JP4045919B2 - パケット送信方法、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パケット送信方法に係り、特に共通の通信媒体を介して通信を実施する複数の通信機から構成される通信システムにおいて各通信機から送信されるパケットの衝突を防止するように競合制御するパケット送信方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、共通の通信媒体を用いた複数の通信機から構成される通信システムを構築する際には、LAN(Local Area Network)方式が多く採用されている。LANにおいては、共通の通信媒体を介してフレームと称されるパケット単位にデータを送受信することで通信が実施されており、通信媒体上でのパケットの衝突を防止するように媒体アクセス制御(MAC)と称される競合制御が行われている。特に、通信媒体として無線媒体を用いる無線通信システムにおける媒体アクセス制御方式としては、IEEE802.11により標準化が進められているCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)方式が多くの通信機により採用されると予想される。IEEE802.11では、無線LAN等について設定されるプロトコルタックの物理層とMAC層とを主に取り扱う。なお、IEEE802.11において使用されているプロトコルスタックでは、ISO(国際標準化機構)がネットワークシステムのモデルとして提案したOSI(Open System Interconnection:開放型システム間相互接続)参照モデルで定義されているデータリンク層がLLC(Logical Link Control)層とMAC層とに分割されている。
【0003】
CSMA/CA方式では、各通信機はパケット送信時以外では電波を出力しないので、共通の通信媒体である所定のチャネルの無線媒体に搬送波が検出されるか否かに基づいて、無線媒体を使用して他の通信機がパケットを送信しているか否かを判別することができる。共通の通信媒体においてパケットが送信中である状態をビジー状態と称し、共通の通信媒体においてパケットが送信されていない状態をアイドル状態と称する。各通信機は、所定のチャネルの無線媒体において搬送波の有無を検出する機能(以下、このような機能をキャリアセンスと称する)を有するように構成されて、パケット送信要求があった場合にはキャリアセンスを実施して共通の通信媒体がビジー状態であるかアイドル状態であるかを判別する。なお、上記のキャリアセンスは、物理層に係るプロトコルに基づいて実施される。
【0004】
各通信機は、LLC層からパケットの送信要求があった場合、後述するバックオフ間隔の設定がない場合には、キャリアセンスを実施して、当該送信要求に応じてパケットを送信する前に、少なくともIFS(Inter-Frame Space)と称される所定の待ち時間が経過する間にて、共通の通信媒体がアイドル状態を継続したか否かを判定する。待ち時間IFSの間にて共通の通信媒体がアイドル状態にあると判定されれば、他の通信機からパケットが送信されていないものとみなして、送信要求のあったパケットを送信する。なお、キャリアセンスにより得られる情報を利用してパケットの送信を制御するという上記のような処理はMAC層に係るプロトコルに基づいて実施される。
【0005】
また、LLC層からMAC層へパケットの送信要求が発行された時点において既に共通の通信媒体がビジー状態にあるか、あるいはパケットを送信するために必要とされる待ち時間IFSの間にてアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、他の通信機からパケットが送信されているものとみなして、パケットの送信が終了するまで待機するとともに、待ち時間IFSとは別にバックオフ間隔と称される待ち時間を設定する。また、送信要求のあったパケットを送信した後には、同様にバックオフ間隔を設定する。このバックオフ間隔の設定については、所定の乱数発生アルゴリズムに基づき、0からバックオフ間隔の最大値であるCW(Contention Window)との間における値をランダムにとるものとする。上記のように共通の通信媒体がビジー状態にある場合やパケットを送信した後にバックオフ間隔を設定することで、他の通信機との間における共通の通信媒体の利用に係る平等性を担保するとともに、共通の通信媒体上におけるパケットの衝突を効率的に回避することを企図するものである。
【0006】
バックオフ間隔が設定された際における処理について以下に説明すると、通信機は、キャリアセンスにより、例えば他の通信機からのパケットの送信が完了した場合のように通信媒体がアイドル状態にあることを検出すると、他の通信機がパケットを送信していないことを確認するために共通の通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する。この待ち時間IFSの間にてアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、再度共通の通信媒体がアイドル状態にあることを検出するとともに共通の通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する。共通の通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続することが確認されれば、待ち時間IFSが経過してから共通の通信媒体がアイドル状態を継続する時間を後述するように累計的に算出する。待ち時間IFSが経過した後のこの継続時間が、設定されたバックオフ間隔に等しくなれば、送信要求のあったパケットを送信する。また、待ち時間IFSが経過した後の継続時間がバックオフ間隔に等しくなる前に、共通の通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、再度共通の通信媒体がアイドル状態にあることを検出するとともに共通の通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する。共通の通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続することが確認されれば、待ち時間IFSが経過してから共通の通信媒体がアイドル状態を継続する時間に対して前回までの継続時間を加算した時間を今回のIFS経過後の継続時間として算出する。すなわち、共通の通信媒体がビジー状態になる毎にIFS経過後の継続時間を累計して、この累計継続時間がバックオフ間隔に等しくなれば、送信要求のあったパケットを送信する。なお、上記累計継続時間がバックオフ間隔に等しくなるまでに送信要求のない場合には、バックオフ間隔の設定を解除する。
【0007】
IEEE802.11により標準化が進められているCSMA/CA方式の基本的な動作は上記のようであるので、パケット送信を実施する通信機をIEEE802.11の規格に準拠させるためには、少なくとも以下に示す2つの条件を満たすようにアルゴリズムを構成する必要がある。第1の条件としては、MAC層に係る処理において、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続したことを確認した後に、パケットの送信を許容することである。第2の条件としては、送信要求がLLC層からMAC層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる待ち時間IFSの間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも待ち時間IFSに加えてバックオフ間隔が経過しないとパケットの送信を許容しないことである。
【0008】
次に、CSMA/CA方式を採用した従来の具体的なパケット送信方法について説明する。図3は従来の具体的なパケット送信方法の一例を示すフローチャートである。まず通信機が起動されると、送信要求が有るか、すなわち送信要求がLLC層からMAC層へ発行されたか否かを判定する(ステップS1)。なお、起動時においてはバックオフ間隔(以下、適宜TBと称する)は設定されていない。送信要求が無い場合には、処理対象をステップS1へ移行する。すなわち、送信要求が検出されるまでステップS1の処理を繰り返し実施する。ステップS1において、送信要求が有る場合には、他の通信機がパケットを送信していないことを確認する為に、キャリアセンスを実施して、所定の待ち時間であるIFSの間にて通信媒体がアイドル状態を継続するか否かを判定する(ステップS2)。待ち時間IFSの間にて通信媒体がアイドル状態を継続した場合には、パケット化された1フレームのデータを送信する(ステップS3)。
【0009】
ステップS2において、既に通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、所定の乱数発生アルゴリズムに基づいて、0からCWの間の数値をランダムに決定して、当該数値をバックオフ間隔TBとして設定する(ステップS4)。また、ステップS3の処理が終了した場合にも、同様に処理対象をステップS4に移行する。次に、上述したIFS経過後の継続時間の累計値(以下、適宜累計継続時間TSと称する)をゼロにリセットする(ステップS5)。次に、キャリアセンスを実施して、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する(ステップS6)。このステップS6において、既に通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは待ち時間IFSが経過するまでの途中で通信媒体がアイドル状態からビジー状態へ変化した場合には、再び処理対象をステップS6へ移行する。すなわち、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するまで、ステップS6の処理を繰り返し実施する。ステップS6において、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続した場合には、累計継続時間TSの時間計測を開始または再開する(ステップS7)。
【0010】
次に、キャリアセンスを実施して、通信媒体がアイドル状態にあるかビジー状態にあるかを判定する(ステップS8)。通信媒体がビジー状態にある場合には、他の通信機からパケットが送信されているものとみなして、累計継続時間TSの時間計測を停止する(ステップS9)。ステップS9の処理が終了すれば、処理対象をステップS6へ移行する。ステップS8において、通信媒体がアイドル状態にある場合には、累計継続時間TSがバックオフ間隔TB以上になったか否かを判定する(ステップS10)。累計継続時間TSがバックオフ間隔TB未満の場合には、処理対象をステップS8へ移行する。すなわち、ステップS8とステップS10とから成るループ処理により、通信媒体がアイドル状態を継続している間においては、累計継続時間TSがバックオフ間隔TB以上になるのを逐次的に監視する。ステップS10において、累計継続時間TSがバックオフ間隔TB以上となった場合には、パケットの送信要求が有るか否かを判定する(ステップS11)。パケットの送信要求が有る場合には、パケット化された1フレームのデータを送信する(ステップS12)。パケットが送信されれば、処理対象をステップS4へ移行する。また、パケットの送信要求が無い場合には、バックオフ間隔の設定を解除して、処理対象をステップS1へ移行して初期状態に復帰する。
【0011】
図4は、図3に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。図4では、LLC層から送信要求が発行された際に、他の通信機B,Cに係る通信状況に応じて、通信機Aがとるパケット送信の4つの態様が示される。図4(A)に示される第1の態様では、LLC層から送信要求が発行された時点において、通信機B,Cのいずれからもパケットが送信されていない通信状況が想定されている。この場合、ステップS1において送信要求が有ると判定され、ステップS2において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続したと判定され、ステップS3によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、初期状態に復帰する。
【0012】
図4(B)に示される第2の態様では、LLC層から送信要求が発行される少し前の時点まで通信機Bからパケットが送信されている通信状況が想定されている。この場合も第1の態様と同様に、ステップS1において送信要求が有ると判定され、ステップS2において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続したと判定され、ステップS3によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、初期状態に復帰する。
【0013】
図4(C)に示される第3の態様では、LLC層から送信要求が発行された時点において、通信機Bからパケットが送信されている通信状況が想定されている。この場合、ステップS1において送信要求が有ると判定され、ステップS2において通信媒体が既にビジー状態にあると判定されるから、処理対象をステップS4に移行してバックオフ間隔TB1を設定する。次に、ステップS5により累計継続時間TSをゼロにリセットし、ステップS6において通信媒体が待機時間IFSの間にてアイドル状態を継続すると判定され、ステップS7により累計継続時間TSの計測を開始する。そして、ステップS10において累計継続時間TSがバックオフ間隔TB1以上になると判定され、ステップS11において送信要求が有ると判定され、ステップS12によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TB2を設定して、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TB2が経過する間待機して、初期状態に復帰する。
【0014】
図4(D)に示される第4の態様では、通信機Bからのパケット送信が終了してから通信機Cからのパケット送信が開始するまでの間に、LLC層から送信要求が発行される通信状況が想定されている。この場合、ステップS1において送信要求が有ると判定され、ステップS2において待ち時間IFSの間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化したと判定されるから、処理対象をステップS4に移行してバックオフ間隔TB1を設定する。ステップS4以降の処理については、第3の態様と同様であるので、その説明を省略する。
【0015】
次に、従来のパケット送信方法の他の例を説明する。図5は、従来のパケット送信方法の他の例を示すフローチャートである。図5において、図3と同一符号は同一または相当する工程を示すので、その説明を省略する。まず通信機が起動されると、キャリアセンスを実施して、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する(ステップS21)。通信媒体がIFSの間にてアイドル状態を継続した場合には、パケットの送信要求が有るか否かを判定する(ステップS22)。送信要求が有る場合には、パケット化された1フレームのデータを送信する(ステップS23)。パケットが送信された後には、処理対象をステップS4に移行する。
【0016】
ステップS22において、パケットの送信要求が無い場合には、通信媒体がアイドル状態にあるかビジー状態にあるかを判定する(ステップS24)。通信媒体がアイドル状態にある場合には、処理対象をステップS22へ移行する。すなわち、ステップS22とステップS24とから成るループ処理により、通信媒体がアイドル状態にある間において、送信要求の有無を逐次的に監視する。ステップS21において通信媒体が既にビジー状態にあるかあるいは待ち時間IFSが経過する前に通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合、並びにステップS24において通信媒体がビジー状態にある場合には、送信要求が有るか否かを判定する(ステップS25)。送信要求が有る場合には、処理対象をステップS4へ移行する。ステップS25において、送信要求が無い場合には、処理対象をステップS21へ移行する。すなわち、ステップS21とステップS25とから成るループ処理により、通信媒体が既にビジー状態にあるかあるいは待ち時間IFSが経過する前に通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した際において、送信要求の有無を逐次的に監視する。
【0017】
図6は、図5に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。図6では、図4と同様に、LLC層から送信要求が発行された際に、他の通信機B,Cに係る通信状況に応じて、通信機Aがとるパケット送信の4つの態様が示される。なお、図6の(A),(B),(C)および(D)に示されるそれぞれの送信態様において前提となる通信状況は、それぞれ図4の(A),(B),(C)および(D)に示される送信態様における通信状況と同一に設定されている。
【0018】
図6(A)に示される第1の態様では、ステップS21において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続すると判定され、ステップS22とステップS24とから成るループ処理により送信要求の逐次的な監視を実施し、ステップS22において送信要求が有ると判定されると、ステップS23によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS22へ移行する。
【0019】
図6(B)に示される第2の態様では、ステップS21とステップS25とから成るループ処理により、通信媒体がビジー状態にある間における送信要求の有無を逐次的に監視する。通信機Bからのパケット送信が終了すれば、ステップS21において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続したと判定され、ステップS22において送信要求が有ると判定され、ステップS23によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS22へ移行する。
【0020】
図6(C)に示される第3の態様では、ステップS21において通信媒体がビジー状態にあると判定されるとともに、ステップS25において送信要求が有ると判定されるので、処理対象をステップS4に移行してバックオフ間隔TB1を設定する。次に、ステップS5により累計継続時間TSをゼロにリセットし、ステップS6において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続すると判定されると、ステップS7において累計継続時間TSの計測を開始する。そして、ステップS10において累計継続時間TSがバックオフ間隔TB1以上になることが確認されれば、ステップS11において送信要求が有ると判定され、ステップS12によりパケット化された1フレームのデータを送信し、処理対象を再びステップS4に移行してバックオフ間隔としてTB1と異なるTB2を設定する。そして、待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TB2が経過する間待機すると、バックオフ間隔の設定を解除して処理対象をステップS22へ移行する。
【0021】
図6(D)に示される第4の態様では、ステップS21とステップS25とから成るループ処理により、通信媒体がビジー状態にある間における送信要求の有無を逐次的に監視する。通信機Bからのパケット送信が終了して、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続する前に、LLC層から送信要求が発行されるとともに通信機Cからのパケット送信が開始するから、ステップS21において待ち時間IFSの間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化したと判定され、ステップS25において送信要求が有ると判定され、処理対象をステップS4に移行してバックオフ間隔TB1を設定する。ステップS4以降の処理については、第3の態様と同様であるので、その説明を省略する。なお、上記のようにIEEE802.11に準拠するパケット送信方法に関する技術については、例えば下記の特許文献1において記載が為されている。
【0022】
〔特許文献1〕
特開平11−239140号公報 ([0034]〜[0044]、第1図)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
IEEE802.11に準拠する上述したような従来のパケット送信方法では、LLC層からMAC層へ送信要求が発行された際に、通信媒体が既にビジー状態にあるか、あるいはパケットを送信するために必要とされる待ち時間IFSが経過する前に通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化すると、バックオフ間隔が設定されて、少なくとも待ち時間IFSおよびバックオフ時間TBが経過しないとパケットを送信することができない。無線LANにおけるパケット通信において、例えば映像・音声データのリアルタイム伝送を実現するために伝送帯域を確保する必要性がある場合等では、パケットの送信を優先的に実施することが求められるが、上述したようなパケット送信方法では、パケットを送信するまでに多くの待機時間を要することになり、優先的なパケット送信に支障をきたすという課題があった。
【0024】
パケットの優先的な送信を実現するためには、IEEE802.11の規格から外れた別個の送信方式を採用することも考えられるが、この場合広範なカテゴリーの通信システムへの採用が予想されるIEEE802.11に準拠する通信システムにおいて使用できない可能性があり、汎用性に欠けるという課題があった。また、IEEE802.11では、パケットの優先的な送信を実現するために、CFPという機能が別途定義されている。然るに、CFPはオプション的な機能であり、この機能を使用できない通信システムが多く存在するので、これもまた汎用性に欠けるという課題があった。
【0025】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、IEEE802.11の基本的な仕様を満たすことで汎用性を備え、優先的なパケット送信を可能とするパケット送信方法を得ることを目的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るパケット送信方法、パケット送信方法をコンピュータにより実現させるプログラム、およびプログラムを記録した記録媒体については、共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続した後にパケットの送信を許容する第1の条件と、送信要求が上位層から下位層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる第1の待ち時間の間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットの送信を許容しない第2の条件とを満たすように制御するとともに、第2の条件の適用を回避するために上位層から下位層への送信要求の発行を保留する第1のステップと、共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続したことが確認された後に送信要求の発行に係る保留を解除する第2のステップとを有することを特徴とするものである。
【0027】
この発明に係るパケット送信方法、パケット送信方法をコンピュータにより実現させるプログラム、およびプログラムを記録した記録媒体については、上記の特徴を備えるとともに、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットを送信できない状態において、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過してパケットが送信可能となった際に、送信要求が上位層から下位層へ発行されたか否かを判定する第3のステップを有し、送信要求が無い場合には第2のステップの次に実施するステップに処理対象を移行するようにしたものである。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施の形態について説明する。なお、以下の説明においては、本願発明の実施の形態に記載された実施例を構成する各工程および各要素と、特許請求の範囲に記載された発明を構成する各工程および各要素との対応関係を明らかにするために、実施例の各工程および各要素にそれぞれ対応する特許請求の範囲に記載された発明の各工程および各要素を本願発明の実施の形態に係る説明文中において適宜かっこ書きにより示すものとする。
【0029】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるパケット送信方法を示すフローチャートである。図1において、図3と同一符号は同一または相当する工程を示すので、その説明を省略する。まず通信機(通信局)が起動されると、LLC層(上位層)においてMAC層(下位層)に対するパケットの送信要求が発生しても、当該送信要求がMAC層へ発行されないように、LLC層からMAC層への送信要求の発行を保留する(ステップS31(第1のステップ))。次に、キャリアセンスを実施して、通信媒体が待ち時間IFS(第1の待ち時間)の間にてアイドル状態を継続するか否かを判定する(ステップS32(第2のステップの前半部分))。このステップS32において、既に通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは待ち時間IFSが経過するまでの途中で通信媒体がアイドル状態からビジー状態へ変化した場合には、再び処理対象をステップS32へ移行する。すなわち、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するまで、ステップS32の処理を繰り返し実施する。ステップS32において、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続した場合には、LLC層からMAC層への送信要求の発行に係る保留を解除する(ステップS33(第2のステップの後半部分))。これにより、既にLLC層においてMAC層に対するパケットの送信要求が発生している場合には、LLC層からMAC層へ送信要求を発行する。また、発行の保留が解除された後に、LLC層においてMAC層に対するパケットの送信要求が発生した場合には、その時点でLLC層からMAC層へ送信要求を発行する。
【0030】
ステップS33の処理が終了すれば、送信要求が有るか否かを判定する(ステップS34)。送信要求が有る場合には、パケット化された1フレームのデータを送信する(ステップS35)。これにより、送信要求の発行に係る保留が解除された後に、LLC層からMAC層へ送信要求が発行されれば、待ち時間IFSを待機する必要なく即座にパケットを送信することが可能となる。そして、パケットが送信されると、所定の乱数発生アルゴリズムに基づいて、0からCWの間の数値をランダムに決定して、当該数値をバックオフ間隔TB(第2の待ち時間)として設定する(ステップS4)。また、ステップS34において、パケットの送信要求が無い場合には、通信媒体がアイドル状態にあるかビジー状態にあるかを判定する(ステップS36)。通信媒体がアイドル状態にある場合には、処理対象をステップS34へ移行する。すなわち、ステップS34とステップS36とから成るループ処理により、通信媒体がアイドル状態にある間において、送信要求の有無を逐次的に監視する。また、ステップS36において、通信媒体がビジー状態にある場合には、処理対象をステップS31に移行して初期状態に復帰する。
【0031】
また、ステップS4へ移行してバックオフ間隔が設定された状態では、少なくとも待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過した後に、ステップS11(第3のステップ)において送信要求が有るか否かを判定する。送信要求が無い場合には処理対象をステップS34へ移行する。これにより、LLC層からMAC層へ送信要求が発行されれば、待ち時間IFSを待機する必要なく即座にパケットを送信することが可能となる。なお、上記のようなパケット送信方法は、例えば通信機に内蔵されたROMに記録されたプログラムを通信機に内蔵されたCPUにより実行することで実現可能である。また、上記のようなパケット送信方法を実現するためのプログラムの記憶形態については、内蔵のメモリに予め記憶するような形態に限られず、外部の記録媒体に当該プログラムを記録しておいて、この記録媒体から内蔵のメモリにプログラムをインストールするような形態も考えられる。
【0032】
図2は、図1に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。図2では、図4と同様に、LLC層から送信要求が発行された際に、他の通信機B,Cに係る通信状況に応じて、通信機Aがとるパケット送信の4つの態様が示される。なお、図2の(A),(B),(C)および(D)に示されるそれぞれの送信態様において前提となる通信状況は、それぞれ図4の(A),(B),(C)および(D)に示される送信態様における通信状況と同一に設定されている。
【0033】
図2(A)に示される第1の態様では、ステップS31によりLLC層からMAC層への送信要求の発行を保留し、ステップS32において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続すると判定され、ステップS33によりLLC層からMAC層への送信要求の発行に係る保留を解除する。次に、ステップS34において送信要求が有ると判定されると、ステップS35によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、所定の待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS34へ移行する。
【0034】
図2(B)に示される第2の態様では、ステップS31からステップS33までの動作については第1の態様と同様である。この第2の態様では、送信要求の発行を保留している間に、LLC層においてMAC層に対するパケットの送信要求が発生するから、送信要求の発行に係る保留が解除されると、即座にLLC層からMAC層へ送信要求を発行する。これにより、ステップS34において送信要求が有ると判定され、ステップS35によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、所定の待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS34へ移行する。
【0035】
図2(C)に示される第3の態様では、ステップS31からステップS33までの動作については第1の態様と同様である。この第3の態様では、通信機Bからパケットが送信されていて、送信要求の発行を保留している間に、LLC層においてMAC層に対するパケットの送信要求が発生するから、送信要求の発行に係る保留が解除されると、即座にLLC層からMAC層へ送信要求を発行する。これにより、ステップS34において送信要求が有ると判定され、ステップS35によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、所定の待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS34へ移行する。
【0036】
図2(D)に示される第4の態様では、ステップS31からステップS33までの動作については第1の態様と同様である。この第4の態様では、通信機Bからのパケット送信が終了してから通信機Cからのパケット送信が開始するまでの間に、LLC層においてMAC層に対するパケットの送信要求が発生する。この期間は待ち時間IFSよりも短いので、送信要求の発行は保留されたままであり、送信要求の発行に係る保留が解除されると、即座にLLC層からMAC層へ送信要求を発行する。これにより、ステップS34において送信要求が有ると判定され、ステップS35によりパケット化された1フレームのデータを送信する。その後、バックオフ間隔TBを設定して、所定の待ち時間IFSおよびバックオフ間隔TBが経過する間待機して、処理対象をステップS34へ移行する。
【0037】
以上のように、この実施の形態1によれば、LLC層からMAC層への送信要求の発行を保留するステップS31と、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続するか否かを判定するステップS32と、通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続した場合には、LLC層からMAC層への送信要求の発行に係る保留を解除するステップS33とを有するように構成したので、MAC層に係る処理において通信媒体が待ち時間IFSの間にてアイドル状態を継続したことを確認した後にパケットの送信を許容するという第1の条件と、送信要求がLLC層からMAC層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる待ち時間IFSの間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも待ち時間IFSに加えてバックオフ間隔TBが経過しないとパケットの送信を許容しないという第2の条件とを満たすことでIEEE802.11に準拠するように構成された通信システムにおいても、第1の条件が満たされた後に送信要求の発行に係る保留を解除することにより、第2の条件に基づいてバックオフ間隔が設定されることを回避してパケットを送信することが可能となるから、汎用性を有する通信システム内において優先的なパケット送信を実施することができるという効果を奏する。
【0038】
また、バックオフ間隔が設定された状態において、待ち時間IFSが経過するとともに累計継続時間TSがバックオフ間隔TB以上となった後に、送信要求が有るか否かを判定するステップS11を有し、送信要求が無い場合にはステップS33の次に実施するステップに処理対象を移行するように構成したので、LLC層からMAC層へ送信要求が発行されれば、待ち時間IFSを待機することなく即座にパケットを送信することが可能となるから、通信機のパケット伝送速度を向上することができるという効果を奏する。
【0039】
なお、上記の実施の形態1により説明されるパケット送信方法は、本願発明を限定するものではなく、例示することを意図して開示されているものである。本願発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載により定められるものであり、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において種々の設計的変更が可能である。例えば、この実施の形態においては、共通の通信媒体を介してパケット通信を実施する複数の通信機を有して構成される通信システムがIEEE802.11に準拠することを前提としているが、本願発明はIEEE802.11に準拠する通信システムへの適用に限定されるものではなく、共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続した後にパケットの送信を許容する第1の条件と、送信要求が上位層から下位層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる第1の待ち時間の間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットの送信を許容しない第2の条件とを満たすように制御される通信システム全般に適用されるものである。また、「通信機」という用語についても、親局との間で子局として通信を実施する通信機を意味するものに限定されるのではなく、通信媒体を共有する他の複数の通信機との間で通信を実施することができる広範なカテゴリーの通信機を意味するものである。
【0040】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、上位層から下位層への送信要求の発行を保留する第1のステップと、共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続したことが確認された後に送信要求の発行に係る保留を解除する第2のステップとを有するように構成したので、共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続した後にパケットの送信を許容する第1の条件と、送信要求が上位層から下位層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる第1の待ち時間の間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットの送信を許容しない第2の条件とを満たすように構成された通信システムにおいて、第1の条件が満たされた後に送信要求の発行に係る保留を解除することにより、第2の条件に基づいて第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間を待機することを回避してパケットを送信することが可能となるから、上記の第1の条件および第2の条件を満たすような汎用性を有する通信システム内において優先的なパケット送信を実施することができるという効果を奏する。
【0041】
この発明によれば、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットを送信できない状況において、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過してパケットが送信可能となった際に、送信要求が上位層から下位層へ発行されたか否かを判定する第3のステップを有し、送信要求が無い場合には第2のステップの次に実施するステップに処理対象を移行するように構成したので、上位層から下位層へ送信要求が発行されれば、第1の待ち時間を待機することなく即座にパケットを送信することが可能となるから、通信局のパケット伝送速度を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1によるパケット送信方法を示すフローチャートである。
【図2】 図1に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。
【図3】 従来のパケット送信方法の一例を示すフローチャートである。
【図4】 図3に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。
【図5】 従来のパケット送信方法の他の例を示すフローチャートである。
【図6】 図5に示されるパケット送信方法を適用した場合のパケット送信に係る種々の態様を示す図である。
【符号の説明】
S11 送信要求有無判定ステップ(第3のステップ)、S31 送信要求発行保留ステップ(第1のステップ)、S32 IFS経過判定ステップ(第2のステップ)、S33 送信要求発行保留解除ステップ(第2のステップ)

Claims (6)

  1. 共通の通信媒体を介してパケット通信を実施する通信システムを構成するそれぞれの通信局に適用され、
    共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続した後にパケットの送信を許容する第1の条件と、
    送信要求が上位層から下位層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる第1の待ち時間の間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットの送信を許容しない第2の条件とを満たすように制御するパケット送信方法において、
    前記第2の条件の適用を回避するために上位層から下位層への送信要求の発行を保留する第1のステップと、
    共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続したことが確認された後に送信要求の発行に係る保留を解除する第2のステップとを有することを特徴とするパケット送信方法。
  2. 共通の通信媒体を介して通信を実施する通信システムを構成するそれぞれの通信局においてパケット通信を実現するために使用されるプログラムであって、
    共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続した後にパケットの送信を許容する第1の条件と、
    送信要求が上位層から下位層へ発行された時点において通信媒体がビジー状態にあるか、あるいは送信要求に応じてパケットを送信するために必要とされる第1の待ち時間の間にて通信媒体がアイドル状態からビジー状態に変化した場合には、少なくとも第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットの送信を許容しない第2の条件とを満たすように制御するとともに、
    上位層から下位層への送信要求の発行を保留する第1のステップと、
    共通の通信媒体が第1の待ち時間の間にてアイドル状態を継続したことが確認された後に送信要求の発行に係る保留を解除する第2のステップとを有することを特徴とするプログラム。
  3. 請求項2に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
  4. 第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットを送信できない状態において、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過してパケットが送信可能となった際に、送信要求が上位層から下位層へ発行されたか否かを判定する第3のステップを有し、
    送信要求が無い場合には、第2のステップの次に実施するステップに処理対象を移行することを特徴とする請求項1記載のパケット送信方法。
  5. 第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過しないとパケットを送信できない状態において、第1の待ち時間に加えて第2の待ち時間が経過してパケットが送信可能となった際に、送信要求が上位層から下位層へ発行されたか否かを判定する第3のステップを有し、
    送信要求が無い場合には、第2のステップの次に実施するステップに処理対象を移行することを特徴とする請求項2記載のプログラム。
  6. 請求項5に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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