JP4042924B2 - 投影リソグラフィー装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実質的に点状の粒子源と、実質的に点状の見かけの粒子源から発する発散粒子ビームをつくり出す抽出システムと、発散粒子ビームを集束してマスクないし基板を照射するための少なくともほぼ平行な粒子ビームに変換する手段とを備えた、マスクの構造をマスクの直後に配置された基板に転写するための荷電粒子による投影リソグラフィー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のリソグラフィーシステムはたとえば米国特許第4,757,208号に開示されている。当該文献には、通例MIBL(マスクド・イオン・ブロードビーム・リソグラフィー)と称される投影投写によるイオンリソグラフィーシステムが記載されている。同システムには、イオン源から流出する粒子の質量選別を行なう扇形磁界を有する抽出システムを備えた水素イオン源またはヘリウムイオン源が設けられている。扇形磁界後方のビーム方向には2本の同軸管で構成された静電集束レンズが位置し、同レンズは粒子ビームをいわゆるクロスオーバーに集め、イオン源の像点を形成する。このクロスオーバーは同じく2本の同軸管で構成された第2の集束レンズの物体側焦点面にあり、同集束レンズは発散粒子ビームを集束して平行ビームに変換するための前記の手段を形成する。この平行ビームによって基板の直ぐ上方に配置されたリソグラフィーマスクが照射される結果、同基板へのマスクの構造の直接転写が可能となる。
【0003】
この種のまた別のシステムは、雑誌オプティーク第51巻、第5号に掲載された『近接効果のないPMMA層のリチウムイオンビーム照射』という題のR.シュパイデル及びU.ベーリンガーの1979年の論文に記述されている。この公知のシステムでは2本の同軸管によるレンズに代えて、それぞれ3個の同軸リング状電極で形成される2つの単独レンズが設けられる。マスク側ないしウェーハ側に配置された単独レンズは発散粒子ビームを集束して平行ビームに変換する手段を形成する。
【0004】
この種の公知のシステムによって得られる解決は複数の要因、つまり粒子源から流出する粒子のエネルギー分散と、見かけの粒子源の大きさ、つまり粒子源の粒子が見かけ上そこから発するように見える領域の最小直径とに左右される。さらにその他に転写の質は集束レンズの転写誤差、特に平行ビームをつくり出すために使用される第2のレンズの転写誤差によって制限されている。粒子ビームが正確に平行ではなく、わずかに集束しているかもしくは発散しているかする場合には、さらにマスクと基板との間の間隔の誤差が転写誤差として現われる。基板またはマスクが平坦でないこともそうした誤差の要因の一つとなる。
【0005】
1995年2月13日付けの本出願人のオーストリア出願公開第259/95号には、転写誤差が特にわずかな点で優れたほぼ平行なビームをつくり出すための特別なレンズ装置が記載されている。この装置では、同軸配置された多数のリング状電極が順次に設けられ、それらの電位は、ビーム方向において少なくとも部分的にビーム断面内部に定加速電界が形成されるように選択されている。かくして荷電粒子の発散ビームがこの加速電界内に流入すると個々の粒子経路はこの電界の加速作用によって放物線状に反らされ、一定の区間を通過した後、マスクの構造を基板に転写するために利用することのできるほぼ平行なビームが形成される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、冒頭に述べたようなタイプの投影リソグラフィー装置を改良し、公知のシステムに比較して転写誤差を大幅に低下させることである。さらに転写用の像面をできるかぎり大きく選択することができるようにすることも必要であろう。以上に加えて、創作される装置において、たとえば特に基板の面積が大きい場合に加工中に生ずる基板の長さの変化をリソグラフィー手法によって補正することができるよう、転写倍率を一定の限度内で変化させられるようにすることが必要であろう。比較的低コストで実現可能であって且つ軽小性に優れた装置を創作することも同じく本発明の課題である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は投影リソグラフィー装置において、一般に、粒子ビームを集束する手段が静電発散レンズと連携した少なくとも1つの静電集束レンズを包括した電極装置を有することによって解決される。発散レンズはビーム方向に間隔を置いて集束レンズ後方に配置されるのが好ましい。電極装置全体は厳密な意味で単一の多極レンズであり、以下においては集束を行なう装置部分を“集束レンズ”と称し、分散を行なう装置部分を“発散レンズ”と称する。少なくとも1つの集束レンズと少なくとも1つの発散レンズとのこうした組合せにより、個々の電極の印加電位の最適化を通じて異なったレンズの高次の転写誤差を相互に補償し得ることから、転写特性の向上を実現することができる。さらに、こうしたレンズの組合せにより、特に、大きな断面内でビームを集束して粒子経路をほぼ正確に平行化することができ、また、望ましいかぎりにおいて基板へのマスク構造の縮小転写もしくは拡大転写を可能とするため、粒子経路がオプショナルに事前に正確に定めることのできる集束または発散を示すように転写特性を簡単な方法で変化させることができる。こうした新しいタイプのレンズ装置により、公知の装置に比較して、装置、とりわけ加速電極を備えた装置も特に長さが相当程度縮小されることから、軽小で材料節約的な、したがって実際に低コストの電極装置を実現することができる。
【0008】
静電集束レンズは公知のように少なくとも2つのリング状電極によって実現されるのが好ましく、他方、静電発散レンズは、特に国際出願公開第95/19637号によって開示されているように、1つのリング状電極と1つの格子とによって実現される。ただし特に好ましい実施形態は静電集束レンズが同軸配置された4つ以上のリング状電極を有し、そのうち第1の電極が点状開口を備えた入射絞りを有することである。この実施形態はできるかぎり軽小な構造でできるだけ良好な転写特性の実現を顧慮して最適化することができ、その際、これらのリング状電極のうち少なくとも2つの電極が等電位とされることにより中間空間に広範にゼロ電界が形成され、これらの電極のうちさらに別の少なくとも2つの電極の電位が相違させられることにより荷電粒子にとって少なくとも部分的に加速電界が形成されることとなる。
【0009】
本発明に基づく装置の一つの好ましい実施形態は静電発散レンズがマスクの領域に配置され、マスクが発散レンズの“格子”を形成し、その際、国際出願公開第95/19637号によって開示された発散レンズとは異なり、格子がビーム方向においてリング状電極の後方に位置していることである。これにより、一方で格子電極の製造と取り付けとを不要とすることができ、他方で格子電極によって惹起されるビーム断面内の望ましくない強度変化を回避することができる。
【0010】
装置転写特性のさらなる向上は、マスクと基板とを等電位とし、マスクと基板との間の空間に電界が形成されないようにすることによって可能である。これによりこの領域における粒子ビームへの望ましくない影響が回避される。
【0011】
本発明に基づく装置の実用的に特に好適な一つの実施例の眼目は、点状粒子源が見かけの粒子源を有したイオン源であり、同イオン源が一定のエネルギーを有したイオンの抽出システムと望ましくない種類のイオンを除去する分離システムとを有していることである。この実施例において、粒子源と電極装置との間のビーム経路に少なくとも1つの静電集束レンズが設けられ、同集束レンズが点状粒子源から流出する発散粒子ビームを集束して粒子源の像を形成するのが特に好適であることが判明した。この粒子源像から発する発散粒子ビームはその後、1つの集束レンズと1つの発散レンズとを有した新しいタイプの電極装置によって実質的に平行なビームに転換されてマスクに向けられる。
【0012】
電極装置が入射絞りを有する先述した好ましい実施例において、電極装置の入射絞りの開口は粒子源像の直径を大幅に上回っていないことが好適である。
【0013】
転写された構造の大きさを一定の限度内で変化させ得るようにするため、本発明に基づく装置の特に好適な実施形態において集束レンズならびに発散レンズのいずれの電界強度も変化させることができることから、基板の領域における粒子ビームの平行性からの偏りを変化させることができ、これによりマスクの構造を一定の限度内で拡大もしくは縮小して基板上に転写することが可能である。
【0014】
本発明の上記及びその他の特徴並びに利点に関し、添付の図面を参照しつつ、以下において詳細に説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】
先ず図1に関して説明する。同図は荷電粒子(イオン)による投影リソグラフィーのための本発明に基づく典型的なMIBL装置1を表わしている。
【0016】
同装置は、できるだけ小さく形成された見かけの粒子源寸法を有した粒子源2と、粒子源から流出する粒子を加速して初期エネルギーを付与する抽出システム3とを含んでいる。ビームの質に影響をおよぼすことができるように、見かけの粒子源点を集束レンズ系4によって粒子源の像点に集束させるのが好適である。粒子が1種類のみであることが望ましい場合には、集束レンズ系4の間に四重極質量分析計(たとえば、ウィーンフィルター)を設けることができる。
【0017】
粒子源2の像点には電極装置6のための入射絞り5が設けられており、同電極装置はビーム方向において前記入射絞り5からマスク7までに達し、同マスクはマスクの開口構造を投影投写によって基板8の表面に転写するため基板8の直前に配置されている。
【0018】
図1には詳細に表わされていない電極装置は本発明に基づき、粒子源の像から発して発散する粒子ビームの経路をできるだけ誤差なく、平行化して基板に向けるため、少なくとも1つの静電集束レンズと少なくとも1つの静電発散レンズとの組合せを含んでいる。集束レンズと発散レンズとは両者の間にクロスオーバーが形成されないような間隔で配置されている。
【0019】
本発明に基づく電極装置用の集束レンズとしては、たとえば公知の2極レンズ(ギャップレンズ)または公知の3極レンズ(単体レンズ)を使用することができる。またこれらのレンズの組合せを使用してもよい。これらの静電集束レンズは、当業者には先行技術から公知であり、したがってここでそれらを詳細に説明することは省略する。
【0020】
ただし本発明の範囲内において、多数の、ただし少なくとも4つ以上の電極を有する多極集束レンズを設けることも可能てある。こうしたレンズの一例は以下の記述において、図3および図4と関連して詳細に説明する。
【0021】
静電発散レンズの作用原理は図2に示されている。こうしたレンズは、通例、1つの円筒管9ないしリング状電極と1つの板または格子10との組合せによって形成される。冒頭に述べた国際出願公開第95/19637号には、ビーム方向に先ず格子、その後に管電極を有した静電発散レンズが記載されているが、国際出願公開第95/19637号に基づくこうした構成が発散効果を持つためには、格子と管との間の静電界が粒子を加速しなければならない。図2には本発明において使用されるのが好ましい装置が示されているが、同装置において管電極はビーム方向から見て格子の前方に配置されている。図2にはレンズ電界の等電位線も示されており、その密度は電界のレベルを表わしている。この場合、電界の焦点シフト効果は、電界強度が実質的に入射粒子の方向とは反対に向けられている遅延電界である場合に生ずる。図中には左側から集束しつつ入射し、図示されたレンズによって20keVから1keVに制動されて平行に配列される粒子の経路が表わされている。
【0022】
投影リソグラフィー装置において発散レンズを使用するにあたり、導電性のあるマスクによって格子を好適に形成することができる。ただし、本発明の一環として、ビーム経路に別個の格子を配置することも可能である。
【0023】
図3はきわめて軽小にして、転写特性の点で最適化された、本発明に基づく装置の集束レンズ/発散レンズのための電極装置6の断面を示しており、同図においてZ軸は回転対称性を有する装置の対称軸に沿ってビーム方向に延びており、R軸は装置の半径を表わしている。V軸に記載されている数値は、たとえば陽荷電ヘリウムイオンによる転写のために各電極に印加されている電位に関係している。
【0024】
先述したように、電極装置は中心開口のある入射絞り5を有しており、同中心開口は粒子ビームのクロスオーバーにおいて粒子源の像が形成される箇所に正確に配置されている。入射絞り5はクロスオーバーにおける粒子のエネルギー、この場合にあっては10keV正確に対応した電位となされている。したがって、入射絞り5の電位は、その電位が150kVとなされている粒子源のそれよりも10kV低く、140kVとなされている。
【0025】
ビーム方向においてこの入射絞り5の後方には、集束レンズ/発散レンズのための多数のリング状電極6a,6b,6c,6d,6e,6f,6g,6hから成る電極装置6が位置しており、その際、本例にあって電極6aないし6fは集束レンズに対応させることができ、電極6gと6hは図中に略示されているマスク7と共に発散レンズに対応させることができる。
【0026】
集束レンズとして作用する配列電極6aないし6fはクロスオーバーから発して発散する粒子経路をやや集束性を示すビームへと集束し、その後に発散レンズがこの集束性ビームを平行ビームに変化させ、この平行ビームがマスク7に向けられる。図4には図3に示された電極装置6を通過するビーム経路が半径方向に拡大されて表わされている。
【0027】
リング状電極の正確な形態、それら相互の間隔および各電極に印加される電位はできるだけ軽小な構造とできるだけ良好な転写特性の実現とを意図した電極装置の最適化を通じて決定される。
【0028】
電極装置6のビーム方向における最後の電極6hは発散レンズのための格子電極を形成する同じく導電性を有するマスク7と導電結合されている。
【0029】
マスクの直後には(図3には表わされていないが)照射される基板が配置されている。マスクと基板との間の間隔はアプリケーション要件に応じてマイクロメーター又はミリメーターレベルで選択することができる。
【0030】
計算と実地経験とからして、上記のシステムは特に基板の面積が大きい場合にも卓越した転写特性を有することが判明している。新しいタイプの電極システムによって可能となる転写特性につき以下に詳細に論ずることとする。
【0031】
優れた転写特性に関する一つの重要な要因は転写システムの幾何的転写誤差であるが、これは主として見かけの粒子源の大きさによってあらかじめ定まっている。これは図6に示されているマスク面でのビームの発散αを決定する。図5には50×50mmの面積の像面における幾何的転写誤差に関する計算が表わされているが、この場合、粒子源の直径は20μm、マスクと基板との間の間隔は300μmと仮定された。図5から、像面内の最大幾何的転写誤差は5nm以下であることが看取される。
【0032】
実際には前記のパラメーターをさらに縮小し、たとえば粒子源の直径を10μmとし、マスクと基板との間の間隔を100μmとすることが可能であることから、転写特性を幾何的誤差の点で場合によりさらに向上させることができる。
【0033】
電極システムの転写特性を決定するもう一つの重要な要因はビーム方向からの粒子経路の偏り(テレセントリック性)、つまりマスクに当たる際のビームの平行性の程度である。この場合、適切な最適化手法によって、集束レンズの転写誤差を発散レンズの逆の転写誤差によって相殺しあるいはその逆を行なうことが試みられる。図7には、50mm×50mmの像面(半径約35mm)に関して、(図6に示すように)マスクへの衝突角εの最適衝突角からの偏りが表わされており、その際、正確に平行なビーム(転写倍率1:1)に関するカーブは最大偏り−60μradを示している。このカーブは電極システム6の各電極6aないし6gにつき図3に記載された電位によって実現された、図3と図4に表わされたビーム経路に対応している。
【0034】
以下の表には図6を基礎として、以上に図示・説明した最適化された投影装置の特性データがまとめられている。
【0035】
【表1】
【0036】
この新しいタイプのシステムのもう一つの長所は、転写倍率を一定の限度内で変化させられること、つまり端的に言って、各電極の電位を応分に変化させることにより発散レンズの効果を集束レンズに対比して変化させられる点にある。これにより、マスク構造をわずかに縮小して表わすことも、同じくわずかに拡大して表わすことも可能である。これは、特に、たとえばフラットスクリーン用に使用されるような大きな面積を有した基板の場合に重大な意義を有している。技術的に必要な調質処理により、たとえばガラス基板のサイズを±150ppmだけ変化させることができ、プラスチック基板にあってはこうしたサイズ変化をさらに大きなものとすることが可能である。(±500ppm)
【0037】
基板上へのマスク構造の拡大もしくは縮小転写にあたって粒子ビームはビーム軸から一定の距離においてますます発散しもしくは集束する。像面が50mm×50mmの場合、たとえば粒子ビームの限界ビームは、マスクと基板との間の間隔1mm、像面の500ppmの拡大または縮小に際し17.7mradの角度で推移し、300ppmの拡大または縮小に際し10.6mradの角度で推移する。
【0038】
図7には、像面が50mm×50mm、倍率変化300ppmおよび500ppmの場合の所望の粒子経路からの粒子ビームの偏りを示す計算が表わされている。この計算から、所定の±500ppmの拡大/縮小範囲内では最大ビーム偏りは100μrad以下と見込まれることが看取される。マスクと基板との間の間隔が1mmと仮定された場合、最大位置誤差は0.1μmである。
【0039】
ここで、公知のリソグラフィー装置では誤差を許容し得るかぎりの転写倍率変化は大体±75ppmの範囲内でしか行なえず、新しいタイプの装置はこうした公知の装置を遥かに凌駕していることに注意されたい。
【0040】
本出願人によって製造された、MIBL装置の形の本発明に基づく装置の1実施例によるテストは、前記の表に挙げられたパラメーターが実際に実現可能であることを明らかにした。図8には60.5mm×30.3mmの面積のマスク面の一隅におけるマスクの開口構造が表わされている。図9は80keVのヘリウムイオンによる厚さ0.6μmのレジストへのMIBL転写を示している(ネガチブレジスト:イオンに照射されたレジスト部が現像後に残存している)。この場合、マスクとウェーハとの間の間隔は1mmであった。間隔をもっと大きくした(8mm、265mm)実験により、発散αは50μrad以下であることが判明した。この値が表中に挙げられている30μradという値よりも若干高いということは使用されたイオン源のエネルギー分散が相対的に高かったことに帰着される。図8と図9との画像の比較から、マスクの構造は先述した誤差限界内で基板上に転写された構造と正確に一致していることが認められる。
【0041】
投影リソグラフィー装置の実際的利用には、同じく、ビーム線量が変化する場合の転写構造の変化も考慮されなければならない。イオン線量が変化する場合の線幅の変化を決定するために、既存の装置によるテストが実施された。このテストの結果は図10に示されている。
【0042】
以下の表には本発明に基づいて実現されたMIBL装置とシンクロトロンX線放射を基礎としたその他の投影照射装置との比較が表わされている。
【0043】
【表2】
【0044】
本発明は決して以上に図示・説明した実施例に制限されるものではないことから、特に照射面を容易にたとえば100mm×100mmに拡大することができる。
【0045】
これにより、従来の光学的リソグラフィーに比較して本発明のいくつかの貴重な長所が生ずる。たとえば、光学的リソグラフィーでは、40mmの最大像直径を実現し得るためには、1:4ないし1:5の縮小が必要である。光学系の焦点深度は5μm以上には達しないが、他方、本発明に基づくMIBLシステムのそれは1mm以上にまで達する。したがって、これらのシステムでは厚さが大きく相違する基板ないし表面粗さが大きな基板を使用することが可能であり、また、基板にわずかな反りがあることも許容される。すでに述べたように、転写倍率を電子的に約1000ppmまで変化させることができる以外に、MIBLテクノロジーはさらになお光学系に使用されるよりも遥かに安価なレジスト(“i−ライン”レジストに代えて“g−ライン”レジスト)を使用することができるとの長所も供する。さらに、イオンによる転写に際しては定常波の発生はなく、したがって基板の反射防止コーティングは不要である。
【0046】
本発明に基づく類のMIBLシステムは新しい応用と生産方法との広範な分野を切り開く。特に電界放出ディスプレーを基礎としたフラットスクリーンを高い効率で製造することが可能となる。さらにMIBL技術は、表面波フィルターおよび微小光学部品の製造、ならびに超小型技術に最適に利用することが可能である。
【0047】
システムの転写特性ならびに軽小性、簡潔性をさらに向上させるため、本発明の範囲を越えることなく、電極装置のさらなる改良と最適化が可能であることは当業者には明らかである。したがって本発明の範囲内には電極装置が集束レンズと発散レンズとの組合せで構成されているあらゆる投影装置が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に基づく装置の構成を示す図である。
【図2】 静電発散レンズの作用原理を示す図である。
【図3】 電極装置の実用的な実施例を示す図である。
【図4】 図3の電極装置を通るビーム経路を示す図である。
【図5】 計算に基づく図3の電極装置の幾何的転写誤差を示す図である。
【図6】 転写誤差に関するパラメーターを定義するためのマスクと基板との一部を示す図である。
【図7】 1:1−転写時の図4のビーム断面内における計算に基づくテレセントリック性からの偏りと、マスク構造の縮小または拡大転写時の所望のビーム方向からの計算に基づく偏りとを示す図である。
【図8】 マスクの一部分のマスク構造のSEM画像である。
【図9】 基板上に再現された図8のマスク構造のSEM画像である。
【図10】 転写されたマスク構造の寸法と照射量との相関性を示す図である。
【符号の説明】
1 投影リソグラフィー装置
2 粒子源
3 抽出システム
5 入射絞り
6 変換手段
6a〜6f 静電集束レンズ(同軸リング状電極)
6g〜6h 静電発散レンズ(同軸リング状電極)
7 マスク
8 基板
Claims (10)
- 粒子源(2)と、実質的に点状の見かけの粒子源から発する発散粒子ビームをつくり出す抽出システム(3)と、発散粒子ビームを集束してマスク(7)及び基板(8)を照射するための実質的に平行な粒子ビームに変換する手段(6)とを備えた、マスクの構造をマスクの直後に配置された基板に転写するための荷電粒子による投影リソグラフィー装置において、粒子ビームを集束する前記手段が静電発散レンズ(6g、6h)と連携した少なくとも1つの静電集束レンズ(6a〜6f)を含む電極装置(6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h)を有しており、前記静電発散レンズが前記マスク(7)の領域に配置されているとともに、少なくとも1つの同軸リング状電極(6g)とビーム方向において当該電極後方に配置され且つビーム方向に対して垂直を成す格子(7)とで構成されており、前記マスク(7)が前記発散レンズ(6g、6h)の前記格子を構成していることを特徴とする装置。
- 前記発散レンズがビーム方向に間隔を置いて前記集束レンズの後方に配置されている請求項1に記載の装置。
- 前記静電集束レンズが一定の間隔を置いてビーム方向に順次に配置された少なくとも2つの同軸リング状電極(6a、6b、6c、6d、6e、6f)で構成されている請求項1又は2に記載の装置。
- 前記静電集束レンズ(6a〜6f)は、同軸配置された4つ以上のリング状電極(6a、6b、6c、6d、6e、6f)を有しており、当該電極のうちビーム方向から見て最初の電極が、見かけの粒子源ないし粒子源のイオン光学的実像を取り囲む開口を備えた入射絞り(5)を有する請求項3に記載の装置。
- ビーム方向に順次に配置された前記リング状電極のうち少なくとも2つの電極(6b、6c又は6d、6e)が等電位とされることにより、同電極間に実質的にゼロ電界の空間または電界強度のごくわずかな空間が形成され、前記電極のうちさらに別の少なくとも2つの電極(6a、6b又は6c、6d又は6e、6f)の電位が相違させられ、荷電粒子にとって少なくとも部分的に加速電界が形成される請求項4に記載の装置。
- 前記マスク(7)と前記基板(8)とが等電位とされることにより、前記マスク(7)と前記基板(8)との間の空間に電界が形成されない請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
- 前記粒子源がイオン源(2)であり、当該イオン源に見かけのイオン源点から発する一定のエネルギーを有したイオンの発散ビームをつくり出すための抽出システム(3)と望ましくない種類のイオンを除去するための分離システムとが連結されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
- ビーム方向において前記粒子源(2)と前記電極装置(6)との間に少なくとも1つの追加の静電集束レンズ(4)が設けられ、当該レンズが点状の見かけの粒子源から発する発散粒子ビームを集束してクロスオーバーに見かけの粒子源の像が形成されるようにする請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。
- 前記電極装置に含まれる集束レンズ(6a、6b、6c、6d、6e、6f)が入射絞り(5)を有し、当該絞りの開口が見かけの粒子源の像点に配置されている請求項8に記載の装置。
- 前記電極(6a、6b、6c、6d、6e、6f、6g、6h)に印加されている電位を変化させることにより前記集束レンズ及び/又は前記発散レンズのレンズ電界を変化させて、発散性もしくは集束性を有する粒子ビームを形成し、これに応じて前記マスク(7)の構造が拡大もしくは縮小されて前記基板(8)に転写される請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
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