている。
【0022】
突出部6には、ダイオード型ナノピンセット1の第1アームとなるゲート用ナノチューブ8と、第2アームとなるナノチューブダイオードNDが下方に突設されている。まず、カーボンナノチューブであるゲート用ナノチューブ8の基端部8bは前記リード電極12に導通するように先端面6aに接触して配置され、コーティング膜16で固定されている。
【0023】
この実施形態では、ナノチューブダイオードNDは一本のカーボンナノチューブを折り畳んで形成され、Aタイプのナノチューブダイオードと呼ぶ。ダイオード用ナノチューブ9・10はこの折畳によって形成された両足で、その基端部9b・10bはリード電極13・14に導通するように側面6b・6cに接触して配置され、コーティング膜17・18により固定されている。
【0024】
前述のように、カーボンナノチューブは真中で折り畳まれ、その先端折畳部は下方に突出するように配置される。この先端折畳部では通常のカーボンナノチューブの性質が変性して電気的な絶縁性が高まる傾向があり、この先端折畳部がダイオード特性を発現するダイオード特性部DPとなる。このダイオード特性部DPでは、ダイオード電圧VDを印加したときにダイオード電流IDが流れ、このID−VD特性が電子素子のダイオードと類似した構造を示す。詳細は図5で説明される。
【0025】
第1アームとなるゲート用ナノチューブ8と第2アームとなるナノチューブダイオードNDがナノピンセットの操作部を構成し、先端8cとダイオード特性部DPの間隔がアーム間隔Sとなり、このアーム間隔Sを拡大・縮小することによりナノ物質の把持・放出を行なう。
【0026】
ダイオード型ナノピンセット1の後方にはナノピンセット制御回路26が形成されている。このナノピンセット制御回路26はゲート電源EG、ダイオード電源ED、ゲートスイッチSG、ダイオードスイッチSD、ダイオード電流計DAから構成されている。この回路は接点12a・13a・14aを介してリード電極12・13・14に接続されている。
【0027】
図2は、図1に示されるダイオード型ナノピンセットの回路構成図である。ダイオードスイッチSDを閉鎖するとナノチューブダイオードNDにダイオード電圧VDが印加され、ダイオード電流IDが矢印のように流れる。このとき、ダイオード用ナノチューブ10がアースとなり、ダイオード用ナノチューブ9の電位がVDに設定される。
【0028】
また、ゲートスイッチSGを閉鎖すると、ゲート電源EGにより点PEの電位がアースになり、ゲート用ナノチューブ8の電位がゲート電圧VGに設定される。このゲート電圧VGによりゲート用ナノチューブ8の先端部8aには正電荷(+)が、同時にダイオード特性部DP近傍には負電荷(−)が静電誘導される。
【0029】
点PEがアースとなっているから、ダイオード用ナノチューブ10の電位はゼロ、ダイオード用ナノチューブ9の電位はVD、ゲート用ナノチューブ8の電位はVG−VDなる。従って、ナノチューブ間の電位差は、ナノチューブ9・10間ではVD、ナノチューブ8・10間ではVG、ナノチューブ8・9間ではVG−VDとなる。
【0030】
ダイオード特性部DPには矢印方向にダイオード電流IDを流しながら、同時にダイオード特性部DPに負電荷を静電誘導させる必要があるから、ゲート電圧VGはダイオード電圧VDより大きく設定される必要がある。即ち、VG>VDが必要な条件となる。
【0031】
詳しく述べると、ゲート電圧VGにより静電誘導された正電荷と負電荷の静電引力によりアーム間隔Sは開閉調整され、この開閉調整はダイオード電圧VDにより影響されないことが好ましい。この条件を満足させるためには、ゲート電圧VGがダイオード電圧VDより十分大きいことが要請され、VG≫VDが満足される事が望ましい。
【0032】
前述したように、ダイオード特性部DPではその電流電圧関係ID−VDにダイオード特性が成立している。図5に示されるように、その関係はダイオード電圧VDを増加させてゆくと、ダイオード電流IDが急激に増加する非線形曲線を示す。この関係は電気抵抗が変化する意味からバリスタ特性といってもよい。また、ダイオード電圧VDがある臨界値VDCに達すると電流がゼロから急に流れ出す場合には、整流特性と呼んでも構わない。本発明ではこれらの非線形特性を纏めてダイオード特性と呼んでいる。
【0033】
ゲート電圧VGを印加すると、ゲート用ナノチューブ8の先端8cがダイオード特性部DPに接近するから、ダイオード特性部DPに作用する電界が変化し、ダイオード電流IDも変化する。言い換えると、ゲート電圧VGを変化すると、ID−VD特性が変化することが分かる。つまり、ゲート電圧VGが決まれば、ID−VD特性も一意的に決まる。
【0034】
このダイオード電流IDがゲート電圧VGで変化することは、量子論的にはクーロンブロッケードで説明できる。ゲート電圧VGを増加すると、ダイオード特性部DPに電子が静電的に誘導され、それはダイオード電流IDが増加することを意味する。電子を1個誘導するにはそれだけのエネルギーが必要であるから、ゲート電圧のステップ的な増加の度に電子が一個ずつ量子的に誘導されることになる。従って、1ステップに満たない電圧増加では電子は誘導されないから、その意味でクーロンブロッケードが成立している。
【0035】
図3はダイオード電圧VDの非印加時におけるゲート電圧VGとアーム間隔Sの関係曲線図である。この関係曲線はダイオード型ピンセットの具体的構成ごとに変化するから、一般的傾向を示すものとして説明する。
【0036】
このダイオード型ナノピンセット1では、ゲート用ナノチューブ8の断面直径DNは15nmであり、ゲート用ナノチューブ8とナノチューブダイオードNDの突出部6からの長さLは2.5μmである。VG=0Vのときにアーム間隔Sは最大になり、その最大間隔SM=0.82μmである。
【0037】
ゲート電圧VGを増加してゆくと、静電引力により主としてゲート用ナノチューブ8がナノチューブダイオードNDに対し接近するように傾斜してゆく。1本のカーボンナノチューブから構成されるゲート用ナノチューブ8の方が1本を二つに折り畳んだナノチューブダイオードNDより撓み易いことは容易に理解できる。
【0038】
VG=0V、2V、4V、5Vのように、VGを増加するに従って、アーム間隔Sは次第に小さくなってゆく。例えば、VG=0VでSM=0.82μmであったものが、VG=4VではS=0.65μmと小さくなる。しかし、限界ゲート電圧VGL=5.6Vに達した瞬間に、ゲート用ナノチューブ8の先端8cはダイオード特性部DPに接触してしまう。
【0039】
中間領域では静電引力とカーボンナノチューブの撓み弾性力とは適切にバランスしているが、VGL=5.6Vになると静電引力と撓み弾性力とのバランスが突然崩れ、静電引力がちょっとでも大きくなる瞬間にゲート用ナノチューブ8の先端8cがダイオード特性部DPに吸引されてしまうのである。つまり、限界ゲート電圧VGL=5.6Vのとき限界アーム間隔SL=0.38μmであり、5.6V以上のゲート電圧VGではアーム間隔S=0となる。
【0040】
図4はゲート電圧を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。このフローの考え方は、ダイオード型ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作してそのサイズdを計測し、そのサイズに応じてナノピンセットを制御するものである。
【0041】
図3の数値を用いて説明すると、ナノ物質のサイズdが最大間隔SM=0.82μmを超える場合には把持不能と判断し、0.82μm(SM)≧d≧0.38μm(SL)の場合にはそのサイズdに等しいアーム間隔Sを与えるゲート電圧VGdを図3の曲線から算出する。ゲート電圧VGを印加しないでナノ物質を把持した後、VGをVGdまで増加すると、握力がゼロの状態で把持したことになる。VGをVGdより大きくすると、アーム間隔は狭まらないが、電圧差VG−VGdに相当する握力で把持されたことになる。従って、握力FgをVG−VGdの関数として検出する。
【0042】
更に、d<0.38μm(SL)の場合には、ゲート電圧VGを限界電圧VGLに設定し、ゲート用ナノチューブ8が自発的に閉じてナノ物質を把持する。もしナノ物質が無ければアームは相互に完全に閉じることになるが、この簡易フローではそのような事態は考慮しない事にする。握力を増大させるために、ゲート電圧VGを限界ゲート電圧VGLより大きくすると、ナノ物質が存在するためにアーム間隔Sはdより狭まらないが、握力は増加する。この簡易フローでは、この握力Fgを電圧差VG−VGLの関数として検出する。
【0043】
次に、上述で数値的に説明した流れを簡易フローを用いて説明をする。ステップm1によりこのダイオード型ナノピンセットの最大間隔SM、限界間隔SL、限界ゲート電圧VGLを初期設定する。次に、このナノピンセットのゲート用ナノチューブ8の先端8cを探針としてAFM操作し、試料上のナノ物質のサイズdを測定(m2)する。
【0044】
図3の曲線データから、このサイズdに相当する対応電圧VGdを算出(m3)する。例えば、d=0.65μm(=650nm)ではVGd=4Vとなる。このサイズdが最大間隔SMより大きい場合(m4)には、このダイオード型ナノピンセットでは把持することができないから操作不能と判断(m5)し、m2に戻って次のナノ物質のサイズ測定を行なう。
【0045】
サイズdが最大間隔SM以下であるが限界間隔SL以上の場合(m6)には、VG=0Vの状態でナノ物質を把持した後、VGを対応電圧VGd以上に設定(m7)してナノ物質を握力付加状態で把持する。この握力Fgはゲート電圧の超過量VG−VGdの関数として計測(m9)される。ゲート電圧VGを可変することによって握力を調整できる。
【0046】
サイズdが限界間隔SLより小さい場合には、ゲート電圧VGを限界電圧VGL以上に設定(m8)しなければナノ物質を把持できない。このときゲート用ナノチューブ8は自発的且つ瞬間的にナノ物質のサイズdにまで閉じ、その握力Fgは電圧差VG−VGLによって検出(m10)できる。このように、ナノ物質をある大きさの握力で把持すると、ナノ物質がダイオード型ナノピンセットから脱落することはない。
【0047】
ダイオード型ナノピンセットによってナノ物質を把持すると、後は通常のナノマニピュレーション(m11)に移行する。即ち、ナノ物質を把持したまま、ナノピンセットを上昇させ、所定の目的位置まで搬送する。その後、ナノピンセットを下降し、ゲート電圧VGをゼロにしてアームを完全に開放し、ナノ物質を試料上に放出する。この操作を繰り返すことによって、原料位置からナノ物質を選択し、目的位置にナノ物質を配置して目的とするナノ構造物を設計図に従って構築することができる。
【0048】
次に、ナノピンセットがナノ物質を把持した瞬間を自動計測したり、ナノ物質に対する握力を自動計測するために、ダイオード電流の活用を検討する。このダイオード電流の活用は、前述したゲート電圧の計測を併用することによって、その操作性と制御性を向上することができる。
【0049】
図5はゲート電圧に対するダイオード電流とダイオード電圧の関係を示したダイオード特性図である。この特性曲線もダイオード型ピンセットの具体的構成ごとに変化するから、一般的傾向を示すものとして説明する。
【0050】
ゲート電圧VGがゼロのとき、ナノチューブから構成されるアームには全く静電気は誘導されない。このVG=0におけるダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係は実線で描かれている。0≦VD≦0.8の範囲ではIDはゼロであり、VD=0.8Vからダイオード電流が流れ出し、つまりVD≧0.8でID≧0となっている。VDが負の領域においては原点に関して対称となっている。このような非線形関係は一般に整流特性と云われるが、本発明ではダイオード特性と呼んでいる。
【0051】
ゲート電圧VGが印加されると、ゲート用ナノチューブ8の先端部8aには正電荷が誘導され、ダイオード特性部DPには負電荷が誘導される。負電荷の誘導はダイオード電流IDの増加を意味する。例えば、VG=+2Vを印加するとIDが増加するため、ID−VD特性は鎖線で示すように実線より上方に移動する。VG=+4Vの場合には長破線の関係となり、更にVG=+5Vの場合には短破線の関係が成立する。
【0052】
この特性において、ダイオード電圧VDを一定に保持した状態で、ゲート電圧VGを増加させたときのダイオード電流IDの変化を見てみよう。VD=1.1Vでは、VG=0V→2V→4Vの変化で、ダイオード電流IDはP0→P2→P4と増加してゆく。ゲート電圧VGを印加しない点P0においてさえ、ID=0.05nAのダイオード電流が流れている。つまり、VD=1.1VではIDのスイッチング的変化は生じない。
【0053】
他方、VD=0.5Vの場合では、VG=0V→2V→4V→5Vの変化で、ダイオード電流IDはP0(P2)→P4→P5と増加してゆく。点P0と点P2におけるダイオード電流IDはゼロである。つまり、VG=0V、2VではIDは流れず、VG=4V、5VになってIDは流れることが分る。即ち、VD=0.5Vでは、VG<2Vでは電流が流れず、それ以上で電流が流れるというスイッチング特性が利用できる。
【0054】
以上はダイオード電流の第1利用方法を示し、ダイオード電流IDが急に流れ出すスイッチング作用を利用してナノ物質を把持したことを検出し、後はダイオード電流IDの大きさからナノ物質に対するピンセットの握力を検出することが可能となる。
【0055】
例えば、ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作して、そのサイズd=0.65μm(=650nm)であったとする。図3に示されるS−VG特性から、対応ゲート電圧VGd=4Vであることが算出される。つまり、ゲート電圧VGとして4Vを印加すれば握力がゼロの状態で把持できることを意味する。
【0056】
次に、図5に示されるID−VD特性から、VG=4VでIDがゼロから流れ出すVDを算出する。つまり、VG<4VではIDはほとんどゼロで、VG=4VでIDが急に流れ出す臨界条件を満たすVDを算出する。このVDを臨界ダイオード電圧と名づけると、図5からVD=0.5Vが算出される。
【0057】
従って、d=0.65μmのナノ物質に対しては、ダイオード電圧VD=0.5Vに固定した状態で、ゲート電圧VGを増加させ、後はダイオード電流IDを計測する。IDが急に流れ出したときにダイオード型ナノピンセットがナノ物質を把持したことを示し、更にゲート電圧VGを増加させるとIDが増加し、このIDの関数として握力の大きさが導出される。に相当している。このIDの大きさは電圧差VG−VGdに相当しており、この電圧差VG−VGdから握力を検出してもよいが、ダイオード電流IDから検出することもできるのである。
【0058】
同じサイズのナノ物質を操作する場合には、そのサイズdは同一であるから、臨界ダイオード電圧も同一になり、同一条件のままダイオード電流IDだけを検出して握力の検出が可能となる。
【0059】
図6及び図7はダイオード電流を用いた他の握力計測方法を示している。両図において、ナノチューブダイオードNDには所定のダイオード電圧VGが印加されており、その結果ダイオード電流IDが流れると考える。
【0060】
図6は限界間隔SLより大きなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。ゲート電圧VGをゼロから次第に増加すると、ゲート用ナノチューブ8がナノチューブダイオードNDに接近するから、ダイオード電流IDは次第に増加する。
【0061】
対応ゲート電圧VGdに達すると、ゲート用ナノチューブ8はナノ物質に当接するから、ゲート用ナノチューブ8がそれ以上接近する事はない。しかし、その状態で更にゲート電圧VGを増加してゆくと静電誘導は強くなるため、ダイオード電流IDも増加する。但し、ゲート用ナノチューブ8の接近が無いから、増加勾配は小さい。従って、対応ゲート電圧VGdの左右でダイオード電流IDに折れ曲りが生じる。
【0062】
従って、ダイオード電流IDの折れ曲りによりナノ物質を把持したことを計測できる。更に、対応ゲート電圧VGdよりゲート電圧をΔVGだけ増加させると、ナノ物質に対し握力が生じ、この握力Fgは電流差ID−IDd又は超過ゲート電圧ΔVGdの関数として検出する事ができる。
【0063】
図7は限界間隔SLより小さなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。勿論、ナノチューブダイオードNDには所定のダイオード電圧VGが印加されているから、その結果ダイオード電流IDが流れている。
【0064】
ゲート電圧VGヲ次第に増加させてゆくと、ダイオード電流IDも増加してゆく。この関係は、図5におけるVD=1.1VのP0→P2→P4に対応している。従って、図7においてもダイオード電流IDはP0→P2→P4の如く増加してゆくと考えられる。
【0065】
今、ナノ物質のサイズdは限界間隔SLより小さいから、ゲート電圧VGが限界ゲート電圧VGLに達すると、その瞬間にゲート用ナノチューブ8は閉じてナノ物質を把持し、アーム間隔Sはサイズdに等しくなる。
【0066】
限界ゲート電圧VGLを印加した状態で、ゲート用ナノチューブ8は瞬間的に閉じるから、静電誘導の急上昇によりダイオード電圧IDも急上昇し、増加分ΔIDの急上昇が検出される。従って、ダイオード電流IDの増加分ΔIDを計測することによりナノ物質の把持が検出される事になる。把持力である握力FgはΔIDの関数、即ちf(ΔID)で導出できる。
【0067】
もし、ナノ物質を把持できなかった場合には、ゲート用ナノチューブ8はナノチューブダイオードNDと接触して短絡するから、ダイオード電流IDの増加は更に大きな短絡増加分ΔIDMにまで達する。従って、電流増加分ΔIDがΔIDMに達しない程度の増加量()である場合にはナノ物質を把持したと判断でき、またΔIDがΔIDMの大きさにまで急上昇した場合にはナノ物質を把持できずに短絡したと判断できる。
【0068】
図8はダイオード電流を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。このフローの考え方は、ダイオード型ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作してそのサイズdを計測し、そのサイズに応じてナノピンセットを制御するものである。
【0069】
ステップn1において、ダイオード型ナノピンセットの特性値である最大間隔SMを初期設定する。次に、ゲート用ナノチューブ8を探針として使用し、ナノ物質をAFM操作してそのサイズdを検出(n2)する。
【0070】
ナノ物質のサイズdがアームの最大間隔SMより大きければ(n3)、このナノピンセットではそのナノ物質を把持することはできず、操作不能(n4)となる。この場合には、そのナノ物質の操作を諦め、再びステップn2に戻って新しいナノ物質のサイズ測定に入る。
【0071】
サイズdがd≦SMを満足していれば、サイズdとナノピンセットの限界間隔SLとの比較(n5)を行なう。サイズdが限界間隔SLより小さい場合には、所定のダイオード電圧VDを印加(n6)する。この状態でゲート電圧VGを印加して増加(n7)させてゆき、ダイオード電流IDが急上昇するかどうかをチェック(n8)する。
【0072】
ダイオード電流IDが急上昇しなければ、更にゲート電圧VGを増加させてダイオード電流IDの急上昇をチェックし、IDの急上昇を検出するまでこの操作を反復する。IDの急上昇を検出すると、ダイオード電流IDの増加分ΔIDを測定(n9)する。
【0073】
ダイオード電流の増加分ΔIDが短絡増加分ΔIDMより小さい場合(n10)には、ナノピンセットがナノ物質を把持したことを意味する。従って、ナノ物質に対する握力FgをFg=f(ΔID)により計算(n11)して、そのナノ物質を所定の目的場所まで移動(n12)させる。もし、ΔIDがΔIDM以上の場合にはナノピンセットがナノ物質を把持せずに短絡した事を意味するので、元に戻って別のナノ物質のサイズ測定(n2)に入る。
【0074】
ナノ物質のサイズが限界間隔SL以上の場合(n5)には、所定のダイオード電圧VDを印加(n13)する。この状態で、ゲート電圧VGを増加(n14)させながらダイオード電流IDを測定(n15)する。そして、ダイオード電流IDに折れ曲りが生じたかどうかを判断(n16)し、折れ曲りが無い場合には再びステップn14に戻って上記のフローを繰り返す。
【0075】
もし、ダイオード電流IDに折れ曲りが確認された場合には、ナノピンセットがナノ物質を把持したことを意味する。このときのダイオード電流を対応ダイオード電流IDdと呼んで内部設定(n17)を行なう。対応ダイオード電流IDdでは、ナノ物質は脱落寸前の状態で把持されている。
【0076】
更に、ゲート電圧VGを増加すると、ゲート用ナノチューブ8はナノ物質を把持しているから、それ以上には閉じない。しかし、ダイオード電流IDは増加するから、ID−IDdに依存した握力Fgでナノ物質を把持する事になる。この握力FgはFg=f(ID−IDd)の形式で関数計算(n18)される。その後、このナノ物質を目的場所まで移動(n12)させ、ステップn2に戻って新たなナノ物質に対し上記操作を繰り返す。
【0077】
図9はBタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。ダイオード型ナノピンセット1の突出部6の一方側には、第1アームとなるゲート用ナノチューブ8が突設されている。突出部6の他方側には第2アームとなるナノチューブダイオードNDが突設されている。
【0078】
このナノチューブダイオードNDは2本のダイオード用ナノチューブ9、10から構成されている。ダイオード用ナノチューブ9、10の基端部9b、10bは突出部6の側面にコーティング膜により固定され、先端9c、10cは相互に接触させている。この接触状態は周囲を堆積物CFで囲繞することにより固定されている。この接触部がダイオード特性部DPとなっている。
【0079】
このナノチューブダイオードNDのダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の実線で表される非線形関係を示した。ナノチューブを単に接触させるだけでもこのような非線形特性を出現させることができる。非線形関係は原点に関して中心対称性があり、非線形性からバリスタ特性を有していることが分る。本発明のダイオード特性はこのようなバリスタ特性も包含した概念である。
【0080】
図10はCタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。Bタイプと同様に、ダイオード型ナノピンセット1の突出部6の一方側には、第1アームとなるゲート用ナノチューブ8が突設されている。突出部6の他方側には第2アームとなるナノチューブダイオードNDが突設されている。
【0081】
ナノチューブダイオードNDは2本のダイオード用ナノチューブ9、10から構成され、その基端部9b、10bは突出部6の側面にコーティング膜により固定されている。その先端9c、10cの間には独立した短い中間ナノチューブ7が介装され、二つの接点を有して相互に接触した状態にある。この接触状態は周囲を堆積物CFで囲繞することにより固定されている。この2接点を有した接触部が本発明のダイオード特性部DPを構成する。中間ナノチューブ7の先端7cを突出させておくと、この先端7cが第2アームの先端になったり、AFM探針として利用できるので都合がよい。
【0082】
このダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の長破線で表される非線形関係を示すことが分かった。二つの接点を有することから非線形性が強くなっていることが分かる。ダイオード電圧VDのマイナス側の測定が十分ではないが、原点に関してほぼ中心対称をなすことが推定される。強い非線形性から電気抵抗も非線形に変化し、強いバリスタ特性を有していることも分る。
【0083】
図11はDタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。このDタイプは前述したCタイプとほとんど同様の構成を有し、異なる点は、二つの接点の代わりに二つの非接触部NCがあることである。つまり、ダイオード用ナノチューブ9、10の先端9c、10cと中間ナノチューブ7とは接近しているものの相互に非接触であるように保持されている。
【0084】
つまり、Dタイプでは2接点の代わりに2非接触部NCがある。この非接触部NCは、絶縁性の堆積物CFを周囲だけでなくその非接触部にも充填することによって形成されている。堆積物CFとしては、Bタイプ・Cタイプ・Dタイプに共通してカーボン堆積物が簡易に利用される。所要部位に電子ビームを照射すると、電子顕微鏡内に存在する有機物質が電子ビームにより分解されて照射部位に堆積してゆくことを利用する。
【0085】
Dタイプでは、この二つの非接触部NCの領域がダイオード特性部DPを構成する。このダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の短破線で表される非線形関係を示すことが分かった。二つの非接触部NCを有することから更に非線形性が強くなり、±1.9Vの臨界電圧を有していることが分かった。この特性は一番明瞭なダイオード特性である。
【0086】
臨界特性とは、ダイオード電圧VDが臨界電圧以上になるとダイオード電流IDが急激に大きくなる特性であり、スイッチング特性又は整流特性と言ってもよいう。従って、臨界電圧の左右ではダイオード電流IDがオン・オフに変化し、また出力側に負荷抵抗を接続すると臨界電圧以下は遮断されるので、整流作用を有する。Dタイプではこのように明瞭な半導体特性が発現する。
【0087】
図12は、図9・10・11に示される3種類のナノチューブダイオード(B、C、D)のID−VD特性図である。実線がBタイプのダイオード特性、長破線がCタイプのダイオード特性、短破線がDタイプのダイオード特性を示す。
【0088】
本発明では、ナノチューブダイオードの実施形態としてAタイプ、Bタイプ、Cタイプ及びDタイプの4種類が例示されているが、ダイオード特性はこれらの形態に限定されるものではない。ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係が非線形なダイオード特性を発現するナノチューブの組み合わせは全て本発明のナノチューブダイオードに包含される。
【0089】
図13は本発明に係るダイオード型ナノピンセットを用いたナノマニピュレータの説明図である。試料32の表面には、球状ナノ物質28や棒状ナノ物質30等を積載した原料位置PRと、これらの原料物質を利用してナノ構造物34を構築する目的位置PSが存在する。
【0090】
原料位置から目的位置までナノ物質を搬送するために、ダイオード型ナノピンセット1を制御する制御回路20が設けられている。この制御回路20は、ナノピンセット1をXYZ方向に搬送する搬送制御回路23と、ナノ物質を把持・放出するためのナノピンセット1の開閉制御を行なうナノピンセット制御回路26から構成されている。また、搬送制御回路23はX方向とY方向の駆動制御を行なうXY制御回路22と、Z方向の駆動制御を行うZ制御回路24からなる。搬送制御やナノピンセット制御の状態はディスプレイ27に表示される。
【0091】
次に、このダイオード型ナノピンセット1を用いたナノマニピュレータの動作を簡単に説明する。まず、ナノピンセット1をZ方向に上昇させて原料位置PRに移動させ、ゲート用ナノチューブ8(第1アーム)とナノチューブダイオードND(第2アーム)を閉じてAFM探針とする。Z方向に下降させた後、搬送制御回路23により原料位置付近のAFM走査を行なう。今、把持すべき物質が棒状ナノ物質30とすると、その物質の位置とサイズを測定する。
【0092】
計測されたサイズをナノピンセット制御回路26に格納し、アームを開いてターゲットとなる棒状ナノ物質30を挟み、アームを閉じて急激に流れるダイオード電流を計測して両アームが棒状ナノ物質を把持したことを検出し、更にダイオード電流を検出しながらアームが閉じる事により所定の握力で棒状ナノ物質を把持する。
【0093】
その状態でナノピンセット1をZ方向に上昇させ、搬送制御回路23によりナノピンセット1を目的位置PSまで移動させる。そして、ナノピンセット1をZ方向に下降させ、ナノ構造物34の特定場所に到達すると、アームを開いて棒状ナノ物質30を放出する。その後、アームを閉じてナノ構造物34をAFM走査して棒状ナノ物質30が正しく配置されたかどうかを確認する。
【0094】
確認した後、ナノピンセット1を上昇させ、搬送制御回路23により原料位置PRに帰還し、再び次のナノ物質を選択して上記の動作を繰り返す。この繰返しにより、多数のナノ物質を設計図に従って配設してナノ構造物34を構築してゆく。ナノ構造物34としては、光・電子情報関連の新素材やナノサイズ部品、細胞やタンパク質の集積による新しいバイオ関連機能物質など種々のものがある。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【0096】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ゲート用ナノチューブを第1アームとし、ナノチューブダイオードを第2アームとして、この両アーム間にナノ物質を把持したときに、ナノチューブダイオードに形成されたダイオード特性部の反応によってナノ物質を把持したことや、ナノ物質を把持する握力を検出することができ、ナノ物質に対する握力を可変調整しながらナノピンセット操作を実現できる。
【0097】
第2の発明によれば、1本のナノチューブを2本に折り畳み、その両端を基端部としてホルダーに固定するだけでナノチューブダイオードを構成でき、しかも先端折畳部がダイオード特性部となるから、組立が簡単でダイオード特性部を確実に構成できるダイオード型ナノピンセットを提供できる。
【0098】
第3の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、その先端部は相互に接触させるだけでダイオード特性部を構成できるから、その接触部を堆積物などで周囲から保護すれば、耐久性があるダイオード型ナノピンセットを実現できる。
【0099】
第4の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に接触させて介装するだけでダイオード特性部を構成でき、しかも周囲を堆積物などで周囲から保護すれば、ダイオード特性部の反応性を高くしながら耐久性を有せしめることができ、しかも中間ナノチューブの先端を突出させることによりナノチューブダイオードの先端を先鋭化でき、ピンセット操作以外にAFM操作に用いる場合でも分解能を高めることができる。
【0100】
第5の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に非接触状態で介装するから、ダイオード特性を格段に向上でき、しかも周囲を堆積物などで保護すれば耐久性を向上でき、しかも中間ナノチューブの先端を突出させることによりナノピンセット操作のみならずAFM操作において分解能を一層向上させることができる。
【0101】
第6の発明によれば、ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加し、このゲート電圧を制御してナノ物質を握力状態で把持するときに、このゲート電圧を通してナノ物質に対する握力を検出するダイオード型ナノピンセット提供できる。ゲート電圧の測定により握力計測を可能にしたもので、ナノ物質を脱落寸前状態で把持する限界ゲート電圧と比較すれば、そのゲート電圧の超過分により握力を正確に検出でき、ダイオード電流との組み合わせにより更に正確な握力制御を実現する事ができる。ナノ物質に対し過剰な握力を加えることを防止でき、ナノ物質を構造的に変形させないようにナノピンセット操作を制御することが可能になる。
【0102】
第7の発明によれば、ナノチューブダイオードの基端部間にダイオード電圧を印加しながらゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加してナノチューブダイオードに流れるダイオード電流を制御し、このダイオード電流を通して両アームによるナノ物質を把持する握力を検出するダイオード型ナノピンセットを提供できる。ナノ物質を把持した瞬間にダイオード電流が急上昇する現象や、ナノ物質を把持する前後でダイオード電流の増加関数が折れ曲る現象を用いることにより、ダイオード電流の計測を通してナノ物質の把持や握力の自在制御を実現できる。
【0103】
第8の発明によれば、ダイオード型ナノピンセットと、このダイオード型ナノピンセットに印加するゲート電圧とダイオード電圧とダイオード電流を可変制御するピンセット制御回路と、ダイオード型ナノピンセットをXYZ方向に搬送制御する搬送制御回路から構成されるナノマニピュレータ装置を提供できる。ナノ物質に対する握力制御が可能なダイオード型ナノピンセットを制御回路と組み合わせてナノロボット機能を有したナノマニピュレータ装置を具現したものであり、このナノロボットを活用することにより自在にナノ構造物の構築を可能にし、ナノテクノロジーの発展に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイオード型ナノピンセットの実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示されるダイオード型ナノピンセットの回路構成図である。
【図3】ダイオード電圧VDの非印加時におけるゲート電圧VGとアーム間隔Sの関係曲線図である。
【図4】ゲート電圧を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。
【図5】ゲート電圧に対するダイオード電流とダイオード電圧の関係を示したダイオード特性図である。
【図6】限界間隔SLより大きなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。
【図7】限界間隔SLより小さなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。
【図8】ダイオード電流を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。
【図9】Bタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図10】Cタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図11】Dタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図12】図9・10・11に示される3種類のナノチューブダイオード(B、C、D)のID−VD特性図である。
【図13】本発明に係るダイオード型ナノピンセットを用いたナノマニピュレータの説明図である。
【符号の説明】
1はダイオード型ナノピンセット、2はカンチレバー、4はカンチレバー部、6は突出部、6aは先端面、6bは側面、6cは側面、6dは後端面、6eは突出端、7は中間ナノチューブ、7cは先端、8はゲート用ナノチューブ(第1アーム)、9・10はダイオード用ナノチューブ、8a・9a・10aは先端部、8b・9b・10bは基端部、8c・9c・10cは先端、12・13・14はリード電極、12a・13a・14aは接点、16・17・18はコーティング膜、20は制御回路、22はXY制御回路、23は搬送制御回路、24はZ制御回路、26はナノピンセット制御回路、27はディスプレイ、28は球状ナノ物質、30は棒状ナノ物質、32は試料、34はナノ構造物、CFは堆積物、DAはダイオード電流計、dはサイズ、DNはナノチューブ直径、DPはダイオード特性部、EDはダイオード電源、EGはゲート電源、Fgは握力、NDはナノチューブダイオード(第2アーム)、PEはアース点、Sはアーム間隔、SDはダイオードスイッチ、SGはゲートスイッチ、SLは限界間隔、SMは最大間隔、VDはダイオード電圧、VGはゲート電圧、VGdは対応ゲート電圧、VGLは限界ゲート電圧。
【発明の属する技術分野】
本発明はナノサイズの物質(以後、ナノ物質という)を把持したり放出したりできるナノピンセットに関し、更に詳細には、ナノ物質を把持するナノチューブからなる少なくとも二つのアーム間の離間距離を電圧又は電流として検出してナノ物質の把持・放出の最適制御を可能にし、またこのナノピンセットを利用してナノ物質を搬送制御してナノサイズ部品、ナノ分子デバイス等のナノ構造物を組み立てることができるダイオード型ナノピンセット及びこれを用いたナノマニピュレータ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の技術開発はますます極小領域を指向している。例えば、光・電子情報関連の新素材やナノサイズ部品の創製、細胞やタンパク質の集積による新しいバイオ関連機能物質の創製のように、ナノ領域における革新的な製造技術の開発が要望されている。
【0003】
このようなナノ構造物を構築するには、ナノ物質を把持したりそれを放出したりできるナノピンセットの開発が必要になり、更にナノ物質を把持・移動・放出させるためにナノマニピュレータ装置の開発が要請される。
【0004】
まず、ナノピンセットの第1原型は、Philip KimとCharles M. Lieber により1999年12月10日に発行されたサイエンス誌上に発表された。このナノピンセットは、ガラスチューブを先端直径が100nmになるまで引張って延伸させ、この先端にカーボンナノチューブを固定して構成されている。このナノピンセットは、二つのカーボンナノチューブに直流電圧を印加してカーボンナノチューブの先端に正負の静電気を発生させ、この静電引力によってカーボンナノチューブの先端を開閉させる方式を採用している。
【0005】
しかし、このナノピンセットの基体は延伸加工して先端を先鋭にしたガラスチューブであるから極めて脆く、しかもカーボンナノチューブをその先端に強固に固定する技術が確立されていなかったために、カーボンナノチューブがガラスチューブから脱落する危険性があった。また、ガラスチューブを自在に搬送制御する技術も確立されていなかったので、ナノピンセットとしての利用が制限されていた。
【0006】
これらの欠点を改善するために、本発明者等は原子間力顕微鏡(AFM)に用いられるカンチレバーとそのカンチレバーの駆動制御装置に着目した。そして、特開2001−252900により、AFM用のカンチレバーの突出部に2本のカーボンナノチューブを強固に固定する技術を開発し、このカーボンナノチューブに静電圧を印加して静電引力によりカーボンナノチューブの先端間を開閉できるナノピンセットを開発した。同時に、カンチレバーの駆動制御装置を用いてナノピンセットをナノスケールで自在に搬送制御できるナノマニピュレータ装置を開発したのである。
【0007】
更に、本発明者等は、特願2000−404006により、前記カンチレバーの突出部に3本以上のカーボンナノチューブを固定し、3本以上のカーボンナノチューブの先端間を静電引力により開閉することによって、球状ナノ物質や棒状ナノ物質のような異形のナノ物質でも確実に把持・搬送できるナノピンセットを開発することに成功した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ナノピンセットはナノ物質を自在に操作できるナノロボットとも呼ぶことができる。人間と同程度の大きさを有するマクロのロボットで考えると、例えばコップを把持する場合において、単にコップを把持できるだけでなく、コップを割らない程度に制御された握力でコップを把持することが必要とされる。この握力制御の要請は当然にナノロボットにおいても要請される。
【0009】
ナノピンセットでナノ物質を搬送制御するためには、まずナノピンセットによりナノ物質を把持したかどうかを検出し、次にどの程度の握力でナノ物質を把持しているかを検出することが必要となる。その理由は、握力が過剰に大きくなると、ナノ物質が構造的に変形する可能性があるからである。このような握力の制御技術は従来の技術では未だに開発されていない。
【0010】
従って、本発明は、ナノ物質を把持する際に、把持したかどうかを検出でき、またナノ物質を把持する握力を検出することができるナノピンセットを開発し、同時にこのナノピンセットを使用してナノ物質を操作できるナノマニピュレータ装置を開発することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ホルダーから突出状に形成された少なくとも第1アームと第2アームを静電気により開閉自在にしてナノ物質を把持するナノピンセットにおいて、前記第1アームは基端部をホルダーに固定して先端部を突出させたゲート用ナノチューブで形成され、前記第2アームは2本の基端部をホルダーに固定し先端部にダイオード特性部を形成したナノチューブダイオードで構成されることを特徴とするダイオード型ナノピンセットである。ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオードの間の静電引力とダイオード特性との相互作用を利用して、ナノ物質を把持したかどうかを検出し、またナノ物質を把持する握力の大きさを検出できる静電ナノピンセットを実現するものである。
【0012】
第2の発明は、ナノチューブダイオードが、1本のナノチューブを2本に折り畳んで構成され、その両端が基端部として前記ホルダーに固定され、先端折畳部はダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。1本のナノチューブを折り畳むだけでダイオード特性を発現できる極めて独創的なナノチューブダイオードの構成を提供したものである。
【0013】
第3の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部は相互に接触してその接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。2本のナノチューブの先端を軽く接触させるだけで、その接触部がダイオード特性を発現するという新規な知見に基づいてなされた発明であり、ダイオード特性の発現様式の多様性を示すものである。
【0014】
第4の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に接触させて介装し、この接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。2本のナノチューブの先端間に中間ナノチューブを接触介在させるだけでダイオード特性の強化を実現したものであり、ナノ物質の把持と握力の計測を簡単に行えるダイオード型ナノピンセットを提供できる。
【0015】
第5の発明は、ナノチューブダイオードが、2本のナノチューブの基端部がホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間には独立した中間ナノチューブがカーボン堆積物の充填により相互に電気的に絶縁状態になるように介装され、この電気絶縁部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となるダイオード型ナノピンセットである。カーボン堆積物により2本のナノチューブの先端と中間ナノチューブを相互に絶縁状態に保持すると、ダイオード特性の更なる強化が実現でき、ナノ物質の把持と握力の計測を確実にして、ナノピンセットの操作性や制御性の高度化を図ることができる。
【0016】
第6の発明は、ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加し、このゲート電圧を制御してナノ物質を握力状態で把持するときに、このゲート電圧を通してナノ物質に対する握力を検出するダイオード型ナノピンセットである。ゲート電圧の測定により握力計測を可能にしたもので、ナノ物質を脱落寸前状態で把持する限界ゲート電圧と比較すれば、そのゲート電圧の超過分により握力を正確に検出でき、ダイオード電流との組み合わせにより更に正確な握力制御を実現する事ができる。
【0017】
第7の発明は、ナノチューブダイオードの基端部間にダイオード電圧を印加しながらゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加してナノチューブダイオードに流れるダイオード電流を制御し、このダイオード電流を通して両アームによるナノ物質を把持する握力を検出するダイオード型ナノピンセットである。ナノ物質を把持した瞬間にダイオード電流が急上昇する現象や、ナノ物質を把持する前後でダイオード電流の増加直線が折れ曲る現象を用いることにより、ダイオード電流の計測を通してナノ物質の把持や握力の自在制御を実現したものである。
【0018】
第8の発明は、ダイオード型ナノピンセットと、このダイオード型ナノピンセットに印加するゲート電圧とダイオード電圧とダイオード電流を可変制御するピンセット制御回路と、ダイオード型ナノピンセットをXYZ方向に搬送制御する搬送制御回路から構成されるナノマニピュレータ装置である。ナノ物質に対する握力制御が可能なダイオード型ナノピンセットを制御回路と組み合わせてナノロボット機能を有したナノマニピュレータ装置を具現したものであり、このナノロボットを活用することにより自在にナノ構造物の構築を可能にする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係るダイオード型ナノピンセット及びこれを用いたナノマニピュレータ装置の実施形態を図面に従って詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明に係るダイオード型ナノピンセットの実施形態の斜視図である。このダイオード型ナノピンセット1はホルダーの先端にナノチューブからなる二つのアームを取り付けて構成される。この実施形態では、ホルダーの一例としてAFM用のカンチレバー2の突出部6が利用されているが、その他の構造でも構わない。ここでAFMとは原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)の略称である。
【0021】
カンチレバー2は、カンチレバー部4とその先端に突設された突出部6から構成されている。この突出部6の形状には種々あるが、ここでは先端面6a、側面6b・6c、後端面6d及び突出端6eからその外形が形成されている。カンチレバー部4と先端面6aにはリード電極12が形成され、カンチレバー部4の両側面から側面6b・6cにはリード電極13・14が形成されている。
【0022】
突出部6には、ダイオード型ナノピンセット1の第1アームとなるゲート用ナノチューブ8と、第2アームとなるナノチューブダイオードNDが下方に突設されている。まず、カーボンナノチューブであるゲート用ナノチューブ8の基端部8bは前記リード電極12に導通するように先端面6aに接触して配置され、コーティング膜16で固定されている。
【0023】
この実施形態では、ナノチューブダイオードNDは一本のカーボンナノチューブを折り畳んで形成され、Aタイプのナノチューブダイオードと呼ぶ。ダイオード用ナノチューブ9・10はこの折畳によって形成された両足で、その基端部9b・10bはリード電極13・14に導通するように側面6b・6cに接触して配置され、コーティング膜17・18により固定されている。
【0024】
前述のように、カーボンナノチューブは真中で折り畳まれ、その先端折畳部は下方に突出するように配置される。この先端折畳部では通常のカーボンナノチューブの性質が変性して電気的な絶縁性が高まる傾向があり、この先端折畳部がダイオード特性を発現するダイオード特性部DPとなる。このダイオード特性部DPでは、ダイオード電圧VDを印加したときにダイオード電流IDが流れ、このID−VD特性が電子素子のダイオードと類似した構造を示す。詳細は図5で説明される。
【0025】
第1アームとなるゲート用ナノチューブ8と第2アームとなるナノチューブダイオードNDがナノピンセットの操作部を構成し、先端8cとダイオード特性部DPの間隔がアーム間隔Sとなり、このアーム間隔Sを拡大・縮小することによりナノ物質の把持・放出を行なう。
【0026】
ダイオード型ナノピンセット1の後方にはナノピンセット制御回路26が形成されている。このナノピンセット制御回路26はゲート電源EG、ダイオード電源ED、ゲートスイッチSG、ダイオードスイッチSD、ダイオード電流計DAから構成されている。この回路は接点12a・13a・14aを介してリード電極12・13・14に接続されている。
【0027】
図2は、図1に示されるダイオード型ナノピンセットの回路構成図である。ダイオードスイッチSDを閉鎖するとナノチューブダイオードNDにダイオード電圧VDが印加され、ダイオード電流IDが矢印のように流れる。このとき、ダイオード用ナノチューブ10がアースとなり、ダイオード用ナノチューブ9の電位がVDに設定される。
【0028】
また、ゲートスイッチSGを閉鎖すると、ゲート電源EGにより点PEの電位がアースになり、ゲート用ナノチューブ8の電位がゲート電圧VGに設定される。このゲート電圧VGによりゲート用ナノチューブ8の先端部8aには正電荷(+)が、同時にダイオード特性部DP近傍には負電荷(−)が静電誘導される。
【0029】
点PEがアースとなっているから、ダイオード用ナノチューブ10の電位はゼロ、ダイオード用ナノチューブ9の電位はVD、ゲート用ナノチューブ8の電位はVG−VDなる。従って、ナノチューブ間の電位差は、ナノチューブ9・10間ではVD、ナノチューブ8・10間ではVG、ナノチューブ8・9間ではVG−VDとなる。
【0030】
ダイオード特性部DPには矢印方向にダイオード電流IDを流しながら、同時にダイオード特性部DPに負電荷を静電誘導させる必要があるから、ゲート電圧VGはダイオード電圧VDより大きく設定される必要がある。即ち、VG>VDが必要な条件となる。
【0031】
詳しく述べると、ゲート電圧VGにより静電誘導された正電荷と負電荷の静電引力によりアーム間隔Sは開閉調整され、この開閉調整はダイオード電圧VDにより影響されないことが好ましい。この条件を満足させるためには、ゲート電圧VGがダイオード電圧VDより十分大きいことが要請され、VG≫VDが満足される事が望ましい。
【0032】
前述したように、ダイオード特性部DPではその電流電圧関係ID−VDにダイオード特性が成立している。図5に示されるように、その関係はダイオード電圧VDを増加させてゆくと、ダイオード電流IDが急激に増加する非線形曲線を示す。この関係は電気抵抗が変化する意味からバリスタ特性といってもよい。また、ダイオード電圧VDがある臨界値VDCに達すると電流がゼロから急に流れ出す場合には、整流特性と呼んでも構わない。本発明ではこれらの非線形特性を纏めてダイオード特性と呼んでいる。
【0033】
ゲート電圧VGを印加すると、ゲート用ナノチューブ8の先端8cがダイオード特性部DPに接近するから、ダイオード特性部DPに作用する電界が変化し、ダイオード電流IDも変化する。言い換えると、ゲート電圧VGを変化すると、ID−VD特性が変化することが分かる。つまり、ゲート電圧VGが決まれば、ID−VD特性も一意的に決まる。
【0034】
このダイオード電流IDがゲート電圧VGで変化することは、量子論的にはクーロンブロッケードで説明できる。ゲート電圧VGを増加すると、ダイオード特性部DPに電子が静電的に誘導され、それはダイオード電流IDが増加することを意味する。電子を1個誘導するにはそれだけのエネルギーが必要であるから、ゲート電圧のステップ的な増加の度に電子が一個ずつ量子的に誘導されることになる。従って、1ステップに満たない電圧増加では電子は誘導されないから、その意味でクーロンブロッケードが成立している。
【0035】
図3はダイオード電圧VDの非印加時におけるゲート電圧VGとアーム間隔Sの関係曲線図である。この関係曲線はダイオード型ピンセットの具体的構成ごとに変化するから、一般的傾向を示すものとして説明する。
【0036】
このダイオード型ナノピンセット1では、ゲート用ナノチューブ8の断面直径DNは15nmであり、ゲート用ナノチューブ8とナノチューブダイオードNDの突出部6からの長さLは2.5μmである。VG=0Vのときにアーム間隔Sは最大になり、その最大間隔SM=0.82μmである。
【0037】
ゲート電圧VGを増加してゆくと、静電引力により主としてゲート用ナノチューブ8がナノチューブダイオードNDに対し接近するように傾斜してゆく。1本のカーボンナノチューブから構成されるゲート用ナノチューブ8の方が1本を二つに折り畳んだナノチューブダイオードNDより撓み易いことは容易に理解できる。
【0038】
VG=0V、2V、4V、5Vのように、VGを増加するに従って、アーム間隔Sは次第に小さくなってゆく。例えば、VG=0VでSM=0.82μmであったものが、VG=4VではS=0.65μmと小さくなる。しかし、限界ゲート電圧VGL=5.6Vに達した瞬間に、ゲート用ナノチューブ8の先端8cはダイオード特性部DPに接触してしまう。
【0039】
中間領域では静電引力とカーボンナノチューブの撓み弾性力とは適切にバランスしているが、VGL=5.6Vになると静電引力と撓み弾性力とのバランスが突然崩れ、静電引力がちょっとでも大きくなる瞬間にゲート用ナノチューブ8の先端8cがダイオード特性部DPに吸引されてしまうのである。つまり、限界ゲート電圧VGL=5.6Vのとき限界アーム間隔SL=0.38μmであり、5.6V以上のゲート電圧VGではアーム間隔S=0となる。
【0040】
図4はゲート電圧を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。このフローの考え方は、ダイオード型ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作してそのサイズdを計測し、そのサイズに応じてナノピンセットを制御するものである。
【0041】
図3の数値を用いて説明すると、ナノ物質のサイズdが最大間隔SM=0.82μmを超える場合には把持不能と判断し、0.82μm(SM)≧d≧0.38μm(SL)の場合にはそのサイズdに等しいアーム間隔Sを与えるゲート電圧VGdを図3の曲線から算出する。ゲート電圧VGを印加しないでナノ物質を把持した後、VGをVGdまで増加すると、握力がゼロの状態で把持したことになる。VGをVGdより大きくすると、アーム間隔は狭まらないが、電圧差VG−VGdに相当する握力で把持されたことになる。従って、握力FgをVG−VGdの関数として検出する。
【0042】
更に、d<0.38μm(SL)の場合には、ゲート電圧VGを限界電圧VGLに設定し、ゲート用ナノチューブ8が自発的に閉じてナノ物質を把持する。もしナノ物質が無ければアームは相互に完全に閉じることになるが、この簡易フローではそのような事態は考慮しない事にする。握力を増大させるために、ゲート電圧VGを限界ゲート電圧VGLより大きくすると、ナノ物質が存在するためにアーム間隔Sはdより狭まらないが、握力は増加する。この簡易フローでは、この握力Fgを電圧差VG−VGLの関数として検出する。
【0043】
次に、上述で数値的に説明した流れを簡易フローを用いて説明をする。ステップm1によりこのダイオード型ナノピンセットの最大間隔SM、限界間隔SL、限界ゲート電圧VGLを初期設定する。次に、このナノピンセットのゲート用ナノチューブ8の先端8cを探針としてAFM操作し、試料上のナノ物質のサイズdを測定(m2)する。
【0044】
図3の曲線データから、このサイズdに相当する対応電圧VGdを算出(m3)する。例えば、d=0.65μm(=650nm)ではVGd=4Vとなる。このサイズdが最大間隔SMより大きい場合(m4)には、このダイオード型ナノピンセットでは把持することができないから操作不能と判断(m5)し、m2に戻って次のナノ物質のサイズ測定を行なう。
【0045】
サイズdが最大間隔SM以下であるが限界間隔SL以上の場合(m6)には、VG=0Vの状態でナノ物質を把持した後、VGを対応電圧VGd以上に設定(m7)してナノ物質を握力付加状態で把持する。この握力Fgはゲート電圧の超過量VG−VGdの関数として計測(m9)される。ゲート電圧VGを可変することによって握力を調整できる。
【0046】
サイズdが限界間隔SLより小さい場合には、ゲート電圧VGを限界電圧VGL以上に設定(m8)しなければナノ物質を把持できない。このときゲート用ナノチューブ8は自発的且つ瞬間的にナノ物質のサイズdにまで閉じ、その握力Fgは電圧差VG−VGLによって検出(m10)できる。このように、ナノ物質をある大きさの握力で把持すると、ナノ物質がダイオード型ナノピンセットから脱落することはない。
【0047】
ダイオード型ナノピンセットによってナノ物質を把持すると、後は通常のナノマニピュレーション(m11)に移行する。即ち、ナノ物質を把持したまま、ナノピンセットを上昇させ、所定の目的位置まで搬送する。その後、ナノピンセットを下降し、ゲート電圧VGをゼロにしてアームを完全に開放し、ナノ物質を試料上に放出する。この操作を繰り返すことによって、原料位置からナノ物質を選択し、目的位置にナノ物質を配置して目的とするナノ構造物を設計図に従って構築することができる。
【0048】
次に、ナノピンセットがナノ物質を把持した瞬間を自動計測したり、ナノ物質に対する握力を自動計測するために、ダイオード電流の活用を検討する。このダイオード電流の活用は、前述したゲート電圧の計測を併用することによって、その操作性と制御性を向上することができる。
【0049】
図5はゲート電圧に対するダイオード電流とダイオード電圧の関係を示したダイオード特性図である。この特性曲線もダイオード型ピンセットの具体的構成ごとに変化するから、一般的傾向を示すものとして説明する。
【0050】
ゲート電圧VGがゼロのとき、ナノチューブから構成されるアームには全く静電気は誘導されない。このVG=0におけるダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係は実線で描かれている。0≦VD≦0.8の範囲ではIDはゼロであり、VD=0.8Vからダイオード電流が流れ出し、つまりVD≧0.8でID≧0となっている。VDが負の領域においては原点に関して対称となっている。このような非線形関係は一般に整流特性と云われるが、本発明ではダイオード特性と呼んでいる。
【0051】
ゲート電圧VGが印加されると、ゲート用ナノチューブ8の先端部8aには正電荷が誘導され、ダイオード特性部DPには負電荷が誘導される。負電荷の誘導はダイオード電流IDの増加を意味する。例えば、VG=+2Vを印加するとIDが増加するため、ID−VD特性は鎖線で示すように実線より上方に移動する。VG=+4Vの場合には長破線の関係となり、更にVG=+5Vの場合には短破線の関係が成立する。
【0052】
この特性において、ダイオード電圧VDを一定に保持した状態で、ゲート電圧VGを増加させたときのダイオード電流IDの変化を見てみよう。VD=1.1Vでは、VG=0V→2V→4Vの変化で、ダイオード電流IDはP0→P2→P4と増加してゆく。ゲート電圧VGを印加しない点P0においてさえ、ID=0.05nAのダイオード電流が流れている。つまり、VD=1.1VではIDのスイッチング的変化は生じない。
【0053】
他方、VD=0.5Vの場合では、VG=0V→2V→4V→5Vの変化で、ダイオード電流IDはP0(P2)→P4→P5と増加してゆく。点P0と点P2におけるダイオード電流IDはゼロである。つまり、VG=0V、2VではIDは流れず、VG=4V、5VになってIDは流れることが分る。即ち、VD=0.5Vでは、VG<2Vでは電流が流れず、それ以上で電流が流れるというスイッチング特性が利用できる。
【0054】
以上はダイオード電流の第1利用方法を示し、ダイオード電流IDが急に流れ出すスイッチング作用を利用してナノ物質を把持したことを検出し、後はダイオード電流IDの大きさからナノ物質に対するピンセットの握力を検出することが可能となる。
【0055】
例えば、ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作して、そのサイズd=0.65μm(=650nm)であったとする。図3に示されるS−VG特性から、対応ゲート電圧VGd=4Vであることが算出される。つまり、ゲート電圧VGとして4Vを印加すれば握力がゼロの状態で把持できることを意味する。
【0056】
次に、図5に示されるID−VD特性から、VG=4VでIDがゼロから流れ出すVDを算出する。つまり、VG<4VではIDはほとんどゼロで、VG=4VでIDが急に流れ出す臨界条件を満たすVDを算出する。このVDを臨界ダイオード電圧と名づけると、図5からVD=0.5Vが算出される。
【0057】
従って、d=0.65μmのナノ物質に対しては、ダイオード電圧VD=0.5Vに固定した状態で、ゲート電圧VGを増加させ、後はダイオード電流IDを計測する。IDが急に流れ出したときにダイオード型ナノピンセットがナノ物質を把持したことを示し、更にゲート電圧VGを増加させるとIDが増加し、このIDの関数として握力の大きさが導出される。に相当している。このIDの大きさは電圧差VG−VGdに相当しており、この電圧差VG−VGdから握力を検出してもよいが、ダイオード電流IDから検出することもできるのである。
【0058】
同じサイズのナノ物質を操作する場合には、そのサイズdは同一であるから、臨界ダイオード電圧も同一になり、同一条件のままダイオード電流IDだけを検出して握力の検出が可能となる。
【0059】
図6及び図7はダイオード電流を用いた他の握力計測方法を示している。両図において、ナノチューブダイオードNDには所定のダイオード電圧VGが印加されており、その結果ダイオード電流IDが流れると考える。
【0060】
図6は限界間隔SLより大きなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。ゲート電圧VGをゼロから次第に増加すると、ゲート用ナノチューブ8がナノチューブダイオードNDに接近するから、ダイオード電流IDは次第に増加する。
【0061】
対応ゲート電圧VGdに達すると、ゲート用ナノチューブ8はナノ物質に当接するから、ゲート用ナノチューブ8がそれ以上接近する事はない。しかし、その状態で更にゲート電圧VGを増加してゆくと静電誘導は強くなるため、ダイオード電流IDも増加する。但し、ゲート用ナノチューブ8の接近が無いから、増加勾配は小さい。従って、対応ゲート電圧VGdの左右でダイオード電流IDに折れ曲りが生じる。
【0062】
従って、ダイオード電流IDの折れ曲りによりナノ物質を把持したことを計測できる。更に、対応ゲート電圧VGdよりゲート電圧をΔVGだけ増加させると、ナノ物質に対し握力が生じ、この握力Fgは電流差ID−IDd又は超過ゲート電圧ΔVGdの関数として検出する事ができる。
【0063】
図7は限界間隔SLより小さなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。勿論、ナノチューブダイオードNDには所定のダイオード電圧VGが印加されているから、その結果ダイオード電流IDが流れている。
【0064】
ゲート電圧VGヲ次第に増加させてゆくと、ダイオード電流IDも増加してゆく。この関係は、図5におけるVD=1.1VのP0→P2→P4に対応している。従って、図7においてもダイオード電流IDはP0→P2→P4の如く増加してゆくと考えられる。
【0065】
今、ナノ物質のサイズdは限界間隔SLより小さいから、ゲート電圧VGが限界ゲート電圧VGLに達すると、その瞬間にゲート用ナノチューブ8は閉じてナノ物質を把持し、アーム間隔Sはサイズdに等しくなる。
【0066】
限界ゲート電圧VGLを印加した状態で、ゲート用ナノチューブ8は瞬間的に閉じるから、静電誘導の急上昇によりダイオード電圧IDも急上昇し、増加分ΔIDの急上昇が検出される。従って、ダイオード電流IDの増加分ΔIDを計測することによりナノ物質の把持が検出される事になる。把持力である握力FgはΔIDの関数、即ちf(ΔID)で導出できる。
【0067】
もし、ナノ物質を把持できなかった場合には、ゲート用ナノチューブ8はナノチューブダイオードNDと接触して短絡するから、ダイオード電流IDの増加は更に大きな短絡増加分ΔIDMにまで達する。従って、電流増加分ΔIDがΔIDMに達しない程度の増加量()である場合にはナノ物質を把持したと判断でき、またΔIDがΔIDMの大きさにまで急上昇した場合にはナノ物質を把持できずに短絡したと判断できる。
【0068】
図8はダイオード電流を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。このフローの考え方は、ダイオード型ナノピンセットによりナノ物質をAFM操作してそのサイズdを計測し、そのサイズに応じてナノピンセットを制御するものである。
【0069】
ステップn1において、ダイオード型ナノピンセットの特性値である最大間隔SMを初期設定する。次に、ゲート用ナノチューブ8を探針として使用し、ナノ物質をAFM操作してそのサイズdを検出(n2)する。
【0070】
ナノ物質のサイズdがアームの最大間隔SMより大きければ(n3)、このナノピンセットではそのナノ物質を把持することはできず、操作不能(n4)となる。この場合には、そのナノ物質の操作を諦め、再びステップn2に戻って新しいナノ物質のサイズ測定に入る。
【0071】
サイズdがd≦SMを満足していれば、サイズdとナノピンセットの限界間隔SLとの比較(n5)を行なう。サイズdが限界間隔SLより小さい場合には、所定のダイオード電圧VDを印加(n6)する。この状態でゲート電圧VGを印加して増加(n7)させてゆき、ダイオード電流IDが急上昇するかどうかをチェック(n8)する。
【0072】
ダイオード電流IDが急上昇しなければ、更にゲート電圧VGを増加させてダイオード電流IDの急上昇をチェックし、IDの急上昇を検出するまでこの操作を反復する。IDの急上昇を検出すると、ダイオード電流IDの増加分ΔIDを測定(n9)する。
【0073】
ダイオード電流の増加分ΔIDが短絡増加分ΔIDMより小さい場合(n10)には、ナノピンセットがナノ物質を把持したことを意味する。従って、ナノ物質に対する握力FgをFg=f(ΔID)により計算(n11)して、そのナノ物質を所定の目的場所まで移動(n12)させる。もし、ΔIDがΔIDM以上の場合にはナノピンセットがナノ物質を把持せずに短絡した事を意味するので、元に戻って別のナノ物質のサイズ測定(n2)に入る。
【0074】
ナノ物質のサイズが限界間隔SL以上の場合(n5)には、所定のダイオード電圧VDを印加(n13)する。この状態で、ゲート電圧VGを増加(n14)させながらダイオード電流IDを測定(n15)する。そして、ダイオード電流IDに折れ曲りが生じたかどうかを判断(n16)し、折れ曲りが無い場合には再びステップn14に戻って上記のフローを繰り返す。
【0075】
もし、ダイオード電流IDに折れ曲りが確認された場合には、ナノピンセットがナノ物質を把持したことを意味する。このときのダイオード電流を対応ダイオード電流IDdと呼んで内部設定(n17)を行なう。対応ダイオード電流IDdでは、ナノ物質は脱落寸前の状態で把持されている。
【0076】
更に、ゲート電圧VGを増加すると、ゲート用ナノチューブ8はナノ物質を把持しているから、それ以上には閉じない。しかし、ダイオード電流IDは増加するから、ID−IDdに依存した握力Fgでナノ物質を把持する事になる。この握力FgはFg=f(ID−IDd)の形式で関数計算(n18)される。その後、このナノ物質を目的場所まで移動(n12)させ、ステップn2に戻って新たなナノ物質に対し上記操作を繰り返す。
【0077】
図9はBタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。ダイオード型ナノピンセット1の突出部6の一方側には、第1アームとなるゲート用ナノチューブ8が突設されている。突出部6の他方側には第2アームとなるナノチューブダイオードNDが突設されている。
【0078】
このナノチューブダイオードNDは2本のダイオード用ナノチューブ9、10から構成されている。ダイオード用ナノチューブ9、10の基端部9b、10bは突出部6の側面にコーティング膜により固定され、先端9c、10cは相互に接触させている。この接触状態は周囲を堆積物CFで囲繞することにより固定されている。この接触部がダイオード特性部DPとなっている。
【0079】
このナノチューブダイオードNDのダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の実線で表される非線形関係を示した。ナノチューブを単に接触させるだけでもこのような非線形特性を出現させることができる。非線形関係は原点に関して中心対称性があり、非線形性からバリスタ特性を有していることが分る。本発明のダイオード特性はこのようなバリスタ特性も包含した概念である。
【0080】
図10はCタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。Bタイプと同様に、ダイオード型ナノピンセット1の突出部6の一方側には、第1アームとなるゲート用ナノチューブ8が突設されている。突出部6の他方側には第2アームとなるナノチューブダイオードNDが突設されている。
【0081】
ナノチューブダイオードNDは2本のダイオード用ナノチューブ9、10から構成され、その基端部9b、10bは突出部6の側面にコーティング膜により固定されている。その先端9c、10cの間には独立した短い中間ナノチューブ7が介装され、二つの接点を有して相互に接触した状態にある。この接触状態は周囲を堆積物CFで囲繞することにより固定されている。この2接点を有した接触部が本発明のダイオード特性部DPを構成する。中間ナノチューブ7の先端7cを突出させておくと、この先端7cが第2アームの先端になったり、AFM探針として利用できるので都合がよい。
【0082】
このダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の長破線で表される非線形関係を示すことが分かった。二つの接点を有することから非線形性が強くなっていることが分かる。ダイオード電圧VDのマイナス側の測定が十分ではないが、原点に関してほぼ中心対称をなすことが推定される。強い非線形性から電気抵抗も非線形に変化し、強いバリスタ特性を有していることも分る。
【0083】
図11はDタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。このDタイプは前述したCタイプとほとんど同様の構成を有し、異なる点は、二つの接点の代わりに二つの非接触部NCがあることである。つまり、ダイオード用ナノチューブ9、10の先端9c、10cと中間ナノチューブ7とは接近しているものの相互に非接触であるように保持されている。
【0084】
つまり、Dタイプでは2接点の代わりに2非接触部NCがある。この非接触部NCは、絶縁性の堆積物CFを周囲だけでなくその非接触部にも充填することによって形成されている。堆積物CFとしては、Bタイプ・Cタイプ・Dタイプに共通してカーボン堆積物が簡易に利用される。所要部位に電子ビームを照射すると、電子顕微鏡内に存在する有機物質が電子ビームにより分解されて照射部位に堆積してゆくことを利用する。
【0085】
Dタイプでは、この二つの非接触部NCの領域がダイオード特性部DPを構成する。このダイオード特性部DPに関して、ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係を測定すると、図12の短破線で表される非線形関係を示すことが分かった。二つの非接触部NCを有することから更に非線形性が強くなり、±1.9Vの臨界電圧を有していることが分かった。この特性は一番明瞭なダイオード特性である。
【0086】
臨界特性とは、ダイオード電圧VDが臨界電圧以上になるとダイオード電流IDが急激に大きくなる特性であり、スイッチング特性又は整流特性と言ってもよいう。従って、臨界電圧の左右ではダイオード電流IDがオン・オフに変化し、また出力側に負荷抵抗を接続すると臨界電圧以下は遮断されるので、整流作用を有する。Dタイプではこのように明瞭な半導体特性が発現する。
【0087】
図12は、図9・10・11に示される3種類のナノチューブダイオード(B、C、D)のID−VD特性図である。実線がBタイプのダイオード特性、長破線がCタイプのダイオード特性、短破線がDタイプのダイオード特性を示す。
【0088】
本発明では、ナノチューブダイオードの実施形態としてAタイプ、Bタイプ、Cタイプ及びDタイプの4種類が例示されているが、ダイオード特性はこれらの形態に限定されるものではない。ダイオード電流IDとダイオード電圧VDの関係が非線形なダイオード特性を発現するナノチューブの組み合わせは全て本発明のナノチューブダイオードに包含される。
【0089】
図13は本発明に係るダイオード型ナノピンセットを用いたナノマニピュレータの説明図である。試料32の表面には、球状ナノ物質28や棒状ナノ物質30等を積載した原料位置PRと、これらの原料物質を利用してナノ構造物34を構築する目的位置PSが存在する。
【0090】
原料位置から目的位置までナノ物質を搬送するために、ダイオード型ナノピンセット1を制御する制御回路20が設けられている。この制御回路20は、ナノピンセット1をXYZ方向に搬送する搬送制御回路23と、ナノ物質を把持・放出するためのナノピンセット1の開閉制御を行なうナノピンセット制御回路26から構成されている。また、搬送制御回路23はX方向とY方向の駆動制御を行なうXY制御回路22と、Z方向の駆動制御を行うZ制御回路24からなる。搬送制御やナノピンセット制御の状態はディスプレイ27に表示される。
【0091】
次に、このダイオード型ナノピンセット1を用いたナノマニピュレータの動作を簡単に説明する。まず、ナノピンセット1をZ方向に上昇させて原料位置PRに移動させ、ゲート用ナノチューブ8(第1アーム)とナノチューブダイオードND(第2アーム)を閉じてAFM探針とする。Z方向に下降させた後、搬送制御回路23により原料位置付近のAFM走査を行なう。今、把持すべき物質が棒状ナノ物質30とすると、その物質の位置とサイズを測定する。
【0092】
計測されたサイズをナノピンセット制御回路26に格納し、アームを開いてターゲットとなる棒状ナノ物質30を挟み、アームを閉じて急激に流れるダイオード電流を計測して両アームが棒状ナノ物質を把持したことを検出し、更にダイオード電流を検出しながらアームが閉じる事により所定の握力で棒状ナノ物質を把持する。
【0093】
その状態でナノピンセット1をZ方向に上昇させ、搬送制御回路23によりナノピンセット1を目的位置PSまで移動させる。そして、ナノピンセット1をZ方向に下降させ、ナノ構造物34の特定場所に到達すると、アームを開いて棒状ナノ物質30を放出する。その後、アームを閉じてナノ構造物34をAFM走査して棒状ナノ物質30が正しく配置されたかどうかを確認する。
【0094】
確認した後、ナノピンセット1を上昇させ、搬送制御回路23により原料位置PRに帰還し、再び次のナノ物質を選択して上記の動作を繰り返す。この繰返しにより、多数のナノ物質を設計図に従って配設してナノ構造物34を構築してゆく。ナノ構造物34としては、光・電子情報関連の新素材やナノサイズ部品、細胞やタンパク質の集積による新しいバイオ関連機能物質など種々のものがある。
【0095】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含することは云うまでもない。
【0096】
【発明の効果】
第1の発明によれば、ゲート用ナノチューブを第1アームとし、ナノチューブダイオードを第2アームとして、この両アーム間にナノ物質を把持したときに、ナノチューブダイオードに形成されたダイオード特性部の反応によってナノ物質を把持したことや、ナノ物質を把持する握力を検出することができ、ナノ物質に対する握力を可変調整しながらナノピンセット操作を実現できる。
【0097】
第2の発明によれば、1本のナノチューブを2本に折り畳み、その両端を基端部としてホルダーに固定するだけでナノチューブダイオードを構成でき、しかも先端折畳部がダイオード特性部となるから、組立が簡単でダイオード特性部を確実に構成できるダイオード型ナノピンセットを提供できる。
【0098】
第3の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、その先端部は相互に接触させるだけでダイオード特性部を構成できるから、その接触部を堆積物などで周囲から保護すれば、耐久性があるダイオード型ナノピンセットを実現できる。
【0099】
第4の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に接触させて介装するだけでダイオード特性部を構成でき、しかも周囲を堆積物などで周囲から保護すれば、ダイオード特性部の反応性を高くしながら耐久性を有せしめることができ、しかも中間ナノチューブの先端を突出させることによりナノチューブダイオードの先端を先鋭化でき、ピンセット操作以外にAFM操作に用いる場合でも分解能を高めることができる。
【0100】
第5の発明によれば、2本のナノチューブの基端部をホルダーに固定し、先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に非接触状態で介装するから、ダイオード特性を格段に向上でき、しかも周囲を堆積物などで保護すれば耐久性を向上でき、しかも中間ナノチューブの先端を突出させることによりナノピンセット操作のみならずAFM操作において分解能を一層向上させることができる。
【0101】
第6の発明によれば、ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加し、このゲート電圧を制御してナノ物質を握力状態で把持するときに、このゲート電圧を通してナノ物質に対する握力を検出するダイオード型ナノピンセット提供できる。ゲート電圧の測定により握力計測を可能にしたもので、ナノ物質を脱落寸前状態で把持する限界ゲート電圧と比較すれば、そのゲート電圧の超過分により握力を正確に検出でき、ダイオード電流との組み合わせにより更に正確な握力制御を実現する事ができる。ナノ物質に対し過剰な握力を加えることを防止でき、ナノ物質を構造的に変形させないようにナノピンセット操作を制御することが可能になる。
【0102】
第7の発明によれば、ナノチューブダイオードの基端部間にダイオード電圧を印加しながらゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加してナノチューブダイオードに流れるダイオード電流を制御し、このダイオード電流を通して両アームによるナノ物質を把持する握力を検出するダイオード型ナノピンセットを提供できる。ナノ物質を把持した瞬間にダイオード電流が急上昇する現象や、ナノ物質を把持する前後でダイオード電流の増加関数が折れ曲る現象を用いることにより、ダイオード電流の計測を通してナノ物質の把持や握力の自在制御を実現できる。
【0103】
第8の発明によれば、ダイオード型ナノピンセットと、このダイオード型ナノピンセットに印加するゲート電圧とダイオード電圧とダイオード電流を可変制御するピンセット制御回路と、ダイオード型ナノピンセットをXYZ方向に搬送制御する搬送制御回路から構成されるナノマニピュレータ装置を提供できる。ナノ物質に対する握力制御が可能なダイオード型ナノピンセットを制御回路と組み合わせてナノロボット機能を有したナノマニピュレータ装置を具現したものであり、このナノロボットを活用することにより自在にナノ構造物の構築を可能にし、ナノテクノロジーの発展に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイオード型ナノピンセットの実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示されるダイオード型ナノピンセットの回路構成図である。
【図3】ダイオード電圧VDの非印加時におけるゲート電圧VGとアーム間隔Sの関係曲線図である。
【図4】ゲート電圧を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。
【図5】ゲート電圧に対するダイオード電流とダイオード電圧の関係を示したダイオード特性図である。
【図6】限界間隔SLより大きなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。
【図7】限界間隔SLより小さなナノ物質を把持する場合のダイオード電流とゲート電圧の関係曲線図である。
【図8】ダイオード電流を利用してナノ物質に対する握力を検出しながらダイオード型ナノピンセットを制御する簡易フロー図である。
【図9】Bタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図10】Cタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図11】Dタイプのナノチューブダイオードを組み込んだダイオード型ナノピンセットの要部斜視図である。
【図12】図9・10・11に示される3種類のナノチューブダイオード(B、C、D)のID−VD特性図である。
【図13】本発明に係るダイオード型ナノピンセットを用いたナノマニピュレータの説明図である。
【符号の説明】
1はダイオード型ナノピンセット、2はカンチレバー、4はカンチレバー部、6は突出部、6aは先端面、6bは側面、6cは側面、6dは後端面、6eは突出端、7は中間ナノチューブ、7cは先端、8はゲート用ナノチューブ(第1アーム)、9・10はダイオード用ナノチューブ、8a・9a・10aは先端部、8b・9b・10bは基端部、8c・9c・10cは先端、12・13・14はリード電極、12a・13a・14aは接点、16・17・18はコーティング膜、20は制御回路、22はXY制御回路、23は搬送制御回路、24はZ制御回路、26はナノピンセット制御回路、27はディスプレイ、28は球状ナノ物質、30は棒状ナノ物質、32は試料、34はナノ構造物、CFは堆積物、DAはダイオード電流計、dはサイズ、DNはナノチューブ直径、DPはダイオード特性部、EDはダイオード電源、EGはゲート電源、Fgは握力、NDはナノチューブダイオード(第2アーム)、PEはアース点、Sはアーム間隔、SDはダイオードスイッチ、SGはゲートスイッチ、SLは限界間隔、SMは最大間隔、VDはダイオード電圧、VGはゲート電圧、VGdは対応ゲート電圧、VGLは限界ゲート電圧。
Claims (8)
- ホルダーから突出状に形成された少なくとも第1アームと第2アームを静電気により開閉自在にしてナノ物質を把持するナノピンセットにおいて、前記第1アームは基端部をホルダーに固定して先端部を突出させたゲート用ナノチューブで形成され、前記第2アームは2本の基端部をホルダーに固定し先端部にダイオード特性部を形成したナノチューブダイオードで構成されることを特徴とするダイオード型ナノピンセット。
- 前記ナノチューブダイオードは、1本のナノチューブを2本に折り畳んで構成され、その両端が基端部として前記ホルダーに固定され、先端折畳部はダイオード特性を発現するダイオード特性部となる請求項1に記載のダイオード型ナノピンセット。
- 前記ナノチューブダイオードは、2本のナノチューブの基端部が前記ホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部は相互に接触してその接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となる請求項1に記載のダイオード型ナノピンセット。
- 前記ナノチューブダイオードは、2本のナノチューブの基端部が前記ホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間に独立した中間ナノチューブを相互に接触させて介装し、この接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となる請求項1に記載のダイオード型ナノピンセット。
- 前記ナノチューブダイオードは、2本のナノチューブの基端部が前記ホルダーに固定され、2本のナノチューブの先端部間には独立した中間ナノチューブがカーボン堆積物の充填により相互に非接触状態になるように介装され、この非接触部がダイオード特性を発現するダイオード特性部となる請求項1に記載のダイオード型ナノピンセット。
- 前記ゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加し、このゲート電圧を制御してナノ物質を握力状態で把持するときに、このゲート電圧を通してナノ物質に対する握力を検出する請求項1のダイオード型ナノピンセット。
- 前記ナノチューブダイオードの基端部間にダイオード電圧を印加しながらゲート用ナノチューブとナノチューブダイオード間に静電引力用のゲート電圧を印加してナノチューブダイオードに流れるダイオード電流を制御し、このダイオード電流を通して両アームによるナノ物質を把持する握力を検出する請求項1に記載のダイオード型ナノピンセット。
- 請求項1、6又は7に記載のダイオード型ナノピンセットと、このダイオード型ナノピンセットに印加するゲート電圧とダイオード電圧とダイオード電流を制御するピンセット制御回路と、ダイオード型ナノピンセットをXYZ方向に搬送制御する搬送制御回路から構成されることを特徴とするナノマニピュレータ装置。
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