JP4044724B2 - 自動車用床板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の荷室の床板の改良、および床板等の積層構造体の製造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の荷室の床板は、大きな荷重を受けるので、高い強度を要求されている。従来の床板は、補強材を内部に組み込んだ硬質発泡ポリウレタンにより構成されている。その製造方法について簡単に説明する。まず、下型の上面に形成された複数の溝にパイプをセットする。この際、溝の内面とパイプとの間には隙間を形成し、後述する原料の入り込みを可能にする。次に、下型の上面にパイプを覆うようにしてガラスクロスを被せ、その上に線材を絡ませてなるマットを被せ、さらにその上にガラスクロスを被せる。そして、上型を下降させて下型に当て、両型間に成形空間を形成する。この成形空間には、上記パイプやガラスクロス,マットが収容されることになる。この状態で、イソシアネートとポリオールを含む発泡性原料を成形空間に注入し、この原料を加熱により反応させるとともに発泡させ、硬質発泡ポリウレタンを成形する。尚,この成形方法は、RIM成形(Reaction Injection Molding)または反応射出成形として知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような床板は、十分な強度を高めるために、パイプ等の補強材を含むこと、および硬質ポリウレタンフォームの層を厚くかつ高い密度にすることを余儀なくされ、重量が大であった。また、成形空間に種々の補強材を収容して成形するため、製造コストが高かった。さらに、パイプを埋め込んだ部位が板面から突出してしまい、嵩張る欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の自動車用床板は、(a)第1,第2の金属製薄板と、(b)上記第1,第2の金属製薄板間に挟まれた硬質発泡ポリウレタン層と、(c)上記第1,第2の金属製薄板において上記硬質発泡ポリウレタン層に接する面に塗布されたプライマーまたは塗料と、を備えている。この床板は、軽量で製造コストが低く突出部がない。また、プライマーまたは塗料を介して金属製薄板と硬質発泡ポリウレタン層との高い接合強度を確保できる。
【0005】
本発明の積層構造体の製造方法は、(a)第1,第2の金属製薄板の一方の面に、プライマーまたは塗料を塗布する工程と、(b)上記第1の金属製薄板の他方の面が下型のセット面に接するように第1の金属製薄板を下型にセットし、上記第2の金属製薄板の他方の面が上型のセット面に接するように第2の金属製薄板を上型にセットし、しかも、第2の金属製薄板を上型のセット面に吸引することにより、第2の金属製薄板のセット状態を維持する工程と、(c)上記上型と下型とを閉じることにより形成される成形空間内において、硬質発泡ポリウレタンの原料を反応させるとともに発泡させ、これにより、上記成形空間内に硬質発泡ポリウレタン層を成形するとともに、この硬質発泡ポリウレタン層と上記第1,第2の金属製薄板とを上記プライマーまたは塗料を介して一体化する工程と、を備えている。これにより、強度の高い積層構造体を簡単かつ安価に製造することができる。
【0006】
上記製造方法において、好ましくは、上記上型に設けられた電磁石の電磁力により、上記第2の金属製薄板を上型のセット面に吸引する。これにより、上型への第2の金属製薄板のセット状態維持を確実にかつ簡単に行うことができる。
【0007】
上記製造方法において、好ましくは、上記上型に形成されそのセット面に開口するバキューム孔を介して、バキュームポンプにより、上記第2の金属製薄板を上型のセット面に吸引する。これにより、上型への第2の金属製薄板のセット状態維持を確実にかつ簡単に行うことができる。また、非磁性材料からなる金属製薄板でも吸引することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。図3は、自動車の荷室の床板100(積層構造体)を示す。この床板100は、0.1〜1.0mm程度の薄い平坦な鋼板101,102(第1,第2の金属製薄板)と、これら鋼板101,102間に挟まれた硬質発泡ポリウレタン層103とを備えて、平板形状をなしている。鋼板101,102と硬質発泡ポリウレタン層103は、等しい平面形状を有している。鋼板101,102の両面101a,101b,102a,102bには,亜鉛メッキ等のメッキ処理が施されている。また、鋼板101,102において、硬質発泡ポリウレタン層103側の面101a,102aには、ポリエスタル等の塗料が塗布されており、この塗料により、上記硬質発泡ポリウレタン層103と鋼板101,102の接合強度が確保されている。床板100の上面(本実施形態では鋼板102の面102b)はカーペット104により覆われている。
【0009】
上記床板100は、硬質発泡ポリウレタン層103の両面を全域にわたって鋼板101,102で覆うことにより構成されているので、硬質発泡ポリウレタン層103の密度が低くかつ薄くても十分な強度を確保できる。具体的には、床板100の厚さを、前述した従来の床板に比べて半分程度、すなわち3〜30mmにすることができる。また、硬質発泡ポリウレタン層103の密度も10〜300Kg/m3と、従来の床板の密度300〜400Kg/m3に比べて低くすることができる。また、パイプ等の補強材を必要としない。その結果、床板100は、従来に比べて軽量にすることができる。さらに、床板100には、パイプの埋め込み部のような突出した部位が無くなる。
【0010】
上記床板100を製造するためのRIM成形装置(積層構造体の製造装置)は、図1に示すように、アルミ製の下型10および上型20を備えている。これら型10,20は通路(図示せず)を有しており、この通路を流れる熱水により常時一定の温度(60〜80℃)に維持されている。
【0011】
上記下型10の上面には浅い凹部11が形成されており、この凹部11の平坦な底面12がセット面となっている。また、下型10の上面には、凹部11に連なり下型10の側面まで延びる溝13が形成されている。
【0012】
上記上型20の下面にも浅い凹部21が形成されており、この凹部21の平坦な底面22がセット面となっている。また、上型20の下面には、凹部21に連なり上型20の側面まで延びる溝23が形成されている。
【0013】
なお、上記型10,20の凹部11、21の平面形状は、図2に示すように、上記床板100の平面形状と一致した形状をなし、ほぼ矩形をなしている。
【0014】
さらに上型20の上面には、収容凹部24が形成され、この収容凹部24に電磁石25(吸引手段)が埋設されている。この電磁石25は、図2に示すように、セット面22の周辺に沿って間隔をおいて複数配置されるとともに、中央にも配置されている。収容凹部24の底面はセット面22から離れ、両者の間に仕切り壁26が介在している。したがって、電磁石25はセット面22に露出しない。上型20はアルミ製であるので、仕切壁26は非磁性である。
【0015】
次に、上記装置を用いた床板100の製造方法について説明する。まず、メッキ処理済の鋼板101,102を用意する。これら鋼板101,102の一方の面101a,102aに、例えばポリエステル系の塗料を塗布し、加熱して乾燥させておく。
【0016】
次に、図1(A)に示すように、鋼板101,102をそれぞれ下型10,上型20にセットする。個々に説明すると、鋼板101を下型10の凹部11にセットする。この際、塗料を塗布した面101aを上にし、他方の面101bをセット面12に接するように、鋼板101をセットする。
同様にして、鋼板102を上型20の凹部21にセットする。この際、塗料を塗布した面102aを下にし、他方の面102bをセット面22に接するようにセットする。このセット時に、電磁石25をオンし、この電磁石25の電磁力で鋼板102をセット面22に吸引し、鋼板102のセット状態を維持する。
【0017】
次に、上記電磁石25で鋼板102を上型20に保持した状態のまま、上型20を下型10まで下降させる。これにより、図1(B)に示すように、下型10の上面と、上型20の下面とが接し、上記凹部11,21からなる閉塞された成形空間30が形成される。
【0018】
次に、上記型10,20の溝13,23が合致して形成された注入ポート35にミキシングヘッド(図示しない)のノズルをあてがう。この状態で、イソシアネートとポリオールを含む液状の発泡性原料をミキシングヘッドに供給し、ここで混合させて成形空間30に注入する。
【0019】
上記原料は、成形空間30内で上記型温度に加熱され化学反応が生じ、かつ発泡が生じる。その結果、硬質発泡ポリウレタン層103が成形される。この際、鋼板101,102の面101a,102aに塗布された塗料により、この硬質発泡ポリウレタン層103と鋼板101,102は強固に結合される。
【0020】
上記電磁石25は、上記成形が完了するまでオン状態に維持されている。成形が完了した時に、電磁石25をオフし、上型20を上昇させて下型10から離す。そして、成形された床板100を取出して自然冷却させる。この自然冷却に際して、硬質発泡ポリウレタン層103の両面に鋼板101,102が設けられているので、床板100は湾曲することはない。
【0021】
次に、本発明の第2の実施形態について、図4を参照しながら説明する。この実施形態の装置では、第1実施形態の注入ポート35の代わりに、下型10の中央に垂直に延びる注入ポート39が形成されている。この注入ポート39の上端はセット面12に開口し、下端は下型10の下面に開口している。この装置を用いる場合には、鋼板101に、注入ポート39に対応する孔101xを形成しておく。ミキシングヘッドからの発泡性原料は、この注入ポート39から鋼板101の孔101xを通って成形空間30に注入される。他の構造および作用は、第1実施形態と同様であるから、図中同番号を付してその説明を省略する。
なお、垂直に延びる注入ポートを上型20に形成してもよい。この場合には、鋼板102に孔を形成することになる。
【0022】
次に、本発明の第3の実施形態について、図5を参照しながら説明する。この実施形態の装置では、上型20が下型10に対してヒンジ40により回動可能となっており、発泡性原料を注入するための注入ポートは形成されていない。この実施形態では、第1実施形態と同様に、図5(A)に示すように、下型10の凹部11に鋼板101をセットし、上型20の凹部21に鋼板102をセットする。しかし、型閉じ前に、鋼板101の上にほぼ全域にわたって液状の原料103’を供給し、この後で、図5(B)に示すように型閉じする(上型20を回動させて下型10に当て成形空間30を形成する)点で第1実施形態と異なる。他の構造および作用は、第1実施形態と同様であるから、図中同番号を付してその説明を省略する。
【0023】
次に、本発明の第4の実施形態の装置について、図6、図7を参照しながら説明する。この実施形態では、前述した全ての実施形態で用いられている電磁石25の代わりに、バキューム吸引手段50が用いられる。このバキューム吸引手段50は、上型20に形成された複数のバキューム孔51と、このバキューム孔51に管52を介して連なるバキュームポンプ53とを備えている。バキューム孔51の配置は、図7に示すように、前述した実施形態の電磁石25と同様である。鋼板102は、バキュームポンプ53の駆動によりバキューム孔51からのバキューム作用により、セット面22に吸引され、上型20でのセット状態を保持される。他の構造および作用は第1実施形態と同様であるので、図中同番号を付してその説明を省略する。
【0024】
次に、本発明の第5の実施形態について、図8を参照しながら説明する。図8のRIM成形装置は、床板ではなく、箱型の積層構造体100’を成形するためのものである。この場合、箱形状に成形された鋼板101’102’を用いる。これら鋼板101’、102’は、周縁に起立壁101y’,102y’を有している。前述した全ての実施形態と同様に、下型10には凹部11が形成され、その底面がセット面12となっている。また、第2実施形態と同様に下型10には注入ポート39が形成されている。
【0025】
上型20の下面には前述の実施形態の凹部の代わりに、凸部28が形成されている。この凸部28の頂面29がセット面となっている。鋼板101’は、下型の凹部11にはめ込まれ、鋼板102’は上型20の凸部28に嵌め込まれるようにしてセットされる。鋼板101’には、注入ポート39に対応する孔101x’が形成されている。他の構造および作用は、第2実施形態と同様であるので、同番号を付してその説明を省略する。
【0026】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、金属製薄板として、鋼板の代わりに例えば0.05〜1.0mmの板厚のアルミ板を用いてもよい。アルミ板の場合には、図6,図7に示す吸引手段50が用いられる。
【0027】
金属製薄板には、塗料の代わりにプライマーを塗布してもよい。プライマーとしては、化学反応型(フェノール樹脂系,エポキシ樹脂系,ポリポリウレタン系,アクリル系,α―シアノアクリレート系,合成ゴム系,プラスチゾル系等)と、溶剤揮散型(クロロプレンゴム系,ニトリルゴム系,SBR系,酢酸ビニル樹脂系,塩化ビニル樹脂系等)と、水揮散型(ラテックス系,酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等)と、ホットメルト型(酢ビ・エチレン共重合体系,ポリオレフィン系,ポリアミド系,合成ゴム系等)のいずれかを用いてもよい。
【0028】
上型のみならず、下型にも電磁石を設けたりバキューム孔を形成し、金属製薄板を下型のセット面に吸引してもよい。下型での金属製薄板の吸引は、原料が金属製薄板と下型のセット面との間に入り込むのを確実に防ぐ役割を持つ。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、薄くかつ軽量の高強度の床板を提供できるとともに、床板等の高強度の積層構造体を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を実施するためのRIM成形装置を示す断面図であり、(A)は型開き状態、(B)は成形が終了した時点での型閉じ状態をそれぞれ示す。
【図2】同装置の平面図である。
【図3】同装置で製造された自動車用床板を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を実施するためのRIM成形装置を型閉じ状態で示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を実施するためのRIM成形装置を示す断面図であり、(A)は型開き状態、(B)は成形が終了した時点での型閉じ状態をそれぞれ示す。
【図6】本発明の第4実施形態を実施するためのRIM成形装置を型開き状態で示す断面図である。
【図7】同第4実施形態の装置の平面図である。
【図8】本発明の第5実施形態を実施するためのRIM成形装置を型閉じ状態で示す断面図である。
【符号の説明】
10 下型
12 セット面
20 上型
22、29 セット面
25 電磁石
30 成形空間
51 バキューム孔
53 バキュームポンプ
100 床板(積層構造体)
101 鋼板(第1の金属製薄板)
102 鋼板(第2の金属製薄板)
103 硬質発泡ポリウレタン
Claims (3)
- 上面に浅い凹部とこの凹部に連なる溝を有する下型と、下面に浅い凹部とこの凹部に連なる溝を有する上型とを備え、上記上型および下型の凹部の平面形状が一致するとともに、これら凹部の平坦な底面がセット面として提供され、型閉じ状態で、下型と上型の凹部により成形空間が形成されるとともに、下型と上型の溝が合致することにより注入ポートが形成される成形装置を用意し、
上記下型と上型の凹部と平面形状が一致した薄い平坦な第1、第2の鋼板を用意し、
(a)第1,第2の鋼板の一方の面に、プライマーまたは塗料を塗布する工程と、
(b)上記第1の鋼板の他方の面が下型のセット面に接するように第1の鋼板を下型にセットし、上記第2の鋼板の他方の面が上型のセット面に接するように第2の鋼板を上型にセットし、しかも、第2の鋼板を上型のセット面に吸引することにより、第2の鋼板のセット状態を維持する工程と、
(c)上記上型と下型とを閉じて、上記注入ポートからイソシアネートとポリオールを含む液状の混合原料を注入し、上記成形空間内で反応させるとともに発泡させ、これにより、上記第1、第2の鋼板間に硬質発泡ポリウレタン層を成形するとともに、この硬質発泡ポリウレタン層と上記第1,第2の鋼板とを上記プライマーまたは塗料を介して一体化する工程と、を実行することを特徴とする平板形状の自動車用床板の製造方法。 - 上記上型に設けられた電磁石の電磁力により、上記第2の鋼板を上型のセット面に吸引することを特徴とする請求項1に記載の自動車用床板の製造方法。
- 上記上型に形成されそのセット面に開口するバキューム孔を介して、バキュームポンプにより、上記第2の鋼板を上型のセット面に吸引することを特徴とする請求項1に記載の自動車用床板の製造方法。
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