JP4040800B2 - 分散電源の単独運転検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、上位系統に変電所を介して配電線が接続され、この配電線に、分散電源を有する需要家設備が接続された構成の配電系統に適用されるものであって、分散電源の単独運転を検出する単独運転検出装置に関し、より具体的には、この単独運転検出装置を構成する供給停止検出装置中の中間調波演算手段の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
配電線には、近年、コジェネレーション(複合発電)設備等の発電設備を有する需要家設備が接続されるようになってきた。このような発電設備は、分散電源と呼ばれる。
【0003】
系統事故等によって電力会社の変電所の遮断器が開放されて、上位系統からの電力供給が停止したときに、分散電源が運転(即ち単独運転)を続けていると、上位系統からの電力供給が停止したにもかかわらず配電線に電圧が印加され続けることになるので、感電事故等が発生する恐れがある。そこで、第1ステップとして、このような上位系統からの電力供給の停止を、即ち分散電源の単独運転を確実に検出する必要がある。更に第2ステップとして、当該分散電源を配電系統から切り離す(解列する)必要がある。
【0004】
分散電源の単独運転を検出する装置の一例として、特開平10−248168号公報には、配電系統に、その基本波電圧に同期しておりしかも当該基本波の非整数倍の中間次数の高調波電流を注入し、この中間次数についての配電系統のインピーダンスまたはアドミタンスを算出し、このインピーダンスまたはアドミタンスの変化から、上位系統からの電力供給停止を検出する、即ち分散電源の単独運転を検出する装置が提案されている。
【0005】
これを詳述すると、図1は、上記のような分散電源の単独運転検出装置を備える配電系統の一例を示す単線接続図である。この配電系統は、上位系統2に変電所4を介して幾つかの配電線10、11が接続された構成をしている。変電所4は、変圧器6と、その2次側と配電線10、11とを接続する遮断器8とを備えている。
【0006】
各配電線10、11には、幾つかの一般需要家設備12、分散電源を有する幾つかの需要家設備14、15、および幾つかの力率改善用コンデンサ16等が接続されている。
【0007】
ここで、需要家設備14に着目すると、需要家設備14においては、その受電点Aに引込線18および遮断器20を介して構内母線22が接続され、この構内母線22に変圧器24を介して所内負荷25が接続されている。更に、構内母線22に遮断器26および連系用の遮断器28を介して分散電源30が接続されており、通常は、遮断器26および28を閉じて、分散電源30から当該配電系統の基本波に同期した電力を構内母線22に供給するようにしている。これを連系運転と呼ぶ。
【0008】
系統事故等の際には、変電所4の遮断器8が開放される。その際、前述したように、分散電源30が運転(即ち単独運転)していると、感電事故等が発生する恐れがあるので、分散電源30の単独運転を確実に検出し、更には遮断器28を開放して分散電源30を配電系統から解列する必要がある。但しこの出願では、分散電源30の単独運転検出が主目的であるので、遮断器28を開放する構成は必須ではない。
【0009】
上記検出のために、需要家設備14内に、電流注入装置32と供給停止検出装置42とを備えていて分散電源30の単独運転を検出する単独運転検出装置31を設けている。
【0010】
引込線18には、その電圧および電流を計測する計器用変圧器40および計器用変流器41が接続されており、これらで計測した計測電圧Vt および計測電流It が供給停止検出装置42等に供給される。
【0011】
電流注入装置32は、上記引込線18ひいては上記配電線10に、当該配電系統の基本波電圧に同期しており、しかも当該基本波の非整数倍の中間次数m(mは例えば2.7、3.6等)の高調波電流Jm を注入する。
【0012】
この電流注入装置32は、この例では、上記計測電圧Vt を用いてその基本波電圧に同期した信号を発生する同期制御部34と、この信号に基づいて上記基本波に同期している上記中間次数mの高調波電流Jm を発生する電流源36と、この電流源36の電圧と引込線18の電圧とを整合させる変圧器38とを備えている。
【0013】
供給停止検出装置42は、上記引込線18における上記中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im (図2参照)を計測し、これらに基づいて受電点Aから眺めた上記配電系統の上記中間次数mのインピーダンスZm またはアドミタンスYm を演算し、かつこのZm またはYm の変化を検出して、変電所4の遮断器8が開放されて上位系統2からの電力供給が停止したことを表す、即ち分散電源30が単独運転になったことを表す供給停止検出信号SGを出力する。
【0014】
この供給停止検出装置42は、この例では図2に示すように、上記アナログの計測電圧Vt および計測電流It をディジタル電圧信号Vd およびディジタル電流信号Id にそれぞれ変換するA/D変換器44および45と、これらからのディジタル電圧信号Vd およびディジタル電流信号Id を離散フーリエ変換(DFT)して上記中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im をそれぞれ求める中間調波演算手段46および47と、この高調波電圧Vm および高調波電流Im から上記インピーダンスZm =Vm /Im を演算する演算手段48と、このインピーダンスZm を所定の基準値R1 と比較して前者Zm が後者R1 よりも大きいときに上記供給停止検出信号SGを出力する比較手段49とを備えている。
【0015】
但し、Ym =1/Zm の関係にあるので、演算手段48において上記アドミタンスYm =Im /Vm を演算し、それが所定の基準値R2 よりも小さいときに比較手段49から供給停止検出信号SGを出力するようにしても良い。なお、中間調波演算手段46、47、演算手段48および比較手段49は、例えばコンピュータによって構成される(図3の例の場合も同様)。
【0016】
変電所4の遮断器8が開放されると、それまで配電系統に含まれていた変圧器6の並列インピーダンスが無くなり、上記インピーダンスZm の値は非常に大きくなる(逆に、上記アドミタンスYm の値は非常に小さくなる)ので、上記供給停止検出装置42から供給停止検出信号SGが出力される。これによって、上位系統2からの電力供給停止を、即ち分散電源30の単独運転を検出することができる。
【0017】
しかもこの単独運転検出装置31では、本来配電系統に存在しない(存在しても極めて僅かな)基本波の非整数倍の中間次数mの高調波電流Im を注入するので、電流注入装置32の小容量化を実現することができる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
上記中間調波演算手段46および47における離散フーリエ変換の原理は次のとおりである。
【0019】
いま、N個の離散的な計測値xi (i=0,1,・・・,N−1)が与えられたとき、それの現時点からN点前までの第k次(k=0,1,・・・,N−1)の離散フーリエ変換Xk は、公知の離散フーリエ変換の定義に従って、次式で表される。ここで、Nは、例えば、配電系統の基本波の1サイクルを256点とし、それを16サイクル計測するとしたとき、256×16となる。計測値xi は、具体的には上記ディジタル電圧信号Vd またはディジタル電流信号Id である。
【0020】
【数1】
Xk =x0 +x1a+x2a2 +・・・+xN-1aN-1
【0021】
上記数1では、計測値xi の添字iは、現時点の計測値をxN-1 としている。また、aは次式で表される。jは虚数単位である。従ってaN =1である。
【0022】
【数2】
a=exp(−j2πk/N)
【0023】
さて、上記離散フーリエ変換Xk を求めるためには、まず計測値xi をN点サンプリングして、x0 〜xN-1 を計測する。そして、上記数1に従って演算を行って、離散フーリエ変換Xk を求める。この第1番目の演算は、Nサンプリングかかって行えば良い。このようにして求めたXk をS1 とする。
【0024】
そして、次のサンプリングが来たとき(即ちxN を計測したとき)に算出する離散フーリエ変換Xk をS2 とすると、離散フーリエ変換の定義式から、次式となる。
【0025】
【数3】
S2 =x1 +x2a+x3a2 +・・・+xNaN-1
【0026】
以降は、上記と同様にして、計測値xi のサンプリングごとに、S3 、S4 、・・・を演算する。このようにして、計測値xi の離散フーリエ変換Xk を繰り返し算出することができる。
【0027】
上記中間調波演算手段46および47では、上記のような離散フーリエ変換の計算を行う。即ち、上記中間調波演算手段46または47においては、上記計測値xi が上記ディジタル電圧信号Vd またはディジタル電流信号Id であり、上記離散フーリエ変換Xk が上記高調波電圧Vm または高調波電流Im である。即ち、k=mとすることによって、目的とする中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im を離散フーリエ変換によって算出することができる。
【0028】
しかし、上記方式では、上記数3から分かるように、各S2 、S3 、・・・を演算するためには、多数の掛け算(乗算)を毎回行わなければならない。具体的には、一つの次数(即ち一つのk)の演算においても、サンプル数がNの場合、N回の掛け算を行わなければならない。従って、各S2 、S3 、・・・の演算に長時間を要するので、サンプル数Nを多くすると、そのサンプリング間隔Δt内に演算を終えることができなくなる。
【0029】
このような課題は、例えば、中間調波演算手段46および47に超高速のコンピュータを用いれば解決することは可能かも知れないけれども、そのようにすると装置が非常に高価になる。または、サンプル数Nを非常に少なくすれば解決することはできるけれども、そのようにすると高調波電圧Vm および高調波電流Im の算出精度が低下し、ひいては上記インピーダンスZm またはアドミタンスYm の算出精度、更には分散電源単独運転の検出精度が低下する。
【0030】
そこでこの発明は、上記のような中間次数のインピーダンスまたはアドミタンス算出の元になる中間次数の高調波電圧および高調波電流の高速かつ高精度な算出を可能にし、ひいては分散電源の単独運転の正確な検出を可能にすることを主たる目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
この発明の分散電源の単独運転検出装置は、前記中間調波演算手段として、前記離散フーリエ変換の演算を繰り返して行う際に一つ前の演算結果をその次の演算に用いる回帰型離散フーリエ変換を行い、かつこの回帰型離散フーリエ変換を行う際に、一つ前の演算結果に減衰係数e -r (但しeは自然対数の底)を掛ける重み付けを行う中間調波演算手段を備えており、
更に、前記中間次数を3.6次未満にしており、かつ前記回帰型離散フーリエ変換における計測サイクル数をn(但しnは1以上の整数)としたとき、前記指数rを、0<r<1/(2nπ・10000)で表される範囲内の値にしていることを特徴としている。
【0032】
上記中間調波演算手段によれば、離散フーリエ変換によって中間次数の高調波電圧および高調波電流を繰り返して求める際に、一つ前の演算結果をその次の演算に用いる回帰型離散フーリエ変換を行うので、1回の演算時に実行する掛け算の数を大幅に減らすことができ、演算時間を大幅に短縮することができる。従って、中間調波演算手段に超高速のコンピュータを用いる必要も、サンプル数を減らす必要もない。
【0033】
しかし、上記のような回帰型離散フーリエ変換を行うと、そのままでは、何らかの原因で演算結果に誤差が含まれると、その誤差を含む演算結果を次の演算に用いることになるので、その誤差が蓄積され、演算を長期間繰り返して行うと、この誤差が徐々に大きくなる可能性がある。
【0034】
これに対して、上記中間調波演算手段では、上記のような減衰係数e -r で重み付けを行うので、仮にどこかで演算誤差が発生しても、離散フーリエ変換の演算ごとに当該誤差が少しずつ小さくなって行く。従って、長期間に亘って計測および演算を繰り返しても、大きな蓄積誤差を生じることはない。
【0035】
従って、上記中間調波演算手段によれば、前述したような中間次数のインピーダンスまたはアドミタンス算出の元になる中間次数の高調波電圧および高調波電流を高速かつ高精度で算出することができる。その結果、この発明によれば、分散電源の単独運転を正確に検出することができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
図3は、図1中の供給停止検出装置の改良例を示すブロック図である。図2に示した従来例と同一または相当する部分には同一符号を付し、以下においては当該従来例との相違点を主に説明する。また、分散電源の単独運転検出装置全体の構成は、例えば図1と同じであるので、当該図面およびその前記説明を参照するものとし、ここでは重複説明を省略する。
【0037】
この供給停止検出装置42は、図2に示した従来の中間調波演算手段46および47の代わりに、次のような演算を行う中間調波演算手段46aおよび47aを備えている。それ以外の構成は、図2のものと同様である。
【0038】
中間調波演算手段46aおよび47aは、上記A/D変換器44および45からのディジタル電圧信号Vd およびディジタル電流信号Id を離散フーリエ変換して上記中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im をそれぞれ求める。しかも、この離散フーリエ変換の演算を繰り返して行う際に、一つ前の演算結果をその次の(それに続く)演算に用いる回帰型離散フーリエ変換を行う。かつ、この回帰型離散フーリエ変換を行う際に、一つ前の演算結果に、1に極めて近くかつ1より小さい値の減衰係数を掛ける重み付けを行う。
【0039】
この中間調波演算手段46aおよび47aにおける回帰型離散フーリエ変換の原理は次のとおりである。
【0040】
即ち、ここでは、前述したS1 を算出後、その次のS2 を算出するのに、従来例の数3のような演算は行わずに、既に算出したS1 を利用して、次の数4に示す演算を行う。この演算では、掛け算はたった1回で済む。a-1はメモリに記憶しておけば良い。このような演算は、S2 を演算するのにその一つ前の演算結果S1 を用いるので、回帰型離散フーリエ変換と称する。
【0041】
【数4】
【0042】
以降は上記数4と同様に、次の数5に示す各演算を上記計測値xi のサンプリングごとに行う。このような回帰型離散フーリエ変換によって、前記離散フーリエ変換と同様に、目的とする中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im を求めることができる。
【0043】
【数5】
S3 =(S2 −x1 +xN+1 )a-1
S4 =(S3 −x2 +xN+2 )a-1
・・・・・
【0044】
このような回帰型離散フーリエ変換によれば、1回の演算時に実行する掛け算の数を、従来例に比べて大幅に減らすことができる。即ち、数3と数4とを比べれば分かるように、サンプル数がNの場合、従来例の通常の離散フーリエ変換の場合に比べて、掛け算の数を約1/Nに減らすことができる。しかもこの回帰型離散フーリエ変換の場合は、S2 以降の各演算における掛け算は、サンプル数Nに依らず、いずれも1回で済むので、サンプル数Nを大きくしても演算時間は長くならない。従って、演算時間を大幅に短縮することができる。その結果、上記中間調波演算手段46aおよび47aに超高速のコンピュータを用いる必要はないので、装置を安価に構成することができる。また、サンプル数Nを減らす必要もないので、高調波電圧Vm および高調波電流Im を高精度で算出することができる。
【0045】
ところで、上記回帰型離散フーリエ変換の計算を一般的に表すと、ある時点の演算結果Sp (p=1,2,3,・・・)に対して、その次のSp+1 は次式のように出し入れ演算を行っている。
【0046】
【数6】
Sp+1 =(Sp −xp-1 +xN+p-1 )a-1
【0047】
従って、何らかの原因で一つの演算結果に誤差が生じると、その誤差を含む演算結果をその次の演算にそのまま用いることになるので、その誤差が蓄積されることになる。この誤差が発生する要因の一つに、演算誤差がある。
【0048】
これを詳述すると、今、演算誤差等によって、Sp+1 の演算時に、本来の演算結果Sp+1 に対して、誤差εを含むSp+1 +εが算出されたとする。その場合は、次のSp+2 の値は、本来のSp+1 と誤差εとから、次の数7となる。この数7の第1項は本来の誤差の無い部分であり、第2項は誤差の部分である。このように、誤差εの絶対値はそのままの大きさで引き継がれて行く。
【0049】
【数7】
【0050】
上記では、誤差εがSp+1 の演算時にのみ発生したと仮定したが、実際には、毎回の演算時に何らかの誤差が発生し、それが蓄積されて行くことになる。従って、上記のような回帰型離散フーリエ変換の演算を繰り返して長期間行うと、この誤差が徐々に大きくなる可能性がある。
【0051】
例えば、上記のような中間調波演算手段46aおよび47aを含む供給停止検出装置42、更には単独運転検出装置31は、単独運転検出が行われるまでは(単独運転検出が行われればリセットすれば良い)、長期間(例えば何か月間も)休み無しに動作し続ける可能性があるので、どんどん誤差が大きくなる可能性がある。
【0052】
そこで、万一上記のように誤差が発生しても、すぐに演算結果Sp の中から消えるように、回帰型離散フーリエ変換の計算のアルゴリズムを次式のように少し変える。eは自然対数の底(即ち、e=2.718)である。
【0053】
【数8】
Sp+1 =(Spe-r−xp-1e(N-1)r+xN+p-1 )a-1
【0054】
上記e-rをここでは減衰係数と呼ぶ。この減衰係数e-rは、誤差蓄積防止の観点からは小さい方が好ましいけれども、あまり小さくするとそれ自体が計算誤差を生じさせることになる。従ってこの減衰係数e-rは、1に極めて近くかつ1より小さい値にするのが好ましい。より具体的には、0<r≪1の範囲内にするのが好ましい。rはここでは減衰指数と呼ぶ。
【0055】
このようにしておくと、万一上述したような誤差εが発生しても、演算する度に前回分の誤差εがe-r倍されてどんどん小さくなって行くので、大きな蓄積誤差を生じることはない。従って上記中間次数mのインピーダンスZm またはアドミタンスYm 算出の元になる中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im を高速でしかも精度良く算出することができる。
【0056】
なお、上記数8は、前述した数1を、次の数9に示すように、時間的に古いものの順に重みをer で減らして行ったのと同じである。即ち数9を回帰型にしたのが上記数8である。
【0057】
【数9】
【0058】
上記減衰係数e-rは、上述したように、あまり小さくすると、それ自体が計算誤差を生じさせることになり、本来の着目する中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im を精度良く算出できなくなる可能性が出てくる。この計算誤差が及ぼす影響の最大のものは、電圧または電流の基本波成分が指数関数的な変調を受けて、計算上で(即ち本来の計測データではないのに)、着目中間次数mの高調波成分が発生することである。
【0059】
ここで、減衰指数rの場合に、基本波周波数成分が変調を受けて、m次の中間次数成分Hm がどの位発生するかを評価する。この中間次数成分Hm は次の数10で表される。この数10において、第1行目の括弧内のejxは基本波成分を表し、exp{−r(2nπ−x)}は減衰率を表し、e-jmxは着目中間次数成分を表している。nは、離散フーリエ変換の計測サイクル数であり、例えば前述した16または32等である。
【0060】
【数10】
【0061】
上記数10から、着目中間次数成分の大きさ|Hm |は、次式で表される。
【0062】
【数11】
|Hm |≒r2nπ/|1−m|
【0063】
ここで、配電系統に通常存在しているリアクトル付き力率改善用コンデンサによる共振次数の最小値は、配電系統のシミュレーション結果によれば、通常は、配電線10(図1参照)が電圧7kV以下の高圧配電系統の場合で約2.7次、電圧7kV超の特別高圧配電系統の場合で約3.6次である。従って上記中間次数mは、この共振を避けて上記高調波電圧Vm および高調波電流Im の計測を正確に行うためには、高圧配電系統の場合で2.7次未満、特別高圧配電系統の場合で3.6次未満にするのが好ましい。但し、この中間次数mは、小さくても通常は2付近であるから、上記数11の分母はおよそ1と考えて良い。
【0064】
一方、配電系統に自然に存在する上記中間次数mの高調波の大きさは、通常は基本波のせいぜい0.01%程度である。上記電流注入装置32からは、この自然に存在する高調波と区別するために、0.01%よりも多く(例えば0.1%程度)高調波電流Jm を注入する。従って、上記中間次数成分Hm の値を0.01%よりも小さくしておけば、上記計算誤差の影響を排除することができる。
【0065】
上記を総合すると、上記中間次数成分の大きさ|Hm |は、次式で表すことができる。
【0066】
【数12】
|Hm |≒r2nπ<1/10000
【0067】
従って、上記減衰指数rは、次式で表される範囲内の値にするのが好ましい。
【0068】
【数13】
0<r<1/(2nπ・10000)
【0069】
これによって、上記のような重み付けを行う回帰型離散フーリエ変換によっても、その演算過程で発生する中間次数mの高調波成分を非常に小さくすることができるので、目的とする中間次数mの高調波電圧Vm および高調波電流Im をより高精度で算出することができる。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、離散フーリエ変換によって中間次数の高調波電圧および高調波電流を繰り返して求める際に、一つ前の演算結果をその次の演算に用いる回帰型離散フーリエ変換を行う中間調波演算手段を備えているので、1回の演算時に実行する掛け算の数を大幅に減らすことができ、演算時間を大幅に短縮することができる。従って、中間調波演算手段に超高速のコンピュータを用いる必要も、サンプル数を減らす必要もない。
【0071】
しかも、上記中間調波演算手段では、上記のような減衰係数e -r で重み付けを行うので、仮にどこかで演算誤差が発生しても、離散フーリエ変換の演算ごとに当該誤差が少しずつ小さくなって行く。従って、長期間に亘って計測および演算を繰り返しても、大きな蓄積誤差を生じることはない。特に、上記中間調波演算手段を含む供給停止検出装置、更には分散電源の単独運転検出装置は、単独運転検出が行われるまでは長期間休み無しに動作し続ける可能性があるので、長期間に亘って計測および演算を繰り返しても大きな蓄積誤差を生じることがないという上記効果は、分散電源の単独運転検出装置においては顕著なものとなる。
更に、配電系統に通常存在しているリアクトル付き力率改善用コンデンサによる共振次数を考慮して上記中間次数を3.6次未満にしており、かつ、(a)当該中間次数の範囲、(b)上記電流注入装置から注入する上記中間次数の高調波電流の通常の大きさ、および、(c)回帰型離散フーリエ変換時に電圧または電流の基本波成分が減衰係数e -r によって指数関数的な変調を受けることによって演算上で発生する上記中間次数の高調波成分(H m )の大きさを総合して、上記減衰係数e -r を構成する指数rを上記範囲にしているので、上記回帰型離散フーリエ変換の演算過程で発生する上記中間次数の高調波成分を非常に小さく抑えることができ、その結果、目的とする中間次数の高調波電圧および高調波電流をより高精度で算出することができる。
【0072】
従って、上記中間調波演算手段によれば、前述したような中間次数のインピーダンスまたはアドミタンス算出の元になる中間次数の高調波電圧および高調波電流を高速かつ高精度で算出することができる。その結果、この発明によれば、分散電源の単独運転を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】分散電源の単独運転検出装置を備える配電系統の一例を示す単線接続図である。
【図2】図1中の供給停止検出装置の従来例を示すブロック図である。
【図3】図1中の供給停止検出装置の改良例を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 上位系統
4 変電所
10 配電線
14 分散電源を有する需要家設備
30 分散電源
31 単独運転検出装置
32 電流注入装置
42 供給停止検出装置
44、45 A/D変換器
46a、47a 中間調波演算手段
48 演算手段
49 比較手段
Jm 注入高調波電流
m 中間次数
Vt 計測電圧
It 計測電流
Vd ディジタル電圧信号
Id ディジタル電流信号
Vm 高調波電圧
Im 高調波電流
Zm インピーダンス
Ym アドミタンス
SG 供給停止検出信号
Claims (1)
- 上位系統に変電所を介して配電線が接続され、この配電線に、分散電源を有する需要家設備が接続された構成の配電系統に適用されるものであって、
前記配電線から前記需要家設備への引込線に、当該配電系統の基本波電圧に同期しており、しかも当該基本波の非整数倍の中間次数の高調波電流を注入する電流注入装置と、前記需要家設備の引込線における前記中間次数の高調波電圧および高調波電流を計測し、この高調波電圧および高調波電流に基づいて、前記需要家設備の受電点から眺めた前記配電系統の前記中間次数のインピーダンスまたはアドミタンスを演算し、かつこのインピーダンスまたはアドミタンスの変化を検出して、前記上位系統からの電力供給が停止したことを表す供給停止検出信号を出力する供給停止検出装置とを備えており、
しかもこの供給停止検出装置が、前記引込線において計測したアナログの計測電圧および計測電流をそれぞれディジタル電圧信号およびディジタル電流信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器からのディジタル電圧信号およびディジタル電流信号をそれぞれ離散フーリエ変換して前記中間次数の高調波電圧および高調波電流をそれぞれ求める中間調波演算手段とを備えている、分散電源の単独運転検出装置において、
前記中間調波演算手段として、前記離散フーリエ変換の演算を繰り返して行う際に一つ前の演算結果をその次の演算に用いる回帰型離散フーリエ変換を行い、かつこの回帰型離散フーリエ変換を行う際に、一つ前の演算結果に減衰係数e -r (但しeは自然対数の底)を掛ける重み付けを行う中間調波演算手段を備えており、
更に、前記中間次数を3.6次未満にしており、かつ前記回帰型離散フーリエ変換における計測サイクル数をn(但しnは1以上の整数)としたとき、前記指数rを、0<r<1/(2nπ・10000)で表される範囲内の値にしていることを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。
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