JP4040114B2 - 絶縁耐力改良型電力ケーブル - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、直流の高圧電力ケーブルに関するものである。特に、改良された絶縁耐力を有するこのような電力ケーブルを対象とする。
【0002】
【従来の技術】
この電力ケーブルは、できれば押出し成型された重合絶縁体を備えていることが望ましい。一般に絶縁体は、それ自体がケーブルの導電性心線を覆っている内側半導体シールドを覆っているとともに、外側半導体シールドで覆われている。この重合絶縁体は高い固有絶縁耐力をもっている。しかしケーブル上で得られる実質上の絶縁耐力は固有耐力より小さくなる。この違いの原因は主に、ケーブル上への絶縁体の取付け前あるいは取付け中に付着するまたは形成される不純物や空洞の存在である。このような不純物や空洞の存在は、絶縁体内における電界の局所的集中を引き起こし、ケーブルの絶縁体を介して電気的欠陥の原因となる。
【0003】
特開平2−18811は、質量の0.2 ないし1.5 %のカーボンブラックを含む重合絶縁体型電力ケーブルについて記載している。このように改良された絶縁体はケーブルの導電性心線上に直接取付けることができる。カーボンブラックの含有量がわずかであるので、電界の分布の均一性、つまりケーブルの信頼度が改善され、心線周縁の凸凹あるいは絶縁体内部の不純物や空洞を原因として電気的欠陥が生じる危険が小さくなる。またその含有量が少量ではあるがゼロではないことから、絶縁体にわずかな電気伝導率が与えられる。
【0004】
この伝導率は一定であり、絶縁体内に含まれるカーボンブラックの固有電気伝導率と関係がある。カーボンブラックの固有伝導率の典型的な値は10から100 S/cmである。またこの伝導率は絶縁体内の漏れ電流を助長し、その誘電損失を増加させる。さらに、こうして改良された絶縁体の固有絶縁耐力を小さくし、その結果ケーブル上の実質的絶縁耐力も小さくなる。このことは内部空洞や凸凹が存在するか否かには関係がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、重合絶縁体が高い絶縁耐力をもち、存在する恐れのある不純物や空洞に対しても局所的にしか適合しない電力ケーブルを作成することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気心線とその心線の絶縁重合第一誘電層を備え、その第一誘電層は少なくともひとつの導電性重合体を含む絶縁重合マトリックスから構成され、その導電性重合体は、上記第一誘電層の結果として生じる電気伝導率が10−14S/cm未満となるような比率でこの重合マトリックス内に組み込まれていることを特徴とする、絶縁耐力改良型直流電力ケーブルを提供する
【0007】
実施例】
電気伝導率の値はすべて室温で得られたものであることに留意されたい。
【0008】
図1に示されているケーブルは、導電性ストランドで形成されているが、また単一導電性で形成することもできる導電性心線1を備えており、この心線の周囲は内側半導体シールド2で囲まれ、内側半導体自体は絶縁誘電層3で囲まれ、さらにこの誘電層3は外側半導体シールド4で囲まれている。保護外装5がこの外部半導体シールド4をとり囲み、ケーブルを保護する役割を果たす。外装は、特に鉛あるいは鉛合金でできている。外装はまた、絶縁体とすることもでき、その場合はその真下にあるアースの金属シールドと一体化することが好ましい。
【0009】
本発明によるこのケーブルにおいては、絶縁誘電層3は絶縁重合マトリックスから構成され、このマトリックス中に、誘電層3の結果として生じる電気伝導率が直流では10−14S/cm未満になるような比率で少なくともひとつの導電性重合体が組み込まれる。
【0010】
本発明によるケーブル内の誘電層3の電気伝導率あるいは誘電率は、限られた量だけケーブルに含まれている導電性重合体のタイプにしたがって、どこかに欠陥が存在することによって、局所的に著しく増大する。ただし、場所によっては欠陥に応じてこれらの率は変わりやすい。
【0011】
したがって、誘電層3は存在するさまざまな欠陥に応じて局所的に自動適応型であるといえる。このように、誘電層3は、これらの欠陥による破壊の危険を小さくし、ケーブルの長さ全体についてその層を介して電界の分布を均一化することができる。
【0012】
たとえば、導電性重合体は、不純物注入されていない(ノンドーピング:非ドープ)、不純物除去された(デドーピング:脱ドープ)、あるいは不純物自己注入された(オートドーピング:自己ドープ)重合体とすることもできる。
【0013】
不純物注入されていない導電性重合体は、アニリン及びキノンの重縮合反応によって得られるポリアニリン、あるいはチーグラー・ナッタ型触媒を用いて重合が開始されるポリアセチレンといった、ドーパントの注入に頼らずに合成が行なわれる重合体であることに留意されたい。
【0014】
不純物自己注入された導電性重合体は、たとえば、環上のスルホン基によってグラフト化されたポリアニリンのような、合成中にドーパントのグラフト化によって得られる重合体である。
【0015】
不純物除去された導電性重合体は、塩酸によって処理されたポリアニリンのような、合成中に不純物注入され、その後に適切な手段によって塩酸の除去によって不純物除去された重合体である。
【0016】
本発明による固有伝導率を得るために、不純物自己注入された重合体を使用する場合には、直流での使用において、誘電層3におけるその比率は、多くとも質量のおよそ2%となる。不純物注入されていないあるいは不純物除去された重合体を使用する場合には、誘電層3中での比率は、直流での使用においてできれば多くとも質量のおよそ5%とすることが望ましい。
【0017】
内側半導体シールド2及び外側半導体シールド4のいずれかあるいは各々は、絶縁重合マトリックス及び少なくともひとつの導電性重合体から構成されている、欧州特許出願EP−A−0507676に記載されているタイプのものであると好都合である。導電性重合体は不純物注入されていない重合体及び、不純物注入後に不純物除去された重合体のなかから選ばれ、半導体シールドの伝導率が1S/cm以下となるように、質量の5ないし70%、できれば20ないし30%の比率で重合マトリックス中に組み込まれる。
【0018】
同じように好都合な別法においては、これらの半導体シールドのいずれかあるいは各々は、絶縁重合体及び、特に欧州特許出願EP−A−5012926に記載されているタイプの不純物自己注入された少なくともひとつの導電性重合体から構成される。この導電性重合体は、質量の5%を上回る比率で、できれば質量の10ないし40%の比率で重合マトリックスに組み込まれる
【0019】
電層3の重合マトリックスは、半導体シールド2及び4のマトリックスのように、少なくともひとつの熱可塑性重合体を備えている。この熱可塑性重合体は、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、フッ化重合体、ポリエーテル、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリウレタン、シリコーン、それらの共重合体、さらに単独重合体同士の混合物及び単独重合体と共重合体との混合物中から選択される。
【0020】
特に、この熱可塑性重合体は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、エチレンと酢酸ビニルの共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)、フッ化ポリビニリデン(PVDF)、エチレン−ブチルアクリレート(EBA)のいずれか、あるいはそれらの混合物のうちから選択される。
【0021】
別法においては、重合マトリックスは、ポリエステル、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂のうちから選択される少なくともひとつの熱硬化性重合体を備えている。
【0022】
誘電層3の不純物注入されていない、または不純物注入後に不純物除去されたひとつあるいは複数の重合体は、半導体シールド2及び4の可能な重合体と同じように、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアルキルチオフェン、さらにそれらの誘導電性及び混合物を含む群のうちから選択される。
【0023】
不純物注入されていないあるいは不純物除去されたこれらの重合体は、イオン性の基を含んでいない。直流で測定されたそれらの固有電気伝導率は非常に低く、およそ10−10ないし10−9S/cmである。不純物注入されていないあるいは不純物除去された重合体の多くとも5%を含む誘電層3の伝導率は、直流及び低電界での利用についてはおよそ10−14S/cm未満となることもある。つまり欠陥がない場合あるいは存在する欠陥が些細なものである場合には、この層の高い絶縁耐力を損なうことはない。またこの伝導率は、欠陥の存在によって高電界において局所的にはおよそ10−9S/cmとなることもある。この結果、局所的にしか、また欠陥に適合した形でしか絶縁耐力を損なうことはなく、結果として生じる破壊の危険を防ぎながら、欠陥のある場所への高電界の分布を可能にする。
【0024】
誘電層3の不純物自己注入されたひとつあるいは複数の重合体は、半導体シールド2及び4の可能な重合体のように、ベンゼン核あるいはベンゼン核とキノン核をもつ不純物自己注入されたポリアニリンのうちから選択される。ポリアニリンは、2ないし8個の炭素原子をもち少なくともひとつのヘテロ原子によって中断された炭化水素基と、強酸性の基あるいはそれらの塩のひとつとから構成される側鎖をもっている。このヘテロ原子はそれ自体がOとSのうちから選択され、また強酸性の基はスルホン酸、ホスホン酸及びリン酸の残基あるいはそれらの塩のうちから選択される。
【0025】
不純物自己注入されたこれらの重合体の直流で測定された固有電気伝導率は、平均しておよそ10−3ないし10−2S/cmである。さらにこの固有伝導率は、2つのタイプの側鎖の分子比を変えることによって、10−5から1S/cmまで自在に調整できる。不純物自己注入されたこの重合体の質量の多くとも2%が加えられた上記の重合マトリックスから構成される誘電層3の電気伝導率は、それ自体が調整可能であり、直流の低電界での使用についてはおよそ10−14S/cmあるいはそれ未満である。この絶縁耐力は電界の増加とともに低下する。反対に、このような誘電層の電気伝導率及び誘電率は電界とともに著しく上昇し、その結果、空間電荷の重要な局所集中に難なく耐えることができるとともに、それらの電荷を分布させることができる。
【0026】
添付図面には示されていない図1の変形においては、上記の誘電層3は直接的にケーブルの心線をとり囲み、保護外装5によって直接的に覆われており、内側と外側の2つの半導体シールドは取り除かれる。
【0027】
図2による実施例の変形においては、図1と同じ参照番号が図1と同じ部分を指している。
【0028】
この図2に示されているケーブルは、導電性心線1及び誘電層3との間に内側誘電層7をまた誘電層3と保護外装5との間に外側誘電層8を備えている。
【0029】
これら2つの誘電層7及び8はそれぞれ、少なくとも上記の絶縁重合マトリックスのいずれかの重合体及び、質量の5ないし20%の率でこのマトリックスに組み込まれる少なくともひとつの導電性重合体から構成されている。導電性重合体は、少なくとも前述の3つのタイプの導電性重合体のいずれかであるが、できれば、不純物注入されていないあるいは不純物除去された単一の重合体から選択される。この導電性重合体は、質量の20%以下かつ5%以上の比率で誘電層の重合マトリックスに加えられる。
【0030】
誘電層7及び8の結果生じる電気伝導率は、直流での使用については10−14ないし1S/cmである
【0031】
不純物注入されたあるいはドーピングされていない重合体をもつこれらの内側誘電層7及び外側誘電層8の電気伝導率は、高電界にある場合には数ジーメンス/cmに達することもある。
【0032】
この図2の一変形においては、ケーブルは、図1と同じように2つの半導体シールドを備えており、内側シールドは内側誘電層7で覆われており、外側シールドは外側誘電層8を覆っている。
【0033】
同様に、図2において点線で示されている一変形においては、内側誘電層7及び外側誘電層8のいずれかあるいは各々が、7A、7B、8A、8Bのようないくつかの基本層に分かれている。これらの基本層の導電性重合体の比率は、5ないし20%にとどまってはいるが層によって異なる。内側層7の基本層の導電性重合体率は、心線と接触しているもっとも内側の基本層7Aから順に減少していく。反対に、外側層8においては、誘電層3と接触しているもっとも内側の基本層8Aから、保護外装5と接触しているもっとも外側の基本層8Bまで増加していく。
【0034】
内側誘電層7及び外側誘電層8あるいは場合によってはそれらの基本層は、内部欠陥やさらに導電性心線の周縁の凸凹あるいは保護外装の欠陥に起因する高電界にある場合には、内側及び外側半導体シールドの役割を果たす。また低電界においては誘電層の役割を果たす。
【0035】
直流での使用については、層7Aの電気伝導率は10−9ないし1S/cmであり、層7Bの伝導率は10−14ないし10−9S/cm、層8Aの伝導率は10−14ないし10−9S/cm、層8Bの伝導率は10−9ないし1S/cmである
【0036】
発明による電力ケーブルの信頼度をより大きくする主な利点の他に、特に以下を挙げることができる。
【0037】
−ケーブルの絶縁耐力が全体的に大きくなる。これは一方ではこのケーブルのひとつあるいは複数の誘電層の固有絶縁耐力が高いままであることにより、もう一方では、結果として生じる実質上の絶縁耐力が、欠陥のないあらゆるゾーンにおいてこの固有値を保ち続けており欠陥が存在する場合にはその欠陥に応じて局所的にしか変化しないことによる。
【0038】
−局所的に許容される最大電界が大きくなる。従来の工法による一定のタイプの電力ケーブルにおけるおよそ10kv/mmという典型的な値を、本発明による同じタイプのケーブルにおいては20ないし30kv/mmという値に引き上げることができる。
【0039】
−ケーブルの使用高圧の増大により、ケーブルが伝達する電力の増大が可能である。
【0040】
−ケーブルの性能は保持したまままで、絶縁誘電層の厚みを小さくすることができる。
【0041】
もちろん本発明は、これまでに説明した実施例に限定されるものではない。
【0042】
特に、本発明によるケーブルが相応の半導体シールドを備えている場合には、それらのシールドは、上記の材料あるいは、これまでに存在する工法のケーブルにおける半導体シールドについて使用される従来の材料で構成することもできる。
【0043】
さらに、本発明によるケーブルは、このタイプのケーブル製造の従来のプロセスを用いてもつくりだすことができる。
【0044】
最後に、図2に示されている実施例においては、層7及び8のそれぞれについて2つ以上の基本層をつくりだすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による電力ケーブルの断面図を示している。
【図2】 図1のケーブルの代替実施例の断面図を示している。

Claims (6)

  1. 絶縁耐力改良型直流電力ケーブルであって、電気心線及びその心線の絶縁重合第一誘電層を備えており、この第一誘電層が、少なくともひとつの導電性重合体を含む絶縁重合マトリックスから構成され、導電性重合体が、この第一層の結果として生じる電気伝導率が10−14S/cm未満となるような重量比率でこの重合体マトリックスに組み込まれ、上記の導電性重合体がドーパントの注入に頼らずに合成が行われた非ドープ重合体あるいは合成中に不純物が注入され、その後に不純物除去された脱ドープ重合体のときには、重合体マトリックス中の導電性重合体の比率は重量で5%以下であり、上記の導電性重合体が合成中にドーパントのグラフト化によって得られた自己ドープ重合体のときには、重合体マトリックス中の導電性重合体の比率は重量で2%以下であることを特徴とする直流電力ケーブル。
  2. さらに、心線と第一誘電層との間に内側半導体シールドと、第一誘電層と保護外装との間に外側半導体シールドを備え、それら各々のシールドが、電気伝導率が1S/cm以下となるような重量比率で導電性重合体を含む絶縁重合マトリックスから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
  3. 前記シールドの前記重合体マトリックスに含まれる前記導電性重合体が、非ドープ重合体あるいは脱ドープ重合体であり、前記シールドの前記重合体マトリックス中の濃度が、重量で5%から70%の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載のケーブル。
  4. 前記シールドの前記重合体マトリックスに含まれる前記導電性重合体が、自己ドープ重合体あり、前記シールドの前記重合体マトリックス中の濃度が重量で5%より大きいことを特徴とする請求項2に記載のケーブル。
  5. 前記第一誘電層(3)の下にある追加の内側の第二誘電層(7)、および前記第一誘電層(3)の上にある追加の外側の第三誘電層(8)をさらに備え、各第二誘電層および第三誘電層が、非ドープ重合体、脱ドープ重合体、および自己ドープ重合体から選択された導電重合体を含む絶縁重合体マトリックスによって構成され、前記第二誘電層および第三誘電層の電気伝導率が、10−14S/cmから1S/cmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のケーブル。
  6. 少なくとも一つの第二誘電層および第三誘電層が、相互に異なる濃度の導電性重合体を有する複数の基本層を備え、前記濃度が、最も内側の基本層から前記第二誘電層の連続する基本層を通して減少し、前記第三誘電層の最も内側の基本層から前記第三誘電層の連続する基本層を通して増加することを特徴とする請求項5に記載のケーブル。
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