JP4040042B2 - アンテナ装置 - Google Patents
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これらの方法では、移動通信サービスを提供する地域に対して木目細やかな調整が困難になり、サービスエリアが確保できなくなる場合があった。例えば、山上に設置される基地局アンテナにおいては、基地局に比較的近い1kmから2km程度離れたエリアで受信レベルが低下してしまう課題があった。
これを図14を用いて簡単に説明する。図14(a)の参照符号140から143はアンテナユニットを意味する。図14(a)に示すように各アンテナユニットはZ軸上に一定間隔を空けて配置される。これを機械的に傾斜させた場合を図14(b)に示す。アンテナユニット140〜143に俯角θ144として例えば30°傾けたとすると、y軸方向のビームは傾くが、x軸方向のビームに対してはCosφ(90°)が掛かる形になるためにチルト効果は0になってしまう。
このように電気的チルトは機械的チルトに対して優れた特性を持つが、位相制御を一律に行っていた為に、前述したような課題がありサービスエリアが確保できないなどの問題があった。
[第1実施形態]
第1のアンテナユニット1は、励振素子2がN個鉛直方向に配列して構成されている。例えば励振素子2が4個鉛直方向に配列して形成され、第1のアンテナユニット1の給電点3からの給電ライン4,5の長さを異ならせることで電気的チルト角が与えられている。第1のアンテナユニット1には例えば5°のチルト角が与えられている。その第1のアンテナユニット1がM個鉛直方向に配列されて第1のアンテナブロック12が構成されている。
この鉛直方向上に配置される第1のアンテナブロック12とそれより下に配置された第2のアンテナブロック13とによってアンテナ装置が構成されている。ここで、第1のアンテナユニット1の給電点3にアンテナシステムの給電点11からの給電信号を供給する給電ケーブル6と、第1のアンテナユニット1から鉛直方向下M個目に配置された参照符号を表記しない第1のアンテナユニットの給電点とアンテナシステムの給電点11を結ぶ給電ケーブル7とで発生する遅延時間は同一になるように設計されている。鉛直方向M個目に当たる第1のアンテナユニットまでの各アンテナユニットと各給電ケーブルの表記は省略している。
同様に第2のアンテナユニット8の給電点14にアンテナシステムの給電点11からの給電信号を供給する給電ケーブル9と、第2のアンテナユニット8から鉛直方向下L個目に配置された参照符号を表記しない第2のアンテナユニットの給電点とアンテナシステムの給電点11を結ぶ給電ケーブル10とで発生する遅延時間は同一になるように設計されている。鉛直方向L個目に当たる第2のアンテナユニットまでの各アンテナユニットと各給電ケーブルの表記も省略している。
各アンテナユニットへの電気的チルト角の与え方を図2に示す。図2(a)はアンテナユニット内の給電ラインの長さを変えてチルト角を与える方法を示す。チルト角を与えるには、第1のアンテナユニット1の給電点3から各励振素子2aから2dへの給電ラインの長さを異ならせる。励振素子2aと給電点3を結ぶ給電ライン20に対して励振素子2bと給電点3を結ぶ給電ライン21の長さを長くすれば良い。同様に励振素子2cと給電点3を結ぶ給電ライン22を給電ライン21よりも長くする。また、励振素子2dと給電点3を結ぶ給電ライン23を給電ライン22よりも長くする。この給電ラインを可変する長さをチルト角を例えば10°にしたい場合、その給電ラインで発生する相対的(鉛直方向下に位置するアンテナユニットへの給電信号を10°ずつ遅らせる)な位相遅れが10°になる長さに設定すれば良い。
図3(a)にチルト角5°の第1のアンテナユニット1を例えば5個で第1のアンテナブロック12を構成し、チルト角15°の第2のアンテナユニット8を例えば2個で第2のアンテナブロックを構成したアンテナ装置の垂直面内指向性を示す。周波数は2.0GHzでのデータである。図3(a)の縦軸はアンテナ利得をdBiで示し、横軸は垂直面における指向方向をdeg.で示し、正方向が大地方向、負方向が天空方向である。図3(a)の実線がこの実施例の特性を示し、破線に電気的チルト角が与えられていない従来のアンテナ装置の特性を示す。但し比較する意味で従来のアンテナ装置も鉛直方向に7個のアンテナユニットから成る点は合わせてある。
図3(b)に第2のアンテナユニット8の電気的チルト角を30°にした実施例の垂直面内指向性を示す。第1のアンテナユニット1の電気的チルト角は5°のままである。
従来のアンテナ装置では角度20°〜40°の範囲では複数のヌルが確認できると共に約−17dBiを中心にアンテナ利得が波打つ特性を示している。これに対して、アンテナユニット8の電気的チルト角を30°にした実施例のアンテナ装置の特性は、角度20°〜40°の範囲ではヌルが無く−5dBi以上のアンテナ利得を維持した特性を示す。特に角度30°付近では3dBi程度の利得を示している。このように組み合わせるアンテナユニットの電気的チルト角を可変することで、アンテナ装置の垂直面内指向特性を所望の特性に調整することが可能である。アンテナ装置を設置する地域場所によって異なる要求特性に、この発明によるアンテナ装置であれば容易に調整することが可能になる。
図6にチルト角5°の第1のアンテナユニット1を4個で第1のアンテナブロック12を構成し、チルト角15°の第2のアンテナユニット8を2個で第2のアンテナブロックを構成し、第1のアンテナブロック12と第2のアンテナブロック13との間にアンテナユニット1個分の空間50を設けたアンテナ装置の周波数2.0GHzの垂直面内指向性を示す。すなわち、図3(a)で示した実施例の第1のアンテナユニット1を1個、空間50に置き換えた例である。図6の実線がこの実施例2の特性を示し、破線に電気的チルト角が与えられていない従来のアンテナ装置の特性を示す。従来のアンテナ装置は、角度約5°に主ビームがあり、大地方向及び天空方向共に急激にアンテナ利得が低下する特性を示す。これに対してこの実施例のアンテナ装置の特性は、主ビームが約5°にあるのと大地方向及び天空方向共にアンテナ利得が低下する基本的な特性は同じであるが、角度10°〜20°の範囲における利得が約10dBほど改善された特性を示している。
角度5°にある主ビームの大きさに変わりは無い。角度10°〜20°の範囲におけるアンテナ利得が特に異なっている。空間50が無い実施例に見られる角度約12°付近の利得の落ち込み(約0dBi)が見られず角度12°〜17°の範囲のアンテナ利得が向上している。
この実施例の伝播損失特性を図7に示す。アンテナ装置からの水平方向距離が1Kmから2Kmの範囲における伝播損失が波打っているが平均的に約2dB程度改善されている。図4に示す実施例(実線)の1Kmから2Kmの範囲は約−109dBに対して、図7に示す空間50を設けた同じ範囲における伝播損失は約−107dBである。
また、第1のアンテナユニット1と第2のアンテナユニット8の大きさが等しい例で説明したが、第1のアンテナユニット1と第2のアンテナユニット8の大きさが異なっている場合でも良い。すなわち、調整を容易にするために各アンテナユニットの大きさの単位で変更出来る(置き換える)ようにして置く。
図8(a)は第1のアンテナブロック12側の給電ラインの中に移相器を接続した例である。今までに説明した部分と同じ構成は参照番号を同一とし説明を繰り返さない。アンテナシステムの給電点11と第1のアンテナユニット1の給電点3との間に移相器80が挿入接続されている。移相器80から第1のアンテナブロック12を構成する各第1のアンテナユニット1のそれぞれの給電点3に対して、位相を可変した給電信号を供給している。鉛直方向最上段に位置する第1のアンテナユニット1には、移相器80から給電ケーブル81によって給電されている。第1のアンテナブロック12を構成する鉛直方向最下段に位置するM個目の参照符号を表記しない第1のアンテナユニットの給電点には給電ケーブル82によって給電されている。図8(a)では、最上段の第1のアンテナユニット1と最下段の第1のアンテナユニットとの間にあるアンテナユニットについては、表記を省略している。省略している各第1のアンテナユニットの給電点にも移相器80から独立した給電ケーブルが接続されている。第2のアンテナブロック13側には、移相器が挿入接続されていない。
移相器80は、機械的移相器又は電気的移相器のローデッド・ライン型(Loaded Line)やハイブリッド・カップルド型(Hybrid Coupled)など何で構成しても良い。調整の簡便性を考慮すると可変移相器であると、より好ましい。
図9(a)にこの実施例のアンテナ装置で移相器80の移相量を変化させたときの垂直面内指向特性を示す。周波数は2.0GHzである。縦軸はアンテナ利得をdBiで示し、横軸は垂直面内の角度をdeg.で示す。このデータは電気的チルト角が5°の第1のアンテナユニット1を例えば5個、電気的チルト角が15°の第2のアンテナユニット8を例えば2個で構成したアンテナ装置の特性である。
破線で示す特性が、移相器80で鉛直方向上に位置する第1のアンテナユニットの位相を4°進ませたものである。その結果、主ビームの方向が約1°に変化している。
2点鎖線で示す特性が、今度は逆に移相器80で鉛直方向下に位置する第1のアンテナユニットの位相を2°遅らせたものである。その結果、主ビームの方向が約7°に変化している。図9(a)の図中に破線の楕円で囲んだ部分である。
次に第2のアンテナブロック13側に移相器を接続した例を示す。今までに説明した部分と同じ構成は参照番号を同一とし説明を繰り返さない。アンテナシステムの給電点11と第2のアンテナユニット8の給電点14との間に移相器83が挿入接続されている。移相器83から第2のアンテナブロック13を構成する各第2のアンテナユニット8の給電点14に対して、位相を可変した給電信号を供給している。鉛直方向上に位置する第2のアンテナユニット8には、移相器83から給電ケーブル84によって給電されている。第2のアンテナブロック13を構成する鉛直方向最下段に位置するL個目の参照符号を表記しない第2のアンテナユニットの給電点には給電ケーブル85によって給電されている。図8(b)では、第2のアンテナブロック13を構成する最上段の第2のアンテナユニット8と最下段の第2のアンテナユニットとの間にあるアンテナユニットについては、表記を省略している。省略している各第1のアンテナユニットの給電点にも移相器83から独立した給電ケーブルが接続されている。第1のアンテナブロック12側には、移相器が挿入接続されていない。
図9(b)に破線で示す特性が移相器83で移相させないときの特性である。すなわち、アンテナ装置そのものが持つ特性である。この特性に対して移相器83で鉛直方向下に位置する第2のアンテナユニットの位相を5°遅らせた特性を実線で示す。更に15°遅らせた特性を2点鎖線で示す。
図8(c)に第1のアンテナブロック12と第2のアンテナブロック13のそれぞれの給電ラインの中に移相器を接続した実施例を示す。図8(c)に示す例は、前述した第1のアンテナブロック12の給電ラインに移相器を挿入接続した図8(a)の例と、第2のアンテナブロック13の給電ラインに移相器を挿入接続した図8(b)の例とを組み合わせたものである。第1のアンテナブロック12へ給電する給電信号の位相を移相器80で制御することで主ビームの指向性を可変し、第2のアンテナブロック13へ給電する給電信号の位相を移相器83で制御することでサイドビームの指向性を可変するようにしたものである。各構成は説明済みであるのでここでの説明は省略する。
図10は、第1のアンテナブロック12へ給電する給電信号の位相を制御する移相器80と、第2のアンテナブロック13へ給電する給電信号の位相を制御する移相器83のそれぞれとアンテナシステムの給電点11との間に電力分配器100を接続した例である。
励振素子を3周波共用にすることによって、アンテナ装置を小型化することが可能になる。特に1つのレドームにアンテナ装置を収納することが出来るので、アンテナ設置場所の強度など利点が多い。
以上、述べて来た様にこの発明によるアンテナ装置によれば、柔軟にアンテナの指向特性を調整することが可能になる。ここまでの説明では、鉛直方向下に配置される第2のアンテナブロック13のチルト角を鉛直方向上に配置される第1のアンテナブロック12のチルト角よりも大きくした例で説明して来た。しかしこの発明はこの組み合わせに限定されない。例えば、盆地等の低い土地にこの発明のアンテナ装置を設置する場合は、その地域の特徴にもよるが、説明して来た例とは逆に鉛直方向下に配置される第2のアンテナブロック13の電気的チルト角を鉛直方向上に配置される第1のアンテナブロック12のチルト角よりも小さく設定した方が良い場合も想定される。
Claims (4)
- 第1のアンテナユニットが1個以上で構成される第1のアンテナブロックと、第2のアンテナユニットが1個以上で構成される第2のアンテナブロックとを備え、
上記第1のアンテナブロックと上記第2のアンテナブロックとが鉛直方向に配列され、
上記第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとは異なる電気的チルト角が
与えられており、
第1のアンテナユニットの数の方が第2のアンテナユニットの数よりも多く、
上記第2のアンテナブロックは第1アンテナブロックより鉛直方向下に配置され、上記第1のアンテナブロックを構成する第1のアンテナユニットよりも上記第2のアンテナユニットの電気的チルト角が大であり、
上記第1のアンテナブロックと上記第2のアンテナブロックとの間に、上記第1又は第2のアンテナユニットの少なくとも一方の大きさの1倍以上の空間が設けられている、
ことを特徴とするアンテナ装置。 - 上記第1のアンテナブロックと上記第2のアンテナブロックとに給電する給電ラインの少なくとも一方に移相器が接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
- 上記第1のアンテナブロックと上記第2のアンテナブロックとに給電する給電ラインにこれらアンテナブロックに対する給電電力を分配する電力分配器が接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
- 上記アンテナユニットを構成するアンテナ素子が複数の周波数に対応した励振素子であり、上記アンテナユニットの入力に共用器が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のアンテナ装置。
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